量子コンピュータ と 量子トランスポーテーション - 大阪大学X線天文グループ
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参 考 文 献 1. 量 子 情 報 科 学 <strong>と</strong>その 新 展 開 (サイエンス 社 )2003<br />
2. 現 代 物 理 最 前 線 5 ( 共 立 出 版 ) 2001<br />
3.ナノエレクトロニクス.jp<br />
あやふやな 話<br />
量 子 トランスポーテーション<strong>と</strong><br />
量 子 コンピュータ<br />
2003/7/18<br />
大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科<br />
林 田 清
量 子 力 学 (コペンハーゲン 解 釈 )<br />
(1) 重 ね 合 わせの 原 理<br />
0 <strong>と</strong> 1 が 物 理 的 に 可 能 な 量 子 状 態 ならばα<strong>と</strong>βを 複 素 数 <strong>と</strong>して、 重 ね 合 わせ<br />
ψ = α 0 + β 1<br />
も 可 能 な 量 子 状 態 である。 ここで0<strong>と</strong>1はある 物 理 量 の2つの 異 なる 固 有 値 。<br />
(2)シュレーデンガー 方 程 式<br />
∂ ψ<br />
状 態 ψ の 時 間 発 展 は i = H ψ<br />
∂t<br />
−iHt<br />
あるいはユニタリー 行 列 U = e <strong>と</strong>して ψ →U<br />
ψ<br />
(3) 波 束 の 収 縮 <strong>と</strong> 観 測 (ボルンの 確 率 解 釈 )<br />
観 測 を 行 う<strong>と</strong> 量 子 状 態 ψ = α 0 + β 1は 0 か 1 の 状 態 に 遷 移 する。<br />
2 2<br />
その 確 率 は、おのおの α <strong>と</strong> β で 与 えられる。
EPRパラドックス<br />
• Einstein, Podolsky, , Rosen (1935)<br />
• 一 つの 原 子 核 が 質 量 の 等 しい 二 つの 原 子 核 に 分 裂<br />
し、 逆 向 きに 飛 んでいく。<br />
• 粒 子 Aの 運 動 量 を 測 定 して+P<br />
+P<strong>と</strong>いう 値 を 得 れば 粒 子 Bの<br />
運 動 量 は-P<strong>と</strong> は <strong>と</strong> 確 定 する<br />
• 粒 子 Bの 位 置 を 測 定 し-X<strong>と</strong>いう し<br />
値 を 得 れば 粒 子 Aの 位 置<br />
は+X<strong>と</strong> <strong>と</strong> 確 定 する。<br />
• 不 確 定 性 原 理 に 反 する→ 量 子 力 学 は 不 完 全 である<br />
• Aを 観 測 する<strong>と</strong>その 瞬 間 に( 遥 か 離 れた 場 所 にい<br />
る)Bの 物 理 量 が 確 定 する。<br />
-P<br />
+P<br />
-X +X
量 子 の 絡 み 合 い、もつれ(entanglement)<br />
• 二 つ 以 上 の 粒 子 の 量 子 状 態 が 独 立 でないこ<strong>と</strong>= 相 関 が<br />
あるこ<strong>と</strong><br />
光 子 の 偏 光 横 ↔ 縦 <br />
↔ + <br />
↔ − <br />
+ 45° 偏 光 = , − 45° 偏 光 =<br />
2 2<br />
右 回 り 円 偏 光<br />
↔ − ↔<br />
=<br />
=<br />
↔ + i <br />
↔ −i<br />
= , 左 回 り 円 偏 光 =<br />
2 2<br />
絡 みあい 状 態 に2 個 の 光 子 の 例<br />
A<br />
B<br />
2<br />
+ 45° −45° − − 45° + 45°<br />
2<br />
右 左 − 左 右<br />
2<br />
A<br />
B<br />
A B A B<br />
A B A B<br />
<br />
一 方 が 縦 偏 光 <strong>と</strong> 測 定 されれば、<br />
もう 一 方 は 横 偏 光 。<br />
一 方 が+45° 偏 光 <strong>と</strong> 測 定 され<br />
れば、もう 一 方 は-45° 偏 光 。<br />
一 方 が 右 円 偏 光 <strong>と</strong> 測 定 されれ<br />
ば、もう 一 方 は 左 円 偏 光 。
量 子 トランスポーテーション( 概 念 図 )<br />
Bouwmeester et al., 1997, Nature<br />
