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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
〈 書 評 〉<br />
木 村 剛 『 竹 中 プランのすべて』<br />
(アスキー・コミュニケーションズ、2003 年 3 月 )<br />
Book Review: Takeshi, Kimura, The Takenaka’s Plan<br />
石 川 純 治 Junji Ishikawa<br />
目 次<br />
1 はじめに-「りそなショック」と 竹 中 プラン-<br />
2 本 書 の 構 成 -ファイターとしての「 男 」の 思 い-<br />
3 竹 中 3 原 則 -「 金 融 再 生 プログラム」の 本 丸 -<br />
4 真 のターゲット-「 不 作 為 という 名 の 作 為 」-<br />
5 ディスクロージャー50 年 史 と 竹 中 プラン-「 会 計 の 精 神 」-<br />
1 はじめに-「りそなショック」と 竹 中 プラン-<br />
5 月 18 日 ( 日 )、 新 聞 各 紙 は 一 斉 にりそな 銀 行 への2 兆 円 の 資 本 注 入 決<br />
定 を 報 じた。 噂 されていた 銀 行 の 実 質 国 有 化 に、 金 融 界 のみならず 日 本 全 土<br />
に「りそなショック」の 激 震 が 走 った。その 震 源 はすでに 昨 年 10 月 末 に 存<br />
在 していた。いうまでもなく、 昨 年 の 平 成 14 年 10 月 30 日 、 金 融 庁 が 公 表 し<br />
た「 金 融 再 生 プログラム」、いわゆる「 竹 中 プラン」である。 竹 中 平 蔵 はこの<br />
3 月 期 決 算 で 結 果 をみせてもらうと 公 言 していたが、その1つの 結 果 が 出 た<br />
わけだ。<br />
今 回 の「りそなショック」の 直 接 の 引 き 金 になったのは、 監 査 法 人 の 厳 正<br />
な 監 査 である。それをいわば 予 告 する 本 書 での 著 者 木 村 剛 の 発 言 がある。「 監<br />
査 法 人 が1つのキーパーソンになる」( 307 頁 )、「 こ の3 月 期 決 算 は、 外 部 監<br />
査 人 のプロフェッショナリズムが 問 われるでしょう」(310 頁 )、これである。<br />
竹 中 プランが 公 表 されてちょうど 半 年 、「 りそなショック」は、この 竹 中 プラ<br />
ンのいわばシナリオどおりに 展 開 されたともいえる。そのことは、 本 書 を 読<br />
めば 自 ずと 明 らかになるだろう。<br />
2 本 書 の 構 成 -ファイターとしての「 男 」の 思 い-<br />
「 金 融 再 生 プログラム」そのものは、 本 書 の 巻 末 資 料 にも 掲 載 されている<br />
が、10ページたらずの 短 いものである。だが、たった1カ 月 間 で 練 り 上 げ<br />
たと 言 われているが、そこには 日 本 の 経 済 再 建 に 向 けた、きわめて 重 要 なメ<br />
ッセージがしたためられている。「 骨 抜 きプラン」と 揶 揄 するマスコミもある<br />
が、 本 書 はその 真 実 の 姿 を 竹 中 の「ブレーン」と 称 される 木 村 剛 が、 評 論 家<br />
でも 経 済 学 者 でもない、また 金 融 担 当 大 臣 でもない 一 個 のファイターとして<br />
の「 男 」( 竹 中 )の 思 いを 伝 えるため( 序 文 )、 緊 急 出 版 したものである。<br />
本 書 は、 木 村 が 編 集 部 のインタビューに 答 えながら、「 金 融 再 生 プログラ<br />
ム」をコンメンタール 風 に 解 説 するという 形 ( 逐 条 解 説 )をとっている。 具<br />
体 的 には、「 金 融 再 生 プログラム」の3つの 柱 、すなわち○Ⅰ 金 融 システム、○Ⅱ<br />
企 業 再 生 、○Ⅲ 金 融 行 政 のそれぞれ3つの 新 しい 枠 組 みを3つの 章 ( 第 2,3,<br />
4 章 )で 解 説 し、その 前 後 に「なぜ 竹 中 プランが 必 要 だったか」( 第 1 章 )、<br />
「 竹 中 プランは 成 功 するか」( 第 5 章 ) を 配 置 している。<br />
「 金 融 再 生 プログラム」の 本 丸 は、 何 と 言 っても、いわゆる「 竹 中 3 原 則 」<br />
が 網 羅 されている3つ 目 の○Ⅲ 「 新 しい 金 融 行 政 の 枠 組 み」である。したがっ<br />
- 1 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
て、 本 書 評 も「 新 しい 金 融 行 政 の 枠 組 み」を 徹 底 解 説 している 第 4 章 が 中 心<br />
になる。そこには、 会 計 ・ 監 査 にかかわる 事 項 がもっとも 多 く 登 場 するだけ<br />
に、 評 者 の 関 心 と 焦 点 もそこに 当 てられる。<br />
3 竹 中 3 原 則 -「 金 融 再 生 プログラム」の 本 丸 -<br />
竹 中 が 大 臣 就 任 時 (2002 年 9 月 )に 掲 げた、1 資 産 査 定 の 厳 格 化 、2 自 己<br />
資 本 の 充 実 、3ガバナンスの 強 化 、この3つの 原 則 は 世 に「 竹 中 3 原 則 」と<br />
よばれる。こ の3 原 則 がずばりそのままの 形 で 織 り 込 まれているのが、○Ⅲ「 新<br />
しい 金 融 行 政 の 枠 組 み」である。マスコミの 目 も、したがって、ここに 集 中<br />
する。 既 に 述 べたように、 木 村 が 熱 っぽく 解 説 する 第 4 章 「『 新 しい 金 融 行 政<br />
の 枠 組 み』とは 何 か」は、 本 書 の 中 心 部 分 であり、また 評 者 がもっとも 関 心<br />
をもつところである。<br />
(1) 資 産 査 定 の 厳 格 化 - 個 別 引 当 金 問 題 -<br />
竹 中 3 原 則 の1 番 目 、「 資 産 査 定 の 厳 格 化 」では5つあげられているが、<br />
特 に 重 要 なのは「(ア) 資 産 査 定 に 関 する 基 準 の 見 直 し」である。それは1D<br />
CF 的 手 法 の 導 入 、2 引 当 金 算 定 期 間 の 見 直 し、3 債 務 者 区 分 の 統 一 、4デ<br />
ット・エクィイティ・スワップの 時 価 評 価 、5 再 建 計 画 の 検 証 、6 担 保 評 価<br />
の 厳 正 な 検 証 、の6 項 目 からできており( 厳 格 化 の「6 大 武 器 」)、 会 計 事 項<br />
が 多 く 関 わるところでもある。<br />
まず、6 大 武 器 のなかでも 目 玉 と 言 われる「DCF 的 手 法 」の 導 入 をみて<br />
おきたいが、 個 別 引 当 の 是 非 問 題 それ 自 体 (マスコミがいうところの「 森 ・<br />
木 村 対 決 」)は、あとでも 触 れるが 官 僚 の「 不 作 為 という 名 の 作 為 」ともかか<br />
わって 興 味 深 いところである(258-61 頁 )。さて、DCF 的 手 法 とは、 貸 出<br />
債 権 の 評 価 ( 割 引 現 在 価 値 )の 方 法 であるが、 将 来 キャッシュフロー( 分 子 )<br />
を 割 引 率 ( 分 母 )で 現 在 価 値 に 割 引 くものである。やや 専 門 的 ( 会 計 理 論 )<br />
になるが、 分 母 側 の 割 引 率 をどう 扱 うかが、 実 は 時 価 会 計 とこれまでの 原 価<br />
評 価 の 枠 組 みとの 分 かれ 目 になる 1 。<br />
今 回 のDCF 的 手 法 は、 昨 年 末 の 12 月 26 日 に 日 本 公 認 会 計 士 協 会 が 出 し<br />
た「 銀 行 等 金 融 機 関 において 貸 倒 引 当 金 の 計 上 方 法 としてキャッシュ・フロ<br />
ー 見 積 法 (DCF 法 )が 採 用 されている 場 合 の 監 査 上 の 留 意 事 項 」( 公 開 草 案 )<br />
に 詳 しく 記 されているが、そこでは 要 するに 時 価 会 計 ではなく、これまでの<br />
原 価 評 価 の 枠 内 の 扱 いになっている。それは、 草 案 の 幾 分 長 いタイトルでの<br />
「キャッシュ・フロー 見 積 法 (DCF 法 )」という 書 き 方 に 表 れている。<br />
簡 単 に 言 えば、 分 母 側 には 測 定 時 点 でのリスク(リスクプレミアム)は 反<br />
映 されず、 分 子 側 の 将 来 キャッシュフローの 見 積 に 焦 点 があてられている<br />
ということである 2 。<br />
木 村 は、そのことをよく 知 っていて、「 現 行 の 会 計 ルールに 基 づく 限 り、<br />
貸 出 債 権 の 評 価 は 原 価 法 に 基 づくと 定 められています。 時 価 会 計 ではないの<br />
です。…DCF 的 手 法 の 影 響 は、この『 将 来 キャッシュフロー』をいかに 厳<br />
格 に 見 積 もるかということにかかってくるのです」( 266 頁 )と 述 べている。<br />
1 この 点 については、 拙 稿 「 減 損 会 計 と 利 益 計 算 の 構 造 」(『 企 業 会 計 』2001 年<br />
11 月 号 、9 頁 および 注 19)、 拙 稿 「 割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分 」(『 経 営 研 究 』 第<br />
53 巻 第 3 号 、2002 年 11 月 、 第 4 節 )、 拙 稿 「 企 業 会 計 のハイブリッド 構 造 」(『 会<br />
計 』 2003 年 1 月 号 、6 頁 、9-10 頁 )を 参 照 。<br />
2 この 点 について 本 年 1 月 に 公 開 草 案 への 意 見 として 若 干 の 私 見 を 送 った( 協 会<br />
のリサーチ・センター 調 査 第 一 課 )。キャッシュ・フロー 見 積 法 については、 前<br />
掲 拙 稿 「 割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分 」 第 4 節 および 注 14 参 照 。<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
ただ、 金 融 商 品 会 計 での 貸 出 債 権 の 扱 いがこれまでの 原 価 評 価 の 枠 内 かどう<br />
か、 会 計 理 論 として 議 論 の 余 地 はある 3 。<br />
もし、 時 価 評 価 として 割 引 率 にリスクプレミアムが 加 味 されると、(その<br />
債 権 価 値 はより 小 さくなるので) 貸 倒 引 当 不 足 額 はいっそう 大 きなものにな<br />
る。この 点 において、DCF 的 手 法 の 導 入 はマスコミが 注 目 するほど 大 きな<br />
インパクトを 与 えるものでないかもしれない。この 点 で、 木 村 が「ある 意 味<br />
で、これはDCF 的 手 法 より 強 力 なツールとさえ 言 えます」( 271 頁 )と 述 べ<br />
ている、6 大 武 器 の2つ 目 の「 引 当 金 算 定 期 間 の 見 直 し」も 重 要 である。そ<br />
