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身体心理療法における間接的身心技法の構造 - 札幌学院大学

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臨 床 心 理 学 研 究 50 - 2能 が 取 り 上 げられる。 関 連 する 心 理 学 研 究 はおおよそ 次 の 三 つのテーマ、1) 選 択 的 注 意 、2)処 理 容 量 または 心 的 資 源 、3) 持 続 的 注 意 ( ビジランス vigilance)、である。 選 択 的 注 意 とは「カクテル ・ パーティ 現 象 」の 例 のように、 大勢 が 話 している 中 から 特 定 の 人 の 声 を 選 択 して聞 き 取 る 能 力 など、 意 識 の 志 向 性 と 選 択 性 に 関わる 機 能 である。また、 人 は 一 度 に 多 くのことに 注 意 を 集 中 することができず 注 意 という 資 源の 容 量 や 分 配 には 限 界 があること、また、レーダー 画 面 を 長 時 間 注 視 し 続 けるといった 持 続 的注 意 能 力 ( ビジランス ) にも 限 界 があることは産 業 心 理 学 などのテーマとなっている。なお、H.S. サリヴァン (Harry Stack Sullivan, 1892-1949) 13) は、 統 合 失 調 症 者 の 傾 向 として「 選択 的 不 注 意 selective inattention」という 傾 向があることを 指 摘 しているように、 注 意 が 固 着することや 注 意 が 向 かないことは 精 神 疾 患 などの 要 素 として 重 要 であり、 学 習 障 害 や 発 達障 害 が 注 意 という 資 源 に 関 わる (ADHD: 注 意欠 陥 多 動 障 害 attention deficit hyperactivitydisorder) 問 題 を 含 むことが 知 られている。このように 注 意 という 事 柄 が 心 理 学 の 研 究 対象 になってきているが、 非 注 意 ないし 無 注 意 とでも 呼 ぶべき 事 柄 を 明 確 に 理 解 に 組 み 込 んだポラニーの 暗 黙 知 は、 注 意 vs 無 注 意 の 対 比 を 身体 心 理 的 アプローチにおいて 扱 う 基 盤 を 提 供 している。 焦 点 的 覚 知 と 副 次 的 覚 知 、この 両 者 から 構 成 される 暗 黙 知 構 造 とは、 注 意 に 関 する 直接 性 と 間 接 性 の 対 比 を 心 理 学 的 に 把 握 したものといえる。 以 下 では、こうした 概 念 を 用 いて 実際 の 身 体 心 理 的 アプローチならびに 身 体 心 理 療法 における 技 法 との 関 係 について 述 べる。筆 者 は 1999 年 から 精 神 科 デイケアにて「リラクセイション」 及 び「ダンスセラピー」のプログラムを 担 当 して 今 日 に 至 っている。 現 在では、ダンスセラピー ( 正 確 にはダンスムーブメント ・ セラピー dance/movement therapy、D/MT と 略 記 ) とリラクセイションとを 組 み 合わせて、 精 神 科 ディケアの 来 所 者 に 対 して 身 体心 理 療 法 的 アプローチを 導 入 している。しかし、外 から 眺 めるだけでは 単 にダンスをしていたり遊 んでいるようにしか 見 えないらしく、ダンスセラピーの 構 造 と 方 略 を 認 識 できないようである。その 理 由 の 一 つが、プログラムのエクササイズを 進 める 際 に、 外 から 眺 めているだけでは把 握 されず 体 験 している 本 人 にも 容 易 に 自 覚 されない、 意 識 化 と 無 意 識 化 に 関 わる 暗 黙 知 構 造を 取 り 入 れていることにある。リラクセイションにおける 副 次 的 覚 知たとえばリラクセイションをテーマとしている 場 合 、 参 加 者 に 横 たわって ( 仰 臥 位 ) もらい、その 片 腕 を 持 ち 上 げて 揺 らしたり、あるいは足 を 少 し 持 ち 上 げて 揺 らしたりする ( 野 口 体 操の「ねにょろ」なども 含 む ) 簡 単 な 技 法 がある。精 神 科 ディケアでは 参 加 者 の 中 には 警 戒 していたりあるいは 対 人 恐 怖 的 だったり、 腕 や 脚 の 緊張 がとれないままのことが 多 いため、いくつかの 手 順 を 経 て 腕 や 脚 のリラクセイションの 実 現を 試 みている。ところで、そうした 際 の 最 悪 の言 葉 掛 けが「もっと 力 を 抜 いて 下 さい」という台 詞 であることは、 精 神 交 互 作 用 による 筋 緊 張の 悪 循 環 作 用 が 働 き 出 すのですぐに 分 かる。こうした 誤 った 言 葉 掛 けは 身 体 心 理 療 法 の 基 本 について 無 知 であることを 露 呈 するだけではなく、 全 くの 逆 効 果 でしかないことはすでに 示 した 通 りである。したがって、リラクセイションのプログラムではたとえば 次 のような「 間 接 的 」な 方 法 を 用 いることになる。たとえば、 腕 の 脱 力 のために 行 われるレッスンでは、 相 手 の 腕 を 揺 らすために 相 手 の 手 首 をつかむ。その 場 合 、 持 つ 方 も 持 たれる 方 も 両 者の 焦 点 的 覚 知 はつかまれている 手 首 に 向 かっている。すると、 意 識 された 手 首 のあたりには、精 神 交 互 作 用 によって 筋 緊 張 が 誘 導 されるのが自 然 な 展 開 となる。そのため、ディケア 参 加 者の 腕 をそのまま 揺 らし 始 めるのでは、 手 首 や 腕− 8 −

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