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阪口 英夫(医療法人尚寿会大生病院歯科口腔外科部長 ... - 日本学術会議

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病 院 歯 科 における 歯 科 医 療 の 展 開 と 問 題 点大 生 病 院 歯 科 口 腔 外 科 部 長阪 口 英 夫(スライド1)みなさんこんにちは。ただいまご 紹 介 にあずかりました 大 生 病 院 、 阪 口 です。本 日 は、こういうすばらしいといいましょうか、自 分 の 一 生 の 中 にはこういうところで 話 をするという 選 択 肢 がありませんので、 非 常 に 緊 張 しております。 講 演 に 先 立 ち、 今 回 の 講 演 に 際 し、ご高 配 頂 きました、 渡 邉 先 生 本 当 にありがとうございました。また、 古 谷 野 先 生 、 戸 塚 先 生 におかれましても、いろいろとご 高 配 いただきまして 本 当にありがとうございます。また、ご 推 薦 いただきました 赤 川 先 生 、 重 ねましてお 礼 申 し 上 げます。ありがとうございました。今 申 し 上 げたとおり 非 常 に 緊 張 しておりまして、 何 をしゃべっているのかよく 分 かりませんが、 本 日 は「 新 しい 歯 科 医 療 制 度 を 考 える」 という 中 での 病 院 歯 科 というお 話 をさせていただくために、このような 機 会 を 持 たせていただいたと 思 っております。 私 の 知 っている範 囲 で 皆 さんにご 提 供 できる 情 報 ということでお 話 をさせていただきたいと 思 います。(スライド2)お 話 を 始 める 前 に、 私 の 自 己 紹 介 を 兼 ねまして、 勤 務 している病 院 を 紹 介 させていただきたいと 思 います。医 療 法 人 尚 寿 会 大 生 病 院 というのは、 埼 玉 県 の 南 西 部 、 狭 山 市 という 都 市 にあります。創 立 35 年 の 病 院 でありますが、この 真 ん 中 にある 病 院 が 法 人 の 中 核 をなす 大 生 病 院 、 約 500床 です。 隣 に 認 知 症 の 専 門 病 院 として 精 神 科 の 病 院 、あさひ 病 院 が300 床 、そして 一 番 新 しくできた 老 人 保 健 施 設 「 愛 」100 床 、 合 計 で 約 900床 の 要 介 護 高 齢 者 を 中 心 とした 病 院 ということになります。(スライド3)これは 厚 生 労 働 省 が 出 している 病 院 に 関 する


資 料 であります。 今 、 病 院 は 一 般 病 床 と 療 養 病 床 、そして 介 護 保 険 対 応 という 区 分 がされています。それぞれ 疾 病 やステージによって 担 当 する 病 床 が 違 うのですが、 超 急 性 期 から急 性 期 を 扱 うのが 一 般 病 床 、 亜 急 性 期 から 回 復 期 、 慢 性 期 、そして 維 持 期 の 一 部 を 扱 うのが 我 々の 慢 性 期 病 床 だと 考 えて 頂 いて 差 し 支 えありません。 老 健 施 設 というのは 慢 性 期 から 維 持 期 の 患 者 さんが 利 用 されています。私 はこの 病 院 に 勤 務 しまして18 年 です。 歯 科 医 師 が 常 勤 2 名 、 歯 科 衛 生 士 が8 名 という 体制 で、 入 院 患 者 さんの 治 療 はもとより 外 来 の 患 者 さんの 治 療 を 行 っております。ちなみに口 腔 外 科 も 標 榜 しておりますが、 私 は、 経 歴 をごらんになっていただくとわかるとおり 口腔 外 科 は一 切 勉 強 したことがありませんで、 口 腔 外 科 は 専 門 の 先 生 にお 願 いしている 次 第です。(スライド4)今 回 、こういう 機 会 を 頂 けたということは、病 院 歯 科 というのが 年 々 減 少 しているということが 背 景 にあるのだと 考 えます。 