オーラル・ヒストリーの可能性―仮説の発見と実証 - 慶應義塾大学湘南 ...

らから 聞 かれたことに 答 えていく 受 動 的 なタイプなのか。 話 し 手 のイメージを 事 前 につか
むのは、 聞 き 取 りの 構 造 を 組 み 立 て、 有 効 な 質 問 票 を 作 成 する 上 でとても 重 要 な 情 報 にな
ります。 同 時 に、こちらがどういうことを 聞 きたくて、どういうスタンスでアプローチし
ているのか、ということを 相 手 に 明 確 に 伝 えることも、 聞 き 取 りの 充 実 に 有 益 なこととな
ります。
不 思 議 といえば 不 思 議 なのですが、 研 究 にこれだけ 使 えると 思 ってわかっていても、 実
際 にお 話 を 伺 いに 行 く 日 は、 耐 え 難 い 緊 張 感 があります。 今 日 も、ここでお 話 しすること
自 体 はオーラル・ヒストリーではないのですが、 来 るまでに 奇 妙 な 緊 張 感 があるんですよ
ね。 京 都 駅 で 降 りて、お 昼 ご 飯 を 食 べてからここまで 歩 いてくる 時 に、ああ 森 さんが 待 っ
ているから、そろそろ 行 かなければと 思 う 反 面 、どこか、 嫌 がっている 自 分 がいるんです
よね。みなさんも、そうした 経 験 がおありだと 思 います。それはなぜかといえば、 相 手 の
顔 が 見 えない、 初 対 面 による 緊 張 があるわけです。 事 前 に 皆 さんがどういう 方 たちなのか
をもう 少 しわかっていれば、そのハードルは、 恐 らくとても 下 がります。オーラル・ヒス
トリーの 場 合 も 同 じですが、 何 より 聞 き 手 が 理 解 しておかなければならないのは、お 話 を
伺 いにいく 自 分 以 上 に、 話 をする 相 手 の 方 がこうした 種 類 の 緊 張 をもって 待 っている、と
いうことです。どういう 人 が 何 を 聞 きに 来 るのかわからない、ということはすごく 不 安 な
はずです。 極 端 にいえば、あの 時 の 判 断 を 誤 っていたと 追 求 されるかもしれない、あの 時
にしてしまった 秘 密 に 迫 られるかも 知 れない、とこちらの 意 図 とは 無 関 係 に 考 えられてい
るかもしれないわけです。ですから、 相 手 に 対 しても、 自 分 が 何 を 聞 きたいのかというこ
とが 正 確 に 理 解 してもらえるように 努 力 しておくことが、とても 大 切 になります。
そうしたやりとりをする 中 で、 当 日 用 いる 質 問 票 を 洗 練 していくこととなります。 自 分
から 非 常 に 強 く 話 してくれる 人 の 場 合 、 質 問 票 を 精 緻 にする 必 要 がある。そうでないと、
本 人 が 話 したい、つまり 定 型 の 語 りを 話 されただけで2 時 間 くらいすぐ 経 ってしまいます。
こちらの 側 である 程 度 、コントロールをかけられるような 質 問 票 、 細 かな 質 問 票 を 書 いて
おけば、こうした 事 態 は 避 けることができます。
逆 にこちらが 引 き 出 していかないと 話 していただけばいような 場 合 は、むしろ 質 問 票 を
薄 く 作 っておきます。 薄 く 作 っておいて、 普 段 その 場 でする 質 問 のなかで、 細 かく 聞 いて
いくことをします。なぜかというと、 質 問 票 というのは、あらかじめ 送 られて 一 度 本 人 が
目 にされるものです。 細 かなことが 書 いてあれば、「 今 日 はこのことを 聞 かれるんだな。じ
ゃあこの 順 番 で 行 こう」という 風 に、たくさん 話 される 方 は 考 えます。わりとディフェン
シブに 話 される 方 は、 逆 にそこでディフェンスを 高 める 要 素 は 排 除 しておく。そうして、
当 日 、 細 かく 対 応 していくという 方 法 が 有 効 だと 感 じています。この 場 合 、 相 手 と 共 有 す
る 簡 易 版 の 質 問 票 と、 手 元 に 置 く 詳 細 版 の 質 問 票 の 二 つを 準 備 しておくのも 方 法 でしょう。
6-4 グループによる 聞 き 取 り
次 に、 聞 き 手 のグループについてお 話 しします。 恐 らく、これまで 聞 き 取 りに 取 り 組 ん
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