390, p.575より<br />
Bell State Measurement<br />
2 個 の 粒 子 の 相 対 的 な<br />
関 係 だけを 測 定 する<br />
(1 個 だけを 測 定 する<strong>と</strong><br />
重 ね 合 わせ 状 態 がくず<br />
れ、 絡 み 合 いもなくな<br />
る)<br />
EPR 対<br />
• 注 )Bell)<br />
測 定 の 瞬 間 に 光 子 3の 状 態 は 確 定 するが、<br />
Bobはそれを 知 るこ<strong>と</strong>はできない。Alice<br />
Aliceからどの<br />
Bell 測 定 をした<strong>と</strong>いう 情 報 を 送 ってもらう 必 要 がある。<br />
情 報 伝 達 速 度 は 光 速 を 超 えない。
Zeilingerグループの<br />
量 子 トランスポーテーション 実 験 配 置<br />
Beam<br />
Splitter<br />
+45°の 偏 光<br />
Parametric<br />
Down Conversion<br />
-45°の 偏 光<br />
Bouwmeester et al., 1997, Nature<br />
390, p.575より
Parametric Down Conversion<br />
によるEPR 対 の 発 生<br />
• 結 晶 を 通 過 したUV 光 子 がエネルギー1/2<br />
1/2の2<br />
個 の 光 子 を 発 生 させる<br />
http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/qteleportation/3.htmより<br />
Bouwmeester et al., 1997, Nature<br />
390, p.575より
ベル 測 定<br />
• EPR 対 ( 絡 みあい 上 体 にある2 個 の 粒 子 )の 基 底 状 態 =ベル 基 底<br />
• 二 つの 粒 子 について 相 対 的 な 関 係 だけを 測 定 する=ベル 測 定<br />
黒 字 は 今 井 浩 講 義 録 より<br />
Bouwmeester et al. の 実 験 では 観 測 =<br />
Φ A の 基 底 ( 反 対 称 )に 対 する 投 影 。<br />
Φ A の 状 態 の1,2ペアに 対 してだけテレ<br />
ポーテーションしている。<br />
( 全 体 の25%)
ビームスプリッター<br />
• も<strong>と</strong>も<strong>と</strong> 独 立 に 発 生 した 光 子 A<strong>と</strong> 光 子 Bを 絡 み<br />
合 い 状 態 にする<br />
図 はナノエレクトロニクス.jpより<br />
Ⅲの 状 態 になるのは、 両 方 反 射 か 両 方 透<br />
過 した 場 合 のみ。 反 射 は 波 動 関 数 にマイナ<br />
スの 符 号 をつけるので、 状 態 が 対 称 だ<strong>と</strong> 反<br />
射 <strong>と</strong> 透 過 がキャンセルする。 Ⅲの 状 態 にな<br />
るのは2 光 子 が 反 対 称 の 場 合 。
実 験 結 果<br />
• +45 度 の 偏 光 子 を1のを<br />
通 り 道 に 設 置 し、<br />
f1&f2&d1, f1&f2&d2<br />
の 同 時 計 測 をカウント<br />
した。<br />
• -45<br />
度 の 場 合 も 同 様<br />
• ( 縦 横 偏 光 の 重 ねあわ<br />
せ 状 態 である+-45<br />
度 で<br />
も) 光 子 1の 量 子 状 態<br />
が 光 子 3の 量 子 状 態 に<br />
移 されている。= 量 子<br />
テレポーテーションの<br />
成 功<br />
Bouwmeester et al., 1997, Nature<br />
390, p.575より
量 子 テレポーテーションの 現 在<br />
• Zeilinger グループの 測 定 では2 個 同 時 に<br />
光 子 を 計 測 する 可 能 性 を 排 除 できていない<br />
ので、 量 子 テレポーテーションの 実 験 <strong>と</strong>して<br />
は 不 十 分 <br />
• Furusawa et al., 1998 Science, 282,<br />
p.706の の 実 験 が 最 初 の 成 功 例<br />
• 現 在 では10km<br />
離 れた 距 離 への 転 送 にも<br />
成 功<br />
• 2001 年 には1 兆 個 のセシウム 原 子 の 系 の<br />
スピン 状 態 のテレポーテーションに 成 功 (B<br />
Julsgaard et al 2001 Nature 413 400)
暗 号 通 信 への 利 用<br />
