12.07.2015 Views

行政・専門家向けの概要

行政・専門家向けの概要

行政・専門家向けの概要

SHOW MORE
SHOW LESS

Create successful ePaper yourself

Turn your PDF publications into a flip-book with our unique Google optimized e-Paper software.

Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.html行 政 ・ 専 門 家 向 けの 概 要はじめにこの 報 告 書 は、 国 家 研 究 評 議 会 (NRC)の「 電 離 放 射 線 の 生 物 学 的 影 響 に 関 する 委 員 会(BEIR 委 員 会 )」によって 準 備 されたもので、 低 線 量 ・ 低 LET( 線 エネルギー 付 与 ) 電 離放 射 線 に 対 する 人 間 集 団 の 被 曝 の 健 康 影 響 を 扱 うシリーズの 第 7 番 目 のものである。この報 告 書 は、 低 線 量 ・ 低 LET の 健 康 影 響 に 関 する 1990 年 の BEIR V 報 告 書 以 降 に 得 られた新 情 報 に 焦 点 をあてている。電 離 放 射 線 は、 自 然 源 からも 人 工 源 からも 生 じ、きわめて 高 い 線 量 では、 被 曝 後 数 日 間のうちに 明 らかな 損 傷 効 果 を 細 胞 組 織 にもたらす。この 報 告 書 の 焦 点 である 低 線 量 被 曝 では、がんのようないわゆる「 晩 発 性 」の 影 響 が、 最 初 の 被 曝 の 後 、 長 い 年 月 を 経 てもたらされる。この 報 告 書 で、BEIR 委 員 会 は、 低 線 量 を、 意 味 のある 影 響 が 見 られる 最 も 低 いほうの 線 量 を 重 視 して、 低 LET 放 射 線 の 0 に 近 いところから 約 100 ミリグレイ(mGy) 程 度のものと 定 義 している。さらに、 線 量 の 総 量 にかかわりなく、0.1mGy/ 分 以 下 の 線 量 率 であっても 数 ヶ 月 を 超 えて 生 涯 にわたる 慢 性 的 な 被 曝 の 結 果 として 生 じるかもしれない 影 響 は、きわめて 関 連 があると 考 えられる。 中 位 の 線 量 は、100mGy 以 上 から 1Gy までの 線 量 と 定義 され、 高 線 量 は、 放 射 線 治 療 で 使 われる(20~60Gy のオーダーの)きわめて 高 い 総 線 量を 含 め、1Gy 以 上 の 線 量 とされる。十 分 に 立 証 された 放 射 線 被 曝 の「 晩 発 性 」の 影 響 には、がんの 誘 発 やいくつかの 変 性 疾患 ( 例 、 白 内 障 )が 含 まれる。また、 生 殖 細 胞 の DNA における 突 然 変 異 の 誘 発 は、 遺 伝 すると、 子 孫 の 健 康 に 悪 影 響 をもたらす 可 能 性 を 持 ち、 動 物 の 研 究 では 実 証 されてきている。生 物 学 による 証 拠DNA 損 傷 応 答 、 遺 伝 子 / 染 色 体 突 然 変 異 の 出 現 、がんの 多 段 階 の 進 行 との 間 には 深 い 関係 がある。 放 射 線 に 関 連 する 動 物 のがんとより 限 定 された 人 間 のデータについての 分 子的 ・ 細 胞 遺 伝 学 的 研 究 は、 多 段 階 のがんの 進 行 過 程 の 誘 発 と 合 致 している。この 過 程 は、自 然 発 生 のがんや 他 の 発 がん 性 物 質 への 暴 露 と 関 連 するがんに 当 てはまるものと 異 なるようには 思 われない。動 物 のデータは、 低 線 量 放 射 線 が 腫 瘍 形 成 の 初 期 段 階 (イニシエーション〔 初 発 〕)に 主に 作 用 するという 見 解 を 支 持 する。その 後 の 段 階 (プロモーション〔 促 進 〕/プログレッション〔 進 展 〕)での 高 線 量 の 影 響 も 有 力 である。データは 限 られているけれども、 欠 損 していると 動 物 の 腫 瘍 発 生 をもたらす 特 定 の 遺 伝 子 の 損 害 は、 放 射 線 照 射 した 動 物 や 細 胞 で立 証 されてきている。適 応 、 低 線 量 高 感 受 性 、バイスタンダー 効 果 、ホルミシス、ゲノム 不 安 定 性 は、メカニズムの 情 報 がほとんどなく、 主 に 現 象 論 的 データに 基 づいている。そのデータには 放 射 線17