病 院 歯 科 は 平成 5 年 の1,528 施 設 をピークに 年 々 減 少 し、 先 日発 表 された 平 成 21 年 度 医 療 調 査 では1,094 施 設となっており、 約 30%あまりもピークのときから 減 少 してしまっています。 結 果 、 地 域 にある病 院 の 歯 科 というのはどんどん 減 っているということです。(スライド5)この 原 因 というのは、もう 既 に 皆 さんご 存 じのとおり、 歯 科 診 療 科 の 点 数 自 体 が 非 常 に 低 くて 厳 しいということもさることながら、 病 院 の経 営 自 体 も 非 常 に 厳 しくなっていることも 原 因の1つとして 上 げられます。 先 ほどの 川 渕 先 生 のお 話 にもありましたように、 平 成 14 年 に 診 療 報酬 の 実 質 上 マイナス 改 定 がありました。スライドに 示 すのは100 床 当 たりの 医 業 収 益 における純 損 益 ですが、すべて 赤 字 という 状 況 です。 慢 性 期 病 院 はこれより 少 し 良 い 状 況 ですが、急 性 期 の 病 院 は 赤 字 続 きということ、 歯 科 診 療 科 は 非 常 に 点 数 が 低 い、また、 開 業 医 の 先生 方 と 違 って 自 費 による 収 入 というのはほとんど 望 めないというところで、 病 院 も 苦 しくなってくると、 非 常 に 採 算 性 が 悪 い 歯 科 をリストラしようというような 方 向 に 考 えが 傾 くということが、 減 少 している 主 な 理 由 であると 私 は 考 えています。(スライド6)病 院 歯 科 というのは、 今 まで 地 域 の 歯 科 医 院 で 治 療 が 困 難 な 患 者 さんを 紹 介 していただ


からの 紹 介 で 患 者 さんが 来 院 することはまれで、 多 くが 内 部 の 患 者 さん、 内 部 のお 医 者 さんから 治 療 を 依 頼 されるという 形 で 運 営 をしています。 内 部 で 紹 介 されるという 患 者 さんは 年 々 増 加 していまして、 全 身 疾 患 のある 患 者 さんの 歯 科 治 療 、 最 近 ではインターネットの 普 及 で 患 者 さんご 自 身 も、 普 通 の 歯 科 診 療 所 に 行 くのが 恐 いので 病 院 で 何 とか 診 てくれないかと 言 って 来 院 される 人 も 多 くなってきました。そして、 今 回 のシンポジュウムでも 皆 さんからお 話 が 出 ております、 口 腔 ケアの 管 理 指導 、これはもう 本 当 にこの10 年 、20 年 の 間 に 非 常 に 広 がっていると 感 じています。そして摂 食 ・ 嚥 下 障 害 の 評 価 も 大 きな 歯 科 の 役 割 です。 当 院 では、 耳 鼻 科 とも 共 同 で 行 っていますが、やはり 口 腔 機 能 の 評 価 や 入 れ 歯 が 合 っているかどうかというのは 耳 鼻 科 から 歯 科 に依 頼 をしてくるケースもあります。もちろん 歯 科 でも 嚥 下 チームを 持 っていまして、 入 院患 者 さんが 中 心 ですが、 歯 科 でも 嚥 下 評 価 をしております。そして、 今 年 の 診 療 報 酬 改 訂にも 加 わりましたが、NSTなどの 栄 養 ケアチームへ 歯 科 医 師 が 参 加 しております。以 上 のようなことから、 私 たち 慢 性 期 病 院 の 歯 科 医 師 が 担 う 仕 事 というのは 年 々 増 えておりまして、 最 近 では 病 院 の 管 理 者 の 先 生 方 にお 会 いして 懇 談 するときにも、「いい 歯 科の 先 生 いませんか?」というようなことを 聞 かれたりすることが 多 くなりました。(スライド9)スライドに 示 しますデータは 平 成 16 年 のものなので、すこし 古 いデータで 大 変 申 しわけないのですが、 我 々のような 慢 性 期 の 病 院 で 歯 科 というのはどのぐらいのニーズがあるのかということを、 当 時 日 本 療 養 病 床 協 会 、 現 在 の 日 本 慢 性 期 医療 協 会 という 慢 性 期 の 病 院 で 組 織 している 協 会にて 調 査 した 結 果 です。