• 量 子 テレポーテーションは 絶 対 安 全 な 暗 号 伝 送 の 手 段<br />
• 現 在 、 量 子 暗 号 <strong>と</strong> 呼 ばれている 技 術 は、 必 ずしも 今 回 説 明 したような<br />
テレポーテーションではないが、10km<br />
以 上 離 れた 量 子 暗 号 通 信 が 成<br />
功 している<br />
• Jennewein, , T et al.,<br />
.,(( 2000, Phys.Review Letters)のデモン<br />
ストレーション( 量 子 暗 号 を 使 って 画 像 転 送 )<br />
• 360mの の 距 離<br />
図 はby は<br />
T.<br />
Jennewein (c)<br />
APS/PRL
量 子 コンピュータ<br />
• = 量 子 力 学 原 理 を 利 用 したコンピュータ<br />
• 1959 年 R. Feynmanが が 講 演 の 中 で 量 子 化 さ<br />
れたエネルギー 準 位 やスピンなどで 情 報 を 蓄<br />
えるこ<strong>と</strong>を 示 唆<br />
• 1980 年 P. Benioff が 量 子 力 学 的 原 理 を 計<br />
算 に 利 用 する 有 効 性 を 証 明 ()<br />
• 1994 年 P. Shor による 量 子 コンピュータ 用 因<br />
数 分 解 アルゴリズムが 社 会 的 反 響<br />
• 量 子 コンピュータの 実 現 に 向 けた 開 発 が 一 気<br />
に 加 速
このページhttp://www-imai.is.s.u-tokyo.ac.jp/~imai/lecture/lecture.htmlより 転 載<br />
1bitあたりの 原 子 数 : 2020 年 頃 には 限 界<br />
10 20<br />
1ビ<br />
ットあたりの<br />
10 15<br />
サブミクロンの 時 代<br />
原<br />
子<br />
数<br />
10 10<br />
10 5<br />
「1.5 年 で 倍 」<br />
量 子 効 果 の<br />
顕 在 化<br />
10 0 1960 1970 1980 2000 2020<br />
1990 2010<br />
年
このページhttp://www-imai.is.s.u-tokyo.ac.jp/~imai/lecture/lecture.htmlより 転 載<br />
1 classical bit<br />
0 1<br />
Voltage<br />
0V<br />
Classical vs. Quantum computing<br />
5V<br />
Traditional Computer<br />
1<br />
0<br />
1<br />
Circuit of<br />
NAND gates<br />
1 quantum bit (qubit)<br />
| 0〉 α |0〉+<br />
β |1〉<br />
| 1〉<br />
2<br />
( α,<br />
β)<br />
∈C2,<br />
α 2+<br />
β = 1<br />
superposition of |0〉<br />
,|1〉<br />
Quantum Computer<br />
U Circuit of<br />
1qubit<br />
Unitary gate<br />
&<br />
+ 2qubit<br />
Controlled<br />
NOT gate
量 子 コンピュータによる 計 算<br />
• 重 ねあわせたままの<br />
状 態 で 計 算<br />
• 並 列 計 算 に 威 力 発 揮<br />
図 はナノエレクトロニクス.jp<br />
http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/quantu<br />
mcom/2.htmより
量 子 コンピュータの 部 品 (ゲート)<br />
• 制 御 NOTゲート • ユニタリ 変 換 ( 回 転 )<br />
ゲート<br />
制 御 ビット<br />
標 的 ビット<br />
A B X( = A) Y<br />
0 0 0 0<br />
0 1 0 1<br />
1 0 1 1<br />
1 1 1 0<br />
X<br />
= UA<br />
量 子 計 算 機 の 任 意 の 演 算 (ユニタリ 変 換 )は、2ビットの 制 御 NOT<br />
ゲート<strong>と</strong>1ビットのユニタリ 変 換 ゲートで 実 現 できる
1) 初 期 値 <strong>と</strong>してa,b,cのQ-bitを0にする ψ<br />
ψ<br />
⎛<br />
= ⎜<br />
⎝<br />
2<br />
2<br />
∑<br />
xy , = 0,1<br />
x<br />
量 子 計 算 の 例<br />
x+y mod 2の 並 列 計 算 (modは 余 りを 求 める 操 作 )<br />
