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北ドイツの旅へ(1)まずは準備から

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北 ドイツの 旅 へ(1)まずは 準 備 からせっ かく だか らドイ ツ 語 圏 へ 行 こ う! 去 年 はス イスにみん なで 行 く とい うので この コーナー もス イス 特 集 を 組 ん だが、 今 年 は 北 ドイ ツへ 行 こう。北 ド イツ はど こに 位 置 す るか。 州 単 位 で ドイ ツを 区 分 す るな らば 、 北 ドイ ツに 属 する のはシュ レス ヴィ ヒ・ホ ルシ ュタイン 州 、メ クレ ンブ ルク・フォ アポ ンメ ルン 州 、ニ ーダ ーザクセ ン 州 、ハ ンブル ク 都 市 州 、ブ レーメ ン 都 市 州 、そしてベ ルリ ン 州 だろ う。ベ ルリ ンを 囲 む ブラ ンデ ンブル ク 州 はドイツ 東 部 つ まり 旧 東 ドイツに 入 る。 メク レン ブルク ・フ ォアポン メル ン 州 もかつ て 東 ドイツに 属 した が、 地 理 的 関 係 で 北 ドイ ツに 含 ま れる。 ドイ ツ東 部 は 、ブ ラン デンブ ルク 州 の ほか に、ザ クセ ン 州 、ザクセン ・ア ンハ ルト 州 、チ ュー リンゲン 州 が 東 部 ドイツ 入 る が、チュ ーリン ゲン は 中 部 ドイツか もし れな い。 南 ドイ ツは バイエル ン 州 とバ ーデン ・ヴ ュルテン ベルク 州 で 、ど ちらも 面 積 が 広 い。 西 南 ドイツ はノ ルトライ ン・ ヴェ ストフ ァー レン 州 、 ライン ラン ト・ プファルツ 州 、 ザー ルラ ント 州 が 入 る。ドイツ 中 部 にあ るヘッ セン 州 は どこ に 属 す のだ ろう か。これ を 放 送 局 で 考 え ると わかりや すい( ドイ ツに 住 んでいれ ば) 。と いう のも、 北 ド イツには ハン ブル クに 本 部 を 置 く 北 ド イツ 放 送 (NDR, Norddeutscher Rundfunk)があり、 西 南 ドイツに はマ イン ツなど 3 都 市 に 本 部 を 置 く 西 南 放 送 協 会 (Südwestrundfunk, SWR)と ケル ンに本 部 を 置 く 西 ド イツ 放 送 協 会 (Westdeutscher Rundfunk, WR)が あ る。ド イツ 東 部 はどうして も旧 東 ド イツ を 連 想 する から か、ドイ ツ 東 部 とか 東 ド イツという 言 い 方 は いま はあま りし ない。ザ クセ ン 州 のライ プツ ィヒに 本 部 を 置 く 中 部 ド イツ 放 送 協 会 (Mitteldeutscher Rundfunk,MDR)が ド イツ 東 部 を カバ ーしている 。 南 ドイツを 代 表 す るの はミュ ンヒ ェン に 本 部 を 置くバイ エル ン 放 送 協 会 (Bayerischer Rundfunk, BR) だ 。さて 、 話 が 若 干 それ たが 、という わけで 、 今 回 旅 をするのは シュ レス ヴィ ヒ・ホ ルシ ュタイン 州 、 メク レンブ ルク ・フォア ポンメ ルン 州 、 ハンブルク 州 、 ニー ダー ザクセ ン 州 、ブレー メン 州 、 ベルリ ン 州 というこ とにな る。 日 本 から 行 くと なる と、 北 ド イツの 玄 関 になるの はハ ンブ ルク 空 港 と ベルリン のテー ゲル 空 港 だろう。た だし 、 現 在 成 田 や 関 空 発 のベルリ ン 直 行 便 はない から 、ベルリ ンかハ ンブ ルク に 日 本 から 飛 行 機 で 行 く にはフ ラン クフルト ・ア ム・ マイン かミ ュンヒェ ンで 乗 り 換 える ことになる 。も っと も、 それは ドイ ツの 航 空 会 社 ルフ トハン ザや それと 提 携 して いる 全 日 空 ( 全 日 空 で 切 符 を 買 っ てもル フト ハンザで 切 符 を 買 っても 乗 る 飛 行 機 は 同 じ。 これ を 共 同 運 行 とい う) 、な らび に 日 本 航 空 での 話 。 これ らは ジャン ボ 機 ( 最 近 評 判 が 悪 いの でエ アバスとい う) なの で、 大 勢 乗 れる から 比 較 的 座 席 を 確 保 し やす いが、そ の 反 面 、エ コノ ミーの 場 合 は 座 席 が 横 に 3+4 +3 で特 に 窓 ぎわ に 座 るとト イレ に 行 きづ らいと か、 乗 る のに 時 間 が かか ると か、 トイレ が 少 ないとか 、 乗 員 が 足 りな いの で 食 事 が なかな か 来 ない などなど、 一 般 乗 客 にと って 良 いこ とはほと んど ない 。なの で、 私 は ドイ ツに 行 くと して もスイス 航 空 や スカ ンジ ナヴィ ア 航 空などの 中 型 機 に 乗 るこ とに している 。これ らは 機 内 サービスも 良 い し、 座 席 は 横 に 2+ 4+2な ので 窓 ぎ わでも トイ レに 出 や すい。 かつ ては フィンラン ド 航 空 に よく 乗 った が、 機内 サー ビス があ まり 良 くな いし 安 い ので 座 席 が 取 り にくくてい まは 使 っ てい ない。 トイ レのこと を 言 うの は、な んと 言 っ ても 飛 行 時 間 が 12 時 間 ぐら いなので、 その 間 全 然 トイレに 行 か ない とか なりつ らい からだ。 ( 今 年 3 月 に 久 しぶりにル フト ハン ザに 乗 って 窓 ぎ わに 座 っ た。 12 時 間 トイレを 我 慢 し た。 隣 の 人 にどいて もらって 通 し てもら えば 良 い が、実 際 に は 寝 てい たりし て2 人 飛 び 越 すのは かな り 難 しい。)そ れな ら 通 路 側 に 座 れ ば 良 いではな いか と 言 うかも しれ ないが、 その 場 合 は 確 か に 自 由 にト イレ に 行 ける が、 今 度 は 奥の 人 が トイ レに 行 きた いと 言 っ てお ちおち 寝 て いら れないとい う 不 便 が ある 。など と 言 って いるう ちに 、またま た 話 が それ たが 、 話 を もと に 戻 して もも うスペ ース が- 1 -


ないの で 今 日 は これで 終 わ り。(フラ ンクフル ト 国 際 空 港 からチュ ーリン ゲン 州の 州 都 エアフル トへ 行 く 時 に 乗 った 小 型 プ ロペラ機 。 乗 客 は 2 組 だけだった 。)北 ドイツの 旅 へ(2) 準 備 は 念 入 りに、 現 地 では 気 ままに旅 の 楽 し みは 、 未 知 の 世 界 と の 出 会 い。 行 っ てみ なければわ から ない 。 百 聞 は 一 見 に しかず。 野 へ 山 へ 、 町 へ 、ド イツ・ス イス・ オー スト リアへ!でも 、 私 と 君 が 一 緒 にた とえば 多 摩 川 の 河 原 を 歩 いても、 目 に 耳 に 入 って くる 自 然 の 情報 量 は たぶ んま ったく と 言 ってよい ほど 異 なる と 思 う。という のは 、 私 が 多 摩 川 を 歩 き 初めて 55 年 、さらに 多 摩 川 で 自 然 保 護 運 動 を 始 めて 40 年 になるの で、 何 も 持 た ずにた だ 河原 をぶ らぶ らと 歩 くだ けで 自 然 のほ うから 目 や 耳 に 情 報 ( 鳥 の 囀 り や 虫 の 声 、さま ざま や野 草 ) が 飛 び 込 んでく るか らだ。も ちろん 、そ の 結 果 逆 に 新 鮮 味 が 若 干 薄 れ 、さら に 先 入観 に 囚 われ ると いうこ とも ある。この 例 え 話 で 何 が 言 いた いかとい うと、 未 知 の 世 界 に 旅 に 出 ると して も、 ある 程 度 の 知識 があ るの とな いのと では 、 楽 しみ の 深 さ が 異 なる だろうとい うこ と。 たと えばヴ ュル テンベル クの 宮 殿 に 行 っ てた だ 外 見 や 天 井 絵 を 見 るだ けでもそれ なり の 感 動 が あるが 、こ の宮 殿 の 丸 天 井 が 、ノイ マン という 建 築 家 が 従 来 あり 得 ないと 言 われ た 特 殊 な 方 法 で 設 計 し、世 間 か らさ んざ ん 馬 鹿 にさ れ 非 難 さ れたに もか かわ らず、 第 二 次 世 界 大 戦 時 の 爆 撃 で 宮 殿が 破 壊 され た 時 唯 一 こ の 丸 天 井 だけ が 残 っ た( その ためこれは ユネ スコ 世 界 遺 産 に 登 録 された) とい うこ とを 知 って いれば、 これを 見 る 目 が 違 ってくる だろ う。 ある いは、 ウィ ーンの 中 心 に ある シュテ ファ ン 寺 院 に 入 って 左 中 ほど の 翼 に ある イエ ス 像 があ るが、 この イエスは 、 十 字 架 に 掛 け られ ガックリ と 悲 し そう な 顔 をしている ので はな くて 、 歯 が 痛 く て苦 しん でい るの だ。そ のこ とを 知 ら なけれ ばお そら くこのイエ ス 像 は 見 逃 し ただろ う。かつ て 海 外 旅 行 に 出 る 際 、 有 名 な 観 光 地 につ いて はガイドブ ック にた くさ ん 記 事 があ ったが、 私 が よく 行 くキ ール (Kiel)と いう 町 の 地 図 は 日 本 では まっ たく 手 に 入 らな かった。シュレ スヴ ィヒ ・ホル シュ タイン 州 の 州 都 であ るに もかかわら ず、 日 本 人 観 光 客 は まず 誰も 来 な いか らだ 。ドイ ツ 最 大 の 軍 港 だった ため に 第 二 次 世 界 戦 争 の 空 襲 で 連 合 軍 に 徹 底 的に 破 壊 され 、 昔 の 町 の 面 影 がゼロに なった から 、 観 光 的 に は 見 ても おも しろ くない から だ。唯 一 、 フラ ンス のミシ ュラ ン 社 が 出 してい るガ イド ブックに、 駅 か ら 続 く 商 店 街 が わず かに 載 っ てい ただ けだっ た。 いまはイ ンター ネッ トで ドイツやス イス その 他 ど んな 小 さな 町や 村 で も 検 索 で きて、 もち ろん 地 図 も 入 手 でき るか ら、 便 利 に なっ たも のだ 。車 を 運 転 しな い 私 は 、ド イツでも スイス でも すべ て 鉄 道 と 徒 歩 と 乗 合 バス で 移 動 する 。赤 い 表 紙 の トー マス・ クッ クの 時 刻 表 が 唯 一 の 頼 り で、 必 要 な ペー ジだ けコ ピーし て 持 参する。 とこ ろが 現 地 で はこ れに 載 っ ていな いロ ーカ ル 線 や 各 駅 停 車 の 列 車 も たくさ ん 走 っていて 、 事 前 準 備 はあ まり 役 立 たな かった 。し かし これもいま はイ ンタ ーネ ットで すべ てわかる 。す べて の 列 車 の 駅 毎 の 発 着 時 刻 や 乗 り 継 ぎ 経 路 、 値 段 まで わか る。 地 方 の バス 時刻 もわ かる 。 着 いたら その 日 は バス が 一 台 も 発 車 し ないことが わか った 、な どとい うこ と- 2 -


