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受講の手引 - 政策科学部 - 立命館大学

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2011 年 度研 究 入 門 フォーラム受 講 の 手 引立 命 館 大 学 政 策 科 学 部2010 年 10 月 22 日


はじめに政 策 科 学 部 のカリキュラムでは、 政 策 科 学 演 習 ( 小 集 団 演 習 クラス)をコア 科 目 として 位 置づけています。 皆 さんにとって、「 研 究 入 門 フォーラム」は 1 回 生 配 当 の「 基 礎 演 習 」に 続く、 二 つ 目 のコア 科 目 であり、さらにこの 科 目 は 政 策 科 学 部 における 4 年 間 の 学 びの 集 大 成である「 専 門 演 習 I」「 専 門 演 習 II」「 卒 業 研 究 」へとつながる 科 目 です。「 研 究 入 門 フォーラム」は、 小 集 団 演 習 クラスの 中 でも、もっとも 政 策 科 学 部 らしい 科 目と 言 えるでしょう。この 科 目 の 狙 いは 三 つあります。第 一 は、 自 主 的 な 学 びであることです。 皆 さんが 自 ら 解 明 したいこと、 解 決 したい 政 策 争点 を 見 つけ、 自 ら 研 究 方 法 や 研 究 素 材 を 選 定 し、 研 究 のスケジュールを 決 め、 調 査 と 研 究 に取 り 組 むということです。第 二 は、フィールドワークによる 学 びであることです。 教 室 で 講 義 を 聴 くのではなく、 自ら 知 識 を 吸 収 し、 自 ら 情 報 を 取 得 し、それに 基 づいて 社 会 問 題 や 政 策 課 題 の 理 解 を 深 め、その 分 析 を 行 なうわけですから、 学 びの 場 を 教 室 の 外 へ 求 める 科 目 でもあります。 実 社 会 で 活躍 する 個 人 と 接 触 したり、 企 業 や 官 庁 や 社 会 団 体 を 訪 問 したり、 学 びの 方 法 は 工 夫 次 第 で 大きく 拡 がるはずです。第 三 は、グループワークであることです。 政 策 科 学 部 の 教 学 理 念 の 一 つに、「 社 会 に 内 在した 学 びの 推 進 」ということがあります。これは 第 二 点 目 にあげた、 教 室 の 外 に 学 びの 場 を求 めるという 考 え 方 であるとともに、 実 社 会 の 実 務 プロセスに 近 い 学 びという 意 味 があります。ごく 特 殊 な 場 合 を 除 き、 実 社 会 で 営 まれている「 仕 事 」は、グループワークです。 複 数のメンバーがそれぞれもっている 資 源 ( 知 識 や 技 能 や 技 術 )を 利 用 しあいながら、 一 つのプロジェクトを 遂 行 してくのが 普 通 です。グループワークによってとりくむ 学 びはそうした 社 会的 実 務 のありようを 意 識 したものです。クラブ 活 動 やサークル 活 動 をやっている 人 などはすでに 実 感 していることだと 思 いますが、グループワークそのものがなかなか 難 しい。メンバーの 都 合 が 合 わなかったり、 意 見 が 対 立 したり…。そこには 大 変 な 苦 労 があります。しかし、政 策 科 学 部 の 学 びの 目 標 は、そうした 困 難 を 乗 りこえる 技 量 を 身 につけることでもあります。つまり「グループワークを 学 ぶ」という 考 え 方 です。調 査 研 究 の 企 画 や 調 査 研 究 の 実 施 にあたっては、5 つの 研 究 領 域 -「 行 政 政 策 」・「 組 織 経営 」・「 国 際 政 策 」・「 環 境 都 市 」・「 情 報 文 化 」-のそれぞれを 担 当 する 教 員 が 指 導 にあたり、企 画 の 進 行 を 確 認 しながらアドバイスが 与 えられます。また、「 研 究 入 門 フォーラム」は、研 究 のフィールドを 学 生 自 身 が 開 拓 する 自 主 的 なプロジェクト(これを「 自 主 プロジェクト」といいます)とあわせて、 学 部 側 からもいくつかの 研 究 のフィールドが 提 供 されます(これを「 特 定 プロジェクト」といいます)。 来 年 度 提 供 される 特 定 プロジェクトについては、この 冊 子 の 後 半 に 記 載 しています。なお UBC ジョイントプログラムや 交 換 留 学 への 応 募 予 定者 は、 応 募 できません。「 研 究 入 門 フォーラム」では、 通 年 で 開 講 される 科 目 で、 学 年 末 に 研 究 プロジェクトグループごとに「 研 究 成 果 報 告 書 」を 書 いてもらいます。 成 績 評 価 方 法 は「 日 常 点 評 価 」ですが、「 研 究 入 門 フォーラム」の 単 位 を 取 得 するためには、「 研 究 成 果 報 告 書 」を 作 成 し、 提 出 することが 必 要 です。「 研 究 入 門 フォーラム」の 受 講 に 向 けて、「 研 究 計 画 書 (リサーチ・プロポーザル)」を「 基礎 演 習 」の 政 策 実 践 ライティング 課 題 として 執 筆 します。「 研 究 計 画 書 (リサーチ・プロポーザル)」では、 研 究 タイトル( 日 本 語 ・ 英 文 )、 研 究 の 意 義 ・ 目 的 、 先 行 研 究 、 研 究 方 法 などを 記 述 します。 特 定 プロジェクトに 応 募 するかどうかに 関 わらず、 自 らが 研 究 したい 内 容を 記 述 してください。この 冊 子 は、これから「 研 究 入 門 フォーラム」の 調 査 研 究 を 準 備 する 皆 さんに、いくつかの 基 本 事 項 を 解 説 するために 書 かれました。 研 究 したり 調 査 したりするというのはどのようなことなのか。 知 識 や 情 報 を 取 得 するためにはどうすればよいのか。 集 めた 情 報 やデータをどう 扱 えばよいのか。 教 室 外 での 学 びに 際 して、 注 意 しなければならないことは 何 か。これから 皆 さんはこれらのことがらを、 自 ら 研 究 し 調 査 する 主 体 として 学 んでいくことになります。テーマを 設 定 し、 研 究 素 材 をみつけだし、 研 究 方 法 を 選 択 する 前 に、この 冊 子 を 熟 読 し、充 実 した 研 究 計 画 書 を 作 成 してください。また、4 月 の 研 究 入 門 フォーラム 開 講 以 降 も、この 冊 子 を 読 み 返 し、 研 究 を 進 める 上 での 参 考 としてください。


目 次第 1 章 テーマを 決 めよう 11.1 政 策 科 学 ―― 問 題 指 向 の 学 問1.2 何 が 問 題 なのか1.3 テーマを 言 葉 で 表 現 してみる第 2 章 5つの 研 究 領 域 32.1 行 政 政 策2.2 組 織 経 営2.3 国 際 政 策2.4 環 境 都 市2.5 情 報 文 化第 3 章 研 究 計 画 をたてよう 83.1 時 間 の 節 約3.2 お 金 と 労 力3.3 過 去 の 研 究 成 果 を 洗 い 出 す3.4 研 究 の 意 義 と 目 的第 4 章 アクティブに 学 ぶ 124.1 授 業 時 間 の 使 い 方4.2 研 究 には 方 法 が 必 要4.3 フィールドワーク4.4 グループワーク第 5 章 文 献 案 内 18(1) 社 会 研 究 ・ 調 査 の 方 法(2) 社 会 諸 科 学 への 入 門(3)フィールドワーク(4) 学 術 論 文 を 書 く第 6 章 特 定 プロジェクト 23■ 韓 国 プロジェクト■ カンボジアプロジェクト■ 中 国 プロジェクト■ フランスプロジェクト■ 英 国 プロジェクト■ ドイツプロジェクト■ 宇 治 山 城 プロジェクト■ 若 狭 町 プロジェクト■ 向 日 市 プロジェクト第 7 章 受 講 までの 手 続 き 39(1) 科 目 の 概 要(2) 受 講 するための 手 続 き全 員 必 須特 定 プロジェクトに 応 募 する 場 合(3) 自 主 プロジェクトグループ 編 成 ・クラス 編 成○フィールド 調 査 届○2011 年 度 研 究 入 門 フォーラム 特 定 プロジェクト 応 募 用 紙


が 激 減 している 観 光 地 で 生 活 している 人 びと、 売 り 上 げが 激 減 している 商 店 街 の 商 店 主 たち、飢 餓 で 毎 日 多 くの 子 供 達 が 亡 くなっている 地 域 の 人 びと、 医 療 費 を 払 えなくて 適 切 な 治 療 をうけられない 人 びと、ごみの 不 法 投 棄 で 迷 惑 している 地 域 の 人 びと… 例 をあげればきりがないですね。これらの「 問 題 」たちが 政 策 科 学 の 調 査 研 究 のテーマになります。【 成 功 例 と 失 敗 例 】政 策 科 学 のこの 考 え 方 からすると、 私 たちはむしろ 失 敗 例 にも 注 目 する 必 要 があります。 失 敗 例 には 何 が 問 題 だったのかが、はっきり 映 し 出 されているからです。 成立 しなかった 法 案 、 倒 産 した 企 業 、 頓 挫 した 公 共 事 業 、 借 金 や 環 境 破 壊 だけを 残 した 開 発 事 業 …などです。しかし、 成 功 例 についても 同 じ 視 角 からアプローチできます。というのは、 多 くの 成 功 例 は、 何 かの 問 題 を 解 決 するための 試 行 錯 誤 の 積 み 重ねのすえに 達 成 されたものだからです。 成 功 例 は 偉 大 で 創 造 的 です。しかし、 政 策科 学 として 成 功 例 を 学 ぶ 場 合 、その 偉 大 さや 創 造 性 の 背 後 にどのような 問 題 群 があって、それらをどのように 克 服 したのかに 注 目 する 必 要 があります。 成 功 を 賞 讃 するだけでは 研 究 になりません。また、どのような 成 功 例 にも 限 界 があります。 捨 象された 問 題 、 先 送 りされた 問 題 が 必 ずあるはずです。そこを 明 らかにするのも 政 策科 学 の 学 びの 特 徴 です。1.3 テーマを 言 葉 で 表 現 してみる皆 さんは 基 礎 演 習 をはじめとした 授 業 科 目 での 学 習 を 通 じて、 今 日 の 社 会 で 何 が 政 策 的 な問 題 になっているのかについて、いろいろ 学 んできたはずです。おそらくは、そうして 学 んだ 問 題 の 中 から、どれか 一 つを 選 んでそれをテーマにするという 人 も 多 いのではないでしょうか。たとえば 市 町 村 合 併 にはいろいろ 問 題 があることを 学 んだ。 自 分 もその 問 題 を 調 べたいと 思 う… 次 に 何 をしなければならないでしょうか。「 研 究 入 門 フォーラム」は 自 主 的 な 調査 研 究 企 画 です。ですから、 自 分 たちが 実 際 に 調 べられる 素 材 を 選 び、 限 られた 時 間 の 中 で何 をどこまで 明 らかにできるのかをテーマとして 表 現 しなければなりません。あるグループは、 現 在 進 みつつある 具 体 的 な 市 町 村 合 併 の 事 例 を 詳 しく 調 べたいと 思 うかもしれません。その 場 合 は、どの 自 治 体 とどの 自 治 体 の 合 併 なのかをテーマの 中 に 明 示 することが 必 要 です。そして、その 具 体 的 な 事 例 で、 何 が 一 番 重 要 な 争 点 になっているのか。 合 併 のパターンにはいろいろありますし、 合 併 に 伴 って 何 が 問 題 になるのかも、 事 例 によってさまざまです。ですから、 合 併 で 何 が 問 題 になっているのかもテーマの 中 にきちんと 明 示 する 必 要 があります。そのテーマは、おそらくはそのまま「 報 告 書 」のタイトルになるはずです。テーマやタイトルとしては、 一 般 に 研 究 対 象 、 研 究 視 角 や 研 究 方 法 などが 具 体 的 に 明 示 されているものが 優 れているといってよいでしょう。「 廃 棄 物 処 理 問 題 」だけではだめです。「 廃 棄 物 処 理 の 歴 史 」となると 少 しはましです。「 日 本 における 廃 棄 物 処 理 の 歴 史 」というと、さらにましになります。「 江 戸 期 日 本 における 家 庭 廃 棄 物 の 処 理 方 法 についての 考 察 」とすると、 何 だか 研 究 論 文 らしくなってきます。タイトルやテーマは 具 体 的 であればあるほどよい、これを 一 つの 指 針 としてみてください。それでは、テーマとタイトルを 具 体 的 で 豊 かなものにするために、どのような 視 点 が 必 要なのでしょうか。 章 を 改 めて、これについて 示 唆 をしてみたいと 思 います。-2-


第 2 章 5 つの 研 究 領 域まず、「 研 究 入 門 フォーラム」の 学 習 単 位 である「 研 究 グループ」の 編 成 方 法 の 考 え 方 と理 念 を 簡 単 に 述 べましょう。テーマやタイトルを 具 体 化 する 作 業 は 意 外 にたいへんです。 例 年 、 強 い 興 味 や 関 心 はあるのだけれども、 具 体 化 ができないグループがいくつかみられました。たとえば、フランスが大 好 きで、フランスのことをもっと 知 りたい、そんな 数 人 が 集 まったとします。しかし、フランスといっても、 言 語 に 興 味 があるのか、 歴 史 に 興 味 があるのか(さらに、どの 時 期 の 歴史 に 興 味 があるのか)、 国 家 や 行 政 なのか、 移 民 政 策 なのか、フランスの 哲 学 や 思 想 なのか、音 楽 なのか------ 興 味 は 尽 きず、そしてテーマはしぼれず…そんな 状 況 に 陥 ってしまうグループがけっこうありました。その 結 果 、このグループの 研 究 テーマとして 提 示 されるのは、たとえば「フランス 研 究 」といった 大 テーマです(この 例 はあくまでもフィクションです)。そこで、まず 皆 さんに 以 下 にあげる「5 つの 領 域 」のなかからとりあえず1つの 研 究 領 域を 選 んでもらい、それから 自 分 の 研 究 の 素 材 やフィールドを 考 えてもらうという 手 順 をとりたいと 思 います。もちろん、 自 分 のやりたい 研 究 が 複 数 の 領 域 に 渡 る 場 合 もあるでしょうから、その 場 合 は 教 員 に 相 談 し、 年 明 けまでじっくりと 考 えて、 最 適 だと 思 われる 領 域 を 選 んでください。それでは、この「5 つの 領 域 」について 簡 単 に 概 要 を 述 べたいと 思 います。2.1 行 政 政 策統 治 を 行 ない、 政 策 を 行 なうことを 行 政 と 言 います。 今 日 の 社 会 では、 何 か 具 体 的 に 政 策を 実 現 しようとするとき、 行 政 が 政 策 実 現 の 場 としてもっとも 重 要 な 位 置 をしめています。政 策 を 立 案 するのも、 実 施 するのも、そして 実 施 した 政 策 を 評 価 して、 次 に 実 施 する 政 策 の方 向 性 を 決 めるのも、 行 政 という 場 を 抜 きにしては 考 えられません。 政 策 実 践 と 行 政 は 不 可分 の 関 係 にあると 言 えるでしょう。 行 政 はさまざまな 政 策 を 扱 います。 治 安 、 医 療 や 保 険 、介 護 、 教 育 、 開 発 、 雇 用 など、 行 政 に 焦 点 を 据 えることで、さまざまな 政 策 領 域 のすべてが見 渡 せるといっても 過 言 ではありません。行 政 には 特 徴 があります。 行 政 組 織 は、 同 じ 組 織 でも 民 間 の 営 利 企 業 とは 異 なった 側 面 をもっています。たとえば、 同 じサービスを 人 びとに 提 供 する 場 合 でも、 営 利 企 業 がそれをやる 場 合 と 行 政 がそれをやる 場 合 とでは 大 きな 違 いが 出 てきます。 営 利 企 業 は、 人 びとの 選 好にできるかぎり 応 答 しようとします。 営 利 企 業 は 競 争 的 な 環 境 の 中 におかれていますから、競 争 相 手 である 他 の 企 業 とのサービスの 差 異 化 ( 差 別 化 )をめざすでしょう。けれども、 行 政には 公 平 という 大 切 な 規 範 ( 理 念 )があります。 行 政 はできる 限 り 人 びとを 公 平 に 扱 わなければなりません。このような 行 政 のやり 方 を 観 察 し、 批 判 すること、そして 行 政 のやり 方 の 利 点 と 欠 点 を 見極 めた 上 で、 人 びとが 抱 える 問 題 を 解 決 する 方 向 性 を 考 えてみること、これが 行 政 政 策 領 域の 基 本 的 視 点 です。また、 今 日 の 行 政 の 前 提 になっているのは 民 主 政 治 です。 国 と 地 方 では制 度 が 違 いますが、それでも 有 権 者 の 投 票 によって 選 出 された 公 職 者 が 行 政 にたいして 大 きな 権 限 をもつことに 変 わりありません。ですから、 民 主 政 治 を 構 成 する 政 党 や 議 会 、 公 職 者を 選 出 するための 選 挙 過 程 や 有 権 者 の 政 治 意 識 や 政 治 文 化 なども、 行 政 政 策 領 域 の 重 要 な 学習 項 目 になります。 政 治 学 、 行 政 学 、 法 学 、 経 済 学 の 知 識 がこの 領 域 では 役 立 つでしょう。【テーマ 例 】・ 京 都 府 南 部 における 広 域 連 携 事 業 の 評 価・ 公 的 介 護 保 険 実 施 後 の 高 齢 者 福 祉 の 展 望・ 木 津 川 フィールドミュージアムの 課 題 と 可 能 性・ 沖 縄 、 丹 後 、 三 方 などの 国 内 調 査 企 画-3-


2.2 組 織 経 営行 政 組 織 は 特 殊 な 組 織 です。それは、 法 律 によって 設 置 されているものであり、できることできないことが 法 律 によって 決 まっています。しかし、 私 たちの 社 会 には、 行 政 組 織 とは異 なるたくさんの 組 織 があります。そしてそれらの 組 織 もまた、 私 たちの 社 会 生 活 や 経 済 生活 に 欠 かせない 役 割 を 担 っています。私 たちは 毎 日 、さまざまな 財 やサービスを 購 入 し 消 費 しながら 生 活 しています。そうした財 やサービスを 供 給 してくれるのは、 民 間 の 営 利 企 業 です。 営 利 企 業 もまた、その 組 織 のありようや 設 立 の 手 続 などについて 法 律 の 拘 束 を 受 けますが、その 設 立 はあくまでも 自 発 的 なものであり、 原 則 として 自 由 な 活 動 が 認 められています。 行 政 組 織 は 採 算 があわないからといって、 勝 手 にその 事 業 をやめるわけには 行 きません。しかし、 営 利 企 業 はどんどん 事 業 内容 を 変 化 させることで 競 争 的 環 境 に 適 応 していかなければなりません。私 たちの 生 活 を 支 えているのは、 営 利 企 業 だけではありません。 広 く 非 営 利 組 織 と 言 われるものもまた、 私 たちにさまざまな 財 やサービスを 供 給 しています。 近 年 、 政 府 ( 行 政 ) 組 織でもなく、 営 利 企 業 でもない、こうした 非 営 利 組 織 が、グローバルにもローカルにも 活 躍 し、政 府 や 営 利 企 業 の 活 動 領 域 の 空 白 を 埋 める 役 割 を 果 たしていることは 皆 さんもご 存 知 の 通りです。組 織 の 種 類 が 変 われば、その 組 織 が 抱 える 問 題 も 異 なってきます。 営 利 企 業 には 営 利 企 業の 問 題 がある。 競 争 的 な 環 境 を 勝 ち 抜 いていくためには、 鋭 いコスト 感 覚 をもっていなければなりません。 消 費 者 や 顧 客 のニーズ( 選 好 )に 機 敏 に 応 答 できる 組 織 運 営 が 必 要 ですし、その 技 術 水 準 はつねに 刷 新 される 必 要 があります。 営 利 企 業 はそのような 活 力 を 維 持 し、 高 いパフォーマンスを 示 してこそ、 社 会 的 に 貢 献 できるのです。 一 方 、 非 営 利 組 織 にも 固 有 の 問題 があります。ここでも、やはり 組 織 運 営 の 効 率 性 ということが 求 められます。 多 くの 非 営利 組 織 は、 限 られた 資 源 を 効 果 的 に 活 用 することで 社 会 的 な 貢 献 を 遂 行 します。その 点 では、営 利 企 業 と 同 じくらい、シビアな 効 率 性 の 感 覚 が 求 められます。組 織 がそれぞれにもっている 可 能 性 と 制 約 を 見 極 めながら、 私 たちの 社 会 の 問 題 解 決 にどうそれらを 活 用 できるのか。これが 組 織 経 営 領 域 の 基 本 的 な 視 角 です。 経 済 学 、 経 営 学 をはじめ 法 学 、 会 計 学 などの 知 識 がこの 領 域 では 役 立 ちます。【テーマ 例 】・ 営 利 企 業 あるいは 非 営 利 企 業 の 社 会 的 責 任 (CSR)とは 何 か・ 日 米 におけるインターネットビジネスの 比 較 研 究・ 京 都 丹 後 織 物 業 界 の 現 状 と 今 後 の 経 営 戦 略 について・ 企 業 の 環 境 管 理 とエコビジネスの 現 状2.3 国 際 政 策政 策 科 学 の 研 究 テーマは、 国 内 的 な 課 題 だけとは 限 りません。 国 境 を 超 えた 地 球 的 課 題 群や、 日 本 の 外 交 政 策 に 関 する 問 題 、または 国 内 的 な 政 策 課 題 の 国 際 比 較 などは 興 味 ある 研 究対 象 です。 今 日 のグローバル 化 時 代 では、むしろこうした 分 野 の 知 見 が、 国 や 企 業 のリーダーとなる 人 に 必 要 だと 考 えられています。 実 際 、これまでも 皆 さんの 先 輩 たちで、 特 定 プロジェクトとしてタイや 韓 国 などにフィールドワークを 実 施 し 成 果 をあげたグループがあります。また、 特 定 プロジェクト 以 外 でも、 多 くのグループが 国 際 政 策 分 野 で 研 究 してきた 実績 もあります。 過 年 度 の 研 究 入 門 フォーラムの 論 文 集 を 参 考 にしたり、メディアによる 報 道からヒントを 得 るなどしてテーマを 考 えてみてください。国 際 政 策 分 野 における 具 体 的 な 研 究 テーマは 多 岐 にわたります。たとえば、 次 のような 事項 が 対 象 になります。 国 際 経 済 ・ 貿 易 の 問 題 、 途 上 国 における 開 発 や 都 市 計 画 、 教 育 ・ 子 供の 問 題 、 海 外 の 災 害 支 援 などより 広 い 意 味 で「 人 間 の 安 全 保 障 」にかかわる 問 題 、 国 際 紛 争や 地 域 紛 争 の 平 和 的 解 決 や 平 和 構 築 の 課 題 、 多 文 化 主 義 などです。また、 産 業 ・ 雇 用 政 策 、移 民 政 策 、 地 域 政 策 、 環 境 政 策 などを 国 際 的 に 比 べてみることも 日 本 社 会 をよりよく 知 ることになる 面 白 いテーマでしょう。 日 本 と 諸 外 国 との 関 係 についての 研 究 も 大 切 です。もちろん、これらのテーマは 限 定 的 なものではないので、 学 生 の 皆 さんは 国 際 政 策 分 野 の 魅 力 ある-4-


