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身体心理療法における間接的身心技法の構造 - 札幌学院大学

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臨 床 心 理 学 研 究 50 - 2いるという 身 体 接 触 そのものがマスローの「 所属 と 愛 の 欲 求 belongingness and love need」と 呼 ばれる 心 の 通 い 合 う 暖 かい 関 係 によって 担われることによって、フロイドが 理 想 としたであろう 無 意 識 が 活 発 化 した 状 態 での 自 由 連 想 的な 語 りが 自 然 に 発 生 することにもなる。これまでの 経 験 では、 様 々な 声 がけの 工 夫 や 働 きかけなどによってその 場 が 安 全 で 安 心 であるときは身 心 が 安 らぎ、 様 々な「はからい」も 一 時 的 に棚 上 げ 状 態 になる。そうした 状 態 は 森 田 療 法 の絶 対 臥 褥 期 にはほど 遠 いにしても、それに 連 なるような 身 心 症 状 の 緩 和 が 得 られていると 考 えられる。なお、 無 意 識 が 活 性 化 した 身 心 状 態 がしばしば「 退 行 regression」と 呼 ばれることがあるが、 上 に 述 べたリラクセイションの 状 態 には 自 己 防 衛 の 要 素 はなく「 心 の 通 い 合 う 暖 かい関 係 」が 基 本 となっているため、 心 理 的 防 衛 機制 (defense mechanism) という 意 味 での「 退行 」という 用 語 は 避 けるべきであり、ただ「まどろみ」とか「 安 らぎ」などと 呼 ぶ 方 がふさわしい。ところで、マスローの 安 全 欲 求 には、 場 面 についての「 予 測 可 能 性 predictability」と「 制御 可 能 性 controllability」とが 必 要 とされている。つまり、 自 分 に 次 に 何 が 起 きるかがある 程度 予 測 できること、また、 状 況 がどのように 推移 するかを 自 分 の 意 志 に 従 ってある 程 度 制 御 できることによって、 安 全 で 安 心 な 場 とは、その場 が 指 導 者 などによって 専 横 されない 自 己 決 定的 な 場 として 選 択 の 余 地 があること、さらにそうした 状 態 が 保 証 されるためには 何 らかの 権 限分 与 が 行 われているという 状 況 である。そのため、セッションの 場 は D. マクレガー (DouglasMcRegor,1906-1964) 15) が 説 いた「Y 理 論 的リーダーシップ」による 組 織 管 理 形 態 ないし 関係 性 、すなわち、マスローの 五 段 階 動 機 説 の 上位 の 動 機 群 「 所 属 と 愛 への 欲 求 、 自 尊 欲 求 、 自己 実 現 欲 求 」への 働 きかけを 前 提 としてセッションが 営 まれることが 要 請 される。このため、こうした 身 体 心 理 的 アプローチを 行 う 場 合 は、自 らのあり 方 から 権 威 性 を 取 り 去 り 専 制 的 だったり 搾 取 的 な 要 素 をどのようにして 無 化 するかというセラピーを 行 う 側 の 課 題 と 資 質 が 極 めて重 要 となる。これに 関 しては、 心 理 カウンセリングの 基 礎 を 作 りあげたカール ・ ロジャーズ(1902-1987) 16) が 示 したしたクライエントへの「 共 感 的 理 解 empathic understanding」と「 無 条 件 の 肯 定 的 顧 慮 unconditional positiveregard」、そして 自 らのあり 方 についての「 自己 一 致 congruence」という 基 本 的 態 度 が 必 須であることを 指 摘 しておきたい。なお、 身 体 心理 療 法 では 身 心 技 法 に 関 する 枠 組 みをクライエントに 了 解 してもらう 必 要 があるため、 必 ずしもロジャーが 示 した 非 指 示 的 アプローチ (nondirectiveapproach) とはならず、 少 なくともセッションの 場 面 構 成 については 指 示 的 となる。ダンスムーブメント ・ セラピーにおける副 次 的 覚 知リラクセイションへの 誘 導 のみならず、 動 きを 取 り 入 れたダンスムーブメント ・ セラピーの際 にも 暗 黙 知 構 造 による 意 識 ・ 無 意 識 の 対 比 状態 を 用 いることがある。 例 えば、 人 がそばにいると 不 安 に 感 じたり、あるいは 触 れたり 触 れられたりすることに 不 安 や 抵 抗 がある 場 合 などでは、ダンスセラピーという 呼 び 名 そのものが 作り 出 す「ダンスだから 相 手 と 関 わり、 場 合 によっては 相 手 に 触 れたり 手 をつないだりすることがある」といった 予 見 や 理 解 を 利 用 することで、必 要 に 応 じて 触 れたり 触 れられたりが 起 きるという 相 互 理 解 が 重 要 となる。これは、ダンスセラピーという 場 面 における 役 割 取 得 といったささやかな 社 会 的 圧 力 を 利 用 しているけれども、そうした 暗 黙 の 社 会 的 要 請 は 場 面 の 基 礎 構 造 を位 置 づけるものに 留 まる。そうした 共 通 理 解 に両 者 が 歩 み 寄 ることによって、 身 体 心 理 療 法 としてのダンスセラピーのプロセスが 初 めて 可 能− 10 −

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