はいま はも うな い。し かし その 分 、 行 って みな けれ ばわからな いと いう 旅 の 楽 しみ が 若 干減 った 。で も、 自 宅 に 居 な がらドイ ツやオ ース トリ アを 旅 して いる 気 分 に 浸 れるの も 悪 くない。最 後 に 一 言 。 事 前 に 徹 底 的 に 調 べ てあれ ば、 現 地 で 困 っ たと きに 助 か る。 だから 逆 に 、現 地 で はす べて 偶 然 に 任 せ る、とい う 旅 が 楽 し い。 計 画 書 を 塗 りつ ぶす だけ の 旅 な らば 、高 いお 金 を 払 っ てはる ばる 行 か なく ても、 自 宅 でバ ーチャルで 済 む 。北 ドイツの 旅 へ(3) 空 港 へ・ 空 港 から成 田 は 遠 い。 とくに わが 家 の ある 八 王 子 から は。 国 際 線 に 乗 る 場 合 は たい てい 搭 乗 時 刻の2 時 間 前 にチ ェック イン すべしと いうこ とに なっ ているから 、 午 前 10 時 30 分 離 陸 の 便だと 午 前 8 時 に は 空 港 に 着 きたい。 とする と 自 宅 を 午 前 5 時 頃 に 出 なけ れば ならな い。 十数 年 前 に、 八 王 子 から 東 京 まで 車 内 混 雑 を 逃 れ るた め 奮 発 して 特 急 列 車 に 乗 ったら 、 途 中で 人 身 事 故 で 列 車 はス トッ プ。さあ たいへ ん。 どん な 事 情 であ れチ ェッ クイ ンしな けれ ば飛 行 機 は 待 って くれな い。 列 車 の 車 掌 に 尋 ねて も、 ここではわ から ない から 東 京 駅 に 着 いたら 聞 いて くれ としか 答 え てくれな い。ま あ 無 理 も ない。 結 局 40 分 遅 れで 東 京 駅 に 着 き、職 員 に 尋 ね る 間 もなく 急 い で 成 田 エ クスプ レス に 乗 り 換 え 、 搭 乗 開 始 10 分 前 に 空 港 カ ウンター に 無 事 た どりつ けた 。トラン クを 担 いで 急 い だので 汗 だ く。 でも 最 後 に 幸 運 の 女 神が 頬 笑 んだ 。エ コノミ ーの 座 席 はも ういっ ぱい なの でビジネス クラ スへ 、と !こう いう 幸 運 はオー バー ブッキン グでた まに ある が、そうし ょっ ちゅ うある わけ ではない 。やは り 幸 運 と しか言 いよ うが ない 。これ を 狙 っていつ もチェ ック イン 受 付時 刻 ぎ りぎ りに 行 けば 良 い かという とそん なこ とは ない。この 時 の 〝 恐 怖 〟 体 験 か ら、 海 外 へ 行 く 時 は いつ も 成田 空 港 近 く のホ テルに 前 日 から 泊 ま ること にし た。 その場 合 は のん びり 行 ける ので 、トラン クをも って 八 王 子 駅から 高 速 バ スで 成 田 空 港 ま で 行 く。 トラン クを 引 き ずって 満 員 電 車 に 乗 りたく ない が、トラ ンクを 宅 配 便 で 送 ると1 個 で 2000 円 強 かかる から、自 宅 か らさ ほど 遠 くな い 所 から 出 発 する 高 速 バ スで 行 くのが 一 番 楽 だ。 帰 り も 空 港 から 高速 バス で 八 王 子 まで 来 たい が、 八 王 子 行 き は 本 数 が 少 なくてな かな か 使 えな いのが 残 念 。さて 、 北 ドイ ツと 言 って も 広 いか ら、こ こで は 北 ドイツで 最 も 大 きい ハン ブルク 空 港 とベルリ ン・テー ゲル 空 港 についての み 記 すこと にし よう。ハ ンブ ルクに 行 く には 、たと えばルフト ハン ザ・ 全 日 空 ない し 日 本 航 空 で 成 田 か ら 行 くとしたら フラ ンク フル ト 国 際 空 港 かミュン ヒェ ン 空 港 で 一 度 乗 り 換 えな ければ なら ない 。その 他 の 飛 行 機 会 社 、 たとば フィ ンエアー なら ヘル シンキ で、 スカンジ ナビア 航 空 だっ たらコペン ハー ゲン で、 等 々で 乗 り 換えてハ ンブ ルク ないし ベル リンへ 向 かうこ とに なる 。 一 時 期 ベ ルリ ン 行 きの 直 行 便 があ ったが、 利 用 者 が 少 ない ので 廃 止 され てしま った 。ハン ブル ク 空 港 に 着 いた ら 宿 泊 所 に 向 か うわ けだ が、ハンブ ルク 中 央 駅 な ど 街 中 に 行 くには、 空 港 1 階 から 発 車 す るリムジ ンバス が 最 も 便 利 だ。スイ スの チュ ーリ ヒやジ ュネ ーヴなど は 街 中 と 空 港 が 近 い ので、バ スより 電 車 のほ うが 圧 倒 的 に 便 利 だ が、 ハンブ ルク 空港 やベ ルリ ン・テー ゲル 空 港 はバス が 最 も 便 利 だ。 フランク フル ト 国 際 空 港 は 電 車 のほ うが便 利 で わか りや すい。 ただ しドイツ は 初 め てと いう 人 は 切 符 の 買 い 方 に 手 間 取 るか もし れない。 ( 電 車 の 切 符 の 買 い 方 などは 後 日 詳 しく 説 明 する。)われ われ は、 シュレ スヴ ィヒ・ホ ルシュ タイ ンの 州 都 キ ール に 向 かう こと にしよ う。 かつては 空 港 から バスで ハン ブルク 中 央 駅 ま で 行 き、 そこからキ ール 行 き の 列 車 に 乗 って 行ったの で2 時 間 ちかく かか った。キ ール 行 きの 列 車 は1 時 間 に 1 本 だか ら、 タイミ ング が- 3 -


悪 いと 待 ち 時 間 がそれ にプ ラスする 。 成 田 を 午 前 11 時 頃 発 つとハンブ ルクに 着 く のは 午後 6 時 ぐら い、 それか らバ スと 列 車 に 乗 る から 、キ ールのホテ ルに 着 く のは 午 後 9 時 ぐ らいにな る。 午 前 11 時 発 ・ 午 後 9 時 着 だか ら 10 時 間 か 、と 思 って はいけない。 午 前 11 時は 日 本 時 間 で、 午 後 9 時 は 中 部 ヨー ロッパ 時 間 。 時 差 は 夏 だと 7 時 間 あ るか ら、 成 田 の ホテルを 朝 9 時 に 出 たら 19 時 間 後 に ようや くベッド にた どり 着 く 計 算 に なる。 はあ ~キー ルに 住 ん でいた 時 、 遊 び に 来 ていた 家 族 を 空 港 まで 見 送 りに 行 っ た 帰 りにた また まキール 行 き のバ スが 停 まっ ていたの で、 急 ぐわ けで もないから ちょ ど 良 いや と 乗 っ たら 、電 車 の 半 額 の 料 金 で、 しか もかかる 時 間 が バス と 列 車 で 行 くよ りも 短 い こと がわか った 。それ 以 来 、 キー ルとハ ンブ ルク 空 港 との 行 き 来 は 絶 対 バスでと いう こと にし た。キ ール からハン ブル ク 空 港 に 向 かう と、ハン ブルク 市 内 で 渋 滞 に 巻 き 込 まれ てち ょっ とヒヤ ヒヤ するが、 着 い てみ ればせ いぜ い 10 分 程 度 の 遅 れ なの で 心 配 な い。ベルリ ン・テーゲル 空 港 も街 中 ま で 電 車 が 通 じて ない のでバス に 乗 る こと にな るが、 低 料 金 で しか もけ っこう 細 か く中 心 街 のあ ちこ ちに 停 まっ てくれる ので 至 極 便 利 だ 。北 ドイツの 旅 へ(4) 空 港 で空 港 から 街 に 出 る 前 に、 空 港 での チェッ クを 終 え なければな らな い。 世 界 で 一 番 評 判 の悪 い 空 港 は フラ ンクフ ルト 国 際 空 港 で、 広 すぎ るし 、 第 二 ター ミナ ルと の 使 い 分 け がわ かりにく いし 、そ れでい てチ ェックイ ンカウ ンタ ーや 荷 物 検 査 の 数 が 足 り ず、 チェッ クイ ンするの に1 時 間 ぐらい 行 列 して 飛 行 機 に 乗 り 遅 れる ことすらあ る。 荷 物 検 査 も 大 行 列 と なるので 、ド イツ へ 行 く 時 に は 可 能 な 限 りフ ラン クフ ルト 国 際 空 港 で の 出 入 国 は 避 け たい 。とは 言 って も、 前 回 も 書 い たが、ド イツの どこ かの 町 へ 日 本 か ら 直 行 便 で 行 こうと した ら、フラン クフ ルト かミュ ンヒ ェン 空 港 に 一 度 は 向 かわ ざるを 得 な い。 しか し 幸 いなこ とに 、ここで のト ラン ジット ( 乗 り 換 え) はさほ ど 複 雑 で はない。た だし 、 日 本 か らの 直 行 便 が着 くゲ ート から ドイツ 国 内 線 が ある ターミ ナル に 向 かうには、 EU に 入 るた めの 入 国 検 査があり (パ スポ ートと 帰 り の 切 符 を 見 せれ ばま ず 問 題 がない) 、さ らに 長 い 通 路 を 通 ら なければ なら ない 。その 長 い 通 路 に 向 かう 前 にエ レベ ーターがあ り、 それ で1 つ 下 の 階 へ 降りるの だが 、1 階 程 度 なら 歩 い て 行 こうと 階 段 を 下 りると 直 に 不 安 にな る。 なぜか とい うと、た った 1 階 分 降 り るは ずなのに その 階 段 数 が 半 端 じゃない 。つ まり 、た とえば 東 洋 大学 の1 階 分 の 階 段 数 が 30 ぐら いだ とした ら、ここ は 100 ぐらいあって、 大 き めの 荷 物 など 持 っ ていたら 、ああエ レベー ター に 乗 れ ば 良かったと 後 悔 す るぐらい の 距 離 があ る。無 事 に1 階 下 がってト ランジ ット 用 の 通 路 に入 って、またま た 仰 天 す る。そ の 通 路 の 距 離 も半 端 じ ゃない。 300 メー トル はある んじゃないかと 思 う ぐら い 長 い。 ここは 絶 対 に〝 歩 く 歩道 〟に 乗 ろ う。 まあ、そ んなこ んな いろいろと驚 くような 体 験 をしなが ら、ど うに か 国 内 線 のゲートに 着 けば 、あとは さほど 難 し くないから安 心 だ 。( 到 着 点 が 遙 か 彼 方 で 見 えない、フランクフルト 国際 空 港 のトランジット 専 用 通 路 )ドイ ツの 空 港 でも、 フラ ンクフル ト 空 港 とミ ュン ヒェン 空 港 は 特 別 か もし れない 。ベ ルリンの テー ゲル 空 港 は 、バ スから 降 りてタ ーミ ナル に 入 る とす ぐに チェ ック インカ ウン ターが 並 んで おり 、 建 物 がド ーナツ 型 なので 一 通 り 見 ていくと 元 の 場 所 に 戻 る から、 迷 い ようがな い。 ただ し、 早 々と 空 港 に 着 くと、 乗 り たい 航 空 会 社 の カウ ンタ ーが なかっ たり ルフトハ ンザ でも 乗 る 便 のカ ウンター がなか った りす る。という のは 、カ ウン ターの 数 が 少- 4 -


ないの で、 飛 行 機 が 出 発 し た 後 でな いと 次 の 便 のカ ウンターと して 使 え ない からだ 。な ので、 受 付 で 尋 ね るか 電 光 掲 示 板 で 受 付 カウ ンタ ーの 場 所 を 確 認 した らベ ンチ で 待 つ か 免 税店 でも 眺 め てい るしか ない 。リニ ュー アル したハ ンブ ルク 空 港 は 広 く なっ てち ょっと 戸 惑 うが 、 機 能 的 にはき わま えて 単 純 でわ かり やすい 。エ アフルト 空 港 は 中 央 駅 か ら 路 面 電 車 で 行 ける が、 小 さす ぎる 空港 で、 一 日 に 数 便 しか 飛 行 機 が 離 着 陸 しな いか ら、 早 く 行 って もカ ウン ター は 開 い てい ないし、 チェ ック インし ても 出 発 時 刻 になら ない と 次 の 構 内 にも 入 れ ない 。デ ュッセ ルド ルフ 空 港 は、 ドイ ツ 鉄 道 が 近 くまで 来 ていて 、そ こか ら 無 料 のシ ャト ルで 空 港 に 入 り 、 構 内は 適 度 の 広 さと 利 用 頻 度 が あるので 、とて も 使 い 勝 手 が 良 い。 そう いう 点 で はメイ ンの 空港 であ るオ ース トリア のウ ィーン 空 港 やス イス のツ ューリヒ 空 港 な どは 中 央 駅 から もさ ほど 遠 く ない し、 空 港 内 もじ つにわか りやす い。 その 意 味 で はス イス 航 空 やオ ースト リア 航空 はお 勧 め だ。 フィン ラン ド 航 空 の 日 本 か らの 直 行 便 が 最 初 に 着 く ヘル シン キ 空 港 や、 KLMの アム ステ ルダム 空 港 (スキポ ール 空 港 ) など も 大 き いけ れど もと ても わかり やす い。要 する に 結 論 は 、フラ ンク フルト 国 際 空 港 はわ かり にくいし 混 みす ぎる から 、 利 用 した くない。北 ドイツの 旅 へ(5) 鉄 道 の 切 符 を 買 うさて 空 港 の 税 関 を 通 り、 荷 物 を 受 け 取 っ て、 自 動 ドアが 空 く とそ こは いよ いよド イツ だ。Endlich bin ich in Deutschland!と いう 感 動 も 束 の 間 、 目 の 前 に 飛 び 込 ん でくる のは 外 国 人 ば かり。ま わり を 見 回 して も、 さっき 飛 行 機 内 にい たあ の 大 勢 の 日 本 人 はど こへ 行 った ?と 驚くほど 姿 を 消 し 、とに かく いまは 一 人 踏 ん 張 っ てド イツの 地 を 歩 む しか ない 。さて 、 空 港 か らフラ ンク フルト 中 央 駅 (Hauptbahnhof, 略 し て Hbf)へ 行 く には、 鉄 道 の マークを 見 な がら 階 段 を 下 り て、まず は 切 符 を 買 わな ければなら ない 。 切 符 売 り 場 は たい てい 数 人 行 列 して いる。 たか が3 人 ぐ らいと 甘 く 見 て はいけない 。 場 合 に よっ てはこ の3 人への 切 符 販 売 等 が 終 わ るま で 30 分 も 待 た なければ なら ない ことがある からだ 。な ので、極 力 切 符 売 り 場 で 切 符 を 買 うのは 避 けて 自 動 販 売 機 で 買 い たい 。と ころ が、 この 自 動 販 売機 は、 慣 れ ない うちは とて も 操 作 が 難 しい 。どの 駅 で も、 良 く 見 ると 、 切 符 の 自 動 販 売 機 には 2 種 類 ある 。1 つは 現 金 を 投 入 する もので、 燻 し 銀 色 をして いる 。もう1 つはク レジ ット カードで 買 うも ので 、 赤 い 色 の 機 械 。現 金 投 入 式 の 場 合 は、 機 械 表 面 左 手 の 駅 名 表 示 板 か ら 目 的 地 を 探 し 、 見 つか ったら 、そ こに 書 か れた 番 号 を 右 の ボタ ンで 押 す か 画 面 の 数 字 を 押 す。する と、 小 さ なガ ラス 窓 に 金 額が 表 示 され るの で、そ の 額 を 投 入 す ればよ い。 なあ んだ 簡 単 ! と 思 って はい けない 。そ んな 単 純 な 話 では ない。 なぜ なら、ま ず、フ ラン クフ ルト 中 央 駅 が 駅 名 番 号 表 のどれ かが わからな い。 Frankfurt と いっ ても 南 駅 や ら 何 駅 や らいろいろあってどれだか わか らな い。 運良 くわ かっ て 投 入 口 に コイ ンや 紙 幣 を 入 れ ても 、な ぜか 貨 幣 が 戻 っ てき て 受 け 付 け てく れない。 紙 幣 を 入 れる 向 きが 悪 い のか と、 裏 返 し たり 左 右 を 逆 に した りし ても 全 然 ダ メ。 そうこう して いる うちに 後 ろ に 次 の 客 が 来 て 待 っ てい るから 焦 る 。 焦 ると 余 計 だめで 、も ういいや と 諦 め 画 面 をご 破 算 にする(abbruch)。そ して 後 ろ の 客 に 先 を 譲 っ て、 その 間 にそ の人 がや るこ とを ジッと 観 察 してふた たび 再 挑 戦 。と ころが、さ っき の 人 はで きたこ とが 、自 分 の 番 に なる とまた でき ない。そ うこう して いる うちに 予 定 して いる 電 車 の 発 車 時 刻 になって しま う。 そんな とき 、そばの おじさ んが 話 し かけてくる 。と ても 嬉 し いと 同 時 に ちょっと 怪 し い。 親 切 な ふり をしてお 金 を 盗 られ るの ではないか と 心 配 だ 。か といっ て、 無視 する のも 失 礼 だし、 いい え 結 構 で す、と も 言 いづ らい。なぜ なら 、そ の 人 は 私 の 悪 戦 苦闘 をそ ばで すべ て 見 て いた からだ。 仕 方 な い、 金 を 盗 られたら その 時 だ 、 盗 られて もせ いぜい 10 ユ ーロだしと 覚 悟 を 決 めて 、しか じかと 自 分 が した いことをと りあえ ず 説 明 す る。たとえ ばフ ラン クフル ト 中 央 駅 が 駅 名 表 示 板 に ない 場 合 、 Danke, ich fahre zum Frankfurt- 5 -