れも 専 門 的 になるので、ここでは 詳 しくふれないが、 要 は「…『DCF 的 手<br />
法 は 実 務 的 に 難 しい』と 言 って 逃 げられるかもしれないので、 引 当 金 算 定 の<br />
期 間 で 対 応 できるようになっている。 一 の 矢 で 逃 げられても、 二 の 矢 、 三 の<br />
矢 で 仕 留 められるようになっている」( 272 頁 )というわけである。したたか<br />
な 野 生 の 鹿 や 兎 ( 銀 行 や 監 査 人 )を 用 意 周 到 に 追 う、まさにいくもの 武 器 を<br />
持 つ 狩 人 ( 竹 中 ・ 木 村 )、ということか。<br />
書 評 という 紙 幅 の 制 約 上 、そのすべてにはふれられないが、 評 者 の 関 心 か<br />
らもう1つあげるなら、4 番 目 の「デット・エクィイティ・スワップの 時 価<br />
評 価 」であろう。デット・エクィイティ・スワップとはいわゆる「 債 務 の 株<br />
式 化 」( 不 良 債 権 の 株 式 化 )といわれるもので、 銀 行 が 保 有 する 再 建 企 業 向 け<br />
の 債 権 をその 企 業 の 株 式 (ほとんどが 優 先 株 だが)に 振 り 替 え る 手 法 である。<br />
昨 年 、ダイエー、 長 谷 工 などかなりの 企 業 が 大 手 銀 行 との 間 で 実 施 している 4 。<br />
企 業 再 生 の 切 り 札 との 期 待 もあるが、 木 村 に「インチキの 代 名 詞 」( 276 頁 )<br />
と 言 われるように、 盲 点 も 多 い 5 。<br />
とりわけ、 明 確 な 会 計 ルールがなかったが、 昨 年 10 月 、 企 業 会 計 基 準 委<br />
員 会 が 時 価 評 価 の 会 計 ルールを 決 めた。ただ、その 適 用 対 象 が 基 準 公 表 後 に<br />
実 施 した 債 務 の 株 式 化 になっているので、 公 表 前 は 時 価 評 価 しなくてすむこ<br />
とになる 6 。そこで、「…(9 月 30 日 末 までに- 引 用 者 )ミニラッシュが 発 生<br />
しました。9 月 30 日 までに 実 施 してしまえば、 永 遠 に 時 価 評 価 しなくてい<br />
いわけですから。こんな 馬 鹿 な 会 計 ルールを 作 成 する 企 業 会 計 基 準 委 員 会 と<br />
3 債 権 については 原 則 として 時 価 評 価 は 行 わないとしているが、 一 般 債 権 と 破 産<br />
更 生 債 権 との 中 間 に 位 置 する 貸 倒 懸 念 債 権 には「キャッシュ・フロー 見 積 法 」と<br />
ともに「 財 務 内 容 評 価 法 」がある。この 静 態 的 な 方 法 ( 破 産 更 正 債 権 でも 適 用 )<br />
が 動 態 的 な 原 価 評 価 の 枠 内 かどうか。 前 掲 拙 稿 「 割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分 」の 注<br />
14 参 照 。<br />
4 例 えば『 日 経 金 融 新 聞 』2002 年 6 月 12 日 、3 月 12 日 を 参 照 。 最 近 では、 飛<br />
鳥 建 設 がみずほコーポレート 銀 行 などと 300 億 円 の 債 務 株 式 化 で 合 意 している<br />
(『 日 本 経 済 新 聞 』2003 年 4 月 16 日 )。 評 者 のホームページ(HP)でのインタ<br />
ーネット 講 座 の「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.21「デット・エクィイティ・スワッ<br />
プという 魔 法 の 杖 」) 参 照 。ちなみに、 債 務 株 式 化 のきっかけが 2001 年 の 東 京<br />
地 裁 の 判 事 の 見 解 というから、その 過 程 で 会 計 理 論 はなんら 触 れられなかったの<br />
か。 残 念 ながら、 社 会 的 認 知 と 発 言 力 に 乏 しい 会 計 アカデミズムの 一 面 でもある。<br />
5 債 務 の 株 式 化 は、 中 小 企 業 にとっては 有 効 な 方 法 である。ちなみに、 評 者 が 会<br />
計 ・ 監 査 を 離 れてもっとも 関 心 を 持 つのはこの 中 小 企 業 融 資 の 問 題 である。「『 金<br />
融 再 生 プログラム』では、 中 小 企 業 向 け 貸 出 に 関 する 項 目 にかなりの 分 量 が 割 か<br />
れている」( 155 頁 )と 述 べているように、 竹 中 プランでの 中 小 企 業 融 資 の 位 置<br />
は 重 要 である。「 国 民 のための 金 融 行 政 」の1つは、この 中 小 企 業 融 資 のあり 方<br />
にある。2001 年 春 の「 石 川 銀 行 事 件 」を 思 い 出 せば、 現 実 の 金 融 行 政 がいかに<br />
「 国 民 」からかけ 離 れているか、その 歪 みがわかるはずである。この 事 件 は 木 村<br />
剛 『 日 本 資 本 主 義 の 哲 学 』( PHP 研 究 所 、2002 年 )でも 取 り 上 げられた。<br />
6 『 日 本 経 済 新 聞 』2002 年 10 月 5 日 。<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
いうのは、 一 体 全 体 どういう 見 識 を 持 っているのかと 疑 いたくなります。…<br />
会 計 のあり 方 を 大 きく 踏 み 外 してしまっているわけです。これも、 銀 行 から<br />
のプレッシャーのせいなんですよね」( 280 頁 )、と 木 村 の 批 判 は 手 厳 しい 7 。<br />
そのことを 意 識 して、この4つ 目 の 武 器 はわざわざ「…デット・エクィイテ<br />
.........<br />
ィ・スワップに 関 しては、 取 引 の 時 期 を 問 わず 、 時 価 評 価 を 適 用 することを<br />
検 討 する」( 傍 点 は 引 用 者 )、と 記 している。<br />
以 上 、「 (ア ) 資 産 査 定 に 関 する 基 準 の 見 直 し」に 関 する6 大 武 器 について<br />
みてきたが、この 他 に「 特 別 検 査 の 再 実 施 」や「 自 己 査 定 と 金 融 庁 検 査 の 格<br />
差 公 表 」など 重 要 項 目 もあるが、「 (オ ) 財 務 諸 表 の 正 確 性 に 関 する 経 営 者 によ<br />
る 宣 言 」だけ 若 干 ふれておきたい。<br />
これは、エンロン 事 件 をきっかけに 昨 年 7 月 、これも 短 期 間 で 作 り 上 げら<br />
れたが、「 企 業 改 革 法 」(サーベンス・オクスレー 法 )での 宣 誓 義 務 と 同 じ 内 容<br />
.......<br />
...<br />
をもつ。ただ、 会 計 理 論 としてみたとき、「 資 産 査 定 を 含 む財 務 諸 表 が 正 確 で<br />
ある<br />
.. ..<br />
ことに 関 し、…」( 傍 点 は 引 用 者 ) にはこれまでのフロー( 利 益 )の 適 正<br />
. ...<br />
性 よりも、ストック( 資 産 ・ 負 債 )の 正 確 性 が 強 調 されているようにみえる。<br />
こうしたストック 志 向 は、 銀 行 の 財 務 諸 表 だけでなく、 一 般 に 今 日 の 企 業 会<br />
計 のあり 方 をみるとき1つの 特 徴 でもある。したがって、これまでの 伝 統 的<br />
なフロー 志 向 ( 期 間 損 益 の 適 正 性 )の 枠 組 みとどう 整 合 しうるか、1つの 理<br />
論 的 課 題 ではある。<br />
もう1つ、 重 要 なのはこの「 宣 誓 」が 実 際 に 実 施 されるかということだが、<br />
「ちょうど、 金 融 審 議 会 第 一 部 会 のディスクロージャー・ワーキンググルー<br />
プは、 有 価 証 券 報 告 書 の 記 載 内 容 の 適 切 性 に 関 する 宣 誓 書 を 正 式 な 添 付 書 類<br />
にすることの 是 非 を 検 討 していますから、 早 ければ、この3 月 期 決 算 から 要<br />
請 することになります」( 291 頁 )と 述 べている。あとで 粉 飾 が 発 覚 でもした<br />
ら、それこそ 損 害 賠 償 が 代 表 取 締 役 個 人 にくるから、まさにこの3 月 期 決 算<br />
が 注 目 される 8 。<br />
いずれにしても、 米 国 でもそしてわが 国 でも、 企 業 会 計 ( 会 計 ・ 監 査 )が<br />
コーポレート・ガバナンスの 一 環 のなかで、それに 組 み 込 まれる 形 で 規 制 強<br />
化 されてきていることは 確 かであろう。<br />
(2) 自 己 資 本 の 充 実 - 繰 延 税 金 資 産 問 題 -<br />
冒 頭 で 述 べたように、 今 回 の「りそなショック」の 直 接 の 引 き 金 になった<br />
のは、 銀 行 の 自 己 資 本 問 題 とそれを 厳 正 に 監 査 した 監 査 法 人 である。その 点<br />
で、 竹 中 3 原 則 の2 番 目 、「 自 己 資 本 の 充 実 」は きわめて 重 要 なところである。<br />
そこでは、「(ア) 自 己 資 本 を 強 化 するための 税 制 改 正 」から「(カ) 自 己 資 本 比<br />
率 に 関 する 外 部 監 査 の 導 入 」まで6 項 目 があげられているが、ここで 重 要 な<br />
のは「(イ) 繰 延 税 金 資 産 に 関 する 算 入 の 適 正 化 」と「(ウ) 繰 延 税 金 資 産 の 合<br />
理 性 の 確 認 」である。<br />
結 局 のところ、 今 回 の「りそな 問 題 」は 繰 延 税 金 資 産 の 資 産 性 の 問 題 (バ<br />
ランスシートの 貸 方 側 からは 自 己 資 本 の 算 定 問 題 )であった。(イ)「 繰 延 税<br />
7 ちなみに、 企 業 会 計 基 準 委 員 会 はその 後 、すべて 時 価 評 価 する 新 たな 基 準 を 決<br />
めている。『 日 本 経 済 新 聞 』2003 年 2 月 5 日 。しかし、 債 務 株 式 化 で 銀 行 が 保 有<br />
する 株 式 にも 当 然 、 金 融 商 品 会 計 が 適 用 されるだろうから、そもそもその 他 有 価<br />
証 券 の 時 価 評 価 という 現 行 ルールは 適 用 されないのだろうか。<br />
8 三 菱 東 京 フィナンシャル・グループは 米 国 の 企 業 改 革 法 に 対 応 して「 情 報 開 示<br />
委 員 会 」を 設 置 し、 経 営 トップが 決 算 書 の 正 確 性 、 正 当 性 について「 宣 誓 書 」を<br />
提 出 する。 米 国 だけでなく 国 内 向 け 決 算 書 も 宣 誓 対 象 とするのは 日 本 企 業 で 初 め<br />
てという。『 日 本 経 済 新 聞 』2003 年 5 月 30 日 。<br />
- 4 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
......<br />
金 資 産 については、その 資 本 性 が 脆 弱 であるため、 自 己 資 本 比 率 規 制 におけ<br />
...........<br />
