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RIPS_PP21_Japan's Defense Industries and Its New Principles of Arms Transfer

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Research Institute for Peace <strong>and</strong> Security (<strong>RIPS</strong>) is an independent research institution establishedin Tokyo in October 1978. The <strong>RIPS</strong> conducts research on issues <strong>of</strong> national <strong>and</strong> international peace<strong>and</strong> security, publishes research reports, <strong>and</strong> proposes policy recommendations.The institute publishes an annual report, Ajia no anzenhosho (Asian Security), which surveys thechanging security environment <strong>of</strong> the Asia-Pacific region. Well regarded by both the academic <strong>and</strong> thesecurity communities, the institute also organizes seminars for specialists <strong>and</strong> the public on national,regional, <strong>and</strong> international security <strong>and</strong> sponsors joint research projects with institutes in othercountries.In addition to its research activities, the institute, together with the Japan Foundation's Center forGlobal Partnership, <strong>of</strong>fers fellowships to young scholars wishing to pursue security studies. Many <strong>of</strong>these recipients have since become valuable contributors to security studies in Japan.The <strong>RIPS</strong> Policy Perspectives is intended to provide timely alternatives to <strong>and</strong> analyses <strong>of</strong> existingpeace <strong>and</strong> security policies, thereby contributing to further debate. The views <strong>of</strong> the authors are theirown <strong>and</strong> do not represent the <strong>of</strong>ficial position <strong>of</strong> the <strong>RIPS</strong>.Research Institute for Peace <strong>and</strong> SecurityMeisan Tameike Building 8F1-1-12 Akasaka, Minato-ku, Tokyo 107-0052, JapanTel: 81-3-3560-3288 Fax:81-3-3560-3289E-mail: rips-info@rips.or.jpURL: http://www.rips.or.jp© Research Institute for Peace <strong>and</strong> Security 2013All rights reserved. No part <strong>of</strong> this booklet may be reprinted or reproduced without permission in writing from thepublisher.


<strong>RIPS</strong> Policy Perspectives No. 21防 衛 装 備 移 転 三 原 則 とグローバル 化 時 代 の 日 本 の 防 衛 産 業<strong>Japan's</strong> <strong>Defense</strong> <strong>Industries</strong> <strong>and</strong><strong>Its</strong> <strong>New</strong> <strong>Principles</strong> <strong>of</strong> <strong>Arms</strong> <strong>Transfer</strong><strong>RIPS</strong> 公 開 セミナー2014 「 集 団 的 自 衛 権 と 日 本 の 選 択 」(グランドヒル 市 ヶ 谷 、2014 年 10 月 1 日 )<strong>RIPS</strong> Symposium 2014“Right <strong>of</strong> Collective Self-<strong>Defense</strong> <strong>and</strong> Japan’s Choices”Gr<strong>and</strong> Hill Ichigaya Hall, October 1, 2014Seminar Summary Report


目 次1. 開 会 の 挨 拶 ................................................................. 1西 原 正 ( 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所 理 事 長 )2. 基 調 講 演 「 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 とグローバル 化 時 代 の 日 本 の 防 衛 産 業 」 ............ 1村 山 裕 三 ( 同 志 社 大 学 副 学 長 )3. パネリスト 発 表 ............................................................. 10司 会 : 西 山 淳 一 ( 未 来 工 学 研 究 所 研 究 参 与 )発 表 1.「ユーロサトリに 見 る 国 際 動 向 と 日 本 の 課 題 」 ......................... 11浅 利 眞 (クライシス・インテリジェンス 社 代 表 取 締 役 )発 表 2.「 防 衛 装 備 三 原 則 と 推 進 のための 諸 施 策 」 ............................. 13山 崎 剛 美 (ロッキード・マーチン・オーバーシーズ・コーポレーション、コンサルタント)発 表 3.「 防 衛 装 備 新 三 原 則 と 企 業 リスク」 ................................... 15及 川 耕 造 ( 社 団 法 人 発 明 推 進 協 会 副 会 長 )発 表 4.「 防 衛 装 備 新 三 原 則 の 評 価 と 今 後 に 向 けた 提 言 」 ....................... 17ケビン・メア 氏 ( 元 米 国 務 省 日 本 部 長 )4. 質 疑 応 答 .................................................................. 205. 閉 会 の 挨 拶 ................................................................ 21西 原 正 ( 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所 理 事 長 )6. 講 演 者 プロフィール ......................................................... 22


謝 辞この 資 料 は、 一 般 財 団 法 人 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所 が 2014 年 10 月 1 日 に 行 った 2014 年 秋 季公 開 セミナーでの 講 演 及 びパネルディスカッションをまとめたものである。 作 業 は、 廣 瀬 泰 輔 氏( 松 下 政 経 塾 生 )が 当 たった。 記 して 感 謝 する。一 般 財 団 法 人 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所理 事 長 西 原 正


開 会 の 挨 拶西 原 正 ( 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所 理 事 長 )2014 年 9 月 24 日 、「 集 団 的 自 衛 権 と 日 本 の 選 択 」と 題 し、<strong>RIPS</strong> 安 全 保 障 公 開 セミナー2014 年 の1 回 目 のセミナーを 実 施 した。そこでは、 集 団 的 自 衛 権 について、 香 田 元 海 将 を 基 調 講 演 にお 招 きし、海 上 自 衛 隊 の 実 務 家 の 立 場 からお 話 を 頂 いた。 本 日 は、 同 じテーマの 下 、 武 器 輸 出 や 武 器 の 共 同 生 産に 関 する 問 題 を 扱 う。長 い 間 、 日 本 には 武 器 輸 出 三 原 則 があり、 時 に 武 器 輸 出 を 集 団 的 自 衛 権 の 一 環 として 捉 え、 憲 法 違反 であるとして 非 常 に 躊 躇 する 向 きがあった。しかし、2013 年 末 、 武 器 輸 出 三 原 則 をより 柔 軟 にするために、 新 しい 原 則 を 採 択 することした。これは 安 倍 政 権 の 新 しい 動 きを 示 すものである。 本 日 このテーマについて 考 える 意 義 は 大 きいと 考 える。基 調 講 演 「 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 とグローバル 化 時 代 の 日 本 の 防 衛 産 業 」村 山 裕 三 ( 同 志 社 大 学 副 学 長 )導 入今 から 20 年 前 、 私 は、 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所 が 運 営 する 安 全 保 障 研 究 奨 学 プログラムの 奨 学 生 としてこの 分 野 に 入 った。 同 プログラムでは、 防 衛 産 業 や 軍 民 両 用 技 術 について 研 究 し、 研 究 活 動 の 最後 の 段 階 で 米 国 ・ワシントン D.C.に 行 った。 当 時 は 半 導 体 摩 擦 や FSX 問 題 など、 経 済 と 安 全 保 障 が絡 んだ 問 題 が 日 米 間 で 多 発 していた 時 代 であった。 米 国 では、 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所 から 防 衛 技 術 の専 門 家 が 来 たと 大 歓 迎 され、 国 防 総 省 をはじめとして、あらゆるシンクタンクの 研 究 者 や 専 門 家 など、色 々なアポイントメントを 取 ることができた。 日 本 自 体 が 注 目 され、 日 本 の 技 術 が 米 国 で 注 目 されていたのである。去 年 (2013 年 )の 夏 から 今 年 の 1 月 にかけて、 在 外 研 究 のため、20 年 振 りにワシントン D.C.を 訪れる 機 会 を 得 て、 米 国 シンクタンク「スティムソン・センター」で 5 ヶ 月 間 過 ごした。この 頃 、いわ1ゆる 武 器 輸 出 三 原 則 が 緩 和 されるなどの 動 きが 日 本 であったので、それをワシントン D.C.において、米 国 の 視 点 から 研 究 していた。その 間 、20 年 前 と 非 常 に 変 わった 部 分 を 感 じた。それは、 日 本 の 技 術がもうそれほど 注 目 されなくなっていたということである。 以 前 は 日 本 の 研 究 者 がワシントン D.C.1武 器 輸 出 三 原 則 (1967.4.21)では、 以 下 の 場 合 の 武 器 輸 出 を 認 めていない。(1) 共 産 圏 諸 国 向 けの 場 合 、(2) 国 連 決 議 により 武 器 等 の 輸 出 が 禁 止 されている 国 向 けの 場 合 、(3) 国 際 紛 争 の 当 事 国 又 はそのおそれのある 国 向 けの 場 合 。また、 以 下 の 3 項 目 について 武 器 輸 出 を 制 限 した「 武 器 輸 出 に 関 する 政 府 統 一 見 解(1976.2.27)」―(1) 三 原 則 対 象 地 域 については「 武 器 」の 輸 出 を 認 めない。(2) 三 原 則 対 象 地 域 以 外 の 地域 については、 憲 法 及 び 外 国 為 替 及 び 外 国 貿 易 管 理 法 の 精 神 にのっとり、「 武 器 」の 輸 出 を 慎 むものとする。(3) 武 器 製 造 関 連 設 備 の 輸 出 については、「 武 器 」に 準 じて 取 り 扱 うものとする―の 2 つを「 武 器 輸 出 三 原則 等 」と 呼 称 されることがあるが、ここでは、 総 称 して「 武 器 輸 出 三 原 則 」と 表 記 する。Policy Perspectives No. 21- 1 -


を 訪 問 したらそれだけで 注 目 を 浴 び、 米 専 門 家 とのアポイントメントが 容 易 に 取 れたが、 今 回 は 違った。そういうことが、 何 回 もあって 非 常 に 驚 いた。もう 一 つ 驚 いたのは、 米 国 人 で 若 手 の 日 本 の 技 術 の 専 門 家 や 日 本 研 究 者 があまりいないことである。20 年 前 はこのような 専 門 家 は 非 常 に 多 かった。 例 えば、 今 では 非 常 に 有 名 になったマイケル・グリーン 氏 もその 一 人 で、 最 初 は 日 本 の 技 術 を 研 究 していた。だから、 当 時 は 若 手 の 専 門 家 と 大 変充 実 した 議 論 が 出 来 た。しかし、 今 回 の 米 滞 在 期 間 ではそういう 機 会 にあまり 恵 まれなかった。 実際 、2 回 ほどスティムソン・センターでセミナーを 開 催 したが、 参 加 者 はこの 道 20 年 や 25 年 というベテランの 研 究 者 が 多 かった。もちろん、それはそれで 嬉 しかったのだが、 若 手 研 究 者 が 少 なかった。とにかく 20 年 間 の 移 り 変 わりを 感 じた 滞 在 となった。軍 事 技 術 の 民 生 品 利 用 : 過 去では、20 年 前 の 日 米 関 係 を 概 観 した 上 で、 武 器 輸 出 三 原 則 に 入 っていきたい。 今 から 20 年 前 、「 富 士 通 ・フェアチャイルド 事 件 」が 起 きた。これは 富 士 通 が、 米 国 の 半 導 体 メーカーであるフェアチャイルド 社 の 買 収 を 試 みたものの、フェアチャイルド 社 が 機 微 な 半 導 体 を 作 っていたことから、米 国 の 軍 事 技 術 が 日 本 に 移 転 されるとの 危 惧 と、 日 本 企 業 による 更 なる 買 収 の 動 きへの 懸 念 が 米 国内 で 生 じ、 買 収 できなかったという 事 件 である。この 他 にも FSX 問 題 、そして、 湾 岸 戦 争 での 日本 製 電 子 部 品 の 使 用 という 話 題 もあった。 湾 岸 戦 争 では 様 々な 兵 器 が 使 われたが、 実 は 日 本 製 の 部品 が 多 用 されていたという 問 題 である。これを 新 聞 が 取 り 立 て、 大 きな 社 会 問 題 になった。この 頃から 日 本 でも「 軍 民 両 用 技 術 」という 話 題 が 出 てきたのである。ところが、ほとんどが、 否 定 的 な内 容 であった。まず、 報 道 上 でみるメーカー 企 業 の 対 応 は、 無 関 係 性 を 強 調 するものがほとんどであった。 例 えば、 京 セラ 社 に 関 する 新 聞 報 道 。 同 社 は、セラミック 半 導 体 を 製 造 しているため、 実 は、 相 当 、 軍事 分 野 でも 同 社 の 製 品 が 使 用 されていた。 同 社 に、その 点 に 関 する 所 感 を 報 道 側 が 求 めたところ、部 品 レベルから 先 は 同 社 が 関 与 するところではないという 旨 の 回 答 であった。それから、キヤノン社 。 同 社 は、 軍 事 研 究 禁 止 を 研 究 開 発 の 指 針 に 記 していた。そういう 時 代 であった。よって、 日 本の 部 品 が 海 外 で 使 用 されることには、 否 定 的 反 応 を 示 すのが 主 流 であった。ところが、 他 国 は 違 っていた。 例 えばフランス。 実 はフランス 製 の 部 品 も 湾 岸 戦 争 で 多 用 されたが、これをフランス 政 府は「 技 術 的 貢 献 」と 表 現 したのである。 日 仏 間 の 認 識 のギャップを 感 じたのを 今 でもよく 覚 えている。では、 日 本 政 府 は、 何 故 、 日 本 製 部 品 の 軍 事 利 用 を 否 定 的 に 捉 えたのか。ここに、 武 器 禁 輸 政 策が 関 わってくる。 武 器 輸 出 三 原 則 等 である。 同 原 則 を 掲 げる 中 、 日 本 製 部 品 が 軍 事 利 用 されることは、 当 時 の 言 葉 でいう「 武 器 輸 出 三 原 則 の 空 洞 化 」を 引 き 起 こすという 議 論 があったからである。そのため、 政 府 としても 注 視 する 必 要 が 生 じた。 一 方 、 当 時 、 日 本 の 民 生 技 術 の 価 値 が 非 常 に 高 まってきており、 米 国 からも 頻 繁 に 技 術 移 転 の 要 請 があった。 米 国 ではペリー 国 防 長 官 が、‟M<strong>and</strong>atefor Change” なる 演 説 を 行 い、 軍 事 技 術 の 民 生 品 や 民 生 技 術 への 利 用 を 積 極 的 に 推 進 していた。こPolicy Perspectives No. 21- 2 -