テーマを 自 ら 設 定 するよう 工 夫 してみてください。ただし、 時 事 問 題 に 一 過 性 の 興 味 がわいても、その 背 景 にある 歴 史 、 国 際 政 治 の 現 実 や、 市 場 経 済 の 仕 組 みなど、きちんと 学 習 しなければならない 事 項 が 多 々あることは 忘 れないでください。研 究 の 対 象 となる 課 題 は 何 かということとは 別 に、 研 究 の 手 法 もさまざまです。 特 定 の 国や 地 域 に 特 化 した 研 究 、また 国 際 協 力 などを 専 門 とする 国 際 機 関 や NGO の 活 動 についての 研究 、また 日 本 の 外 務 省 による ODA や、JICA による 開 発 支 援 ・ 平 和 構 築 の 具 体 的 なプロジェクトの 研 究 など、いろいろ 考 えられます。 研 究 の 手 段 についても、 主 に 文 献 やホームページなどで 得 られる 資 料 によって 研 究 するのか、 実 際 にどこかを 訪 問 するフィールドワークを 取り 入 れるのかといったことも、 研 究 計 画 を 立 てる 上 で 少 し 考 えておいた 方 がよいでしょう。海 外 のことを 調 べるためには、 日 本 語 文 献 だけでなく、 外 国 の 政 府 や 国 際 機 関 などの 資 料 やホームページの 英 語 による 情 報 を 利 用 することも 大 切 です。こうしたホームページは、 比 較的 平 明 な 文 章 で 書 かれていますので、ぜひチャレンジしてみてください。 研 究 入 門 フォーラムを 通 して、 国 境 を 越 えた 政 策 思 考 のできる 人 になってください。【テーマ 例 】・ タイにおける 開 発 支 援 と 都 市 計 画・ EU における 地 域 構 造 政 策 と 域 内 格 差 の 是 正・ 国 連 HABITAT によるイラク 復 興 支 援・ 途 上 国 の 教 育 問 題 -インドネシアを 例 に・ オーストラリアの 多 文 化 主 義 政 策2.4 環 境 都 市環 境 問 題 には、 大 気 汚 染 、 水 質 汚 染 や、 最 近 よく 報 道 される 地 球 温 暖 化 、アスベスト 公 害など 汚 染 物 質 排 出 が 引 き 起 こすもののほか、 広 義 には、 景 観 破 壊 、 生 態 系 の 破 壊 、 騒 音 など、我 々の 都 市 生 活 空 間 を 取 り 巻 く 環 境 の 破 壊 も 含 まれます。これまでの 私 たちの 経 済 活 動 は、 基 本 的 には 環 境 はタダであるという 認 識 の 下 で 行 なわれてきました。その 結 果 、 営 利 追 求 の 原 理 で 行 動 する 主 体 がほとんど 占 める 現 代 社 会 では、 金銭 価 値 を 有 するものばかりが 重 視 され、 環 境 が 犠 牲 にされてきました。このような 認 識 は、環 境 意 識 の 高 まりによって、とくに 先 進 国 においては 改 善 されつつありますが、それでもなお 改 善 の 見 通 しのたっていない 環 境 問 題 がたくさんありますし、 今 後 被 害 の 拡 大 が 予 想 されている 環 境 問 題 が 多 くあります。 困 ったことに、ある 環 境 破 壊 物 質 を 排 出 することによって、どの 程 度 の 被 害 がいつごろ 現 われるのかといったことが 十 分 に 解 明 されていない 環 境 問 題もあります。このような 問 題 は、 民 間 部 門 が 対 策 を 行 なう 動 機 づけに 乏 しく、 公 的 部 門 による 民 間 部 門 への 何 らかの 介 入 が 求 められる 典 型 的 な 政 策 課 題 と 言 えます。環 境 都 市 領 域 での 研 究 には、 大 別 して 二 つのアプローチが 考 えられます。 一 つ 目 のアプローチは 課 題 の 重 点 を「 環 境 」に 置 くもので、 現 在 生 じている 環 境 問 題 の 実 態 をよく 把 握 し、その 問 題 を 解 決 するための 政 策 について 考 察 を 行 なうものであり、この 場 合 の 政 策 とは 必 ずしも 都 市 政 策 に 限 りません。もう 一 つは「 都 市 」に 重 点 を 置 くもので、この 場 合 は、 環 境 保全 の 観 点 からどのような 都 市 開 発 やコミュニティー 形 成 を 行 なうべきかといったことを 検討 することになるでしょう。いずれのアプローチを 採 るにせよ、 実 際 に 環 境 問 題 の 現 場 に 出 向 き、 問 題 を 肌 で 感 じ、そこで 活 動 しているさまざまな 立 場 にいる 人 びとの 意 見 を 聴 取 し、 実 行 可 能 で 実 効 性 の 高 い 方策 を 検 討 することが 必 要 です。そこで、 都 市 環 境 領 域 では、 特 定 の 地 域 を 選 び、これを 対 象として 重 点 的 に 調 査 を 行 なうフィールドワークの 方 法 がとくに 推 奨 されます。 環 境 問 題 がグローバルな 拡 がりをもつ 場 合 は、 地 球 規 模 のフィールドワークを 行 なうわけにはいきませんが、しかし、 地 球 環 境 問 題 の 原 因 をたどっていけば、 都 市 部 での 資 源 ・エネルギーの 大 量 消費 といった 地 域 問 題 として 学 ぶことが 可 能 です。環 境 問 題 は、 社 会 科 学 と 自 然 科 学 が 密 接 に 関 係 しあう 学 際 的 な 領 域 で、 研 究 の 手 法 も 多 岐にわたります。 最 近 では、 大 気 中 の 汚 染 物 質 濃 度 の 観 測 値 など、 環 境 問 題 を 分 析 する 上 で 有用 なデータがインターネット 等 を 通 して 数 多 く 公 開 されています。このようなデータを 分 析-5-


することも、 具 体 的 な 政 策 オプションの 開 発 や 検 討 に 役 立 つかもしれません。【テーマ 例 】・ 生 活 環 境 に 配 慮 した 京 都 市 の 都 市 整 備 に 関 する 提 言・ 神 戸 震 災 復 興 における 住 民 活 動 ------ 住 民 参 加 の 可 能 性 と 限 界・ 温 室 効 果 ガス 排 出 権 取 引 市 場 の 形 成 ・ 活 用 方 策 ------ 欧 米 の 事 例 を 参 考 にして・ 中 山 間 地 域 における 自 然 環 境 保 全 と 地 域 活 性 化 の 両 立 策 の 検 討 ------ 滋 賀 県 高 島 市を 事 例 として2.5 情 報 文 化情 報 には 二 つの 意 味 があります。「 文 化 としての 情 報 」と「 技 術 としての 情 報 」です。 前者 に 関 していえば、 街 で 普 通 に 見 かける 道 路 標 識 や 信 号 、 広 告 ポスター、メディアによって伝 達 される 様 々な 記 号 やコンテンツ( 報 道 、 芸 術 、 娯 楽 など)などの 情 報 ( 広 い 意 味 での 情 報 )があげられ、これらは 私 たちの 社 会 を 充 填 する 文 化 的 なものの 一 切 を 含 むこととなります。文 化 は 情 報 化 されて 私 たちに 伝 えられ、 私 たちは 文 化 を 情 報 化 することで 伝 えることになります(コミュニケーション 過 程 としての 文 化 )。そして、 情 報 は 私 たちの 生 活 スタイル、 価 値観 、 行 動 に 大 きな 影 響 を 及 ぼし、これらは 意 識 面 での 政 策 にもつながります。さて、 情 報 にはもう 一 つの 意 味 があります。 情 報 技 術 (IT)などという 場 合 の「 技 術 としての 情 報 」です。 目 まぐるしく 変 化 する 今 日 の 社 会 は、しばしば 高 度 情 報 化 社 会 などと 言 われます。 情 報 技 術 はどんどん 高 度 化 し、 情 報 伝 達 が 高 速 化 しています。インターネットが 普 及し、 計 算 機 が「パソコン」として 日 常 生 活 に 入 り 込 み、 人 びとは 電 子 メールを 使 って 伝 達 し合 い、Web サイトで 買 い 物 をします。 情 報 技 術 の 高 度 化 と 普 及 は 私 たちの 生 活 をどんどん 便利 にしてくれますが、その 一 方 で、これから 私 たちが 取 り 組 まなければならない 問 題 もたくさんあります。 情 報 化 時 代 になって、 個 人 情 報 保 護 の 必 要 性 がいっそう 高 まるだけでなく、個 人 情 報 保 護 法 の 施 行 は 新 しい 問 題 を 生 み 出 しました。また、「フィッシング 詐 欺 」をはじめとしたハイテク 犯 罪 への 対 応 が 必 要 になっています。 自 由 な 情 報 発 信 が 可 能 になる 一 方 で、情 報 の 信 頼 性 や 価 値 を 確 保 する 方 法 や 技 術 の 開 発 が 急 務 の 課 題 になっています。そのような方 法 や 技 術 がなければ、せっかくの 情 報 技 術 を 組 織 の 意 思 決 定 に 役 立 てることはできないでしょう。「 文 化 としての 情 報 」と「 技 術 としての 情 報 」が 出 会 って 生 じるもっと 大 きな 問 題 もあります。 技 術 の 普 及 によって 社 会 や 人 間 や 生 活 がどう 変 化 し、 新 たにどのような 変 化 をもたらすのか、という 課 題 です。「 技 術 としての 情 報 」は「 文 化 としての 情 報 」にどのようなインパクトを 与 えるのでしょうか。情 報 文 化 領 域 は、このような 現 代 社 会 の 変 化 を 見 据 えた 上 で、 私 たちの 文 化 行 動 や 価 値 観に 関 わる 問 題 群 を 研 究 したり、 技 術 としての 情 報 が 生 み 出 す 利 便 性 と 問 題 を 考 究 したりするカテゴリーです。たとえば、 諸 外 国 の 歴 史 教 育 では、どのような 教 育 方 法 が 採 用 され、どのような 教 材 が 使 われているのか、というような 教 育 政 策 的 なテーマでもかまいません。 教 育は 文 化 を 伝 達 し、 学 校 で 学 ぶ 子 供 にとって 教 材 は 判 断 力 や 行 動 規 範 を 培 うための( 広 い 意 味での) 情 報 だからです。本 領 域 におけるトピックとしては、 教 育 、 娯 楽 、 芸 術 、 広 告 など 文 化 的 な 媒 体 とそれによって 伝 えられるものが 対 象 となります。 博 物 館 などの 行 政 による 文 化 施 策 についても、 情 報領 域 の 問 題 として 設 定 することができるでしょう。また、 行 政 政 策 との 境 界 領 域 であるが、住 基 ネットにまつわる 諸 問 題 も、 技 術 としての 情 報 が 生 み 出 す 問 題 として 定 義 することができます。トピックが 情 報 文 化 に 直 接 関 わらなくても、アプローチを 情 報 文 化 にすることも 可能 です。 例 えば、 途 上 国 における 格 差 問 題 を 情 報 技 術 の 普 及 度 から 調 べたり、 都 道 府 県 別 の少 子 化 の 現 状 を 家 族 観 や 地 域 文 化 の 視 点 から 考 察 したりすることもできるでしょう。【テーマ 例 】・ アートマネジメントとベンチャービジネス・ 福 祉 ・ 医 療 現 場 におけるコミュニケーションのあり 方 についての 考 察・ 情 報 化 による 社 会 的 インパクトの 測 定 方 法 についての 研 究-6-


・ コンピュータの 文 化 的 な 利 用 の 可 能 性 についての 考 察・ 学 校 教 育 とジェンダー・ 芸 術 の 力 を 活 かした 京 都 の 活 性 化 についての 提 言政 策 問 題 はつねに 総 合 的 な 性 格 をもっています。また、 一 つの 政 策 争 点 は 別 の 政 策 争 点 とつながっていることがほとんどです。そうした 政 策 問 題 を 扱 うのですから、 上 に 述 べた 5領 域 のどれかを 選 べと 言 われると 戸 惑 うかもしれません。まして、 好 奇 心 や 知 的 探 求 心 が 旺盛 な 皆 さんのことですから、やりたいこと、 知 りたいこと、 調 査 したいことは 多 岐 にわたっていることと 思 います。しかし、 皆 さんの 調 査 や 研 究 は、「 研 究 入 門 フォーラム」で 完 結 するわけではありません。3 回 生 になると「 専 門 演 習 I」が、4 回 生 ではそれを 発 展 させてまとめる「 専 門 演 習 II」「 卒 業 研 究 」があります。この 一 年 間 は、これらを 含 めた 4 年 間 の 学習 成 果 をまとめる 通 過 点 であると 考 えましょう。あれもこれも 欲 しがっているうちに、どれも 手 に 入 れられなかったという 経 験 はありませんか。 研 究 も 同 じです。 限 られた 時 間 と 労 力をつかって 実 りある 成 果 を 出 すためには、 選 択 することが 必 要 です。 選 択 するということは、どれか 一 つを 選 んで、 他 のものを( 暫 定 的 にですが) 捨 てることを 意 味 します。これには 勇 気が 必 要 かもしれません。しかし、よい 選 択 がよい 結 果 を 生 むということを 忘 れずに。 次 の 章では、 限 られた 時 間 と 労 力 を 前 提 に 研 究 計 画 を 組 み 立 てることについて、 簡 単 なアドバイスをしたいと 思 います。-7-


第 3 章 研 究 計 画 をたてよう一 般 に、 研 究 テーマが 決 まったら、 今 度 は 研 究 計 画 をたてる、そんな 風 に 考 えられがちです。これは 正 しくもあり、 間 違 ってもいます。旅 行 の 例 をつかって 説 明 しましょう。この 場 合 、 旅 行 の 行 き 先 はテーマにあたります。 皆さんは 旅 行 の 行 き 先 を 決 めるときに、すでにいくつかの 条 件 を 前 提 にあれこれ 考 えると 思 います。たとえば、お 好 み 焼 きが 食 べたいとします。その 人 にあまり 時 間 の 余 裕 がなければ、 遠 くまでは 行 けませんから、 多 分 、お 好 み 焼 きが 名 物 だと 言 われている 大 阪 あたりの 適 当 な 店 まで 日 帰 りで 出 かけるかもしれません( 京 都 から 大 阪 へでかけるのを「 旅 行 」と 呼 ぶのはさみしい 気 がしますが)。けれども、その 人 に 二 日 か 三 日 の 時 間 的 余 裕 があったとしたらどうでしょう。 私 なら 断 然 、 広 島 焼 きを 奨 めます。ちょっと 遠 いですが 時 間 的 余 裕 があります。ついでに 今 の 季 節 なら 宮 島 まで 足 を 伸 ばして 牡 蠣 料 理 なども 視 野 に 入 れられます。おみやげは紅 葉 まんじゅうで 決 まりでしょう( 笑 )。このように、 行 き 先 (テーマ)の 決 定 には、 時 間 的 な 制 約 条 件 がすでに 影 響 しています。 時間 があってもお 金 がなければ 広 島 まで 行 けません。お 好 み 焼 きが 食 べたいという 目 的 がなければ、 広 島 が 候 補 になる 可 能 性 は 小 さくなるかもしれません。 時 間 的 制 約 だけではなく、お金 や 目 的 といった 他 の 条 件 も 行 き 先 (テーマ) 決 定 にとって 重 要 な 前 提 になります。 計 画 づくりには、 総 合 的 な 視 点 が 必 要 です。ですので、テーマを 決 めるときには、 実 は 計 画 もまたできつつあると 考 えた 方 がよさそうです。では、「 研 究 入 門 フォーラム」の 受 講 する 準 備 を 始 める 皆 さんが、テーマの 設 定 にさいして、もっとも 重 視 しなければならない 条 件 とは 何 でしょうか。3.1 時 間 の 制 約何 といっても、 時 間 の 制 約 があります。「 研 究 入 門 フォーラム」は 自 主 的 な 調 査 企 画 です。ですから、 研 究 グループができて、 研 究 計 画 の 見 通 しがついたら、 各 自 がもっている 時 間 をフルにつかって 調 査 し 研 究 してもらいます。あとでまた 触 れることになりますが、 週 1 回 の授 業 は、そうした 日 常 的 な 活 動 を 教 員 や TA に 報 告 し、その 間 の 活 動 で 遭 遇 した 問 題 点 について 助 言 を 得 る 時 間 と 考 えて 下 さい。 週 1 度 の 90 分 の 授 業 時 間 だけでは、 自 主 的 な 調 査 企画 は 全 うできないでしょう。これが 他 の 授 業 科 目 との 違 いです。「 研 究 入 門 フォーラム」で大 事 なことは、 授 業 時 間 以 外 の 時 間 をどう 使 うかだといっても 過 言 ではありません。しかし、そうはいっても、4 月 に 始 まり 翌 年 の 1 月 には 研 究 成 果 報 告 書 を 提 出 しなければなりません。 報 告 書 を 執 筆 する 時 間 も 必 要 ですから、 実 質 的 に 調 査 と 研 究 の 活 動 は 12 月 にはだいたい 終 了 ということになるでしょう。 夏 休 みを 入 れても、8 ヶ 月 強 しかありません。長 いようで 短 いのです。8 ヶ 月 で 何 ができるのか。これが 研 究 計 画 をたてるさいの 最 初 の 前 提 です。そしてこれが、研 究 と 調 査 のテーマ・タイトルを 制 約 します。たとえば、 何 年 もの 観 察 が 必 要 な 研 究 は 無 理です(もちろん、 他 の 研 究 者 が 実 施 した 観 察 結 果 を 活 用 して、 一 定 の 期 間 観 察 してみることはできるでしょう)。フィールドワークをするにも、 現 地 に 長 期 滞 在 しなければならないような 調 査 は 無 理 です。 皆 さんは、「 研 究 入 門 フォーラム」 以 外 にも 授 業 がありますから、 現地 へ 出 かける 頻 度 にも 制 約 があります。文 献 や 資 料 の 調 査 でも 同 様 のことが 言 えます。 皆 さんは 集 中 して 一 日 にどのくらいの 読 書ができますか。それを 考 えると、たとえばあまりにも 膨 大 な 文 献 と 資 料 の 読 破 が 前 提 になるようなテーマは 無 謀 です。たとえば、「 戦 争 の 歴 史 」なんていうテーマは、 読 破 しなければならない 文 献 と 資 料 を 想 像 しただけでめまいがします。「20 世 紀 の 戦 争 の 歴 史 」と 限 定 したところで 事 態 はあまり 変 わりません。「20 世 紀 東 アジアの 地 域 紛 争 」でもまだたいへん。さらに 絞 って、テーマをコンパクトにしないと 研 究 の 遂 行 途 上 で 萎 えてしまうこと 必 至 です。-8-


ある 意 味 で、 研 究 は 時 間 との 闘 いですから、そのことを 勘 案 してテーマを 決 めなくてはいけません。3.2 お 金 と 労 力時 間 だけでなく 労 力 にも 限 界 があります。そして、 研 究 にはお 金 もかかります。 資 料 を 集めるだけでも、 交 通 費 がかかり、 複 写 費 用 も 必 要 です。あちこち 図 書 館 を 回 って、 身 体 的 にへとへとになったりします。研 究 によって 何 かを 明 らかにしたいとき、 自 分 たちがたてた 仮 説 を 検 証 したいとき、データが 必 要 になります。データはすでにあるものを 利 用 するか、 自 分 でデータをつくるかのいずれかになります。 適 当 なデータがないとき、 自 分 でデータをつくるわけですが、 具 体 的 には 観 察 したり 観 測 したり 実 験 したり、あるいは、アンケートをとったりというのが、それにあたります。観 察 や 観 測 には 機 器 が 必 要 になることがあります。それらが 準 備 できるのかどうか(これは 担 当 教 員 に 相 談 するといいでしょう)。 実 験 にも 器 具 や 材 料 が 必 要 です(これも 担 当 教 員 に相 談 してみましょう)。アンケートをとる 場 合 は、とくに 機 器 、 器 具 、 材 料 が 必 要 ないように 思 われますが、これにもけっこうお 金 がかかります。アンケートをとるために 必 要 な 技 法を 身 に 付 けて、 質 問 項 目 も 入 念 に 設 計 できたとしても、 質 問 票 を 印 刷 したり、サンプリングのしかたによっては 質 問 票 を 郵 送 しなければならなかったりしますし、 社 会 的 儀 礼 として 協力 してくれた 人 びとに 小 さなお 礼 をしなければならないこともあります(こういう 社 会 的 儀礼 を 学 ぶことも「 研 究 入 門 フォーラム」の 趣 旨 の 一 つです)。こう 考 えると、 安 直 にそのへんの 道 行 く 人 に 適 当 にアンケートしよっか、みたいなことになりがちですが、そうしてつくられたデータは 学 問 的 にあまり 価 値 や 意 味 がない 場 合 が 多 いです。 気 を 付 けましょう。フィールドワークにもお 金 がかかります。 何 といっても 現 地 まで 行 かなければなりません。現 地 で 断 食 するわけにはいかないでしょうし、どこか 泊 まるところも 必 要 です。 研 究 はお 金との 闘 いでもあります(ちなみに、お 金 さえあれば 労 力 は 買 うことができます)。ちょっとお 金 の 話 で 興 醒 めだったかもしれません。 次 はもっと 研 究 らしい 話 をしましょう。3.3 過 去 の 研 究 成 果 を 洗 い 出 す前 人 未 到 という 言 葉 があります。 一 般 に 研 究 には 前 人 未 到 などありえないと 思 って 下 さい。どんなにオリジナルな 研 究 でも、すでにつみあげられたものが 前 提 になっています。つみあげられたものの 延 長 線 上 にあるか、あるいはつみあげられたものへの 反 発 から 新 しい 峰 を 築きあげたものか、どちらかです。 研 究 の 多 くは 前 者 です。 後 者 は 学 問 研 究 や 科 学 研 究 でごくまれに 起 きることがあるにすぎません( 科 学 史 の 世 界 ではこれを「パラダイム 変 換 」と 言 います 1 )。どちらにせよ、これまでにつみあげられてきたものがどのようなものなのかをきちんと 把握 することが 研 究 の 第 一 歩 です。 研 究 することは 登 山 に 似 ています。 山 に 登 ることは、これまでの 研 究 成 果 をたしかめながら、どこまで 研 究 が 進 んでいるのか、 研 究 の 結 果 明 らかになっていることと、まだ 分 からないことを 確 かめることを 意 味 します。研 究 という 山 の 高 さをはかり、 山 の 形 状 をたしかめることを、 一 般 に 先 行 研 究 のレビューと 言 います。 同 じ 領 域 の 似 たようなテーマについて、これまで 誰 がどんな 研 究 をして、 何 を明 らかにしてきたのかを 把 握 することです。では、どのような 研 究 の 成 果 をレビューすればよいのでしょうか。 簡 単 な 方 法 があります。 自 分 たちの 研 究 テーマを 分 解 してみるといいでしょう。1ただし、 自 分 はパラダイム 変 換 をしたとか、パラダイムが 変 わったのだとか 言 い 張 る 人 はたくさんいます。その 多 くは 言 い 張 っているだけなので 信 じてはいけません。「パラダイム 変 換 」について 興 味 のある人 は、トマス・クーン『 科 学 革 命 の 構 造 』(みすず 書 房 )を 読 んでみましょう。-9-


