Review ゾウリムシのトリコシストの防御機能 - 日本原生動物学会
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Jpn. J. Protozool. Vol. 35, No. 2. (2002)<br />
125<br />
<strong>Review</strong><br />
ゾウリムシのトリコシストの 防 御 機 能<br />
春 本 晃 江<br />
奈 良 女 子 大 学 理 学 部 生 物 科 学 科<br />
〒630-8506 奈 良 市 北 魚 屋 西 町<br />
Defensive function of trichocysts in Paramecium<br />
Terue HARUMOTO<br />
Department of Biological Science, Nara Women's University<br />
Kitauoyanishimachi, Nara City 630-8506, Japan<br />
1.はじめに<br />
原 生 動 物 の 多 くの 種 はエクストルソーム( 放 出 体 ,<br />
extrusomes)と 呼 ばれる 細 胞 小 器 官 をもっている<br />
(Grell, 1973; Hausmann, 1978)。エクストルソームは<br />
細 胞 膜 直 下 に 存 在 し, 機 械 的 , 化 学 的 , 電 気 的 刺 激 に<br />
より 細 胞 外 へ 放 出 されるという 特 徴 をもつ。トリコシ<br />
ストは 繊 毛 虫 や 鞭 毛 虫 のいくつかの 種 に 見 られるエ<br />
クストルソームである( 図 1)。ゾウリムシのトリコ<br />
シストは 長 さ3ー4ミクロンで,ニンジンの 先 に 矢 尻<br />
をつけたような 形 をしており,チップとボディ(マト<br />
リックス)とそれらを 包 むトリコシスト 膜 から 成 る<br />
( 図 2)。トリコシストは 口 部 域 を 除 く 細 胞 全 体 に<br />
渡 って 存 在 し, 各 々のトリコシストは 細 胞 膜 直 下 の 決<br />
まった 場 所 に 位 置 している。 細 胞 が 刺 激 を 受 けると,<br />
トリコシスト 膜 と 細 胞 膜 は 融 合 し,マトリックスはす<br />
ばやく 伸 長 して 槍 のような 形 となり 細 胞 外 へ 放 出 さ<br />
れる。この 過 程 は80ミリ 秒 以 内 に 起 こる 素 早 い 反 応<br />
である。トリコシストは, 細 胞 が 刺 激 を 受 けた 時 に 放<br />
出 されることや 細 胞 膜 の 決 まった 位 置 にドッキング<br />
されることから 調 節 性 エキソサイトーシスや,タンパ<br />
ク 質 の 生 合 成 , 輸 送 のモデル 系 としてよく 研 究 されて<br />
きた( 総 説 Adoutte, 1988; Plattner, et al., 1991; 春 本 ,<br />
1999)。わが 国 でもトリコシストの 形 態 に 関 して 先 駆<br />
的 研 究 がある( 吉 森 1960, 畑 1967)。 一 方 ,なぜゾウ<br />
リムシはトリコシストをもつのかということは 長 い<br />
間 謎 であった。トリコシストの 機 能 として, 防 御<br />
(Maupas,1883), 付 着 (Saunders, 1925), 浸 透 圧 調 節<br />
(Wohlfarth-Bottermann, 1953), 接 合 (Vivier and André,<br />
1961), 細 胞 表 層 の 強 化 (Ehret and McArdle, 1974),<br />
図 1 ゾウリムシ(Paramecium multimicronucleatum)を<br />
飽 和 ピクリン 酸 液 で 処 理 したところ。<br />
細 胞 外 に 多 くの 放 出 されたトリコシストが<br />
見 られる。 飽 和 ピクリン 酸 の 処 理 は 細 胞 を 殺<br />
すが, 細 胞 がもつほとんど 全 てのトリコシス<br />
トを 放 出 させる。また,このように 細 胞 全 体<br />
を 刺 激 すると 細 胞 全 体 からトリコシストが<br />
放 出 されるが, 局 所 的 に 刺 激 すると 刺 激 され<br />