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.html影 響 がより 大 きいとするものもあればより 小 さいとするものもあり、いくつかの 場 合 には特 別 な 実 験 的 環 境 に 限 定 されているように 思 われる。放 射 線 誘 発 がん──メカニズム、 数 量 的 な 実 験 研 究 、 分 子 遺 伝 学 の 役 割放 射 線 腫 瘍 形 成 のメカニズムに 関 する 重 要 な 結 論 は、 線 量 依 存 的 な 細 胞 内 の DNA 損 傷 の誘 発 、DNA 損 傷 の 誤 修 復 を 通 じての 遺 伝 子 / 染 色 体 突 然 変 異 の 出 現 、そしてがんの 進 行 との 間 には 深 い 関 連 があるという 見 解 を 十 分 にレビューされたデータが 強 化 する、というものである。 得 られたデータは、 十 分 に 立 証 されたものではないが、 誘 発 腫 瘍 に 対 して 単 一細 胞 (モノクローナル)の 起 源 を 指 す。これらのデータはまた、 腫 瘍 における 放 射 線 に 関連 した 突 然 変 異 の 候 補 に 関 するある 証 拠 を 提 供 する。これらの 突 然 変 異 は、 機 能 喪 失 DNA欠 損 を 含 み、そのいくつかは 多 重 遺 伝 子 欠 損 と 説 明 されることが 明 らかになっている。 特定 の 点 突 然 変 異 と 遺 伝 子 増 幅 はまた、 放 射 線 に 関 連 した 腫 瘍 において 特 徴 づけられているが、その 起 源 や 状 態 は 不 確 かである。検 討 されたメカニズムについての 反 論 のひとつは、 誘 発 されたゲノム 不 安 定 性 とまとめて 呼 ばれる、 細 胞 損 傷 応 答 の 新 たな 形 態 が、 放 射 線 がんリスクに 有 意 に 寄 与 するかもしれないということであった。この 報 告 書 でレビューされた 細 胞 のデータは、この 多 面 的 な 現象 の 出 現 において 不 確 実 性 といくらかの 矛 盾 を 同 定 した。しかし、テロメアに 関 連 した 1 メカニズムは、 誘 発 されたゲノム 不 安 定 性 のインビトロでのいくつかの 徴 候 に 対 する 整 合 性のある 説 明 を 提 供 した。そのデータは、テロメアに 関 連 した 過 程 がいくつかの 腫 瘍 形 成 表現 型 を 説 明 するかもしれないが、 放 射 線 腫 瘍 形 成 において 誘 発 されたゲノム 不 安 定 性 の 関与 に 対 する 一 貫 性 のある 証 拠 を 示 さなかった。線 量 - 応 答 関 係 に 関 する 動 物 の 数 量 的 データは、 低 LET 放 射 線 の 複 雑 な 描 像 を 提 供 する。いくつかの 腫 瘍 型 は 直 線 関 係 ないし 線 形 - 二 次 関 係 を 示 すが、 一 方 、 他 の 腫 瘍 型 についての 研 究 は、とくに 胸 腺 リンパ 腫 と 卵 巣 がんに 対 して、 低 線 量 しきい 値 を 示 唆 する。しかし、これらのふたつのがんのタイプの 誘 発 / 進 行 は、 細 胞 死 を 含 む 非 典 型 的 なメカニズムによって 進 行 すると 信 じられている。それゆえ、 観 察 されたしきい 値 のような 応 答 は 一 般 化 されるべきではないと 判 断 された。 放 射 線 腫 瘍 形 成 に 対 する 適 応 応 答 は、 動 物 の 数 量 的 研 究で 詳 しく 調 査 されてきており、 最 近 の 情 報 は、 腫 瘍 潜 伏 期 間 を 増 加 させるが 生 涯 リスクに影 響 を 及 ぼさない 適 応 過 程 を 示 唆 する。放 射 線 腫 瘍 形 成 における 遺 伝 的 要 因 の 役 割 に 関 する 細 胞 の 研 究 、 動 物 の 研 究 、 疫 学 的 /臨 床 的 研 究 についてのレビューは、がんにつながるとはっきりしていて 知 られている 人 間の 遺 伝 異 常 の 多 くがおそらく 高 度 の 臓 器 特 異 性 をもち、 放 射 線 誘 発 がんの 高 いリスクを 示していそうであることを 示 唆 する。 細 胞 の 研 究 と 動 物 の 研 究 は、これらの 遺 伝 的 に 決 定 された 放 射 線 影 響 の 根 拠 をなす 分 子 機 構 は、 自 然 発 生 的 腫 瘍 形 成 に 当 てはまり、 腫 瘍 形 成 の体 細 胞 のメカニズムについての 知 識 と 矛 盾 しないものを 大 体 は 反 映 していることを 示 唆 す1 テロメアの 構 造 と 機 能 に 関 連 するメカニズムのことで、テロメアは、 特 徴 的 なDNAの 反 復 や 付 随 タンパク 質 を 含 む 染 色 体 の 末 端 領 域 である。18