る 取 扱 については、 会 計 指 針 の 趣 旨 に 即 って その 資 産 性 を 厳 正 に 評 価 すると<br />
ともに、 算 入 上 限 についても 速 やかに 検 討 する」( 傍 点 は 引 用 者 )の 傍 点 箇 所<br />
が 重 要 なところである。「 資 本 性 が 脆 弱 → 資 産 性 の 厳 正 評 価 」ではあるが、「 資<br />
産 性 があやしい→ 資 本 性 が 問 題 」というのが 筋 道 だろう( 借 方 の 資 産 性 問 題<br />
→ 貸 方 の 資 本 性 問 題 )。<br />
そこで、(ウ)の 繰 延 税 金 資 産 の 合 理 性 の 問 題 になるわけだが、「 主 要 銀 行 の<br />
.....<br />
経 営 を 取 り 巻 く 不 確 実 性 が 大 きいことを 認 識 し、 翌 年 度 を 超 える 将 来 時 点 の<br />
...........................<br />
課 税 所 得 を 見 積 もることが 非 常 に 難 しいことを 理 解 した 上 で 、 外 部 監 査 人 に<br />
厳 正 な 監 査 を 求 めるとともに、 主 要 行 の 繰 延 税 金 資 産 が 厳 正 に 計 上 されてい<br />
.......<br />
るかを 厳 しく 監 査 する 」( 傍 点 は 引 用 者 )と 謳 っている。<br />
ここで、 木 村 の 次 の 発 言 が 今 回 の 問 題 とつながる。その 点 で 重 要 であるの<br />
で、やや 長 くなるが、 引 用 しよう。すなわち、「 要 するに、さりげなく、 繰 延<br />
税 金 資 産 の 自 己 資 本 への 算 入 は、1 年 以 上 は 非 常 に 難 しいと 言 っているわけ<br />
です。じつはこれ、 現 行 の 会 計 ルール 通 りなんですけれどね。 無 理 な 収 益 計<br />
画 になっていないか。 無 理 に 長 い 期 間 を 計 上 していないか。そもそも、いわ<br />
ゆる『 第 4 項 但 書 き』といわれる 例 外 条 項 で5 年 間 計 上 して 本 当 によいのか。<br />
…『 第 4 項 但 書 き』が2 年 連 続 で 適 用 されるなんてことが 本 当 に 可 能 なのか。<br />
........<br />
などということについて、 疑 問 を 提 示 しているわけです。 特 に、この3 月 期<br />
.....<br />
については、こういうことについて、 真 摯 な 議 論 が 必 要 になるはずなんです<br />
ね」( 304 頁 、 傍 点 は 引 用 者 )と。<br />
やや 専 門 的 になるが、ここで「 第 4 項 但 書 き」とは、 日 本 公 認 会 計 協 会 の<br />
「 繰 延 税 金 資 産 の 回 収 可 能 性 の 判 断 に 関 する 監 査 上 の 取 扱 い」( 平 成 11 年 11<br />
月 、 監 査 委 員 会 報 告 第 66 号 )に 記 されているもので、 要 するに、 繰 越 欠 損 金<br />
が「 非 経 常 的 な 特 別 の 原 因 」( リ ストラや 法 令 の 改 正 など)で 発 生 したもので<br />
あれば、5 年 間 まで 回 収 可 能 であると 認 めてよいとする 例 外 規 定 である。 銀<br />
行 の 赤 字 がこうした 特 例 に 該 当 しないのは 明 らかで、その 回 収 可 能 性 は 極 め<br />
てあやしいというのが 妥 当 な 判 断 である。この「 但 書 き」をめぐる 攻 防 は、<br />
明 らかに 銀 行 側 に 不 利 というわけだ。 実 際 、りそな 銀 行 のケースでは、5 年<br />
分 から3 年 分 に 短 縮 された 結 果 、 自 己 資 本 比 率 が 当 初 予 想 していた6% 程 度<br />
から 一 挙 に2% 程 に 低 下 し(グループ 全 体 でも 3.8%)、 国 内 営 業 の 最 低 基 準<br />
の4%を 下 回 ったわけである 9 。<br />
いずれにしても、それはあくまで 現 行 の 会 計 ルールに 則 って 監 査 を 実 行 し<br />
た 結 果 である。その 意 味 で、 当 たり 前 のことが 断 行 されたと 言 うべきであろ<br />
う。「 新 しく 検 討 されている『 算 入 上 限 』によらなくても、 現 行 の 会 計 ルール<br />
をしっかりと 適 用 していくのであれば、 同 じような 結 果 になる( 米 国 流 の<br />
10%ルールの 適 用 - 引 用 者 )ということなんです。これはルール 変 更 でもな<br />
んでもない。 現 行 ルールそのものなのですね」( 306 頁 )、というわけである。<br />
マスコミから「 甘 い 監 査 」、「 手 心 監 査 」、「なれあい 監 査 」などと 揶 揄 されが<br />
ちだが(あたっている 面 もある)、 監 査 業 務 の 核 心 ともいうべき「 監 査 の 独 立<br />
9 この 何 年 分 までの 繰 延 税 金 資 産 を 認 めるかどうかの 攻 防 は(5 年 か3 年 か、は<br />
たまたゼロか)、 実 は 金 融 庁 官 僚 、 銀 行 、 監 査 法 人 の 間 できわめて 政 治 的 な“ 暗<br />
躍 ”があったという 報 道 もなされた(『アエラ』6/2 号 、『 週 間 朝 日 』 6/6 号 、『 週<br />
間 東 洋 経 済 』5/31 号 )。この「 三 位 一 体 」の 関 係 ( 蜜 月 関 係 )が、 今 回 崩 壊 した<br />
わけである。 詳 しくは、 評 者 のHPのインターネット 講 座 のなかで 連 載 中 の「 時<br />
事 会 計 入 門 講 座 」(( No.19「りそなショックと 厳 正 監 査 」) 参 照<br />
- 5 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
性 」( 精 神 的 独 立 性 )が、 迷 いに 迷 った 決 断 であるにせよ、“ 教 科 書 どおり”<br />
貫 かれたと 見 るべきである。<br />
(3) ガバナンスの 強 化 - 監 査 法 人 の 重 責 -<br />
竹 中 3 原 則 の3 番 目 、「ガバナンスの 強 化 」では5 項 目 があがっているが、<br />
なかでも「(ア) 外 部 監 査 人 の 機 能 」が 重 要 なところである。すなわち、「 資 産<br />
査 定 や 引 当 ・ 償 却 の 正 確 性 、さらに 継 続 企 業 の 前 提 に 関 する 評 価 については、<br />
..... ...<br />
外 部 監 査 人 が 重 大 な 責 任 をもって、 厳 正 に監 査 を 行 う」( 傍 点 は 引 用 者 )であ<br />
る。 先 にも 触 れたが、「 正 確 性 」という 観 点 からの 監 査 、さらに 企 業 の 継 続 性<br />
に 関 する 監 査 (ゴーイング・コンサーン 監 査 )という 点 が 重 要 である 10 。<br />
木 村 はこの 点 に 関 して「ものすごい 責 任 です。この3 月 期 決 算 は、 外 部 監<br />
査 人 のプロフェッショナリズムが 問 われるでしょう。…もしも、 外 部 監 査 人<br />
が 甘 い 監 査 をしたならば、 万 が 一 の 場 合 のリスクは 銀 行 経 営 者 だけではなく、<br />
外 部 監 査 人 に 向 かうかもしれません」(310 頁 )と 述 べているが、この 重 責 は<br />
まさに「 命 がけの 監 査 」につながったわけである。<br />
先 にも 述 べたが、 重 要 なポイントは、 監 査 がたんなる 法 的 監 査 ( 証 券 取 引<br />
法 、 商 法 )にとどまらず、さらに 企 業 のガバナンスに 組 み 込 まれる 形 になっ<br />
たという 点 にある。<br />
4 真 のターゲット-「 不 作 為 という 名 の 作 為 」-<br />
すでに 述 べたように、「 金 融 再 生 プログラム」の 前 文 においては、これまで<br />
みてきた「 竹 中 3 原 則 」が 明 確 に 記 されている。この3 原 則 の 他 に、 前 文 に<br />
おいてもうひとつ 重 要 な 文 言 がある。すなわち 前 文 の 冒 頭 「 日 本 の 金 融 シス<br />
テムと 金 融 行 政 に 対 する 信 頼 を 回 復 し、 世 界 から 評 価 される 金 融 市 場 を 作 る<br />
ためには、…」での「 信 頼 の 回 復 」がそれである。<br />
木 村 は「『 金 融 再 生 プログラム』の 本 当 のターゲット-すなわち、 金 融 庁<br />
に 対 する『 信 頼 』の 回 復 -を 本 当 に 達 成 できるのかをしっかりとみていく 必<br />
要 がある」( 112 頁 )、「 金 融 問 題 というものは、すべからく『 信 頼 』の 問 題 で<br />
す」( 120 頁 )、と 繰 り 返 し「 信 頼 」の 問 題 を 説 いている。<br />
この 信 頼 の 対 極 にあるのが、ある 意 味 で 本 書 を 貫 いている1つの 重 要 な 視<br />
点 、 著 者 憤 懣 のキーワード、それが「 不 作 為 という 名 の 作 為 」である。「 申 請<br />
主 義 」( 金 融 行 政 の「 病 」) という 愚 かな 論 理 、 不 作 為 という 名 の 作 為 を 助 長<br />
するマスコミ、 大 臣 命 令 を 聞 かない 官 僚 をなぜクビにできないのか( 第 2 章 、<br />
170-81 頁 )、などは 問 題 の 本 質 がどこにあるという 点 で、きわめて 重 要 なと<br />
ころである。 若 干 、 引 用 しよう。<br />
「 金 融 庁 内 の 抵 抗 勢 力 による『 不 作 為 という 名 の 作 為 』に 関 する 問 題 は 非<br />
常 に 深 刻 です。 一 朝 一 夕 で 治 せるかどうか。ここの 部 分 の 抵 抗 はものすごい<br />
ものがある。じつは、 竹 中 大 臣 が 一 番 苦 労 しているのは、『 ここだ』と 言 い 切<br />
ってもいい」( 177 頁 )、「… 不 作 為 を 正 当 化 するための 言 い 訳 を 腐 るほど 数 え<br />
上 げて、 実 際 は『やらない』という 裁 量 行 為 をするわけです。 不 作 為 を 作 為<br />
的 に 行 っているんですね。…そのことを 私 は『 不 作 為 という 名 の 作 為 』と 表<br />
....<br />
現 しています。そういう 意 味 で、『 金 融 再 生 プログラム』の 一 番 の 敵 は、 銀 行<br />
..<br />
経 営 者 ではありません。 宿 敵 は『 不 作 為 という 名 の 作 為 』なのです」(179<br />
頁 、 傍 点 は 引 用 者 )と。この 行 政 の「 病 」は、こと 金 融 庁 の 問 題 にかぎった<br />
10 ゴーイング・コンサーン 監 査 は 今 年 3 月 期 決 算 から 実 施 されることになった。<br />
詳 しくは、 評 者 のHPの「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.22「ゴーイング・コンサー<br />
ン 監 査 と 監 査 責 任 」) を 参 照 。<br />
- 6 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
ことではないだろう。そのことは、 外 務 省 や 旧 厚 生 省 などの 不 祥 事 を 思 い 出<br />