た 部 域 からのみトリコシストの 放 出 が 起 こ<br />
る。バーは50 µm。<br />
コミュニケーション(A. Miyake, 私 信 ,Adoutte, 1988に<br />
引 用 ),タンパク 質 やアミノ 酸 の 貯 蔵 (Haacke-Bell et<br />
al. 1990)などが 示 唆 されて 来 た。しかし,1980 年<br />
代 末 に 我 々がエクストルソームの 防 御 機 能 の 研 究 を<br />
始 めるまで, 実 験 的 に 証 明 されたものはなく,トリコ<br />
シストの 機 能 は 不 明 であった(Haacke-Bell et al.<br />
1990)。
126 原 生 動 物 学 雑 誌 第 35 巻 2002 年<br />
図 2 ゾウリムシのトリコシスト( 放 出 前 )の 模<br />
式 図 。<br />
図 3 ディレプタスのプロボーシスが 野 生 型 また<br />
はトリコシストの 放 出 突 然 変 異 体 に 当 たっ<br />
た 時 に 捕 らえられた 細 胞 の 数 (n = 50)。<br />
***, H = 44.02, P < 0.001 (P. tetraurelia),<br />
H = 37.73, P < 0.001 (P. caudatum)。 棒 は95%<br />
信 頼 区 間 を 表 す。 Harumoto and Miyake,<br />
1991より 改 編 。<br />
2.ディレプタスに 対 するゾウリムシのトリコシスト<br />
の 防 御 機 能<br />
繊 毛 虫 門 毒 胞 亜 綱 のディレプタス(Dileptus margaritifer)<br />
は 細 胞 体 の 前 方 に 長 く 伸 びたプロボーシス( 吻 )<br />
をもち,この 内 側 にトキシシストというエクストル<br />
ソームをもつ。プロボーシスが 餌 となる 小 型 の 繊 毛 虫<br />
などに 触 れるとトキシシストが 放 出 される。トキシシ<br />
ストには 毒 性 物 質 が 含 まれるとされ,これによって<br />
ディレプタスは 獲 物 の 細 胞 を 麻 痺 させて 捕 える。とこ<br />
ろが,ゾウリムシはディレプタスに 攻 撃 されると, 攻<br />
撃 された 部 位 からトリコシストを 放 出 して 逃 げるこ<br />
とがわかった。 野 生 型 のゾウリムシはほとんどディレ<br />
プタスに 捕 食 されることはないが,トリコシストを 放<br />
出 できない 突 然 変 異 体 は 瞬 時 に 捕 えられた(Miyake,<br />
et al. 1989; Harumoto and Miyake, 1991)。ゾウリムシの<br />
浮 遊 液 に 一 匹 のディレプタスを 入 れ, 実 体 顕 微 鏡 下 で<br />
観 察 しながら,ディレプタスのプロボーシスが 初 めて<br />
ゾウリムシに 触 れた 時 にゾウリムシが 逃 げたか 捕 食<br />
されたかを, 野 生 型 と 突 然 変 異 体 とで 比 較 したのが 図<br />
3である(Harumoto and Miyake, 1991)。 野 生 型 のゾウ<br />
リムシは 突 然 変 異 体 に 比 べて 有 意 に 逃 げる 頻 度 が 高<br />
いことがわかる。ここで 用 いた 突 然 変 異 体 株 nd7と<br />
tnd2はトリコシストをもち,トリコシストは 正 常 の 位<br />
置 にドッキングしているが,エキソサイトーシスの 最<br />
後 のステップに 欠 陥 があるために 放 出 できないこと<br />
が 知 られている(Lefort-Tran et al. 1981; Takei, et al.<br />
1986)。 遊 泳 速 度 , 細 胞 の 大 きさなどその 他 の 形 質 に<br />
ついてはこの 突 然 変 異 体 は 正 常 である。 従 って, 野 生<br />
型 とこの 突 然 変 異 体 に 見 られた 捕 食 のされやすさの<br />
違 いは,トリコシストを 放 出 できるかどうかに 起 因 す<br />
るものと 考 えられる。 次 に, 図 4では,ゾウリムシの<br />
浮 遊 液 に5 匹 のディレプタスを 入 れた 後 , 時 間 を 追 っ<br />
て, 何 匹 のディレプタスが 食 胞 を 形 成 したかを 調 べた<br />