「 丹 後 地 域 における 市 町 村 合 併 の 政 治 過 程 についての 考 察 」------こんなテーマがあったとします。まず、「 丹 後 地 域 」です。トピックは 行 政 改 革 ですから、この 地 域 の 政 治 や 行 政を 扱 ったものを 探 します。 次 に「 市 町 村 合 併 」です。 行 政 改 革 の 手 法 の 一 つですが、「 市 町村 合 併 」の 研 究 や 歴 史 ( 日 本 のものでいいでしょう)を 扱 った 研 究 書 ・ 研 究 論 文 がたくさんあるはずです。そういう 研 究 書 ・ 研 究 論 文 の 中 で、 丹 後 地 域 の 最 近 の 動 向 を 扱 ったものがみつかったらどうでしょう。 喜 んではいけません。 落 胆 しましょう。すでに 自 分 たちがやりたいと 思 っていたことをやっている 研 究 者 がいたわけですから(「やられた」と 叫 びましょう)。で、その 研 究 を 一 生 懸 命 読 みましょう。どこかに 穴 がないかどうか、 不 正 確 な 記 述 や 分 析 がないかどうか、 主 張 が 明 晰 かどうか。 穴 があればラッキーです。その 穴 を 埋 めればよいからです。 最 後 に「 政 治 過 程 」という 言 葉 があります。これは 分 析 視 角 として 政 治 過 程 論 の 理 論モデルを 使 うということでしょう。 一 生 懸 命 、 政 治 過 程 論 の 勉 強 をしなければなりません。世 の 中 の 出 来 事 のすべてを 政 治 過 程 論 で 説 明 するくらいの 気 迫 が 必 要 です。ここで 例 示 した「 丹 後 地 域 の…」のグループはフィールドワークをするのかもしれません。しかし、 注 意 して 欲 しいのは、 現 地 へ 行 く 前 にきちんと 先 行 研 究 レビューを 中 心 としたお 勉強 が 必 要 だということです。お 勉 強 が 先 なのか、 現 地 へ 行 くことが 先 なのか。これは 難 しいところです。 現 地 へ 行 って、 直 に 体 験 することでだんだん 問 題 が 明 快 になってくることがあるからです。しかし、 現 地 へ 行 ってばかりで、8 ヶ 月 の 間 にぜんぜん 本 も 論 文 も 読 まずに 終わったというのでは 困 ります。 多 分 、その 結 果 出 てくる 報 告 書 はできの 悪 い 紀 行 文 みたいなものでしかないでしょう。研 究 計 画 書 (プロポーザル)に 必 ずこれまでの 研 究 の 到 達 点 が 何 であるかを 書 かなければならないのは、 研 究 という 営 みがつみあげであることによるのです。3.4 研 究 の 意 義 と 目 的研 究 計 画 書 (プロポーザル)には 研 究 の 意 義 や 目 的 を 書 く 箇 所 があります。 何 のためにそれを 研 究 するのか。それを 研 究 することにどのような 意 義 があるのか。この 問 いに 答 えねばなりません。しかし、これをあまりにも 哲 学 的 ・ 根 源 的 に 考 えてはいけません。 何 事 も 哲 学 的に 考 えると 出 口 がみつからなくなります。 出 口 をみつけたくないときだけ 哲 学 的 に 考 えればよいのです。「そこに 山 があるから 登 るのだ」------ロマンチックでよい 回 答 だとは 思 いますが、 研 究 計 画 書 では 役 にたちません。哲 学 的 な 袋 小 路 を 回 避 するためにはどうすればよいのか。 二 つくらい 方 法 があるように 思います。第 一 は、 上 にのべた 先 行 研 究 の 洗 い 出 しをしっかりやることです。これまで、その 領 域 でどう 研 究 が 進 んできたのか。 何 が 明 らかになっていて、 何 が 明 らかになっていないのか。このあたりの 勉 強 をしっかりすると、 自 ずとその 領 域 の 研 究 で 何 がやり 残 されているのかが 分かってきます。 研 究 の 意 義 や 目 的 をコンパクトに 考 えると、・ まったく、あるいはほとんど 知 られていないことを 調 べて 教 えてあげる・ それまで 間 違 って 理 解 されてきたことの 間 違 いを 指 摘 して、できれば 間 違 っていない理 解 はこうだと 教 えてあげる先 行 研 究 のレビューは、これから 研 究 しようとする 自 分 (たち)が 今 どのあたりにいるのかを 確 かめ、どちらへ 進 むべきなのかを 確 定 する 作 業 です。だから、 先 行 研 究 のレビューには、もともと 目 的 を 定 めるという 要 素 が 含 まれているのです。 図 書 館 へ 行 って、 文 献 検 索 をして、関 係 する 文 献 と 資 料 のリストをつくりましょう。これが 研 究 の 第 一 歩 です。第 二 は、やや 情 緒 的 な 方 法 です。 政 策 科 学 は 問 題 解 決 の 実 践 を 指 向 するので、こういうやり 方 も 許 されるかもしれません。 社 会 問 題 とは、 困 っている 人 びと、 苦 しんでいる 人 びと、不 安 に 苛 まれている 人 びとが 現 に 存 在 する 事 態 のことだと、この 冊 子 の 最 初 の 方 で 指 摘 しました。この 困 っている 人 びとの 心 情 に 共 感 することで、 研 究 の 意 義 と 目 的 を 構 成 してしまう方 法 です。 貧 困 や 飢 餓 は、 問 題 として 実 在 し、 多 くの 人 びとが 心 を 痛 めています。そして、貧 困 や 飢 餓 を 解 消 するために 多 くの 人 びとが 努 力 しています。 募 金 や 署 名 など、できる 範 囲で 協 力 している 人 も 皆 さんの 中 にはいるでしょう。 政 策 科 学 はそういう 熱 意 を 大 事 にします。-10-


なぜなら、 熱 意 がなければ 問 題 解 決 の 実 践 など 不 可 能 だからです。 実 は、これは 研 究 の 意 義や 目 的 というよりは、 研 究 の 動 機 というべきものです。「ストリートチルドレン」の 存 在 は 皆 さんもご 存 知 でしょう。「ストリートチルドレンの現 状 」を 何 とかするというだけでは、 単 なる 動 機 です。けれども、 何 とかする 際 の 着 眼 点 として、たとえば「 教 育 環 境 の 整 備 と 保 障 のための 諸 施 策 」という 補 助 線 を 書 き 込 んでみます( 解 決 手 段 の 特 定 )。「 教 育 環 境 の 整 備 と 保 障 の 諸 施 策 からみたストリートチルドレンの 救済 」などとやると、 研 究 らしくなります。ポイントは、 手 段 的 な 要 素 の 追 加 です。 目 的 だけをただ 主 張 するだけでは、 研 究 にはなりません。 目 的 を 実 現 するための 手 段 をセットで 提 示することが 必 要 です。 上 の 例 でいえば、ストリートチルドレンの 救 済 (あるいは 集 団 としてのストリートチルドレンの解 消 )のために 教 育 環 境 を 整 備 し、 教 育 サービスを 享 受 できるような 保 障 施 策の 有 効 性 を 検 討 することが、 本 研 究 の 目 的 である。 施 策 の 有 効 性 の 検 証 方 法については…( 以 下 省 略 )…こうなると、 研 究 の 意 義 と 目 的 が 書 かれたことになります。 実 は、これは 表 面 的 な 書 き 方のテクニックを 単 に 指 南 したのではありません。 目 的 と 手 段 の 関 係 は 因 果 律 の 実 践 的 応 用 形態 です。これは 認 識 論 の 問 題 ですが、ここでは 省 きます。 詳 しく 知 りたければ、 知 っていそうな 先 生 をつかまえて 質 問 してみてください。研 究 計 画 についての 簡 単 なまとめをここでしておきます。 皆 さんは、これ 以 後 、 基 礎 演 習の 課 題 としてこうした 研 究 計 画 書 (プロポーザル)を 書 く 練 習 をすることになります。 第 1章 で 述 べたテーマ( 研 究 のタイトル)を 決 めるさいの 注 意 事 項 と 合 わせて、 以 下 の 点 に 留 意 しながら「 研 究 入 門 フォーラム」で 学 ぶ 一 年 間 を 計 画 してみてください。・ 実 行 可 能 性 への 配 慮 (1)------ 時 間 の 制 約 への 配 慮・ 実 行 可 能 性 への 配 慮 (2)------お 金 ( 労 力 )の 制 約 への 配 慮・ 先 行 研 究 の 洗 い 出 し・ 研 究 の 目 的 と 意 義 の 明 確 化-11-


第 4 章 アクティブに 学 ぶこの 冊 子 の 冒 頭 で、「 研 究 入 門 フォーラム」の 特 徴 は 自 主 的 な 調 査 ・ 研 究 企 画 だというところにあると 述 べました。 自 主 的 に 学 ぶということは、 言 い 替 えれば、アクティブ( 能 動 的 )に 学 ぶということです。 担 当 教 員 も TA もテーマやタイトルを 教 えてくれはしません。また、研 究 計 画 も 自 分 たちで 決 めなくてはなりません。この 授 業 科 目 では、 担 当 教 員 や TA は 学 びの 助 言 者 だと 考 えて 下 さい。 手 取 り 足 取 りの 指 導 を 期 待 してはいけません。こうした 学 び 方 の 心 構 えをここではいくつかの 項 目 に 分 けて 概 説 します。4.1 授 業 時 間 の 使 い 方これについては、この 冊 子 で 何 度 か 言 及 してきました。ちょっと 難 しい 話 で 恐 縮 ですが、大 学 で 各 授 業 毎 に 認 定 される 単 位 というのは、 二 つの 部 分 からなっています。 一 つは 授 業 時間 内 の 学 習 、もう 一 つは 授 業 時 間 外 の 学 習 です。すべての 授 業 科 目 はこれら 二 つの 学 習 の 成果 として 単 位 が 認 定 されます。ですから、 宿 題 が 出 る 授 業 があって 当 然 です。 宿 題 が 出 なくても、 皆 さんは 授 業 時 間 外 で、つまり 予 習 や 復 習 をすることを 文 部 科 学 省 によって 義 務 づけられているわけです。 知 らなかったかもしれませんが…。「 研 究 入 門 フォーラム」は、とくに 授 業 時 間 外 の 学 習 に 重 点 をおいた 科 目 だと 考 えて 下 さい。「 研 究 入 門 フォーラム」の 授 業 時 間 だけでなく、それ 以 外 の 時 間 に 皆 さんが 何 をどのように 学 習 してきたのかが 重 要 です。 例 年 、このことをよく 理 解 していないグループが 見 受 けられます。グループワークでの 学 習 を 推 奨 することもあってか、なかなかスケジュールの 調整 ができず、かといって 作 業 の 分 担 もうまくいかず、 結 局 、 研 究 グループとしての 活 動 を、金 曜 日 の 2 時 間 目 にしか 行 なっていない、そんなグループです。これは「 研 究 入 門 フォーラム」の 趣 旨 をよく 理 解 していないと 言 わざるを 得 ません。それでは、 授 業 時 間 はどのように 使 うのか。 講 義 科 目 ではないですから、(たまにそういうことがあるかもしれませんが) 担 当 教 員 がレクチャーをする 時 間 ではありません。 資 料 検索 作 業 をする 時 間 でもありません。もっとも 効 率 的 な 授 業 時 間 の 使 い 方 は、・ 一 週 間 の 活 動 のとりまとめをグループごとに 行 なう・ 一 週 間 の 活 動 で 遭 遇 した 問 題 を 確 認 しあい、 担 当 教 員 や TA に 相 談 する・ 次 の 一 週 間 の 活 動 について 相 互 に 確 認 するといったものでしょうか。「 研 究 入 門 フォーラム」では、 一 人 の 担 当 教 員 が 複 数 グループを 担 当 します。そこに 数 人の TA が 配 置 されます。 担 当 教 員 は 受 け 持 ったグループの 調 査 ・ 研 究 の 進 行 管 理 をします。研 究 が 進 まない、 調 査 で 壁 にぶつかったなどという 場 合 には、 担 当 教 員 と TA が 助 言 をします。しかし、 注 意 しなければならないのは、 担 当 教 員 も TA も、 分 からないことをすべて 教えてくれるわけではないということです。 担 当 教 員 や TA が 与 えてくれるのは、あくまでも助 言 であって「 解 答 」ではありません。その 助 言 も、 研 究 の 内 容 に 踏 み 込 んだものというよりは、 研 究 の 方 法 に 関 わることだと 思 って 下 さい。あるいは、 研 究 報 告 として 内 実 の 伴 った成 果 を 出 すための 助 言 だと 思 って 下 さい。それでは、 研 究 の 方 法 についての 助 言 とはどういうものを 言 うのでしょうか。4.2 研 究 には 方 法 が 必 要学 問 の 起 動 因 は 驚 きであると 言 った 哲 学 者 がいます。 驚 きは 好 奇 心 と 置 き 換 えてもいいでしょうし、 直 観 と 言 い 替 えてもいいでしょう。 何 かをみたりきいたりして「へえ~」と 感 じることは 研 究 にとってとても 大 切 です。「へえ~」が「 許 せない」といった 憤 激 になったり、-12-


「 何 とかしなければ」という 使 命 感 になることもあるでしょう。しかし、 直 観 だけでは 研 究 になりません。たとえば、あまり 人 口 の 多 くない 地 域 の 出 身 で、大 学 生 活 を 送 るために 都 会 に 出 てきた 若 者 がいるとします。 一 人 暮 しをはじめました。 以 前なら、 近 所 の 人 はみんな 顔 見 知 りで、 挨 拶 も 交 わし、 親 しく 会 話 もしていました。 道 を 歩 いていても、たいていは 知 合 いに 出 会 えるようなそんな 地 域 での 生 活 だったとします。この 若者 はおそらく 都 会 の 生 活 にちょっと 驚 くかもしれません。 噂 にきいていたとおり、「 都 会 ってみんな 冷 たいんだよね。となり 同 士 でも 挨 拶 しないしね」------そんなことを 思 うかもしれません。「 都 会 に 暮 らす 人 は 冷 たい」、これは 直 観 的 な 命 題 です。 研 究 とは、 実 際 にそれを 確 かめてみることでもあります。さて、どうやって 確 かめますか。そこで 必 要 になるのが「 作 業 仮説 」です。 直 観 で 感 じたことを、 確 かめられるように 変 形 させていく 作 業 といっていいでしょう。たとえば、こんな 具 合 です。・ 都 会何 となく 分 かりますが、 実 は 曖 昧 です。たとえば、 人 口 密 度 でみることができるかもしれません。すると、「 都 会 っていうのは」の 部 分 は「 人 口 密 度 があがると」と 言 い替 えられますし、 人 口 密 度 はデータがあるし、 計 算 でも 求 められます。・ 冷 たい「 冷 たい」のままでは 研 究 にも 調 査 にもなりません。 挨 拶 をしないとかそんなことを指 しているのでしょう。すると、 人 と 人 の 交 際 の 度 合 とか 頻 度 みたいなものを 想 定 することができます。どうやって 確 かめられるでしょうか。 適 切 な 質 問 文 をつくって、アンケートなどの 手 法 を 使 って 調 べることはできそうです。とくに 隣 人 との 交 際 がポイントになるかもしれません。「 都 会 の 人 って 冷 たいんだよね」が「 人 口 密 度 が 高 くなると 隣 人 同 士 の 交 際 頻 度 が 低 くなる」のような 変 形 が 可 能 になります。ここまでくれば、 調 査 の 設 計 や 計 画 の 問 題 、そして 調査 の 実 行 可 能 性 の 問 題 になります。「 人 口 密 度 が 高 くなると」と 言 っているのですから、「 人口 密 度 」の 高 い 地 区 と 低 い 地 区 の 両 方 を 対 象 にしなければなりません。 隣 人 同 士 の 交 際 頻 度を 的 確 に 表 してくれる 質 問 文 を 容 易 してアンケート 調 査 をしなければなりません( 指 標 化 )。ここで、8 ヶ 月 の 期 間 で、 費 用 のことも 考 えて、この 調 査 を 実 施 することが 可 能 か 不 可 能 かの 判 断 になります。作 業 仮 説 とその 検 証 というのは、 研 究 方 法 の 一 例 にすぎませんが、 研 究 方 法 についての 助言 というのは、こういう 作 業 を 援 助 するものだと 理 解 してください。こうした 方 法 がしっかりしていないと、 単 に 直 観 的 な 命 題 や 願 望 を 並 べただけの 退 屈 な 報 告 書 になってしまいますし、 調 査 したとか 研 究 したという 実 感 がもてないまま「 研 究 入 門 フォーラム」の 授 業 が 終 わってしまいます。 直 観 から 出 発 しながらも、こうした 方 法 (メソドロジー)によって 何 かを 明らかにすること( 直 観 を 知 識 にする)ことも、アクティブに 学 ぶことの 一 つです。4.3 フィールドワークフィールドワークは「 野 外 実 習 」などと 訳 されたりします。ここではもう 少 し 広 く「 教 室外 での 学 び」といった 意 味 で 理 解 して 下 さい。「 研 究 入 門 フォーラム」がアクティブな 学 びであることは、フィールドワークを 推 奨 する、つまり、 教 室 の 外 へ 出 て 学 びの 材 料 や 素 材 を自 ら 集 めることを 推 奨 していることを 意 味 しています 2 。図 書 館 の 書 庫 へ 入 って、 特 定 の 出 来 事 に 関 して 古 い 新 聞 や 雑 誌 の 記 事 を 集 めて 読 むという2一 般 にフィールドワークは 研 究 対 象 となっている 人 びとと 共 に 生 活 をしたり、そのような 人 びと(インフォーマントと 言 います)と 対 話 したり、そのような 人 びとにインタビューをしたりする 社 会 調 査 活 動 のことです。こうした 文 字 通 りのフィールドワークを 行 なうグループも 多 いかと 思 います。フィールドワークは 研 究 の 方 法 ですから、これについてはきちんとした 学 習 が 必 要 です。この 冊 子 で 紹 介 した 文 献 を 使 って 学 習 したり、 政 策 科 学 部 の 科 目 として 開 講 されている「フィールド 調 査 法 」を 受 講 するなどして 学 んで 下 さい。また、フィールドワークは 社 会 学 や 文 化 人 類 学 の 領 域 で 確 立 されてきた 研 究 方 法 です。この領 域 の 文 献 にあたってみることを 推 奨 します。-13-


のもそうです(ライブラリ・リサーチ)。しかし、 多 くの 場 合 、 政 策 問 題 の 現 場 へ 出 ていって、その 問 題 の 実 態 をみたり、それについてきいたり、 資 料 を 収 集 したりといったことが 多 く 行なわれるはずです。フィールドワークは 遠 足 ではありませんから、 事 前 の 周 到 な 準 備 が 必 要 です。 前 の 項 目 で述 べたように、 何 をどのような 方 法 によって 明 らかにしたいのかが 定 まっていなければ、フィールドへ 出 ていっても 成 果 は 見 込 めないでしょう。ここでは、とくに 研 究 や 調 査 の 方 法 とは 別 の 留 意 点 について 述 べておきます。時 間 とお 金 の 制 約 のところでも 述 べましたが、 現 地 へでかけるにはコストがかかります。費 したものに 見 合 うものが 得 られなければ 意 味 がありません。しかし、 大 事 なのはそれだけではありません。 出 かけて 行 く 皆 さんにとっての 意 味 以 上 に 皆 さんを 受 け 入 れる 現 地 ・ 現 場の 人 びともまた、 貴 重 な 時 間 を 割 いてくれているということを 忘 れないで 下 さい。フィールドワークは 社 会 との 接 触 を 意 味 します。 社 会 との 接 触 にあたって 留 意 しなければならないことがいくつかあります。(1) アポイントメント誰 でも 突 然 の 来 客 には 戸 惑 います。やむを 得 ない 事 情 があれば 別 ですが、ふつうは 事 前 の連 絡 や 了 解 (アポイントメント)なしに 訪 問 することはマナー 違 反 とみなされます。フィールドワークは 社 会 との 接 触 を 伴 います。 多 くの 場 合 、 特 定 の 個 人 や 機 関 や 団 体 を 訪 問 して、 資料 を 閲 覧 したり、 聞 き 取 りをしたりしますが、その 場 合 も 同 じことです。 調 査 の 目 的 をはっきりと 伝 え、 訪 問 先 の 都 合 を 最 優 先 にして 訪 問 の 期 間 や 日 時 を 決 め、 訪 問 の 人 数 や(できれば) 訪 問 者 の 氏 名 をきちんと 伝 えることが 大 切 です。最 初 のコンタクトの 方 法 にも 留 意 が 必 要 です。 電 子 メールは 手 軽 ですが、 電 子 メールの 利用 になれている 人 ばかりではありません。また、 一 般 に 電 子 メールはフォーマルな 意 志 伝 達の 手 段 とはみなされていません。 一 度 も 会 ったことのない 相 手 との 最 初 のコンタクトに 電 子メールを 使 うときには 十 分 な 注 意 が 必 要 です。ファックスについても 同 じことが 言 えます。これらはどちらかというと、すでに 一 定 の 関 係 ができあがっている 相 手 との 効 率 的 な 連 絡 手段 と 考 えた 方 がよさそうです。電 話 については、まだ 電 子 メールよりは 受 け 入 れられやすいかもしれません。それでも、気 をつけなければならないことがあります。 電 話 をするということは、 相 手 の 時 間 に 割 り 込むことを 意 味 します。ですから、 電 話 をかける 時 間 帯 にも 注 意 が 必 要 ですし、やはり 最 初 のコンタクトで 電 話 をかける 場 合 には 注 意 と 配 慮 が 必 要 です。 見 ず 知 らずの 人 からの 突 然 の 電話 というのは、 一 般 に「あやしい 電 話 」であることが 多 かったりします。その 他 に、 丁 寧 に 挨 拶 文 や 訪 問 調 査 の 趣 旨 を 書 面 にして、これを 郵 送 するという 方 法 があります。 相 手 への 配 慮 という 点 ではこれが 一 番 です。 時 間 がかかるという 欠 点 をもっていますが、それは 調 査 や 訪 問 をする 側 の 都 合 です。つねに 最 優 先 すべきなのは 訪 問 先 の 都 合 です。訪 問 調 査 には 教 員 が 引 率 する 場 合 もあれば、しない 場 合 もあります。 教 員 が 引 率 する 場 合 、教 員 が 現 地 とのコンタクトをすませている 場 合 がほとんどでしょう。しかし、 実 際 に 調 査 をしてお 世 話 になるのは、 教 員 ではなく 受 講 者 である 皆 さんであることを 忘 れないでください。 教 員 は 教 員 でコンタクトや 挨 拶 をするでしょう。しかし、 受 講 者である 皆 さんも 研 究 グループとしてきちんと 相 手 とコンタクトをとる 姿 勢 が 大 切 です。そうでなければ、フィールドワークは 単 なる 教 員 引 率 の 遠 足 と 変 わりありません。教 員 が 引 率 せずに 訪 問 調 査 を 行 なう 場 合 は、 事 務 室 においてある「フィールド 調 査 届 」に記 入 して 事 前 に 事 務 室 に 提 出 してください。この 用 紙 には、 次 のことを 記 入 してもらいます( 冊 子 の 末 尾 にある「フィールド 調 査 届 」を 参 照 してください)。・ 研 究 グループ 名 ( 研 究 のタイトル)・ 代 表 者 名・ 訪 問 者 の 氏 名 ・ 学 生 証 番 号 ・ 電 子 メールアドレス・ 調 査 の 期 間 ( 日 時 )・ 調 査 の 目 的 ・ 概 要-14-