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.htmlる。とくに、DNA 損 傷 応 答 と 腫 瘍 抑 制 型 遺 伝 子 の 主 な 欠 損 は 放 射 線 がんリスクを 高 める 働きをするという 証 拠 が 得 られた。がん 遺 伝 学 の 研 究 において 進 められている 主 なテーマは、 人 間 集 団 にかなり 一 般 的 であるかもしれない、あまり 強 く 表 われない 変 異 型 がん 遺 伝 子 の 相 互 作 用 と 潜 在 的 影 響 である。そのような 遺 伝 子 と 遺 伝 子 の 相 互 作 用 や 遺 伝 子 と 環 境 の 相 互 作 用 についての 知 識 は、 初 期段 階 でのものではあるけれども、 急 速 に 発 展 してきている。 動 物 の 遺 伝 的 データは、 放 射線 腫 瘍 形 成 に 関 する 限 られたデータを 含 めて、 機 能 的 多 型 性 をもつ 変 異 型 遺 伝 子 がどのようにがんリスクに 影 響 を 及 ぼすのかに 関 する 原 理 の 証 明 となる 証 拠 を 提 供 している。がんリスクに 関 連 する 機 能 的 遺 伝 子 多 型 はかなり 一 般 的 であるとすれば、 人 間 集 団 でみたときのリスクの 有 意 な 歪 みの 可 能 性 は、 問 題 となっている 遺 伝 子 の 臓 器 特 異 性 を 重 視 して 検 討 された。 予 備 的 結 論 は、 臓 器 にわたる 放 射 線 がんリスクに 関 連 する DNA 損 傷 応 答 遺伝 子 の 共 通 する 多 型 は、 放 射 線 応 答 における 主 な 個 人 間 の 差 異 の 最 大 の 原 因 と 考 えられるものであろうといことである。人 間 集 団 における 放 射 線 の 遺 伝 的 影 響 についての 評 価放 射 線 による 人 間 のがんの 誘 発 に 加 えて、 動 物 実 験 から 放 射 線 の 遺 伝 的 影 響 に 関 する 証拠 がある。 現 在 はすべての 種 類 の 遺 伝 的 疾 患 に 対 するリスクを 推 定 することが 可 能 である。特 別 な 注 目 に 値 する 進 展 には 次 の 事 項 がある。(a) 倍 加 線 量 を 計 算 するための 概 念 変 化 の 導入 (1990 年 の 自 然 発 生 および 誘 発 の 突 然 変 異 率 に 対 するマウスのデータの 使 用 から、 現 在は 自 然 発 生 的 突 然 変 異 率 に 関 する 人 間 のデータと 誘 発 された 突 然 変 異 率 に 関 するマウスのデータの 使 用 へ。 後 者 は 1972 年 の BEIR 報 告 で 使 われたやり 方 である)、(b) 突 然 変 異 要素 (すなわち、 突 然 変 異 率 の 単 位 相 対 的 増 加 当 たりの 疾 病 頻 度 の 相 対 的 増 加 )を 推 定 する方 法 の 精 緻 化 と、メンデル 性 ・ 慢 性 の 多 因 子 疾 患 の 発 生 率 に 対 する 誘 発 された 突 然 変 異 の影 響 力 を 評 価 するこれらの 方 法 を 通 じて 得 られた 推 計 値 の 使 用 、(c) マウスのデータから 推定 される 放 射 線 誘 発 突 然 変 異 の 比 率 と 人 間 の 放 射 線 誘 発 の 遺 伝 性 疾 患 の 予 測 リスクとのギャップを 架 橋 するリスク 方 程 式 における「 潜 在 的 復 元 可 能 性 補 正 要 因 」と 呼 ばれるさらなる 要 因 の 導 入 、(d) 多 重 システムの 発 達 異 常 は、 人 間 の 放 射 線 誘 発 の 遺 伝 子 損 傷 の 主 な 表 現型 のうちにありそうであるという 概 念 の 導 入 。この 報 告 書 で 提 示 されたリスクの 推 定 値 は、 上 記 の 進 展 すべてを 盛 り 込 んでいる。それは、 低 線 量 で 長 期 にわたる 低 LET 照 射 で、 人 口 における 遺 伝 的 疾 患 の 基 本 頻 度 に 比 べて、遺 伝 的 リスクはとても 小 さいということを 示 している。この 報 告 書 で 推 定 されたすべての 種 類 の 遺 伝 性 疾 患 のリスク 総 計 は、1Gy 当 たり 第 一 世代 子 孫 100 万 人 当 たり 約 3,000~4,700 件 である。この 数 値 は、100 万 人 当 たり 738,000 件(そのうち 慢 性 疾 患 が 主 な 要 素 で、すなわち 100 万 人 当 たり 65,000 件 )という 基 本 リスクの 約 0.4~0.6%である。BEIR V のリスク 推 計 値 ( 慢 性 疾 患 を 含 まない)は、1Gy 当 たり 第一 世 代 の 子 孫 100 万 人 当 たり 2400 未 満 ~5300 件 であった。その 数 値 は、100 万 あたり37,300~47,300 という 基 本 リスクの 約 5~14%であった。19