この 調 査 はアンケート 方式 で、 病 院 管 理 者 ( 院 長 ・ 理 事 長 )に 回 答 してもらいました。まず、「あなたの 病 院 に 歯科 医 師 が 勤 務 する 必 要 がありますか」という 質 問 に 対 する 回 答 ですが、 約 30%の 病 院 が「 必要 である」という 回 答 でした。「 勤 務 は 必 要 ない」と 回 答 した 病 院 も 約 30%でしたのでほぼ 同 数 でした。これだと 何 も 言 えないのですが、(スライド10)質 問 を 変 えて「あなたの 病 院 に 歯 科 衛 生 士 が 勤 務する 必 要 がありますか」と 聞 いたところ、48.6%の 病 院 が「 必 要 である」と 回 答 して 下 さいました。「どちらとも 言 えない」と 回 答 した30%の 病 院 からの 意 見 には、「 採 算 さえ 合 えば」、「 点 数 がつけば 採 用 したい」と 回 答 した 病 院 が 多 数 ありました。 歯 科 衛 生 士 は「 必 要 ない」という 病 院 はわずか16%しかなく、8 割 程 度 の 病 院 は 歯 科 衛 生 士 な


ら 条 件 が 揃 えば 雇 いたいと 考 えていることが 判 りました。(スライド11)この 動 向 は、ことしの2 月 に 行 われた 中 医 協 における 議 論 の 中 にも 表 れています。 歯 科 の新 しい 診 療 報 酬 について 歯 科 医 療 管 理 官 が 説 明していたときに、 医 師 である 診 療 側 の 代 表 委 員 が以 下 のような 質 問 をしています。「 実 際 に 歯 科 衛 生 士 に 関 しては 医 科 の 医 療 機 関においても 口 腔 ケアであるとか 摂 食 嚥 下 リハビリとかさらにはNSTなどに 関 連 したチーム 医療 の 一 員 として 雇 用 が 進 んでいると 思 う」( 中 略 )「 歯 科 衛 生 士 に 関 しては 歯 科 固 有 の 職 種 というよりは 医 科 にも 共 通 した 職 種 になってきているように 思 うので、そのあたりの 縛 りを 緩 和 する 考 えはないか」この 質 問 に 対 して 歯 科 医 療 管 理 官 の 先 生 は「 今 後 の 検 討 課 題 」というふうに 返 事 をしております。複 数 の 慢 性 期 病 院 の 医 師 に 話 を 聞 きますと、やはり 歯 科 衛 生 士 法 の 中 で 歯 科 医 師 の 指 示にのみ 診 療 補 助 行 為 が 認 められているというところを 疑 問 にもたれていまして、 次 回 改 正の 時 には 中 医 協 等 で 議 論 の 対 象 になるのではないかと 思 います。(スライド12)なぜ 医 師 からそのような 話 が 出 るのでしょうか?スライドに 示 しますのは、 米 山 武 義 先 生 が 報告 された 有 名 な 誤 嚥 性 肺 炎 についての 研 究 です。歯 科 衛 生 士 が 専 門 的 口 腔 ケアを 行 った 場 合 に、 一般 介 護 職 が 行 った 口 腔 ケアのみの 群 と 比 較 して約 40%も 誤 嚥 性 肺 炎 を 予 防 できるという 結 果 が出 ています。 実 はこれまでにたくさんの 要 介 護 高齢 者 に 関 する 研 究 がありました。 例 えば 歯 が 入 ると 認 知 症 が 良 くなるとか、 入 れ 歯 を 入 れると 車 いすから 立 ちあがったなどという 研 究 です。そのような 研 究 がたくさん 出 ても、いまのように 歯 科 衛 生 士 さんを 雇 うことには 一 向 に 繋 がらなかった。しかし、 米 山 先 生 の 研 究 が 出 たことによって 歯 科 衛 生 士 さんをどんどん 雇 って 口 腔 ケアをどんどんやりましょう!という流 れが 生 まれました。これは 非 常 に 説 明 しにくいのですが、 病 棟 に 衛 生 士 さんが 入 ることによって 明 らかに 誤 嚥 性 肺 炎 が 減 る、 明 らかに 病 棟 のにおいが 減 る、 明 らかに 患 者 さんが経 口 摂 取 できる 確 率 が 上 がる、ということを、 医 師 や 看 護 師 の 人 たちが 実 感 できたのではないかと 思 うのです。私 の 病 院 でもよくあるのですが、 例 えば、 新 聞 等 で 何 かこういうふうにしたらよくなっ