せばよい 11 。<br />
木 村 は、 最 終 の 第 5 章 で「 竹 中 新 3 原 則 」(3つのS)にも 触 れて、「 日 本<br />
はラストチャンスをものにできるか」を 問 う 12 。そこでも、 同 じくこの「 信<br />
頼 」 問 題 の 重 要 性 が 強 調 される。すなわち、「 ポ イントとなるのは、 銀 行 や 銀<br />
......<br />
行 経 営 者 以 上 に 重 要 であり、 今 回 の『 金 融 再 生 プログラム』の 真 のターゲッ<br />
ト . になっている 方 々です。… 一 番 重 要 なことは、 彼 らが( 金 融 庁 官 僚 - 引 用<br />
者 )『 信 頼 』を 回 復 できるか 否 か-これに 尽 きるのです。そのためには、『 不<br />
作 為 という 名 の 作 為 』を 即 刻 やめなければなりません」( 342 頁 、 傍 点 は 引 用<br />
者 )と。<br />
こうして、まさに「 金 融 庁 の 掟 を 打 ち 破 れるか」、 これが 竹 中 プランの 行<br />
方 を 左 右 する 重 要 なカギといえる。<br />
5 ディスクロージャー50 年 史 と 竹 中 プラン-「 会 計 の 精 神 」-<br />
米 国 では、すでに 述 べたように 昨 年 7 月 、エンロン 事 件 やワールドコムの<br />
破 綻 を 契 機 に 大 恐 慌 以 来 、およそ 70 年 ぶりの 市 場 改 革 と 言 われる「 企 業 改<br />
革 法 」(サーベンス・オクスレー 法 )が 成 立 した。 米 国 の 会 計 ・ 監 査 のあり 方<br />
も、この 企 業 改 革 法 の 規 制 強 化 で 大 きく 変 わろうとしている 13 。<br />
一 方 、わが 国 の 会 計 ディスクロージャーは 米 国 の 占 領 下 、その 米 国 証 券 法 、<br />
証 券 取 引 法 をいわば 強 制 的 に 押 しつけられる 形 で 導 入 された( 昭 和 23 年 )。<br />
その 後 、 規 制 強 化 と 規 制 緩 和 の 左 右 に 揺 れながら、いくつかの 段 階 を 経 て 今<br />
日 に 至 っているが 14 、そのディスクロージャー 史 からみれば 今 日 は「 会 計 ビ<br />
ッグバン」に 象 徴 されるように、これまでにないきわめて 大 きな 変 革 期 に 直<br />
面 している。その 背 後 に、 会 計 基 準 の 国 際 的 統 合 化 (convergence)の 大 波 が<br />
押 し 寄 せている 15 。<br />
11 この 官 僚 の「 不 作 為 という 名 の 作 為 」は、 司 馬 遼 太 郎 が 常 に 批 判 していた「 英<br />
雄 的 自 己 肥 大 」なる 病 に 通 じる。また、これも 司 馬 がよく 持 ち 出 す 夏 目 漱 石 の 小<br />
説 『 三 四 郎 』での、( 三 四 郎 が「 日 本 はどうなるんですか」と 聞 くと) 広 田 先 生<br />
の「 日 本 は 滅 びるね」というくだりを 想 起 させる。<br />
12 平 成 15 年 1 月 7 日 、 竹 中 大 臣 は 新 年 の 決 意 ( 竹 中 新 3 原 則 )を 述 べているが、<br />
実 は、そ こ に 今 回 の「りそなショック」の 引 き 金 が 暗 示 されている。その 意 味 で、<br />
今 回 の 銀 行 実 質 国 有 化 は 予 期 されていたともいえる。なお、「3つのS」とは 戦<br />
略 性 (Strategic), 健 全 性 (Sound), 誠 実 性 (Sincere)の3つの 視 点 であり、その<br />
視 点 から 銀 行 の 経 営 計 画 のより 厳 しいチェックの 方 針 が 示 されている。 詳 しくは、<br />
前 掲 HP「 時 事 会 計 入 門 講 座 」(No.19「りそなショックと 厳 正 監 査 」) 参 照 。<br />
13 この 企 業 改 革 法 は、 米 国 資 本 市 場 の 規 制 の 骨 格 をなす 1933 年 の 証 券 法 、SE<br />
Cの 設 置 、1934 年 の 証 券 取 引 法 など、 大 恐 慌 時 代 に 成 立 した 資 本 市 場 の 土 台 の<br />
大 幅 な 改 革 の 性 格 をもつ。 詳 しくは、 評 者 のHP「 時 事 会 計 入 門 講 座 」(No.20<br />
「 企 業 改 革 法 と 会 計 ・ 監 査 」) 参 照 。<br />
14 わが 国 の 会 計 ディスクロージャー 史 については、いくつかの 発 展 段 階 がある。<br />
例 えば、 吉 村 光 威 『ディスクロージャーを 考 える』( 日 本 経 済 新 聞 社 、1991 年 )<br />
では、ディスクロージャーの 日 本 史 を4つの 時 期 に 区 分 している。すなわち、○ⅰ<br />
米 国 方 式 を 占 領 下 で 導 入 ( 昭 和 23 年 の 証 取 法 制 定 )、 ○ⅱ その 反 省 で 規 制 緩 和 ( 昭<br />
和 28 年 証 取 法 改 正 から 昭 和 46 年 の 証 取 法 改 正 まで)、 ○ⅲ 証 券 不 況 、 粉 飾 決 算 事<br />
件 などを 経 て 再 整 備 ・ 強 化 ( 昭 和 63 年 の 証 取 法 改 正 以 前 まで)、 ○ⅳ 国 際 化 へ 歩 み<br />
寄 りながら 発 展 ( 昭 和 63 年 の 証 取 法 改 正 より)である。<br />
15 会 計 基 準 に 加 えて 監 査 基 準 、コーポレート・ガバナンスの3つの 国 際 的 統 合<br />
化 が 進 展 している。 会 計 規 制 の 国 際 化 の 意 義 と 問 題 点 については、 拙 稿 「 時 価 会<br />
- 7 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
いわゆる「 失 われた 10 年 」の 90 年 代 を 振 り 返 れば、これまで 銀 行 は、 自<br />
社 株 買 いの 解 禁 (1994 年 )、 株 式 の 低 価 法 から 原 価 法 への 変 更 容 認 (1997 年 )、<br />
土 地 の 含 み 益 の 自 己 資 本 算 入 (1998 年 )、 税 効 果 会 計 の1 年 前 倒 し( 1999 年 )、<br />
そして 日 銀 の 銀 行 株 の 購 入 (2002 年 )など、 一 連 の 銀 行 優 遇 行 政 によって 守<br />
られてきた。「 会 計 マジック」を 駆 使 する 日 本 の 銀 行 や 企 業 、さらには 金 融 シ<br />
ステムを 守 るという 錦 の 御 旗 のもと 国 を 挙 げての「 粉 飾 決 算 」がまかり 通 っ<br />
てきた。この 政 治 がからんだ「 激 変 緩 和 措 置 」や「 先 送 り」といった「 日 本<br />
問 題 」の 根 っこにある 構 図 は、 依 然 として 今 日 まで 続 いている 16 。そこに、<br />
実 は 先 の「 不 作 為 という 名 の 作 為 」が 密 接 にかかわっている。<br />
竹 中 プランは 金 融 システム、ひいては 日 本 経 済 の 再 建 の 切 り 札 として 登 場<br />
した。とりわけ、これまで 繰 り 返 されてきた「 会 計 マジック」、「 先 送 り」、「 激<br />
変 緩 和 」といった「 日 本 問 題 」にメスを 入 れることができるかどうか。 銀 行 、<br />
監 査 人 、 金 融 庁 の「 三 位 一 体 」 関 係 ( 蜜 月 関 係 )の 崩 壊 ともいえる 今 回 の「り<br />
そなショック」は、 会 計 ・ 監 査 上 の 今 後 のあり 方 における 重 要 事 件 であった<br />
と 後 世 言 われるかもしれない。<br />
竹 中 プラン、とりわけ「 竹 中 3 原 則 」は、すでにみてきたように 会 計 ・ 監<br />
査 にかかわる 事 項 が 重 要 な 柱 になっている。 金 融 システムや 金 融 行 政 の 問 題<br />
にとどまらず、わが 国 会 計 ディスクロージャー 史 の 観 点 からみても、この 竹<br />
中 プランの 占 める 位 置 は 大 きい。 新 たな 会 計 基 準 の 導 入 ( 会 計 ビッグバン)<br />
や 会 計 基 準 の 国 際 化 とは 異 なるレベルで、つまりより 基 本 的 なところで- 例<br />
えば、なぜ 会 計 があるかという「 会 計 の 精 神 」-1つの 重 要 な 位 置 を 占 める<br />
ように 思 える。 本 書 を 読 んで、とりわけ 著 者 の 精 神 を 読 んで、その 感 を 強 く<br />
した。<br />
著 者 木 村 は、これに 関 連 して、 別 のところで 重 要 な 点 を 指 摘 している 17 。<br />
最 後 に、それを 引 用 して 本 書 評 を 終 えたい。すなわち、「 法 律 も 会 計 も 同 じか<br />
もしれませんが、 私 は、 多 くの 人 があまりにも 技 術 論 に 走 りすぎているので<br />
はないかと 思 うのです。… 技 術 論 が 先 行 しているという 印 象 で、 倫 理 観 の 欠<br />
如 を 感 じるときがあります。テクニックばかりでエシックス( ethics= 倫 理 )<br />
がないということです。… 本 来 自 分 たちが 果 たすべきことは 何 なのか、 本 当<br />
のクライアントはどこにいるのか、 自 分 の 仕 事 の 公 共 性 はどうあるべきか、<br />
という 部 分 が 完 全 に 欠 落 しているのです」(『 法 学 セミナー』2003 年 3 月 号 、<br />
62 頁 )と。<br />
重 要 な 点 は、「『なぜ「 法 」があるのか』という 法 の 精 神 、『なぜ「 会 計 」<br />
があるのか』という 会 計 の 精 神 が 忘 れ 去 られた 技 術 論 は、 社 会 に 害 毒 を 垂 れ<br />
流 すだけになるのではないか」( 同 62 頁 )という 点 にあるように 思 える 18 。<br />
(5 月 31 日 稿 )<br />
計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容 ( 上 )」(『 経 営 研 究 』 第 53 巻 第 2 号 、2002 年 7 月 )Ⅱ<br />
の 第 4 節 参 照 。<br />
16 詳 しくは、 評 者 のHPの「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.12「 銀 行 の8 兆 円 の 資 本<br />
補 強 と 税 効 果 会 計 」)、 お よ び 「 失 われた10 年 」と 会 計 問 題 について 触 れている<br />
拙 稿 「 書 評 : 磯 山 友 幸 著 『 国 際 会 計 基 準 戦 争 』」(『 経 営 研 究 』 第 53 巻 第 4 号 、<br />
2003 年 1 月 ) 参 照 。<br />
17 雑 誌 『 法 学 セミナー』( 日 本 評 論 社 )03 年 3 月 号 の「 連 続 対 談 第 4 回 「『フェ<br />
ア』なフィールド 整 備 なしに 日 本 の 再 生 はない」。<br />
18 より 詳 しくは、 評 者 のHPの「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.15「 会 計 改 革 と 司 法<br />
改 革 」) 参 照 。<br />