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.html疫 学 による 証 拠原 爆 生 存 者 の 研 究広 島 ・ 長 崎 における 原 爆 攻 撃 の 生 存 者 寿 命 調 査 (LSS)コホート( 集 団 )は、 電 離 放 射 線被 曝 による 健 康 リスク 評 価 、 特 にリスクの 量 的 評 価 において 主 要 な 情 報 源 として 役 立 っている。この 集 団 の 利 点 は、その 規 模 であり、2000 年 時 点 で 生 存 者 の 半 数 弱 が 生 存 していた。さらに 両 性 と 全 年 齢 を 含 み、 個 々の 被 験 者 に 対 して 評 価 されている 線 量 は 広 範 囲 にわたり、質 のよい 死 亡 率 およびがん 発 生 率 データを 含 んでいることである。さらに、このコホートが 受 けた 全 身 被 曝 は、 多 くの 特 定 部 位 のがんリスクを 評 価 する 機 会 、 部 位 に 特 異 的 なリスクの 比 較 可 能 性 を 評 価 する 機 会 を 提 供 している。 寿 命 調 査 (LSS)の 下 位 集 団 に 関 する 特 別研 究 は、 臨 床 データ、 生 物 学 的 な 測 定 、 潜 在 的 な 交 絡 または 修 飾 に 関 する 情 報 を 提 供 している。1950~1997 年 の 期 間 の 死 亡 率 データは 詳 細 に 評 価 されている。 広 島 ・ 長 崎 の 腫 瘍 登 録 のがん 発 生 データが 1990 年 代 に 初 めて 利 用 できるようになったことが 重 要 である。これらのデータは 非 致 死 的 がんを 含 むだけでなく、 死 亡 証 明 書 に 基 づく 情 報 よりも 高 い 質 の 診 断 情報 も 提 供 しており、 特 に、 部 位 に 特 異 的 ながんを 評 価 する 際 に 重 要 である。 現 在 利 用 できる 固 形 がんに 関 するより 広 範 囲 な 情 報 により、 放 射 線 リスク 評 価 に 関 連 するいくつかの 問題 をより 詳 細 に 評 価 することが 可 能 になっている。 線 量 - 応 答 の 形 態 を 評 価 する 分 析 および 比 較 的 低 線 量 (0.5 シーベルト 以 下 )をあびた 多 くの 生 存 者 に 焦 点 を 当 てる 分 析 は、 一 般的 に 固 形 がんリスクを 説 明 する 線 形 関 数 の 妥 当 性 を 確 証 している。 過 剰 相 対 リスクモデルおよび 過 剰 絶 対 リスクモデルは、 性 別 、 被 曝 年 齢 、 到 達 年 齢 による 修 飾 の 影 響 を 評 価 することに 利 用 されている。がん 以 外 の 健 康 のエンドポイントも、 寿 命 調 査 (LSS)コホートにおける 放 射 線 被 曝 と 関連 する。 特 に 留 意 すべき 点 は、 心 臓 病 、 発 作 、 消 化 器 官 ・ 呼 吸 器 官 ・ 造 血 器 官 の 疾 病 との統 計 的 に 有 意 な 関 係 性 によって、 新 生 物 でない 疾 病 による 死 亡 率 の 線 量 - 応 答 関 係 が 示 されていることである。しかし、 本 報 告 書 が 関 心 を 持 つ 低 線 量 における 非 がんリスクは、 特に 確 証 されていない。そのため、 当 委 員 会 は 新 生 物 が 原 因 でない 疾 病 の 線 量 - 応 答 をモデル 化 していないし、これらの 疾 病 のリスク 評 価 を 行 っていない。医 療 放 射 線 の 研 究公 表 された 医 療 被 曝 の 健 康 影 響 研 究 は、 量 的 リスク 評 価 情 報 を 提 供 する 研 究 がどれか 認定 するために 検 討 された。 特 に 焦 点 が 当 てられたのは、 放 射 線 量 と 関 係 する 白 血 病 、 肺 がん、 胸 部 がん、 甲 状 腺 がん、 胃 がんのリスク 評 価 であり、 他 の 被 曝 集 団 、 特 に 原 爆 生 存 者から 得 られた 評 価 との 比 較 であった。肺 がんについては、 急 性 あるいは 分 割 された 高 線 量 率 被 曝 研 究 におけるグレイ 当 たりの20


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.htmlの 死 亡 率 およびがん 発 生 率 を 考 察 している。最 も 有 益 な 研 究 は、( 旧 ソ 連 のマヤックの 労 働 者 を 含 む) 核 産 業 労 働 者 に 関 する 研 究 である。これらの 労 働 者 については、 個 々の 労 働 者 のその 時 その 時 の 線 量 評 価 が 個 人 線 量 計 の使 用 によって 長 期 にわたって 収 集 されている。100 万 人 以 上 の 労 働 者 が 1940 年 代 初 期 の 核産 業 に 当 初 から 雇 用 されている。しかし、 個 々の 労 働 者 のコホート 研 究 は、 低 線 量 被 曝 に対 する 潜 在 的 に 少 ないリスクを 正 確 に 評 価 する 能 力 に 限 界 がある。複 数 のコホートからのデータの 統 合 分 析 によって、このような 研 究 の 感 度 を 増 大 させる機 会 が 与 えられ、 長 期 の 低 線 量 、 低 LET 放 射 線 の 影 響 に 関 する 直 接 的 な 評 価 を 提 供 する。データに 対 する 最 も 総 括 的 で 正 確 な 評 価 は、イギリスの 全 英 放 射 線 作 業 者 登 録 (NRRW)から 得 られた 評 価 であり、 三 カ 国 (カナダ・イギリス・アメリカ 合 衆 国 )の 研 究 は、 白 血病 と 全 てのがんのリスク 評 価 を 提 供 している。これらの 研 究 において、 白 血 病 のリスク 評価 は、 原 爆 生 存 者 研 究 からの 線 形 外 挿 と 線 形 - 二 次 外 挿 から 得 られた 評 価 の 中 間 にある。全 てのがんに 関 する 評 価 は、より 小 さいが、 信 頼 区 間 は 広 く、リスクなしおよび 原 爆 生 存者 からの 線 形 外 挿 の 二 倍 までのリスクの 両 方 に 一 致 する。職 業 上 のリスク 評 価 には 不 確 実 性 が 存 在 し、 線 量 における 誤 差 がこれらの 研 究 では 正 式に 考 慮 されてこなかったという 事 実 から、 本 委 員 会 は 以 下 のように 結 論 を 下 した。つまり、職 業 に 関 する 研 究 によるリスク 評 価 は、 低 線 量 遷 延 被 曝 の 影 響 評 価 に 直 接 関 連 するが、 放射 線 リスク 評 価 に 関 して 単 独 で 基 礎 を 形 成 するほど 十 分 には 正 確 ではない。環 境 的 な 研 究核 施 設 周 辺 に 住 む 人 間 集 団 およびその 他 の 環 境 的 な 被 曝 集 団 に 関 する 研 究 には、 放 射 線線 量 に 関 する 個 々 人 の 評 価 も 含 まれていないので、 放 射 線 線 量 との 関 連 におけるリスクの直 接 的 な 量 的 評 価 を 提 供 していない。このことはこれらのデータの 解 釈 にとって 限 界 となっている。いくつかのコホート 研 究 は、 環 境 放 射 線 に 被 曝 した 人 間 における 健 康 影 響 を 報告 している。これらの 研 究 には 一 致 するか、あるいは 一 般 化 できる 情 報 は 含 まれていない。ヨウ 素 -131 への 環 境 被 曝 による 結 果 は 矛 盾 している。 最 も 有 益 な 調 査 結 果 はチェルノブイリ 事 故 後 における 個 々 人 の 放 射 線 被 曝 に 関 する 研 究 によるものである。 最 近 の 証 拠 ・ 調査 結 果 によれば、チェルノブイリによる 放 射 線 被 曝 は 甲 状 腺 がんリスクの 増 加 と 関 連 があり、その 関 係 は 線 量 依 存 である。 過 剰 甲 状 腺 がんリスクの 量 的 評 価 は、 一 般 的 にその 他 の放 射 線 被 曝 集 団 からの 評 価 と 一 致 し、 男 性 と 女 性 の 双 方 で 見 られる。ヨウ 素 欠 乏 はリスクの 重 要 な 修 飾 因 子 であるように 見 え、 放 射 線 被 曝 の 後 に 発 生 する 甲 状 腺 がんのリスクを 増大 させる。生 物 学 と 疫 学 との 結 合本 研 究 の 主 要 な 結 論 は 以 下 の 通 りである。22