・ 訪 問 先 の 名 称 ・ 住 所 等・ 訪 問 先 担 当 者 の 氏 名・ 移 動 手 段・ 担 当 教 員 の 署 名 および 押 印(2) 訪 問 者 のマナー訪 問 者 のマナーについては、 相 手 を 不 愉 快 にしないという 一 点 から 考 えればすぐに 分 かるはずです。では、 不 愉 快 にしないためにはどうしたらいいのか。 一 般 に 社 会 常 識 ( 礼 儀 やマナー)をきちんと 守 るということです。 訪 問 先 で 相 手 をしてくれる 人 びとは、 好 きで 学 生 の相 手 をしているのではありません。できれば 相 手 などしたくないけれども、 仕 方 なく 相 手 をしている、そう 思 うことが 重 要 です。皆 さんはそんな 相 手 を 前 にしたときに、どんな 気 づかいをしますか。 考 えてみて 下 さい。・ 挨 拶 をする・ 礼 を 言 う・ 時 間 を 守 る・ 身 だしなみに 気 をつける・ 言 葉 づかいに 気 をつける・ 自 分 で 調 べれば 分 かるような 質 問 はしない(たとえば「この 町 の 人 口 は 何 人 ですか」とか)これらを 守 らない 人 に 遭 遇 すると 一 般 に 不 愉 快 になります。なぜなら、このような 相 手 は自 分 と 自 分 の 時 間 を 尊 重 していないように 思 えるからです。 服 装 をはじめとした 身 だしなみについては、 難 しいところがあります。 服 装 は 個 人 の 好 みや 価 値 観 、ライフスタイルにも 関係 しますから、これを 変 えることには 抵 抗 があるかもしれません。しかし、そこは 戦 略 的 に行 動 しましょう。 機 嫌 よく 迎 えられ、よい 情 報 を 提 供 してもらい、 便 宜 をはかってもらうためには、 文 化 的 に 相 手 に 同 調 することがもっとも 合 理 的 です。ただし、 文 化 的 な 同 調 にも 限 界 があります。もしも、 現 地 で 逆 に 不 愉 快 なことを 言 われたり、されたりした 場 合 には、すぐに 担 当 教 員 に 相 談 してください。ごくまれですが、そういうことも 起 こり 得 ます。アクティブな 学 びはエキサイティングではありますが、 社 会 との 接 触 にはそれなりに 気 苦労 も 多 いものです。4.4 グループワークアクティブな 学 びのもう 一 つの 要 素 は、グループワークによる 学 びだということです。おそらく、 研 究 テーマ、 研 究 計 画 、 研 究 フィールドが 確 定 したとしても、 調 査 と 研 究 の 遂 行 、成 果 のとりまとめ、 報 告 書 の 作 成 などのそれぞれの 局 面 でもっとも 苦 労 するであろうと 思 われるのが、グループワークの 継 続 かもしれません。この 冊 子 の 冒 頭 にも 書 きましたが、グループワークによる 学 習 には 二 つの 考 え 方 があります。いずれも、 実 践 的 な 学 びにとってとても 重 要 な 要 素 です。第 一 は、グループワークで 学 ぶという 考 え 方 です。 第 二 は、グループワークを 学 ぶという考 え 方 です。研 究 グループのメンバーは、それぞれ 異 なった 関 心 をもち、 特 性 をもち、 価 値 観 をもっていることでしょう。すべてのメンバーが 関 心 、 特 性 、 価 値 観 において 均 質 であるなどということは 考 えにくいです。 一 般 に、これらの 点 で 違 いがあるとグループとしての 活 動 がやりにくい、そう 考 えられるかもしれません。 意 見 がまとまりにくいから 共 同 研 究 などできないのではないか。これはきわめてナイーブな 意 見 です。皆 さんはいずれ 社 会 に 出 て 実 務 の 世 界 で 仕 事 をすることになります。ちょっと 想 像 しただけでも、そうした 実 務 の 世 界 では、 大 学 のクラス 以 上 に 関 心 、 特 性 、 価 値 観 の 相 違 は 大 きいであろうことが 分 かるはずです。 年 齢 、 教 育 歴 、 地 位 や 職 位 、そして 別 の 組 織 とのコラボレーションが 行 なわれるときなどは、 所 属 組 織 や 思 惑 もちがう、そういう 状 況 であるのが 普 通-15-


っているでしょう。 希 望 や 願 望 もちがうのが 普 通 です。しかし、 自 分 の 個 人 的 な 事 情にばかり 固 執 していると、グループワークははじまりません。 何 もかも 捨 てて、「 研究 入 門 フォーラム」に 没 頭 する 必 要 はありませんが、かといって 自 分 の 都 合 をつねに優 先 順 位 の 上 位 においているのでは 困 ります。これは 実 社 会 で 生 きていくための 作 法でもあります。作 業 工 程 を 遂 行 しながら、その 都 度 、 調 査 結 果 をまとめ、 共 有 する 必 要 があることは 当 然ですが、 計 画 はあくまでも 予 定 にすぎません。 予 定 は 未 定 であって 決 定 ではないですから、個 々の 作 業 を 遂 行 する 途 上 で、 予 想 外 に 時 間 がかかった、もっと 深 く 調 査 する 必 要 がある、文 献 調 査 だけではなくて 聞 き 取 り 調 査 も 必 要 だ、 調 査 対 象 を 広 げてみてはどうか、こんなことが 出 てきて 当 然 でしょう。これらの 意 見 にもっともな 理 由 がある 場 合 は、 計 画 そのものの変 更 が 必 要 になるかもしれません。そういうフレキシブルで 理 性 的 な 態 度 がグループでの 計画 遂 行 には 必 要 です。これもグループワークで 学 びながら、グループワークを 学 ぶということだと 言 ってよいでしょう。最 後 に、リーダーについて 少 し 述 べておきましょう。グループごとにリーダーを 決 めるのはよいことです。しかし、リーダーを 決 めたからといって、グループ 活 動 の 何 もかもについてリーダーに 任 せてしまうようではどうにもなりません。 研 究 グループはたかだか 10 人 程度 の 小 グループです。 指 示 をする 者 と 指 示 をされる 者 といった 意 味 で、リーダーを 決 めるのであれば、リーダーなどいない 方 がましです。リーダーがもっぱら 構 想 し 指 示 を 与 え、その他 のメンバーがもっぱらそれを 実 行 するのであれば、グループワークとしての 学 びの 意 味 がないと 言 えるでしょう。小 グループにおける「リーダー」は、 雑 用 係 みたいなものです。 連 絡 の 起 点 になったり、調 整 役 になったり、その 程 度 の 意 味 だと 理 解 してください。だとすると、 雑 用 や 調 整 といった 面 倒 な 仕 事 を「リーダー」になった 人 にだけ 押 しつけるのもどうかと 思 います。 研 究 グループは 小 さな 集 団 ですから、メンバーの 一 人 一 人 が 責 任 意 識 をもたなければグループワークは 不 可 能 です 3 。3余 談 ですが、 大 昔 の 小 さな 共 和 国 では、 公 職 者 を 投 票 で 選 んだりせずに、 輪 番 制 (ローテーション)というやり 方 で 公 職 担 当 者 を 決 めていました。この 考 え 方 は、 小 さな 共 和 国 のメンバーである 市 民 はすべて、公 職 = 共 和 国 の 共 通 善 に 関 わる 仕 事 を 行 なう 力 量 と 気 概 をもっていなければならないというものです。今 でも、 地 域 の 自 治 会 や 町 内 会 では、こんなやり 方 で 役 職 者 を 決 めているのではないでしょうか。 役 職者 やリーダーを 決 めるさいには、(1) 任 命 、(2) 選 出 、(3) 輪 番 制 による 割 当 の 三 つの 考 え 方 があります。 相対 的 に 小 規 模 ですべてのメンバーのコミットメント( 積 極 的 関 与 )が 必 要 な 場 合 は、 概 ね(3)の 方 法 が 採 用されることが 多 いかもしれません。 輪 番 制 はすべてのメンバーがリーダーになりうることを 前 提 にしています。-17-


第 5 章 文 献 案 内最 後 に、 研 究 テーマの 考 案 、 研 究 計 画 ・ 作 業 工 程 づくりに 役 立 つと 思 われる 基 本 文 献 を 紹介 して、この 冊 子 をとじることにします。「 研 究 入 門 フォーラム」のアクティブな 学 びは、能 動 的 で 知 的 な 社 会 経 験 を 意 味 します。 能 動 的 な 学 びの 意 欲 が 知 的 に 方 向 づけられてこそ、「 研 究 入 門 フォーラム」での 学 習 の 意 義 があるわけです。この 章 では、アクティブな 学 び 全般 に 役 立 つものを 中 心 に 列 挙 しておきます。こういった 文 献 案 内 には 注 意 しなければならない 点 がいくつかあります。まず、 文 献 案 内はけっして 網 羅 的 なものではありえません。 毎 年 、たくさんの 書 籍 が 出 版 されます。そのすべてを 把 握 するのは 不 可 能 です。 加 えて、よい 本 があっても、すぐに 品 切 れ、 絶 版 になったりしてしまいます。 研 究 する 者 にとって、 文 献 リストは 自 分 で 作 るものです。 他 人 のリストに 依 存 した 学 び 方 はアクティブとは 言 えません。ですから、この 文 献 案 内 は、 皆 さんがそれぞれの 関 心 に 応 じて 独 自 の 文 献 リストを 作 成 するための 手 がかりにすぎないことを 理 解 してください。また、 文 献 案 内 にも 執 筆 者 がいます。いきおい、その 案 内 は 執 筆 者 の 関 心 や 好 みが 投 影 されてしまいます。ですから、ある 人 からみれば 絶 対 にのせておかなければならない 文 献 が 掲載 されていないとか、こんな 本 を 掲 載 すべきではないといったことが 出 てきます。これは 仕方 のないことです。 上 に 書 いたように、 本 来 、 読 むべき 本 のリストは、 研 究 する 者 が 自 分 で作 成 するものですから、 気 に 入 らなければ 自 分 で 作 ればいいのです。ここでは、アクティブな 学 びを、(1) 社 会 研 究 ・ 調 査 の 方 法 、(2) 社 会 諸 科 学 への 入 門 、(3)フィールドワーク、(4) 学 術 論 文 の 執 筆 に 分 けた 上 で、それぞれに 役 立 つ 手 軽 な 本 を 列 挙 することにします。(1) 社 会 研 究 ・ 調 査 の 方 法皆 さんの 多 くは 社 会 問 題 や 社 会 現 象 の 中 からテーマを 選 択 することになると 思 います。そんなとき、 最 初 の 手 引 になりそうなのが、 社 会 科 学 の 入 門 書 です。 猪 口 孝 『 社 会 科 学 入 門------ 知 的 武 装 のすすめ』( 中 公 新 書 )、 森 岡 清 志 『ガイドブック 社 会 調 査 』( 日 本 評 論 社 )、宮 内 泰 介 『 自 分 で 調 べる 技 術 ------ 市 民 のための 調 査 入 門 』( 岩 波 アクティブ 新 書 )、ヒューマッケイほか『 入 門 情 報 社 会 の 社 会 科 学 』(NTT 出 版 )、 今 田 高 俊 編 『 社 会 学 研 究 法 -リアリティの 捉 え 方 』( 有 斐 閣 アルマ)などから 読 みはじめてはどうでしょうか。社 会 研 究 には 理 論 が 不 可 欠 です。 自 分 は 具 体 的 な 事 例 を 勉 強 するのだから、 抽 象 的 な 理 論の 勉 強 はあんまり 関 係 ないかな…と 思 っている 人 は、ちょっと 考 え 直 す 必 要 がありそうです。理 論 (theory)の 語 源 はギリシア 語 の teoria です。これは、 具 体 的 な 事 象 からちょっと 身 を引 いて、その 事 象 を 眺 めてみる、そんな 意 味 をもった 言 葉 です。 皆 さんは、 自 分 が 暮 らしている 街 を 近 くの 小 高 い 丘 や 山 から 見 下 ろしたことがありますか。 理 論 の 語 源 になっているteoria という 営 みは、そんな 体 験 と 似 ています。 街 の 中 にいると、 視 界 に 入 ってくるものごとはごく 限 られたものだけです。 街 の 全 体 を 見 渡 すためには、どうしても 街 から 離 れて、どこか 高 いところに 登 るしかない。そうすることで 全 体 がよくみえるようになる、 家 々がどこまで 拡 がっているのか、 大 きな 道 路 が 街 をどのように 貫 いているのか、 川 がどこをどう 流れているのか…。 理 論 は、 普 通 の 私 たちの 感 覚 で 捉 えられないものをみるための 道 具 の 役 割を 果 たします。理 論 は 抽 象 です。 目 の 前 にある 具 体 的 なモノをそのままみるのではなく、( 丘 に 登 って 街の 全 体 をみるときのように)、 別 の 見 方 をしてみる。その 別 の 見 方 を 提 供 してくれるのが 理論 です。たとえば、りんごとみかんとキウイが 一 つずつあるとする。それぞれ 別 の 果 物 ですが、たとえば、それぞれの 果 物 がもっている 他 の 側 面 を 全 部 無 視 して、・ 重 さにだけ 注 目 してみよう・ ビタミン C の 含 有 量 だけに 注 目 してみよう-18-


・ 糖 度 にだけ 注 目 してみよう・ 1g あたりの 値 段 だけに 注 目 してみよう別 々の 果 物 であっても、こんな 風 な 見 方 をすれば、 比 較 したり、 合 計 したり、 優 劣 を 判 断したりできます。ごくシンプルな 例 ですが、 上 にあげた 四 つの 見 方 はそれぞれに 理 論 としての 役 割 りを 果 たしているということです。さて、 社 会 学 (Sociology)は、 今 では 独 立 した 学 問 領 域 として 文 学 部 の 専 攻 になっていたり、 社 会 学 部 として 独 立 した 学 部 になっていたりしますが、その 黎 明 期 である 19 世 紀 には社 会 科 学 一 般 のことを 指 していました。そうした 観 点 から 社 会 科 学 理 論 のこれまでの 展 開 を知 る 手 引 として 富 永 建 一 『 社 会 学 講 義 』( 中 公 新 書 )がお 薦 めです。 社 会 という 言 葉 を 私 たちはよく 口 にしますが、 社 会 は 果 物 のように 手 にとってみることも、 目 で 見 て 確 認 することもできません。それだけに、 社 会 を 研 究 する 場 合 、「 理 論 」の 役 割 りは 大 きいと 言 えます。 富永 の 小 さなこの 本 は、 社 会 研 究 に 大 きな 影 響 をもたらしてきた「 理 論 」とそれをつくりだした「 理 論 家 」たちについての、コンパクトな 概 説 書 です。(2) 社 会 諸 科 学 への 入 門社 会 科 学 といっても、 法 学 、 政 治 学 、 経 済 学 、 経 営 学 など 様 々な 領 域 があります。 自 分 の関 心 とこうした 諸 学 ・ 諸 論 とのつながりに 見 当 をつけるために、 便 利 で 手 軽 な 本 が 出 ています。いくつか 紹 介 しておきましょう。法 学 ・ 政 治 学 に 関 しては、 佐 々 木 毅 『 現 代 政 治 学 の 名 著 』( 中 公 新 書 )、バーナード・クリック『 現 代 政 治 学 入 門 』( 講 談 社 学 術 文 庫 )、 伊 藤 光 利 『ポリティカル・サイエンス 事 始 め』( 有 斐 閣 ブックス)が 手 軽 です。 日 本 の 政 治 に 絞 った 入 門 書 では 村 松 岐 夫 『 日 本 の 政 治 』( 有斐 閣 S シリーズ)があります。 地 方 行 政 に 関 しては、 今 井 昭 『 超 入 門 地 方 自 治 制 度 はこうなっている』( 学 陽 書 房 )、 日 本 の 官 僚 制 については 村 松 岐 夫 『 日 本 の 行 政 ------ 活 動 型 官 僚 制の 変 貌 』( 中 公 新 書 )があります。 自 由 主 義 や 保 守 主 義 など 政 治 イデオロギーの 基 本 を 学 びたいのであれば、アンドルー・ヴィンセント『 現 代 の 政 治 イデオロギー』( 昭 和 堂 )があります。法 学 では 末 川 博 『 法 学 入 門 』( 有 斐 閣 双 書 )、 碧 海 純 一 『 法 と 社 会 ------ 新 しい 法 学 入 門 』( 中公 新 書 )、 池 田 真 朗 ほか『 法 の 世 界 へ』( 有 斐 閣 アルマ)、 安 念 潤 司 ほか『 法 学 ナビゲーション』( 有 斐 閣 アルマ)があります。どうも 法 律 学 は 難 しくて 苦 手 という 人 には、 松 井 茂 記 ほか『はじめての 法 律 学 ------H と J の 物 語 』( 有 斐 閣 アルマ)や 野 田 進 『シネマで 法 学 』( 有 斐閣 ブックス)はどうでしょう。経 済 学 関 係 としては 佐 和 隆 光 『 現 代 経 済 学 の 名 著 』などから 経 済 学 の 見 取 図 をつくることができます。この 領 域 の 古 典 を 知 りたければ 伊 藤 誠 ほか『 経 済 学 の 古 典 』( 有 斐 閣 新 書 )があります。 経 済 学 の 広 い 応 用 範 囲 を 示 す 一 例 として、 公 共 経 済 学 の 文 献 をいくつか 紹 介 しておきましょう。 山 内 弘 隆 ほか『パブリック・セクターの 経 済 経 営 学 』(NTT 出 版 )、 大 住 荘四 郎 『パブリック・マネジメント------ 戦 略 行 政 への 理 論 と 実 践 』( 日 本 評 論 社 )。地 域 や 文 化 的 な 事 象 の 研 究 には 社 会 学 の 方 法 や 知 見 が 有 用 です。 杉 山 光 信 『 現 代 社 会 学 の名 著 』は、 上 に 紹 介 した 富 永 の 著 作 とあわせて 読 むことで、 社 会 学 研 究 の 輪 郭 を 知 ることができます。とくに 文 化 的 事 象 の 研 究 には、 社 会 学 の 一 領 域 であるカルチュラル・スタディーズが 役 立 つでしょう。 上 野 俊 哉 と 毛 利 嘉 隆 の 本 を 二 つあげておきます。『カルチュラル・スタディーズ 入 門 』(ちくま 書 房 )と『 実 践 カルチュラル・スタディーズ』(ちくま 書 房 )です。企 業 経 営 の 領 域 では 金 井 壽 宏 『 経 営 組 織 ------ 経 営 学 入 門 シリーズ』( 日 経 文 庫 )、 沼 上 幹『 組 織 デザイン』( 日 経 文 庫 )、 奥 村 昭 博 『 経 営 戦 略 』( 日 経 文 庫 )があります。 経 営 学 の 古 典から 現 在 まで、 経 営 学 の 方 法 などを 鳥 瞰 するには、 深 山 明 ほか『 経 営 学 の 歴 史 』( 中 央 経 済社 )、とくに 日 本 における 経 営 学 の 展 開 に 絞 ったものとしては、 裴 富 吉 『 歴 史 のなかの 経 営学 ------ 日 本 の 経 営 学 者 : 時 代 精 神 と 学 問 思 想 』( 白 桃 書 房 )があります。科 学 的 にものを 考 えるということにこだわりがあるならば、 村 上 陽 一 郎 『 現 代 科 学 論 の 名著 』( 中 公 新 書 )、 佐 々 木 力 『 科 学 論 入 門 』( 岩 波 新 書 )、 金 森 修 『 科 学 論 の 現 在 』( 勁 草 書 房 )があります。また、 科 学 哲 学 の 領 域 で 政 策 科 学 に 関 連 性 が 深 い 理 論 家 としてカール・ポパーがいますが、ポパーについての 解 説 書 、 川 村 仁 也 『ポパー------ 人 と 思 想 』( 清 水 書 院 )が 手軽 です。-19-


