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日本語 - JCIC-Heritage

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M icronesia<br />

5. 提 言<br />

今 回 の 調 査 を 通 じて、ナン・マドール 遺 跡 の 現 状 を 述 べ、さらに 遺 跡 を 保 全 するための 当 該 国<br />

の 体 制 および 遺 跡 に 関 連 する 利 害 関 係 者 (stake holders)のヒアリングの 成 果 を 述 べてきた。こ<br />

の 遺 跡 が 現 地 ポンペイ 島 の 歴 史 ・ 伝 統 文 化 と 密 接 に 関 連 した 文 化 遺 産 であるという 側 面 から 考 え<br />

れば、 単 に 観 光 のための 開 発 を 推 し 進 めるのではなく、そこに 住 む 人 々 自 身 の 文 化 を 尊 重 しなが<br />

ら、 文 化 遺 産 を 持 続 的 に 維 持 していくという 方 策 を 勘 案 することが 重 要 である。もちろんこうし<br />

た 取 り 組 みは、 一 朝 一 夕 になしうるものではなく、 長 期 的 な 視 野 が 必 要 である。そのためには 単<br />

に 経 済 的 な 支 援 や、 国 や 地 方 自 治 体 という 施 策 主 体 の 問 題 だけでなく、そこに 住 む 一 人 ひとりの<br />

自 発 的 認 識 に 基 づいた 協 力 と 同 意 が 必 要 となってくる。<br />

ナン・マドール 遺 跡 は、 遺 跡 自 体 が 持 つ 顕 著 な 価 値 にもかかわらず、 適 切 な 遺 跡 保 護 のマス<br />

ター・プランが 存 在 しないことが、その 遺 跡 保 全 において 重 大 な 懸 念 となっている。 適 切 なマス<br />

ター・プランは、 将 来 的 に 期 待 されるユネスコ 世 界 遺 産 の 登 録 にも 重 要 な 条 件 となるばかりでな<br />

く、 遺 跡 の 保 全 に 向 けての 国 際 社 会 からの 援 助 を 受 け 入 れるための 受 け 皿 としても 不 可 欠 なもの<br />

である。そこで 日 本 としてもこのマスター・プランの 作 成 に 助 言 ・ 協 力 することが、 効 果 的 な 国<br />

際 支 援 になると 考 えられる。<br />

遺 跡 保 全 のためのマスター・プランには 以 下 の 要 素 が 必 要 である。<br />

・ 遺 跡 保 護 の 法 整 備 (legislative, regulatory and contractual measures for protection)<br />

・ 遺 跡 の 範 囲 (boundaries for effective protection)<br />

・ バッファゾーン(buffer zone)<br />

・ マネジメント・システム(management systems)<br />

・ 持 続 可 能 な 利 用 (sustainable use)<br />

一 番 目 に 関 しては、 遺 跡 を 管 理 する 法 的 な 責 任 を 有 する 国 ・ 地 方 自 治 体 と 協 議 し、 既 存 の 法 整<br />

備 を 確 認 し、その 不 備 の 是 正 および 補 填 について 助 言 するという 協 力 が 検 討 しうる。<br />

二 番 目 に 関 しては、 保 護 すべき 遺 跡 の 範 囲 を 確 定 するために、 遺 跡 の 正 確 な 地 図 を 作 成 する 必<br />

要 がある。このために、 測 量 ・ 記 録 方 法 の 技 術 移 転 および 技 術 提 供 などの 協 力 を 行 うことが 検 討<br />

しうる。<br />

三 番 目 に 関 しては、 遺 跡 周 辺 にバッファゾーンを 設 定 し、 遺 跡 に 悪 影 響 を 与 える 可 能 性 のある<br />

開 発 を 制 限 する 必 要 がある。そのために、 例 えば 周 辺 の 環 境 調 査 をおこない、 森 林 ・マングロー<br />

ブ・ 河 川 などの 状 況 を 把 握 し、 周 辺 地 域 における 開 発 が 遺 跡 に 及 びうる 影 響 を 評 価 するための 協<br />

力 をおこなうことが 検 討 しうる。<br />

四 番 目 に 関 しては、 遺 跡 を 保 護 するための 具 体 的 な 諸 手 段 からなるマネジメント・システムを<br />

確 立 することである。ただし 保 護 すべき 遺 跡 の 状 況 はその 文 化 的 ・ 環 境 的 脈 絡 により 多 様 であり、<br />

マネジメント・システムの 担 い 手 は 行 政 担 当 者 のみにとどまらず、 現 地 住 民 の 自 発 的 活 動 および<br />

現 地 社 会 により 継 続 的 におこなわれてきた 文 化 的 慣 習 が 大 きな 役 割 を 果 たしている 例 も 少 なくない。<br />

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