の 時 代 は、 軍 事 技 術 の 民 生 品 ・ 民 生 技 術 やビジネス 手 法 への 活 用 、 更 には 調 達 改 革 ―いわゆる「 軍 民融 合 政 策 」―が 熱 を 帯 びていた。軍 事 技 術 の 民 生 品 利 用 : 現 在では、20 年 経 った 今 、 状 況 はいかに 変 わったのか。 昔 ほどの 熱 意 はなくなっていた。 人 によっては、 軍 民 融 合 政 策 を「 失 敗 」と 位 置 付 けるほどである。ただし、 特 に 性 能 面 やコスト 面 から、ローエンドに 関 する 民 生 品 の 利 用 については 評 価 するのが 平 均 的 な 意 見 である。その 一 方 、ハイエンドについては、 軍 事 分 野 の 特 殊 性 を 認 め、 民 生 品 利 用 には 限 界 があるとも 指 摘 している。今 回 、 関 心 を 引 いたのが、ビジネス 手 法 の 活 用 に 関 する 動 きが 活 発 だったことである。これは、 部品 などのモノではなく、ビジネスの 考 え 方 自 体 を 軍 事 分 野 に 入 れて 行 こうとする 動 きである。 軍 事 特有 の 制 度 に、 民 間 のビジネスの 方 法 を 導 入 することで、 効 率 化 を 図 ろうとしているのである。 後 述 するグローバル・サプライチェーンはその 典 型 である。 例 えば、 米 国 で 開 催 されるグローバル・サプライチェーンに 関 するセミナーに 行 くと、 軍 事 専 門 家 だけではなく、その 業 務 を 扱 っていた 元 日 用 品 大手 の 社 員 なども 参 加 しているのが 分 かる。また、20 年 の 軍 歴 を 経 て、MBA を 取 得 し、 防 衛 企 業 の 社長 として 活 躍 中 の 人 もいる。 彼 らは、 防 衛 ビジネスを、まさにビジネスとして 扱 っているのである。この 傾 向 は、 欧 州 も 同 じである。軍 民 両 用 技 術 政 策 のトレンド1: 民 生 化現 在 、 中 国 や 韓 国 は、 軍 民 両 用 技 術 を 活 用 した 技 術 政 策 を 進 めている。 特 に、 中 国 は 熱 心 である。これに 関 連 して、ショッキングなことがあった。2004 年 、 私 は、 日 本 で 民 生 分 野 の 技 術 を 軍 事 分 野に 応 用 すべく、 一 つの 大 きなプロジェクトを 立 てたことがあった。 同 プロジェクトには 米 国 の 専 門 家にも 参 加 してもらい、その 中 には、ペリー 国 防 長 官 の 下 で 軍 民 融 合 政 策 を 推 進 した 元 次 官 もいた。 文部 科 学 省 からの 支 援 を 得 るべく、そのプロジェクトを 政 府 に 申 請 したのだが、 理 解 を 得 られず 却 下 されてしまった。それから 10 数 年 後 、 再 び 元 次 官 を 訪 れると 一 冊 の 本 を 見 せられた。 中 国 語 の 本 である。 聞 けば、 彼 の 著 作 が 中 国 語 に 訳 され、それを 契 機 として 中 国 と 軍 民 両 用 技 術 に 関 するプログラムを 進 め、 報 告 書 を 出 したという。つまり、 中 国 に 先 回 りされたのである。 本 当 は 日 本 がやっておくべきことであった。もちろん、 日 本 でこの 動 きが 止 まったわけではない。 非 常 に 大 きく 動 き 始 めたのは、9.11 後 である。実 は、9.11 以 前 に 発 表 された「 第 2 期 科 学 技 術 基 本 計 画 」でも、「 安 心 ・ 安 全 で 質 の 高 い 生 活 のできる 国 」というスローガンが 掲 げられていたが、 予 算 も 少 なく、 見 るべき 進 展 はなかった。しかし、9.11を 契 機 に、 文 部 科 学 省 が「 安 全 ・ 安 心 な 社 会 」を 掲 げ 研 究 会 を 立 ち 上 げた。そこに 私 も 参 加 することになり、その 下 部 組 織 である 総 合 科 学 技 術 会 議 の「 安 全 科 学 技 術 プロジェクト・チーム」でも、 軍 民両 用 技 術 を 扱 うことになった。もっとも、 軍 事 に 直 結 する 技 術 というよりも、いわゆる「 安 全 ・ 安 心 」分 野 の、テロ 対 策 、 感 染 症 対 策 、サイバーテロ 対 策 など 軍 事 にかなり 近 い 分 野 に 民 間 技 術 を 転 用 しようというプログラムであった。 最 終 的 に、「 第 3 期 科 学 技 術 基 本 計 画 」には、こうした 議 論 がある 程度 盛 り 込 まれ、「 安 全 が 誇 りとなる 国 」というスローガンも 掲 げられた。そして、 推 薦 される 戦 略 のPolicy Perspectives No. 21- 3 -


中 に「 軍 民 両 用 技 術 」という 言 葉 も 入 ったのである。これは、 防 衛 ・ 警 察 ・ 消 防 は、 軍 民 両 用 技 術をより 活 用 していくべきだという 主 旨 である。このように、 少 しずつ 日 本 も 軍 民 両 用 技 術 の 活 用 に 向 けて 動 き 始 める 中 、 防 衛 省 も 着 実 に 取 組 を進 めてきた。 例 えば、 防 衛 省 は、 経 済 産 業 省 の 研 究 所 である 新 エネルギー・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構(NEDO)と 協 力 しつつ、この 分 野 を 発 展 してきたという 実 績 がある。その 具 体 例 の 一 つは、「 非冷 却 赤 外 線 センサー」の 開 発 である。 経 産 省 と 防 衛 省 が、 共 同 で 非 冷 却 赤 外 線 センサーを 共 同 開 発し、 防 衛 省 は 暗 視 カメラや 無 人 機 などを 念 頭 に 置 いたハイエンドのセンサーを、 他 方 で、 経 産 省 は、監 視 カメラや 車 載 カメラ、 医 療 用 機 器 への 活 用 など 民 間 用 途 のセンサーの 開 発 を 念 頭 に 進 めたプロジェクトである。もう 一 つの 例 として、「 中 小 企 業 技 術 革 新 支 援 」というプログラムが 挙 げられる。これは 米 国 で 始 まった 軍 事 と 民 間 を 絡 めた 両 用 技 術 のプログラムであるが、 日 本 では 経 済 目 的 を 前面 に 出 した 内 容 になった。ここには、 防 衛 省 も 参 加 し、 特 にロボット 用 モーターの 開 発 を 行 った。更 に、テロ 対 策 分 野 では、 総 合 科 学 技 術 会 議 の「 府 省 庁 連 携 プログラム」も 複 数 省 庁 共 同 で 立 ち 上げられた。その 後 、 民 主 党 政 権 下 では 動 きはなかったが、 今 回 、「 安 全 保 障 技 術 研 究 推 進 制 度 」が 平 成 27 年度 の 概 算 要 求 に 盛 り 込 まれようとしている。これは、 大 学 や 企 業 と 技 術 面 での 連 携 を 促 進 すべく、防 衛 省 だけの 予 算 で 支 援 を 行 う 画 期 的 制 度 である。以 上 述 べてきたのが、 軍 事 技 術 の「 民 生 化 」という 一 つの 大 きなトレンドである。軍 民 両 用 技 術 政 策 のトレンド2:グローバル 化近 年 の 民 軍 両 用 技 術 政 策 のもう 一 つの 大 きなトレンドは、「グローバル 化 」である。 冷 戦 終 結 後 、先 進 国 の 防 衛 市 場 は 縮 小 し、それに 伴 い 防 衛 産 業 の 再 編 が 起 きた。ペリー 米 国 防 長 官 のスピーチを引 用 するならば、いわゆる「ラスト・サパー( 最 後 の 晩 餐 )」と 呼 ばれる 企 業 再 編 の 動 きである。すなわち、 防 衛 産 業 界 の 再 編 を 促 すペリー 国 防 長 官 の 発 言 を 契 機 に、 再 編 が 加 速 し、1990 年 代 の 終わりには 大 手 4~5 社 に 集 約 された。 市 場 の 変 化 を 受 け、 経 済 合 理 性 に 従 って 再 編 が 進 んだのである。 欧 州 でも 同 じことが 起 こった。 欧 州 では 以 前 、 一 国 に 3~4 社 の 防 衛 企 業 が 存 在 することが 多かったが、ナショナル・チャンピオンを 作 るべく、 一 国 1 社 に 集 約 した。その 後 、その 集 約 された1 社 が、EU 単 位 で 合 併 や 提 携 を 繰 り 返 し、 競 争 力 のある 企 業 が 誕 生 した。その 中 では、BAE のように、 米 国 の 企 業 を 買 収 し、 欧 米 跨 る 企 業 に 変 質 したものもある。では、 日 本 の 状 況 はどうか。 日 本 は、 明 らかに 乗 り 遅 れた。その 原 因 の 一 つは、 武 器 輸 出 三 原 則 があるが 故 に、そもそも 防 衛 装 備 品 を 輸 出 できず、その 結 果 、 防 衛 省 市 場 に 頼 るしかない 状 況 があったことである。ただ、その 防 衛 省 市 場 が 一 定 の 規 模 を 有 していたため 再 編 は 起 こらなかった。 数 少 ない例 としては、 日 産 のミサイル 部 門 が、 日 産 がルノーに 買 収 されたのを 機 に 再 編 され、また、 艦 船 部 門でも 合 併 があった。ただし、これらは 防 衛 分 野 の 理 由 ではなく、 民 生 分 野 の 理 由 によるものである。その 後 、 防 衛 省 市 場 は 縮 小 を 続 け、 企 業 の 利 益 も 圧 迫 されたが、 必 要 な 再 編 は 起 こらなかった。Policy Perspectives No. 21- 4 -


武 器 輸 出 三 原 則 の 変 遷 ― 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 へそうした 中 でも、 武 器 輸 出 三 原 則 は 厳 として 存 在 したため、 日 本 政 府 は 非 常 に 難 しい 政 策 判 断 が 迫られた。20 年 前 の 防 衛 市 場 に 比 べ、 顕 著 に 進 む 民 生 化 とグローバル 化 の 流 れに 対 し、 本 来 その 実 態に 法 制 度 を 合 わせなければならないが、 日 本 には、いわゆる「 平 和 主 義 」が 存 在 し、 武 器 輸 出 三 原 則は、その 象 徴 的 存 在 となっていた。よって、 日 本 政 府 は 長 らく、「 平 和 主 義 」を 守 りながら、 民 生 化 とグローバル 化 という 二 つのトレンドとの 整 合 性 を 図 るという、 非 常 に 苦 しい 決 断 を 繰 り 返 すことになった。しかし、 結 局 、それも 限 界 に 達 し、 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 が 閣 議 決 定 されたと 言 える。こうした 視 点 から 武 器 輸 出 三 原 則 の 変 遷 を 概 観 すると、 次 のようになる。まず、1967 年 に 武 器 輸出 三 原 則 が 示 され、1976 年 に 三 木 内 閣 による 政 府 統 一 方 針 ということで、 全 ての 国 に 対 して、 武 器輸 出 は「 慎 む」とされた。その 後 、 民 生 化 とグローバル 化 のトレンドが 生 じ、1983 年 に、まず 対 米武 器 技 術 供 与 を 例 外 的 に 認 めた。これは、 日 本 の 民 生 技 術 の 価 値 が 米 国 から 見 て 上 昇 した 結 果 、 緩 和を 迫 られたものである。2004 年 には、それをミサイル 防 衛 分 野 にも 拡 大 し、 第 三 国 への 輸 出 も 想 定されるに 至 る。2011 年 には、 野 田 政 権 による、いわゆる「 包 括 的 例 外 化 」が 実 現 する。これは、 国 際共 同 開 発 が 世 界 的 潮 流 になったこと、そして、 平 和 維 持 活 動 など 自 衛 隊 が 海 外 で 活 動 することが 多 くなったことを 受 けた 緩 和 である。2013 年 には、F-35 戦 闘 機 の 製 造 等 に 係 る 国 内 企 業 の 参 画 も、 例 外措 置 として 認 められた。つまり、 例 外 化 措 置 を 積 み 重 ねてきたということである。その 結 果 、 武 器 輸出 三 原 則 は 形 骸 化 し、 更 には 運 用 が 複 雑 化 し 限 界 を 露 呈 することになる。それを 受 け、2014 年 4 月 、防 衛 装 備 移 転 三 原 則 を 閣 議 決 定 し、 一 定 条 件 下 での 輸 出 を 認 めることになったのである。経 済 理 論 から 考 える 日 本 の 防 衛 産 業 の 変 化 のための 条 件ここで、 歴 史 観 点 に 立 った 上 で、 日 本 の 防 衛 産 業 が 身 を 置 く 状 況 を 整 理 してみたい。 特 に「 制 度 」という 切 り 口 から 見 てみる。 例 えば、 新 しいことが 起 こるためには、まず、 考 え 方 が 変 化 しなければならない。 考 え 方 の 変 化 を 受 けて、それに 必 要 な 制 度 の 変 化 が 起 きる。 具 体 的 には、 法 律 である。そして、 法 律 などの 制 度 の 変 化 を 受 けて、インセンティブの 構 造 が 変 化 する。つまり、 人 の 行 動 が 変 化するのである。これによって、システムが 変 化 する。その 結 果 、ようやく 新 たなビジネス 活 動 が 可 能になるのである。つまり、システムの 変 化 というものは 簡 単 に 達 成 されるものではなく、その 原 点 は、人 の 考 え 方 の 変 化 にあるということである。それでは、 上 記 の 理 論 を、 日 本 の 防 衛 産 業 に 当 てはめるとどうなるのか。まず、 安 全 保 障 に 関 する 危機 感 が 変 化 した。 一 つは、 中 国 の 台 頭 などに 伴 う 危 機 感 であり、ここ 数 年 特 に 高 まりを 見 せている。もう 一 つは、 先 に 紹 介 したような、 防 衛 生 産 ・ 技 術 基 盤 の 弱 体 化 に 対 する 危 機 感 である。これらの 危 機 感によって、 武 器 輸 出 三 原 則 の 変 更 という 制 度 的 変 化 が 起 きた。 今 後 、 日 本 が 防 衛 装 備 品 の 海 外 移 転 を 進めていくためには、 防 衛 関 連 企 業 が 競 争 力 を 高 め、 自 らの 事 業 を 輸 出 事 業 にまで 育 てる 必 要 がある。それを 実 現 するためには、 先 に 示 した 理 論 に 基 づけば、あと 二 つのステップが 残 されている。 一 つは、 防衛 省 市 場 からグローバル 市 場 に 歩 み 出 すための 新 たなインセンティブの 創 出 であり、もう 一 つは、それを 踏 まえてのシステムの 転 換 である。ここに 至 ってはじめて、 競 争 力 のある 輸 出 事 業 が 生 まれる。Policy Perspectives No. 21- 5 -