環 境 や 都 市 に 関 連 するテーマは 学 際 的 です。 自 然 科 学 や 工 学 からのアプローチと 経 済 学 、社 会 学 のアプローチが 交 差 する 領 域 といってよいでしょう。 環 境 関 係 で 工 学 的 なアプローチからの 入 門 書 としては、 松 尾 友 矩 『 環 境 学 』( 岩 波 書 店 )があります。 社 会 科 学 の 領 域 ではコルスタッド『 環 境 経 済 学 入 門 』( 有 斐 閣 )、 満 田 久 義 『 環 境 社 会 学 への 招 待 』( 朝 日 新 聞 社 )、蟹 江 憲 史 『 環 境 政 治 学 入 門 』( 丸 善 )などがあります。 都 市 は 長 い 間 、 社 会 研 究 者 の 想 像 力 をかきたてるテーマであり 続 けてきました。 政 治 学 (polis の 学 )はもともと 都 市 ( 国 家 )の 学 でしたし、 近 代 化 による 都 市 の 変 容 は 都 市 の 歴 史 研 究 、 社 会 学 研 究 を 刺 激 することになりました。 現 在 では「まちづくり」の 課 題 として、 学 際 的 な 研 究 が 行 なわれています。 建 築 学 の 角度 からは、 高 田 昇 『まちづくりフロンティア』(オール 関 西 )があります。 都 市 の 社 会 史 としては 古 典 的 名 著 M・ウェーバー『 都 市 の 類 型 学 』( 創 文 社 )と 羽 仁 五 郎 『 都 市 の 論 理 』( 勁 草書 房 )をあげておきます。 経 済 学 の 領 域 では 佐 々 木 公 明 ほか『 都 市 経 済 学 の 基 礎 』( 有 斐 閣 アルマ)、 牛 嶋 正 『 現 代 の 都 市 経 営 』( 有 斐 閣 ブックス)をあげておきます。生 命 や 環 境 に 関 わるテーマでは、 倫 理 問 題 を 扱 うことがあるかもしれません。 加 藤 尚 武 の一 連 の 啓 蒙 書 が 役 立 つでしょう。『 現 代 倫 理 学 入 門 』( 講 談 社 学 術 文 庫 )、『 応 用 倫 理 学 のすすめ』( 丸 善 )、『 現 代 を 読 み 解 く 倫 理 学 』( 丸 善 )、『 合 意 形 成 とルールの 倫 理 学 』が 参 考 になるでしょう。 倫 理 問 題 は、 企 業 経 営 の 領 域 でも 盛 んに 論 じられるようになりました。 企 業 の 社会 的 責 任 論 (CSR)です。 岡 本 享 ニ『CSR 入 門 ------ 企 業 の 社 会 的 責 任 とは 何 か』( 日 経 文 庫 )、それから 京 都 に 因 んで 平 田 雅 彦 『 企 業 倫 理 とは 何 か------ 石 田 梅 岩 に 学 ぶ CSR の 精 神 』(PHP新 書 )をあげておきます。情 報 領 域 についても、 情 報 科 学 ・ 情 報 工 学 だけでなく 社 会 科 学 との 学 際 研 究 がたくさんあります。 江 下 雅 之 『ネットワーク 社 会 の 深 層 構 造 』( 中 公 新 書 )、 樺 山 紘 一 『 情 報 の 文 化 史 』( 朝 日 選 書 )、マーク・ポスター『 情 報 様 式 論 』( 岩 波 現 代 文 庫 )、 経 営 情 報 学 会 情 報 倫 理 研 究会 『 情 報 倫 理 ------インターネット 時 代 の 人 と 組 織 』( 有 斐 閣 選 書 )、 岡 村 久 道 『 個 人 情 報 保護 法 の 知 識 』( 日 経 文 庫 )、 櫻 井 よしこ 他 『 住 基 ネットとは 何 か』( 明 石 書 店 )、 那 野 比 古 『 知的 所 有 権 』( 中 公 文 庫 )をあげておきます。また、 外 国 研 究 や 海 外 での 調 査 を 考 えているのであれば、 現 地 の 一 般 的 な 事 情 を 知 っておく 必 要 があります。 三 省 堂 選 書 の 入 門 シリーズが 役 にたつかもしれません(フランス、 韓 国 、イタリア、アメリカ、スペイン、インド、 太 平 洋 諸 島 、ポーランドなどが 出 ているはずです)。制 度 には 歴 史 があります。 制 度 に 関 わる 研 究 をする 場 合 、 各 国 史 の 基 本 を 押 さえておく 必 要があります。ちょっと 古 いかもしれませんが、 山 川 出 版 からそうした 各 国 史 のシリーズ(『ドイツ 史 』、『イギリス 史 』、『フランス 史 』など)、 各 国 の 歴 史 研 究 入 門 シリーズ(『アメリカ 史研 究 入 門 』、『イギリス 史 研 究 入 門 』など)が 出 ています。(3)フィールドワークフィールドワークに 関 連 する 文 献 もあげておきましょう。 社 会 学 者 による 名 著 として、M・ミード『フィールドからの 手 紙 』( 岩 波 現 代 選 書 )、 定 性 的 研 究 の 方 法 を 扱 った J・ロフランドほか『 社 会 状 況 の 分 析 』( 恒 星 社 厚 生 閣 )があります。 後 者 はレポートの 書 き 方 まで 出 ており、 方 法 論 を 本 格 的 に 論 じたものです( 値 段 が 高 い)。フィールドワークの 経 験 がまったくない 人 は、 岩 波 書 店 編 集 部 『フィールドワークは 楽 しい』( 岩 波 ジュニア 新 書 )から 読 みはじめてもいいかもしれません( 大 学 生 でジュニア 新 書 は 恥 ずかしいかもしれませんが、そういうときは 書 店 でカバーをかけてもらいましょう)。また、アジアの 研 究 調 査 に 的 を 絞 って 学 生向 けに 書 かれたものもあります。アジア 農 村 研 究 会 編 『 学 生 のためのフィールドワーク 入 門 』(めこん)です。 組 織 論 や 経 営 学 の 領 域 では、 佐 藤 郁 哉 の『フィールドワークの 技 法 ------問 いを 育 てる、 仮 説 をきたえる』( 新 曜 社 )と『 組 織 と 経 営 について 知 るための 実 践 フィールドワーク 入 門 』( 有 斐 閣 )、 田 尾 雅 夫 ・ 若 林 直 樹 編 『 組 織 調 査 ガイドブック』( 有 斐 閣 )があります。インタビュー 調 査 をしようとしているならば、 桜 井 厚 『インタビューの 社 会 学 ------ライフストーリーの 聞 き 方 』(せりか 書 房 )が 役 立 つかもしれません。そのほか 一 般 的 なフィールドワークの 入 門 文 献 として、 以 下 のものをあげておきます。 福 祉 関 係 に 興 味 のある 人 には、 立 石 宏 昭 『 社 会 福 祉 調 査 のすすめ------ 実 践 のための 方 法 論 』(ミネルヴァ 書 房 )、 根 本ほか『 初 めて 学 ぶ 人 のための 社 会 福 祉 調 査 法 』( 中 央 法 規 出 版 )があります。 川 喜 田 二 郎 『 野外 科 学 の 方 法 』( 中 公 新 書 )、 中 村 尚 司 ・ 広 岡 博 之 編 『フィールドワークの 新 技 法 』( 日 本 評-20-


論 社 )、 市 川 健 夫 『フィールドワーク 入 門 ------ 地 域 調 査 のすすめ』( 古 今 書 院 )。 環 境 問 題に 関 連 するものとしては 一 つ 古 典 的 な 著 作 をあげておきましょう。アルド・レオポルトの『 野性 のうたが 聞 こえる』( 講 談 社 学 術 文 庫 )です。調 査 や 研 究 には 懐 疑 的 な 精 神 が 不 可 欠 です。そんな 懐 疑 的 精 神 を 覚 醒 させるために 気 楽 に読 める 本 を 二 つあげておきます。パオロ・マッツァリーニ『 反 社 会 学 講 座 』(イースト・プレス)と 谷 岡 一 郎 『「 社 会 調 査 」のウソ------リサーチ・リテラシーのすすめ』( 文 春 新 書 )です。(4) 学 術 論 文 を 書 くアクティブな 学 びの 最 後 の 段 階 は 報 告 書 の 執 筆 です。 学 術 的 な 文 章 を 書 くというのは、ものすごく 特 別 なことではありません。 明 晰 な 意 味 をもつ 言 葉 を 使 って、 論 理 的 な 展 開 に 気 を配 りながら 書 くということです。それからもう 一 点 。 学 術 論 文 は 試 験 の 答 案 とは 違 って、 多くの 読 者 を 想 定 して 書 かれなければなりません。 授 業 担 当 教 員 だけを 想 定 して、すがるような 気 持 ちで 書 かれた 答 案 をよくみますが、これでは 学 術 論 文 にはなりません。皆 さんの 多 くは 日 本 語 で 報 告 書 を 書 くことになると 思 います。 日 本 語 はとても 不 思 議 な 言語 です。 言 葉 と 言 葉 を 無 造 作 につないでも、 何 となく 意 味 が 分 かってしまうところがありますし、 逆 に、 何 となくしか 意 味 が 分 からないのに、 言 葉 と 言 葉 をつなぐだけでそれで 通 ってしまうこともあります。たとえば、「 比 較 政 治 経 済 学 」というタイトルの 本 があったとします。とくに 私 たちはこのタイトルには 違 和 感 をもちません。けれども、これを(たとえば) 英 語 に 置 き 換 えるとすればけっこう 厄 介 です。 多 分 、Comparative studies in political economy くらいでしょうか。れだけでも、studies とか in とか、 漢 字 で 表 示 されたタイトルにはない 単 語 が 登 場 することになります。Comparative studies でいいのか、それとも a comparative study なのか。 厳 密 に 考 えると、いろいろややこしい 問 題 があります。また、 英 語 には 統 語 法 というのがあって、 品 詞 や 論 理 的 なつながりによって 言 葉 の 位 置 や順 番 が 決 まります。ところが、 日 本 語 の 場 合 は、そうでもなくて、「 比 較 政 治 経 済 学 」と 言っても「 政 治 経 済 学 比 較 」といっても、 何 となく 意 味 は 通 ってしまいます。それでちゃんと意 味 が 通 ればよいのですが、 無 造 作 な 言 葉 の 配 列 によって、 読 者 に 誤 解 を 与 えたり、 意 味 が分 からなくなったりすることもあります。フレーズ 単 位 でみても、こうした 厄 介 な 問 題 があるのですから、それがセンテンスになり、パラグラフになり、そして 論 文 と 呼 ばれる 文 章 群 になってくると、ますます 厄 介 なものになる 可 能 性 が 大 きくなります。 日 本 語 を 母 語 として 育 ってきた 皆 さんは、「 間 違 った」 文 章 を書 くことはあまりないと 思 いますが、「 悪 い 文 章 」をうっかり 書 いてしまうことが、けっこうあるのではないかと 思 います。そこで、 研 究 成 果 報 告 書 を 書 く 前 に 読 んだ 方 がよいと 思 われる 文 献 をいくつか 紹 介 しておきましょう。まず、 幾 世 代 にも 読 み 継 がれてきた、 岩 淵 悦 太 郎 『 悪 文 』( 第 3 版 、 日 本 評 論 社 )です。これは 文 章 読 本 として 昔 から 定 評 のある 本 です。この 本 を 意 識 して 最 近 出 された 中 村 明 『 悪 文------ 裏 返 し 文 章 読 本 』(ちくま 新 書 )、 一 ノ 坪 俊 一 『 書 く 技 術 ------ 悪 文 から 素 直 な 文 章 へのマニュアル』( 日 本 経 済 新 聞 社 )もあげておきましょう。論 文 の 書 き 方 マニュアルとなると、 夥 しい 数 の 書 籍 があります。 大 御 所 の 著 書 では 清 水 幾太 郎 『 論 文 の 書 き 方 』( 岩 波 書 店 )があります。 最 近 のものでは、 樋 口 裕 一 『やさしい 文 章 術------レポート・ 論 文 の 書 き 方 』( 中 公 新 書 ラクレ)、 花 井 ほか『 論 文 の 書 き 方 マニュアル------ステップ 式 リサーチ 戦 略 のすすめ』( 有 斐 閣 アルマ)、 沢 田 昭 夫 『 論 文 の 書 き 方 』( 講談 社 学 術 文 庫 )、 鷲 田 小 彌 太 『 入 門 ・ 論 文 の 書 き 方 』(PHP 新 書 )、 辰 濃 和 男 『 文 章 の 書 き 方 』( 岩 波 新 書 )、 木 下 是 雄 『レポートの 組 み 立 て 方 』(ちくま 学 芸 文 庫 )、 小 笠 原 喜 康 『 大 学 生 のためのレポート・ 論 文 術 』( 講 談 社 現 代 新 書 )、 浜 田 ほか『 大 学 生 と 留 学 生 のための 論 文 ワークブック』(くろしお 出 版 )など、あげればきりがありません。これら 書 き 方 のマニュアル 本 は、それなりに 役 にたちますが、これらを 読 めば 上 手 に 文 章-21-


なりレポートなり 論 文 が 書 けるわけではありません。 多 くの 場 合 、マニュアルが 役 にたつのは、 定 型 化 された 作 業 を 遂 行 する 場 合 です。 家 電 製 品 やコンピュータ、ソフトウェアなどを実 際 に 使 うときには、マニュアルは 大 いに 役 立 ちます。しかし、 自 分 が 調 べ、 知 り、 考 えたことを「 書 く」 営 みは、 家 電 製 品 の 操 作 とは 意 味 がちがいます。 家 電 製 品 をつかって、 洗 濯をしたり、ものを 冷 やしたり、 野 菜 や 果 物 をすり 潰 したりする 営 みはちっとも 創 造 的 ではありません。しかし、 人 間 が 何 かを 表 現 するために、 言 葉 をつかったり、 書 いたりすることはつねに 創 造 的 です。 創 造 的 な 営 みのためにマニュアルにべったり 依 存 するのは 愚 かなことです。ですから、ここにあげた 本 を 読 めば、 上 手 に 文 章 が 書 けて、 上 手 に 論 文 が 書 けるなどと思 ってはいけません。いずれも、 他 者 に 読 んでもらえる 程 度 に 明 晰 な 文 章 を 書 くさいの 最 低限 の 心 得 が 書 いてある 本 だと 思 ってください。上 手 に 文 章 を 書 くためにもっとも 効 果 的 なのは、 上 手 な 文 章 をたくさん 読 むことです。 話したり、 書 いたりするスキルを 向 上 させるためにもっとも 効 果 的 なのは「 模 倣 」です。ですから、 読 書 量 と 文 章 力 はだいたい 表 裏 の 関 係 にあるとみて 間 違 いありません。よい 文 章 をたくさん 読 めばよい 文 章 が 書 けるようになります。 拙 い 文 章 しか 書 けない 人 は、 読 書 量 が 少 ないか、もしくは 拙 い 文 章 で 書 かれた 本 しか 読 んでいないかのどちらかです。 皆 さん、よい 文章 をどんどん「 見 習 い」ましょう。もう 一 つ、よい 文 章 が 書 けるようになるための 効 果 的 な 方 法 は、 練 習 に 練 習 を 重 ねる、つまり 実 践 です。たくさん 文 章 を 書 いてみることです。 書 くという 営 みは 実 践 的 な 営 みです。書 くための 知 識 は 実 践 知 です。 料 理 の 教 則 本 をたくさん 読 んで、 教 則 本 から 料 理 の 知 識 を 得ているからといって、その 人 は 必 ずしも 料 理 が 上 手 な 訳 でありません。たくさん 書 き、 何 度も 失 敗 している 人 はそれだけすぐれた 文 章 力 をもっているといえるでしょう 4 。また、2006 年 度 から、 原 則 として 学 生 が 提 出 する 論 文 や 報 告 書 には、すべて 外 国 語 のタイトルと 要 約 (アブストラクト)を 添 付 してもらうことになりました。「 研 究 入 門 フォーラム」の 研 究 成 果 報 告 書 についても、これが 適 用 されます。 英 語 のタイトルとアブストラクト作 成 のために 役 立 つ 文 献 リストや 執 筆 のための 手 引 きを 政 策 科 学 部 ではオンラインで 紹 介していますので、 作 業 にとりかかる 前 に 必 ず 参 照 してください。政 策 科 学 部 のトップページ→ 学 習 ツール→ 英 文 概 要 ・レポートの 執 筆 要 項ファイルは 3 種 類 あります。1「 英 文 概 要 執 筆 要 項 」: 「 英 語 で 書 くタイトルとアブストラクト」と「 英 文 ライティングに 役 立 つ 文 献 ・ウェブサイトリスト」 タイトルとアブストラクトを 書 く 前 に 必 読 の書 。2「 英 文 レポート 執 筆 要 項 」: 「APA スタイルによる 英 語 ライティングのフォーマット 方法 」 英 文 レポート 作 成 の 基 本 がわかりやすく 書 いてあります。3「APA STYLE GUIDELINES」: “How to Format Your Essay Using APA STYLE GUIDELINES”上 記 2の 英 文 版 。4同 じことはグループワークにも 言 えます。グループワークもまた 実 践 です。グループワークでは 議 論 することが 不 可 欠 です。 議 論 にも 作 法 があり、ルールがあります。 実 りある 議 論 をするためには、こうした 作 法 やルールを 知 っておくことが 大 切 です。 公 共 政 策 学 の 研 究 者 でもある 足 立 幸 男 『 議 論 の 論 理 ------民 主 主 義 と 議 論 』( 木 鐸 社 )は、マニュアル 本 ではなく 議 論 するということの 根 源 的 な 意 味 を 教 えてくれます。もう 少 し、マニュアルよりで、それだけに 分 かりやすいのが 吉 田 新 一 郎 『 会 議 の 技 法 ------チームワークがひらく 発 想 の 新 次 元 』( 中 公 新 書 )、 諏 訪 邦 夫 『 発 表 の 技 法 』( 講 談 社 ブルーバックス)です。 人 間 関係 や 世 の 中 は、 何 事 もマニュアル 通 りにはいかないのが 実 際 です。グループワークもまた、 実 践 の 問 題だと 理 解 してください。-22-


第 6 章 特 定 プロジェクト「 特 定 プロジェクト」は、 学 部 からフィールドが 提 供 されるものです。 来 年 度 は、 以 下 の特 定 プロジェクトが 提 供 されます。プロジェクト 名 提 供 される 研 究 領 域 定 員韓 国 国 際 政 策 ・ 環 境 都 市 ・ 情 報 文 化 15カンボジア 行 政 政 策 ・ 国 際 政 策 ・ 情 報 文 化 15中 国 行 政 政 策 ・ 組 織 経 営 ・ 環 境 都 市 15フランス 行 政 政 策 ・ 組 織 経 営 ・ 国 際 政 策 ・ 環 境 都 市 ・ 情 報 文 化 15英 国 行 政 政 策 ・ 組 織 経 営 ・ 国 際 政 策 15ドイツ 組 織 経 営 ・ 国 際 政 策 ・ 環 境 都 市 15宇 治 山 城 行 政 政 策 ・ 組 織 経 営 ・ 国 際 政 策 ・ 環 境 都 市 ・ 情 報 文 化 15若 狭 町 行 政 政 策 ・ 環 境 都 市 ・ 情 報 文 化 15向 日 市 行 政 政 策 ・ 組 織 経 営 ・ 環 境 都 市 15全 プロジェクトにおいて、 応 募 人 数 が 10 名 に 満 たない 場 合 は 原 則 として 開 講 しません。プロジェクトの 担 当 教 員 は、 年 度 末 に 発 表 されます。各 プロジェクトは、 原 則 として 定 員 があります。 定 員 を 超 える 応 募 があった 場 合 は、 選 考がされます( 詳 細 は 各 プロジェクトのページを 参 照 )。もし 選 考 にもれた 場 合 でも、 研 究 計画 書 の 基 本 的 部 分 は 生 かされ、 自 主 プロジェクト 中 規 模 グループ 編 成 等 につながります。 特定 プロジェクトに 応 募 するかどうかに 関 わらず、 自 らが 研 究 したい 内 容 を 記 述 してください。各 プロジェクトの 選 考 対 象 となる 研 究 計 画 書 は、 基 礎 演 習 においてフィードバックを 受 け、修 正 したものを 提 出 してください。次 ページ 以 降 に、 各 特 定 プロジェクトの 紹 介 をしていますので、 参 考 にしてください。-23-


■ 韓 国 プロジェクト(1) 目 的 およびテーマとその 特 徴【 日 韓 関 係 の 可 能 性 と 難 しさ】 日 本 と 韓 国 の 関 係 は 長 らく「 近 くて 遠 い 国 」と 言 われてきました。しかし、1990 年 代 以 降 の 韓 国 政 治 の 民 主 化 の 進 展 、 金 大 中 政 権 から 始 まった 大 衆 文化 開 放 政 策 、2002 年 の 日 韓 ワールドカップ 共 催 、2004 年 ごろからの「 韓 流 」と 言 われる 韓国 の 映 像 文 化 や 大 衆 音 楽 への 関 心 の 高 まりなどの 要 因 で、 日 韓 関 係 は 大 いに 親 密 なものになりました。2009 年 度 は 韓 国 から 日 本 への 旅 行 客 数 が 円 高 ・ウォン 安 の 影 響 もあって 約 159万 人 と 大 幅 に 減 少 したが、それでも 最 も 訪 韓 旅 行 者 が 多 い 国 であり、 日 本 から 韓 国 への 旅 行客 数 は 約 250 万 人 と、 相 互 交 流 が 最 も 盛 んな 国 どうしとなっています。これにともない、 日本 人 の 韓 国 朝 鮮 語 学 習 者 も 相 当 に 増 えてきました。いっぽうで、 両 国 間 には 領 土 問 題 、 靖 国 神 社 問 題 、 歴 史 認 識 問 題 など 困 難 な 課 題 も 残 されたままです。 昨 今 は「 韓 流 」ブームと 裏 腹 にインターネットやマンガの 世 界 で 韓 国 ・ 朝 鮮 ・在 日 にまつわる 現 象 を 嫌 悪 する「 嫌 韓 流 」がちょっとしたブームにもなりました。「 韓 流 」と「 嫌 韓 流 」は 日 本 人 の 韓 国 朝 鮮 観 の 二 面 性 を 示 す 合 わせ 鏡 のようなものなのかもしれません。そして、 日 韓 関 係 は 改 善 する 条 件 が 着 実 に 整 いつつもあるが、いつ 関 係 悪 化 するかもしれない 危 やうさもはらんでおり、わたしたちはその 両 面 を 冷 静 にとらえて、 理 性 的 な 判 断 をすることが 求 められているのだと 思 います。【テーマ】このプロジェクトでは、 上 記 のような 現 状 認 識 にもとづいて、「 日 韓 関 係 についての 総 合 的 研 究 」をテーマとします。 各 自 の 問 題 意 識 をあたためながら 個 人 の 研 究 課 題 を 明確 にしつつ、グループワークの 手 法 も 取 り 入 れて、 韓 国 社 会 を 研 究 対 象 とする 研 究 に 取 り 組んでもらいます。【 日 韓 学 生 ワークショップ】 海 外 スタディの 中 心 に、 釜 山 広 域 市 影 島 区 にある 国 立 韓 国 海 洋大 学 国 際 学 部 東 アジア 学 科 「 日 本 学 会 」の 学 生 たちと 共 同 して 実 施 するワークショップを 据えます。 日 韓 の 学 生 がチームを 組 んで、フィールドワーク、 討 論 会 、 交 流 会 などを 行 います。年 に 1~2 回 は 韓 国 海 洋 大 の 学 生 を 京 都 に 招 きワークショップを 行 う 相 互 訪 問 プログラムで、年 を 重 ねるに 連 れ 友 好 の 輪 が 広 がり、 深 まっています。韓 国 海 洋 大 学 は 釜 山 広 域 市 影 島 区 に 位 置 する 国 立 総 合 大 学 です。 海 員 養 成 の 学 校 を 前 身 としていますが、 現 在 は 海 事 ・ 海 洋 科 学 技 術 ・ 工 科 ・ 国 際 の 4 学 部 と 大 学 院 をそなえており、国 際 学 部 は 立 命 館 大 学 でいうならば 政 策 科 学 部 と 国 際 関 係 学 部 を 合 わせたような 教 学 内 容となっています。「 日 本 学 会 」の 学 生 たちは 日 本 語 能 力 が 高 い 人 が 多 いのですが、 日 本 語 を専 攻 しているわけではなく、 日 本 の 歴 史 ・ 文 化 ・ 社 会 に 対 する 幅 広 い 関 心 を 持 っています。【 目 的 】このプロジェクトの 獲 得 目 標 は、 自 分 の 関 心 に 応 じて 様 々な 研 究 手 法 を 試 み、 基 礎的 な 研 究 能 力 を 身 につけることにあります。また、グループによる 研 究 活 動 を 通 じて、 東 アジアにおいて 平 和 で 友 好 的 な 地 域 秩 序 を 形 成 するために、わたしたちはなにからどのように取 り 組 めばいいのかを 考 えていきたいと 思 います。(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特 徴韓 国 海 洋 大 学 の 学 生 とともに 釜 山 広 域 市 およびその 近 郊 でフィールドワークを 実 施 します。 日 韓 関 係 に 関 連 する 近 現 代 遺 跡 ・ 戦 争 遺 跡 の 調 査 のほか、 参 加 者 の 研 究 テーマにそくした 現 場 を 訪 問 します。 参 加 者 の 研 究 テーマ、 希 望 、スケジュールに 応 じて 釜 山 以 外 の 地 域 も訪 問 します。2010・2008 年 度 はソウルの 淑 明 女 子 大 学 で 授 業 に 参 加 し、プレゼンテーションとアンケート 調 査 を 実 施 しました。2008 年 度 はソウルで 政 府 関 係 機 関 の 調 査 を 行 い、 慶州 でフィールドワークを 行 いました。2007 年 度 はソウルで 高 校 訪 問 と 政 府 関 係 機 関 の 調 査を 実 施 しました。(3) 受 講 生 が 負 担 することとなる 概 算 費 用総 額 は、 日 数 と 見 学 先 によって 変 化 します。 以 下 は 大 体 の 目 安 です。■ 往 復 交 通 費 約 30000 円 程 度 ( 大 阪 港 からフェリー 利 用 の 場 合 )■ 宿 泊 費 ・ 現 地 交 通 費 ・ 食 費 ・ 交 流 会 会 費 など 約 50,000 円 程 度-24-