Hauptbahnhof.と 言 う 。すると 、 怪 し いお じさん はニコニ コし なが ら 機 械 の 駅 名 表 示 板 を 指さす。 なん と、 そこに Frankfurt Hauptbahnhof と はっきり 書 いて ある では ないか 。あ るいは、お 金 を いれ ても 戻 って くる と 言 うと 、その おじ さん は 紙 幣 を 持 って 歩 き だす 。ギョ ッと してつい て 行 くと 、 別 の 機 械 でいとも 簡 単 に 操 作 し 切 符 とお 釣 り を 渡 して くれ る。あ あ、 この 親 切 なお じさ んを 疑 った 私 が 悪 か ったと 後 悔 する 。 基 本 的 に ドイ ツ 人 は 世 話 好 き なの だ。こん なこ とな らカー ド 式 で 買 えば よかっ た。 最 近 はカード 式 の 機 械 ば かり で、 現 金 投 入式 が 少 ない 。ま ず「 画 面 を 手 で 触 れ てくだ さい 。」 つぎに 目 的 地 は ? 乗 車 日 は? 乗 車 時 刻は? 一 等 か 二 等 か? 大 人 か 子 ど もか ? 枚 数 は? 自 転 車 は? 割 引 カー ドを 持 っ ている か? ICE( 特 急 )を 利 用 す るか ? 急 行 は どうか ? 時 刻 表 を 印 刷 する か? 等 々 と 次 々と 画 面 で 質問 攻 め にあ う。 もう 画 面 表 示 通 りで 良 いと いう とこ ろまでやっ とた どり 着 い たとこ ろで 、行 き 詰 まる 。も うこれ でO Kだから その 切 符 が 欲 し いという 画 面 が ない ! 困 ってこ れか なと 画 面 を 押 すと 、ああ 、そ れはすべ てキャ ンセ ルの ボタンだっ た! もう 一 度 やり 直 し。 とならず に 無 事 に クレジ ット カードを 挿 入 す ると ころ までいって カー ドを 差 し 込 むと 、ス ーッと 吸 い 込 まれ る。ド イツ の 機 械 は 壊 れや すい から 、 万 一 カー ドが 戻 っ てこ なかっ たら 、今 回 の 旅 行 は 地 獄 と 化 す。 裏 返 しや 逆 向 き とい うこ ともある。 3 回 間 違 える と、 日 本 で もそうだ が、 没 収 だ。 冷 汗 を びっしょ りかき 、と にも かくにも 無 事 に 切 符 が 発 券 され る 音 がする。 ここ で 気 を 抜 い ては いけない 。クク クク とか と 切 符 を 印 刷 す る 音 が 聞 こえて しば らくして 下 の 口 か ら 出 て くる のはクレ ジット カー ドの 領 収 証 であ って 切 符 でな いから だ。 切符 はそ れか らし ばらく して 出 て くる 。 慌 て ると 領 収 証 だけ 手 に して 切 符 を 取 り 損 な う。 カード 式 の 場 合 は 必 ず2 枚 ( 切 符 と 領 収 書 と は 同 じ 紙 で 非 常 によ く 似 てい る) 受 け 取 らな ければな らな い。 ああ、 予 定 した 列 車 が 来 る 時 刻 にな ってしまっ た。 急 げ !北 ドイツの 旅 へ(6) 格 安 鉄 道 切 符むか しヨ ーロ ッパに 旅 行 する 人 は ほとん ど 全 員 と 言 って 良 い ほど ユー レー ルパス を 買 って 行 っ た。 これ はヨー ロッ パの 鉄 道 のほと んど すべ てに、 所 定 の 期 間 内 なら 何 度 で もど こへでも 、し かも 一 等 車 に 乗 れるとい うお 得 な 切 符 だ った。ただ し、 同 じ 町 に 滞 在 し て 鉄 道に 乗 ら ない とそ の 分 損 する 。そこで ついあ くせ くと 毎 日 あ ちこ ちの 町 を 移 動 しつづ ける ことにな って 疲 れ 果 てた 。 幸 い 今 は、 期 間 で はな く 乗 車 回 数 を 決 めら れる 切 符 が 売 ら れて いる。そ れで も、 たとえ ばド イツ 国 内 しか 旅 行 を しな いのに、ギ リシ アの 鉄 道 もイギ リス の鉄 道 も 乗 れ ると いう 権 利 を 買 わ され るのは 馬 鹿 げて いる。そこ で、 さら に 改 善 され て、 いまは 隣 接 す る3 ヶ 国 だ けと か5ヶ 国 だけと いう 切 符 も 売 ら れて いる 。だ が、 ほんと うに ドイツ 国 内 し か 旅 行 しな いな ら、そう いうユ ーレ ール パスでさえ 馬 鹿 馬 鹿 しい 。こう いう 場合 はジ ャー マン レール パス を 買 うべ きだろ う。ちな みに 、ユ ーレー ルパ スはヨー ロッパ では 買 え ないしヨー ロッ パに 住 む 人 は 使 えな い。ジャー マン レー ルパス はド イツに 住 む 人 は 買 え ない 。だが、こ れは ベル リン とケル ンと ミュンヒ ェン など の 中 央 駅 で も 売 られ ている 。た だし 、そこでは 5 日 間 と 10 日 間 の 2 種 類の 切 符 しか 買 え ない。 値 段 は 日 本 で 買 って もド イツ で 買 っ ても さし て 違 わな い。つ いで ながら、 ジャ パン レール パス という 格 安 切 符 もあ るが 、これは 日 本 人 や 日 本 に 住 んで いる 外国 人 は 買 え ない 。これ で 東 京 か ら 京 都 など に 行 くの に「のぞみ 」は 乗 れ ない 。「ひ かり 」に 乗 る と、 外 国 人 が 大 勢 乗 っていて 驚 かさ れる のは そういう 理 由 か らだ 。とこ ろで 、こ こで 注 意 し なければ ならな いこ とが ある。たと えば 、ミ ュン ヒェン から ハンブル クま で 特 急 IC Eで 行 く と 超 お 得 だ が、 ミュ ンヒェンか らア ウク スブ ルクま でし かいかな いな ら 往 復 でも 大 損 になる。 ジャー マン レー ルパスがつ ねに 得 だ いう わけで はな い。近 場 や 同 じ 州 内 の 移 動 や 周 遊 な らば 、 別 の 格 安 切 符 がある。そ れは Bayern-Ticket と かSchleswig-Holstein-Ticket と 呼 ば れる Länder-Ticket で 、 それ ぞれの 州 内 は 有 料 急 行 列 車 以 外 は朝 9 時 から 深 夜 まで 何 度 で もどこへ でも 乗 れ、 1 枚 で5 人 まで 乗 れ る 便 利 な 切 符 で 、し か- 6 -


も 超 割 安 。 また 、 週 末 には 週 末 切 符 (Wochenendekarte)というの があり、こ れも1 枚 で5 人まで、 有 料 急 行 列 車 以 外 は 全 国 乗 り 放 題 。 2 人 以 上 で 旅 す るな らば 絶 対 にお 得 な 切 符 だ 。週 末 切 符 に は 単 身 用 も あり 、 少 し 安 い。 終 末 切 符 な どは1 枚 で 5 人 まで 乗 れ るので 、 駅 のホーム には 、 便 乗 させ てく れと 寄 っ てくる 若 者 がた むろしてい る。 逆 に 便 乗 させて やる から5ユ ーロ よこ せとい う 奴 もいる。 こうい う 連 中 は 、 車 内 検 札 が 終 わる とい なくな るの で、万 一 乗 車 中 にさ らにも う 一 度 車 内 検 札 があ った ら、 私 たちは 無 賃 乗 車 と いう ことに なっ てしまう ので 、 危 ない。 詳 し くは http://www.bahn.de/p/view/preise/regional/laendertickets.shtml を 参照 され たい 。ちな みに 、 有 料 急 行 列 車 とは、 新 幹 線 に あた る Inter City Express (ICE)と 欧 州 国 際 列 車Euro City (EC)と 都 市 間 急 行 Inter City (IC)を 指 し、ICE は 急 行 券 の 他 に 乗 車 券 まで 割 り 増 し料 金 が かか る。 EC と IC は 急 行 料 金 の み。ジャ ーマンレー ルパス やユ ーレ ール パスは ICEも 含 め てす べて の 列 車 に 乗 り 放 題 な ので、 気 楽 だと いうメリッ トが ある 。最 近 ドイ ツ 鉄 道 もス イスを 真似 て 赤 い 車 体 の 列 車 が 増 えた。普 通 列 車 の 車 内 も 座 り 心 地 がとても 良 い。北 ドイツの 旅 へ(7) 不 正 乗 車 と 自 由ドイ ツの 地 下 鉄 や 市 街 電 車 の 駅 に は 改 札 がな いの で、その 気 にな れば 無 賃 乗 車 が でき る。( 長 距 離 列 車 は 走 行 中 に 車 掌 が 必 ず 検 札 に 来 る 。) バスや 路 面 電 車 はど この ドアか らも 出入 り 自 由 だ から 、 乗 車 券 を 車 内 で 購 入 する 場 合 には 運 転 手 の 脇 の 出 入 口 を 通 らなけ れば ならない 。 見 方 を 変 えれ ば、 後 ろ のド アから 乗 っ て 後 ろのドアか ら 降 りれ ば 無 賃 乗 車 がで きる。た だし 、 私 服 の 検 札 官 が 突 然 検 札 を 始 める から 、そうやす やす と 無 賃 乗 車 がで きる わけでは ない 。だ がそれ 以 前 に、ヨー ロッパ では 「 自 由 とは 何 か 」「 人 間 が 自 由 であ ると はどうい うこ とか 」をき ちん と 自 覚 し ている かが 問 わ れる。18 世 紀 末 の 哲 学 者 カ ント が 言うよう に、 自 由 とは 自 律 を 意 味 する 。すな わち 、 自 分 で 自 分 を 律 す る、 自 分 で 決 め たこ とをみず から 守 る ことが 自 由 である。 したが って 、ド イツの(オ ース トリ アも フラン スも 同様 ) 鉄 道 や バス に 改 札 がな いから 無 賃 乗 車 をし よう 、 誰 も 見 て いな けれ ば 不 正 を 働 こう などと 思 う 人 は 自 由 では ない 。 誰 も 見 ていな くて も 正 しいことを する のが 自 由 である 。ヨ ーロッパ に 行 った らまず は 西 洋 思 想 を 実 地 で 体 験 しな ければなら ない 。とこ ろで 、ホ ームの 脇 や 駅 の 入 口 付 近 に 妙 な 小 箱 がついた 柱 が 立 って いる 。これ は 自 主改 札 機 で、 小 箱 の 腹 に つい た 細 長 い 口 に 切 符 を 挿 入 すると、切 符 に 日 時 が 刻 印 され る。 これは、 買 った 切 符 がこ の 瞬 間 から 有 効 にな ると いう 印 で、 この 操 作 を Entwerten と 言 う 。 直 訳すると 「 価 値 を 無 くす 」と いう 意 味 。 購 入 した だけ の 切 符 はいつで も 使 える ので、 それ に 日 時 を 刻 印 す るこ とで 、「 当 日のみ 有 効 」 とか 「 以 後 2 時 間 内 有 効 」とな る。 この 作 業 を しないと 、 車 内 検 札 でい くら 切 符 を 持 ってい ると 言 っ ても、 無賃 乗 車 と 見 なさ れる。 無 賃 乗 車 とし て 摘 発 され ると 約 50 ユ ーロを 問 答 無 用 で 徴 収 さ れる 。上 述 のよ うに 、ドイ ツで は 車 内 検 札 係 は みな 私 服 で、ふつう の 乗 客 と 同 じ ように 席 に 座- 7 -