- 8 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
〈 書 評 〉<br />
木 村 剛 『 竹 中 プランのすべて』<br />
(アスキー・コミュニケーションズ、2003 年 3 月 )<br />
Book Review: Takeshi, Kimura, The Takenaka’s Plan<br />
石 川 純 治 Junji Ishikawa<br />
目 次<br />
1 はじめに-「りそなショック」と 竹 中 プラン-<br />
2 本 書 の 構 成 -ファイターとしての「 男 」の 思 い-<br />
3 竹 中 3 原 則 -「 金 融 再 生 プログラム」の 本 丸 -<br />
4 真 のターゲット-「 不 作 為 という 名 の 作 為 」-<br />
5 ディスクロージャー50 年 史 と 竹 中 プラン-「 会 計 の 精 神 」-<br />
1 はじめに-「りそなショック」と 竹 中 プラン-<br />
5 月 18 日 ( 日 )、 新 聞 各 紙 は 一 斉 にりそな 銀 行 への2 兆 円 の 資 本 注 入 決<br />
定 を 報 じた。 噂 されていた 銀 行 の 実 質 国 有 化 に、 金 融 界 のみならず 日 本 全 土<br />
に「りそなショック」の 激 震 が 走 った。その 震 源 はすでに 昨 年 10 月 末 に 存<br />
在 していた。いうまでもなく、 昨 年 の 平 成 14 年 10 月 30 日 、 金 融 庁 が 公 表 し<br />
た「 金 融 再 生 プログラム」、いわゆる「 竹 中 プラン」である。 竹 中 平 蔵 はこの<br />
3 月 期 決 算 で 結 果 をみせてもらうと 公 言 していたが、その1つの 結 果 が 出 た<br />
わけだ。<br />
今 回 の「りそなショック」の 直 接 の 引 き 金 になったのは、 監 査 法 人 の 厳 正<br />
な 監 査 である。それをいわば 予 告 する 本 書 での 著 者 木 村 剛 の 発 言 がある。「 監<br />
査 法 人 が1つのキーパーソンになる」( 307 頁 )、「 こ の3 月 期 決 算 は、 外 部 監<br />
査 人 のプロフェッショナリズムが 問 われるでしょう」(310 頁 )、これである。<br />
竹 中 プランが 公 表 されてちょうど 半 年 、「 りそなショック」は、この 竹 中 プラ<br />
ンのいわばシナリオどおりに 展 開 されたともいえる。そのことは、 本 書 を 読<br />
めば 自 ずと 明 らかになるだろう。<br />
2 本 書 の 構 成 -ファイターとしての「 男 」の 思 い-<br />
「 金 融 再 生 プログラム」そのものは、 本 書 の 巻 末 資 料 にも 掲 載 されている<br />
が、10ページたらずの 短 いものである。だが、たった1カ 月 間 で 練 り 上 げ<br />
たと 言 われているが、そこには 日 本 の 経 済 再 建 に 向 けた、きわめて 重 要 なメ<br />
ッセージがしたためられている。「 骨 抜 きプラン」と 揶 揄 するマスコミもある<br />
が、 本 書 はその 真 実 の 姿 を 竹 中 の「ブレーン」と 称 される 木 村 剛 が、 評 論 家<br />
でも 経 済 学 者 でもない、また 金 融 担 当 大 臣 でもない 一 個 のファイターとして<br />
の「 男 」( 竹 中 )の 思 いを 伝 えるため( 序 文 )、 緊 急 出 版 したものである。<br />
本 書 は、 木 村 が 編 集 部 のインタビューに 答 えながら、「 金 融 再 生 プログラ<br />
ム」をコンメンタール 風 に 解 説 するという 形 ( 逐 条 解 説 )をとっている。 具<br />
体 的 には、「 金 融 再 生 プログラム」の3つの 柱 、すなわち○Ⅰ 金 融 システム、○Ⅱ<br />
企 業 再 生 、○Ⅲ 金 融 行 政 のそれぞれ3つの 新 しい 枠 組 みを3つの 章 ( 第 2,3,<br />
4 章 )で 解 説 し、その 前 後 に「なぜ 竹 中 プランが 必 要 だったか」( 第 1 章 )、<br />
「 竹 中 プランは 成 功 するか」( 第 5 章 ) を 配 置 している。<br />
「 金 融 再 生 プログラム」の 本 丸 は、 何 と 言 っても、いわゆる「 竹 中 3 原 則 」<br />
が 網 羅 されている3つ 目 の○Ⅲ 「 新 しい 金 融 行 政 の 枠 組 み」である。したがっ<br />
- 1 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
て、 本 書 評 も「 新 しい 金 融 行 政 の 枠 組 み」を 徹 底 解 説 している 第 4 章 が 中 心<br />
になる。そこには、 会 計 ・ 監 査 にかかわる 事 項 がもっとも 多 く 登 場 するだけ<br />
に、 評 者 の 関 心 と 焦 点 もそこに 当 てられる。<br />
3 竹 中 3 原 則 -「 金 融 再 生 プログラム」の 本 丸 -<br />
竹 中 が 大 臣 就 任 時 (2002 年 9 月 )に 掲 げた、1 資 産 査 定 の 厳 格 化 、2 自 己<br />
資 本 の 充 実 、3ガバナンスの 強 化 、この3つの 原 則 は 世 に「 竹 中 3 原 則 」と<br />
よばれる。こ の3 原 則 がずばりそのままの 形 で 織 り 込 まれているのが、○Ⅲ「 新<br />
しい 金 融 行 政 の 枠 組 み」である。マスコミの 目 も、したがって、ここに 集 中<br />
する。 既 に 述 べたように、 木 村 が 熱 っぽく 解 説 する 第 4 章 「『 新 しい 金 融 行 政<br />
の 枠 組 み』とは 何 か」は、 本 書 の 中 心 部 分 であり、また 評 者 がもっとも 関 心<br />
をもつところである。<br />
(1) 資 産 査 定 の 厳 格 化 - 個 別 引 当 金 問 題 -<br />
竹 中 3 原 則 の1 番 目 、「 資 産 査 定 の 厳 格 化 」では5つあげられているが、<br />
特 に 重 要 なのは「(ア) 資 産 査 定 に 関 する 基 準 の 見 直 し」である。それは1D<br />
CF 的 手 法 の 導 入 、2 引 当 金 算 定 期 間 の 見 直 し、3 債 務 者 区 分 の 統 一 、4デ<br />
ット・エクィイティ・スワップの 時 価 評 価 、5 再 建 計 画 の 検 証 、6 担 保 評 価<br />
の 厳 正 な 検 証 、の6 項 目 からできており( 厳 格 化 の「6 大 武 器 」)、 会 計 事 項<br />
が 多 く 関 わるところでもある。<br />
まず、6 大 武 器 のなかでも 目 玉 と 言 われる「DCF 的 手 法 」の 導 入 をみて<br />
おきたいが、 個 別 引 当 の 是 非 問 題 それ 自 体 (マスコミがいうところの「 森 ・<br />
木 村 対 決 」)は、あとでも 触 れるが 官 僚 の「 不 作 為 という 名 の 作 為 」ともかか<br />
わって 興 味 深 いところである(258-61 頁 )。さて、DCF 的 手 法 とは、 貸 出<br />
債 権 の 評 価 ( 割 引 現 在 価 値 )の 方 法 であるが、 将 来 キャッシュフロー( 分 子 )<br />
を 割 引 率 ( 分 母 )で 現 在 価 値 に 割 引 くものである。やや 専 門 的 ( 会 計 理 論 )<br />
になるが、 分 母 側 の 割 引 率 をどう 扱 うかが、 実 は 時 価 会 計 とこれまでの 原 価<br />
評 価 の 枠 組 みとの 分 かれ 目 になる 1 。<br />
今 回 のDCF 的 手 法 は、 昨 年 末 の 12 月 26 日 に 日 本 公 認 会 計 士 協 会 が 出 し<br />
た「 銀 行 等 金 融 機 関 において 貸 倒 引 当 金 の 計 上 方 法 としてキャッシュ・フロ<br />
ー 見 積 法 (DCF 法 )が 採 用 されている 場 合 の 監 査 上 の 留 意 事 項 」( 公 開 草 案 )<br />
に 詳 しく 記 されているが、そこでは 要 するに 時 価 会 計 ではなく、これまでの<br />
原 価 評 価 の 枠 内 の 扱 いになっている。それは、 草 案 の 幾 分 長 いタイトルでの<br />
「キャッシュ・フロー 見 積 法 (DCF 法 )」という 書 き 方 に 表 れている。<br />
簡 単 に 言 えば、 分 母 側 には 測 定 時 点 でのリスク(リスクプレミアム)は 反<br />
映 されず、 分 子 側 の 将 来 キャッシュフローの 見 積 に 焦 点 があてられている<br />
ということである 2 。<br />
木 村 は、そのことをよく 知 っていて、「 現 行 の 会 計 ルールに 基 づく 限 り、<br />
貸 出 債 権 の 評 価 は 原 価 法 に 基 づくと 定 められています。 時 価 会 計 ではないの<br />
です。…DCF 的 手 法 の 影 響 は、この『 将 来 キャッシュフロー』をいかに 厳<br />
格 に 見 積 もるかということにかかってくるのです」( 266 頁 )と 述 べている。<br />
1 この 点 については、 拙 稿 「 減 損 会 計 と 利 益 計 算 の 構 造 」(『 企 業 会 計 』2001 年<br />
11 月 号 、9 頁 および 注 19)、 拙 稿 「 割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分 」(『 経 営 研 究 』 第<br />
53 巻 第 3 号 、2002 年 11 月 、 第 4 節 )、 拙 稿 「 企 業 会 計 のハイブリッド 構 造 」(『 会<br />
計 』 2003 年 1 月 号 、6 頁 、9-10 頁 )を 参 照 。<br />
2 この 点 について 本 年 1 月 に 公 開 草 案 への 意 見 として 若 干 の 私 見 を 送 った( 協 会<br />
のリサーチ・センター 調 査 第 一 課 )。キャッシュ・フロー 見 積 法 については、 前<br />
掲 拙 稿 「 割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分 」 第 4 節 および 注 14 参 照 。<br />
- 2 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
ただ、 金 融 商 品 会 計 での 貸 出 債 権 の 扱 いがこれまでの 原 価 評 価 の 枠 内 かどう<br />
か、 会 計 理 論 として 議 論 の 余 地 はある 3 。<br />
もし、 時 価 評 価 として 割 引 率 にリスクプレミアムが 加 味 されると、(その<br />
債 権 価 値 はより 小 さくなるので) 貸 倒 引 当 不 足 額 はいっそう 大 きなものにな<br />
る。この 点 において、DCF 的 手 法 の 導 入 はマスコミが 注 目 するほど 大 きな<br />
インパクトを 与 えるものでないかもしれない。この 点 で、 木 村 が「ある 意 味<br />
で、これはDCF 的 手 法 より 強 力 なツールとさえ 言 えます」( 271 頁 )と 述 べ<br />
ている、6 大 武 器 の2つ 目 の「 引 当 金 算 定 期 間 の 見 直 し」も 重 要 である。そ<br />
れも 専 門 的 になるので、ここでは 詳 しくふれないが、 要 は「…『DCF 的 手<br />