こうして 考 えると、 米 国 の 企 業 はこれらのステップを 既 に 全 て 経 てきている。 冷 戦 が 終 結 することで 考 え 方 が 変 わり、 法 律 のフレームワークも 変 わり、そして、 時 に 国 境 を 超 えた 買 収 や 提 携 が 起こり、 最 終 的 に、 競 争 力 ある 軍 需 企 業 が 出 てきたのである。これに 対 して、 日 本 にはまだまだ 踏 むべき 段 階 が 残 っているのである。今 後 の 競 争 戦 略 のための 三 つの 前 提 条 件ビジネス 的 視 点 から、 今 後 の 日 本 の 防 衛 産 業 が 取 りうる 戦 略 と、その 前 提 を 提 示 したい。まず、前 提 であるが、 三 つほど 考 えられる。 一 つ 目 は、「 競 争 戦 略 」という 視 点 を 持 つことである。 日 本の 防 衛 産 業 は、 今 後 、グローバル 市 場 で 戦 うためには 国 際 競 争 力 が 必 要 であるが、それを 確 立 するための 戦 略 が 必 要 である。 二 つ 目 は、 海 外 の 市 場 を 奪 うという 視 点 である。そして、 三 つ 目 は、 日本 が 競 争 力 を 発 揮 しうる 強 みを 整 理 するという 視 点 である。同 時 に、 自 らの 弱 点 を 把 握 しておくことも 重 要 である。 現 実 問 題 として、 完 成 品 レベルでみると、日 本 の 防 衛 装 備 品 の 評 価 は 海 外 では 高 くない。 実 戦 でその 能 力 や 効 果 が 証 明 されていないからである。これは、 大 きなネックである。また、 価 格 の 高 さも 問 題 である。 事 実 上 価 格 競 争 が 存 在 しない防 衛 省 市 場 で 生 きてきた 日 本 の 防 衛 関 連 企 業 にとって、グローバル 市 場 で 戦 える 価 格 を 実 現 することは 容 易 ではない。では、 強 みはどこにあるのか。 完 成 品 レベルでみると、やはり、 潜 水 艦 建 造 技 術 であろう。 実 戦とは 言 わないまでも 実 動 経 験 を 伴 っている 以 上 、そのフィードバックや、それを 活 かした 技 術 も 進んでいると 思 われ、 海 外 でも 高 い 評 価 を 得 ている。 第 二 に、 圧 倒 的 に 評 価 が 高 いのが 民 生 技 術 である。 特 に、 材 料 ・ 素 材 分 野 。 具 体 的 には、 炭 素 繊 維 や、センサー、レーザー、 材 料 、コーティング材 、ハンダという 分 野 でも 強 みを 持 っている。 第 三 が、エレクトロニクス 部 品 などの 部 品 である。さらには、 組 み 合 わせ 技 術 を 含 む、 生 産 技 術 。よって、これらの 分 野 が 防 衛 分 野 にも 転 用 されたならば、 非 常 に 大 きな 強 みになる。ちなみに、こうした 声 は、 実 際 にワシントン D.C.でも 聞 かれた。日 本 の 防 衛 産 業 が 今 後 取 りうる 三 つの 競 争 戦 略これらを 踏 まえ、 競 争 戦 略 を 三 つ 提 示 したい。 一 つ 目 は、 国 際 共 同 開 発 ・ 生 産 という 枠 組 みを 活用 する 戦 略 である。これはまず、 日 本 が 強 みを 持 つ 材 料 ・ 部 品 分 野 から 初 めて、サブシステム、そして、システムへと 駆 け 上 がっていく 戦 略 である。 国 際 共 同 開 発 は、 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 ( 新 三 原則 )でも 認 められているところであり、 十 分 実 現 可 能 性 がある。この 手 法 は、 参 入 時 は 日 本 が 特 に強 みを 発 揮 できる 分 野 で 勝 負 し、その 後 、 世 代 が 変 わるごとにシェアを 上 げていく 戦 略 ともいえる。実 は、この 戦 略 は 既 に 日 本 企 業 が 米 国 企 業 と 共 同 生 産 を 進 めてきた 航 空 分 野 で 実 践 しており、 成 功を 収 めている。 具 体 的 数 字 挙 げると、ボーイング 767 機 生 産 時 代 、 日 本 の 参 加 比 率 は 15%であったのに 対 し、777 時 代 は、21%、そして、787 時 代 には 35%にまで 拡 大 している。このように、 時間 はかかるが、 実 績 のある 有 効 な 戦 略 である。もっとも、 民 間 分 野 とは 異 なり、 新 三 原 則 下 では 制約 もある。それが、 目 的 外 使 用 と 第 三 国 移 転 を 禁 じた 事 前 同 意 を 原 則 として 必 要 としていることである。ただし、 例 えば、 仕 向 け 先 の 管 理 体 制 が 確 保 されていれば 適 用 除 外 となることも、『 防 衛 装Policy Perspectives No. 21- 6 -


備 移 転 三 原 則 の 運 用 指 針 』において 示 されており、 留 意 すべきである。二 つ 目 は、グローバル・サプライチェーンにおける 役 割 分 担 の 戦 略 である。これは、ライセンス 生産 部 品 の 受 注 から 始 めて、グローバル 一 括 生 産 へと 展 開 し、 更 には 関 連 部 品 ・ 材 料 分 野 へと 拡 大 するという 戦 略 である。 特 に、 日 本 が 得 意 とする、 素 材 、 部 品 、 生 産 技 術 を 活 用 した 取 組 みが 考 えられる。まず、この 戦 略 に 関 連 する 現 状 から 整 理 すると、 米 国 では 今 、 国 防 予 算 が 削 減 されつつある。そのため、 防 衛 装 備 品 等 の 生 産 は 落 ちる。 体 力 のあるシステム・インテグレーターは 生 き 残 るものの、 素 材や 部 品 を 提 供 している 下 部 組 織 たる 企 業 は 苦 境 に 立 たされる。その 結 果 、 米 国 の 部 品 メーカーなどは、市 場 から 次 々と 撤 退 している。ここに、 日 本 企 業 にとってのチャンスがある。 例 えば、 日 本 で 生 産 する 米 国 のライセンス 生 産 品 が、 米 国 国 内 で 生 産 できなくなってきた 場 合 には、 日 本 がそれを 担 いうる。これを 契 機 として、 全 世 界 で 使 用 されている 米 国 製 防 衛 装 備 品 の 特 性 を 捉 え、グローバルな 一 括 生 産を 担 おうとするのがこの 戦 略 である。それでは、 新 三 原 則 との 整 合 性 はどうか。 目 的 外 使 用 や 第 三 国移 転 に 関 連 する 制 約 を 受 けることには 変 わりないが、この 点 も 仕 向 け 先 の 管 理 体 制 さえ 確 認 できれば、実 現 可 能 である。もっとも、「 我 が 国 との 間 で 安 全 保 障 面 での 協 力 関 係 がある 諸 国 」の 解 釈 については 議 論 の 余 地 があり、 若 干 不 鮮 明 な 部 分 もあるが、それでも、 一 つの 大 きな 可 能 性 を 秘 めた 形 態 である。三 つ 目 は、「 守 る 分 野 」の 完 成 品 の 輸 出 する 戦 略 である。 対 テロ 対 策 、 感 染 症 対 策 、サイバーテロといった、いわゆる「 安 全 ・ 安 心 」 分 野 から 始 まり、ミサイル 防 衛 など、「 守 る 分 野 」において 競 争 力を 確 立 するという 方 法 である。 特 に 最 近 の「イスラム 国 (IS)」の 動 向 を 見 る 限 り、 今 後 は、 日 本 国内 でもテロが 起 きる 可 能 性 がある。よって、テロ 対 策 機 器 は、これからますます 重 要 になるであろう。そうした 分 野 で 競 争 力 を 確 立 していくのは、 一 つの 在 り 方 である。また、「 安 全 ・ 安 心 」 分 野 のものは、 特 に 普 通 の 兵 器 と 違 って、 日 本 も 強 みを 発 揮 しやすい。なぜなら、テロや 感 染 症 、サイバー 攻 撃などは、 日 本 も 日 々 脅 威 に 晒 されており 対 応 している 分 野 で、 実 際 的 知 見 があるからである。 更 に、この 分 野 は、 民 生 技 術 が 活 用 されるところでもある。 例 えば、 日 本 の 空 港 に 設 置 しているテロ 対 策 機器 であるペットボトルの 検 査 器 を 開 発 したのは、 実 は、 東 京 ガスの 子 会 社 、 東 京 ガスエンジニアリングという 会 社 である。 同 社 は、 床 暖 房 に 携 わっているが、 床 暖 房 というものは、 床 下 に 水 を 張 りそれをガスで 温 めることで 効 果 を 得 ている。その 際 一 番 困 るのは、 水 に 可 燃 物 が 混 入 することである。よって、 東 京 ガスは、それを 非 常 に 厳 正 に 検 査 していた。その 技 術 が 活 かされたのが、この 検 知 器 である。 水 に 精 通 していた 東 京 ガスが、 少 し 視 点 を 変 えることで、テロ 対 策 機 器 を 生 み 出 したのである。同 じような 話 が、ダイキンのストリーマ 技 術 。 新 インフルエンザが 流 行 した 際 、この 技 術 を 使 った 空気 清 浄 機 が 相 当 な 人 気 を 得 た。そのストリーマ 技 術 の 原 点 は、シックハウス 症 候 群 の 女 性 を 助 けようとした、ダイキンの 技 術 者 の 取 り 組 みにある。そして、 空 気 中 から 化 学 物 質 を 取 り 除 く 技 術 を 次 々と開 発 したのである。その 結 果 、ウィルスを 除 去 する 可 能 性 に 発 展 し、これをベトナムの 国 立 研 究 所 で試 し、 効 果 を 実 証 した。その 頃 にちょうど 新 インフルエンザが 流 行 し、 大 ヒット 商 品 が 生 まれたのである。ダイキンはもちろん 防 衛 事 業 も 担 っているが、 空 気 の 専 門 家 として、テロ 対 策 や 感 染 症 対 策 など「 安 全 ・ 安 心 」 分 野 でも 更 なる 活 躍 が 期 待 できる。Policy Perspectives No. 21- 7 -


日 本 の 防 衛 産 業 はまず「 守 る 分 野 」から 発 展 を日 本 には、こうした 職 人 技 のような 分 野 に、 可 能 性 を 秘 めた 技 術 が 多 くある。こうした 分 野 の 特性 は、「 守 る 分 野 」で 相 当 活 きる 可 能 性 がある。なぜなら、「 守 る 分 野 」は、 精 度 を 99%から 99.5%に。99.5%を 99.9%に 上 げることが 求 められるが、これこそが、「 匠 」の 技 だからである。 日 本 人 は、特 にターゲットを 設 定 し、それに 向 かって 課 題 を 解 決 していくことに 長 ける。そういう 意 味 でも、「 守 る 分 野 」に 着 目 した 完 成 品 の 輸 出 には、 大 いに 可 能 性 がある。ここで、 経 済 安 全 保 障 や 技 術 政 策 と 並 び、もう 一 つの 専 門 分 野 である、「 文 化 ビジネス」という観 点 からも 事 例 を 紹 介 したい。 京 都 では、「 現 代 の 名 工 」を 発 掘 する 取 組 をしている。その 中 には、例 えば、 職 歴 40 年 を 誇 る、レンズ 磨 き 職 人 がいる。この 名 工 の 技 は、 防 衛 分 野 でも 大 いに 活 かせるであろう。また、 職 歴 30 年 以 上 というガラス 拭 き 職 人 は、 特 殊 なガラスを 作 り 上 げる 技 を 活 かせば、 感 染 症 対 策 としての 検 査 機 器 などで 大 きな 成 果 が 期 待 できる。 日 本 には、その 様 に、 多 くの可 能 性 を 秘 めた、 本 当 に 優 れた 技 術 がある。 新 三 原 則 に 関 連 して 言 えば、「 平 和 貢 献 ・ 国 際 協 力 」分 野 で、 大 いに 活 用 できる 技 術 があるであろう。また、ビジネスを 生 み 出 すには、インセンティブという 観 点 も 重 要 である。 現 実 問 題 として、 一足 飛 びに 攻 撃 的 な 兵 器 を 輸 出 することには、メーカー 側 にも 抵 抗 があるだろう。なぜなら、 用 語 の使 い 方 こそ 誤 ってはいるが、「 死 の 商 人 」という 批 判 を 浴 びうるからである。 企 業 イメージを 悪 化するリスクがある 以 上 、 新 しいインセンティブにはならない。しかし、「 守 る 分 野 」であれば 話 は異 なるのではないか。 平 和 貢 献 や 国 際 協 力 に 活 かされる 技 術 を 担 う。これは、 関 係 する 技 術 者 にも大 きなインセンティブになるだろう。そういう 意 味 でも、「 守 る 分 野 」から 完 成 品 の 輸 出 を 試 みるのが 望 ましい。もちろん、「 守 る 分 野 」という 議 論 をすると、「 攻 める 分 野 」との 境 界 の 曖 昧 さを 指 摘 する 批 判を 受 けうる。しかし、 技 術 的 にはそういう 側 面 があったとしても、 概 念 的 には、 異 なる 立 場 、「 守る」という 方 向 から 進 めていくというのが、 日 本 のやり 方 だと 考 える。戦 略 実 現 のための 方 策では、これまで 紹 介 した 戦 略 を 実 現 するための 方 策 について 述 べたい。その 一 つは、「 安 全 ・ 安心 」と「 防 衛 」の 技 術 基 盤 の 統 合 である。「 安 全 ・ 安 心 」 分 野 と「 防 衛 」 分 野 は、 概 念 的 には 分 かれているが、 技 術 的 には 相 当 共 通 する 部 分 がある。しかし、 担 当 する 省 庁 が 異 なるため、まるで 別 物のようになってしまった。 経 産 省 や 文 科 省 が 実 施 すれば「 安 全 ・ 安 心 」、 防 衛 省 が 実 施 すれば「 防衛 」というように。そこで 例 えば、 防 衛 省 と 経 産 省 である 程 度 組 織 的 連 携 を 図 る 必 要 がるのではないか。 先 に 紹 介 した、 防 衛 省 と NEDO の 連 携 は 良 い 例 である。そして、 資 金 は 防 衛 省 から 防 衛 産業 界 に 供 給 する。その 過 程 では、 例 えば「 新 しい 脅 威 」と 呼 ばれる 分 野 に 関 連 するものは、「 安 全 ・安 心 」 分 野 に 関 与 する 産 業 にも、 資 金 は 供 給 される。その 他 にも、 大 学 やベンチャー 企 業 とも 連 携し、 資 金 も 供 給 する。すると、 政 府 が 供 給 した 資 金 は、ハイエンドでは 防 衛 分 野 に 代 表 される 政 府のニーズのために 活 かされることになるが、 商 業 的 に 使 える 分 野 については、 民 生 市 場 で 活 かされPolicy Perspectives No. 21- 8 -