(Harumoto and Miyake, 1991)。この 実 験 でも, 突 然 変<br />
異 体 は 野 生 型 に 比 べてずっと 速 く 捕 食 されているこ<br />
とがわかる。ここでは 野 生 型 と 突 然 変 異 体 の 他 に, 人<br />
為 的 に 作 製 したトリコシスト 欠 損 細 胞 を 用 いた。トリ<br />
コシストは 様 々な 化 学 的 試 薬 によって 放 出 させるこ<br />
とができる。その 中 でもリゾチームやAED<br />
(aminoethyl dextran)は, 低 濃 度 で 細 胞 を 殺 すことな<br />
くトリコシスト 放 出 を 誘 導 することから 有 用 なトリ<br />
コシスト 誘 導 試 薬 である(Harumoto and Miyake, 1991;<br />
Plattner, et al. 1985)。しかも,その 濃 度 に 応 じて 様 々<br />
な 程 度 にトリコシスト 放 出 を 誘 導 することができる。<br />
トリコシストは 放 出 された 後 , 再 生 されるのに 数 時 間<br />
かかるので, 再 生 前 の 細 胞 の 集 団 を 用 いれば, 様 々な<br />
トリコシスト 放 出 能 をもった 細 胞 の 集 団 を 得 ること<br />
ができる。 図 4に 示 すように,リゾチームで 処 理 した<br />
細 胞 は 野 生 型 よりも 速 く 捕 食 され, 処 理 濃 度 が 高 けれ<br />
ば 高 いほどより 多 く 捕 食 された。 同 様 な 結 果 は,ゾウ<br />
リムシの3 種 (Paramecium caudatum, P. tetraurelia, P.<br />
jenningsi)で 確 かめられた。また,ここには 示 していな<br />
いが,P. multimicronucleatumでも 同 様 な 結 果 が 得 られ
Jpn. J. Protozool. Vol. 35, No. 2. (2002)<br />
127<br />
図 4 3 種 のゾウリムシにおいて, 野 生 型 ,トリコシストの 放 出 突 然 変 異 体 , 野 生 型 細 胞 をリゾチーム<br />
で 処 理 しトリコシストを 一 部 放 出 させた 細 胞 ,それぞれをディレプタスに 与 え, 時 間 を 追 って 食<br />
胞 をもつディレプタスの 数 を 数 えた。 約 200 細 胞 のゾウリムシの 浮 遊 液 に5 細 胞 のディレプタ<br />
スを 入 れた。 各 グラフの 右 の 数 字 はリゾチームの 濃 度 (µg/ml)を 示 す。リゾチーム 処 理 時 間 はC,<br />
E,Fでは30 秒 ,Dでは1 分 である。○―○: 野 生 型 ,●―●:トリコシスを 放 出 できない 突 然 変<br />
異 体 ,▲―▲:リゾチームでトリコシストを 一 部 放 出 させた 細 胞 。A,C:P. caudatum; 野 生 型<br />
はCHB 株 , 突 然 変 異 体 は27aG3 株 (tnd2/tnd2),B,D:P. tetraurelia; 野 生 型 はd4-2 株 , 突 然 変<br />
異 体 はnd7 株 (nd7/nd7),E:P. jenningsi;1 株 。F:P. tetraurelia;51 株 。 各 データは21 回<br />
の 実 験 の 平 均 を 示 す。(Harumoto and Miyake, 1991)<br />
た。これらの 結 果 から 捕 食 指 数 PI(predation index)を<br />
求 めた(Harumoto and Miyake, 1991)。PIとは1 分 間<br />
に 捕 食 されるゾウリムシの 数 である。 図 5の 棒 グラフ<br />
は 飽 和 ピクリン 酸 処 理 をして 測 ったそれぞれの 細 胞<br />
集 団 のトリコシスト 放 出 指 数 (trichocyst index)であ<br />
る。 放 出 指 数 は4 段 階 に 分 類 した。また,そのような<br />
トリコシスト 放 出 指 数 をもつ 集 団 を 用 いて 得 られた<br />
PIを 上 に 数 値 で 示 している。 野 生 型 では 通 常 PIは<br />
0.01から0.04であるが, 突 然 変 異 体 では0.42から0.49と<br />