2)a,bを 重 ね 合 わせ 状 態<br />
1 ⎞<br />
⎟<br />
2 ⎠<br />
( 0 + 1 )<br />
3) 制 御 NOTゲートを 使 いab<br />
, を 入 力 につなげ<br />
y<br />
1<br />
2<br />
⎛ 1 ⎞<br />
ψ = ⎜ ⎟ ∑ x y x+y mod 2<br />
a b c<br />
⎝ 2 ⎠ xy , = 0,1<br />
1<br />
= 0 0 0 + 0 1 1 + 1 0 1 + 1 1 0<br />
2<br />
4) 欲 しい 答 えを 得 る=ビットを 観 測 する<br />
0<br />
a b c<br />
=<br />
にする<br />
0 0 0<br />
a b c<br />
cを 出 力 につなげる<strong>と</strong>(x+y mod 2)の 全 ての 答 えを 一 遍 に 得 る<br />
( )<br />
a b c a b c a b c a b c<br />
この 場 合 は4つの 項 のうちのどれかが1/4の 確 率 で 実 現 される<br />
欲 しい 解 の 実 現 確 率 を 高 くするアルゴリズムの 工 夫 が 必 要
量 子 計 算 向 けアルゴリズム<br />
• Shor による 因 数 分 解 のアルゴリズム(1994)<br />
• インターネットのRSA<br />
暗 号 の 前 提 =“ = 因 数 分 解 には<br />
膨 大 な 計 算 時 間 が 必 要 ”<br />
• 現 在 のコンピュータで200<br />
億 年 かかるRSA<br />
暗 号 の 解<br />
読 が 数 秒 で 終 わる 可 能 性<br />
• 量 子 コンピュータの 発 明 =インターネット 社 会 の 危 機<br />
<strong>と</strong>して 大 反 響<br />
• Groverによる 検 索 アルゴリズム(1997)<br />
• N 個 のファイルの 中 から1 個 のファイルを 探 し 出 す<br />
• 古 典 計 算 では~N/2<br />
~N/2ステップの 計 算 、 Groverによる<br />
量 子 計 算 向 けアルゴリズムでは√N
量 子 コンピュータの 実 現 方 法<br />
qubitを を 何 で 表 現 するか<br />
• イオントラップの 振 動 モード<br />
• 1995 年 には 制 御 NOT 回 路 成 功 (NIST)<br />
• NMR( 核 磁 気 共 鳴 )の 核 スピン<br />
• 2001 年 5qubitのシステムで<br />
のシステムで15の の 因 数 分 解<br />
(IBM)<br />
• 量 子 ドット 中 の 電 子 準 位<br />
• 半 導 体 原 子 が 数 百 - 数 千 個 集 まった 塊 に 電<br />
子 がトラップされた 状 態<br />
• 2002 年 人 工 H 原 子 、He、<br />
原 子 作 成 (NTT)<br />
• ジョセフソン 素 子<br />
• 2qubit 間 の 絡 み 合 いに 成 功 2003 年<br />
(NEC&RIKEN)<br />
上 図 はナノエレクトロニクス.jp より 転 載<br />
http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/q<br />
uantumcom/4.htmより<br />
図 はhttp://www.zdnet.co.jp/news/0302/20/nj00_quantum.htmlより
制 御 NOT 回 路 の 実 現 方 法<br />
• 二 つのqubit<br />
間 の 相 互 作 用 を 利 用 する<br />
• 量 子 井 戸 による 実 現 提 案 の 例<br />
竹 内 繁 樹 ( 量 子 情 報 科 学 <strong>と</strong><br />
その 展 開 より)サイエンス 社
量 子 コンピュータ 実 現 へのステップ<br />
1. 1qubitの の 量 子 力 学 的 な 重 ね 合 わせの 状 態 を 作 り、<br />
それを 制 御 。<br />
2. 2qubitの の 実 現 。 制 御 NOTゲートの 実 現 。<br />
3. 数 キュービットで 簡 単 なアルゴリズムを 実 践 ( 少 数<br />
ビットのアカデミックな 量 子 計 算 )。<br />
4. 集 積 化 により 大 規 模 な 量 子 ビット( 少 なく<strong>と</strong>も 一 万<br />
qubit)を を 実 現 し、 実 用 的 なアルゴリズムを 実 践 。<br />
http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/quantumcom/4.htmより 転 載<br />
デコヒーレンス( 重 ね 合 わせ 状 態 が 短 い 時 間 で 解<br />
消 してしまう<strong>と</strong>いう) 問 題 <strong>と</strong> 集 積 化 が 現 在 の 課 題