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.htmlくリスク 評 価 をアメリカ 人 集 団 のリスク 評 価 のために 利 用 すること。本 委 員 会 は 本 文 において、 人 間 被 験 者 における 低 線 量 、 低 LET 放 射 線 被 曝 について 委 員会 として 可 能 なかぎり 最 良 のリスク 評 価 を 開 発 し、 提 供 している。 例 えば、 表 ES-1 は、アメリカ 人 集 団 全 体 の 年 齢 分 布 と 同 じ 年 齢 分 布 の 10 万 人 の 集 団 が、それぞれ 0.1 Gy に 被 曝した 結 果 生 じることが 予 想 される 発 がん 症 例 推 計 数 および 死 亡 推 計 数 、および 被 曝 しない場 合 に 予 想 される 数 を 示 している。 固 形 がんに 関 する 結 果 は、 線 形 モデルに 基 づいており、1.5 の DDREF だけ 減 少 させている。 白 血 病 に 関 する 結 果 は、 線 形 - 二 次 モデルに 基 づいている。推 計 数 には 95%の 主 観 的 な 信 頼 区 間 (つまり、 断 定 的 であると 同 時 に 無 作 為 的 )が 付 随している。この 信 頼 区 間 は、 最 も 重 要 な 不 確 実 性 の 原 因 、すなわち 統 計 的 な 変 動 、 低 線 量および 線 量 率 での 被 曝 によるリスク 評 価 を 調 整 するために 使 われる 係 数 における 不 確 実 性 、移 行 の 方 法 における 不 確 実 性 を 反 映 している。 本 委 員 会 は 報 告 書 の 本 文 において、いくつかの 特 定 のがん 部 位 各 々および 他 の 被 曝 シナリオに 対 する 推 計 例 も 提 供 しているが、それらはここには 示 されていない。表 ES-1 全 ての 固 形 がんおよび 白 血 病 に 関 する 発 生 率 および 死 亡 率 の 生 涯 寄 与 リスク(LAR)の 本 委 員 会 が 行 った 推 計 数 。95%の 主 観 的 な 信 頼 区 間 を 伴 う。10 万 人 の 被 爆 者 当たりの 症 例 数 および 死 亡 数 。全 ての 固 形 がん白 血 病男 性 女 性 男 性 女 性0.1 Gy の 被 曝 による 過 剰 の 症 800(400,1600) 1300(690, 2500) 100(30, 300) 70(20, 250)例 ( 非 致 命 的 症 例 を 含 む) 数被 曝 していない 場 合 の 症 例 数 45,500 36,900 830 5900.1 Gy の 被 曝 による 過 剰 の 死 410(200, 830) 610(300, 1200) 70(20, 220) 50(10, 190)亡 数被 曝 していない 場 合 の 死 亡 数 22,100 17,500 710 530一 般 的 に 全 がん 死 亡 率 あるいは 白 血 病 に 関 するリスク 評 価 の 大 きさは、BEIR V および 最近 の UNSCEAR、ICRP の 各 報 告 書 などの 過 去 の 報 告 書 で 報 告 された 評 価 と 大 幅 には 変 わっていない。 新 しいデータと 分 析 はサンプリングの 不 確 実 性 を 減 少 させているが、 低 線 量 ・線 量 率 での 被 曝 に 対 するリスク 評 価 に 関 する 不 確 実 性 および 日 本 人 原 爆 生 存 者 からアメリカ 人 集 団 へのリスクの 移 行 に 関 する 不 確 実 性 は 大 きいままである。 特 に、 部 位 特 異 的 ながんのリスク 評 価 における 不 確 実 性 は 大 きい。ひとつの 図 示 として、 図 ES-1 で 次 のことを 示 した。 線 量 に 対 する 固 形 がんの 過 剰 相 対 リスク(ERR) 評 価 ( 性 別 に 関 しては 平 均 をとり、30 歳 で 被 曝 し 60 歳 に 到 達 した 被 曝 した 個人 を 表 すように 標 準 化 )である。 原 爆 生 存 者 について 線 量 2.0 Sv. 以 下 で 11 の 線 量 区 間 をとった。 挿 入 された 図 は 白 血 病 に 関 して 線 量 に 対 する ERR を 表 す。この 図 は 寿 命 調 査 コホー24