なった。つまり 突 然 変 異 体 は 野 生 型 に 比 べて40 倍 から<br />
50 倍 速 く 捕 食 された。リゾチーム 処 理 した 細 胞 は 様 々<br />
なPIを 示 したが,その 値 は 野 生 型 と 突 然 変 異 体 の 間<br />
であり,トリコシスト 放 出 指 数 と 関 係 していた。つま<br />
り,より 多 くのトリコシストを 放 出 した 細 胞 の 集 団 で<br />
はPIの 値 は 高 くなった。これらの 結 果 は,トリコシ<br />
ストを 多 くもつ 細 胞 はよりディレプタスから 逃 げら<br />
れることを 示 している。ディレプタスに 攻 撃 されると<br />
ゾウリムシがトリコシストを 放 出 して 逃 げるという<br />
観 察 結 果 と 合 わせると,トリコシストの 放 出 はゾウリ<br />
ムシがディレプタスから 逃 げることに 寄 与 しており,<br />
トリコシストはディレプタスに 対 する 防 御 手 段 と<br />
なっていることを 強 く 示 唆 している。<br />
さらに,トリコシストは,ゾウリムシがディレプタ<br />
スから 逃 げる 際 に 主 要 な 役 割 を 担 っているかどうか<br />
を 検 討 した。ゾウリムシはディレプタスから 逃 げる 際<br />
にトリコシストを 放 出 するが, 同 時 に 多 くの 場 合 後 退<br />
遊 泳 を 示 した。 後 退 遊 泳 は, 昔 からゾウリムシが 障 害<br />
物 から 逃 げる 手 段 として 知 られている(Jennings,<br />
1906)。ディレプタスから 逃 げる 際 にも,この 後 退 遊<br />
泳 が 主 な 要 因 となっているのだろうか。そこで, 行 動
128 原 生 動 物 学 雑 誌 第 35 巻 2002 年<br />
図 5 図 4で 使 用 した 細 胞 の 集 団 のトリコシスト 放 出 指 数 (trichocyst index)とそれらの 細 胞 のディレプ<br />
タスによる 捕 食 指 数 (predation index)。トリコシスト 放 出 指 数 は, 飽 和 ピクリン 酸 で 処 理 後 ,10<br />
0 細 胞 を 数 え, 以 下 のようにトリコシストを 放 出 している 細 胞 の 割 合 を 調 べたもの。+++: 細<br />
胞 全 体 から 多 くのトリコシストを 放 出 していた,++:+++と+の 間 ,+:3 本 までのトリコ<br />
シストを 放 出 していた,-: 放 出 していなかった。 捕 食 指 数 (PI)は, 一 般 には 次 の 式 で 表 され<br />
る。PI=(n/N)/t, n: t 時 間 にゾウリムシを 捕 食 したディレプタスの 数 。ここでは, 図 4の<br />
実 験 で 最 初 の2 分 間 にゾウリムシを 捕 食 したディレプタスの 数 を 示 す。N:ディレプタスの 総 細<br />
胞 数 。 本 実 験 では5 細 胞 。カラムの 下 には, 野 生 型 細 胞 を 処 理 したリゾチーム 濃 度 と 処 理 時 間 を<br />
示 す。Harumoto and Miyake, 1991より 改 編 。<br />
突 然 変 異 体 であるpawnと cnr 株 を 用 いて 調 べた( 図<br />
6)(Harumoto, 1994)。これらの 突 然 変 異 体 は 繊 毛 に<br />
ある 電 位 依 存 型 Ca 2+ チャンネルに 欠 陥 をもち, 後<br />
退 遊 泳 を 示 さない。ゾウリムシの 浮 遊 液 に 一 匹 のディ<br />
レプタスを 入 れて 実 体 顕 微 鏡 下 で 調 べたところ, 野 生<br />
型 は100% 逃 げた が,そ の う ち68 %(P.<br />
tetraurelia)と50%(P. caudatum)が 後 退 遊 泳 を 示 し<br />
た。pawnは96%, cnrは100%が 逃 げたが,いず<br />
れも 後 退 遊 泳 は 示 さなかった。つまり, 後 退 遊 泳 ので<br />
きない 突 然 変 異 体 は 野 生 型 とほぼ 同 じ 頻 度 で 逃 げる<br />
ことがわかった。トリコシストを 放 出 できない 突 然 変<br />
異 体 は94%(P. tetraurelia)と100%(P. caudatum)<br />