たというのを 読 んで、 看 護 師 さんらが 病 棟 で 実 際 に 試 すのですが、なかなかうまくいきません。 実 際 に 認 知 症 の 患 者 さんに 入 れ 歯 を 入 れることでは、 実 感 できるほど 認 知 症 がよくなることはないということです。しかし、 病 棟 に 歯 科 衛 生 士 さんを 入 れると 特 段 よくなることを 実 感 できる、それが 医 科 の 先 ほどの 先 生 方 の 意 見 につながっていると 認 識 していいのではないかと 思 うのです。(スライド13)さらに 療 養 病 床 に 併 設 されている 歯 科 診 療 科 でも、 口 腔 ケアの 仕 事 というのはたくさんありますよということを 示 したくて、 同 じ 平 成 16 年 に1 万5,000 回 の 歯 科 診 療 に 対 し、 実 数 調 査 で 調 べたものですが、6 割 の 患 者 さんに 外 来 でもこういった 口腔 ケアを 行 って、 患 者 さんの 口 腔 内 をきれいにするという 作 業 が 行 われているということが 判 りました。実 際 にこれらの 行 為 については、 先 ほどもお 話 に 出 ておりましたように、 診 療 報 酬 上 の評 価 が 全 くありません。 今 年 診 療 報 酬 改 定 において、 障 害 者 医 療 の 充 実 というところでようやく 地 域 歯 科 支 援 病 院 には 一 般 の 歯 科 衛 生 士 指 導 よりも20 点 高 いという 点 数 がつきました。しかし、 評 価 が 付 いたことは 喜 ばしいことですが、まだまだ 実 態 には 則 した 状 況 ではないと 感 じています。(スライド14)私 のような 若 輩 者 が 提 言 といいましょうか、 問題 点 の 指 摘 といいましょうか、そのようなことをするのは、 大 変 無 礼 なことであると 思 うのですが、お 叱 りを 覚 悟 でいくつかの 提 言 をさせて 頂 ければと 思 い、 用 意 して 参 りました。急 性 期 、 慢 性 期 を 問 わず、 病 院 歯 科 に 勤 務 する歯 科 医 師 がこのような 口 腔 ケアのチームに 参 加する、 嚥 下 のチームに 参 加 する、NSTに 参 加 することは、 病 院 より 強 く 言 われていることです。しかし、 実 際 にそこに 参 加 したからと 言 っても、 診 療 報 酬 がないので、 勤 務 歯 科医 師 がその 分 野 への 協 力 を 躊 躇 しているという 意 見 が 多 数 聞 かれます。ですから、 入 院 患者 さんを 含 む 有 病 者 ・ 障 害 者 への 歯 科 医 療 サービス 提 供 促 進 のために、 他 職 種 協 働 、 医 師 ・看 護 師 やその 他 の 職 種 への 口 腔 ケアの 指 導 等 を 評 価 するような 制 度 創 設 をお 願 いしたいと思 います。これは 外 来 に 関 してというか、 診 療 報 酬 上 は、やはり 病 院 歯 科 というのは 開 業歯 科 診 療 所 と 異 なった 診 療 体 系 をもっておりますので、 独 特 の 診 療 報 酬 体 系 があって 良 いのではないかとも 思 っております。そのことによって 病 院 歯 科 の 減 少 に 歯 止 めがかかる 効果 が 期 待 できるのではないでしょうか。


(スライド15)そしてもう 一 つ、 歯 科 を 併 設 できない 中 小 の 病院 への 歯 科 医 療 を 充 実 させるための 方 策 を 提 案したいと 思 います。 先 ほど 歯 科 衛 生 士 なら 雇 いたいと 回 答 している 病 院 は、そのほとんどが200 床以 下 であります。 歯 科 医 師 が 必 要 であると 思 っている 病 院 は 病 床 数 が 多 い 病 院 が 圧 倒 的 です。 調 査でも400 床 以 上 の 病 院 は75%に 歯 科 が 併 設 されているという 事 実 があります。