日米中関係と日本の戦略 日米中関係と日本の戦略 - The Stimson Center

144 ⏐ 日 米 中 関 係 と 日 本 の 戦 略
日 米 同 盟 をめぐる 政 策 決 定 過 程 は、 実 務 レベルでは 両 国 の 緊 密 性 が
高 まってはいるものの、 政 治 指 導 者 と 世 論 の 関 与 は 乏 しい。「 事 務 方 同
盟 」を 超 えて、 政 治 指 導 者 と 世 論 の 関 与 を 高 めるには、 同 盟 運 営 の 透 明
性 と 説 明 責 任 を 高 めることが 重 要 であろう。
今 後 の 課 題
冒 頭 でも 述 べたように、2001 年 9 月 11 日 の 同 時 多 発 テロは、
日 米 同 盟 にも 大 きな 影 響 を 与 えた。テロ 以 後 の 日 米 同 盟 の 課 題 を、 対 中
関 係 を 視 野 に 入 れつつ 検 討 してみたい。
まず、 日 米 間 の 役 割 分 担 の 問 題 である。1951 年 の 旧 日 米 安 全 保
障 条 約 締 結 時 の 日 本 側 の 実 務 責 任 者 であった 西 村 熊 雄 外 務 省 条 約 局 長 は、
「 一 言 でいえば、 日 本 は 施 設 を 提 供 し、アメリカは 軍 隊 を 提 供 して 日 本
の 防 衛 を 全 うしようとするものである。 物 と 人 との 協 力 である。 相 互 性
は 保 持 されている」と 論 じている 15 。1990 年 代 の 日 米 同 盟 の 強 化 を
受 けて、 日 本 は「 周 辺 事 態 」で「 物 と 人 との 協 力 」 以 上 の 役 割 を 分 担 す
る 姿 勢 を 示 した。それでも 後 方 支 援 である。しかも、アメリカは 自 国 の
本 土 を 日 本 に 守 ってもらうことなど、 期 待 していなかった。その 意 味 で、
日 米 同 盟 は 完 全 に 相 互 的 ではなく、その 基 本 は 依 然 として「 物 と 人 との
協 力 」であったと 言 えよう。
しかし、 同 時 多 発 テロによって、 今 やアメリカ 本 土 も 武 力 攻 撃 の 対
象 になりうることが 明 白 になった。そして、 次 は 東 京 かもしれない。こ
うした 国 際 テロの 防 止 やテロへの 反 撃 のためには、 超 大 国 アメリカも 国
際 的 な 協 力 を 必 要 とする。 国 際 テロのような 新 しい 深 刻 な 脅 威 に 直 面 し
て、 日 米 同 盟 は「 物 と 人 との 協 力 」を 超 えた 相 互 性 を 模 索 する 必 要 があ
るのである。
次 に、 日 米 協 力 の 深 化 ・ 拡 大 の 必 要 性 である。 国 際 テロに 対 処 する
には、 外 務 省 と 防 衛 庁 がアメリカの 国 務 省 ・ 国 防 省 と 協 力 するだけでは、
まったく 不 十 分 である。すでに 周 辺 事 態 法 の 施 行 によって、 多 くの 中 央
官 庁 や 地 方 公 共 団 体 の 協 力 が 必 要 となったが、こうした 広 範 な 協 力 体 制
の 確 立 が、ますます 急 務 になっている。 警 察 、 税 関 、 厚 生 、 運 輸 、 金 融
など 各 分 野 で、 実 に 宮 内 庁 以 外 のすべての 中 央 官 庁 がなんらかの 形 で 関
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西 村 熊 雄 『 改 訂 版 ・ 日 米 安 全 保 障 条 約 論 』 時 事 通 信 社 、1960 年 、59ページ。