ることになる。 先 ほどの 非 冷 却 赤 外 線 センサーの 例 で 言 えば、ハイエンドは 防 衛 省 向 けとして、その他 は 民 生 向 けとして 活 用 される。つまり、 特 に 民 間 で 開 発 ・ 製 造 されたもので、 収 益 化 を 図 るのである。 企 業 としては、 政 府 の 資 金 を 活 用 して、ある 程 度 の 開 発 をすることができ、それに 更 なる 工 夫 を加 えて 製 品 化 を 図 り、そして 収 益 化 する。 収 益 化 が 実 現 すれば、 更 なる 技 術 革 新 が 進 むことになり、その 成 果 を「 防 衛 」・「 安 全 ・ 安 心 」 分 野 の 更 なる 研 究 ・ 開 発 に 活 かすことができる。まさに、 政 府 資金 を 活 用 した、 好 循 環 が 生 まれるのである。そしてこの 好 循 環 は、 将 来 的 に 日 本 の 技 術 基 盤 を 更 に 強めることになる。そのためにも、 防 衛 省 ・ 経 産 省 ・ 文 科 省 ・ 厚 労 省 など、 技 術 的 な 共 通 性 のある 省 庁はもっと、 連 携 を 密 にすべきである。次 に 提 案 したいのは、 政 府 資 金 を 活 用 した 技 術 開 発 を、 民 生 分 野 でそれを 収 益 化 する 取 組 みである。政 府 資 金 の 問 題 点 は、その 一 過 性 にある。 例 えば、3 年 間 で 5,000 万 円 という 資 金 を 政 府 の 助 成 で 得たとしても、4 年 目 には、ほとんどの 場 合 、 新 たな 資 金 は 得 られない。よって、 政 府 資 金 を 獲 得 できた 当 初 は 意 欲 も 上 がり、 研 究 も 進 むが、 資 金 供 給 が 途 絶 えると 共 に、 意 欲 も 下 がり、 研 究 も 進 まなくなり、その 結 果 、 無 駄 になってしまうことが 多 いのである。やはり、 資 金 を 使 うのであるから、 成 果として 活 かさなければならない。そして、 収 益 化 しなければならない。そうすることではじめて、 政府 の 資 金 が 活 かされるのである。 政 府 資 金 の 支 出 から、 民 間 分 野 での 収 益 化 への 連 接 を 如 何 に 図 るかが、 日 本 の 課 題 である。ただ、 最 近 、 日 本 でもこの 課 題 を 解 決 しようとする 動 きが 出 てきた。 例 えば、 政 府 が 手 掛 ける、 革新 的 研 究 開 発 推 進 プログラム(ImPACT)である。プログラムでは、プロジェクト 全 体 を 管 理 できる人 材 である「プロジェクト・マネージャー」を 雇 っている。この 取 り 組 みが 軌 道 にのり、プロジェクト・マネージャーが 民 生 分 野 でも 活 躍 できるようになって、 更 には、 民 生 分 野 の 技 術 的 成 果 を 政 府 の技 術 開 発 へとスピン・オンすることができれば、 相 当 面 白 い 展 開 になる。これは、いわば、 次 世 代 のプロジェクトを 立 ち 上 げ、 現 在 時 点 で 活 躍 する 企 業 を 巻 き 込 むことで 収 益 化 を 図 り、その 過 程 でのフィードバックを 得 て、 次 なるプロジェクトに 繋 げるという 政 府 資 金 と 民 生 分 野 の 収 益 化 サイクルを 構築 するということである。グローバル 事 業 展 開 に 乗 り 越 えるべき「 壁 」これまで 戦 略 的 観 点 からの 議 論 をしてきたが、 最 後 に、 日 本 の 防 衛 産 業 がグローバルに 事 業 を 展開 するために 乗 り 越 えなければならない「 壁 」について 言 及 する。まず、 政 策 レベルでは、「 受 身 型 」からの 転 換 である。 現 在 の 対 外 防 衛 技 術 政 策 は、 海 外 からの 協 力 要 請 を 受 けて、それに 対 応 するという 受 動 的 なものである。 問 題 は、 日 本 として 目 指 している 方 向 性 が 不 明 確 な 点 である。もちろん、 防衛 装 備 ・ 技 術 協 力 は、それ 自 体 に 政 治 的 な 意 義 ある。しかし、それがビジネスに 発 展 するかというと話 は 別 である。よって 政 府 は、 日 本 や 日 本 の 企 業 が 新 規 参 入 者 であることを 強 く 自 覚 し、 日 本 の 防 衛産 業 の 位 置 づけを 明 らかにしつつ、しかるべき 戦 略 を 示 すことが 必 要 である。そうすることで、 積 極的 に 動 くべき 分 野 等 も 明 確 になり、 能 動 的 な 動 きがとれるようになる。 政 府 の 姿 勢 が 明 確 でない 現 状では、 産 業 界 も 企 業 も、 積 極 的 な 動 きはとりにくいであろう。Policy Perspectives No. 21- 9 -


もう 一 つは、 業 界 ・ 企 業 の 方 の「カルチュアル・チェンジ」である。 日 本 の 防 衛 産 業 界 は、 今まで 防 衛 省 市 場 に 依 存 していた。しかし、 今 後 、グローバル 市 場 に 出 ていくとなると、 様 々なリスクや 変 化 に 対 応 する 覚 悟 を 持 つ 必 要 がある。これは、 奇 跡 が 起 こらないとできない 類 のものではない。 他 の 業 界 では、 普 通 に 経 験 してきているものだ。 例 えば、 通 信 業 界 では、 昔 は「 電 電 ファミリー」と 呼 ばれるものがあり、 電 電 公 社 が 市 場 を 握 っていた。そこに 自 由 化 が 起 こり、グローバル 化が 起 こり、 今 や、ヤフー 社 やソフトバンク 社 などの 新 規 企 業 が 活 躍 している。 新 規 参 入 もあり、 既存 企 業 も 努 力 をし、 新 旧 乱 れて 新 しい 世 界 を 作 ってきたのである。 防 衛 産 業 も、ある 時 点 で 国 内 市場 から、 海 外 へ 進 出 しなければならない。それが 恐 らく、 今 であろう。ただ、そのためには、 相 当な 覚 悟 が 必 要 であり、 実 はこれが 一 番 難 しい。いくら 法 律 や 制 度 を 変 えても、 政 策 を 作 る 人 と 実 際に 動 く 人 が 意 欲 を 持 たなければ、なかなか 転 換 できない。新 三 原 則 が 示 されて 以 来 、 私 がメディアから 取 材 を 受 ける 機 会 が 明 らかに 増 えた。 時 には、 国 内のバラエティー 番 組 や 海 外 のマスコミから 取 材 を 受 けることさえある。そこからは、 国 内 における防 衛 産 業 や 防 衛 分 野 への 関 心 の 高 まり、そして、 海 外 における 日 本 の 防 衛 装 備 移 転 政 策 へ 期 待 と 関心 の 高 まりを 感 じる。 特 に、 海 外 のそれは 顕 著 である。 例 えば、 軍 民 両 用 技 術 に 関 していえば、 平成 27 年 度 の 概 算 要 求 に 盛 り 込 まれた「 安 全 保 障 技 術 研 究 推 進 制 度 」を、 日 本 独 自 で 活 用 するのか、それとも 海 外 勢 にも 門 戸 を 開 放 するのか、その 活 用 方 法 が 注 目 されている。また、 懸 念 事 項 としては、 第 三 国 への 技 術 流 出 の 可 能 性 。 既 に、いわゆる 産 業 スパイと 呼 ばれるような、 日 本 が 望 まない形 で 日 本 の 技 術 に 関 心 を 示 す 人 々が 国 内 で 活 動 していることは、 事 実 であろう。 実 際 、 京 都 でも 懸念 すべき 動 きがみられ、 京 都 府 警 もこの 点 に 非 常 に 注 意 を 払 っている。ちなみに、 京 都 府 警 とは、京 都 からの 技 術 流 出 を 防 止 するために、 事 業 会 と 連 携 して、 啓 蒙 活 動 を 始 めている。そうした 動 きがある 一 方 で、 場 合 によっては、 合 法 的 に、 技 術 を 流 出 させうる 状 況 にあるという 現 実 もある。まさに、これこそがグローバル 化 の 結 果 である。 技 術 流 出 を 防 止 するための 政 策 をも 真 剣 に 考 えるべき 段 階 に 今 来 ている。そういう 意 味 で、 新 三 原 則 の 閣 議 決 定 を 受 け、「 幕 は 切 って 落 とされた」と言 える。パネリスト 発 表司 会 : 西 山 淳 一 ( 未 来 工 学 研 究 所 研 究 参 与 )2014 年 4 月 に 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 が 閣 議 決 定 され、 防 衛 装 備 品 のグローバル 市 場 に 日 本 も 参 加できるようになった。これは、 日 本 の 防 衛 産 業 が 国 際 競 争 にさらされることをも 意 味 する。 周 知 のとおり、 現 在 、 日 米 で 共 同 開 発 中 の SM-3 の 他 、 日 英 での 化 学 防 護 服 、 日 仏 での 水 中 無 人 機 、 日 独での 戦 車 技 術 、 日 豪 での 潜 水 艦 技 術 、それから 日 米 での 無 人 潜 水 艦 の 共 同 研 究 ・ 開 発 等 、 様 々な 案件 が 生 じつつある。この 他 にも、インドへの US-2 の 輸 出 の 可 能 性 や、F-35 戦 闘 機 に 関 連 するグローバル・サプライチェーンへの 参 画 も 準 備 が 進 んでいる。また、2014 年 6 月 には、 英 国 に 対 するPolicy Perspectives No. 21- 10 -


ミサイル 関 連 技 術 の 移 転 と 米 国 に 対 するミサイル 部 品 の 移 転 が、 政 府 から 許 可 された。 更 に、 今 後 は防 衛 装 備 品 の 開 発 だけではなく、 諸 外 国 の 防 衛 関 連 企 業 への 投 資 や 買 収 、ジョイント・ベンチャーの設 立 などが、 視 野 に 入 る 可 能 性 もある。しかしながら、 各 種 の 可 能 性 が 開 けたとはいえ、 関 門 も 多 いと 思 われる。そこで 本 日 は、 専 門 家 の方 々から 知 見 を 頂 き、 新 三 原 則 が 日 本 と 日 本 の 防 衛 産 業 に 与 える 影 響 について 議 論 し、 課 題 を 明 らかにして、 今 後 の 日 本 の 防 衛 産 業 の 方 向 性 を 見 出 してみたい。発 表 1.「ユーロサトリに 見 る 国 際 動 向 と 日 本 の 課 題 」浅 利 眞 (クライシス・インテリジェンス 社 代 表 取 締 役 )クライシス・インテリジェンス 社 ( 以 下 :CI 社 )は、EUROSATORY(ユーロサトリ)というフランスで 開 催 されている、 世 界 最 大 級 の 防 衛 ・セキュリティー 分 野 の 展 示 会 の 日 本 代 理 店 を 務 めている。2014 年 6 月 、ユーロサトリに 出 展 した 際 には、 戦 後 初 めて 日 本 の 企 業 が 防 衛 ・セキュリティー分 野 の 展 示 会 に 出 展 したとする 報 道 があったが、 実 は、 事 実 とは 異 なる。CI 社 は、2013 年 にも、 同じく 代 理 店 を 務 めている、DSEI という 英 国 で 開 催 されている 同 じく 世 界 最 大 級 の 防 衛 ・セキュリティー 分 野 の 展 示 会 に、 他 の 日 本 企 業 3 社 と 共 に 出 展 している。 恐 らくこれが、 戦 後 初 めて 出 展 した 日本 のパビリオンとなる。その 際 に 参 加 したのは、 携 帯 型 サーチライトを 擁 する 企 業 、ガラス 加 工 を 専門 とする 企 業 、 鉄 道 車 両 などに 使 われる 大 容 量 の 電 源 のコネクターを 製 造 する 企 業 、そして CI 社 である。この 時 は、 事 実 上 、 報 道 関 係 者 から 注 目 を 浴 びることはなかった。この 6 月 にユーロサトリに出 展 した 際 には、「『 死 の 商 人 』を 率 いる 悪 魔 」というような 報 道 もされたが、 出 展 したエリアは、 実際 には、セキュリティー・ 防 災 エリアであった。また、 実 は、 今 回 の 出 展 は 武 器 輸 出 三 原 則 の 見 直 しを 見 据 えたものではなく、2013 年 の 早 い 時 期 から 準 備 していたものであった。ユーロサトリ 側 からは、 武 器 よりもセキュリティーや 防 災 分 野 の 展 示 を 期 待 されたため、 多 くの 企 業 にお 声 掛 けし、 防 衛省 や 企 業 の 方 々の 協 力 を 得 て、 今 回 は 大 手 を 含 め 12 社 で 出 展 することができた。CI 社 は、 約 10 年前 から、DSEI やユーロサトリなどの 海 外 の 防 衛 ・セキュリティーの 展 示 会 に 出 入 りしている。そこで、 展 示 会 を 通 じて 見 えてくる、 国 際 的 な 兵 器 市 場 の 変 化 についてまず 紹 介 したい。特 筆 すべきは、 高 付 加 価 値 機 材 、 非 正 規 戦 分 野 、 分 野 の 拡 大 である。 高 付 加 価 値 機 材 には、 特 に 大手 企 業 が 開 発 している 正 面 装 備 が 当 たる。この 10 年 間 の 動 向 を 見 ても、 機 材 の 少 量 化 、 高 性 能 化 が進 み、 高 付 加 価 値 の 商 品 がかなり 増 えている。 非 正 規 戦 分 野 は、9.11 以 降 、 顕 著 である。 元 々 防 衛 ・セキュリティーの 展 示 会 では、 装 甲 車 等 の 正 面 装 備 の 紹 介 が 多 かった。しかし、 最 近 は、 特 殊 部 隊 が使 用 するものや、 対 テロ 分 野 の 装 備 品 等 の 紹 介 が 増 えている。この 背 景 には、 犯 罪 組 織 の 重 武 装 化 がある。 展 示 会 では 警 察 組 織 も 対 象 にしており、 非 正 規 戦 関 連 の 取 扱 いが 増 えている。 分 野 の 拡 大 とは、防 衛 ・ 防 犯 ・ 防 災 の 境 界 がなくなりつつあることを 意 味 している。 今 回 のユーロサトリで 日 本 のパビリオンが 位 置 したのも、 実 は、「セキュリティー・ 防 災 」を 扱 うエリアであった。 防 衛 も、 防 犯 も、 防Policy Perspectives No. 21- 11 -