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.htmlトによる 全 般 的 な 線 量 - 応 答 関 係 および 低 線 量 リスク 評 価 におけるその 関 係 の 役 割 を 伝 える。 低 線 量 域 における 線 形 モデルと 線 形 - 二 次 モデルとの 間 の 差 異 が、 誤 差 線 と 比 較 して小 さいことに 留 意 することは 重 要 である。そのため、これらのモデルの 間 での 差 異 は、これらのモデルから 導 きだされたリスク 評 価 における 不 確 実 性 に 比 較 して 小 さい。 固 形 がん発 症 率 に 関 しては、 線 形 - 二 次 モデルで 曲 線 を 引 いても 統 計 的 に 有 意 な 改 良 にはならなかった。そのため 線 形 モデルが 利 用 された。 白 血 病 に 関 しては、 線 形 - 二 次 モデル( 図 ES-1に 挿 入 )の 曲 線 が 線 形 モデルよりも 有 意 に 良 くデータに 合 うので 採 用 された。Excess Relative Risk of Solid Cancer Leukemia Radiation Dose(Sv)固 形 がんの 過 剰 相 対 リスク (for comparison) 放 射 線 量 (Sv)Low Dose Range 白 血 病 Linear fit 線 形 直 線低 線 量 域( 比 較 のため) Linear-quadratic fit 線 形 -2 次 曲 線図 ESS-1. 日 本 人 原 爆 生 存 者 の 固 形 がん 過 剰 相 対 リスク。プロットした 点 は、 原 爆 生 存 者の 固 形 がん 発 症 率 ( 性 別 に 関 しては 平 均 をとり、30 歳 で 被 曝 し 60 歳 に 到 達 した 被 曝 した個 人 を 表 すように 標 準 化 )の 過 剰 相 対 リスク 評 価 であり、10 線 量 区 間 の 各 線 量 で 線 量 区 間の 中 間 点 にプロットした。もし R(d)がある 線 量 dでの 年 齢 特 異 的 な 瞬 間 リスクを 示 すならば、 線 量 d での 過 剰 相 対 リスクは[R(d)-R(0)]/R(0)(これは 線 量 がゼロの 場 合 、 必 然 的 にゼロである)となる。 垂 直 線 は 近 似 値 95%の 信 頼 区 間 である。 実 線 および 点 線 は 過 剰 相 対 リスクの 線 形 および 線 形 - 二 次 モデル 評 価 であり、0 から 1.5Sv の 範 囲 における 線 量 での 全 ての 被 験 者 から 評 価 された(これらはプロットした 点 からの 評 価 ではなく、 個 々の 生 存 者 の25


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.html寿 命 と 線 量 から 評 価 される。これには 第 6 章 で 論 じられる 統 計 的 方 法 が 使 われている)。 線形 モデルは 線 形 - 二 次 モデルで 二 次 係 数 をゼロに 等 しいと 限 定 した 特 別 な 場 合 だから、 線形 - 二 次 モデルは 常 に 線 形 モデルよりもデータに 合 致 するはずである。しかし、 固 形 がん発 症 率 に 関 しては、 曲 線 の 二 次 の 項 による 統 計 的 に 有 意 な 改 良 はない。さらに、 関 心 のある 低 線 量 域 において、 線 形 モデル 評 価 と 線 形 - 二 次 モデル 評 価 との 間 の 差 異 は、95% 信 頼 区間 と 比 較 して 小 さいことも 留 意 しておくべきである。 挿 入 図 は、 白 血 病 に 関 する 線 形 - 二次 モデルの 曲 線 を 示 し、このがんで 観 察 されるより 大 きな 曲 がり 具 合 を 図 示 している。結 論本 委 員 会 は、 人 間 における 電 離 放 射 線 被 曝 とがんの 発 生 との 間 に 線 形 しきい 値 なし 線 量- 応 答 関 係 があるという 仮 説 に 現 在 の 科 学 的 証 拠 が 合 致 しているという 結 論 に 達 した。BEIR VII が 勧 告 する 研 究 の 必 要 性BEIR VII が 勧 告 する 研 究 ニーズについてのより 詳 しいリストは、 第 13 章 の 末 尾 にある。研 究 ニーズ 1. 低 線 量 電 離 放 射 線 の 作 用 としての DNA 損 傷 のさまざまな 分 子 マーカーのレベルの 決 定 。現 在 知 られている DNA 損 傷 の 分 子 マーカーと 将 来 認 められる 可 能 性 のある 他 のバイオ・マーカーは、 低 レベルの DNA 損 傷 を 計 測 するために、また DNA 分 子 の 損 傷 の 化 学 的性 質 や 修 復 特 性 を 識 別 するために 使 われるべきである。研 究 ニーズ 2. DNA 修 復 能 の 決 定 、とくに 低 線 量 での 二 本 鎖 ・ 多 重 鎖 の 切 断 に 関 して、また 修 復 能 が 線 量 と 無 関 係 かどうかについて。低 レベルの 損 傷 での 修 復 能 は、とくに 低 線 量 での 修 復 の 刺 激 に 対 する 相 反 する 証 拠 に 照らして、 調 査 される 必 要 がある。これらの 研 究 では、これらの 経 路 で 再 結 合 した DNA 配 列の 精 度 が 決 定 される 必 要 があり、 放 射 線 障 害 の 誤 りがちな 修 復 のメカニズムが 解 明 される必 要 がある。研 究 ニーズ 3. 放 射 線 による 発 がんに 対 する 適 応 、 低 線 量 高 感 受 性 、バイスタンダー 効 果 、ホルミシス、ゲノム 不 安 定 性 の 関 連 性 についての 評 価 。低 線 量 放 射 線 被 曝 ( 例 えば、100 mGy 未 満 )に 対 するこれらの 過 程 の 関 連 性 を 確 証 するためにメカニズムのデータが 必 要 とされる。 関 連 評 価 項 目 には、 染 色 体 異 常 や 染 色 体 突 然変 異 ばかりでなくゲノム 不 安 定 性 やがんの 誘 発 も 含 めるべきである。きわめて 低 い 線 量 率または 分 割 照 射 で 数 週 間 ないし 数 ヶ 月 間 以 上 の 低 線 量 の 照 射 に 対 するインビトロ( 試 験 管内 )のデータとインビボ( 生 体 内 )のデータが 必 要 とされる。 長 期 間 にわたって 複 数 回 、照 射 された 10 mGy 未 満 という 低 線 量 の 累 積 的 影 響 はさらに 追 究 される 必 要 がある。 人 間26


