日米中関係と日本の戦略 日米中関係と日本の戦略 - The Stimson Center

146 ⏐ 日 米 中 関 係 と 日 本 の 戦 略
な 効 果 を 発 揮 しないかもしれないが、 長 期 的 には 日 米 中 三 国 の 行 動 と 思
考 のパターンにポジティブな 変 化 を 促 す 可 能 性 はある 17 。
対 中 関 係 をも 睨 んだ 日 米 同 盟 強 化 の 長 期 的 な 戦 略 を 描 き、 国 内 で 包
括 的 な 安 全 保 障 体 制 を 構 築 しながら、 世 論 の 理 解 と 支 持 を 確 保 するには、
政 治 による 強 い(そして 安 定 した)リーダーシップと、それを 支 えるブ
レーンやスタッフが 必 要 である。 幸 い、 小 泉 純 一 郎 首 相 の 支 持 率 は、す
こぶる 高 い。 日 本 政 府 はついに「 安 全 保 障 基 本 法 」の 制 定 に 向 けて 動 き
出 した 18 。これを 機 に、 長 期 戦 略 の 策 定 を 可 能 にする 官 邸 スタッフの 大
幅 な 強 化 を 図 るべきであろう。また、 集 団 的 自 衛 権 行 使 に 関 するいびつな 解 釈
を、 新 法 の 中 で 立 法 府 の 責 任 で 改 めることができれば、 大 きな 進 歩 である 19 。
アメリカも 第 二 次 世 界 大 戦 までは、 十 分 な 安 全 保 障 体 制 を 構 築 して
はいなかった。 統 合 参 謀 本 部 もイギリスとの 作 戦 協 力 の 必 要 上 設 置 され
たし、 国 家 安 全 保 障 会 議 (NSC)や 中 央 情 報 局 (CIA)が 創 設 され
たのは、1947 年 の 国 家 安 全 保 障 法 によってである。 同 盟 との 協 力 と
国 際 環 境 の 激 変 への 構 造 的 対 応 を、 日 本 も 経 験 しなければならない。 日
本 は 冷 戦 後 の10 年 間 、 経 済 的 な 停 滞 に 悩 まされながら、 国 際 的 な 危 機
にその 都 度 対 応 してきたが、21 世 紀 を 迎 え、 陰 惨 なテロを 経 験 した 今
こそ、 長 期 戦 略 を 可 能 にする 体 制 づくりに 本 格 的 に 取 り 組 むべきである。
もとより、 安 全 保 障 は 国 の 政 治 ・ 外 交 ・ 経 済 と 独 立 して 存 在 するもので
はない。その 意 味 で、 日 米 同 盟 のさらなる 強 化 と 日 米 中 関 係 の 安 定 のために
も、 日 本 経 済 の 再 建 が 何 よりも 喫 緊 の 課 題 であることは、 言 うまでもない。
17
日 米 中 関 係 に 関 する 最 近 の 優 れた 論 考 として、Michael J. Green, “Defense or Security? The U.S.-
Japan Defense Guidelines and China” in David M. Lampton, ed., Major Power Relations in Northeast Asia: Win-
Win or Zero-Sum Game (Tokyo: Japan Center for International Exchange, 2001)。
18 『 読 売 新 聞 』2002 年 1 月 1 日 。
19
集 団 的 自 衛 権 については、 佐 瀬 昌 盛 『 集 団 的 自 衛 権 』(PHP 新 書 、2000 年 )を 参 照 。また、
「 安 全 保 障 基 本 法 」と 集 団 的 自 衛 権 の 関 係 については、 村 田 晃 嗣 「 若 い 世 代 の 改 憲 論 」『 中 央 公 論 』
2000 年 6 月 号 を 参 照 。