災 も、 人 の 命 を 守 る、 脅 威 から 何 かを 守 るという 点 には 変 わりがない。その 意 味 で、 最 近 、 多 くの企 業 が「クライシス・マネジメント」という 言 葉 を 使 い 始 め、それに 合 わせて 危 機 管 理 機 材 を 提 案するという 流 れが 顕 著 になっている。 例 えば、 今 回 の 提 示 では、 空 気 中 の 水 分 をとって 水 を 作 る 機材 や、 発 送 電 インフラがないところで 電 力 を 作 り、それを 基 地 内 に 提 供 できる 機 材 など、 後 方 支 援的 用 途 の、もしくは 防 災 にも 使 えるような 機 材 が 紹 介 されていた。2 度 にわたる 展 示 会 への 出 展 を 経 て、 実 は、 日 本 企 業 にも 大 きな 商 機 があると 感 じている。その理 由 の 1 点 目 は、 納 期 を 守 れる 強 みがあることである。 国 際 的 な 防 衛 市 場 においては、 納 期 の 遅 延などは 日 常 茶 飯 事 である。2 点 目 は、「カイゼン」に 長 けることである。そして 3 点 目 は、 価 格 での劣 勢 を 凌 駕 しうる 品 質 の 高 さである。 諸 外 国 の 軍 人 と 話 すと、 命 を 預 ける 装 備 は、 品 質 を 最 重 要 視したいという 声 が 多 い。 実 は、 価 格 より 性 能 と 品 質 が 重 視 されるのが、この 分 野 の 特 徴 である。一 方 、 展 示 会 に 出 展 することで、 日 本 企 業 が 持 つ 課 題 も 見 えて 来 た。 最 も 大 きな 課 題 は、 運 用 の観 点 よりも、 技 術 の 観 点 に 立 った 説 明 が 多 いことである。 実 戦 を 経 験 していないことが 最 大 の 理 由であろうが、 展 示 会 場 を 訪 れる 方 の 多 くは、 技 術 者 ではなくユーザーである。よって、もっと 運 用の 観 点 に 立 った 提 案 ができるようにならなければならない。 次 に、 即 断 即 応 できるセールス 開 発 体制 である。DSEI でもユーロサトリでも 製 品 販 売 に 対 する 日 本 の 姿 勢 を 疑 う 声 が 度 々 聴 かれた。 例えば、ある 企 業 はユーロサトリにおいて、2 ヶ 月 後 のデモンストレーションを 要 請 されたが、 諸 事情 から、やむを 得 ずお 断 りしてしまった。 顧 客 の 要 求 に 即 応 できる 体 制 が 必 要 である。そして、 実戦 に 関 する 情 報 の 欠 如 も 課 題 である。 特 に 軍 関 係 者 は、 製 品 を 導 入 したことによる、 実 戦 での 具 体的 効 果 を 求 めている。では、 上 記 の 課 題 を 解 決 するために、 日 本 には 何 が 必 要 になるのか。まず、1 点 目 は、 実 戦 や 現 場を 経 験 した 方 の 知 見 を 導 入 することである。 例 えば、 日 本 も 防 災 分 野 については 多 くの「 実 戦 」を 経験 している。 一 方 、 世 界 的 に 見 れば、 実 は 防 災 用 品 の 提 案 はあまりなされていない。よって、 日 本 が有 する 防 災 関 連 装 備 には、 諸 外 国 も 関 心 を 持 っている。また、 防 犯 分 野 も 同 様 である。 実 際 、ユーロサトリは 警 察 や 消 防 関 連 のブースもあり、 多 くの 関 係 者 が 訪 問 している。まずは、 日 本 が 防 災 など、知 見 を 積 み 重 ねてきた 分 野 の 商 品 作 りや 提 案 から 注 力 することが 望 ましいのではないか。 次 に 2 点目 は、より 一 層 の 国 の 関 与 である。 例 えば、 英 国 のパビリオンには、 普 段 装 備 を 扱 う 軍 人 自 らが 制 服を 着 て 立 ち、フランスは 軍 人 が 防 衛 装 備 品 のデモンストレーションを 行 っている。そこには、 説 得 力が 出 てくる。いずれ、 防 衛 省 に 限 らず、 警 察 や 消 防 の 方 にパビリオンに 立 って 頂 きたい。また 3 点 目は、 大 型 製 品 よりも、 小 型 製 品 を 買 って 頂 き、 日 本 企 業 に 対 する 信 頼 感 を 獲 得 していくことである。防 衛 市 場 において 日 本 製 品 は、 期 待 感 こそあるが、 未 知 数 な 存 在 であることを 忘 れてはならない。そして 4 点 目 は、 素 材 分 野 における 技 術 の 提 案 である。これは 実 際 に、 海 外 から 要 請 されている。Policy Perspectives No. 21- 12 -


発 表 2.「 防 衛 装 備 三 原 則 と 推 進 のための 諸 施 策 」山 崎 剛 美 (ロッキード・マーチン・オーバーシーズ・コーポレーション、コンサルタント)ロッキード・マーチンのコンサルタントなってから、 様 々な 企 業 や 政 府 関 係 者 から 多 くの 質 問 を 頂くが、「 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 を 推 進 しただけでは、 防 衛 産 業 は 発 展 しないのではないか」という 質 問がよくある。 回 答 は、「その 通 り」である。 今 回 示 された 新 三 原 則 は、あくまで、 防 衛 装 備 品 を 巡 る 環境 を 改 善 する 一 つの 施 策 だと 考 える。そこで、まず 初 めに、2014 年 6 月 19 日 、 防 衛 省 が 示 した『 防 衛 生 産 ・ 技 術 基 盤 戦 略 』に、 現 状 を打 開 する 更 なるヒントを 求 めたい。 例 えば、 契 約 制 度 の 改 善 、 研 究 開 発 に 関 わる 諸 施 策 の 更 なる 推 進 、そして、 防 衛 企 業 への 取 組 みである。 特 に、 企 業 経 営 トップへの 防 衛 事 業 に 対 する 理 解 促 進 。また、国 民 への 理 解 促 進 は 重 要 である。また、 防 衛 省 は、 平 成 27 年 度 予 算 の 概 算 要 求 で「 防 衛 装 備 庁 」を提 案 しているが、 同 庁 を 介 しての 関 係 省 庁 との 連 携 も 欠 かせない。これらを 総 合 的 に 推 進 することで、防 衛 産 業 の 更 なる 発 展 も 図 れるであろう。関 係 者 から 頂 く 質 問 には、 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 の 背 景 を 問 うものもある。まず、その 一 つに 挙 げられるのは、 安 倍 内 閣 で 提 唱 された「 積 極 的 平 和 主 義 」である。これは、 安 全 保 障 環 境 がより 厳 しさを増 す 中 、 国 際 社 会 の 平 和 や 安 定 などに 積 極 的 に 寄 与 する 姿 勢 を 示 している。この 積 極 的 平 和 主 義 においては、いわゆる 防 衛 装 備 協 力 も、 関 連 する 政 策 の 一 つと 位 置 づけられている。また、 国 際 共 同 開 発等 への 参 加 の 制 約 も 要 因 の 一 つである。 武 器 輸 出 三 原 則 下 では、 相 当 な 制 約 があり 国 際 共 同 開 発 等 に参 加 できないとなると、 例 えば、 先 端 装 備 品 へのアクセスが 出 来 ない。また、 同 盟 国 や 友 好 国 との 関係 強 化 をも 阻 害 することになる。 更 に、 予 算 や 技 術 、 市 場 などが 限 られる 中 、 防 衛 生 産 ・ 技 術 基 盤 の維 持 ・ 強 化 という 観 点 からも 望 ましくない。もっとも、 平 成 23 年 に 官 房 長 官 談 話 において、 国 際 共同 開 発 等 は 包 括 的 に 緩 和 されたが、 政 府 間 による 事 前 同 意 が 必 要 であったことから、 事 実 上 、 企 業 間が 機 微 な 情 報 を 持 ち 寄 って 事 前 に 調 整 することすらできなかった。 背 景 にあるその 他 の 要 因 としては、長 年 積 み 重 ねてきた、21 件 に 及 ぶ 例 外 化 措 置 が 挙 げられる。また、 本 来 共 同 すべき、 同 盟 国 に 対 する整 備 支 援 すら 出 来 ないという 状 況 。 更 に、 海 外 投 資 の 禁 止 。これらが、 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 の 背 景 である。そして、 防 衛 力 を 支 えるにあたっては、「 運 用 」と「 後 方 」というものがある。 後 方 に 属 する「 後 方基 盤 」という 中 には、 部 隊 における「 整 備 基 盤 」や「 生 産 基 盤 」、あるいは「 技 術 基 盤 」がある。 戦後 、 日 本 は 工 廠 を 持 たなかったことから、それらのかなりの 部 分 を 企 業 が 担 っている。それらが、 予算 削 減 に 伴 う 物 件 費 の 削 減 といった 厳 しい 環 境 に 長 きにわたって 置 かれた。 更 に、 防 衛 分 野 の 研 究 開発 費 には、せいぜい 5%、 金 額 にして 年 間 1,500 億 円 程 度 しか 振 り 分 けられないという 状 況 もある。また、 武 器 輸 出 三 原 則 の 影 響 により、 平 成 8 年 、F-35 戦 闘 機 の 共 同 開 発 プロジェクトに 開 発 側 として 参 画 できなかった 影 響 もある。そして、 市 場 が 国 内 に 限 定 されているという 特 殊 な 状 況 もある。 更に 言 えば、 防 衛 装 備 品 の 高 価 格 化 、 高 性 能 化 、そして、 長 寿 命 化 によって、 装 備 品 の 生 産 数 量 が 減 少し、 企 業 の 操 業 量 が 低 下 し、それに 加 えて、 新 規 装 備 の 開 発 機 会 も 減 少 している。 他 には、 輸 入 装 備Policy Perspectives No. 21- 13 -