り 新 聞 なん か 読 んでい るか ら、 検 札 官 が 乗 って いる かどうかは 見 た 目 で はわ からな い。 隣に 座 っ てい るふ つうの ちょ っと 汚 ら しいお っさ んが 、 突 然 起 ち 上 が って 、 身 分 証 明 書 を 提示 して 、 切 符 を 見 せろ と 言 うので、 驚 かさ れる 。 市 街 電 車 だけ でな くバ スに も 乗 っ てい る。検 札 官 はと ても 権 威 が あり 、この 人 に 無 賃 乗 車 だと 言 われたら 、 例 外 な く 罰 金 を 払 わさ れる。 美 人 女 性 や かわい い 女 子 学 生 が 目 の 前 で 摘 発 さ れるのを 何 度 も 見 た 。「 いま 買 おう と思 って いた とこ ろ」と か「 小 銭 がな くて」 なん てい ういかなる 口 実 も 絶 対 に 聞 いて もら えない。 だか ら、 まあ、 ほと んどの 乗 客 がち ゃん と 切 符 を 買 って 持 っ てい る。 それに 、ド イツの 回 数 券 や 定 期 券 (Monatskarete)、 一 日 乗 車 券 (Tagesticket)や 三 日 間 乗 車 券 (Drei TageKarte) 等 々 は 嘘 のよ うに 格 安 なので、 真 面 目 に 切 符 を 買 うほ うが 絶 対 に 得 だ 。た とえばミュンス ター の 場 合 、バ スの 1 回 乗 車 券 はA ゾー ンで 2ユーロ。 した がっ て 往 復 した ら4 ユーロ。 とこ ろが 一 日 乗 車 券 はたった の 3.5 ユ ー ロ! つま り 往 復 するなら 一 日 乗 車 券 を 買ったほ うが 絶 対 に 得 だ 。な にしろ「 一 日 乗 車 券 」だ から、その 日 1 日 何 度 で もどこ へで もそれ 一 枚 で 行 け るのだ !ド イツ 人 は 算 数 が でき るの だろうかと 心 配 にな るく らいに 激 安 だ。北 ドイツの 旅 へ(8)Flensburgこれ まで は 北 ドイツ でな くても 通 用 する 話 ば かり 書 いてきた が、 ここ らで いよい よ 北 ドイツへ の 旅 を 始 めよう 。い ろいろと 考 える のは 面 倒 なので、ま ずは ドイ ツ 最 北 端 の 町 フ レンスブ ルク へ。 ハンブ ルク から 行 く 場 合 は ユト ラン ト 半 島 の 西 側 を 走 る 列 車 に 乗 る(Hamburg Hbf. - Elmshorn - Heide - Husum - Flensburg)か 、 半 島 の 中 央 を 横 断 する(Hamburg Hbf.- Elmshorn - Neumünster - Regensburg - Schleswig - Flensbrug)か、あ るいはキ ール 経 由 で 半 島 東側 を 行 く(Hamburg Hbf. - Elmshorn - Neumünster - Kiel - Flensburg)か 、 3 通 り の 方 法 が ある。 本数 が 多 いの は 中 央 を 抜 ける 路 線 かも しれな い。フレ ンス ブル クの 駅 には 、ふだん 見 かけ ない 列 車 も 停 ま って いる 。こ れは デンマ ーク の列 車 で 、す ぐ 隣 はデン マー クだから だ。ド イツ とデ ンマークを 乗 り 換 え なし で 行 き 来 で きる 列 車 もあ るが 、 多 く の 列 車 は ここ で 乗 り 換 え るか ら、フレン スブ ルク 駅 は デンマ ーク の列 車 の 終 点 を 兼 ねてい る。これ から 徐 々 に 紹 介 する が、そも そもユ トラ ント 半 島 は もと すべ てデ ンマ ーク 領 だっ た。もう 少 し 正 確 に 言 うと 、ユ トラント 半 島 ( デン マー クの 表 現 で はユ ラン 島 ) の 南 半 分 は デンマー ク 王 国 連 合 に 加 盟 す るシュレ スヴィ ヒ 公 国 ( デンマーク の 表 現 で はス リスヴ ィ) と、さらに 南 に 位 置 するホ ルシ ュタイン 公 国 の 領 土 で、 シュレスヴ ィヒ 公 国 の 住 民 の 半 分 以 上はデン マー ク 語 を 話 し てい た。その 北 端 の 町 が フレ ンスブルク だか ら、 ここ にデン マー クの 列 車 が 停 まっ ていて も、 ほんらい はなん の 違 和 感 もないはず なの だ。フレ ンス ブル クの 駅 舎 を 出 て 驚 く のは、 駅 前 から いきなり 公 園 が ずっ と 続 いてい て、 建物 が 近 くに ほと んどな いこ とだ。い までこ そイ ンタ ーネットで 地 図 を 見 るこ とがで きる が、かつて はフ レン スブル クを 紹 介 する 日 本 の ガイ ドブ ックなど 一 冊 も なか った から、 とに かく 行 っ てみ なけ ればわ から ないとい う 状 態 だっ た。 だが、 駅 舎 を 出 たと たん 何 もな いの で「 行 っ てみ ても わから ない 」 状 態 だ 。すぐ 前 に バス 停 はあるが 、ど こ 行 きに 乗 った らよ いかもわ から ない から 使 えな い。 後 ろ は 駅 舎 、 前 は 公 園 、 両 脇 は ない から 、と にかく 長 細 い公 園 を ゆる ゆる と 下 っ て 行 くしかな い。 途 中 で ガー ドをくぐり 、 左 に 郵 便 局 と 裁 判 所 を 見つつ 進 むと T 字 路 に 着 く。 直 観 で 右 に 曲 が ると 、 斜 め 左 上 に 教 会 の 塔 が 見 え てくる 。 教 会がある とい うこ とは 街 があ るという ことだ から 、 少 し 安 心 して さら に 進 むと 右 に 古 くて いかめし い 建 物 が 建 って いる 。これが かつて の 駅 舎 だ 。ここなら すぐ 目 の 前 に 商 店 街 が 広 がるから こん な 不 安 な 思 いを せずに 済 むのに と 思 いつ つ、 信 号 を 渡 る と 商 店 街 の 入 口 に 着 く。ここま で 駅 から 約 15 分 。 あと はと にかく まっすぐ に 伸 びる 商 店 街 をぶ らぶら 見 学 しても良 いし 、 左 の 少 し 高 台 にあ る 教 会 や 学 校 や 歴 史 博 物 館 などを 見 学 し ても 良 い 。 逆 に 、 商 店街 から 右 に 下 る と 港 に 着 く 。 港 に 面 した 通 りに バス の 中 央 発 着 所 (ZOB)が ある。こ こか ら- 8 -


バスで 約 30 分 乗 る とグリ ュッ クス ブルク (Glücksburg)と いう 城 館 に 着 く 。バ スは 1 時 間 か2 時 間 に1 本 ぐ らいだ から 、 現 地 に 着 いた らま ず、 帰 りのバス の 時 刻 を しっ かり 調 べて おこう。 帰 り のバ スは4 時 間 後 ! とい うこと もあ る。 運 が 良 くて も2 時 間 後 。小 さ な 湖 の 畔 に 建 つ この 城 館 は、 Glücksburg と 言 い、「 幸 福 城 」と いう 意 味 。 かつてデンマー ク 王 子 の 城 だっ た。 いまでも その 子 孫 が 住 ん でいるが、 博 物 館 に もな ってい るの で入 館 で きる 。 木 の 床 を 守 る ため、 大 きなス リッ パを 靴 のまま 履 くよ うに 指 示 される 。 歩 きにくい ので つい スース ーと 擦 っ て 歩 き、 知 らぬ 間 に 床 磨 き を 手 伝 う こと にな る。グ ッド ・アイデ ア! お 城 の 地 上 階 ( 日 本 の 1 階 ) にあ るレ ストランは 安 く てお いし い。と きど き結 婚 式 で 貸 切 に なるが 。お 城 を 見 学 したら 、 湖 畔 を 一 周 し よう 。 湖 に 浮 かぶ お 城 の 写 真 を撮 って いる と、 ついフ ィル ムを1 本 使 いき って しま う。北 ドイツの 旅 へ(9)Sylt 島かつ て、 Deutsche Bahn (DB)がド イツ 国 鉄 だ ったころ 、 超 格 安 の 週 末 切 符(Wochenendekarte)があ った 。 週 末 すな わち 金 土 日 の 3 日 間 急 行 券 不 要 の 列 車 は 全 国 どこでも 何 度 でも 1 枚 で5 人 まで 格 安 の 値 段 で 乗 れる 切 符 だった。( 私 鉄 にな った いまは 土 日 の1 日 だ けに なっ た。) なの で、 金 曜 日 の 午 後 に ハン ブルクを 出 てユ トラ ンド 半 島 を 北 上 する 普 通 列 車 は 大 勢 の 若 者 た ちで 満 席 状 態 だ った 。 目 指 すところ は1 つ、 列 車 の 終 点 、ド イツ 北 端 に 位 置 す るジル ト 島 だ。だか ら、 金 曜 日 午 後 や 土 曜 日 午 前 中 に 走 るジ ルト 島 行 き の列 車 に 乗 っ て 座 席 を 確 保 で きなかっ たら 完 全 に アウ ト。だって 、ほ とん どの 客 が 終 点 ま で乗 るの だか ら。 その 時 間 約 3 時 間 半 ! か なり 遠 い 。ジル ト 島 はユ トラン ト 半 島 の 西 側 、すな わち 北 海 (Nordsee)に 位 置 する 島 だ が、 半 島 とかろう じて つな がって いる から、 正 確 には 「 島 」で はないかも しれ ない が、 かつて は 満 潮になる と 通 路 が 水 没 し たか らやはり 島 かも しれ ない 。いまはそ の 通 路 に 頑 丈 な 護 岸 つき の列 車 の 線 路 が 敷 かれて いる から、 通 路 が 水 没 す るこ とはない。 列 車 の 車 窓 か ら 右 を 見 て も左 を 見 ても 海 だ 。 自 動 車 道 路 は ない から、 半 島 の 最 寄 りの 駅 で 自 動 車 ご と 貨 物 列 車 に 乗 せて 列 車 で 車 を 島 まで 運 んで もらうこ とにな る。 車 の 運 転 手 等 は その 車 に 乗 っ たまま 貨 車 に乗 って いる ので 、その 列 車 全 体 を 外 部 から 見 る われ われからす れば 、な んと も 不 思 議 な 光景 に 見 える 。こ れと 同 じこ とはスイ スの 峠 でも やっ ているが、 スイ スの 場 合 は 自 動 車 の 排気 ガス で 自 然 が 破 壊 さ れな いように 自 動 車 を 通 行 止 めにしてい るた めだ 。- 9 -


ジル ト 島 のロ ゴとし て 使 われてい る 形 は デザ イン ではなく、 島 の形 だ。 中 央 右 に 突 き 出 てい るところ が 半 島 につ なが っている 部 分で、 左 のま っす ぐに 延 びた 線 が 北 海 に 面 す る 海 岸 を 示 している 。ユトラン ト 半 島 の 西 側 は 、オ ランダも 含 めて 、 低 湿 地 帯 で、 広 大 な 面積 の 遠 浅 が ある と 思 え ば 良 い。した がって 、ま あ、 人 間 に とっ ては何 も 使 えな い 不 毛 な 地 とも 言 え る。 その 広 大 な 低 湿 地 帯 の なか でちょっと 高 め の 土 地 が 島 とし て 浮 き 出 たとい うの がジ ルト 島 なの だ。さて 、ジ ルト 島 行 き の 列 車 は 、こ の 島 の ど 真 ん 中 に 着 く 。 駅 からまっす ぐに 大 し た 軒 数 でも ない 商 店 街 がの びて おり 、そこをそ のまままっ すぐ 歩 い て 行 く と 海 に 着 く。 夏 は 非 常 に 賑 わ うリゾート 地 になるの で、 海 岸 入 口 は すべ て 柵 で 閉 じられ 、 柵 の 中 に 入 っ て 海 岸 を 歩 く には お 金 を 払 わ なければ なら ない 。 島 と 言 っ てもかな りの 大 きさ なの で、 歩 いて はと ても まわ れない ので 、タクシ ーか 本 数 が 少 な いバ スか、 最 良 の 手 段 た るレ ンタル 自 転 車 を 利 用 する ことに なる 。とくに 観 光 名 所 はない が、 前 回 紹 介 したフ レン スブ ルクと 同 様 にデ ンマ ーク の 影 響 が 強 いので、 独 特 の 形 をした 民 家 を 見 て 歩 くのが 一 番 おも しろいかも しれ ない 。 最 初 に 書 いた ように、 夏 休 みや 週 末 は とに かくすご い 人 出 なの で、 静 かに 島 の 独 自 の 文 化 を 知 りた けれ ば平 日 か オフ シー ズンに 行 く と 良 いが 、あま り 人 出 の ない 季 節 は 商 店 やレ スト ランが 閉 鎖 されてい るの で、 つまら なす ぎる。 観 光 地 は 観 光 地 ら しくそこそ こに 混 ん でい るのが 良 い のかも 知 れな い。北 ドイツの 旅 へ(10)Niebüll ――エミール・ノルデの 故 郷ニー ビュ ルと いう 地 名 を 言 わ れて 、それ がど こに あるかをと っさに 答 えら れる ドイツ 人 は 少 な いが 、それ ほど に 小 さな 町 から さらにバ スで 40 分 の 田 舎 に 住 ん でい た 画 家 Emil Nolde(1867-1956)を知 らな いド イツ 人 はめ った にいない 。 原 色 を 多 く 使 う 独 特 の 画 法は、あ えて 言 え ばドイ ツ 表 現 主 義 に 属 する とし ても 、 個 々 の 作 品は 見 れ ばす ぐに ノルデ の 絵 だとわか る 個 性 を 持 って いる。 北 国 の風 景 や 植 物 等 を 多 く 描 くほ かキリス ト 磔 の 絵 な ど 宗 教 画 も 多 い 。ナチス に加 担 し た時 期 も ある が、 逆 にナチス から 頽 廃芸 術 と 非 難 されて 活 動 を 禁 止 さ れた時 代 も あっ た。彼 が 住 ん でいた 家 に 現 在 はノ ルデ美 術 館 が 建 てられ ている。 ニー ビュル 駅 は ドイ ツの 北 のは ずれ 、デンマ ーク 国 境 近 くに あり、そこ から 美 術 館 ま では 本 数 の 少ないバ スで 牧 場 や 畑 を いく つも 抜 け て 行 く 。そ の 名 のバス 停 で 降 り ても どこ に 美 術 館 が あるかわ から ない が、 案 内 板 を 頼 りに 農 道 を 進 ん でた どり 着 くこ んも り 茂 った 林 の 中 にそ れは 突 然 現 れ る。 絵 画 を 堪 能 したら、 きれい に 手 入 れ された 花 壇 を 眺 め、 牧 場 を 遠 望 しな がらミニ レス トラ ンで 食 事 を するなど して 一 日 の んび り 田 舎 の 雰 囲 気 を 堪 能 し たい。Niebül は Hamburg か ら Sylt 島 へ 行 く 路 線 にあ り、 列 車 はここで 別 れて 左 へ Sylt 島 へ、まっすぐ 行 く とデ ンマー クに 入 る 。北 ドイツの 旅 へ(11)Husumフー ズム は、 ドイツ を 代 表 す る 小 説 家 シ ュト ルム (Theodor Storm, 1817-88)の 故 郷 であ り、- 10 -