が 捕 食 され,トリコシストを 放 出 できないし 後 退 遊 泳<br />
もできない 二 重 突 然 変 異 体 はほとんどこれと 同 じ 頻<br />
度 で 捕 食 された。これらの 結 果 から,ディレプタスか<br />
ら 逃 げる 際 の 後 退 遊 泳 の 役 割 は,トリコシスト 放 出 の<br />
果 たす 役 割 に 比 べて,たとえあったとしてもわずかで<br />
あろうと 考 えられる。つまりトリコシスト 放 出 はディ<br />
レプタスから 逃 げる 際 に 絶 対 的 に 重 要 であるといえ<br />
る。<br />
我 々の 研 究 を 要 約 すると,(1)ゾウリムシはディ<br />
レプタスから 逃 げる 際 にトリコシストを 放 出 した。<br />
(2)トリコシストを 放 出 できない 突 然 変 異 体 は 野 生<br />
型 に 比 べ,ディレプタスにより 多 く 捕 食 された。(3)<br />
人 為 的 に 作 製 したトリコシスト 欠 損 細 胞 は 野 生 型 よ<br />
り 多 く 捕 食 され, 捕 食 指 数 はトリコシスト 放 出 指 数 に<br />
依 存 していた。すなわち,より 多 くのトリコシストが<br />
細 胞 に 残 っていれば,ゾウリムシはよりよく 逃 げられ<br />
た。(4)ディレプタスから 逃 げる 際 には, 野 生 型 も<br />
後 退 遊 泳 のできない 突 然 変 異 体 も 同 程 度 に 高 い 割 合<br />
で 逃 げられた。 一 方 ,トリコシストを 放 出 できない 突<br />
然 変 異 体 と,トリコシスト 放 出 と 後 退 遊 泳 の 二 重 突 然<br />
変 異 体 は 高 い 割 合 で 捕 食 された。これらのことから,<br />
我 々は,ゾウリムシのトリコシストは,ディレプタス
Jpn. J. Protozool. Vol. 35, No. 2. (2002)<br />
129<br />
図 6 ディレプタスのプロボーシスが,ゾウリムシ<br />
の 野 生 型 , 後 退 遊 泳 できない 突 然 変 異 体<br />
(pawnA/pawnA; strain 12AE11 in P.<br />
tetraurelia, cnrA/cnrA; strain 10A611 in P.<br />
caudatum),トリコシストの 放 出 突 然 変 異 体<br />
(nd7/nd7; strain nd7 in P. tetraurelia, tnd2/<br />
tnd2; strain 27aG3 in P.caudatum),トリコシス<br />
トを 放 出 できず, 後 退 遊 泳 できない 突 然 変 異<br />
体 (pawnA/pawnA nd7/nd7; strain 9BD7 in P.<br />
tetraurelia, cnrA/cnrA tnd2/tnd2; strain<br />
16A1107 in P.caudatum) に 当 たった 時 に, 以<br />
下 のような 行 動 を 示 したゾウリムシの 数 。<br />
白 ; 後 退 遊 泳 せずに 逃 げた, 斜 線 ; 後 退 遊 泳<br />
をして 逃 げた, 黒 ; 捕 らえられた。<br />
から 逃 げる 際 に 主 な 防 御 手 段 となっていると 結 論 し<br />
た。<br />
3. 様 々な 原 生 動 物 に 対 するゾウリムシのトリコシス<br />
トの 防 御 機 能<br />
トリコシストがディレプタスに 対 して 防 御 機 能 を<br />
もつのなら, 他 の 捕 食 者 に 対 してはどうであろうか。<br />
次 に, 様 々な 原 生 動 物 に 対 するトリコシスの 防 御 機 能<br />
を 調 べた。 表 1はこれまでに 調 べられた 原 生 動 物 であ<br />
る。<br />
繊 毛 虫 門 毒 胞 亜 綱 のディディニウム(Didinium<br />
nasutum)とモノディニウム(Monodinium balbiani)は<br />
いずれもトキシシストをもつ。ディディニウムはゾウ<br />
リムシの 捕 食 者 として 知 られており,ディディニウム<br />
に 襲 われた 時 ,ゾウリムシは 大 量 のトリコシストを 放<br />
出 するにもかかわらず, 捕 食 されるという 観 察 が 古 く<br />