品 の 増 加 。 例 えば、 今 年 度 だけでも、チルトローター 型 ヘリコプター 機 、 高 高 度 無 人 機 。あるいはE-X がある。また、 契 約 面 においても、 競 争 入 札 が 拡 大 し、 企 業 のインセンティブを 大 きく 損 なっている。 一 言 で 言 えば、 防 衛 生 産 ・ 技 術 基 盤 を 取 り 巻 く 環 境 は、 大 変 厳 しい。それを 示 す 事 例 として、 技 術 者 を 含 む 防 衛 事 業 専 門 の 従 業 員 数 の 推 移 がある。 少 し 古 いデータではあるが、 平 成 8 年 から 18 年 の 10 年 間 で、130 社 ある 防 衛 装 備 工 業 会 の 会 員 企 業 に 属 する 防 衛 専 門 の 従 業 員 の 数 が、5万 7 千 人 から 4 万 2 千 人 へと、29%も 減 少 している。こうした 防 衛 生 産 ・ 技 術 基 盤 の 弱 体 化 も、 武器 輸 出 三 原 則 の 見 直 しを 促 した。次 に、 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 が 示 されたことによる 況 であるが、 一 言 で 言 えば、「ドアが 開 いたばかり」となる。ただ、 新 三 原 則 の 閣 議 決 定 を 前 後 して、 諸 外 国 の 関 心 が 大 変 高 まっているのは 事 実であり、 様 々なアプローチがある。 主 要 国 との 防 衛 装 備 ・ 技 術 協 力 だけを 取 り 上 げてみても、 例 えば、 日 米 では 7 年 ぶりに S&TF が 再 開 され、 日 英 では 防 衛 装 備 品 の 共 同 開 発 に 関 する 枠 組 み 協 定が 結 ばれている。また、 日 仏 や 日 豪 ででも、 関 連 交 渉 を 開 始 、あるいは 協 定 に 署 名 するなどの 動 きがある。そして、 日 印 では US-2 の 移 転 に 関 する 合 同 作 業 部 会 が 設 置 されている。その 他 にも、イタリア、ドイツ、ノルウェー、トルコ、イスラエル、ベトナムと 意 見 交 換 を 実 施 している。その 他 、西 山 氏 が 言 及 されたように、2014 年 7 月 には、 防 衛 装 備 品 の 海 外 移 転 を 許 可 する 具 体 的 な 動 きがあった。 一 つは 日 米 間 における、パトリオットの PAC-2 のシーカーに 関 するもの、もう 一 つは 日英 間 における、 超 音 速 中 距 離 空 対 空 ミサイル、ミーティアに 関 するものである。しかしながら、 全 般 的 に、 防 衛 関 連 企 業 は、 防 衛 装 備 移 転 に 慎 重 である。これは、 国 内 世 論 への配 慮 がその 背 景 にあると 思 われるが、これを 払 拭 するのは 難 しいであろう。ただ、そうした 中 でも、例 えば、パナソニックは、 自 社 のラップトップ 製 品 を、 諸 外 国 では「ミルスペック」として 販 売 しているとのことである。やはり、 企 業 トップのマインドセットによる 影 響 は 大 きい。また、 政 府 による 支 援 やガイドラインの 明 示 を 待 っていることも、 企 業 が 慎 重 な 姿 勢 を 見 せる 要 因 の 一 つであろう。ここからは、 村 山 先 生 が 戦 略 的 視 点 から 言 及 したことを 受 け、 戦 術 的 観 点 から、 防 衛 装 備 品 の 海外 移 転 を 進 める 上 で 必 要 な 諸 施 策 について 述 べたい。まず、 防 衛 省 に 三 つの 機 能 を 持 たせることが 最 低 限 必 要 である。それらは、 輸 出 政 策 機 能 、 輸 出管 理 機 能 、そして、 防 衛 技 術 情 報 の 調 査 ・ 分 析 機 能 である。もっとも、 防 衛 技 術 情 報 の 調 査 ・ 分 析は、 防 衛 省 だけでは 十 分 に 対 応 できないため、 例 えば、 防 衛 技 術 協 会 との 連 携 や、 経 産 省 中 小 企 業庁 などの 各 省 庁 との 協 力 も 必 要 である。 更 に、 防 衛 技 術 に 関 する 情 報 を、 政 府 として 一 ヶ 所 に 集 約することも 必 要 である。 次 に、 防 衛 装 備 ・ 技 術 協 力 の 促 進 。 米 国 との 一 層 の 協 力 強 化 、そして、アジア・ 太 平 洋 地 域 との 協 力 関 係 の 構 築 と 推 進 が 求 められる。 分 野 別 で 言 えば、 光 線 、デバイス、センサー、 素 材 分 野 における 協 力 が 挙 げられる。ちなみに、ロッキード・マーチン 社 は、 日 本 のティア・スリーやティア・フォーに 属 する 企 業 との 連 携 を 目 指 して、2014 年 11 月 に 企 業 説 明 会 をテキサス 州 のダラスで 実 施 する。また、20 年 以 上 将 来 の 防 衛 装 備 品 のためにも、 大 学 の 研 究 者 が 行 っPolicy Perspectives No. 21- 14 -


ている 各 種 の 理 論 にも 着 目 している。その 他 には、 移 転 した 防 衛 装 備 品 のサポート 体 制 。 要 員 の 養 成や 教 育 訓 練 、あるいはライフサイクルにわたる 支 援 について、 政 府 が 関 与 する 必 要 がある。また、 輸出 政 策 と 輸 出 管 理 に 関 する 専 門 家 の 養 成 。 例 えば、ワセナー・アレンジメントに 精 通 した 人 材 などである。そして、 輸 出 事 業 に 対 する 政 府 支 援 。 今 後 、 防 衛 省 以 外 への 納 入 を 前 提 とした 案 件 が 生 起 した場 合 、 従 来 、 防 衛 省 が 負 担 していた 初 度 費 が 支 払 われないことが 予 想 される。これは 企 業 の 負 担 を 増すことになるが、それを 軽 減 する 支 援 策 が 必 要 であろう。また、 直 接 的 な 支 援 策 以 外 には、 貿 易 保 険などの 活 用 も 考 えうる。そして、 非 公 開 裁 判 制 度 。これは 技 術 流 出 防 止 する 施 策 の 一 環 である。 現 状 、特 許 は 公 開 制 度 であるため、 機 微 な 技 術 や 防 衛 技 術 を 特 許 として 申 請 すると、 公 開 されることになる。また、 不 正 流 出 があった 場 合 、 裁 判 では 機 微 な 部 分 を 含 めて 公 になってしまう。よって、 非 公 開 裁 判制 度 が 必 要 であろう。最 後 になるが、「 人 の 輸 出 」に 関 する 制 限 も 重 要 である。 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 には、 防 衛 装 備 と 技術 関 する 項 目 は 丁 寧 に 記 されているが、それを 担 う 人 材 については 言 及 がない。 機 微 な 技 術 を 扱 う 人材 の、 特 に 海 外 出 張 や 外 国 人 との 接 触 については、 何 らかの 制 限 や 基 準 が 必 要 であると 思 われ、 数 年後 には 検 討 を 要 する 課 題 になるであろう。発 表 3.「 防 衛 装 備 新 三 原 則 と 企 業 リスク」及 川 耕 造 ( 社 団 法 人 発 明 推 進 協 会 副 会 長 )現 在 は 発 明 協 会 という、 防 衛 装 備 政 策 あるいは 防 衛 装 備 産 業 からは 遠 いところにいるため、 本 日 は通 産 省 ・ 防 衛 庁 OB としての 感 想 のようなことしか 申 し 上 げられないことを、 予 めご 了 解 頂 きたい。さて、これまでの 発 表 にあったように、 武 器 輸 出 三 原 則 は 見 直 され、 新 しい 原 則 に 移 行 した。その状 況 を 端 的 に 表 現 すれば、「 幕 は 上 がったけれども、 上 がった 先 を 見 たらば、 五 里 霧 中 であった」となるだろう。その 大 きな 原 因 は、 新 しい 原 則 の 解 釈 や 運 用 上 の 制 約 またはリスクが 未 だ 抽 象 的 な 段 階にある 一 方 、 新 原 則 が 外 為 法 のガイドラインである 以 上 、 時 に 罰 則 すら 考 えられ、 運 用 上 の 失 敗 は 許されないとう 点 にある。もう 一 つ 大 きな 問 題 になりつつあるのは、 輸 出 が 想 定 される 相 手 国 の 制 度 に習 熟 していない 点 である。これまで、 防 衛 装 備 品 の 輸 出 を 想 定 していなかった 以 上 、 当 該 分 野 に 関 する 専 門 家 に 恵 まれているわけではなく、 色 々な 意 味 において 知 見 不 足 が 明 らかとなっている。さらに事 を 難 しくしているのが、 汎 用 品 と 軍 用 品 との 線 引 きが 非 常 に 難 しくなってきているという 状 況 である。 恐 らく、 従 来 の 汎 用 品 に 関 する 運 用 と、 防 衛 装 備 品 の 移 転 に 関 する 運 用 との 間 で 持 たせるべき 整合 性 やバランス、あるいは 罰 則 などについて、 輸 出 管 理 当 局 も 今 は 迷 っているのではないか。そして、移 転 に 関 する 事 前 折 衝 や、それに 伴 うリスクを 回 避 するにあたっての 法 的 義 務 などについても、 不 明確 な 部 分 が 多 いことも 問 題 である。今 挙 げた 点 以 外 にも、 産 業 界 として 感 じる 様 々な 一 般 的 なリスクがある。 特 に、 防 衛 装 備 品 に 関 する 取 引 においては、キャンセルリスクが 想 定 されるが、この 点 への 国 や 業 界 として 対 応 も 明 確 ではなPolicy Perspectives No. 21- 15 -


い。また、 技 術 流 出 リスクもある。 山 崎 氏 の 指 摘 にもあったが、 本 来 知 的 財 産 権 をもって 保 護 すべきものであっても、 現 状 日 本 には、 秘 密 特 許 制 度 に 関 する 規 定 が 存 在 しない。そして、 秘 密 保 護 に関 するリスクも、 常 に 存 在 している。 現 在 、 秘 密 保 護 法 など 関 連 法 規 が 整 備 されつつあるものの、例 えば、 軍 事 情 報 包 括 保 護 協 定 (GSOMIA)や 了 解 覚 書 (MOU)のような 二 国 間 の 取 り 決 めが 成立 しない 状 況 下 で、どの 程 度 、 情 報 開 示 を 伴 う 折 衝 が 可 能 なのか、 明 らかではない。中 期 的 リスクとしては、まず、 政 治 リスクがある。この 点 に 関 し、 政 府 がどの 程 度 の 責 任 を 取 り、必 要 な 時 には 救 済 措 置 を 講 じるのか 不 明 確 である。また、オフセットなどの 対 外 投 資 リスクも 存 在する。オフセットの 在 り 方 は、 例 えば、 日 本 の 防 衛 政 策 上 あるいは 安 全 保 障 政 策 上 、リスクを 取 ってでも 案 件 を 推 進 するとなった 場 合 、その 調 整 と 責 任 、リスクを 誰 が 負 うかも 明 らかになっていない。また、 投 資 に 関 しては、 仮 にそれが 合 法 化 されても、 第 三 国 や 第 四 国 を 経 由 する 場 合 の 可 否 までは 十 分 に 議 論 されていない。また、 政 策 的 是 非 に 関 する 判 断 をどの 程 度 企 業 に 求 められるのかという 点 も 問 題 である。そして、 中 期 的 リスクで 一 番 大 きいインテリジェンス・リスクを、どの 程 度企 業 の 責 任 として 負 わせるのかという 点 も 未 だ 十 分 な 検 討 がなされていない。その 他 にも、 特 に 懸念 すべきは、 技 術 が 関 連 するリスクである。 例 えば、 国 際 共 同 開 発 に 参 加 しても 中 枢 部 分 には 参 加できず、 組 み 立 て 等 に 参 加 できないことによって、 結 果 的 に 国 産 技 術 を 育 む 機 会 を 喪 失 するリスクである。グローバルなサプライチェーンに 参 加 することで、 従 来 保 ってきた、 国 内 のサプライチェーンを 崩 すリスク、あるいは 損 失 ・ 混 乱 させるリスクを 指 す。また、グローバル 市 場 での 競 争 にさらされることによる、 過 当 競 争 のリスクもあるだろう。なお、 山 崎 氏 が 指 摘 した 秘 密 特 許 制 度 については、 原 則 公 開 の 原 則 に 基 づく 知 財 制 度 の 変 更 を 伴 うものであり、 更 には、 裁 判 制 度 にも 影 響 を与 えるものであるため、 相 当 な 議 論 が 必 要 である。現 在 、 政 府 あるいは 企 業 で 検 討 が 進 んでいると 思 われる 貿 易 保 険 についても、リスクが 存 在 する。それは、 輸 出 の 許 可 が 出 た 後 でなければ 保 険 は 付 与 されないというリスクである。つまり、 輸 出 許可 が 出 るまでの 間 に 生 じうるリスクについては、 当 面 は 全 て 企 業 が 負 うことになる。まして 貿 易 保険 は、 今 後 、 民 営 化 が 予 定 されており、 極 めて 経 済 的 な 理 論 の 下 で 運 営 されることになる。その 際 、今 指 摘 したようなリスクに 十 分 な 対 応 ができないのではないかという 懸 念 もある。防 衛 装 備 移 転 三 原 則 は、 外 為 法 のガイドラインである。よって、 一 義 的 には 経 済 産 業 省 の 輸 出 管理 部 門 において 各 種 のリスクに 関 する 判 断 がなされるであろう。 現 時 点 では、パトリオットミサイルのシーカー・ジャイロなどの 事 例 はあるものの、 引 き 続 きケース・バイ・ケースで 実 績 を 積 み 上げ、 経 験 と 知 見 を 踏 まえて 都 度 判 断 していくということにならざるを 得 ないのではないか。ただ、その 場 合 であっても、オフセット・リスクや 投 資 リスクを 輸 出 管 理 の 範 疇 で 負 えるのかという 問 題はある。 従 って、 新 しくできる 防 衛 装 備 庁 において、リスクへの 対 応 も 含 めて、 関 連 する 新 しい 制度 をどのように 構 築 するのか 注 視 している。ただ、リスクテイクには、 対 数 法 則 などの 保 険 に 関 する 理 論 を 前 提 とする 必 要 があり、 難 しさがあることは 明 らかである。この 点 については、 諸 外 国 の制 度 について 調 査 し、 参 考 情 報 を 取 集 することも 早 急 に 検 討 すべきである。Policy Perspectives No. 21- 16 -