ツアーを 組 んで 立 派 なホテルに 宿 泊 するような 旅 行 ではありません。 公 共 交 通 機 関 を 利 用し、 庶 民 的 な 食 堂 で 食 事 をし、 韓 国 の 普 通 の 学 生 さんたちと 同 様 の 生 活 を 体 験 します。 日 程にもよりますが、 出 発 前 に 徴 収 する 金 額 が 5 万 円 程 度 、 現 地 滞 在 費 3 万 円 程 度 を 見 込 んでおいてください。(4) 選 考 方 法研 究 計 画 書 と 志 望 理 由 書 を 提 出 してください。・ 志 望 理 由 書 :「 日 韓 関 係 にかんする 研 究 計 画 と 海 外 スタディで 学 びたいこと」研 究 計 画 との 関 係 で、 韓 国 を 訪 問 するときに 何 をしたいか、どこを 訪 問 したいかを具 体 的 に 書 いてください。・ 志 望 理 由 書 の 書 式 :A4 サイズで 1~2 枚 ( 書 式 は 自 由 )MS-WORD で 作 成 。 氏 名 と 学 籍 番 号 を 明 記 すること。(5)その 他1) 韓 国 スタディツアー夏 期 休 業 中 にじっさいに 全 員 で 韓 国 を 訪 れるスタディツアーを 行 います。 詳 細 はプロジェクトメンバーが 確 定 してから 時 間 をかけて 検 討 していくことになりますが、どのような 事 情があろうとも 海 外 スタディツアーに 参 加 することが 単 位 取 得 の 必 要 条 件 となります。2009年 度 は 9 月 7 日 から 14 日 の 7 泊 8 日 ( 船 中 2 泊 )でした。また、 韓 国 の 学 生 を 日 本 に 招 くワークショップにも 可 能 な 限 り 参 加 してもらうことになります。2) 言 語 の 学 習交 流 相 手 の 学 生 の 多 くはかなりの 日 本 語 能 力 を 有 していますが、 日 本 人 として 韓 国 になんらかの 関 心 をもち 現 地 に 赴 くのですから、ある 程 度 の 語 学 学 習 を 行 うことは 基 本 であり、 礼儀 であると 思 います。 韓 国 語 をある 程 度 ( 挨 拶 と 自 己 紹 介 ができて、 買 い 物 や 交 通 機 関 の 利用 に 困 らない 程 度 ) 学 習 をする 必 要 があることを 理 解 して 応 募 してください。 参 加 者 のみなさんと 相 談 しながら、ガイダンス、 学 習 会 、 事 前 指 導 などを 実 施 します。-25-


■ カンボジアの 地 方 行 政 と 国 際 化 ・ 国 際 協 力 プロジェクト(1) 目 的 およびテーマとその 特 徴カンボジアは、かつてのポルポト 政 権 時 代 に、 知 識 層 の 虐 殺 が 行 われ、 内 戦 状 態 となり、国 家 制 度 の 崩 壊 を 経 験 している。その 中 から 誕 生 した 現 在 の 政 権 は、 国 の 制 度 の 再 整 備 を 行い、 新 しい 政 策 を 積 極 的 に 打 ち 出 している。その 中 で、カンボジアの 地 方 行 政 、 殊 に、 現 在 行 われている 地 方 分 権 化 政 策 を 日 本 の 地 方分 権 の 文 脈 との 対 比 において 見 てみること 及 び 日 本 の 国 際 協 力 の 状 況 を 直 接 、 眼 で 確 かめることが、 本 プロジェクトの 中 心 的 課 題 である。まず、 地 方 分 権 化 政 策 についてみると、 現 在 、カンボジアにおいては、 地 方 公 務 員 は 存 在しない。つまり、 公 務 員 は 全 て 国 家 公 務 員 という 中 央 集 権 的 な 行 政 制 度 となっている。しかし、その 中 で、 地 方 分 権 化 、 地 方 への 権 限 分 散 を 目 指 したD&D(Decentralisation andDeconcentration) 政 策 が 進 められている。2002 年 に、 新 制 度 での 初 の 地 方 選 挙 が、 基礎 的 自 治 体 (Commune)のレベルで 実 施 され、(2007 年 に2 度 目 が 実 施 ) 咋 年 5 月 に新 しい 地 方 行 政 の 組 織 に 関 する 法 律 が 施 行 されるなど、この 政 策 がまさに 推 し 進 められているところである。そこでは、 最 小 の 自 治 体 であるコミューンを 梃 子 にした 住 民 自 治 の 振 興 、地 方 分 権 化 が 進 められており、その 内 容 は、 我 が 国 の 地 方 自 治 を 考 えるに 際 しても、 非 常 に参 考 になるものと 思 われる。もう 一 点 は、 我 が 国 の 国 際 協 力 である。カンボジアは 我 が 国 の 重 点 援 助 対 象 国 の 一 つであり、 多 くの 形 での 援 助 が 行 われているが、JICA 資 料 によれば、その 実 績 は、2007 年において、インドネシア、ベトナム、フィリピンに 次 いでいる。その 実 際 に 触 れることは、日 本 の 国 際 協 力 についての 理 解 を 深 めるために 役 立 とう。具 体 的 には、 首 都 プノンペンにおいて、カンボジアの 地 方 行 政 関 連 省 庁 におけるブリーフィング、 我 が 国 の 援 助 関 係 機 関 或 いは 各 国 の 援 助 機 関 、 援 助 団 体 (NGO) 等 への 訪 問 を 行うとともに、 地 方 行 政 機 関 、 日 本 の 援 助 の 現 場 等 を 視 察 する。また、 首 都 以 外 の 地 方 においても、 地 方 行 政 機 関 、 日 本 の 援 助 の 現 場 等 を 視 察 する。なお、 可 能 であれば、プノンペンで 現 地 の 大 学 との 交 流 事 業 も 実 施 する。(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特 徴カンボジアは、 内 戦 による 国 土 の 荒 廃 の 中 から、いま、 急 速 に 復 興 を 遂 げつつある。 最 近は 世 界 的 な 不 況 の 影 響 を 受 けつつも、 基 調 的 には 成 長 を 続 けるなど、 経 済 の 発 展 が 著 しい。その 中 で、 新 しく 国 の 制 度 の 整 備 に 取 り 組 んであるが、 内 戦 中 に 知 識 層 の 大 半 を 失 った 痛 手もあり、 自 国 だけで、 十 分 な 担 い 手 がいる 訳 ではない。こうしたことから、 地 方 自 治 制 度 などの 国 家 制 度 の 整 備 についての 技 術 援 助 の 対 象 となっている。また、 一 旦 、 内 戦 によってそれ 以 前 の 制 度 が 途 絶 えており、そこに 新 しい 制 度 を 樹 立 しようとしているところに、カンボジアの 状 況 のユニークさがある。(3) 受 講 生 が 負 担 することとなる 概 算 費 用スケジュールが 確 定 していない 現 在 、 正 確 に 割 り 出 すことは 困 難 だが、 航 空 賃 、 滞 在 費 を含 め、20 万 円 程 度 と 見 積 もられる。なお、 現 在 、 考 えている 日 程 の 概 要 は、 次 のようなものである。第 1 日 大 阪 発 ( 乗 り 継 ぎ)プノンペン 着第 1 日 ~ 第 5 日 プノンペンに 宿 泊 しつつ、 市 内 及 び 周 辺 で 調 査 、ブリーフィング 等第 6 日 シェムリアップに 移 動第 7 日 ~ 第 9 日 シェムリアップ 周 辺 で 遺 跡 修 復 等 を 調 査第 10 日 カンボジア 発第 11 日 大 阪 着(4) 選 考 方 法「 研 究 計 画 書 」( 基 礎 演 習 の 成 果 物 )により 選 考 する-26-


■ 中 国 プロジェクト(1) 目 的 およびテーマとその 特 徴【 目 的 】 東 アジアの 経 済 圏 ならびに 東 アジア・ビジネス 圏 は、 現 在 新 たな 発 展 の 局 面 に 入 っている。その 中 でも、とりわけ 日 本 と 中 国 における 経 済 ・ビジネス・ 文 化 交 流 における 進 化が 大 きく 注 目 されている。こうした 状 況 の 中 で、 本 プロジェクトは 中 国 東 北 部 に 位 置 する 遼寧 省 の 瀋 陽 市 や 大 連 市 を 中 心 に、 地 方 政 府 機 関 (e.g. 高 新 技 術 産 業 園 区 管 理 委 員 会 )、 企業 ( 国 有 企 業 、 民 営 企 業 、 日 系 企 業 )や 大 学 機 関 を 研 究 対 象 に 位 置 づけながら、 中 国 東 北 地方 の 経 済 ・ビジネス・ 文 化 圏 における 現 状 、ならびにこの 地 域 が 抱 える 課 題 について「フィールド・ワーク」や「インタビュー 調 査 」を 通 じて 明 らかにするとともに、 政 策 的 な 含 意 を導 出 することを 究 極 的 な 目 標 としている。【テーマ】 中 国 の 中 では「 東 北 地 方 」を 研 究 対 象 地 域 に 設 定 した 理 由 として、 学 生 がこの 地域 に 対 する 現 地 調 査 を 通 じて、 中 国 の「 過 去 」と「 現 在 」およびその 発 展 軌 跡 を 同 時 に 観 察することができるからである。この 地 域 は 中 国 建 国 当 初 において、いち 早 く 重 化 学 工 業 基 地として 建 設 され、 中 国 経 済 を 牽 引 してきたものの、1970 年 代 末 に 始 めた「 改 革 開 放 」 政 策以 降 、 他 の 地 域 に 比 べて 立 ち 遅 れが 生 じており、 現 在 「 旧 工 業 基 地 の 振 興 」は 大 きな 発 展 課題 となっている。その 意 味 で、この 地 域 に 関 わる 研 究 テーマの 具 体 的 な 内 容 については 実 に様 々な 広 がりと 可 能 性 がある。 研 究 テーマとして、1「 中 国 東 北 地 方 における 地 域 ( 経 済 )活 性 化 と 地 方 政 府 の 役 割 」、2「 中 国 国 有 企 業 の 組 織 改 革 (コーポレート・ガバナンス)」、3「 中 国 東 北 地 方 の 人 材 育 成 における 大 学 等 機 関 の 役 割 」、4「 中 国 企 業 における 社 会 的 責任 の 可 能 性 」、5「 地 方 政 府 政 策 における 現 状 と 課 題 」、6「 東 北 振 興 戦 略 ( 旧 工 業 基 地 振 興政 策 )における 地 方 政 府 の 役 割 」、7「 東 北 地 方 における 産 官 学 連 携 の 現 状 と 課 題 」、8「 外資 誘 致 政 策 と 日 系 企 業 の 経 営 活 動 」などが 考 えられるが、もちろん 完 全 にそれらにとらわれる 必 要 はない。 研 究 テーマについては、 学 生 諸 君 が 事 前 学 習 を 積 み 重 ねていく 中 で 深 化 していくので、それぞれの 知 的 ニーズに 応 じて 柔 軟 に 変 えていきたいと 考 えている。【 日 中 学 生 ワークショップ】 本 プロジェクトは、 本 学 部 学 生 と 現 地 大 学 生 との 間 における 積極 的 な 交 流 の 場 ( 討 論 会 ・ 意 見 交 換 会 )を 整 えたいとも 考 えている。 異 文 化 間 でのコミュニケーションを 通 じて 政 策 的 な 視 野 や 世 界 観 を 広 げることをその 狙 いとしている。(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特 徴場 所 ( 遼 寧 省 ): 瀋 陽 市 、 大 連 市対 象 : 渡 航 先 地 域 の 地 方 政 府 機 関 (e.g. 高 新 技 術 産 業 園 区 管 理 委 員 会 )、 企 業 ( 国 有 企業 、 民 営 企 業 、 日 系 企 業 )、 大 学 、JETRO 大 連 事 務 所 などを 予 定 している。方 法 : 問 題 意 識 を 明 確 にするために、まずは 学 内 において 先 行 研 究 をしっかり 整 理 することから 始 める。それを 踏 まえた 上 で、 調 査 対 象 機 関 ( 企 業 )において「フィールド・ワーク」ならびに「インタビュー 調 査 」などを 実 施 する。(3) 受 講 生 が 負 担 することとなる 概 算 費 用概 ね 一 人 あたり 18 万 円 程 度 ( 航 空 運 賃 や 為 替 レートの 変 動 で 多 少 増 減 することがある)その 内 訳 は、 往 復 航 空 運 賃 8~10 万 円 / 人 + 現 地 調 査 費 ( 現 地 移 動 費 用 も 含 む)8 万 円 / 人を 考 えている。ただし、9 月 上 旬 に 渡 航 する 場 合 では、 費 用 は 一 人 あたり 15 万 円 前 後 ( 内訳 は、 往 復 航 空 運 賃 6~7 万 円 / 人 + 現 地 調 査 費 ( 現 地 移 動 費 用 も 含 む)8 万 円 / 人 )に 下がることが 期 待 できる。(4) 選 考 方 法志 望 理 由 書 と 研 究 計 画 書 を 提 出 する 必 要 がある。志 望 理 由 書 [1]:「 中 国 プロジェクトに 関 する 志 望 理 由 書 」研 究 計 画 書 [2]:「 中 国 東 北 地 方 ( 瀋 陽 市 および 大 連 市 )で 何 を 学 びたいのか」書 式 :A4、ワープロで 横 書 き( 書 式 は 自 由 、ただし[1][2] 合 わせてホチキス 止 めすること)字 数 :[1][2]それぞれ 各 1500 字 前 後 を 標 準 とする。-27-


(5)その 他1) 調 査 行 程 は、7 月 上 旬 から 9 月 上 旬 までに 詰 めていくことになるが、 詳 細 ( 訪 問 先 や日 程 )については、 本 プログラム 参 加 者 諸 君 と 吟 味 ・ 検 討 した 上 で 決 定 する。 滞 在 期 間 としては 概 ね 7 日 〜8 日 間 前 後 を 予 定 している。 日 程 案 ( 下 記 参 照 )は、あくまでひとつのモデルであり、 訪 問 先 が 決 定 していることを 意 味 するものではない。2) 事 前 にどれだけ 学 習 をしておくかでフィールド・ワークの 成 果 と 意 義 は、 大 きく 変 わってくる。したがって、 本 プロジェクトでは 出 発 前 の 事 前 学 習 にかなりの 力 点 をおいている。3) 中 国 へ 初 めて 渡 航 する 方 については 特 にお 腹 を 壊 す 可 能 性 が 高 い。その 大 半 の 原 因 は「 水 」にあるが、 学 生 諸 君 には 飲 料 水 に 限 らず、 歯 磨 きやうがいを 含 めため 水 に 細 心 の 注 意が 必 要 になる。 滞 在 期 間 中 は、 事 前 に 決 めた 細 かな 注 意 やルールをしっかりと 守 ることが 最低 限 のマナーとして 求 められる。12345672011 年 度 研 究 入 門 フォーラム・ 中 国 プロジェクト( 瀋 陽 市 ・ 大 連 市 ) 日 程 表 ( 案 )日 活 動 内 容 宿 泊9 月 3 日 大 阪 関 西 14:20→(CZ632)→ 瀋 陽 15:30 ( 予 定 )☆( 土 ) 到 着 後 開 校 式9 月 4 日( 日 )9 月 5 日( 月 )9 月 6 日( 火 )9 月 7 日( 水 )9 月 8 日( 木 )9 月 9 日( 金 )午 前 世 界 遺 産 瀋 陽 故 宮 博 物 院 見 学午 後 遼 寧 省 社 会 科 学 院 訪 問 ( 瀋 陽 市 の 振 興 策 、 国 有 企 業 改 革 の 講 義 )午 前 瀋 北 新 区 管 理 委 員 会 訪 問 ( 政 府 機 関 )午 後 瀋 陽 市 内 観 光午 前 瀋 陽 機 床 集 団 見 学 ( 国 有 企 業 )午 後 専 用 車 瀋 陽 ⇒ 大 連 (or 列 車 利 用 )午 前 日 本 貿 易 振 興 機 構 (JETRO) 大 連 事 務 所 訪 問午 後 大 連 経 済 技 術 開 発 区 管 理 委 員 会 訪 問 ( 政 府 機 関 )三 菱 重 工 叉 車 ( 大 連 ) 有 限 公 司 見 学 ( 日 系 企 業 )午 前 大 連 億 達 集 団 見 学 ( 民 営 企 業 )大 連 ソフトウェア・パーク 見 学 ( 産 官 学 連 携 の 典 型 事 例 )午 後 東 北 財 経 大 学 公 共 管 理 学 院 教 授 による 講 義 ( 東 北 振 興 策 、 大 連 振 興 策 )午 前 閉 校 式 ・ 現 地 調 査 総 まとめ午 後 大 連 市 内 観 光 ・ 帰 国 準 備☆☆○○○○89 月 10 日( 土 )大 連 10:30→(CZ637)→ 大 阪 関 西 13:30 ( 予 定 )【 滞 在 先 ( 予 定 )】☆ 瀋 陽 市 : 瀋 陽 金 杯 商 務 酒 店○ 大 連 市 : 川 王 府 陽 光 酒 店 ( 中 山 路 店 )( 見 学 ・インタビューの 様 子 [イメージ 画 ])-28-