ですが、 我 が 国 の 医療 を 支 えている 中 小 病 院 に 入 院 している 患 者 さんが 十 分 な 歯 科 医 療 のサービス 受 けられるようにすることも、 歯 科 医 療 界 の 使 命 であると考 えますと、 歯 科 衛 生 士 を 適 正 に 配 置 して、そのサービスの 隙 間 を 埋 めることにインセンティブをつけることを 歯 科 側 から 提 案 しても 良 いのではないでしょうか。 医 科 の 先 生 方 も歯 科 衛 生 士 を 病 棟 配 置 するような 制 度 創 設 をお 考 えになられていることが、 先 ほどの 中 医協 での 意 見 でもわかります。そして、それに 伴 いまして、 歯 科 衛 生 士 法 の 改 正 も 視 野 にいれて、 検 討 していく 時 期 が 来 ているのではないかと 感 じています。この 前 、 知 り 合 いの 医 科 の 先 生 から 次 のような 相 談 を 受 けました。「 病 院 で 歯 科 衛 生 士さんに 働 いてもらいたいのですが、どうしたらいいですか?」という 相 談 でしたので、「 募集 を 出 したらどうですか」とお 答 えしました。「いや 募 集 を 出 して、 応 募 があったのですが、 面 接 にいらした 歯 科 衛 生 士 さんに、『うちには 歯 科 がありません』と 言 ったらその 方に 断 られちゃいまして。どうしたら 採 用 できるかと 思 いまして。」というようなお 話 を 聞きました。 確 かに 法 的 に 医 師 の 指 示 で 歯 科 衛 生 士 が 活 動 したとしても、いざ、 歯 科 疾 患 を発 見 したときに、だれか 頼 りになる 歯 科 医 師 がいて、 初 めて 歯 科 衛 生 士 が 十 分 な 活 動 ができるということでもあると 思 いますし、 実 際 にもそうだと 思 います。 医 科 の 先 生 方 と、 我 々十 何 年 も 一 緒 にやっていて、 特 に 医 科 の 先 生 方 に 歯 科 診 療 がとられるといったような 危 機感 をもったことは、 全 くありません。 逆 に 歯 科 に 対 して 感 謝 されることが 多 くありますし、近 年 では 医 科 の 先 生 方 の 間 にも 歯 科 の 重 要 性 をご 理 解 頂 いている 方 が 増 えていますので、やはり1 人 でも 多 くの 患 者 さんにいい 療 養 環 境が 提 供 できればということで、このような 希 望が 出 されているではないかと 考 えています。(スライド16)そして、やはり 長 く 病 院 に 勤 務 して 思 うことですが、 先 ほども 岡 野 先 生 のお 話 の 中 にも 出 てきておりましたが、 歯 学 教 育 の 中 に 病 院 歯 科 に勤 務 するスキルを 持 った 人 材 育 成 、 特 に 他 職 種


協 働 ということを 推 進 できる 人 材 の 育 成 をしていただくことが 重 要 であると 感 じます。私 が 大 学 を 卒 業 した 平 成 元 年 に 多 職 種 協 働 ということを 教 える 授 業 というのはありませんでした。 看 護 師 とは 何 ができるのかとか、 理 学 療 法 士 さんってどんな 仕 事 をする 人 であるとか、ということを 全 くわからないまま 病 院 に 入 りまして、 大 変 苦 労 しました。 既 にそういうことを 大 学 で 教 わっていれば、もうちょっと 早 くにいろいろな 展 開 ができたかな?と 思 うところもありました。(スライド17)さて、 昨 年 の 歯 学 系 学 会 連 絡 協 議 会 でもお 話をさせていただいたのですが、 今 日 はたくさんの 有 名 な 先 生 方 がいらしているので、 私 の 専 門分 野 である 口 腔 ケアのお 話 を1つさせてください。今 日 、 多 くの 先 生 方 から 口 腔 ケアという 言 葉が、たくさん 聞 かれました。そもそも 口 腔 ケアという 言 葉 は、だれが・いつ・どこで 使 い 始 めた 言 葉 か? というのが 私 の 研 究 テーマであります。口 腔 ケアは 英 語 で 言 うとOral careが 一 般 的 に 使 われているようです。 看 護 領 域 ではMouthcareという 言 葉 が 使 われています。そこで、だれがOral careという 言 葉 を 世 界 で 最 初 に 使ったのかを 知 るために、 色 々な 文 献 を 探 しまして、ようやく1 冊 の 本 を 発 見 しました。