技 術 流 出 などのインテリジェンス・リスクに 関 しては 二 国 間 協 定 等 により 環 境 整 備 を 行 うことが 必要 となる。 現 在 、 安 倍 内 閣 において 多 くの 国 々と 活 発 な 議 論 をしているが、 漸 次 課 題 が 生 じているのも 事 実 であろう。そこでは、オフセットや 投 資 などの 新 たな 形 態 への 対 応 も 課 題 になる。競 争 力 を 維 持 する 上 での 法 体 系 の 見 直 しも 必 要 である。 従 来 、 防 衛 産 業 分 野 の 競 争 力 維 持 の 役 割 を担 ってきた 法 律 は、 武 器 等 製 造 法 や 航 空 機 製 造 法 であったが、 関 連 企 業 がグローバル 市 場 で 競 争 することは 想 定 していない。また、 武 器 等 製 造 法 では、 艦 船 などは 網 羅 されていない。この 点 も 踏 まえて、山 崎 氏 が 指 摘 されたように、 防 衛 省 で 新 しい 防 衛 産 業 政 策 を 主 導 するのか、あるいは 国 土 交 通 省 や 経済 産 業 省 などとも 連 携 して 新 しい 体 系 を 作 っていくのかという 点 も 検 討 が 必 要 である。そして、オフセット・リスクや 対 外 投 資 リスクなどを 踏 まえつつ、 日 本 の 防 衛 産 業 界 に 最 適 な 在 り 方 を 早 急 に 検 討すべきである。 現 状 、これらの 政 策 、あるいは 法 律 についての 変 更 や 検 討 、 関 連 審 議 会 の 設 置 の 動 きはないようであり、これらの 点 の 進 展 を 大 いに 期 待 している。発 表 4.「 防 衛 装 備 新 三 原 則 の 評 価 と 今 後 に 向 けた 提 言 」ケビン・メア( 元 米 国 務 省 日 本 部 長 )武 器 輸 出 三 原 則 の 変 更 は、 日 本 の 一 般 国 民 の 中 でどの 程 度 注 目 をされているかはやや 不 鮮 明 であるが、 米 国 としては 非 常 に 重 要 な 決 定 であり、 大 変 重 要 な 節 目 を 迎 えていると 言 える。なぜなら、 米 国は 何 十 年 もの 長 きにわたり、 日 本 の 防 衛 産 業 に 重 要 な 役 割 を 期 待 していたからである。まず、 武 器 輸 出 三 原 則 によって 日 米 の 安 全 保 障 体 制 がいかに 阻 害 されてきたのか、その 例 を 紹 介 したい。 約 25 年 前 、 私 が 在 京 米 大 使 館 の 安 全 保 障 副 部 長 であった 頃 、 湾 岸 戦 争 が 起 こった。 当 時 、 日本 が 自 衛 隊 を 派 遣 できず、 武 器 輸 出 もできないことを 米 国 政 府 は 理 解 しており、 期 待 もしていなかった。そうした 中 、 日 本 政 府 が 作 った Assistance in-kind Program( 物 資 協 力 基 金 )を 担 当 したが、その 基 金 を 活 用 する 方 法 として、 米 軍 が 使 用 するサウジアラビア 軍 の 飛 行 場 の 駐 機 場 を 拡 大 する 案 件 があった。 日 本 の 財 務 省 に 対 して、 駐 機 場 を 整 備 するためのコンクリートの 提 供 を 申 請 したが 認 められなかった。 当 該 飛 行 場 が 軍 民 両 用 ではなく、 軍 専 用 であったことから、 支 援 が 武 器 輸 出 三 原 則 に 違 反すると 言 うのである。 財 務 省 の 担 当 者 によれば、「 縦 側 のビル」へのコンクリートの 使 用 は 可 能 であるが、「 横 側 の 駐 機 場 」へのコンクリートの 使 用 は 不 可 能 だという。そこで、 日 本 外 務 省 の 同 僚 と 対応 を 考 えた 結 果 、「 横 側 の『ビル』」への 使 用 として 申 請 し、 財 務 省 はようやくこの 申 請 を 承 認 した。日 本 の 武 器 輸 出 三 原 則 は、「 平 和 国 家 」として「 汚 いもの」を 輸 出 しないという 単 純 な 政 策 であった。 幸 い、 安 倍 首 相 の 指 導 力 の 下 、それは 変 更 された。 米 国 は、これを 心 から 歓 迎 している。 閣 議 決定 された 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 によれば、 防 衛 装 備 品 の 海 外 移 転 は、「 日 本 の 国 益 に 有 利 に 働 くかどうか」という 基 準 に 基 づき、 政 府 の 裁 量 によって 決 めることができる。 大 変 、 素 晴 らしい。これによって、 国 家 安 全 保 障 のために、 国 際 平 和 に 貢 献 するために、 防 衛 装 備 品 を 輸 出 することができる。Policy Perspectives No. 21- 17 -


防 衛 装 備 品 の 海 外 移 転 という 政 策 は、 実 は、 集 団 的 自 衛 権 とも 直 接 的 に 関 係 する。 東 アジアの 安全 保 障 環 境 は、 中 国 、 北 朝 鮮 、ロシアといった 様 々な 国 による、 様 々な 課 題 に 直 面 している。よって、 日 本 が 友 好 国 を 支 援 するために、 武 器 を 輸 出 する 必 要 もある。 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 する 際 には、同 盟 国 や 友 好 国 を 支 援 する 必 要 もある。その 中 では、 日 本 の 防 衛 産 業 の 同 盟 関 係 に 対 する 貢 献 は 不可 欠 である。もっとも、 日 本 の 防 衛 産 業 は、 武 器 輸 出 三 原 則 が 変 更 される 前 にも 様 々な 貢 献 をしていた。 例 えば、 横 須 賀 の 米 海 軍 の 空 母 である。 米 海 軍 司 令 官 によれば、 米 国 が 横 須 賀 を 外 国 で 唯 一の 空 母 の 母 港 にすることができたのは、その 整 備 を 担 う 日 本 の 防 衛 企 業 が 優 れた 技 術 を 有 しているからである。また、 厚 木 基 地 でも 米 海 軍 の 戦 闘 機 等 を 整 備 している 日 本 企 業 がある。 繰 り 返 しになるが、 新 三 原 則 ができたことは、 日 米 安 全 保 障 体 制 を 国 内 外 で 補 完 することになり、 米 国 は 心 から歓 迎 している。ここで、 米 国 がこれまで 日 本 に 何 を 期 待 しつづけたのかという 点 を 説 明 したい。 例 えば、パトリオットミサイルへの 部 品 の 提 供 や 在 日 米 軍 が 有 するパトリオットミサイル 及 び F-16 戦 闘 機 の 整 備である。 実 は、F-16 戦 闘 機 の 整 備 については、 数 年 前 に 試 みられた。しかし、 外 務 省 ・ 経 産 省 ・ 防衛 省 の 間 で 調 整 がつかず、 実 現 できなかった。なぜなら、 仮 に 日 本 企 業 が 整 備 を 担 うと、 在 日 米 軍の F-16 戦 闘 機 が 韓 国 に 進 出 している 時 に 韓 国 で 整 備 を 行 う 可 能 性 があり、その 際 、 武 器 輸 出 三 原則 に 抵 触 する 事 態 が 想 定 されたからである。ここで 注 目 すべきは、 一 部 の 情 報 によれば、 経 産 省 と外 務 省 は 案 件 を 認 めたものの、 防 衛 省 が 難 色 を 示 したということである。これまでの 経 緯 もあり、武 器 輸 出 に 関 する 議 論 については、 防 衛 省 は 消 極 的 である。ただ、もはや、この 姿 勢 は 早 く 改 めなければならない。もちろん、 今 は 望 ましい 具 体 的 な 動 きも 見 られる。 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 の 閣 議 決 定 後 、 初 の 移 転許 可 となる、 三 菱 重 工 業 によるパトリオットミサイルのジャイロの 輸 出 はその 例 である。この 案 件は 調 整 に 半 年 を 要 したものの、その 意 義 は 大 きい。 経 済 的 なメリットだけではなく、 同 盟 関 係 に、特 に 運 用 面 において 貢 献 する 動 きだからである。 防 衛 装 備 品 の 海 外 移 転 を 議 論 する 上 では、この、運 用 上 の 観 点 が 重 要 である。 例 えば、 従 来 は 武 器 輸 出 に 当 たるため 実 現 できなかった、 在 日 米 軍 のパトリオットミサイルの 整 備 。これまで 在 日 米 軍 は、ミサイルを 整 備 するために、 何 ヶ 月 もかけて米 国 本 土 に 持 ち 帰 っていた。あまりに 不 合 理 である。もちろん、 日 本 の 企 業 は、 運 用 上 の 観 点 だけではなく、ビジネス 上 の 観 点 から 対 応 を 考 える 必 要 がある。 利 益 を 得 て、ビジネスとして 成 功 しなければ 継 続 できないからである。だた、 日 本 も 米 国 も 防 衛 予 算 が 非 常 に 限 られている 中 、 運 用 という 観 点 に 着 目 し、それを 効 果 的 に 使 う 方 法 を 考 えることは 非 常 に 重 要 である。個 人 的 な 見 解 として、 日 本 が 競 争 力 を 持 つ 可 能 性 のある 分 野 を 紹 介 したい。 最 も 期 待 する 分 野 は、ミサイルの 整 備 である。 在 日 米 軍 のパトリオットミサイルや 将 来 配 備 される SM-3BkⅡA の 整 備 を期 待 したい。また、 航 空 機 の 整 備 も 特 に 期 待 したい。 例 えば、2017 年 から 岩 国 基 地 に 配 備 されるV-22 オスプレイについても、 米 国 は 公 言 しないが、 太 平 洋 軍 司 令 部 などは、 運 用 上 の 観 点 から 日 本で 整 備 するのが 一 番 望 ましいと 考 えていると 思 われる。もっとも、 経 済 的 観 点 から 検 討 する 必 要 がPolicy Perspectives No. 21- 18 -


あることは 言 うまでもない。また、F-35 戦 闘 機 の 地 域 的 整 備 も、 日 本 で 整 備 することが 望 ましいという 見 方 が 米 国 では 強 い。もちろん、まだ 決 まった 話 ではない。この 他 にも、 東 アジアの 安 全 保 障 に 貢 献 しうる、いくつかの 分 野 にも 可 能 性 がある。 例 えば、フィリピンとベトナムへの 巡 視 船 の 輸 出 である。これは 良 い 取 組 である。また、オーストラリアへの 潜 水艦 関 連 技 術 の 提 供 と 潜 水 艦 の 輸 出 も 可 能 性 がある。これは、 早 急 に 行 うべきである。 個 人 的 には、ベトナムへの 潜 水 艦 の 輸 出 も 検 討 すべきだと 考 える。 更 に、 近 い 将 来 退 役 する P-3C を 輸 出 することも意 義 があるだろう。 整 備 をした 上 で、フィリピンやベトナムに 輸 出 すればよい。これらの 取 組 は 中 国を 牽 制 する 上 で 有 効 である。こうした 話 を 2 年 前 にしたならば、 絵 に 描 いた 餅 だと 思 われたであろうが、 今 や、 実 現 可 能 なことなのである。今 紹 介 した 提 案 は、 特 に、 特 性 の 材 料 や 生 産 技 術 に 強 みを 持 つ、セカンド・ティアとサード・ティアの 防 衛 関 連 企 業 に 沢 山 の 可 能 性 がある。それらは、センサー、 電 子 機 器 、 品 質 管 理 、 教 育 訓 練 など様 々 分 野 で 可 能 性 を 秘 めている。今 後 は 浅 利 氏 のような 方 が 重 要 である。 現 実 的 に 先 行 することで、 政 策 をも 決 めるからである。 政策 上 の 抽 象 論 はもう 終 わった。 今 や、 一 定 の 条 件 を 満 たせば 輸 出 できるという、 新 三 原 則 が 明 確 に 示されたのである。よって、 今 後 は、 実 際 に 輸 出 することを 可 能 とする 手 続 きなどを 早 急 に 整 備 しなければならない。そして、 企 業 は 海 外 に 出 て、 防 衛 市 場 の 要 望 に 耳 を 傾 けなければならない。では、これから、 日 本 の 防 衛 関 連 企 業 が 解 決 すべき 課 題 は 何 か。それは、 競 争 力 を 育 むためにも、防 衛 省 の 要 請 にのみ 応 えるという 意 識 を 改 め、 世 界 に 目 を 向 けることである。 今 後 、 市 場 は 国 内 だけではない。 全 世 界 である。 企 業 は、グローバル 市 場 で 競 争 する 戦 略 を 考 えなければならない。ここで、重 要 になるのは、 産 業 構 造 である。 周 知 のとおり、 大 手 であっても、 防 衛 事 業 が 占 める 事 業 の 割 合 は会 社 全 体 でみるとごく 一 部 である。これからは 企 業 のトップの 方 々が、 企 業 戦 略 的 観 点 から、どの 程度 防 衛 事 業 に 投 資 できるかが 話 題 となるだろう。その 意 味 で、ある 意 味 微 妙 な 発 言 になるが、 日 本 の大 手 防 衛 関 連 企 業 は、ある 程 度 、 合 併 ・ 整 理 する 必 要 があるだろう。「 必 要 だ」とは 言 っていないが、その 可 能 性 は 高 いと 考 える。 米 国 の 企 業 も 冷 戦 終 結 後 、 同 じ 問 題 に 直 面 したが、 競 争 力 を 高 め、 生 き残 るために 合 併 ・ 整 理 を 行 ったのである。 日 本 の 防 衛 関 連 企 業 が、グローバル 市 場 で 戦 う 上 では 必 要な 話 題 である。もう 一 つ 重 要 なのは、 日 本 政 府 が 防 衛 装 備 品 を 海 外 移 転 するにあたっての 枠 組 みである。アメリカには、FMS という 制 度 がある。もちろん、 高 価 格 になるなどの 短 所 はあるが、 輸 出 にあたっては 政府 が 保 証 をしているという 利 点 がある。これは 極 めて 重 要 である。 防 衛 省 の 中 でも 検 討 が 進 んでいるようであるが、 今 後 話 題 になる 点 であろう。最 後 に 強 調 したいのは、 防 衛 装 備 品 の 海 外 移 転 は、ビジネスを 超 えた 意 義 があるということである。もちろん、ビジネス 的 に 成 功 しなければ 成 立 しない 以 上 、ビジネス 面 は 大 変 重 要 である。しかし、 海外 移 転 には、 日 本 の 同 盟 関 係 に 対 する 貢 献 、 国 際 安 全 保 障 や 国 際 平 和 への 貢 献 という、 極 めて 重 要 なPolicy Perspectives No. 21- 19 -