■ フランスプロジェクト(1) 目 的 及 びテーマとその 特 徴研 究 テーマ「フランスにおける 持 続 可 能 な 都 市 づくりと 時 間 政 策 ―まちなみ 保 全 ・エコ 交 通 ・ワークライフバランス」近 年 、ヨーロッパの 都 市 政 策 で 理 念 とされているのが、「 持 続 可 能 な 発 展 (サスティナブル・ディベロップメント)」です。 都 市 における「 持 続 可 能 な 発 展 」とは、1 経 済 的 に 安 定した 発 展 を 遂 げること、2 環 境 に 優 しい 都 市 であること、3 社 会 的 に 公 正 であること、の 三要 素 から 構 成 されます。フランスの 各 都 市 もこれら 三 要 素 を 上 手 く 両 立 しながら 持 続 可 能 な 発 展 を 遂 げるための政 策 づくりを 行 っています。本 プロジェクトでは、フランスのパリ 市 、リヨン 市 をフィールドにして、フランスの「 持続 可 能 な 都 市 づくり」を 研 究 していきます。とりわけ、1 都 市 の 歴 史 的 アイデンティティを 保 全 するためのまちなみ 保 存 政 策 、2 環 境に 優 しい 移 動 手 段 を 実 現 する 交 通 政 策 、3 各 人 の 生 活 の 質 を 高 め、ワークライフバランスを実 現 するための 時 間 政 策 の 三 つをプロジェクトのテーマに 設 定 して 研 究 を 進 めて 行 ければ、と 考 えています。(2) 調 査 対 象 (フィールド) 及 びその 特 徴パリやリヨンには、 歴 史 的 建 造 物 保 全 地 区 が 多 く 存 在 し、 制 度 によってまちなみを 守 ってきました。この 制 度 は、 建 築 を 規 制 するだけではなく、 老 朽 化 した 建 物 を 修 復 ・ 再 生 するための 事 業 を 実 施 する 仕 組 みも 伴 います。 民 間 からの 融 資 もまちなみ 再 生 に 呼 び 込 むことができるため、まちなみ 再 生 が 採 算 性 ある 事 業 として 拡 大 してきました。 他 方 で、 従 来 の 住 民 が家 賃 の 高 騰 や 過 度 の 観 光 地 化 で 退 出 を 余 儀 なくされるという 問 題 (これは、ジェントリフィケーションと 呼 ばれています)も 起 こっています。 近 年 では、まちなかでの 社 会 階 層 の 多 様性 を 確 保 したり、 条 件 の 悪 い 民 間 住 宅 の 環 境 を 改 善 したり、するために 公 的 機 関 が 空 き 屋 化しつつある 集 合 住 宅 を 買 い 取 ってリフォームした 上 で、 低 廉 な 家 賃 の 社 会 住 宅 として 供 給 するといった 事 業 が 進 んでいます。この 事 業 手 法 は、 空 き 屋 が 増 大 しつつある 日 本 の 歴 史 的 市街 地 においても 参 考 になるでしょう。パリやリヨンは、 最 近 、 自 転 車 共 有 システムを 導 入 し、 環 境 に 優 しい 移 動 手 段 を 整 備 しました。しかし、このような 便 利 な 仕 組 みをまちなかにおいてのみ 供 給 するのではなく、 経 済的 弱 者 が 住 まう 郊 外 においていかに 拡 大 するのか、ということが 現 在 の 政 策 争 点 になっています。政 策 科 学 にとって 注 目 されるのは、ヨーロッパにおける 時 間 政 策 (politique temporelle)と 呼 ばれる 政 策 体 系 の 発 展 です。これまでの 都 市 計 画 は、 市 場 の 圧 力 によって 拡 大 する 都 市を 制 御 づけるという 空 間 的 な 秩 序 づけが 行 われてきました。しかし、 人 々の 労 働 時 間 や 余 暇の 過 ごし 方 が 多 様 化 する 中 で、 都 市 に 住 まう 人 々の 生 活 の 質 を 保 証 するには、 都 市 拡 大 防 止という 空 間 的 な 秩 序 づけのみならず、 各 生 活 者 において 主 観 的 に 現 象 する「 時 間 のリズム」がバランスの 取 れたゆとりあるものであるのか、という 点 が 問 題 化 されるようになってきました。時 間 政 策 とは、 各 部 局 で 縦 割 り 的 に 実 施 されている 都 市 政 策 を、「 時 間 」という 観 点 から評 価 し、 時 間 の 質 が 高 まるための 施 策 を 提 案 していく 新 たな 都 市 政 策 のことです。リヨンやパリには、このような 政 策 を 担 当 する 時 間 局 という 部 局 が 存 在 し、ワークライフバランスの実 現 、 交 通 アクセスの 改 善 、 子 育 て 支 援 の 充 実 、 週 末 の 夜 の 賑 わいの 演 出 といった 施 策 が 時間 政 策 の 名 の 下 で 実 現 しています。本 プロジェクトは、まちなみ 保 全 、 交 通 政 策 、 時 間 政 策 の 三 テーマについての 政 策 担 当 者を 訪 問 し、 現 地 でフィールドワークを 行 うことで、フランスにおける 持 続 可 能 な 都 市 政 策 の内 実 に 迫 ることを 目 的 とします。(3) 受 講 生 が 負 担 することとなる 概 算 費 用 (8 日 間 程 度 )費 用 :およそ 35 万 円 ( 航 空 運 賃 、ホテル 代 、フランス 内 移 動 交 通 費 、 保 険 代 、 食 事 代 など)時 期 としては、9 月 中 旬 から 下 旬 までの 8 日 間 程 度 を 予 定 しています。-29-


(4) 選 考 方 法本 プロジェクト 志 望 者 は、 研 究 計 画 書 (フィードバックを 受 けて 修 正 したもの)および 下記 応 募 レポートを 提 出 してください。1 なぜ 本 プロジェクトを 志 望 したのか (300 字 程 度 )2 本 プロジェクトにおいて 主 体 的 に 担 いたい 役 割 (300 字 程 度 )3 自 己 アピール(フランス 語 ・ 英 語 運 用 能 力 、 企 画 運 営 能 力 、 行 動 実 践 能 力 など)(300 字 程 度 )フランス 語 学 習 歴 がある 方 が 望 ましいといえば、そうですが、そうでない 方 は、4 月 からNHK のラジオ 講 座 などで 学 習 し、 買 い 物 や 公 共 交 通 の 利 用 を 自 分 でできる 程 度 の 会 話 力 を 身につけるようにしてもらいます。現 地 のフィールドワークでは、 引 率 者 が 通 訳 をします。ただし、 自 分 自 身 で、 事 前 に 質問 文 を 練 って、フランス 語 で 作 文 していき( 既 習 者 の 協 力 を 仰 ぎつつ)、 自 分 の 声 で 質 問 することを 目 標 にして 進 めていってもらいます。-30-


■ 英 国 プロジェクト(1)プロジェクトの 目 的 および 研 究 のテーマとその 特 徴現 在 の 日 本 には、さまざまな 政 策 課 題 があるが、 若 者 にとって 最 も 関 心 が 高 い 課 題 の1つが「 雇 用 問 題 」だろう。 若 者 の 雇 用 減 は、 経 済 のグローバル 化 に 対 応 した 日 本 企 業 の 海 外 現 地化 と、 国 内 での 既 存 正 社 員 の 「 長 期 雇 用 保 障 の 慣 習 」 維 持 の 結 果 で あ る 。その 上 、 日 本 企 業 は 外 国 人 の 採 用 を 積 極 的 に 推 進 し 始 めた。 日 本 の 若 者 は、 日 本 国 内の 縮 小 する 雇 用 を、 日 本 人 同 士 だけでなく 外 国 の 若 者 とも 奪 い 合 うことになった。 一 方 、 日本 の 外 に 目 を 向 けると、 中 国 などアジアでは 日 系 企 業 の 現 地 法 人 も、 外 資 系 企 業 も 採 用 数 を増 やし、ジョブ・マーケットが 拡 大 している。しかし、 海 外 で 日 本 の 若 者 が 就 職 するのは 困難 である。ここでは 中 国 、 香 港 、シ ン ガ ポ ー ル 、マ レ ー シ ア な ど の 、 欧 米 で 高 等 教 育を 受 けた 若 者 たちが 競 い 合 っている。また、 欧 米 からも 多 数 の 高 学 歴 の 若 者 がアジアでの 就 職 を 希 望 し 参 入 している。この 競 争 に 語 学 やビジネススキルの 習 熟 度が 低 い 日 本 の 若 者 は 勝 ち 抜 けないのが 現 状 だ。本 プロジェクトでは、 日 本 の 若 者 がますますグローバル 化 するビジネスの 競 争 に 生 き 残 る「 国 際 競 争 力 」を 獲 得 するためにどうすべきかを 追 究 する。そして 最 終 的 には、 日 本 の 大 学の 人 材 育 成 、 企 業 の 雇 用 戦 略 のあり 方 、そして 政 府 の 雇 用 政 策 に 対 して、 政 策 科 学 的 な 観 点からの 提 言 を 目 指 したい。調 査 対 象 は 英 国 である。 英 国 は、 経 済 規 模 (GDP)が 世 界 5-6 位 だが、 英 語 が 世 界 標 準 語 であり、かつて 覇 権 国 として 世 界 の 枠 組 み・ 制 度 を 作 り 上 げたノウハウや 知 識 を 蓄 積 し、 英 連邦 ( 旧 大 英 帝 国 植 民 地 )などの 世 界 的 な 人 脈 ネットワークを 持 つ。この 優 位 性 から、 英 国 は「グローバル・ハブ 国 家 」として、 金 融 、 法 律 、 会 計 、コンサルタントなどの 高 度 サービスの 中 心 となっている。また、 英 国 の 大 学 は、 留 学 生 比 率 が 学 部 で 10%、 大 学 院 で 42%と 高く、アジアなど 世 界 中 のビジネス 市 場 に 優 秀 な 人 材 を 輩 出 している。 英 国 を 調 査 することは、世 界 の 若 者 やグローバル・ビジネスの 動 向 を 探 るには 最 適 だと 考 える。本 プロジェクトは 原 則 として 日 本 語 で 運 営 する。プロジェクト 開 始 時 に 英 語 ができなくても 参 加 できる。しかし、プロジェクトでの 作 業 を 通 じて、 一 般 的 な 英 会 話 と 異 なる「 業 務 用スキル」としての 英 語 能 力 を 学 生 が 身 につけるよう 考 える。 具 体 的 には、 研 究 計 画 書 や 質 問票 の 作 成 、 訪 問 先 の 開 拓 やアポ 取 り( 基 本 的 に 教 員 のコネクションを 使 えるが)、 現 地 での聞 き 取 り、 調 査 後 のお 礼 状 、 報 告 書 作 成 など 一 連 の 作 業 を、できるかぎり 英 語 を 用 いて 行 う。これらの 訓 練 は、 学 生 の「 国 際 競 争 力 」 向 上 に 直 結 するものでもある。(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特 徴本 プロジェクトは、 上 記 目 的 を 達 成 するために、 国 内 外 で 調 査 を 実 施 する。国 内 では 厚 生 労 働 省 ・ 文 部 科 学 省 の 資 料 や 文 献 のサーベイや、 留 学 生 (APU、 衣 笠 )、 海外 留 学 経 験 のあるビジネスマン、 外 国 人 の 採 用 増 を 検 討 する 企 業 へのヒアリングを 行 う。英 国 では、 英 国 の 大 学 および 英 国 の 日 系 企 業 を 訪 問 調 査 する。 具 体 的 には、1 英 国 の 大 学に 留 学 している 世 界 の 若 者 と 実 際 に 交 流 し、 彼 らの 能 力 ・ 人 間 性 を 知 ること、2 大 学 の 国 際部 ・ 就 職 部 へのヒアリングから「 人 材 育 成 」の 方 針 を 確 認 する、3ロンドンの 日 系 企 業 現 地法 人 を 訪 問 し、その 雇 用 戦 略 とグローバル・ビジネスが 求 める 人 材 像 を 知 ること、 等 を 調 査の 目 的 とする。(3) 受 講 生 が 負 担 することになる 概 算 費 用 ( 英 国 訪 問 調 査 )日 程 :2011 年 9 月 ( 後 期 セメスター 開 始 まで)10 日 程 度 。費 用 、およそ 30 万 円 ( 航 空 運 賃 、 朝 食 付 きホテル、 保 険 代 、 鉄 道 移 動 費 等 )。(4) 選 考 方 法本 プロジェクト 志 望 者 は、「 研 究 計 画 書 」および「 英 国 プロジェクト 志 望 理 由 書 」として、このプロジェクトからなにが 学 びたいかをテーマに A4 サイズ・MS Word、1000 字 程 度 で作 成 し、 期 日 までに 提 出 すること。 英 語 で 執 筆 してもよい。(5)その 他 : 本 プロジェクトの 1 年 間 の 流 れ1 前 期 : 国 内 での 基 礎 文 献 調 査 、 日 本 事 情 研 究 、 研 究 計 画 の 立 案 、 留 学 生 (APU、 衣 笠 )・-31-


海 外 留 学 経 験 のあるビジネスマン・ 日 本 企 業 へのヒアリング、 現 地 調 査 計 画 の 立 案 。2 現 地 調 査 スケジュールのイメージ1 日 目 :ロンドンへのフライト、ロンドン 着 。2 日 目 :ロンドン・シティでの 日 系 企 業 へのインタビュー 調 査 (1)。3 日 目 :ロンドン・シティでの 日 系 企 業 インタビュー 調 査 (2)。ロンドン 市 内 観 光 。ロンドン 市 内 パブ 見 学 。4 日 目 :コベントリー 市 へ 移 動 。ウォーリック 大 学 で 日 本 人 留 学 生 と 交 流 。5 日 目 :ウォーリック 大 学 国 際 部 ・ 就 職 部 へのインタビュー 調 査 。アジアからの 留 学 生 へのインタビュー 調 査 。6 日 目 :プレゼン 準 備 。7 日 目 :ウォーリック 大 学 の 留 学 生 を 交 えてワークショップ。プレゼンテーション8 日 目 :オックスフォード 観 光 、ロンドンへ 移 動 。9 日 目 : 関 空 へのフライト。10 日 目 : 朝 、 関 空 に 到 着 。3 後 期 : 現 地 調 査 を 踏 まえて、その 分 析 を 行 い、 研 究 報 告 会 、 報 告 書 作 成 ( 英 語 による)を 行 う。質 問 等 があれば、 上 久 保 まで(masatok@fc.ritsumei.ac.jp) 連 絡 してください。以 上-32-


■ ドイツプロジェクト(1) 目 的 およびテーマとその 特 徴日 本 に 先 んじて 工 業 化 したドイツでは、 経 済 発 展 に 伴 って 国 内 で 豊 富 に 産 する 石 炭 の 燃 焼により 酸 性 雨 を 引 き 起 こし、「 黒 い 森 」(Schwarzwald)の 木 々が 枯 死 するなどの 深 刻 な 被 害を 招 くといった「 公 害 先 進 国 」となったことがあるが、この 反 省 から 環 境 問 題 への 対 応 に 国を 挙 げて 取 り 組 んで「 環 境 先 進 国 」と 呼 ばれるに 至 っている。ドイツに 遅 れて 公 害 先 進 国 となった 日 本 は、 特 に 最 近 20 年 ほどドイツの 環 境 先 進 事 例 を 学 び 続 け、 環 境 先 進 国 への 道 を歩 みつつある。このプロジェクトでは、ドイツでの 環 境 に 関 わる 政 策 や 企 業 ・ 市 民 による 活 動 事 例 を、 現地 で 直 接 携 わっている 組 織 主 体 への 訪 問 調 査 等 を 通 して 調 査 し、 日 本 の 事 情 と 比 較 しつつ、そうした 事 例 を 日 本 において 適 用 する 上 での 含 意 を 得 ることを 主 要 なテーマとする。もちろん、 環 境 といっても 焦 点 が 当 てられるべきものには 生 態 系 保 全 、 大 気 環 境 、 廃 棄 物 などのバリエーションがあり、 政 策 や 活 動 の 内 容 としても 国 、 州 ・ 自 治 体 レベルでの 規 制 的 ・ 経 済 的措 置 、 環 境 調 和 型 の 都 市 設 計 から、 教 育 、 環 境 経 営 、エコツーリズムに 至 るまでさまざまな着 眼 点 がありうる。 具 体 的 に 取 り 組 むテーマについては 受 講 生 の 研 究 計 画 を 踏 まえて 決 定 し、調 査 先 もそれに 応 じたものとして 具 体 化 することになるが、 主 にドイツ 南 西 部 のフライブルクおよびその 周 辺 地 域 における 大 学 、 行 政 機 関 、NPO などへの 訪 問 調 査 をアレンジしたい。環 境 政 策 の 観 点 からドイツを 調 査 した 先 行 事 例 は 極 めて 多 い。 本 プロジェクトでは 先 行 事例 の 二 番 煎 じとならぬよう、 訪 問 調 査 先 の 選 定 に 先 立 って 既 存 研 究 を 十 分 に 調 査 した 上 で 独自 の 研 究 の 焦 点 ・ 切 り 口 を 考 え、 高 い 完 成 度 をもった 研 究 計 画 を 練 り 上 げることを 重 視 する。(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特 徴主 たるフィールドは 上 述 のようにフライブルクおよびその 周 辺 地 域 とする。この 地 域 は「 黒 い 森 」に 縁 が 深 く、ドイツ 国 内 でも 特 に 環 境 問 題 に 関 してさまざまな 先 進 的 な 取 り 組 みが 行 われていることとして 知 られる。ただし、 繰 り 返 しになるが、このプロジェクトにおいて 具 体 的 にどのような 取 り 組 みに 焦 点 を 当 てるかは 受 講 生 の 研 究 計 画 次 第 であり、 調 査 訪 問先 もそれに 応 じて 決 定 されることになる。(3) 受 講 生 が 負 担 することとなる 概 算 費 用ドイツへの 訪 問 調 査 に 要 する 費 用 は 渡 航 費 、ドイツ 国 内 移 動 交 通 費 、 宿 泊 費 、 食 費 、 見学 ・ 視 察 に 要 するものをすべて 含 めて 40 万 円 程 度 と 見 積 もられる。 訪 問 期 間 は 8 月 後 半 ~9月 前 半 頃 にかけての 10 日 間 程 度 を 予 定 している。このほか、 訪 問 準 備 の 過 程 で 関 西 にあるドイツ 関 連 機 関 への 訪 問 や、 文 献 調 査 ・ 勉 強 会 を 行 う 場 合 には 別 途 費 用 が 発 生 しうる。(4) 選 考 方 法本 プロジェクトへの 参 加 希 望 者 は、「 研 究 計 画 書 ( 基 礎 演 習 でフィードバックを 受 け 修 正したもの)」に 加 えて、「ドイツプロジェクト 志 望 理 由 書 」として、1 本 プロジェクトへの 志望 理 由 、2 研 究 計 画 に 関 してこれまでに 調 査 した 書 籍 、 雑 誌 記 事 のリスト(さらに、もしも個 人 ・ 組 織 へのインタビューを 行 った 場 合 にはそのインタビュー 先 のリスト)、3 現 地 での具 体 的 な 訪 問 調 査 希 望 箇 所 とその 希 望 理 由 、4ドイツ 語 ・ 英 語 の 学 習 状 況 、の 4 点 をまとめて A4 用 紙 1~2 ページで 記 載 し( 書 式 は 自 由 )、 氏 名 ・ 学 生 証 番 号 ・RAINBOW メールアドレスを 明 記 の 上 で 提 出 すること。(5)その 他現 地 調 査 においては、 引 率 教 員 が 通 訳 等 の 協 力 を 行 うことは 可 能 であるものの、できるかぎり 受 講 生 自 身 が 現 地 の 訪 問 先 の 方 と 直 接 コミュニケーションを 図 ることが 前 提 である。 例えばその 場 での 会 話 は 難 しくとも、 事 前 の 質 問 文 作 成 などは 行 いやすいであろう。プロジェクト 志 望 者 には 高 い 語 学 力 (ドイツ 語 、 英 語 )を 必 ずしも 求 めるものではないが、 現 地 の 方と 直 接 意 思 疎 通 を 図 る 努 力 を 行 うことを 期 待 する。-33-


■ 宇 治 市 ・ 山 城 地 域 プロジェクト(1) 目 的 およびテーマとその 特 徴2006 年 度 より 政 策 科 学 部 では 宇 治 市 内 に、 京 都 府 山 城 広 域 振 興 局 とのコラボレーションによって、 地 域 研 究 交 流 拠 点 「 協 働 ラボ・うじ」を 設 置 しました。この 拠 点 を 活 用 し、宇 治 山 城 フォーラムでは 次 の3つのプロジェクトを 実 施 します。 受 講 生 はいずれかのプロジェクトを 選 んで 参 加 し、フィールドワーク・ 参 与 観 察 等 を 行 い、 地 域 に 対 して 政 策提 案 と 企 画 実 施 を 行 います。1「 特 産 品 開 発 ・ 普 及 による 山 城 地 域 活 性 化 」プロジェクト… 山 城 地 域 は 宇 治 茶 を 育 んできた 地 域 です。 京 都 府 内 では 一 番 の 宇 治 茶 の 生 産 地 であり、お 茶 に 関 わる 歴 史 的 な 史 跡 や 行 事 、 習 慣 も 数 多 くあります。また 伝 統 的 な 京 野 菜 やタケノコの 生 産 も 盛 んです。そしてこうした 農 産 畜 産 物 を 使 った 料 理 やお 菓 子 、ジャムなどの 加 工 品を 特 産 品 として 売 り 出 し、 経 済 的 に 地 域 を 活 性 化 しようと 活 発 に 取 り 組 む 団 体 が 数 多 くあります。 本 プロジェクトではそうした 特 産 品 開 発 ・ 普 及 による 山 城 地 域 の 活 性 化 について実 践 的 に 研 究 します。まず 特 産 品 販 売 のフリーマーケットの 販 売 実 習 を 通 じて、 基 礎 的 な知 識 技 術 の 習 得 と 関 係 者 との 関 係 構 築 を 図 ります。そして 京 都 市 内 や 東 京 都 内 の 商 店 街 でそうした 特 産 品 の「アンテナショップ」 開 催 の 準 備 ・ 実 施 を 通 じて、 特 産 品 開 発 ・ 普 及 の 意 義や 課 題 について 検 討 します。2「ワークライフバランス 推 進 に 向 けたNPOと 行 政 ・ 企 業 との 協 働 促 進 」プロジェクト… 仕 事 中 心 のワークライフバランスではなく、 地 域 生 活 の 中 でのライフワークバランス。障 害 者 の 自 立 ・ 引 きこもり・DV・ 子 育 て・ 再 就 職 など 地 域 にはさまざまな 課 題 があります。地 域 の 住 民 は、 自 分 たちの 視 点 からそれら 個 々の 課 題 に 対 応 し、 悩 み 相 談 や 交 流 の 場 づくり、就 労 環 境 づくり、 子 育 て 支 援 、DV 防 止 などの 活 動 を 進 めています。 具 体 的 には 中 小 企 業 へのワークライフバランス 調 査 を 行 ったり、 子 どもたちが 主 体 となって 模 擬 的 なまちづくりを行 う「こどものまち」 開 催 の 可 能 性 を 探 ったり、ひきこもりや 障 害 のある 若 者 の 就 労 支 援 に関 わるなどの 実 践 的 なアクションリサーチを 通 して、 生 活 と 仕 事 のバランスをとりながら 生きがいをもって 生 活 できる 地 域 コミュニティのあり 方 とそれを 支 える 政 策 を 見 つけます。3「 観 光 地 域 活 性 化 NPOの 連 携 推 進 」プロジェクト…NPO 法 人 は、 行 政 でも 企 業 でもない「 第 三 の 主 体 」として、 多 様 化 するニーズや 課 題 にきめ 細 かく 対 応 しうる「 公 」の 担 い 手 の 役 割 がますます 期 待 されています。 本 プロジェクトでは、2008 年 5 月 に 政 策 科 学 部 と 京 都 府 が 共 同 で 宇 治 市 内 に 開 設 した「 京 都 府 山 城 NPO パートナーシップセンター」の 運 営 に 関 わり、NPO と 行 政 の 協 働 のあり 方 や、 具 体 的 な 推 進 方 策について 研 究 、もしくは 企 画 提 案 ・ 実 行 します。とりわけ 山 城 地 域 の 中 でも 南 部 においてはまだあまり NPO 同 士 の 連 携 がすすんでいません。また 南 部 は 比 較 的 地 域 に 密 着 してその 再生 ・ 活 性 化 に 取 り 組 んでいる 団 体 が 多 いのも 特 徴 です。 単 に 観 光 振 興 に 終 わらない 地 域 再 生への 展 開 を 考 えるため、 諸 団 体 が 連 携 してまちづくり、 人 づくりをいかに 進 めていくかをお手 伝 いしながら 考 えます。(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特徴1 山 城 地 域 について山 城 地 域 は、 京 都 府 の 南 部 にあたり、 北は 京 都 市 、 南 は 奈 良 県 、 東 は 滋 賀 県 及 び 三重 県 、 西 は 大 阪 府 と 接 しています。7 市 7町 1 村 から 成 る 地 域 で、 総 面 積 は、554 平方 キロメートルで、 京 都 府 全 体 の12.0%を占 めています。 自 然 豊 かな 地 域 であり、 桂川 、 宇 治 川 、 木 津 川 が 流 れ、 地 域 の 北 西 部-34-( 京 都 府 ホームページより)


