オーラル・ヒストリーの可能性―仮説の発見と実証 - 慶應義塾大学湘南 ...

の 記 憶 を 喚 起 するのに 有 効 と 思 われるものをまとめていってお 渡 しするという 手 法 をとる
こともあります。データにまとめてエクセル 形 式 の 年 表 で 無 味 乾 燥 に 出 すのではなく、 新
聞 記 事 として 見 てもらうことで、 生 の 感 覚 を 思 い 出 して 頂 くという 手 法 です。
教 員 : 今 日 はどうもありがとうございました。 社 会 史 、 社 会 学 の 立 場 から、どちらかとい
うと、ライフ・ヒストリーのところをいくつか 伺 いたいと 思 います。 今 日 のお 話 で 一 番 印
象 に 残 ったのが、 公 人 とのオーラル・ヒストリーを 行 う 際 には、できる 限 りインフォーマ
ルな 付 き 合 いをしないと 仰 ったことです。 社 会 史 の 場 合 は、むしろインフォーマルな 付 き
合 いをすることで、 人 間 関 係 を 築 いて 定 型 の 語 りをできるだけ 崩 していくかと 思 います。
そういうインフォーマルな 付 き 合 いをしないというルールを 設 定 したのは、リサーチ・デ
ザインによるものなのか、 清 水 さんはライフ・ストーリーの 経 験 もおありでしょうから、
そのあたりの 感 覚 をお 聞 きしたいと 思 います。
清 水 :これは、ひとつは 資 金 的 な 問 題 です。 政 策 研 究 大 学 院 大 学 のプロジェクトは 公 費 で
行 っているもので、そうした 見 知 から、 政 治 家 、 官 僚 の 方 もオーラル・ヒストリーをお 受
け 頂 いていたという 関 係 がありました。そこの 部 分 で、 特 にお 話 を 伺 っている 間 は、きっ
ちりとけじめをつけていった、ということです。しかし、もちろん、 聞 き 取 りの 中 ではお
茶 を 頂 きながら 雑 談 もしますし、 連 絡 調 整 をする 中 で、 先 方 との 信 頼 関 係 は 出 来 上 がって
いきますし、そうした 努 力 は 意 識 的 にしてきました。
逆 に 私 が 通 常 携 わっているような 私 人 へのオーラル・ヒストリーの 場 合 では、 西 岡 常 一
さんへの 聞 き 取 りのように 常 時 お 酒 を 友 にして、ということはあまりありませんが、 毎 回 、
お 茶 とお 菓 子 を 交 えて 歓 談 させて 頂 いています。お 菓 子 ひとつも、 大 きな 材 料 になってお
話 が 弾 みますしね。 相 手 のコミュニティから、 遠 くないところにいるのだ、と 思 って 頂 く
のは、オーラル・ヒストリーを 進 める 上 ではとても 重 要 だと 思 います。
司 会 : 時 間 も 参 りましたので、 本 日 はこのあたりで 終 わりにしたいと 思 います。どうもあ
りがとうございました。
9. 参 考 文 献
具 体 的 なオーラル・ヒストリーの 成 果 物 は 枚 挙 に 暇 がないため 割 愛 し、オーラル・ヒス
トリーについて 考 える 上 で 示 唆 に 富 む 雑 誌 論 文 を、 本 論 の 拙 い 議 論 を 補 うものとして 掲 げ
ておく。なお、 本 論 で 取 り 上 げたものは 省 略 した。
猪 木 武 徳 「 聴 き 取 りの 効 用 、オーラル・ヒストリーの 価 値 ―『 同 時 性 』と『 現 地 性 』」(『 経
済 志 林 』73 巻 4 号 、2006 年 )
大 原 社 会 問 題 研 究 所 「 特 集 社 会 科 学 研 究 とオーラル・ヒストリー」1~3(『 大 原 社 会 問 題
研 究 所 雑 誌 』585、588、589 号 、2007 年 )
清 水 透 「オーラル・ヒストリーの 地 平 」(『 学 術 の 動 向 』12 巻 3 号 、2007 年 )
清 水 唯 一 朗 「 日 本 におけるオーラルヒストリー―その 現 状 と 課 題 、 方 法 論 をめぐって―」( 慶
- 24 -