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.htmlの 非 形 質 転 換 2 倍 体 細 胞 を 使 ったインビトロの 形 質 転 換 試 験 (アッセイ)の 進 展 は、とくに 重 要 であると 判 断 される。研 究 ニーズ 4. 低 線 量 でのホルミシス 効 果 仮 説 に 対 する 分 子 機 構 の 同 定 。放 射 線 誘 発 がんに 対 してホルミシス 効 果 が 存 在 するかどうかをはっきりさせるために、分 子 機 構 を 同 定 する 決 定 的 な 実 験 が 必 要 とされる。研 究 ニーズ 5. 発 がん 機 序放 射 線 による 多 段 階 の 腫 瘍 形 成 における 放 射 線 固 有 の 役 割 に 関 する 現 時 点 での 不 確 実 性を 減 らすために、さらなる 細 胞 遺 伝 学 的 ・ 分 子 遺 伝 学 的 研 究 が 必 要 とされる。研 究 ニーズ 6. 放 射 線 によるがんのリスクにおける 遺 伝 的 要 因 。人 間 とマウスにおける 放 射 線 応 答 およびがんのリスクに 影 響 を 及 ぼす 遺 伝 子 突 然 変 異 と機 能 的 多 型 に 関 してさらなる 研 究 が 必 要 である。研 究 ニーズ 7. 放 射 線 の 遺 伝 的 影 響次 のことを 確 証 するためにさらなる 研 究 が 必 要 である。(a) マウスおよび 人 間 の 放 射 線 照射 された 幹 細 胞 の 精 原 細 胞 と 卵 母 細 胞 (リスク 評 価 で 重 要 な 生 殖 細 胞 段 階 )での 欠 損 の 発生 に 対 する DNA 二 本 鎖 切 断 (DSB) 修 復 プロセスの 潜 在 的 な 役 割 、および(b) マウスでの放 射 線 誘 発 の 大 きな 欠 損 が 複 数 系 の 発 達 の 欠 陥 と 関 連 する 程 度 。 人 間 では、とくに 放 射 線誘 発 の 欠 損 の 傾 向 があるかもしれない 部 位 を 予 測 するために、ゲノム・データベースと 放射 線 誘 発 欠 損 の 発 生 のメカニズムについての 知 識 を 使 ってその 問 題 を 調 査 することができる。疫 学 に 関 しては、 小 児 がんに 対 する 放 射 線 治 療 の 遺 伝 的 影 響 に 関 する 研 究 が、とくに 最新 の 分 子 技 術 ( 配 列 に 基 づく 比 較 ゲノム・ハイブリダイゼーションなど)とつなげられる場 合 、 進 められるべきである。研 究 ニーズ 8. 今 後 の 医 療 放 射 線 研 究 。医 療 放 射 線 についての 大 部 分 の 研 究 は、ネスト 化 された 対 照 研 究 ばかりでなくコホート研 究 を 含 む、 先 を 見 越 して 収 集 された 被 曝 情 報 に 依 るべきである。 今 後 の 研 究 は、 線 量 評価 における 不 確 実 性 の 評 価 だけでなく、 関 心 のある 部 位 への 個 々の 線 量 評 価 を 行 いながら続 けるべきである。高 線 量 および 中 程 度 の 線 量 の 医 療 被 曝 を 受 けた 人 間 集 団 の 研 究 は、 放 射 線 リスクの 修 飾因 子 の 研 究 にとってとくに 重 要 である。これらの 集 団 においては 高 レベルの 放 射 線 を 被 曝しているので、 遺 伝 子 と 放 射 線 の 相 互 作 用 の 影 響 を 研 究 するのに 理 想 的 に 適 してもいる。それは、 放 射 線 誘 発 がんにより 敏 感 な 特 別 の 部 分 集 団 になるかもしれない。とくに 重 要 な遺 伝 子 には、BRCA1、BRCA2、ATM、CHEK2、NBS1、XRCC1、XRCC3 などがある。放 射 線 防 護 にとって 懸 案 であるのは、CT スキャン(コンピュータ 断 層 撮 影 )と 診 断 用 X27