意 義 がある。なお、 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 と 集 団 的 自 衛 権 が 非 常 に 関 係 深 いという 視 点 は 持 つべきである。もう 一 つは、 新 三 原 則 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 が 持 つ、 統 合 性 への 貢 献 である。 日 本 の 安 全 保 障 環 境は 益 々 厳 しさを 増 している。 中 国 の 動 きは 今 後 一 層 挑 発 的 になり、 北 朝 鮮 からの 核 とミサイルの 脅威 、 更 には、ロシアからの 挑 戦 もある。これらは 抽 象 的 な 問 題 ではない。 現 実 的 な、 目 の 前 にある問 題 である。それに 対 処 するために、これからは、 従 来 議 論 されてきた 相 互 運 用 性 に 加 え、 統 合 性が 日 米 間 で 必 要 となる。その 統 合 性 は、 自 衛 隊 と 米 軍 の 間 だけではなく、 日 本 の 防 衛 産 業 と 米 国 のそれとの 間 にも 求 められることになる。質 疑 応 答【 村 山 】メア 氏 の 発 言 は、 非 常 に 重 い。 新 三 原 則 が 出 来 る 前 の 米 国 、 特 にワシントン DC の 状 況 は、 武 器 輸 出三 原 則 に 関 する 変 更 の 実 現 性 にかなり 懐 疑 的 であった。 中 には、「 今 まで 20 年 間 騙 され 続 けてきた」とする 有 識 者 がいたほどである。ところが、 防 衛 装 備 移 転 三 原 則 が 閣 議 決 定 され、 米 国 の 雰 囲 気 は 相当 変 化 した。 特 に 運 用 上 の 観 点 からの 期 待 感 がかなり 大 きい。かなりグローバルな 運 用 ができるのではないかという 期 待 である。これを 裏 返 して 言 うならば、 実 績 を 出 せず、 期 待 を 裏 切 った 場 合 は 大 変なことになる。 日 本 に 対 する 信 頼 を 失 う。 米 国 だけではなく、 諸 外 国 からも 信 頼 を 失 う。そういう 局面 に 来 ているがゆえに、もう 実 績 を 出 すしかない。 成 功 例 を 出 すしかない。【 浅 利 】実 績 を 出 す 必 要 性 を 感 じている。DSEI、ユーロサトリと 参 加 し、 実 は 既 に 小 さいながら 実 績 も 出 ている。 例 えば、ユーロサトリに 参 加 したある 企 業 は、2014 年 6 月 に 参 加 した 後 、 同 年 8 月 までに 数千 万 円 の 売 り 上 げを 出 した。また、 別 の 企 業 は 億 単 位 の 契 約 を 交 わす 直 前 まで 来 ている。ただ、これらの 企 業 は 大 手 ではないので、 今 後 大 手 企 業 が 関 わる 実 績 を 出 すには、 国 の 関 与 が 欠 かせない。【 山 崎 】2014 年 11 月 10 日 から、 経 済 産 業 省 及 び 日 本 航 空 宇 宙 工 業 会 (SJAC)と 協 力 して、 企 業 説 明 会 を 米国 ・テキサス 州 ダラス・フォートワースで 実 施 する。 現 状 、20 社 以 上 から 約 50 名 が 参 加 する 予 定 である。 日 本 の 企 業 も 米 国 の 企 業 との 連 携 を 期 待 していると 思 われる。ロッキード・マーチン 社 自 身 も、ティア・ワンよりも、ティア・ツーやティア・スリーといった 構 成 品 メーカーと、F-35 戦 闘 機 事 業 などで 協 力 したいと 考 えている。また、 素 材 メーカーや 大 学 で 行 われている 研 究 にも 大 変 強 い 関 心 がある。【 及 川 】実 績 を 作 ることが 一 番 の 近 道 である。ただし、 現 状 では、 各 企 業 が 各 個 に 防 衛 装 備 品 を 海 外 に 積 極 的に 輸 出 していくことはリスクが 多 い。 当 面 は、「 政 府 主 導 」を 目 指 すのが 望 ましい。それゆえ、 政 府案 件 として、 何 を 最 初 の 案 件 にするのかが 非 常 に 重 要 である。Policy Perspectives No. 21- 20 -


フロアからご 質 問 にあった、 外 国 の 制 度 等 に 関 する 情 報 不 足 への、 民 間 知 見 の 応 用 の 可 能 性 であるが、これは 大 変 有 用 である。 現 実 問 題 として、 汎 用 品 ではあるものの、 大 量 破 壊 兵 器 に 関 連 しうる 物質 を 輸 出 することは 多 い。キャッチ・ボール 規 制 などの 各 種 規 制 や、エンドユース・ステートメント等 の 各 種 手 続 きなど、 民 間 部 門 で 蓄 積 した 経 験 は、 非 常 に 有 用 である。ただし、 防 衛 装 備 の 海 外 移 転については、やはり、 政 府 が 相 当 程 度 関 与 しなければならないという 点 で、 一 般 の 市 場 財 とかなり 異なる。その 意 味 で、 相 手 国 政 府 との 関 係 、それから、 相 手 国 政 府 の 武 器 に 関 する 情 報 や 運 用 などに 関して 習 熟 する 必 要 がある。この 点 、 米 国 との 関 係 は 様 々な 知 見 があると 思 われるが、その 他 の 国 に 移転 する 際 には、やはり 色 々な 意 味 で 慎 重 であるべき。【メア】実 績 を 作 ることが 非 常 に 重 要 である。 日 本 の 企 業 も 今 後 は 大 胆 に 日 本 政 府 と 話 すべき。 政 策 はすでに政 府 の 方 針 として 変 更 されたのである。 防 衛 装 備 品 の 海 外 移 転 は、 国 際 社 会 に 対 する 日 本 の 貢 献 になる。 日 本 の 防 衛 、そして、 日 本 の 防 衛 産 業 の 基 盤 を 強 化 するためにも 必 要 だ。よって、 政 府 や 行 政 の消 極 的 姿 勢 には、 大 胆 に 反 応 すべきである。もちろん、ビジネス 的 視 点 からリスクの 判 断 をすることも 必 要 がある。しかし、もはや、 政 府 が 政 策 レベルで 妨 害 すべき 状 況 ではない。閉 会 の 挨 拶西 原 正 ( 平 和 ・ 安 全 保 障 研 究 所 理 事 長 )今 日 は、 村 山 先 生 の 基 調 講 演 に 始 まり、パネルディスカッションをしたが、 大 変 素 晴 らしい、 内 容の 充 実 したディスカッション、あるいはプレゼンテーションであった。これを 契 機 に、 更 に 議 論 をしてきたいと 思 う。 今 日 、 村 山 先 生 からは、「 幕 は 切 っておとされた」というコメントがあった。 山 崎氏 からも、「ドアは 開 いたばかり」という 同 じ 意 味 の 指 摘 があった。 及 川 氏 は、「 幕 は 上 がったけれども 迷 いが 多 い」というコメントである。そして 全 体 としては、 実 績 を 作 っていかなくてはならないということが 強 く 強 調 された。 是 非 、これから、そういう 方 向 に 少 しでもお 手 伝 いできるように 頑 張 っていきたい。 引 き 続 きのご 支 援 をお 願 いしたい。Policy Perspectives No. 21- 21 -


講 演 者 プロフィール村 山 裕 三同 志 社 大 学 副 学 長 。 防 衛 省 防 衛 生 産 ・ 技 術 基 盤 研 究 会 委 員 。1975 年 同 志 社 大 学 経 済 学 部 卒 業 、1980年 ワシントン 大 学 経 済 学 部 大 学 院 修 士 課 程 修 了 、1982 年 同 博 士 課 程 修 了 (Ph.D.)。 野 村 総 合 研 究 所経 済 調 査 部 主 任 研 究 員 、 大 阪 外 国 語 大 学 助 教 授 などを 経 て、2004 年 よりビジネス 研 究 科 教 授 。 企 業の 社 会 的 責 任 、 経 済 安 全 保 障 、 技 術 政 策 、 文 化 ビジネスを 専 門 とする。 主 な 著 書 に『 経 済 安 全 保 障 を考 える: 海 洋 国 家 日 本 の 選 択 』(NHK 出 版 、2003 年 、 国 際 安 全 保 障 学 会 加 藤 賞 )、『テクノシステム転 換 の 戦 略 : 産 官 学 連 携 への 道 筋 』(NHK 出 版 、2000 年 、フジタ 未 来 経 営 賞 )などがある。浅 利 眞クライシス・インテリジェンス 社 代 表 取 締 役 。 日 本 大 学 法 学 部 卒 業 。1993 年 陸 上 自 衛 隊 入 隊 。2000年 に 退 職 。2001 年 8 月 、クライシス・インテリジェンス 社 を 設 立 。 株 式 会 社 FLE 代 表 取 締 役 及 び 株式 会 社 ERSYSTEMS 取 締 役 も 務 める。山 崎 剛 美ロッキード・マーチン・オーバーシーズ・コーポレーション、コンサルタント。 元 空 将 。1977 年防 衛 大 学 校 理 工 学 部 航 空 工 学 科 卒 業 。 航 空 自 衛 隊 入 隊 。 航 空 機 整 備 幹 部 として、 小 隊 長 ( 航 空 自 衛 隊 、米 空 軍 )、 修 理 隊 長 、 整 備 主 任 、 整 備 補 給 群 司 令 、 第 1 術 科 学 校 長 を 歴 任 。 空 幕 防 衛 班 長 、 装 備 課 長 、装 備 部 長 として 勤 務 した 際 に、 防 衛 力 整 備 、 装 備 政 策 、 武 器 輸 出 等 に 携 わる。 防 衛 省 技 術 研 究 本 部 開発 官 ( 航 空 機 担 当 ) 及 び 航 空 自 衛 隊 補 給 本 部 長 を 歴 任 した 後 、2012 年 に 退 官 し、 現 職 。及 川 耕 造一 般 社 団 法 人 発 明 推 進 協 会 副 会 長 。1969 年 東 京 大 学 経 済 学 部 経 済 学 科 卒 業 。 同 年 、 通 商 産 業 省 入省 。 生 活 産 業 局 紙 業 課 長 等 を 経 て、 外 務 省 欧 州 共 同 体 日 本 代 表 部 参 事 官 、 防 衛 庁 装 備 局 管 理 課 長 、 大臣 官 房 総 務 審 議 官 、 防 衛 庁 装 備 局 長 、 特 許 庁 長 官 等 を 歴 任 。2002 年 、 退 官 。その 後 も、 野 村 総 合 研究 所 顧 問 、 日 本 政 策 投 資 銀 行 理 事 、 経 済 産 業 研 究 所 理 事 長 、 防 衛 大 臣 補 佐 官 を 務 め、 現 職 。ケビン・メア1981 年 ジョージア 大 学 ロースクールで 法 務 博 士 号 (JD) 及 び 弁 護 士 資 格 を 取 得 。 国 務 省 入 省 。 駐日 大 使 館 にて、 政 治 軍 事 部 副 課 長 、 環 境 科 学 技 術 担 当 公 使 、 政 治 軍 事 部 長 、 在 沖 縄 総 領 事 などを 歴 任 。2009 年 、 国 務 省 東 アジア・ 太 平 洋 局 日 本 部 部 長 を 務 め、2011 年 の 東 日 本 大 震 災 では 国 務 省 内 の 特 別作 業 班 で 調 整 役 を 務 める。 同 年 4 月 、 退 職 。 主 な 著 書 に『 決 断 できない 日 本 』( 文 藝 春 秋 、2011 年 )などがある。サウスキャロライナ 州 フローレンス 出 身 。西 山 淳 一未 来 工 学 研 究 所 研 究 参 与 。 元 三 菱 重 工 業 ( 株 ) 航 空 宇 宙 事 業 本 部 副 事 業 本 部 長 。 北 海 道 大 学 工 学 部機 械 工 学 第 二 学 科 卒 業 、 同 大 学 院 機 械 工 学 研 究 科 修 了 ( 修 士 )。ミサイル 開 発 、パトリオットシステム 導 入 、ミサイル 防 衛 に 従 事 。 現 在 、 東 京 大 学 政 策 ビジョン 研 究 センターアドバイザー、 衆 議 院 調 査局 客 員 研 究 員 、 一 般 社 団 法 人 日 本 戦 略 研 究 フォーラム 理 事 。 主 な 著 書 に『 武 器 輸 出 三 原 則 と F-35 部品 輸 出 』( 日 本 戦 略 研 究 フォーラム 季 報 、2013 年 4 月 )、『 武 器 輸 出 三 原 則 はどうしてみなおされたのか』( 森 本 敏 編 、 海 竜 社 、2014 年 )、『 武 器 輸 出 の 経 済 学 』(「 週 刊 エコノミスト」、 毎 日 新 聞 社 、2014年 5 月 )などがある。Policy Perspectives No. 21- 22 -


<strong>RIPS</strong> Policy PerspectivesBack issuesNo. 20 (September 2014)Building a Framework for Japan-US-Vietnam Trilateral Cooperation, Series 3: China’s AssertiveConduct (Masashi Nishihara), Responses to Rising Tensions in The South China Sea (YojiKoda)No. 19 (September 2014)Masahiro Matsumura, 「 自 衛 隊 による 下 地 島 空 港 の 活 用 に 備 えよ」Using Okinawa’s ShimojiAirport for National <strong>Defense</strong>No. 18 (February 2014)Building a Framework for Japan-US-Vietnam Trilateral Cooperation Series 2: The ChangingSecurity <strong>of</strong> the Sea Lines <strong>of</strong> Communication in the Indian <strong>and</strong> Pacific Oceans (MasashiNishihara <strong>and</strong> Yoji Koda)No. 17 (November 2013)Building a Framework for Japan-US-Vietnam Trilateral Cooperation: Analyses from Japaneseperspectives (Satoru Mori <strong>and</strong> Masashi Nishihara)No. 16 (December 2012)<strong>RIPS</strong> Symposium 2012, Summary Report: Responses to Japan’s <strong>New</strong> <strong>Arms</strong> Export PolicyNo.15 (November 2012)Masashi Nishihara, “Can Japan Restore <strong>Its</strong> Place in Asia?”No.14(2012 年 3 月 )<strong>RIPS</strong> 公 開 セミナー2011(2011 年 10 月 )「 災 害 対 策 と 防 衛 のために 新 技 術 をどう 活 かすか」No.13(February 2012)<strong>RIPS</strong> Symposium 2011, “<strong>New</strong> High-Techs for Disaster Relief <strong>and</strong> National <strong>Defense</strong>.”No.12 (2012 年 2 月 )<strong>RIPS</strong> 春 季 公 開 セミナー(2011 年 5 月 )、「 日 露 関 係 と 北 方 領 土 返 還 の 展 望 ― 東 日 本 大 震 災 後 に 考 える 日 本 の 対 応 」No. 11 (August 2011)Masashi Nishihara, “Asian Perspectives in 2011: China’s ‘Coercive’ Diplomacy Leads to <strong>New</strong>Power Realignments.”No.10 (January, 2010)Michimi Muranushi, “North Korea’s Abduction <strong>of</strong> Japanese Citizens: The Centrality <strong>of</strong> HumanRights Violation.”No.9 (July 29, 2009)Masashi Nishihara, “Asian Perspectives in 2009: Hopeful Signs <strong>and</strong> Growing Concerns.”No.8 (June 3, 2009)Masahiro Matsumura, “Japan’s Policy Options for Taiwan- June 2009.”

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