からなされている(Wichterman, 1953, 1986; Jurand and<br />
Selman, 1969; Vivier, 1974)。つまり,トリコシストの<br />
防 御 機 能 はディディニウムに 対 しては 効 果 がない。モ<br />
ノディニウムは, 形 態 的 にディディニウムと 類 似 して<br />
いるが,やや 細 胞 が 小 さく,ディディニウムには 二 列<br />
ある 繊 毛 列 も 一 列 しかない。モノディニウムに 対 して<br />
トリコシストは 効 果 があった。トリコシストを 放 出 で<br />
きない 突 然 変 異 体 は 野 生 型 に 比 べてよく 捕 食 され,そ<br />
の 差 は 有 意 であった(Miyake and Harumoto, 1996)。<br />
繊 毛 虫 門 異 毛 綱 のクリマコストマムは 攻 撃 のため<br />
のエクストルソームをもたないが,よく 発 達 した 口 部<br />
装 置 をもち 様 々な 大 きさの 餌 を 吸 い 込 んで 捕 食 する。<br />
野 生 型 のゾウリムシはクリマコストマムの 口 部 に 吸<br />
い 込 まれても100% 逃 げたが, 突 然 変 異 体 は10<br />
0% 捕 食 された(Sugibayashi and Harumoto, 2000)。す<br />
なわち,トリコシストの 防 御 効 果 はクリマコストマム<br />
に 対 しても 顕 著 であった。<br />
繊 毛 虫 門 吸 管 虫 亜 綱 のヘリオフィルヤ(Heliophrya<br />
erhardi)は 触 手 の 先 にハプトシストと 呼 ばれるエクス<br />
トルソームをもつ。ヘリオフィルヤに 対 しては, 野 生<br />
型 と 突 然 変 異 体 の 間 で 捕 食 の 頻 度 に 差 はみられな<br />
かった(Sugibayashi and Harumoto, 1998)。<br />
肉 質 虫 亜 門 太 陽 虫 綱 のエキノスフ ェ リウム<br />
(Echinosphaerium nucleofilum)は 放 射 状 に 伸 びた 軸 足<br />
の 細 胞 膜 直 下 にエクストルソーム(mottled dense<br />
granules)をもち 餌 を 捕 える(Suzaki, et al. 1980)。エ<br />
キノスフェリウムにゾウリムシを 与 えると, 野 生 型 は<br />
トリコシストを 放 出 して 逃 げたが, 突 然 変 異 体 は 多 く<br />
捕 食 された(Sugibayashi and Harumoto, 1998)。 同 様 の<br />
結 果 は, 別 種 のエキノスフェリウム(Echinosphaerium<br />
akamae)(Shigenaka, et al. 1980)で も 得 られた<br />
(Sugibayashi and Harumoto, 1998)。<br />
また, 肉 質 虫 亜 門 葉 状 根 足 虫 綱 のオオアメーバ<br />
(Amoeba proteus)については,ゾウリムシがオオア<br />
メーバの 仮 足 に 完 全 に 取 り 囲 まれると,ほとんどの 場<br />
合 トリコシストを 放 出 しても 逃 げられなかった。オオ<br />
アメーバの 増 殖 について 野 生 型 と 突 然 変 異 体 を 与 え<br />
て 比 べてみても 差 はみられなかった( 林 原 他 , 2000)。<br />
これらの 結 果 は,トリコシストは 様 々な 捕 食 手 段 を<br />
もつ 原 生 動 物 に 対 して 有 効 な 防 御 手 段 となっている<br />
が,すべての 捕 食 性 原 生 動 物 に 対 して 防 御 を 行 ってい<br />
るのではないことを 示 している。これまでに 調 べられ<br />
たうちでは,ディレプタス,モノディニウム,クリマ<br />
コストマム,エキノスフェリウムに 対 しては 有 効 で<br />
あったが,ディディニウムとヘリオフィルヤとオオア<br />
メーバに 対 しては 効 果 がないように 見 える。しかし,<br />
ゾウリムシがヘリオフィルヤとオオアメーバに 最 初<br />
に 遭 遇 した 時 に,ヘリオフィルヤでは52%,オオア<br />
メーバでは99% 以 上 は 逃 れることができた。そのう<br />