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.html線 の 利 用 が 増 大 していることである。 次 のような 被 曝 した 集 団 に 関 する 疫 学 的 研 究 は、 実行 可 能 ならば、とくに 有 益 であろう。(1) CT スキャンを 受 けた 人 、とくに 子 どもについての 追 跡 調 査 。(2) 心 臓 カテーテルに 関 連 した 診 断 上 の 被 曝 をうけた 乳 幼 児 、 臨 床 状 態 を 追 跡するために 頻 繁 な 被 曝 をうけた 乳 幼 児 、 繰 り 返 し X 線 を 照 射 され 肺 の 発 達 を 監 視 された 未熟 児 についての 研 究 。データ 収 集 と 追 跡 調 査 に 同 様 の 方 法 を 使 う 世 界 規 模 の 連 合 体 (コンソーシアム)を 組 織する 必 要 がある。この 連 合 体 は、CT、 陽 電 子 放 出 断 層 撮 影 (PET)、 単 光 子 放 射 断 層 撮 影(SPECT)を 含 むすべての X 線 や 同 位 体 イメージング 方 式 における 記 録 線 量 や 技 術 データを 記 録 すべきである。研 究 ニーズ 9. 今 後 の 職 業 放 射 線 研 究 。職 業 放 射 線 被 曝 について、 特 に 原 子 力 発 電 所 の 労 働 者 を 含 む 核 / 原 子 力 産 業 労 働 者 についての 研 究 は、 人 間 の 長 期 間 にわたる 低 レベル 放 射 線 被 曝 の 発 がん 効 果 ( 影 響 )についての 直 接 的 評 価 によく 適 している。 理 想 的 には、 職 業 放 射 線 の 研 究 は、 本 質 的 に 先 を 見 越 して 行 われるべきであり、 個 々のリアルタイムの 放 射 線 量 の 推 定 値 に 依 るべきである。 可 能であれば、 全 国 的 な 労 働 者 の 放 射 線 被 曝 の 登 録 が 定 められるべきであり、さらなる 放 射 線被 曝 が 累 積 され、 労 働 者 が 雇 用 主 ( 勤 め 先 )を 変 えれば 更 新 されるべきである。これらの登 録 は、 少 なくとも、 光 子 の 外 部 被 曝 からの 全 身 の 年 間 放 射 線 量 の 推 定 値 を 含 めるべきである。これらの 被 曝 登 録 は、 死 亡 登 録 や、 全 国 的 な 腫 瘍 ( 他 の 疾 病 ) 登 録 が 存 在 すればそれらと 結 びつけられるべきである。また、 比 較 的 高 線 量 に 被 曝 した 労 働 者 、つまりマヤック 核 施 設 の 労 働 者 やチェルノブイリの 汚 染 除 去 に 従 事 した 労 働 者 の 追 跡 調 査 を 続 けることも 重 要 である。研 究 ニーズ 10. 今 後 の 環 境 放 射 線 研 究 。一 般 に、 環 境 源 からの 低 レベル 放 射 線 に 被 曝 している 人 々のさらなる 生 態 学 的 研 究 は 薦められない。しかし、ある 地 域 で 災 害 があり、その 住 民 が 非 常 に 高 レベルの 放 射 線 に 被 曝したなら、さらなる 被 曝 の 防 止 のためだけでなく、その 被 曝 の 潜 在 的 な 影 響 についての 科学 的 評 価 の 確 立 のためにも 迅 速 な 反 応 が 重 要 である。 集 められるデータには、 基 本 的 な 人口 統 計 的 情 報 、 急 性 被 曝 や 引 き 続 き 見 込 まれる 被 曝 の 推 定 値 、 電 離 放 射 線 の 性 質 、これらの 人 々を 何 年 間 にもわたって 追 跡 する 手 段 などが 含 まれるべきである。 比 較 可 能 な、 被 曝しなかった 人 々の 登 録 の 可 能 性 が 考 慮 されるべきである。チェルノブイリ 原 発 事 故 の 結 果として、また、マヤックの 核 施 設 からの 放 出 の 結 果 として、 環 境 的 に 被 曝 した 人 々の 研 究は 継 続 すべきである。研 究 ニーズ 11. 日 本 の 原 爆 生 存 者 ( 被 爆 者 ) 研 究 。日 本 の 被 爆 生 存 者 の 寿 命 調 査 (LLS)コホートは、BEIR VII および 過 去 のリスク・アセスメントで 中 心 的 な 役 割 を 果 たしてきた。 重 要 なのは、2000 年 末 に 生 存 しているコホートの 45%に 対 して 死 亡 率 とがん 罹 患 率 の 追 跡 調 査 が 続 いていることである。28


Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII – Phase 2http://books.nap.edu/catalog/11340.html近 い 将 来 、DS02 線 量 測 定 体 系 の 不 確 実 性 の 評 価 が 利 用 可 能 になると 期 待 される。したがって、この 評 価 を 利 用 する 線 量 - 応 答 分 析 は、 線 量 測 定 の 不 確 実 性 を 説 明 するように 行 なわれるべきである。また、 部 位 特 異 的 な 推 定 値 についてのより 信 頼 性 のある 評 価 を 可 能 にする 分 析 的 方 法 の開 発 と 適 用 も 必 要 である。 特 に、 特 定 の 部 位 に 関 するデータとより 広 いがんの 種 類 についてのデータとの 両 方 を 利 用 する 方 法 は 有 益 であろう。研 究 ニーズ 12. 疫 学 的 研 究 一 般被 爆 生 存 者 の 寿 命 調 査 コホートからのデータは、 低 線 量 / 線 量 率 に 被 曝 した 人 々、とくにリスクが 妥 当 な 精 度 で 推 計 可 能 なほど 大 きな 線 量 を 浴 びた 人 々に 関 するデータで 補 完 されるべきである。 核 産 業 労 働 者 の 研 究 や 旧 ソ 連 に 属 していた 諸 国 で 被 曝 した 人 々に 関 する注 意 深 い 研 究 は、この 点 でとくに 重 要 である。29

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!