小 さな 港 の 近 く に 彼 が 生 活 した 家 が 記 念 館 とし て 残 されている 。ハ ンブ ルク の 北 方 、ユ トランド 半 島 南 半 分 は、 シュ トルムが 生 まれ 育 っ た 頃 はデンマー ク 王 国 連 合 の 領 土 だ った 。彼 はシ ュレ スヴ ィヒ・ ホル シュタイ ンのデ ンマ ーク からの 独 立 運 動 に 賛 同 し て 追 放 され 、しばら くド イツ 南 部 の 小 さ な 町 で 苦 しい 生 活 を 送 ら ざるを 得 な かっ た( のち にフー ズム 市民 から の 強 い 要 請 によ り 帰 郷 ) がゆ えに、 彼 の 小 説 には 故 郷 を 愛 す る 気 持 ち が 強 く 表 れ ている。 実 際 に 行 ってみ ると 、なるほ どと 思 わせ る 静 かな 港町 だ。 ハン ブル クから 列 車 で2 時 間 、キー ルか ら1 時 間 ほど 北 上 した 所 に ある。 港 町 と 行 って も、 北 海 ま では 遠 い。駅 か ら 直 角 に のびる 並 木 道 を 歩 い て 10 分 ぐ らい で 郷 土博 物 館 に 着 く。 そこか ら 左 へデンマ ークを 思 わ せる 小 さいが 瀟 洒 な 住 宅 を 見 なが ら 歩 き、 途 中 で 左 に 向 か うと 港 とシュトル ム 記 念 館 へ、 右 に 向 かうと 城 趾 公 園 に 着 く。 見 所 はこの4 箇 所 ぐら いだか ら、 港 に 面 し たレス トラ ンで 魚 介 類を 食 べ たり 、 城 趾 公 園 のベ ンチに 座 ったり して 、の んびりと 一 日 を 過 ごし たい。 シュ トルムの 詩 を 読 みな がら 。町灰 色 の 浜 、 灰 色 の 海 、そ の ほ と り に 町 が あ る 。霧 は 屋 根 に 重 く の し か か り 、海 の 単 調 な ざ わ め き が静 か な 町 を つ つ み こ む 。さ や ぐ 森 は な く 、 五 月 で も鳴 き し き る 鳥 は い な い 。た だ 雁 だ け が 秋 の 夜 空 を鋭 い 声 で 鳴 い て 渡 り 、浜 で は 草 が 風 に な び く ば か り 。Die StadtAm grauen Strand, am grauen MeerUnd seitab liegt die Stadt;Der Nebel drückt die Dächer schwer,Und durch die Stille braust das MeerEintönig um die Stadt.Es rauscht kein Wald, es schlägt im MaiKein Vogel ohn Unterlaß;Die Wandergans mit harten SchreiNur fliegt in Herbstesnacht vorbei,Am Strande weht das Gras.そ れ で も 僕 は お 前 が 好 き だ 、海 辺 の 灰 色 の 町 よ 。お 前 に は 青 春 の 魅 力 がい つ も ほ ほ え み か け て い る 、海 辺 の 灰 色 の 町 よ 。Dohc hängt mein ganzes Herz an dir,Du graue Stadt am Meer;Der Jugend Zaubert für und fürRuht lächelnd doch auf die, auf dir,Du graue Stadt am Meer.北 ドイツの 旅 へ(12)Bad St Peter-Ording前 回 紹 介 した フーズ ム(Husum)か らロ ーカル 電 車 で1 時 間 ほど 西 に 向 かう とアイダー シュテッ ト(Eiderdstedt)と いう 半 島 の 西 端 に 着 く。 すぐ 近 くに 北 海 (Nordsee)があ る。と いう- 11 -


ことは 地 図 でわ かって いる が、 終 点 の 駅 の 前 は 自 動 車 道 路 と 林 があ るだ けで 、いっ たい どちらの 方 向 に 海 がある のか 町 が ある のかま った くわ からない。 勘 で 右 に 進 む とすぐ に 三 叉路 に 着 く。 右 に 行 くべ きか 左 に 行 く べきか 、 周 囲 を 見 渡 し ても 海 の 気 配 がな い。こ こも 勘で 思 い 切 っ て 左 に 進 む と 大 きな 駐 車 場 があ り、 観 光 客 がバスか ら 降 りて くる 。そこ を 抜 けるとい きな りホ テルや マン ションや レスト ラン やお 土 産 屋 が 並 ぶ 通 りに 出 る 。 勘 が 当 た った。そ こを さら に 通 り ぬけ ると 大 き く 長 い 堤 防 があ り、 堤 防 の 外 は はる か 彼 方 まで 続 く 草原 と 砂 浜 。 野 生 のエリ カが 咲 い てい る。そ の 草 原 と 砂 丘 が 入 り 混 じ った とこ ろの 真 ん 中 に長 い 木 道 が 一 本 走 って いる 。 入 り 口 に 検 問 があ り、 ここを 通 る のは 有 料 らし い。お 金 を 払って、 海 ま でど のぐら いか と 尋 ねる と1km ぐら いだ と 言 う 。で 、よ くも まあ 造 った もの だと 感 心 する この 木 道 を 延 々 1kmぐら い 歩 く と、 木 道 は 終 わ り、 そこ から 砂 浜 を 歩 い て 200mで 北 海 の 荒 波 に 着 く 。 砂 浜 に 休 憩 所 が 建 って いる が、 床 下 に 8m ぐら いの 足 がつ いて いる。と いう こと は、 満 潮 の 時 に はそ の 半 分 ぐら いま で 水 が 来 る のだ ろう 。つ まり、 さき ほどの 木 道 の 終 点 ぐらい まで 水 が 来 る のだろ う。 湘 南 海 岸 で 見 る 太 平 洋 は 、 相 模 湾 内 とい うことも あっ て 穏 やかだ が、 日 本 海 の 海 岸 に 立 つ とち ょっと 恐 い 感 じ がす る。 という のと 同じで、 バル ト 海 はなん とな く 穏 やか だが、 北 海 の 黒 い 海 は どこ か 恐 い。 海 岸 に、「 犬 を 入れては いけ ない 」とい う 看 板 が 立 っ ている 。ビ ーチ だから 衛 生 上 、 とい うの ではな く、 犬が 波 に 掠 わ れて 危 険 だ から だという 警 告 で はな いか と 思 う 。とこ ろで 、こ の 町 の 名 前 に Bad つ まり 温 泉 と いう 文 字 がついているから、 どこ かで 温 泉が 出 る のか もし れない が、 わからな い。200 年 ぐらい 前 までは この 辺 り 一 帯 数 百 キ ロに わたって すべ て 泥 湿 地 帯 でと ても 人 が 住 める とこ ろで はなかった はず だか ら、 こんな 所 に 温泉 が 出 ると いう のは、 日 本 の 温 泉 し かしら ない 者 に とってはち ょっ と 信 じが たい。 もっ ともドイ ツに は 温 泉 がた くさ んあるが 、 火 山 も 地 震 も ないから、 温 泉 が 湧 き 出 る 構 造 が 日 本などと は 異 なる のかも しれ ない。Husum か ら Bad St Peter-Ording へ ローカル 線 で 行 く 途 中 、 列 車 は Tönning とい う 駅 でス イッチバ ック する 。つま り 列 車 の 進 行 方 向 が 逆 に なる 。この 町 は この Eiderstedt 半 島 の 中 心地 で、 半 島 の 名 前 にあ る Eider はユ トラ ント 半 島 を 横 断 する アイ ダー 川 に 由 来 す る。 このテニン グと いう 町 が 栄 えた のは、ア イダー 川 を 使 っ て 物 資 を 輸 送 す る 拠 点 に なった から だ。19 世 紀 末 には アイダー 川 は キール 運 河 に 繋 がって、 北 海 と バルト 海 を 船 で 往 き 来 で きるように なっ た。 したが って 、ロシア やスウ ェー デン などとイギ リス やフ ラン スと 物 資 を 降ろさず に 輸 送 で きるわ けで 、アイダ ー 川 は とて も 重 要 な 役 割 を 果 た した 。 前 述 のよ うに 周辺 は 広 大 な 泥 湿 地 帯 で とて も 港 など 造 れな いか ら、 ユトラント 半 島 で 北 海 に 面 した 港 を 造れる 場 所 は ごく わずか しか ない。 前 回 のフ ーズ ムや 、 後 日 紹 介 する グリ ュッ クシュ タッ ト、ハンブ ルク など 。そん なわ けで、こ の 小 さ なテ ニン グの 町 もそ れな りに 栄 え たこと は、 建物 を 見 れば わか る。- 12 -


北 ドイツの 旅 へ(13)Friedrichstadtフリ ート リヒ シュタ ット は「フリ ードリ ヒの 町 」 。シュレス ヴィ ヒ・ ホル シュタ イン のデンマ ーク 王 国 連 合 か らの 独 立 運 動 (1848 年 ) の 際 に デン マークに 徹 底 的 に 破 壊 さ れたが、い まは 歴 史 遺 産 の 町 と して、 近 隣 のギ ムナ ジウ ムの 子 らが 社 会 科 見 学 に しばし ば 訪 れる。フ ーズ ムか ら 列 車 で 15 分 ぐら いハン ブルク 寄 りに ある 。ここ も、 駅 周 辺 には 何 も ないが、 駅 舎 の よう な 倉 庫 から 直 角 に 幅 2メ ート ルもな い 小 路を 入 る と、 小 川 を 渡 り 新 興 住 宅 地 に 出 る。 右 に 進 ん でから 勘 で 左 に ちょ っと 折 れる とグ ランドに 着 く 。 遊 歩 道 を 左 に 入 る と、 今 度 は 幅 10 メ ート ルぐ らいの 運 河 に 着 く 。オ ランダ風 の 跳 ね 橋 を 渡 ると、 この 歴 史 遺 産 の 町 に 入 る 。 橋 から 左 を 見 ると 湖 の よう な 大 き な 川 が見 える 。 駅 の 近 くの 踏 切 か ら 車 道 を 左 に 向 かっ て 10 分 ぐら いでガソリ ンスタ ンド に 着 くから、 そこ から 左 に 折 れて も 町 に 入 れる。 たぶ んこ ちらのほう が 分 かり やす いかも しれ ないが、 とに かく 駅 前 に は 小 さなレス トラン 1 軒 以 外 何 もないの で 一 瞬 迷 う。( 地 図 の 左 に 線 路 と 車 道 が 写 ってい るが 、その 踏 切 の すぐ 上 に 駅 が ある 。 見 所 は、 駅より 右 の 運 河 と 写 真 中 央 を 流 れる 川 の 間 にだけ あるの で、 2 時 間 も あれ ば 見 終 わる 。あと は 運 河 や 川 をめ ぐる 遊 覧 船 に 乗 った りカフ ェでく つろ ぐか 、Husum と 掛 け 持 ちで 見 学 する と 良 いだ ろう 。町 に 入 っ た 途 端 、 カメ ラの 被 写 体 がず らりと 並 んで 、 片 端 か らシ ャッ ターを 押 し たくなる 。そ の 被 写 体 と は、 小 さ な 一 般 住 宅 のこ とで 、デンマー ク 風 とも 言 え るしオ ラン ダ風 とも 言 え る 独 特 の 質 素 な 建 物 ばか りだ。 ユト ラン ト 半 島 は、 以 前 も 書 いた がデン マー ク領 だっ たし 、デ ンマー ク 語 を 話 す 人 が 多 か った 土 地 である 一 方 、こ こは 宗 教 的 理 由 でオ ランダか ら 逃 れて 来 た 人 が 定 住 し た 所 でもあ るの で、 デンマーク 風 で あり オラ ンダ 風 であ るのは 当 然 と 言 え る。ま あ、 ここでも そうい った 家 並 みを 写 真 で 見 て もら うこ とにし よう 。- 13 -


