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地域参画型公共交通の形成・持続メカニズム に関する研究 - 名古屋大学

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福 本 ・ 加 藤 : 第 43 回 土 木 計 画 学 研 究 発 表 会 ( 春 大 会 )<br />

定 したことから, 当 時 コミュニティバス 再 編 を 市 地 域 公<br />

共 交 通 会 議 を 中 心 に 検 討 していた 市 の 交 通 担 当 部 署 から<br />

は,コミュニティバスと 競 合 する 存 在 と 見 なされた.さ<br />

らに,コミュニティバスを 運 行 しているバス 事 業 者 の 態<br />

度 も 硬 化 させることとなり,これらの 支 援 を 一 切 受 ける<br />

ことができなくなってしまった. 一 方 , 深 夜 時 間 帯 の 運<br />

行 に 対 するタクシー 事 業 者 からの 反 発 も 強 く, 運 行 開 始<br />

はへの 同 意 を 得 ることは 困 難 となってしまった.そこで,<br />

深 夜 運 行 は 断 念 し, 昼 間 運 行 のみで 開 始 することで 地 域<br />

に 対 して 必 要 性 に 対 する 意 識 (すなわち「 心 」)を 浸 透<br />

させ,それを 突 破 口 に 資 金 や 利 用 者 を 増 やすとともに,<br />

市 の 交 通 担 当 部 署 やバス・タクシー 事 業 者 の 合 意 も 取 り<br />

付 け, 徐 々に 運 行 時 間 帯 を 拡 大 するという 方 針 に 変 更 し<br />

た.しかしこの 時 点 で, 運 行 の 目 的 があいまいとなり,<br />

とにかくどんな 形 でも 良 いから 運 行 しようというスタン<br />

スになったことは 否 めない. 結 果 的 に 事 業 主 体 と 運 行 主<br />

体 との 間 の 意 識 共 有 にもズレが 生 じた.<br />

実 際 には, 運 行 開 始 前 ・ 後 とも, 商 店 街 連 合 会 から 地<br />

域 住 民 に 対 する 具 体 的 な 働 きかけは 不 十 分 であり, 地 域<br />

全 体 で 公 共 交 通 に 取 り 組 むという 意 識 を 醸 成 するに 至 ら<br />

なかったばかりか, 地 域 住 民 からは「 何 の 説 明 もない」<br />

という 反 発 すら 招 く 結 果 となり, 協 力 を 得 ることが 不 可<br />

能 となった. 事 業 ・ 運 行 主 体 が 勝 手 にやっている,とい<br />

う 受 け 止 められ 方 を 各 方 面 にされることとなり, 運 賃 や<br />

協 賛 金 収 入 も 伸 び 悩 み, 結 果 として 運 転 資 金 ,すなわち<br />

「 金 」が 底 をついたことによって, 運 行 開 始 から1 年 強<br />

で 廃 止 へと 追 い 込 まれることとなった.<br />

b) 障 壁 を 乗 り 越 えつつある 例 <br />

T 市 には 公 営 バス 事 業 者 ・ 民 間 バス 事 業 者 が 路 線 バス<br />

を 運 行 しているものの,O 地 区 は 市 の 中 心 部 から 大 きな<br />

河 川 によって 分 断 されている.O 地 区 は 東 西 に 細 長 いが,<br />

幹 線 道 路 は 南 北 に 地 域 を 横 断 しており,バス 路 線 も 幹 線<br />

道 路 を 通 っているため, 地 域 内 の 移 動 に 利 用 できる 公 共<br />

交 通 機 関 は 存 在 しない.<br />

そこで, 当 初 は 公 営 バス 運 行 を 要 望 していた 地 域 の 一<br />

部 住 民 が, 地 域 内 のスーパーへの 買 い 物 の 足 となるコミ<br />

ュニティバスを 地 域 主 体 で 運 行 する 取 り 組 みを 始 めた.<br />

ここで 問 題 となったのは,「 人 」「 金 」の 面 であった.<br />

「 人 」の 面 に 関 しては,1O 地 区 において 公 共 交 通 を<br />

必 要 としている 人 の 多 くが1 人 暮 らしの 高 齢 者 であり,<br />

コミュニティバス 運 行 の 事 務 局 を 引 き 受 ける 能 力 がない<br />

こと,2 積 極 的 に 活 動 していたメンバーが 特 定 の 政 党 に<br />

所 属 していたため, 政 治 的 な 意 図 があるのではないかと<br />

いう 誤 解 を, 特 にO 地 区 を 地 盤 とする 他 政 党 の 市 議 会 議<br />