法 は 実 務 的 に 難 しい』と 言 って 逃 げられるかもしれないので、 引 当 金 算 定 の<br />
期 間 で 対 応 できるようになっている。 一 の 矢 で 逃 げられても、 二 の 矢 、 三 の<br />
矢 で 仕 留 められるようになっている」( 272 頁 )というわけである。したたか<br />
な 野 生 の 鹿 や 兎 ( 銀 行 や 監 査 人 )を 用 意 周 到 に 追 う、まさにいくもの 武 器 を<br />
持 つ 狩 人 ( 竹 中 ・ 木 村 )、ということか。<br />
書 評 という 紙 幅 の 制 約 上 、そのすべてにはふれられないが、 評 者 の 関 心 か<br />
らもう1つあげるなら、4 番 目 の「デット・エクィイティ・スワップの 時 価<br />
評 価 」であろう。デット・エクィイティ・スワップとはいわゆる「 債 務 の 株<br />
式 化 」( 不 良 債 権 の 株 式 化 )といわれるもので、 銀 行 が 保 有 する 再 建 企 業 向 け<br />
の 債 権 をその 企 業 の 株 式 (ほとんどが 優 先 株 だが)に 振 り 替 え る 手 法 である。<br />
昨 年 、ダイエー、 長 谷 工 などかなりの 企 業 が 大 手 銀 行 との 間 で 実 施 している 4 。<br />
企 業 再 生 の 切 り 札 との 期 待 もあるが、 木 村 に「インチキの 代 名 詞 」( 276 頁 )<br />
と 言 われるように、 盲 点 も 多 い 5 。<br />
とりわけ、 明 確 な 会 計 ルールがなかったが、 昨 年 10 月 、 企 業 会 計 基 準 委<br />
員 会 が 時 価 評 価 の 会 計 ルールを 決 めた。ただ、その 適 用 対 象 が 基 準 公 表 後 に<br />
実 施 した 債 務 の 株 式 化 になっているので、 公 表 前 は 時 価 評 価 しなくてすむこ<br />
とになる 6 。そこで、「…(9 月 30 日 末 までに- 引 用 者 )ミニラッシュが 発 生<br />
しました。9 月 30 日 までに 実 施 してしまえば、 永 遠 に 時 価 評 価 しなくてい<br />
いわけですから。こんな 馬 鹿 な 会 計 ルールを 作 成 する 企 業 会 計 基 準 委 員 会 と<br />
3 債 権 については 原 則 として 時 価 評 価 は 行 わないとしているが、 一 般 債 権 と 破 産<br />
更 生 債 権 との 中 間 に 位 置 する 貸 倒 懸 念 債 権 には「キャッシュ・フロー 見 積 法 」と<br />
ともに「 財 務 内 容 評 価 法 」がある。この 静 態 的 な 方 法 ( 破 産 更 正 債 権 でも 適 用 )<br />
が 動 態 的 な 原 価 評 価 の 枠 内 かどうか。 前 掲 拙 稿 「 割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分 」の 注<br />
14 参 照 。<br />
4 例 えば『 日 経 金 融 新 聞 』2002 年 6 月 12 日 、3 月 12 日 を 参 照 。 最 近 では、 飛<br />
鳥 建 設 がみずほコーポレート 銀 行 などと 300 億 円 の 債 務 株 式 化 で 合 意 している<br />
(『 日 本 経 済 新 聞 』2003 年 4 月 16 日 )。 評 者 のホームページ(HP)でのインタ<br />
ーネット 講 座 の「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.21「デット・エクィイティ・スワッ<br />
プという 魔 法 の 杖 」) 参 照 。ちなみに、 債 務 株 式 化 のきっかけが 2001 年 の 東 京<br />
地 裁 の 判 事 の 見 解 というから、その 過 程 で 会 計 理 論 はなんら 触 れられなかったの<br />
か。 残 念 ながら、 社 会 的 認 知 と 発 言 力 に 乏 しい 会 計 アカデミズムの 一 面 でもある。<br />
5 債 務 の 株 式 化 は、 中 小 企 業 にとっては 有 効 な 方 法 である。ちなみに、 評 者 が 会<br />
計 ・ 監 査 を 離 れてもっとも 関 心 を 持 つのはこの 中 小 企 業 融 資 の 問 題 である。「『 金<br />
融 再 生 プログラム』では、 中 小 企 業 向 け 貸 出 に 関 する 項 目 にかなりの 分 量 が 割 か<br />
れている」( 155 頁 )と 述 べているように、 竹 中 プランでの 中 小 企 業 融 資 の 位 置<br />
は 重 要 である。「 国 民 のための 金 融 行 政 」の1つは、この 中 小 企 業 融 資 のあり 方<br />
にある。2001 年 春 の「 石 川 銀 行 事 件 」を 思 い 出 せば、 現 実 の 金 融 行 政 がいかに<br />
「 国 民 」からかけ 離 れているか、その 歪 みがわかるはずである。この 事 件 は 木 村<br />
剛 『 日 本 資 本 主 義 の 哲 学 』( PHP 研 究 所 、2002 年 )でも 取 り 上 げられた。<br />
6 『 日 本 経 済 新 聞 』2002 年 10 月 5 日 。<br />
- 3 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
いうのは、 一 体 全 体 どういう 見 識 を 持 っているのかと 疑 いたくなります。…<br />
会 計 のあり 方 を 大 きく 踏 み 外 してしまっているわけです。これも、 銀 行 から<br />
のプレッシャーのせいなんですよね」( 280 頁 )、と 木 村 の 批 判 は 手 厳 しい 7 。<br />
そのことを 意 識 して、この4つ 目 の 武 器 はわざわざ「…デット・エクィイテ<br />
.........<br />
ィ・スワップに 関 しては、 取 引 の 時 期 を 問 わず 、 時 価 評 価 を 適 用 することを<br />
検 討 する」( 傍 点 は 引 用 者 )、と 記 している。<br />
以 上 、「 (ア ) 資 産 査 定 に 関 する 基 準 の 見 直 し」に 関 する6 大 武 器 について<br />
みてきたが、この 他 に「 特 別 検 査 の 再 実 施 」や「 自 己 査 定 と 金 融 庁 検 査 の 格<br />
差 公 表 」など 重 要 項 目 もあるが、「 (オ ) 財 務 諸 表 の 正 確 性 に 関 する 経 営 者 によ<br />
る 宣 言 」だけ 若 干 ふれておきたい。<br />
これは、エンロン 事 件 をきっかけに 昨 年 7 月 、これも 短 期 間 で 作 り 上 げら<br />
れたが、「 企 業 改 革 法 」(サーベンス・オクスレー 法 )での 宣 誓 義 務 と 同 じ 内 容<br />
.......<br />
...<br />
をもつ。ただ、 会 計 理 論 としてみたとき、「 資 産 査 定 を 含 む財 務 諸 表 が 正 確 で<br />
ある<br />
.. ..<br />
ことに 関 し、…」( 傍 点 は 引 用 者 ) にはこれまでのフロー( 利 益 )の 適 正<br />
. ...<br />
性 よりも、ストック( 資 産 ・ 負 債 )の 正 確 性 が 強 調 されているようにみえる。<br />
こうしたストック 志 向 は、 銀 行 の 財 務 諸 表 だけでなく、 一 般 に 今 日 の 企 業 会<br />
計 のあり 方 をみるとき1つの 特 徴 でもある。したがって、これまでの 伝 統 的<br />
なフロー 志 向 ( 期 間 損 益 の 適 正 性 )の 枠 組 みとどう 整 合 しうるか、1つの 理<br />
論 的 課 題 ではある。<br />
もう1つ、 重 要 なのはこの「 宣 誓 」が 実 際 に 実 施 されるかということだが、<br />
「ちょうど、 金 融 審 議 会 第 一 部 会 のディスクロージャー・ワーキンググルー<br />
プは、 有 価 証 券 報 告 書 の 記 載 内 容 の 適 切 性 に 関 する 宣 誓 書 を 正 式 な 添 付 書 類<br />
にすることの 是 非 を 検 討 していますから、 早 ければ、この3 月 期 決 算 から 要<br />
請 することになります」( 291 頁 )と 述 べている。あとで 粉 飾 が 発 覚 でもした<br />
ら、それこそ 損 害 賠 償 が 代 表 取 締 役 個 人 にくるから、まさにこの3 月 期 決 算<br />
が 注 目 される 8 。<br />
いずれにしても、 米 国 でもそしてわが 国 でも、 企 業 会 計 ( 会 計 ・ 監 査 )が<br />
コーポレート・ガバナンスの 一 環 のなかで、それに 組 み 込 まれる 形 で 規 制 強<br />
化 されてきていることは 確 かであろう。<br />
(2) 自 己 資 本 の 充 実 - 繰 延 税 金 資 産 問 題 -<br />
冒 頭 で 述 べたように、 今 回 の「りそなショック」の 直 接 の 引 き 金 になった<br />
のは、 銀 行 の 自 己 資 本 問 題 とそれを 厳 正 に 監 査 した 監 査 法 人 である。その 点<br />
で、 竹 中 3 原 則 の2 番 目 、「 自 己 資 本 の 充 実 」は きわめて 重 要 なところである。<br />
そこでは、「(ア) 自 己 資 本 を 強 化 するための 税 制 改 正 」から「(カ) 自 己 資 本 比<br />
率 に 関 する 外 部 監 査 の 導 入 」まで6 項 目 があげられているが、ここで 重 要 な<br />
のは「(イ) 繰 延 税 金 資 産 に 関 する 算 入 の 適 正 化 」と「(ウ) 繰 延 税 金 資 産 の 合<br />
理 性 の 確 認 」である。<br />
結 局 のところ、 今 回 の「りそな 問 題 」は 繰 延 税 金 資 産 の 資 産 性 の 問 題 (バ<br />
ランスシートの 貸 方 側 からは 自 己 資 本 の 算 定 問 題 )であった。(イ)「 繰 延 税<br />
7 ちなみに、 企 業 会 計 基 準 委 員 会 はその 後 、すべて 時 価 評 価 する 新 たな 基 準 を 決<br />
めている。『 日 本 経 済 新 聞 』2003 年 2 月 5 日 。しかし、 債 務 株 式 化 で 銀 行 が 保 有<br />
する 株 式 にも 当 然 、 金 融 商 品 会 計 が 適 用 されるだろうから、そもそもその 他 有 価<br />
証 券 の 時 価 評 価 という 現 行 ルールは 適 用 されないのだろうか。<br />
8 三 菱 東 京 フィナンシャル・グループは 米 国 の 企 業 改 革 法 に 対 応 して「 情 報 開 示<br />
委 員 会 」を 設 置 し、 経 営 トップが 決 算 書 の 正 確 性 、 正 当 性 について「 宣 誓 書 」を<br />
提 出 する。 米 国 だけでなく 国 内 向 け 決 算 書 も 宣 誓 対 象 とするのは 日 本 企 業 で 初 め<br />
てという。『 日 本 経 済 新 聞 』2003 年 5 月 30 日 。<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
......<br />
金 資 産 については、その 資 本 性 が 脆 弱 であるため、 自 己 資 本 比 率 規 制 におけ<br />
...........<br />
る 取 扱 については、 会 計 指 針 の 趣 旨 に 即 って その 資 産 性 を 厳 正 に 評 価 すると<br />