日 本 で 売 ら れて いるガ イド ブックに は 載 っ てい ない 北 ドイツの 穴 場 だ。2010 年 3 月 初 めに 行 っ たと き、 川 や 湖 はどこも 全 面 凍 結 し ていた。北 ドイツの 旅 へ(14)Glückstadt地 名 を 訳 すと 「 幸 福 町 」 。 日 本 に も 北 海 道 に そう いう 名 の 駅 があ った が、 ネット で 見 るとアメ リカ 合 州 国 ミシ シッ ピー 川 沿 いにも ある らし い。ドイツ 国 内 では 同 名 の 町 は ない がGlückdorf という 村 はある。まあ、 誰 でも 単 純 に 思 いつきそうな 名 前 ではある。ドイツの 北 端 はユトラント 半 島 にあるが、 半 島 の 北 半 分 はデンマーク 領 、南 半 分 がドイツ 領 で、その 南 半 分 のちょうど 真 ん 中 あたりの 西 側 、つまり 北海 側 にこの 町 はある。ここも 港 町 として 発 展 したが、Hamburg 同 様 、 目 の 前 に広 がる 広 大 な 水 域 は 北 海 ではなく、チェコのプラハを 水 源 とするエルベ 川 だ。Hamburg も Bremen もその 他 北 ドイツの 大 きな 町 のほとんどが 港 町 として 発 展 したもので、 盛 期 にはハンザ 同 盟 都 市 としてその 名 を 世 界 に 轟 かせた。ただし、Hamburg や Bremen, Kiel , Lübeck, Rostock 等 のように 現 在 も 都 市 として 栄 えているところと 違 って、グリュックシュタットは 小 さく 素 朴 さを 残 した 静 かな 町だ。 日 本 で 売 られているガイドブックにはまったく 載 っていない、 北 ドイツの 穴 場 の 一 つ。ただし、 前 回 紹 介 したフリードリヒシュタット 同 様 、とにかく 小 さな 町 なので、 観 光 目 的 ならば 半 日 とかからないから、のんびり 旅 行 を楽 しむか、せっかちな 日 本 人 向 けには 他 の 同 様 の 町 とセットで1 日 を 過 ごすのが 良 いかもしれない。ここも、 駅 を 降 りると 目 の 前 は 林 と 池 で 何 もない。すぐ 近 くに 踏 切 があるので、 線 路 を 越 えるとすぐに 真 っ 直 ぐにのびる1 本 の 商 店 街 があり、そこを- 14 -


そのまま 進 めば 市 庁 舎 前 の Marktplatz に 着 く。 赤 煉 瓦 の 市 庁 舎 ( 右 写 真 )を 含 めて 円 形 に 小 さな 商 店 やレストランが 並 んでいる。市 庁 舎 左 横 のレストラン3 軒 ( 左 写 真 の 中 央 の 小 さな 家 が 特 に)がお 薦 め。 土曜 日 には 市 庁 舎 で 結 婚届 を 出 した 人 がこのレストランで 小 さな 披 露宴 を 催 すのが 見 られるだろう。(タイミングが 悪 いと、「 見 られる」 以 前 に空 席 がない。)この 広 場 を 抜 けてさらにいま 来 た 先 の 進 行 方 向 に 進 むと 小 さな 堀 がある。この 堀 と 車 道 を 越 えると 住 宅 街 となり、 小 さなかわいいデンマーク 風 の 家 が石 畳 の 通 りに 数 条 建 ち 並 んでいる。ヨーロッパ 人 は 概 して 窓 辺 を 通 行 人 に 見せるために 飾 っていることが 多 いので、それらを 覗 きながら 散 歩 するのが 楽しい。 住 宅 街 を 徐 々に 左 に 折 れ 曲 がりながら 進 むと 運 河 に 出 る。そして 運 河に 沿 ってさらに 先 に 進 むと、 海 かと 思えるような 大 きなエルベ 川 に 着 く。北 ドイツの 旅 へ(15)Schleswigこの 町 の 名 前 は 、 現 在 ド イツ 連 邦 州 の 一 つシュレ スヴ ィヒ ・ホル シュ タインに 使 われ ているが 、 前 にも 書 いた よう に、この 州 名 は 、かつて のシ ュレ スヴィ ヒ 侯 国 と ホル シュタ イン 侯 国 を 統 一 す ること を 目 指 し た 運 動 から 生まれた 。そ のシ ュレス ヴィ ヒ 侯 国 の 中 心 に あるのが この 町 で 、 当 時 この 地 を 統 治 した 一 家の 宮 殿 が、 現 在 は 州 立 博 物 館 と なっ て 残 っ ている。 その 宮 殿 に 行 く には 、いつも のこと ながら 商 店 等 が 一 軒 もな い 駅 前 の 住 宅 地 を 抜 けて、 突 き 当 たり を 左 に 曲 が ってしば らくし て右 手 に 町 立 郷 土 館 があ るの を 見 つつ 通 り 過 ぎる と、 次 に 右 に 大 きな 湖 が 見 え る、そ の 反 対側 すな わち 左 側 に 向 か う。 「 向 かう 」とい うか 、 左 側 に 白 亜 の 宮 殿 ( 絵 葉 書 上 中 央 )の 堀 と門 が 見 える 。 展 示 品 も なか なか 見 応 えのあ る 博 物 館 だ。 博 物 館 の 右 奥 に は 美 術 館 が あり 、前 に 紹 介 し たエ ミール ・ノ ルデの 絵 がそこ にた くさ ん 展 示 され てい る。宮 殿 から さら に 湖 に 沿 っ て 15 分 ほど 歩 くと、 教 会 の 塔 ( 絵 葉 書 左 )が 見 え る。そ こがこ- 15 -


の 町 の 中 心 だ。 そこを 通 り 過 ぎ てさ らに 先 へ 行 くと 、 小 さ な 独 特 の 雰 囲 気 を 醸 し 出 す 集 落がある が、 そこ はかつ ての 漁 村 だっ た。 円 形 を なす 小 さな 村 と いう か 集 落 に 立 ち 並 ぶ 家 はどれも アン デル センの 実 家 を 思 い 出 すデン マー ク 風 の 小 さ な 家 ばか りで 、 思 わず 全 軒 写 真を 撮 り たく なる ほどだ 。ち なみに 駅 からこ こま で 歩 くと1 時 間 弱 か かる 。とこ ろで 、さ っきか らず っと 右 手 に 見 え てい た 広 大 な 湖 は、 じつ は 湖 では ない。 シュ ライと 名 づけ られ たフィ ヨル ドだ。つ まり 氷 河 時 代 に 氷 が 陸 地 を 削 っ てで きた 入 り 江 であ る。しかし 、ノ ルウ ェーに ある 、 渓 谷 の ような 断 崖 絶 壁 のフィヨル ドで はな く、 どう 見 ても ただの 湖 にし か 見 えない 平 ら な 水 面 で あるの が、 この フィヨルド の 特 徴 を なし ている 。い ずれにせ よ、 湖 や 潟 では なく フィヨル ドなの で、 海 の 水 が 入 って いる 。と は 言 え、 海 すな わちバル ト 海 はは るか 彼 方 に ある。は るか 彼 方 に ある が、バルト 海 から 船 で そのま まこ の 奥 まっ た 所 へ 進 入 する ことができる から 、デ ンマー クの バイキン グが 勢 力 盛 んな 頃 は、ユトラ ント 半 島 の 中 央 に 食 い 込 んで いるこ のフ ィヨ ルドの最 奥 地 まで じっ さいに 来 て いる。そ のバイ キン グの 里 はハイタブ と 言 い、 現 在 は 記 念 館 と 復 元 された 民 家 があ る。 先の 小 さ な 漁 村 と 並 んで この 町 の 観 光 の 目 玉 だが 、い ずれも駅 から かな り 遠 く、 徒 歩 1 時 間 弱 。 バスは 1 時 間 に 1 本 。駅 前 に タク シー はまず いな い。 自 動 車 に 乗 らな い 旅 行 客 にとって はな かな かつら い 観 光 地 だ。写 真 左 はバイキングの 居 住 地 。写 真 中 央 は 10 世 紀 頃 から 代 々ずっと 飼 われてきた 山 羊 。上 の 地 図 は 当 時 の 居 住 地 を 指 す。とこ ろで 、Schleswig は 、 日 本 人 が 書 いた 論 文 やエッセーなどでは みな「 シュ レー スヴィヒ」と カタ カナ 表 記 さ れて いる。し かし、 私 が シュ レスヴィヒ ・ホ ルシ ュタ インの 州 都 キールに 行 き 始 め て 18 年 、 Schleswig の 町 に も 何 度 も 行 っ たが 、 州 名 も、 列 車 の 車 掌 が 言 う駅 名 も みな 「シ ュレス ヴィ ヒ」であ り、「 シュ レー スヴィヒ」 など と 延 ばし て 発 音 する のを 一 度 も 聞 いた ことが ない 。 地 元 の 人 の 発 音 が 最 も 正 しいと 思 うが 、ま あ、 Leipzig は「ライ プツ ィヒ 」と 言 わず に 地 元 の 人 は「 ライ プチ ク」と 言 っ たり する から 、じっ さい どうなん だか はわ からな い。 ちなみに 長 野 県 伊 那 地 方 にある 伊 那 大 島 を 地 元 の 人 は「 いな おじま」 と 言 い、 群 馬 県 八 ッ 場 ダ ムは 「やん ばダ ム」 と 読 む 。北 ドイツの 旅 へ(16)Rendsburg- 16 -


レン ツブ ルク は、キ ール とシュレ スヴィ ヒの 中 間 、ハンブルクと フレ ンス ブルク の 中 間 に 位 置 する。 つま り、 ユトラント 半 島 南 に ある ドイツ 領 シ ュレスヴ ィヒ・ ホル シュ タイン 州のほぼ 中 心 に 位 置 する 。し たがって 、19 世 紀 に 政 治 の 中 心地 だっ た 時 もあ る。19 世 紀 初 頭 、 当 地 がま だデンマー ク 王国 連 合 に 属 して いた 時 期 、 キール 大 学 法 学 部 で 学 ん だあとズィルト 島 の 代 官 を 務 め てい たロルン ゼンが 著 し た 小 冊 子 『 シュレス ヴィ ヒホ ルシュ タイ ンにおけ る 憲 法 制 定 につ いて(Ueber das Verfassungswerk in Schleswigholstein, Kiel 1830)』 は、 大 反 響 を呼 び、 わか って いるだ けで も1 万 部 発 行 さ れた 。 本 文 14 ページの この 小 冊 子 でロ ルン ゼンが 訴 えたこ とは 、シ ュレスヴィヒホ ルシ ュタ インに 憲 法 を 制 定 す ること であ り、 具 体 的 には 二 院 制 の 導 入 、 立 法 と 租 税 認 可 権 の 導 入 、 司 法 と 行 政 の 分離 、そ して シュ レスヴ ィヒ ホルシュ タイン に 関 する 行 政 の 独立 だっ た。 その ロルン ゼン の 銅 像 が 、レン ツブ ルク の 中 央 広 場 に 建 って いる 。しか し、 とく にドイ ツ 史 に 関 心 の ない 一 般 の 人 に とって、レ ンツ ブル クで 一 番 印 象 に 残るのは 、キ ール 運 河 を 渡 る ループ 式 の 高 架 橋 だ ろう 。キールや ハン ブル クか ら 列 車 に 乗 って、そ ろそ ろキ ール 運 河 を 渡 る かな という ころ 、 線 路 は 徐 々に 高 く なっ てつ いに 運 河 に 架かる 鉄 橋 を 渡 る 。する と、 遙 か 下 に レンツ ブル クの 町 が 見 えて きて 、そ の 住 宅 の 間 に 線 路が 輪 を 描 い て 走 ってい るの が 見 える 。と 思 うう ちに 列 車 が 走 る 線 路 の 位 置 が 次 第 に 低 く なって 林 の 中 を 抜 けるよ うに 走 る ころ 、ふと 窓 か ら 外 を 見 る と、 上 方 に 大 きな 鉄 橋 が ある のが 見 え る。 じつ は、こ の 鉄 橋 こ そい ま 私 た ちが 通 っ てきたもの なの だ。 こう して 列 車 は360 度 一 周 した ころ 、よう やくレン ツブルク の 駅 に 着 く。… …と 、 文 字 で 読んでも 実 感 がわ かない だろ うから、 地図 で 示 そう 。 地 図 の 下 がキ ールやハ ンブルク 方 面 で、 運 河 を 渡 っ て 町 を 一 周して 高 度 を 下 げ て 左 側 の 駅 に 着 く。 駅より 左 、 地 図 の 左 寄 り に 小 さな 輪 を 描いてい るよ うに 見 える のが レンツブ ルクの 中 心 だ 。ブ レーメ ンや リューベ ックなど と 同 様 に 、 町 の 周 囲 が 運 河 に 囲まれて いる のは 、 日 本 の 城 下 町 が 堀 割で 囲 ま れて いる のと 同 じ 原 理 に よる 。レン ツブ ルク の 町 自 体 は 、はっき り 言 っ て、 あま りおもしろ くな いが 、 運 河 の 地 下 を くぐる 車 道 の トン ネルに 歩 行 者 用 の 長 大 なエ スカ レー ターが 両 岸 に 付 いて いる のでそ れに 乗ったり 、 運 河 沿 いを 散 歩 し て 頭 上 の 鉄 橋 を 走 る 列 車 を 眺 め るの はち ょっ とお もしろ い。北 ドイツの 旅 へ(17)Kielキー ルは 、ド イツ 連 邦 州 の1つ、 シュレ スヴ ィヒ ・ホルシュ タイ ン 州 の 州 都 だか ら、 その 名 前 と 位 置 を 覚 えて おい て 欲 しい 。ユト ラン ト 半 島 の 中 間 よ り 少 し 北 寄 り で、 東 のバ ルト 海 に 面 し てい る。 大 きな キール 湾 は Kielerfjord と 呼 ば れる が、こ れは 氷 河 が 削 っ たフィヨルド では ない 。キー ル 中 央 駅 の 目 の 前 に ある 湾 の 一 番 奥 から 湾 の 外 の バル ト 海 ま では 小型 船 で 約 40 分 かかる。そ の 途 中 で 左 に 入 る 大 きな 運 河 があ るが、これ が 前 回 も 触 れたキール 運 河 で 、 完 成 した のは 19 世 紀 後 半 と 古 い 。キー ル 港 はか つて 重 要 な 軍 港 だっ たため に、 第 二 次 世 界 戦 争 で 徹 底 的 に 爆 撃 され 、キ ー- 17 -