員 や 自 治 会 役 員 から 受 けていたこと,の2 点 が 主 な 障 壁<br />

であった.このうち2に 関 しては, 当 該 メンバーが 純 粋<br />

に 地 域 の 公 共 交 通 に 関 する 活 動 を 行 っているという 理 解<br />

を 得 てからは, 地 区 の 市 議 会 議 員 も 活 動 に 協 力 するよう<br />

になった.しかし1に 関 する 問 題 は 未 だ 解 決 しておらず,<br />

運 行 開 始 になかなかこぎ 着 けることができない 原 因 とな<br />

っている.<br />

「 金 」の 面 に 関 しても,「 人 」の 影 響 を 受 けている.<br />

現 状 では 事 務 局 機 能 が 脆 弱 であり, 責 任 の 所 在 が 不 明 確<br />

であることから, 市 や 沿 線 企 業 が 補 助 金 や 協 賛 金 を 拠 出<br />

しづらい 状 況 にある. 一 方 で,「 金 」の 工 面 に 不 安 があ<br />

るために, 事 務 局 を 引 き 受 けようとする「 人 」が 現 れな<br />

いという 面 もあり, 一 種 のジレンマ 状 態 に 陥 っている.<br />

一 方 で,「 心 」と「 口 」に 関 しては 十 分 な 負 担 が 行 わ<br />

れている.「 心 」の 面 に 関 しては 主 要 メンバーが, 買 い<br />

物 を 目 的 とするコミュニティバスの 意 義 を 地 域 住 民 に 個<br />

別 に 説 明 して 回 ることで, 地 域 全 体 にコミュニティバス<br />

の 賛 助 会 員 を 増 やし, 意 識 高 揚 が 図 られている.また,<br />

主 要 メンバーは 運 輸 支 局 や 学 識 経 験 者 に 公 共 交 通 運 行 に<br />

関 するアドバイスを 求 めた 上 で, 市 の 担 当 部 署 に 対 して<br />

取 り 組 みに 対 する 支 援 と 状 況 報 告 ,すなわち「 口 」を 出<br />

す 活 動 を 再 三 にわたって 行 い, 市 にも 地 域 の 意 識 を 共 有<br />

してもらうとともに, 支 援 を 引 き 出 すことに 成 功 した.<br />

地 域 が 主 体 となる 公 共 交 通 運 行 への 支 援 は, 市 が 策 定 し<br />

た 地 域 公 共 交 通 総 合 連 携 計 画 にも 明 記 され, 平 成 23 年 度<br />

の 市 の 予 算 に 補 助 金 も 計 上 されている.<br />

現 在 ,O 地 区 では 依 然 として「 人 」の 面 で 不 安 を 抱 え<br />

るものの,「 金 」の 面 の 不 安 が 改 善 されたことをきっか<br />

けとして, 本 格 運 行 を 目 指 した 活 動 が 行 われつつある.<br />

c) 障 壁 をクリアし 持 続 している 例 < 生 活 バスよっか<br />

いち><br />

三 重 県 四 日 市 市 羽 津 ・ 大 矢 知 地 区 において, 民 間 路 線<br />

バスの 廃 止 をきっかけに, 地 域 住 民 とスーパー 等 の 沿 線<br />

企 業 がコミュニティバス 運 行 を 計 画 し,バス 事 業 者 と 市<br />

がそれに 支 援 をしているものである.その 際 , 単 なる 廃<br />

止 代 替 バスという 位 置 づけではなく, 買 い 物 や 通 院 とい<br />

う 目 的 を 満 たす 路 線 ・ダイヤ 設 定 とすることに 重 点 が 置<br />

かれた.<br />

「 人 」の 面 では, 地 域 住 民 の 有 志 に 加 え, 交 通 事 業 者<br />

( 路 線 バスを 運 行 していた 事 業 者 )や 市 職 員 , 学 識 者 な<br />

どが 偶 然 ではあるが 集 まり,それぞれが 得 意 とする 分 野<br />

の 仕 事 を 分 担 することができた. 運 行 目 的 がはっきりと<br />

していたため,「 心 」の 部 分 が 十 分 にメンバー 間 で 共 有<br />

されており,それぞれが「 口 」の 面 でも 十 分 に 役 割 を 果<br />

たすことができた.また,「 心 」が 共 有 されることによ<br />

り, 地 域 の 住 民 や 企 業 , 市 に 対 して 活 動 についての 理 解<br />

を 得 る 活 動 が 行 え, 結 果 として 資 金 調 達 ,すなわち<br />

「 金 」の 面 の 問 題 を 解 決 できた.<br />

3

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