ともに、 算 入 上 限 についても 速 やかに 検 討 する」( 傍 点 は 引 用 者 )の 傍 点 箇 所<br />
が 重 要 なところである。「 資 本 性 が 脆 弱 → 資 産 性 の 厳 正 評 価 」ではあるが、「 資<br />
産 性 があやしい→ 資 本 性 が 問 題 」というのが 筋 道 だろう( 借 方 の 資 産 性 問 題<br />
→ 貸 方 の 資 本 性 問 題 )。<br />
そこで、(ウ)の 繰 延 税 金 資 産 の 合 理 性 の 問 題 になるわけだが、「 主 要 銀 行 の<br />
.....<br />
経 営 を 取 り 巻 く 不 確 実 性 が 大 きいことを 認 識 し、 翌 年 度 を 超 える 将 来 時 点 の<br />
...........................<br />
課 税 所 得 を 見 積 もることが 非 常 に 難 しいことを 理 解 した 上 で 、 外 部 監 査 人 に<br />
厳 正 な 監 査 を 求 めるとともに、 主 要 行 の 繰 延 税 金 資 産 が 厳 正 に 計 上 されてい<br />
.......<br />
るかを 厳 しく 監 査 する 」( 傍 点 は 引 用 者 )と 謳 っている。<br />
ここで、 木 村 の 次 の 発 言 が 今 回 の 問 題 とつながる。その 点 で 重 要 であるの<br />
で、やや 長 くなるが、 引 用 しよう。すなわち、「 要 するに、さりげなく、 繰 延<br />
税 金 資 産 の 自 己 資 本 への 算 入 は、1 年 以 上 は 非 常 に 難 しいと 言 っているわけ<br />
です。じつはこれ、 現 行 の 会 計 ルール 通 りなんですけれどね。 無 理 な 収 益 計<br />
画 になっていないか。 無 理 に 長 い 期 間 を 計 上 していないか。そもそも、いわ<br />
ゆる『 第 4 項 但 書 き』といわれる 例 外 条 項 で5 年 間 計 上 して 本 当 によいのか。<br />
…『 第 4 項 但 書 き』が2 年 連 続 で 適 用 されるなんてことが 本 当 に 可 能 なのか。<br />
........<br />
などということについて、 疑 問 を 提 示 しているわけです。 特 に、この3 月 期<br />
.....<br />
については、こういうことについて、 真 摯 な 議 論 が 必 要 になるはずなんです<br />
ね」( 304 頁 、 傍 点 は 引 用 者 )と。<br />
やや 専 門 的 になるが、ここで「 第 4 項 但 書 き」とは、 日 本 公 認 会 計 協 会 の<br />
「 繰 延 税 金 資 産 の 回 収 可 能 性 の 判 断 に 関 する 監 査 上 の 取 扱 い」( 平 成 11 年 11<br />
月 、 監 査 委 員 会 報 告 第 66 号 )に 記 されているもので、 要 するに、 繰 越 欠 損 金<br />
が「 非 経 常 的 な 特 別 の 原 因 」( リ ストラや 法 令 の 改 正 など)で 発 生 したもので<br />
あれば、5 年 間 まで 回 収 可 能 であると 認 めてよいとする 例 外 規 定 である。 銀<br />
行 の 赤 字 がこうした 特 例 に 該 当 しないのは 明 らかで、その 回 収 可 能 性 は 極 め<br />
てあやしいというのが 妥 当 な 判 断 である。この「 但 書 き」をめぐる 攻 防 は、<br />
明 らかに 銀 行 側 に 不 利 というわけだ。 実 際 、りそな 銀 行 のケースでは、5 年<br />
分 から3 年 分 に 短 縮 された 結 果 、 自 己 資 本 比 率 が 当 初 予 想 していた6% 程 度<br />
から 一 挙 に2% 程 に 低 下 し(グループ 全 体 でも 3.8%)、 国 内 営 業 の 最 低 基 準<br />
の4%を 下 回 ったわけである 9 。<br />
いずれにしても、それはあくまで 現 行 の 会 計 ルールに 則 って 監 査 を 実 行 し<br />
た 結 果 である。その 意 味 で、 当 たり 前 のことが 断 行 されたと 言 うべきであろ<br />
う。「 新 しく 検 討 されている『 算 入 上 限 』によらなくても、 現 行 の 会 計 ルール<br />
をしっかりと 適 用 していくのであれば、 同 じような 結 果 になる( 米 国 流 の<br />
10%ルールの 適 用 - 引 用 者 )ということなんです。これはルール 変 更 でもな<br />
んでもない。 現 行 ルールそのものなのですね」( 306 頁 )、というわけである。<br />
マスコミから「 甘 い 監 査 」、「 手 心 監 査 」、「なれあい 監 査 」などと 揶 揄 されが<br />
ちだが(あたっている 面 もある)、 監 査 業 務 の 核 心 ともいうべき「 監 査 の 独 立<br />
9 この 何 年 分 までの 繰 延 税 金 資 産 を 認 めるかどうかの 攻 防 は(5 年 か3 年 か、は<br />
たまたゼロか)、 実 は 金 融 庁 官 僚 、 銀 行 、 監 査 法 人 の 間 できわめて 政 治 的 な“ 暗<br />
躍 ”があったという 報 道 もなされた(『アエラ』6/2 号 、『 週 間 朝 日 』 6/6 号 、『 週<br />
間 東 洋 経 済 』5/31 号 )。この「 三 位 一 体 」の 関 係 ( 蜜 月 関 係 )が、 今 回 崩 壊 した<br />
わけである。 詳 しくは、 評 者 のHPのインターネット 講 座 のなかで 連 載 中 の「 時<br />
事 会 計 入 門 講 座 」(( No.19「りそなショックと 厳 正 監 査 」) 参 照<br />
- 5 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
性 」( 精 神 的 独 立 性 )が、 迷 いに 迷 った 決 断 であるにせよ、“ 教 科 書 どおり”<br />
貫 かれたと 見 るべきである。<br />
(3) ガバナンスの 強 化 - 監 査 法 人 の 重 責 -<br />
竹 中 3 原 則 の3 番 目 、「ガバナンスの 強 化 」では5 項 目 があがっているが、<br />
なかでも「(ア) 外 部 監 査 人 の 機 能 」が 重 要 なところである。すなわち、「 資 産<br />
査 定 や 引 当 ・ 償 却 の 正 確 性 、さらに 継 続 企 業 の 前 提 に 関 する 評 価 については、<br />
..... ...<br />
外 部 監 査 人 が 重 大 な 責 任 をもって、 厳 正 に監 査 を 行 う」( 傍 点 は 引 用 者 )であ<br />
る。 先 にも 触 れたが、「 正 確 性 」という 観 点 からの 監 査 、さらに 企 業 の 継 続 性<br />
に 関 する 監 査 (ゴーイング・コンサーン 監 査 )という 点 が 重 要 である 10 。<br />
木 村 はこの 点 に 関 して「ものすごい 責 任 です。この3 月 期 決 算 は、 外 部 監<br />
査 人 のプロフェッショナリズムが 問 われるでしょう。…もしも、 外 部 監 査 人<br />
が 甘 い 監 査 をしたならば、 万 が 一 の 場 合 のリスクは 銀 行 経 営 者 だけではなく、<br />
外 部 監 査 人 に 向 かうかもしれません」(310 頁 )と 述 べているが、この 重 責 は<br />
まさに「 命 がけの 監 査 」につながったわけである。<br />
先 にも 述 べたが、 重 要 なポイントは、 監 査 がたんなる 法 的 監 査 ( 証 券 取 引<br />
法 、 商 法 )にとどまらず、さらに 企 業 のガバナンスに 組 み 込 まれる 形 になっ<br />
たという 点 にある。<br />
4 真 のターゲット-「 不 作 為 という 名 の 作 為 」-<br />
すでに 述 べたように、「 金 融 再 生 プログラム」の 前 文 においては、これまで<br />
みてきた「 竹 中 3 原 則 」が 明 確 に 記 されている。この3 原 則 の 他 に、 前 文 に<br />
おいてもうひとつ 重 要 な 文 言 がある。すなわち 前 文 の 冒 頭 「 日 本 の 金 融 シス<br />
テムと 金 融 行 政 に 対 する 信 頼 を 回 復 し、 世 界 から 評 価 される 金 融 市 場 を 作 る<br />
ためには、…」での「 信 頼 の 回 復 」がそれである。<br />
木 村 は「『 金 融 再 生 プログラム』の 本 当 のターゲット-すなわち、 金 融 庁<br />
に 対 する『 信 頼 』の 回 復 -を 本 当 に 達 成 できるのかをしっかりとみていく 必<br />
要 がある」( 112 頁 )、「 金 融 問 題 というものは、すべからく『 信 頼 』の 問 題 で<br />
す」( 120 頁 )、と 繰 り 返 し「 信 頼 」の 問 題 を 説 いている。<br />
この 信 頼 の 対 極 にあるのが、ある 意 味 で 本 書 を 貫 いている1つの 重 要 な 視<br />
点 、 著 者 憤 懣 のキーワード、それが「 不 作 為 という 名 の 作 為 」である。「 申 請<br />
主 義 」( 金 融 行 政 の「 病 」) という 愚 かな 論 理 、 不 作 為 という 名 の 作 為 を 助 長<br />
するマスコミ、 大 臣 命 令 を 聞 かない 官 僚 をなぜクビにできないのか( 第 2 章 、<br />
170-81 頁 )、などは 問 題 の 本 質 がどこにあるという 点 で、きわめて 重 要 なと<br />
ころである。 若 干 、 引 用 しよう。<br />
「 金 融 庁 内 の 抵 抗 勢 力 による『 不 作 為 という 名 の 作 為 』に 関 する 問 題 は 非<br />
常 に 深 刻 です。 一 朝 一 夕 で 治 せるかどうか。ここの 部 分 の 抵 抗 はものすごい<br />
ものがある。じつは、 竹 中 大 臣 が 一 番 苦 労 しているのは、『 ここだ』と 言 い 切<br />
ってもいい」( 177 頁 )、「… 不 作 為 を 正 当 化 するための 言 い 訳 を 腐 るほど 数 え<br />
上 げて、 実 際 は『やらない』という 裁 量 行 為 をするわけです。 不 作 為 を 作 為<br />
的 に 行 っているんですね。…そのことを 私 は『 不 作 為 という 名 の 作 為 』と 表<br />
....<br />
現 しています。そういう 意 味 で、『 金 融 再 生 プログラム』の 一 番 の 敵 は、 銀 行<br />
..<br />
経 営 者 ではありません。 宿 敵 は『 不 作 為 という 名 の 作 為 』なのです」(179<br />
頁 、 傍 点 は 引 用 者 )と。この 行 政 の「 病 」は、こと 金 融 庁 の 問 題 にかぎった<br />
10 ゴーイング・コンサーン 監 査 は 今 年 3 月 期 決 算 から 実 施 されることになった。<br />
詳 しくは、 評 者 のHPの「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.22「ゴーイング・コンサー<br />
ン 監 査 と 監 査 責 任 」) を 参 照 。<br />
- 6 -<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
ことではないだろう。そのことは、 外 務 省 や 旧 厚 生 省 などの 不 祥 事 を 思 い 出<br />
せばよい 11 。<br />
木 村 は、 最 終 の 第 5 章 で「 竹 中 新 3 原 則 」(3つのS)にも 触 れて、「 日 本<br />