で 合 流 し、 淀 川 へと 流 れをふくらませて 大 阪 へ 注 いでいます。このため 流 域 の 環 境 保 全の 活 動 が 盛 んになされています。 一 方 で 昔 からの 里 山 が 荒 廃 して 竹 林 が 増 えてしまい、その 伐 採 が 地 域 の 大 きな 課 題 となっています。 地 域 により 住 民 の 主 たる 年 齢 層 やライフスタイルが 大 きく 異 なり、 多 様 な 人 々が 住 む 地 域 ですが、 一 方 で 如 何 に 地 域 間 交 流 を 進 め 活 力あるまちづくりをしていくかは 永 続 的 課 題 があると 言 えるでしょう。2 宇 治 市 について宇 治 市 は 京 都 府 下 で 京 都 市 に 次 ぐ 人 口 14 万 人 の 都 市 です。ベットタウンとして 郊 外 型 で発 展 した 地 域 なので、 団 地 が 多 くあります。 新 住 民 が 多 いため 地 域 コミュニティの 形 成 が 課題 となっており、そのために NPO の 活 動 も 活 発 です。 子 育 てサークルの 活 動 や、ひきこもりの 若 者 を 支 援 する NPO なども 複 数 存 在 しています。また、 地 域 の 高 齢 者 ・ 障 害 者 の 権 利 擁 護の 活 動 を 行 う 地 域 福 祉 ネットワークの 形 成 も NPO が 主 体 となって 図 られています。(3) 受 講 生 が 負 担 することになる 概 算 費 用JR 京 都 駅 から 拠 点 のある 宇 治 駅 までは 往 復 460 円 。(4) 選 考 方 法研 究 計 画 書 を 元 に 決 定 。ただし、 研 究 計 画 書 には(1)1~3のどのプロジェクトに 参 加 したいのかを、その 理 由 を 含 めて 記 入 すること。(5)その 他< 大 まかな 学 習 スケジュール>4 月 ~5 月 : 事 前 学 習 。 個 人 の 研 究 テーマと 全 体 の 研 究 テーマの 決 定 。6 月 ~7 月 : 予 備 調 査 の 実 施 。8 月 ~9 月 : 現 地 調 査 を3 日 程 度 し、 成 果 をまとめる。10 月 〜11 月 : 企 画 の 実 施 。 中 間 報 告 の 準 備 と 実 施 。12 月 〜1 月 : 外 部 向 け 報 告 発 表 会 および 修 了 レポート 作 成-35-


■ 若 狭 町 プロジェクト(1) 目 的 およびテーマとその 特 徴【 地 方 自 治 をめぐる 状 況 】 分 権 改 革 により 地 方 自 治 体 が 自 立 を 強 める 可 能 性 に 期 待 が 高 まったのもつかのま、 景 気 の 低 迷 などにより 国 ・ 地 方 ともに 深 刻 な 財 政 危 機 にみまわれ、 各 地 方自 治 体 は 厳 しい 状 況 にあります。しかしながら、 当 然 のことですが 福 祉 サービスの 提 供 、 道路 や 下 水 道 の 整 備 、 学 校 の 運 営 など、 地 方 自 治 体 が 実 施 している 事 業 の 大 半 は、 財 政 が 厳 しいからといって 簡 単 にやめられるようなものではありません。いま 全 国 の 自 治 体 はどこでも、たいへん 厳 しい 環 境 のなかでぎりぎりの 努 力 を 強 いられています。そのような 実 際 の 地 方 自治 の 現 場 には、 政 策 科 学 にとって 興 味 深 い 研 究 材 料 が 数 多 くあります。【 合 併 と 新 町 建 設 の 課 題 】 立 命 館 大 学 政 策 科 学 部 では 2002 年 度 から 福 井 県 三 方 町 役 場 ( 当時 )と 総 合 計 画 の 進 行 管 理 手 法 の 開 発 にかんする 共 同 研 究 に 着 手 しました。そして、2003年 度 からは「 三 方 プロジェクト」を 開 講 してインターンシップとフィールドワークを 進 めてきました。2005 年 3 月 には 三 方 町 ( 当 時 )は 隣 接 する 上 中 町 ( 当 時 )と 合 併 し、 福 井 県 若狭 町 として 新 たなスタートを 切 りました。このため、2005 年 度 からは「 三 方 プロジェクト」を「 若 狭 町 プロジェクト」と 改 称 して 開 講 し、いまでは 若 狭 町 全 域 を 研 究 対 象 としています。若 狭 町 の 旧 三 方 町 地 域 は 日 本 海 に 面 し、 三 方 五 湖 という 独 特 で 美 しい 自 然 環 境 にも 恵 まれ、漁 業 や 観 光 業 が 盛 んな 地 域 で、 旧 上 中 町 地 域 は 内 陸 の 落 ち 着 いた 純 農 村 的 地 域 で、かつての宿 場 町 である 熊 川 宿 という 歴 史 的 景 観 も 保 全 されています。このように 両 地 域 は 地 域 特 性 がずいぶん 違 っていますし、 周 辺 地 域 との 関 係 においても、 旧 三 方 地 域 は 敦 賀 市 を 中 心 とする圏 域 、 旧 上 中 地 域 は 小 浜 市 を 中 心 とする 圏 域 に 属 しており、 生 活 圏 や 文 化 にはズレがあります。そのような 二 つの 地 域 が 合 併 したため、 新 町 建 設 には 多 様 な 課 題 が 残 されていますが、だからこそ、 政 策 科 学 の 研 究 対 象 としての 興 味 深 さがあります。 若 狭 町 になってから 約 5年 が 経 過 したいま、 今 後 に 向 けて、 合 併 が 地 域 になにをもたらしたのかを 検 証 しなければならない 時 期 だと 言 えます。【プロジェクトの 特 徴 】「 若 狭 町 プロジェクト」の 特 徴 は、 政 策 科 学 部 と 若 狭 町 役 場 の 共 同提 供 プログラムとして、 就 業 体 験 とフィールド 調 査 を 融 合 して 授 業 を 進 めるところにあります。前 期 中 は、まず 初 めに 若 狭 町 役 場 の 担 当 者 から 町 政 の 課 題 についての 事 前 講 義 を 受 けます。そして、いくつかのグループにわかれて 自 治 体 行 政 に 関 する 自 主 学 習 を 進 めながら、 各 自 の研 究 課 題 を 発 見 していきます。また 実 際 に 現 地 を 1、2 度 訪 問 し、 町 内 の 名 所 や 関 係 機 関 を見 学 して 地 域 に 対 するイメージを 深 めていきます。そのうえで、7 月 までにインターンシップ 計 画 およびフィールド 調 査 の 計 画 を 立 てていきます。夏 期 休 暇 中 には 現 地 で 就 業 体 験 とフィールド 調 査 を 行 います。 就 業 体 験 では 若 狭 町 役 場 にじっさいに 入 って 職 務 の 一 部 を 体 験 したりもしながら、 地 方 行 政 の 現 場 を 間 近 で 観 察 するとともに、 自 分 自 身 の 研 究 テーマについての 調 査 を 行 っていきます。そして 後 期 に、これらの行 政 現 場 での 体 験 と 調 査 に 基 づいて 研 究 報 告 書 をまとめてもらいます。【 研 究 テーマ】 若 狭 町 行 政 に 関 連 するテーマでしたら、どのようなテーマを 立 てても 研 究 は可 能 ですが、できれば、 観 光 、 福 祉 、 環 境 、 産 業 振 興 、 教 育 など、 具 体 的 に 地 方 自 治 の 現 場で 参 加 しながら 検 証 ができるテーマがのぞましいと 思 います。【スケジュール】1) 開 講 時 の 事 前 講 義 4 月 若 狭 町 役 場 の 方 に 町 政 の 課 題 について 講 義 をしていただく。2) 事 前 訪 問 5 月 ~6 月 若 狭 町 を 訪 れ、 現 地 を 調 査 する。3)インターンシップ 8 月 下 旬 ~9 月 中 旬 一 人 1 週 間 程 度4) 若 狭 町 祭 り 9 月 下 旬5) 中 間 報 告 会 秋6) 調 査 報 告 書 提 出 1 月(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特 徴【 調 査 対 象 】 若 狭 町 役 場 の 行 政 活 動 全 般 、あるいは 行 政 と 住 民 のかかわりについて-36-


(3) 受 講 生 が 負 担 することとなる 概 算 費 用調 査 計 画 やスケジュールにより 変 わりますが、 以 下 を 目 安 にしてください。■ 交 通 費 京 都 駅 → 上 中 駅 ・ 三 方 駅 片 道 2500 円 程 度■ 宿 泊 費 1 泊 2 食 2000 円 「かみなか 農 楽 舎 」に 宿 泊 する 予 定(4) 選 考 方 法研 究 計 画 書 と 志 望 理 由 書 を 提 出 してください。・ 志 望 理 由 書 の 論 題 :「 福 井 県 若 狭 町 をフィールドにしてどのような 研 究 を 行 いたいか」・ 志 望 理 由 書 の 書 式 :A4 サイズで 1~2 枚 ( 書 式 は 自 由 )MS-WORD で 作 成 。 氏 名 と 学 籍 番 号 を 明 記 すること。・ 応 募 書 類 を 作 成 ・ 提 出 するさいに 以 下 のサイトなども 参 考 にしてください。■ 福 井 県 若 狭 町 公 式 サイトhttp://www.town.fukui-wakasa.lg.jp/■ 若 狭 三 方 五 湖 観 光 協 会http://www.wakasa-mikatagoko.jp/index.html※ 外 国 人 観 光 客 の 増 加 を 目 指 して、4 言 語 対 応 になっています。■ 若 狭 町 社 会 福 祉 協 議 会http://www.w-shakyo.or.jp/(5)その 他若 狭 町 役 場 におけるインターンシップや、 現 場 におけるインタビュー、アンケート 等 の 調査 を 伴 うので、 研 究 活 動 には 協 調 性 がもとめられます。インターンシップ 参 加 のときには 身だしなみや 態 度 にも 気 をつけてください。また、じっさいに 現 場 に 足 を 運 び、 現 実 を 自 分 の目 できちんと 観 察 することを 重 視 することを 心 得 ておいてください。-37-


■ 向 日 市 プロジェクト(1) 目 的 およびテーマとその 特 徴本 プロジェクトでは、 産 業 の 高 度 化 に 伴 って 都 市 構 造 が 転 換 する 過 程 で 必 要 となる 都 市政 策 ( 一 般 に 現 状 や 政 策 を 総 称 して「 都 市 再 生 」と 言 われる)について、 行 政 政 策 、 組 織経 営 、 環 境 都 市 の 観 点 から 学 生 自 身 が 研 究 の 素 材 や 方 法 、 課 題 をみつけだし、 学 生 自 身 が自 主 的 に 調 査 企 画 を 作 成 しつつ 研 究 活 動 を 行 う 場 を 創 出 することを 目 的 としている。想 定 されるテーマには 以 下 のようなものがある。 研 究 テーマは 比 較 的 広 くとらえてよいが、 工 場 跡 地 利 用 問 題 、ロードサイドショップ 問 題 、そして 中 心 市 街 地 活 性 化 問 題 のように、 産 業 や 流 通 の 変 化 が 都 市 に 与 える 影 響 を 考 察 するような 内 容 が 望 ましい。• 中 心 市 街 地 活 性 化 のための 空 き 地 ・ 空 き 店 舗 の 利 活 用• 工 場 跡 地 における 土 地 利 用 方 針 策 定• JR 向 日 町 駅 周 辺 街 区 の 再 構 築• ロードサイドショップの 整 備 誘 導 方 策• 洛 西 ニュータウンとの 交 流 の 創 出• 西 国 街 道 の 歴 史 からみるまちづくり(2) 調 査 対 象 (フィールド)およびその 特 徴向 日 市 は 京 都 市 に 隣 接 し、 人 口 約 55,000 人 、21,000 世 帯 の 小 さな 市 である( 右 図 参 照 )。埼 玉 県 の 蕨 市 、 鳩 ケ 谷 市 、 東 京 都 狛 江 市 に 次 いで、 日 本 でも4 番 目 に 面 積 の 小 さな 市 となっている。にもかかわらず、 長 岡 京 の 大 極 殿 跡 地 、 中 世 に 整 備 された 西 国 街 道 、 桓 武 天 皇皇 后 稜 など 市 内 にある 歴 史 的 遺 産 の 多 さは 京 都 に 劣 らない。近 代 化 過 程 において、JR 東 海 道 本 線 ( 京 都 線 )、 阪 急 京 都 線 、 新 幹 線 、そして 名 神 高 速道 路 が 通 ることにより、 市 内 の 農 用 地 の 多 くで 工 業 化 が 進 む 一 方 、 京 都 市 内 や 大 阪 に 職 場を 持 つ 夜 間 人 口 の 受 容 地 域 としての 開 発 も 進 み、 阪 急 東 向 日 駅 から JR 向 日 町 駅 にかけて多 くの 人 口 が 居 住 するようになった。近 年 、キリンビールや 井 上 電 機 などの 大 規 模 工 場 が 相 次 いで 移 転 し、 跡 地 の 土 地 利 用 方針 が 都 市 構 造 変 容 の 大 きな 契 機 となりつつある。と 同 時 に、 近 接 する 中 心 市 街 地 において、空 き 地 の 利 活 用 問 題 や 空 き 店 舗 問 題 などが 顕 在 化 し、 活 性 化 の 方 策 が 求 められている。(3) 受 講 生 が 負 担 することになる 概 算 費 用年 間 を 通 して、 多 くて 10 回 程 度 の 現 地 訪 問 をする 予定 である。最 寄 駅 は 阪 急 「 東 向 日 駅 」「 西 向 日 駅 」、JR「 向 日 町駅 」などがある。 西 院 から 梅 田 方 面 にむけて4 駅 (180円 )、JR 京 都 駅 から 大 阪 方 面 にむけて3 駅 (170 円 )となり、 京 都 市 内 在 住 学 生 にはこれらの 公 共 交 通 費 がかかる。 大 阪 在 住 の 学 生 にとっては、 通 学 途 中 での 下車 となる 者 もあるだろう。なお、 京 阪 線 には 最 寄 駅 がない。京 都 市右 京 区北 区上 京 区中 京 区下 京 区左 京 区東 山 区(4) 選 考 方 法研 究 計 画 書 をもとに 決 定 する。 希 望 する 研 究 テーマが 具 体 的 であるかどうか、 都 市 再 生 についての 事 前 知識 を 持 っているかどうか、などを 勘 案 する。 志 望 理 由書 は 不 要 。西 京 区南 区山 科 区(5) その 他活 動 の 成 果 をお 返 しする 意 味 を 込 めて、 市 役 所 や 現地 でお 世 話 になった 方 々に 報 告 会 を 行 うことがあります。 学 生 諸 君 には、このような 場 合 に 積 極 的 な 協 力 をしていただくよう 求 めます。向 日 市 の 位 置伏 見 区-38-


第 7 章 受 講 までの 手 続 き研 究 入 門 フォーラムの 流 れ2010 年 度 (1 回 生 ) 2011 年 度 (2 回 生 )10 月 全 体 説 明 会 ( 手 引 配 布 )特 定 プロジェクト 説 明 会11 月 研 究 計 画 書 の 提 出 ( 基 礎 演 習 )12 月 研 究 計 画 書 のフィードバック( 基 礎演 習 )研 究 領 域 の 登 録 (Web)特 定 プロジェクト 募 集特 定 プロジェクト 結 果 発 表1 月 研 究 計 画 書 の 最 終 提 出 ( 事 務 室 )3 月 自 主 プロジェクト 中 規 模 グループ 編成 結 果 発 表4 月 ~5 月 自 主 プロジェクト 小 規 模 グループ 編 成7 月 個 人 「 前 期 レポート」 提 出(それまでの 研 究 内 容 や 今 後 の 研 究 計 画 などについてまとめる)8 月 ~9 月 海 外 ・ 国 内 調 査 実 施11 月 中 間 発 表 会 ポスターセッション(1 次 選 考 )12 月 2 次 選 考PSアカデミック・フェスタ1 月 『 研 究 成 果 報 告 書 』『 研 究 入 門 フォーラム 論 文 集 』(プロジェクト 単 位 )(1) 科 目 の 概 要科 目 名 称 :「 研 究 入 門 フォーラム」カリキュラム 上 の 区 分 : 政 策 科 学 科 目 政 策 科 学 演 習 科 目開 講 期 間 および 単 位 数 : 通 年 、4 単 位評 価 方 法 : 所 定 の 様 式 にもとづいて 提 出 する「 研 究 成 果 報 告 書 」( 必 須 )と 後 期 セメスターに 実 施 する 報 告 会 、および 日 常 活 動 など、で 総 合 的 に 評 価 する。*この 科 目 は 2 回 生 履 修 指 定 科 目 です。2 回 生 は 極 力 履 修 しなければならない科 目 です。ただし、 単 位 を 取 得 できなくても 卒 業 要 件 には 関 わりません。(2) 受 講 するための 手 続 き全 員 必 須 と 特 定 プロジェクトに 応 募 する 場 合 があります。全 員 必 須1 研 究 領 域 の 登 録 (Web)5 つの 研 究 領 域 ( 行 政 政 策 ・ 組 織 経 営 ・ 国 際 政 策 ・ 環 境 都 市 ・ 情 報 文 化 )の 中 から、いずれか1つを 選 択 し 登 録 を 行 ってください。 領 域 の 登 録 は、 研 究 計 画 書 の 提 出 時 に 変 更 可能 です。受 付 期 間 :12 月 6 日 ( 月 )13:00 ~ 10 日 ( 金 )17:00*WEB 上 での 登 録 申 請 を 原 則 としますが、やむを 得 ない 事 情 で WEB 入 力 ができない場 合 、 締 切 時 間 までに 事 務 室 に 相 談 してください。-39-


登 録 方 法 :1) 政 策 科 学 部 の WEB 上 にある 登 録 画 面 にアクセスしてください。WEB: 立 命 館 大 学 / 政 策 科 学 部 / 政 策 科 学 部 事 務 室 / 研 究 入 門 フォーラム 研 究 領 域 登 録2) RAINBOW パスワードでログインしてください。3) 「 研 究 領 域 」を 選 択 して、 送 信 ボタンを 押 してください。4) 回 答 確 認 ページの「この 内 容 で 送 信 する」を 押 してください。これで 登 録 完 了 です。5) 回 答 終 了 ページが 表 示 されます。 受 領 証 の 代 わりになりますので 印 刷 し 保 存 しておいてください。* 受 付 期 間 中 は、 一 度 登 録 した 内 容 を 変 更 することができます。2「 研 究 計 画 書 (リサーチ・プロポーザル)」の 作 成 と 提 出基 礎 演 習 の 政 策 実 践 ライティングの 課 題 として、 自 らの 問 題 意 識 や 興 味 関 心 にもとづき研 究 テーマを 設 定 して 研 究 計 画 書 を 作 成 ・ 提 出 してください。提 出 〆 切 :1 月 11 日 ( 火 )17:00提 出 場 所 : 政 策 科 学 部 事 務 室提 出 書 類 :「 研 究 計 画 書 (リサーチ・プロポーザル)」* 基 礎 演 習 における 政 策 実 践 ライティング 課 題 のスケジュール11 月 12 日 ( 金 )「 研 究 計 画 書 (リサーチ・プロポーザル)」 基 礎 演 習 提 出 〆 切12 月 3 日 ( 金 ) 基 礎 演 習 におけるフィードバック1 月 11 日 ( 火 )17:00「 研 究 計 画 書 (リサーチ・プロポーザル)」 事 務 室 提 出 〆切特 定 プロジェクトに 応 募 する 場 合特 定 プロジェクトとは、 学 部 によって 提 供 されるプロジェクトで、 海 外 調 査 をともなう企 画 や 国 内 遠 隔 地 での 調 査 を 伴 う 企 画 が 中 心 です。特 定 プロジェクトの 柱 は、 学 生 による 自 主 的 調 査 研 究 企 画 をもとにした 学 びとグループワークを 通 じた 学 びであり、5 つの 研 究 領 域 のいずれかに 提 供 されます。自 分 が 選 択 した 研 究 領 域 に 提 供 されたプロジェクトにのみ 応 募 できます。 複 数 のプロジェクトに 応 募 することはできません。応 募 締 切 :12 月 10 日 ( 金 ) 17:00受 付 場 所 : 政 策 科 学 部 事 務 室応 募 書 類 :・ 研 究 入 門 フォーラム 特 定 プロジェクト 応 募 用 紙 ( 巻 末 に 綴 じ 込 み)・ 研 究 計 画 書 ( 基 礎 演 習 においてフィードバックを 受 けて 修 正 したものを 提 出 してください)・ プロジェクトごとに 指 定 された 提 出 物 ( 志 望 理 由 書 等 )審 査 方 法 :提 出 された 書 類 にもとづき 受 講 可 否 を 決 定 します。なお、 研 究 計 画 書 に 記 載 された「 研究 領 域 」および 研 究 テーマが、 応 募 する 特 定 プロジェクトに 適 合 しているか( 無 理 ・ 矛盾 がないか)についても 審 査 します。結 果 発 表 :12 月 22 日 ( 水 ) 政 策 科 学 部 事 務 室 掲 示 板(3) 自 主 プロジェクトグループ 編 成 ・クラス 編 成1 中 規 模 グループ 編 成みなさんがグループ 編 成 を 行 う 際 のもととなるよう、 提 出 された 研 究 計 画 書 (リサーチ・プロポーザル)にもとづき 中 規 模 グループを 編 成 し、3 月 下 旬 ( 成 績 発 表 時 )に 発表 します( 特 定 プロジェクト 受 講 許 可 者 は 除 きます)。2グループ 編 成 の 確 定来 年 4 月 、「 研 究 入 門 フォーラム」の 授 業 で、 研 究 領 域 ごとに 中 規 模 グループ 編 成 を-40-


参 考 にしながらグループ 編 成 を 行 います。3 所 属 クラスの 決 定来 年 5 月 、 各 プロジェクトの 担 当 教 員 が 決 定 し、 所 属 クラスが 決 定 します。 各 クラスにいくつかのプロジェクトが 所 属 します。 所 属 クラス 決 定 後 は、クラスごとに 授 業 を行 います。以 上-41-


フィールド 調 査 届申 請 年 月 日研 究 グループ 名代 表 者 氏 名訪 問 者 の 氏 名学 生 証 番 号電 子 メールアドレス訪 問 先 の 名 称 ・ 住 所訪 問 先 担 当 者 氏 名調 査 の 期 間 ( 日 時 )・ 目 的 ・ 概 要 等移 動 手 段 徒 歩 ・ 公 共 交 通 機 関 ・ その 他 ( )担 当 教 員印

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