ルの 町 全 体 が 焼 け 野 原 とな ったため に、 現 在 見 られ る 建 物 はす べて 戦 後 建 て られた もの で、モダン で 明 るい 。 駅 や 商 店 街 な どが ある 左 岸 の 向 こ う 側 つ まり 右 岸 には HDW の 造 船 所 があり、 24 時 間 煌 々 と 明 かり がついて 船 の 建 造 や 修 理 が 行 わ れている 。とき どき 潜 水 艦 も修 理 ・ 点 検 で 入 港 する 。キー ル 大 学 ( 正 式 名 称 は クリステ ィアン ・ア ルブ レヒト 大 学 )の ゲス トハ ウスは 、キ ール 湾 に 面 し た 遊 歩 道 脇 に 建 っており 、 部 屋 の 窓 から 、 毎 日 スウ ェー デン のヨ ーテボ リ、 ノルウェ ーの オス ロ、さ らに ロシアそ の 他 の 港 を 結 ぶ 大 型 フ ェリ ーの 出 入 りが 見 られ る。 大きいフ ェリ ーは 10 階 建 て ビル より も 大 き い。その 一 方 で、 ヨットやル ーダー 等 も たくさん 浮 か んで おり 、1972 年 の ミュ ンヒェ ン・オリ ンピックで ヨット 大 会 会 場 にな って 以 来さまざ まな 世 界 的 ヨッ トレ ース 大 会 が 湾 内 で 開 かれ ている。6 月 下 旬 に 8 日 間 行 わ れる キール 祭 (Kieler Woche)は 連 日 のどんち ゃん 騒 ぎ だが 、 最 終 日 の 22 時 頃 、 湾 に 浮 か ぶ 船 上 でオーケ スト ラが クラシ ック 音 楽 の 生 演 奏 を 始 め ると 同 時 に 一 斉 に 花 火 が 打 ち 上 げら れ、 その 間 、 湾 に 入 る 時 は 赤 ラン プ、 出 る 時 は 青 ラン プを 灯 すことに なっ てい るた くさん のヨ ットが 暗 闇 を 静 か に 進 行 する 。その 幻 想 的 な 光 景 は、 大 音 響 の 音 楽 と とも に 胸 に 迫 る もの がある。 他 方 、 大 晦 日 の 晩 に のべつ 幕 なし 打 ち 上 げら れる 花 火 は やや 興 醒 めだ 。前 述 のよ うに 、キー ルは 戦 災 で 全 焼 した ので 、キ ール 大 学 は 町 は ずれ に 引 っ 越 し た。 だが、そ のお かげ で 広 大 な 敷 地 を 手 に して、総 合 大 学 と して の 充 実 をは かること ができた。 工 学 部 と 医 学 部 は 本 部 とは 敷 地 を 異 にするが 、 本 部 が ある 校 舎 の 敷 地 は、 一 辺 がバス 停 の 数 で4 つ、 狭 く 見 積 も って も3kmはある から 、 日 本 の 大 学 と は 比 べも のにならない 。 大 学 の 敷 地 内 に 植 物 園 があ るのはドイツ では 珍 し くない が、 中 央 を 高 速 道 路が 走 っ てい るの はちょ っと 珍 し い。右 の 写 真 は 全 面 凍 結 し た 池 とキール 市 庁 舎北 ドイツの 旅 へ(18)Plönプレ ーン は、 キール と、 ドイツを 代 表 す る 小 説 家 トーマス・ マン の 生 誕 地 リュー ベッ クとを 結 ぶ 鉄 道 の 中 間 に ある 湖 水 地 方 の 一 つ 。キ ール から 東 に 向 かう 列 車 が2 つめの 駅 に 着く 少 し 手 前 で、 進 行 方 向 右 側 に 湖 が チラッ と 見 える 。これが 始 まり で、 Preetz(プリーツ)、Plön(プレーン)、Malente(マレンテ)、Eutin(オイティン)といった 駅 を 列 車 は 左 右 に 大 小 さ まざ まな 湖 をかすめ なが ら 停 まりつ つ 走 り 去 る。 その 大 小 さ まざ まな 湖 を 小 さな 運 河 を 介 して 観 光 船 が- 18 -


巡 って いる 。 駅 から 離 れた 湖 畔 の 小 さな 村 に 素 敵 な 教 会 が 建 っ てい たり する 。むか しキ ールに 住 んで いた 頃 、 自 転 車 を 列 車 に 乗 せてプリー ツま で 行 き、そ こか らあちこ ちの 湖を 何 度 もま わっ たこと があ る。 湖 畔 はもちろんの こと 、 湖 をつな ぐ 道 のすべて に 自 転車 専 用 道 路 があ るので 、 自 動 車 事 故 の 心 配もいら ない し、 道 に 迷 うこ ともない 。ドイ ツ 中 から 観 光 客 が 集 まるのは マレンテで、 リゾ ート ホテル が 湖 畔 に 建 ち 並 ぶが、も ちろ ん 美 しいの はそ の 湖 では なく、やはり この 地 域 で 最 大 の 湖 であるGroßer-Plönsee だ ろう 。こ の 湖 の 美 しさを さらに 引 き 立 てて いるの が、 湖 畔 に 建 つ 白 い宮 殿 だ 。 今 年 ( 2010 年 )3 月 に 行 った ときは、こ の 大 きな 湖 が 全 面 凍 結 し てい て、ひ とき わ 美 しかった。 ただ 残 念 なこ とは、 かつ ては 自 由 に 出 入 り できた この 宮 殿 が、 いまは 門 が 閉 じ られて 入 れ ない ばか りか 、 警 備 員 が ジッと 近 くを 通 る 人 を 見 張 っ ているこ とだ。 なに か 事 件 でもあっ たの だろ うか 。それ でも 、宮 殿 の 一 段 下 の 公 園 に は 入 れるから 、そこ から 湖 を 見 おろすこ とは でき る。湖 水 地 方 に 広 がる 牧 場 で は 牛 や 馬 がのん びり と草 を 食 み、 畑 は 春 は 菜 の 花 畑 に なっ て、ど こま でも 黄 色 の 絨 毯 が 続 くよ うに 見 え て 美 しい。 いま はこの 季 節 に 授 業 は 休 め ない から 残 念 だ。 自 然 の 美しさを 体 感 する には、 やは り5 月 か ら6 月 が 最 も良 く、 林 の 下 に はさま ざま な 野 草 が 花 開 き 、 梢 では 日 本 では 聞 い たこと のな いような 小 鳥 た ちが 囀ってい る。 太 陽 は 21 時 過 ぎま で 照 ってい るから、一 日 を フル に 満 喫 でき る。 冬 は 寒 い が、 湖 では たくさん の 種 類 の カモが 見 ら れるのが 救 いか もし れない。( 右 の 写 真 。 手 前 のカ モは 冬 に 多 摩 川 にも 来 るマガモ 、 奥 のカモ も 多 摩 川 に 一 年 中 い るオオバ ン、その 真 ん 中 にいる 白 黒 の 小 さな カモはヒメ ハジロで、 ふつうカナ ダやアラス カにいて 、ドイツ では稀 だとか。 プクンと 水 に 潜 って 、 予 想 と 違 うところか ら 出 てくる かわいいカ モだ。 多 摩 川 でこ れに似 たカモが いたらミコ アイサだ ろう。 通 称 パンダガモ という。)北 ドイツの 旅 へ(19)Lübeckリュ ーベ ック は、ハ ンザ 同 盟 都 市 の 一 つ 。つ まり 港 町 と して 栄えた。 同 じ ハン ザ 同 盟 都 市 でも、ハ ンブル クや ブレ ーメンは 北 海に 面 し てい るの に 対 し て、 リューベ ックや キー ル、 ロストック などはバ ルト 海 に 面 して いる 。これら ハンザ 同 盟 都 市 には 多 くの 富裕 な 商 人 が 立 派 な 建 造 物 を 現 在 もた くさん 残 し てお り、 見 応 え がある。 リュ ーベ ックに もそ うした 商 館 がた くさ ん 見 られるが、 大きさに 関 係 なく リュー ベッ クで 一 番 有 名 な 商 館 はブ ッデンブロ ーク 家 の 商 館 だろ う。 市 庁 舎 のすぐ 裏 手 に 建 って いる 。なぜここ が有 名 か と 言 えば 、それ はド イツを 代 表 する 小 説 家 ト ーマス・マ ンの 生 家 だか らで あり、 彼 は 『ブッデ ンブロ ーク 家 の 人 びと』と いう 小 説 を 書 いてい る。 こ- 19 -


の 商 館 は 現 在 ト ーマス ・マ ン 記 念 館 として 公 開 され ている。リュ ーベ ック もブレ ーメ ンも、 航 空 写 真 で 見 ると 、その 形 から して 町 の 特 徴 が よくわか る。つ まり ほぼ 円形 で、 周 囲 を 堀 や 運 河 や 川 で 囲 まれ ている 。 町 が 円 形なのは さほ ど 珍 しくは ない が、 堀 割 がいま でも きれ いに 残 っ てい ると ころは そう 多 く はな い。も う 一 つ、 リューベ ック の 町 の 魅 力 とな っている のが、 円 形 の 町 に入 る 入 り 口 に 立 つ 門 ( ホル ステン 門 )で、 ベル リン のブラン デン ブル ク 門 や ミュ ンヒェン のイザ ール 門 の ような 立 派 さ はな いが、 リュ ーベック の 門 は かわ いくて、ま るで お 伽 噺 の 世 界 に 入 る よう だと 言 われ ている。シュ レス ヴィ ヒ・ホ ルシ ュタイン の 州 都 キー ルも 港 町で、 私 はそ こに 住 んだ こと もあるし 中 長 期 で 何 度 も 行 ったことが ある が、 キール で 危 険 な 目 に あった こと は 一 度 もない。と ころ がキ ールよ りは るかに 小 さな 港 町 リ ュー ベックでは 白 昼 ス キン ヘッズ に 囲 まれたこ とがあ り、 あま り 良 い印 象 を 持 っ てい ない。 現 代 ドイツを 代 表 す る 小 説 家 はギュンター ・グ ラス だが、 彼 は リューベ ック 近 郊 に 住 ん でおり、 極 右 に 何 度 も 自 宅 を 襲 撃 さ れ、 リュー ベッ クの 教 会 が極 右 に よっ て 放 火 され たこ ともある 。でも まあ 、そ ういつでも 嫌 なこ とば かり 起 きて いるわけ ではな いか ら、 ハンブルクに 行 っ たら 列 車 で 1 時 間 の リュ ーベッ クに もぜ ひ 立 ち寄 った ら 良 いと 思 う。リュ ーベ ック からす ぐの ところに トラヴ ェ・ ミュ ンデというド イツ 生 粋 の 海 辺 リゾ ートがる 。 有 名 人 が 大 勢 滞 在 しただけ あっ て、 高 級 リ ゾー トホテル が 建 ち 並 ぶ 、ら しい。「らし い」 とい うのは 、 高 級 と は 縁 がない ので 行 っ たことがな いた め。15. Dezember 2010北 ドイツの 旅 へ(20)Ratzeburgキー ルか ら 列 車 でリ ュー ベックへ はドイ ツを 東 進 するが、そ のま ま 東 進 し 続 ける とウ ィスマー ル Wismar、 ロストッ ク Rostock、 シュヴ ェリーン Schwerin 等 々に 達 する。リ ュー ベックか ら 直 角 に 折 れ 曲 がっ て 南 進 す る 路 線 は2 つあ り、1つは ハン ブル ク Hamburg に 達 し、もう1 つは ハン ブルク より さらに 南 に 位 置 する リュ ーネブルク に 達 する 。リ ューネ ブル クは 町 全 体 が 世 界 遺 産 に なる ほどすて きな 町 なの で、 あとで 紹 介 する こと にし て、 今 回 は リューベ ック とリ ューネ ブル クを 結 ぶ 路 線 上 の 小 さな 町 を 紹 介 し よう 。こ の 沿 線 でぜ ひ 訪 ねてみる こと をお 薦 めす る 町 は、ラッ ツェブ ルク Ratzeburg、 メルン Mölln、 ラウエンブル クLauenburg。ラッ ツェ ブル クは、 リュ ーネブル ク 行 の 列 車 に 乗 って 一 つ 目 の 駅 。 駅 前 に は 何 も ない 。駅 から 直 角 に 約 2キロ の 道 を 行 くと 、 島 に 着 く 。と 言 うと 妙 だ が、 要 す るに 島 に 道 路 が 通じてい て、 両 側 に 湖 を 見 つ つ 島 に 行 き 着 け る。 町 は 高 台 に あり 、 彫 刻 家 エル ンスト ・バ ルラッハ 記 念 館 や 大 聖 堂 など がある。 島 その もの は 静 かだが、 道 路 が 島 の 真 ん 中 を 通 り 抜 けバイパ スと 化 し 、 町 が 分 断 されてい る。そ こで 道 路 迂 回 が 検 討 され てい るが まだ 実 現 し ていない 。な お、 駅 前 か ら 町 までバス が 通 っ てい て、 乗 れば5 分 とか から ない 。メル ンは 、 中 世 末 期 のい たずら 者 の 代 表 オイ レン シュピーゲ ル Till Eulenspiegel が 最 後 に- 20 -