はラストチャンスをものにできるか」を 問 う 12 。そこでも、 同 じくこの「 信<br />
頼 」 問 題 の 重 要 性 が 強 調 される。すなわち、「 ポ イントとなるのは、 銀 行 や 銀<br />
......<br />
行 経 営 者 以 上 に 重 要 であり、 今 回 の『 金 融 再 生 プログラム』の 真 のターゲッ<br />
ト . になっている 方 々です。… 一 番 重 要 なことは、 彼 らが( 金 融 庁 官 僚 - 引 用<br />
者 )『 信 頼 』を 回 復 できるか 否 か-これに 尽 きるのです。そのためには、『 不<br />
作 為 という 名 の 作 為 』を 即 刻 やめなければなりません」( 342 頁 、 傍 点 は 引 用<br />
者 )と。<br />
こうして、まさに「 金 融 庁 の 掟 を 打 ち 破 れるか」、 これが 竹 中 プランの 行<br />
方 を 左 右 する 重 要 なカギといえる。<br />
5 ディスクロージャー50 年 史 と 竹 中 プラン-「 会 計 の 精 神 」-<br />
米 国 では、すでに 述 べたように 昨 年 7 月 、エンロン 事 件 やワールドコムの<br />
破 綻 を 契 機 に 大 恐 慌 以 来 、およそ 70 年 ぶりの 市 場 改 革 と 言 われる「 企 業 改<br />
革 法 」(サーベンス・オクスレー 法 )が 成 立 した。 米 国 の 会 計 ・ 監 査 のあり 方<br />
も、この 企 業 改 革 法 の 規 制 強 化 で 大 きく 変 わろうとしている 13 。<br />
一 方 、わが 国 の 会 計 ディスクロージャーは 米 国 の 占 領 下 、その 米 国 証 券 法 、<br />
証 券 取 引 法 をいわば 強 制 的 に 押 しつけられる 形 で 導 入 された( 昭 和 23 年 )。<br />
その 後 、 規 制 強 化 と 規 制 緩 和 の 左 右 に 揺 れながら、いくつかの 段 階 を 経 て 今<br />
日 に 至 っているが 14 、そのディスクロージャー 史 からみれば 今 日 は「 会 計 ビ<br />
ッグバン」に 象 徴 されるように、これまでにないきわめて 大 きな 変 革 期 に 直<br />
面 している。その 背 後 に、 会 計 基 準 の 国 際 的 統 合 化 (convergence)の 大 波 が<br />
押 し 寄 せている 15 。<br />
11 この 官 僚 の「 不 作 為 という 名 の 作 為 」は、 司 馬 遼 太 郎 が 常 に 批 判 していた「 英<br />
雄 的 自 己 肥 大 」なる 病 に 通 じる。また、これも 司 馬 がよく 持 ち 出 す 夏 目 漱 石 の 小<br />
説 『 三 四 郎 』での、( 三 四 郎 が「 日 本 はどうなるんですか」と 聞 くと) 広 田 先 生<br />
の「 日 本 は 滅 びるね」というくだりを 想 起 させる。<br />
12 平 成 15 年 1 月 7 日 、 竹 中 大 臣 は 新 年 の 決 意 ( 竹 中 新 3 原 則 )を 述 べているが、<br />
実 は、そ こ に 今 回 の「りそなショック」の 引 き 金 が 暗 示 されている。その 意 味 で、<br />
今 回 の 銀 行 実 質 国 有 化 は 予 期 されていたともいえる。なお、「3つのS」とは 戦<br />
略 性 (Strategic), 健 全 性 (Sound), 誠 実 性 (Sincere)の3つの 視 点 であり、その<br />
視 点 から 銀 行 の 経 営 計 画 のより 厳 しいチェックの 方 針 が 示 されている。 詳 しくは、<br />
前 掲 HP「 時 事 会 計 入 門 講 座 」(No.19「りそなショックと 厳 正 監 査 」) 参 照 。<br />
13 この 企 業 改 革 法 は、 米 国 資 本 市 場 の 規 制 の 骨 格 をなす 1933 年 の 証 券 法 、SE<br />
Cの 設 置 、1934 年 の 証 券 取 引 法 など、 大 恐 慌 時 代 に 成 立 した 資 本 市 場 の 土 台 の<br />
大 幅 な 改 革 の 性 格 をもつ。 詳 しくは、 評 者 のHP「 時 事 会 計 入 門 講 座 」(No.20<br />
「 企 業 改 革 法 と 会 計 ・ 監 査 」) 参 照 。<br />
14 わが 国 の 会 計 ディスクロージャー 史 については、いくつかの 発 展 段 階 がある。<br />
例 えば、 吉 村 光 威 『ディスクロージャーを 考 える』( 日 本 経 済 新 聞 社 、1991 年 )<br />
では、ディスクロージャーの 日 本 史 を4つの 時 期 に 区 分 している。すなわち、○ⅰ<br />
米 国 方 式 を 占 領 下 で 導 入 ( 昭 和 23 年 の 証 取 法 制 定 )、 ○ⅱ その 反 省 で 規 制 緩 和 ( 昭<br />
和 28 年 証 取 法 改 正 から 昭 和 46 年 の 証 取 法 改 正 まで)、 ○ⅲ 証 券 不 況 、 粉 飾 決 算 事<br />
件 などを 経 て 再 整 備 ・ 強 化 ( 昭 和 63 年 の 証 取 法 改 正 以 前 まで)、 ○ⅳ 国 際 化 へ 歩 み<br />
寄 りながら 発 展 ( 昭 和 63 年 の 証 取 法 改 正 より)である。<br />
15 会 計 基 準 に 加 えて 監 査 基 準 、コーポレート・ガバナンスの3つの 国 際 的 統 合<br />
化 が 進 展 している。 会 計 規 制 の 国 際 化 の 意 義 と 問 題 点 については、 拙 稿 「 時 価 会<br />
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書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )<br />
いわゆる「 失 われた 10 年 」の 90 年 代 を 振 り 返 れば、これまで 銀 行 は、 自<br />
社 株 買 いの 解 禁 (1994 年 )、 株 式 の 低 価 法 から 原 価 法 への 変 更 容 認 (1997 年 )、<br />
土 地 の 含 み 益 の 自 己 資 本 算 入 (1998 年 )、 税 効 果 会 計 の1 年 前 倒 し( 1999 年 )、<br />
そして 日 銀 の 銀 行 株 の 購 入 (2002 年 )など、 一 連 の 銀 行 優 遇 行 政 によって 守<br />
られてきた。「 会 計 マジック」を 駆 使 する 日 本 の 銀 行 や 企 業 、さらには 金 融 シ<br />
ステムを 守 るという 錦 の 御 旗 のもと 国 を 挙 げての「 粉 飾 決 算 」がまかり 通 っ<br />
てきた。この 政 治 がからんだ「 激 変 緩 和 措 置 」や「 先 送 り」といった「 日 本<br />
問 題 」の 根 っこにある 構 図 は、 依 然 として 今 日 まで 続 いている 16 。そこに、<br />
実 は 先 の「 不 作 為 という 名 の 作 為 」が 密 接 にかかわっている。<br />
竹 中 プランは 金 融 システム、ひいては 日 本 経 済 の 再 建 の 切 り 札 として 登 場<br />
した。とりわけ、これまで 繰 り 返 されてきた「 会 計 マジック」、「 先 送 り」、「 激<br />
変 緩 和 」といった「 日 本 問 題 」にメスを 入 れることができるかどうか。 銀 行 、<br />
監 査 人 、 金 融 庁 の「 三 位 一 体 」 関 係 ( 蜜 月 関 係 )の 崩 壊 ともいえる 今 回 の「り<br />
そなショック」は、 会 計 ・ 監 査 上 の 今 後 のあり 方 における 重 要 事 件 であった<br />
と 後 世 言 われるかもしれない。<br />
竹 中 プラン、とりわけ「 竹 中 3 原 則 」は、すでにみてきたように 会 計 ・ 監<br />
査 にかかわる 事 項 が 重 要 な 柱 になっている。 金 融 システムや 金 融 行 政 の 問 題<br />
にとどまらず、わが 国 会 計 ディスクロージャー 史 の 観 点 からみても、この 竹<br />
中 プランの 占 める 位 置 は 大 きい。 新 たな 会 計 基 準 の 導 入 ( 会 計 ビッグバン)<br />
や 会 計 基 準 の 国 際 化 とは 異 なるレベルで、つまりより 基 本 的 なところで- 例<br />
えば、なぜ 会 計 があるかという「 会 計 の 精 神 」-1つの 重 要 な 位 置 を 占 める<br />
ように 思 える。 本 書 を 読 んで、とりわけ 著 者 の 精 神 を 読 んで、その 感 を 強 く<br />
した。<br />
著 者 木 村 は、これに 関 連 して、 別 のところで 重 要 な 点 を 指 摘 している 17 。<br />
最 後 に、それを 引 用 して 本 書 評 を 終 えたい。すなわち、「 法 律 も 会 計 も 同 じか<br />
もしれませんが、 私 は、 多 くの 人 があまりにも 技 術 論 に 走 りすぎているので<br />
はないかと 思 うのです。… 技 術 論 が 先 行 しているという 印 象 で、 倫 理 観 の 欠<br />
如 を 感 じるときがあります。テクニックばかりでエシックス( ethics= 倫 理 )<br />
がないということです。… 本 来 自 分 たちが 果 たすべきことは 何 なのか、 本 当<br />
のクライアントはどこにいるのか、 自 分 の 仕 事 の 公 共 性 はどうあるべきか、<br />
という 部 分 が 完 全 に 欠 落 しているのです」(『 法 学 セミナー』2003 年 3 月 号 、<br />
62 頁 )と。<br />
重 要 な 点 は、「『なぜ「 法 」があるのか』という 法 の 精 神 、『なぜ「 会 計 」<br />
があるのか』という 会 計 の 精 神 が 忘 れ 去 られた 技 術 論 は、 社 会 に 害 毒 を 垂 れ<br />
流 すだけになるのではないか」( 同 62 頁 )という 点 にあるように 思 える 18 。<br />
(5 月 31 日 稿 )<br />
計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容 ( 上 )」(『 経 営 研 究 』 第 53 巻 第 2 号 、2002 年 7 月 )Ⅱ<br />
の 第 4 節 参 照 。<br />
16 詳 しくは、 評 者 のHPの「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.12「 銀 行 の8 兆 円 の 資 本<br />
補 強 と 税 効 果 会 計 」)、 お よ び 「 失 われた10 年 」と 会 計 問 題 について 触 れている<br />
拙 稿 「 書 評 : 磯 山 友 幸 著 『 国 際 会 計 基 準 戦 争 』」(『 経 営 研 究 』 第 53 巻 第 4 号 、<br />
2003 年 1 月 ) 参 照 。<br />
17 雑 誌 『 法 学 セミナー』( 日 本 評 論 社 )03 年 3 月 号 の「 連 続 対 談 第 4 回 「『フェ<br />
ア』なフィールド 整 備 なしに 日 本 の 再 生 はない」。<br />
18 より 詳 しくは、 評 者 のHPの「 時 事 会 計 入 門 講 座 」( No.15「 会 計 改 革 と 司 法<br />
改 革 」) 参 照 。<br />
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