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Title [書評] 廣田義人著『東アジア工作機械工業の技術形成 ... - ARRIDE

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書 評廣 田 義 人 著『 東 アジア 工 作 機 械 工 業 の技 術 形 成 』日 本 経 済 評 論 社 2011 年 iv+286ページみず水の野じゅん順こ子あろう。ここまで 詳 しく 情 報 を 収 集 して 提 供 できたのは, 著 者 が 当 該 国 の 工 作 機 械 工 業 を 理 解 するために,インドネシア 語 や, 中 国 語 , 韓 国 語 などの 現 地語 まで 習 得 した 結 果 であり, 何 よりも 工 作 機 械 の 技術 や 経 営 について 人 並 み 以 上 の 基 礎 知 識 と 体 験 があるからである。本 書 は, 一 般 に 後 発 国 にとって 発 展 させるのが 難しいといわれる 工 作 機 械 工 業 を 東 アジア 諸 国 がいかにして 発 展 させてきたか,あるいはできずにいるかを 歴 史 的 に 解 明 し, 共 通 する 発 展 の 要 因 と,それぞれの 差 異 を 生 み 出 している 要 因 について 考 察 することを 課 題 としている。はじめにⅠ 工 作 機 械 とはどのような 機 械 か工 作 機 械 工 業 は,まるでブラックホールのようである。これに 興 味 をもち 少 しでも 近 づいた 者 を 吸 い込 んで 虜 にしてしまい 放 してくれない。 本 書 の 著 者も 工 作 機 械 工 業 のブラックホールに 吸 い 込 まれ 虜 になった 一 人 である。 著 者 と 工 作 機 械 の 関 係 は, 普 通の 研 究 者 のそれとの 比 ではない。 著 者 も「あとがき」で 述 べているように, 高 校 生 のころからマザーマシンという 工 作 機 械 の 特 性 に 惹 かれるものがあったという。ちなみにその 特 性 とは, 母 性 原 理 とよばれ,工 作 機 械 によって 加 工 された 製 品 は 加 工 した 工 作 機械 に 精 度 などを 支 配 され,それを 超 えることはできないというものである。そのため 著 者 は,「 工 作 機械 および 工 具 」という 講 座 をもっていた 九 州 大 学 工学 部 生 産 機 械 工 学 科 に 進 学 している。しかしながら,それにとどまらず, 大 阪 市 立 大 学 経 済 学 部 に 学 士 入学 し 中 岡 哲 郎 先 生 に 師 事 して「 産 業 技 術 論 」ゼミで工 作 機 械 の 研 究 を 始 めている。この 経 歴 だけでも 著者 の 工 作 機 械 にかける 熱 意 は 並 ではないが,さらに職 業 人 としての 実 体 験 をもっているので, 工 作 機 械を 論 じれば,おそらく 著 者 の 右 に 出 る 社 会 科 学 系 の研 究 者 は 日 本 にはいないと 思 われる。そのような 著者 が 日 本 , 台 湾 , 韓 国 ,シンガポール,インドネシア, 中 国 の 工 作 機 械 工 業 の 発 展 に 魅 了 されて 夢 中 になるのは,いろいろ 理 由 を 述 べてはいるが, 本 音 は工 作 機 械 工 業 が 大 好 きだからである。したがって 本書 は, 各 国 の 工 作 機 械 工 業 の 発 達 史 に 関 して,これ以 上 ないといってもよいほど 詳 しい。おそらく 今 後もここまで 詳 細 な 情 報 を 提 供 する 本 は 出 てこないで50それでは, 工 作 機 械 とはどのようなものなのか。読 者 の 便 宜 のために, 工 作 機 械 について 少 し 説 明 する。 自 動 車 や 飛 行 機 , 船 舶 などは 誰 でも 知 っているが, 工 作 機 械 を 知 っている 人 は 多 くない。 自 動 車 も飛 行 機 も 船 舶 も 文 明 の 発 達 を 示 す 総 ての 工 業 製 品は, 工 作 機 械 がなければ 存 在 しなかった。このように 記 述 すれば,オーバーに 思 われるかもしれないが,それは 真 実 である。 工 作 機 械 は 設 備 機 械 であり, 設備 機 械 がなければ 工 業 製 品 を 作 ることはできない。設 備 機 械 なので 工 場 のなかにあるため, 一 般 人 の 目に 触 れることはない。もしも 工 場 のなかを 見 る 機 会があったとしても,これが 工 作 機 械 ですと 教 えられなければ 普 通 の 人 にはわからないほど, 工 作 機 械 は多 種 多 様 である。それほど 工 作 機 械 は 一 般 に 知 られていないものなのに, 一 国 の 工 業 力 を 決 定 する 力 をもつところがおもしろい。 工 作 機 械 は 人 間 の 手 の 人工 的 な 延 長 であるが, 今 日 では 人 間 の 手 をはるかに超 えるおどろくべき 増 殖 力 をもつ。 人 間 の 手 の 不 確実 さに 挑 戦 して 作 られたために 機 械 のなかに「 熟 練 」が 組 み 込 まれており, 誕 生 した 産 業 革 命 以 降 発 達 を続 けている。その 結 果 , 工 作 機 械 は, 競 争 関 係 に 大きな 変 化 をもたらす 力 をもっている。たとえば 工 作機 械 分 野 だけでも 戦 後 の 短 い 時 間 において, 日 本 国内 では 後 発 企 業 が 老 舗 企 業 を 凌 駕 し, 国 際 的 には 日本 企 業 がNC 工 作 機 械 で 欧 米 企 業 の 老 舗 企 業 を 凌 駕した。このことが 東 アジア 後 発 国 といわれていた 韓国 , 台 湾 の 日 本 へのキャッチアップを 可 能 にしている。 工 作 機 械 が 競 争 関 係 に 大 きな 変 化 をもたらす 性『アジア 経 済 』LⅢ2(2012.2)

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