行 き 着 いた とこ ろと 言 われ 、 教 会 の 下 に 彼 の 銅 像 が 立 っている 。い たず らっ ぽく 親 指 を 立ててお り、 見 物 人 がそ の 指 を 握 って 記 念 撮 影 す るの で、 指 先 だ けが 妙 に ピカ ピカに 光 っ ている。 静 か な 湖 がある この 小 さ な 町 で、ド イツ 再 統 一 後 の すぐ あと トル コ 人 一 家 が 放 火 で殺 され た 事 件 が 起 き、 被 害 者 に 小 さ な 女 の 子 が いた ためもあっ て 全 国 で 追 悼 ・ 抗 議 デモ が行 われ た。 リュ ーベッ クと リューネ ブルク は 旧 西 ド イツに 属 す るが 、 途 中 駅 のある 一 帯 は旧 東 ド イツ に 属 する。 東 西 統 一 の 幕 開 けが この 悲 惨 な 暗 い もの にな った が、 いまは 静 け さを 取 り 戻 し てい る。ラウ エン ブル クはエ ルベ 川 に 面 す る。19 世 紀 ま でエ ルベ 川 の 船 運 の 中 継 地 と して 栄 えたが、 陸 上 交 通 の 時 代 とな って 取 り 残 され 寂 れ た。 北 ドイツで は 珍 しい 木 組 みの 家 が 並 び、石 畳 と とも に 歴 史 を 身 体 で 感 じ るこ とがで きる 。 厳 冬 期 に はエ ルベ 川 の 流 氷 を 眺 め るこ とができ る。 高 台 に 小 さ な 塔 とお 城 が あり、 その 先 に 商 店 街 があ るが 、そ こは 行 って も 無 駄 。川 沿 い にあ る 木 組 みの 古 い レストラ ン 兼 ホ テル がお 薦 め。エルンスト・バルラッハ の 家 とラッツェブルクの 大 聖 堂北 ドイツの 旅 へ(21)Stadeシュ ター デも 、かつ てハ ンザ 同 盟 に 加 わ った こと のある 港 町 で、 エル ベ 川 沿 いに ある 。いまは 小 さ く 静 かな 町 だが 、かつて 商 業 が 栄 え たで あろうこと は 現 存 す る 商 館 や 教 会 等 を見 れば わか る。 ハンブ ルク から 電 車 で 約 1 時 間 、 西 に 突 き 出 た 半 島 に 向 かう ローカ ル 線 沿いにこ の 町 はあ る。こ こは 、 北 ドイ ツと 言 って も、 シュレスヴ ィヒ ・ホ ルシ ュタイ ン 州 でもハン ブル ク 州 でもな く、 ニーダー ザクセ ン 州 に 属 する。エル ベ 川 の 対 岸 に は、 以 前 紹 介したグ リュ ック スシュ タッ トがあり 、 半 島 の 裏 側 に はブレーマ ーハ ーフ ェン つまり ブレ ーメン 港 があ る。 そこか らさ らに 南 下 すると オラ ンダ に 続 く 。シュ ター デの 、ホー ムと バス 停 留 所 が 兼 用 に なっ ている 明 る い 雰 囲 気 の、 悪 く 言 えば 何もない 開 け っぴ ろげの 駅 を 出 て 左 手 にちょ っと 歩 く と 堀 を 渡 る 橋 が あり 、そ の 橋 を 渡 っ てさらに 目 の 前 の 信 号 を 待 っ て 車 道 を 横 断 す ると 、も うシュター デの 市 内 に 入 る。そ して いきなり 武 器 庫 ( いまは レス トランと 商 店 が 入 っ てい る) 前 の 広 場 に 出 、 そこ から 石 畳 の 道をくね くね と 折 れ 曲 が って 歩 く と、 見 応 え のあ る 洒 落 た 造 りの 商 店 と 小 さな 市 庁 舎 を 左 右に 見 な がら 緩 い 坂 を 下 って 行 く と 運 河 に 着 く。 運 河 を 前 に した 数 軒 の 商 館 が この 町 一 番 の見 所 で 、こ こよ り 先 に ある 車 道 を 渡 っても もう おも しろいもの は 何 もな い。 この 運 河 の 曲がり 角 に 大 きな 古 いア ンカ ーがあり 、 左 手 には 魚 売 りのおばさ んの 銅 像 があ る (おばさ んんの 後 ろに 魚 がたくさ んはいっ た 籠 と 猫 )。この すぐ 前 の 商 店 がか つては Fischmarkt つ まり 魚市 場 だ った 。- 21 -


さ て、 カフェで一 服 して から 商 店街 を 半 分 戻 っ て 市庁 舎 脇 の 三 叉 路 まで 来 たら 、 今 度 は左 の 路 地 に 入 ると、全 国 的 に 知 ら れる古 い パイ プオルガンが ある 教 会 に 行き 当 たる 。 礼 拝 堂のよう な 造 りの 内 装 は 、キ リスト 教 徒 でな くて も 敬 虔 な 気 持 ち にな れる 。 教 会 の 裏 手 に は附 属 施 設 が あっ て 往 時 を 偲 ぶことが できる 。駅 か ら 市 内 に 入 ると きに 渉 っ た 運 河 脇 の 道 を 、 駅 から 見 たら 左 手 、 市 内 か ら 見 た ら 右 手に 進 む と「 野 外 博 物 館 」と 銘 打 った 小 さな 島 が あり 、 古 民 家 が 4 軒 と 風 車 が 1つあ る。 博物 館 と 言 っ ても 出 入 り 自 由 で、 中 心 にある 民 家 はじ つはレスト ラン 。 博 物 館 の 名 に 釣 ら れて 来 て みた らレ ストラ ンに 来 た 、と いう 感 じだ が、 古 民 家 を 改 造 し たこ のレ ストラ ンは 、この 町 で 最 も( たぶん ) 洒 落 た レス トラン で、 ここ で 結 婚 披 露 宴 を する カッ プルが 多 い 。料 金 は 通 常 のレ ストラ ンと 変 わ らな いから 、シ ュタ ーデに 来 て 食 事 をす るな らお 薦 めだ 。北 ドイツの 旅 へ(22)Lüneburg港 町 シュ ター デの 古 い 商 館 を 感 動 的 に 見 たあ と、 列 車 で 東 へ 約 1 時 間 半 、 リュー ネブ ルクに 着 くと 、 規 模 とレ ベル の 違 いに 圧 倒 さ れる 。 逆 にドイツ 各 地 の ユネ スコ 世 界 遺 産 指 定の 町 を 見 た あと リュー ネブ ルクへ 来 ると、 指 定 され ていなくて も 世 界 遺 産 レ ベルの 町 は ドイツに いく らで もある のか と 思 う。 ここは それ ほど に 世 界 遺 産 級 な のだ 。- 22 -


リュ ーネ ブル クは、 シュ ターデと 同 じく ニー ダー ザクセン 州 に 属 する 。ロ ーカル 線 の 駅を 降 り ると 、 通 りを 挟 んで 向 こ う 側 にも 駅がある から 、 帰 りに 間 違 え ないよう に。リューネ ブル クを 通 る 鉄 道 路 線 は 、 全 国 的 に見 れば ロー カル 線 だが 、そ れよりさ らにローカル な 路 線 が この 反 対 側 の 駅 から 出 ている。ド イツ の 他 の 町 同 様 そ れ 以 外 は 何 もない 駅 前 を、 駅 舎 を 背 に 右 へ 道 を 進 み 、 突 きあたっ たら 左 折 して 鉄 道 ガ ードを 潜 り 川 を渡 ると もう 町 に 入 る。 駅 舎 から 左 に 歩 いて突 きあ たり を 右 折 し 鉄 道 ガ ードを 潜 り 川 を渡 って も 町 に 行 けるが 距 離 的 に はや や 遠い。 右 に 行 く 道 で 最 初 に 着 くのが 港 地 区 ( 上 の 写 真 )で Wasserviertel と 言 う。viertel は「 四分 の 一 」と いう 意 味 で 、 要 するに 一 区 画 の こと 。 運 河 を 囲 んで 洒 落 たレ スト ランや カフ ェが 建 ち 並 ぶ 。 左 に 行 く 道 で は 大 きな 広 場 に 出 る 。こ れは Am Sande と いう 広 場 で、 ハンザ同 盟 時 代 に 栄 え た 商 館 がず らりと 建 ち 並 び 壮 観 だ。 町 の 中 心 は どこ の 町 も 同 じく 市 庁 舎 とその 前 の 市 場 だ が、そ こへ は 左 右 ど ちらか ら 入 って も 等 距 離 に ある 。 世 界 遺 産 規 模 と 行 っても、 町 の 見 所 は 半 日 あれ ばゆっく りまわ れる ほど の 規 模 しか ない 。そ の 分 、 落 ち 着 い た街 と 言 える 。 市 庁 舎 前 へ 行 く 途 中 に も 古 い 商 館 が 並 んでいるの で 飽 きる こと がない 。も ちろんウ ィン ドウ ・ショ ッピ ングも 楽 しめる 。市 庁 舎 (1 頁 目 の 写 真 )は、 13 世 紀 に 建 てら れ、 以 来 500 年 かけ て 増 築 され 、 正 面 は 18世 紀 の もの 。 市 庁 舎 前 広 場 つまり Marktplatz で は どこで もクリスマス 市 が 開 かれ るが 、ここのク リス マス 市 もブ レー メン 同 様 指 折 り 数 え られ るほど 有 名 だ。 いつ もは 土 曜 日 に 市 が開 かれ る。 広 場 を 囲 む 建 物 もすべて ハンザ 同 盟 都 市 にふさわし い 見 事 な 商 館 だが、 ここ はそれだ けで なく 「 白 い 宝 石 」と 呼 ば れた 塩 の 産 地 と して 栄 えた ので 、こ うし た 商 館 は 町 全体 に 見 られ る。 市 庁 舎 裏 に 広 が る 路 地 を 歩 いて もカ メラのシャ ッタ ーを 何 度 押 せば 気 が すむかと いう ほど 被 写 体 には 事 欠 かな い。 日 本 人 団 体 客 もたまに 見 か ける が、 ドイツ には 日本 では あま り 知 られて いな い 観 光 地 がいく らで もあ ると 実 感 す るこ とだ ろう 。リュ ーネ ブル クには じつ は 町 以 上 に 見 る 価 値 の 高 いものがあ る。 町 か ら 車 で1 時 間 ほ ど離 れた 一 帯 に 広 大 に 広 がる エリカの 自 生 地 で、 リュ ーネブルガ ーハ イデ とい う。エ リカ とは 植 物 の 名 前 。 Heide は 荒 れ 地 という 意 味 で、イギ リスやアイ ルラ ンドの 荒 れ 地 に 咲 く ヒースと 同 じ もの 。リュ ーネ ブルガー ハイデ はエ リカ を 守 る ため 、 自 動 車 の 運 行 が 制 限 さ れ、観 光 客 は 馬 車 に 乗 るか 徒 歩 で 見 学 す る。 交 通 の 便 が 悪 く、 短 期 間 の 観 光 旅 行 でここ を 組 み入 れる のは たぶ ん 無 理 だろ う。北 ドイツの 旅 へ(23) 帰 国さて 、 北 ドイ ツの 旅 も 終 わりの 日 となっ た。 まだ まだ 行 きた い 町 や 村 があ るが、 次 の 機会 の 楽 しみ とし よう。 ドイ ツ 最 後 の 晩 は、 いま まで 高 そうで 敬 遠 し てい たホ テルの レス トランで 豪 華 に 行 きたい 。と 言 っ ても 、よほ ど 高 級 な ホテルなら 別 だ が( と 言 うか、 そう いう 所 に 泊 ま った ことが ない ので 知 ら ない) 、ふ つう のホテルに ある レス トラ ンでは 「 豪華 」で も 一 人 前 20 ユ ーロ ( 約 3000 円 )し ないか ら 安 心 ( ?)。むか しチュー リヒのホテルのレ スト ラン で 魚 料 理 を 注 文 した ら(た いて い 一 番 高 価 な 料 理 は 魚 ) 、 若 いウェ イト レスがテ ーブ ルの 脇 にワ ゴン を 運 んで きてて いね いに 骨 と 皮 を 剥 いで まず 片 面 を 出 し てく れて、 私 が 食 べる 間 ずっ と 待 っていて 、 食 べ 終 わ ると 、 冷 め ない よう に 蓋 をし てあっ た 皿 に乗 った もう 片 面 をふた たび ナイフと フォー クで 丁 寧 に 骨 と 皮 を 剥 い で 出 して くれた 。こ んなにリ ッチ な 食 事 をし たの は 初 めて だった が、 ワイ ンと 併 せて たし か 2000 円 ぐら いだっ- 23 -


た。な どと いう 話 をし てい たら 帰 国 できな いの で、 先 に 行 こう 。9・ 11 以 降 、 空 港 のセ キュリテ ィ・チ ェッ クが 異 常 な ほど 厳 し くな り、 チェッ クイ ンでも 手 荷 物 検 査 でもお そろ しく 時 間 がかか るよ うに なったので 、 空 港 へ は 最 低 でも 2 時 間前 に 着 くの はも う 常 識 。そ れどころ か、と くに フラ ンクフルト 国 際 空 港 では それで も 遅 すぎる。 こん なひ どい 空 港 は 世 界 でも 珍 しい 。 可 能 な 限 り 使 いた くな い。 他 方 、 地 方 空 港 のエアフ ルト 空 港 からミ ュン ヒェン 経 由 で 帰 国 し た 時 は、2 時 間 前 に 空 港 に 着 いたら チェ ックイン カウ ンタ ーはま だ 閉 まってい た。 開 くの は 出 発 1 時 間 前 だと か。 無 駄 に 空 港 で 時 間をつぶ し、 チェ ックイ ンを 済 ま せ 税 関 に 向 かう と、今 度 は 税 関 が、 まだ 早 いと 言 っ て 通 してく れな い。搭 乗 開 始 寸 前 に なって よう やく 税 関 が 仕 事 を 始 めてゲート へ。 しか しゲー トに 飛 行 機 は いない 。そ れはさほど めず らし くない 。リ ムジンバ スで 飛 行 機 まで移 動 す る。 かく してよ うや く 飛 行 機 ( 右 写 真 )に 乗 るタラッ プに 着 い たが、 その 便 の 乗 客 はたっ たの 3 人だった 。 客 より 乗 務 員 のほ うが 多 か った。 まあ 、いろんな ハプ ニン グがあ るの が、 旅 の 楽 しみ だ。- 24 -

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