この本 は1973 年 にアメリカにて 出 版 されたもので、おそらくOral careをタイトルとして、 障 害者 や 終 末 期 医 療 の 患 者 さんへの 現 在 でいう 口 腔 ケアを 書 いた 書 物 としては、 世 界 で 最 古 のものであろうと 思 います。「The Terminal Patient : Oral care」という、AustinH.Kutscher(コロンビア 大 学 ・ 教 授 )が 編 纂 した書 籍 であります。(スライド18)この 本 は、 実 は 歯 科 の 本 でも 看 護 の 本 でもありません。ここにPublished By Foundation ofThanatologyと 書 いてあります。Thanatologyとは, 死 生 学 のことです。つまりこの 本 は 死 生 学の 本 であるということです。この 場 合 の 死 生 学Thanatologyは、 終 末 期 に 対 して、その 患 者 や家 族 、それをケアする 医 療 関 係 者 の 求 めに 応 じ、 死 というテーマを 題 材 に 探 求 した 学 問 であると 言 われています。


(スライド19)このThanatologyというのは、アメリカ、ヨーロッパで1960 年 代 に 活 発 化 し、 皆 さんもご 存 じの 事 柄 ですと、 世 界 で 初 めてイギリスの 病 院 にホスピス 病 棟 を 設 置 したシシリー・ソンダース氏 が 有 名 ですが、このホスピスを 設 立 したのが1967 年 です。やはり 有 名 なエリザベス・キューブラーロスという 方 が、 死 に 関 する 研 究 報 告「Death on Dying」を 出 版 したのも1969 年 です。これら 死 生 学 における 象 徴 的 研 究 成 果 が 報 告 されたのが、1960~70 年 代 にかけてでした。(スライド20)スライドはAustin H.Kutscherが2007 年 5 月 に亡 くなった 時 の 死 亡 記 事 です。この 記 事 の 中 ほどに、Austin H.Kutscherが1967 年 にFoundationof Thanatology( 死 生 学 財 団 )を 設 立 したことが 載 っています。1967 年 は、 先 ほどのシシリー・ソンダースがホスピスをつくった 年 と 同 じ 年 であります。つまり、 口 腔 ケアという 言 葉 は 終 末期 医 療 、 特 に 死 生 学 の 創 設 期 に、その 重 要 な 立役 者 の 一 人 であるAustin H.Kutscherの 手 によって 生 み 出 された 言 葉 であるということがわかったのです。なぜかはわかりませんが、これまで、 日 本 の 口 腔 ケア 研 究 者 の 間 ではこの 事 実 はあまり知 られていませんでした。ここ 数 年 で 分 かった 事 実 なのです。これを 受 けて、 今 年 の 日 本口 腔 ケア 学 会 学 術 大 会 では 死 生 学 のシンポジウムや、 東 大 の 島 薗 ・ 清 水 先 生 に 来 ていただいてお 話 をいただくという 企 画 を 行 いました。(スライド21)この 本 の 中 で、Austin H.Kutscher 教 授 はアメリカの 歯 学 教 育 の 中 で 次 のような 勉 強 をさせなさいと 提 言 しています。1つは、 口 腔 ケアが 行 える 歯 科 医 師 を 育 てるために、「ぜひ 病 院 などで終 末 期 の 患 者 さんを 歯 科 医 学 生 に 見 せてください」と 言 われています。「 歩 行 可 能 な 人 、 車 いすの 人 、 寝 たきりの 人 、さまざまな 状 況 の 患 者を 歯 科 医 学 生 に 見 せてください」とも 言 っています。「 診 断 の 違 う 患 者 を 教 えるということは、 患 者 のすべての 病 歴 、ライフスタイル、希 望 や 期 待 、 全 身 疾 患 の 経 過 、 終 末 期 患 者 にあらわれる 口 腔 内 の 続 発 症 、 通 常 の 治 療 に 患

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