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身体心理療法における間接的身心技法の構造 - 札幌学院大学

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身 体 心 理 療 法 における 間 接 的 身 心 技 法 の 構 造や 肩 などにかえって 緊 張 が 走 る。そのため、 筆者 が 暗 黙 裏 に 試 みるのは 相 手 の 手 首 をもって 相手 の 手 首 を 揺 らすことではなく、とりあえずは意 識 されていない ( 副 次 的 覚 知 状 態 にある ) 相手 の 肘 や 肩 などを、 手 首 の 動 きを 通 じて 間 接 的に 揺 らしたり 働 きかけることにある。そのためには 微 細 な 振 動 を 与 えることや、 仰 臥 位 などの場 合 は 掴 んでいる 腕 の 肘 を 床 に 降 ろすなどの 細かな 技 術 的 な 側 面 があるがここでは 省 略 する。初 学 者 にも 簡 単 にできる「 足 のゆらし」( 余計 な 緊 張 反 応 を 避 けるため 主 に 同 性 同 士 で 行う ) では、 焦 点 的 覚 知 と 副 次 的 覚 知 の 対 比 が 分かりやすいので 以 下 に 例 示 する。 仰 向 けに 横 たわっている 相 手 の 片 足 を 少 し 持 ち 上 げて、その足 の 下 に 胡 座 や 正 座 している 自 分 の 膝 を 滑 り 込ませる。そして、 相 手 のアキレス 腱 からふくらはぎの 部 分 を 自 分 の 膝 上 から 太 股 の 部 分 に 載 せる。 相 手 の 足 首 を 上 から 軽 くつかんで 左 右 に 揺らす…。 多 くの 場 合 、 相 手 は 掴 まれている 足 首部 分 を 意 識 ( 焦 点 的 覚 知 ) して、しばしば 足 全体 に 緊 張 が 生 まれて 固 くなったりあるいはこちらの 揺 らす 動 きに 同 調 して 手 伝 う 動 きが 起 こる。これは、「 腕 のぶら 下 げ」 課 題 で 起 きた 反応 とほとんど 同 様 な 社 会 的 な 緊 張 反 応 である。そうした 状 態 で 揺 らしていても、こちら 側 の 焦点 的 覚 知 が 相 手 にも 伝 わり 緊 張 状 態 は 必 ずしも改 善 されない。そこで、 相 手 に 最 近 のことなどについて 話 をさせ 始 めつつ、 相 手 の 足 首 が 載 っている 自 身 の 膝 ・ 太 股 を 少 しずつ 揺 らし 始 め、相 手 の 足 首 を 掴 んでいるこちらの 手 の 動 きを 静めていき 相 手 の 足 の 揺 れと 同 調 させていく。 最終 的 には 焦 点 的 覚 知 が 不 可 能 なほど 相 手 の 足 の揺 れとこちらの 手 を 一 体 化 させていく。こうした 展 開 を 穏 やかに 進 めていると、 多 くの 場 合 、 相 手 の 身 心 が 緩 み、 状 況 によってはふと 寝 入 っていくほど 安 らぐことがある。その 一つの 理 由 が、 最 初 は 相 手 の 足 を 揺 らしているために 向 けられていた 相 手 の 焦 点 的 覚 知 が 徐 々に緩 んでいくことにある。それとともに、こちら側 の 膝 の 揺 れによって 相 手 の 足 と 下 半 身 、そして 全 身 が 穏 やかに 揺 らぎ 始 めていく 推 移 は 相 手にはおおむね 副 次 的 覚 知 のままとなる。そのため「 他 人 によって 揺 らされている」というさせられ 感 とそれへの 抵 抗 が 起 こりづらく、 自 らの身 体 が 自 然 に 安 らいでいく 感 覚 として 受 け 止 められるためである。なお、こうしたプロセスについて 相 手 に 説 明 することはないこと、および、この 方 法 は 自 我 境 界 が 緩 い 統 合 失 調 症 者 などには 用 いないこととを 明 記 しておく。リラクセイションとはお 題 目 を 唱 えることではなく、 実 際に 身 心 が 弛 緩 して 安 らいだ 状 態 に 在 るという 事実 に 至 ることだが、こうした 手 技 的 な 関 わりにおいては 暗 黙 知 構 造 に 基 づくアプローチが 極 めて 有 効 であることを 確 認 してきている。ただし、こうした 身 心 技 法 の 詳 細 を 傍 から 見 て 見 抜 くことは 難 しく、 一 定 の 訓 練 が 必 要 なことは 言 うまでもない。筆 者 の 身 体 心 理 的 アプローチでは、ダンスムーブメント ・ セラピーで 用 いられるダンスや様 々な 動 きなど 運 動 強 度 のやや 強 めのレッスンを 体 験 してもらってから、その 次 の 段 階 でこうした「リラクセイション」レッスンへと 進 むことが 多 い。すると、 対 人 緊 張 が 強 く 精 神 安 定 剤や 睡 眠 導 入 剤 を 必 要 としていたりあるいは 人 前に 出 たり 人 前 で 横 になることに 強 い 不 安 と 緊 張を 示 す 人 が、 横 たわった 他 のメンバー 達 の 中 でふいに 眠 りに 落 ちることがある。リラクセイションに 限 らず、 焦 点 的 覚 知 と 副 次 的 覚 知 を 切り 替 えたり 推 移 させることによって、 意 識 と 無意 識 のあり 方 そのものへと 影 響 を 与 え、 半 睡 眠を 含 む 穏 やかな 変 性 意 識 状 態 へと 誘 うことが 可能 となる。なお、こうした 意 識 の 切 り 替 えはどちらかと 言 えば 後 にふれるエリクソン 催 眠 における 誘 導 の 基 本 ともされている。また、 特 に 眠 りに 陥 ることがなくても、こうした 状 態 では A. マスロー14) が 唱 えた 五 段 階動 機 説 の「 安 全 欲 求 safety need」がほぼ 充 足されていること、また、 相 手 に 足 や 腕 を 委 ねて− 9 −

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