ち,ヘリオフィルヤでは80%,オオアメーバでは 全<br />
部 がトリコシストを 放 出 していなかった。つまり,こ<br />
れらの 捕 食 者 に 遭 遇 してもゾウリムシは 捕 食 される<br />
率 が 低 く,トリコシスト 放 出 もほとんど 見 られないの<br />
で,トリコシストが 防 御 に 役 立 っているかどうかとい<br />
う 議 論 は 難 しい。しかし,ディディニウムに 対 しては,<br />
ゾウリムシは 大 量 のトリコシストを 放 出 しても 捕 食<br />
されるので,トリコシストは 防 御 に 役 立 っていないと
130 原 生 動 物 学 雑 誌 第 35 巻 2002 年<br />
Table 1 Defensive function of trichocysts in Paramecium against predators.<br />
_____________________________________________________________________________________________<br />
Phylum predator species offensive effect of references<br />
extrusomes trichocysts<br />
_____________________________________________________________________________________________<br />
Ciliophora Dileptus margaritifer toxicysts D Miyake et al. 1989<br />
Harumoto & Miyake 1991<br />
Monodinium balbiani toxicysts D Miyake & Harumoto 1996<br />
Didinium nasutum toxicysts N Jurand & Selman 1969<br />
Pollack 1974<br />
Wichterman 1986<br />
Climacostomum virens - D Sugibayashi & Harumoto 2000<br />
Heliophrya erhardi haptocysts -* Sugibayashi & Harumoto 1998<br />
_____________________________________________________________________________________________<br />
Sarco- Echinospaerium nucleofilum mottled dense D Sugibayashi & Harumoto 1998<br />
Mastigophora<br />
granules<br />
Echinospaerium akamae - D Sugibayashi & Harumoto 1998<br />
Amoeba proteus - -* Hayashibara et al. 2000<br />
_____________________________________________________________________________________________<br />
- not known<br />
-* Paramecia escaped frequently (42% in Heliophrya, >99% in Amoeba) without discharging trichocysts.<br />
D: defensive, N: not defensive<br />
いえる。トリコシストの 突 然 変 異 体 は 野 生 型 よりディ<br />
ディニウムに 多 く 捕 食 されるということはなかった<br />
(Pollack, 1974, Miyake and Harumoto, 1996)。ディディ<br />
ニウムは,これまで 調 べられた 中 でトリコシストの 防<br />
御 効 果 が 無 いといえる 唯 一 の 例 外 である。ディディニ<br />
ウムは 主 にゾウリムシを 捕 食 するが,ゾウリムシのト<br />
リコシストの 防 御 機 能 に 打 ち 勝 ってゾウリムシを 捕<br />
食 するために 特 殊 化 した 繊 毛 虫 であると 考 えられる。<br />
今 後 ,さらに 多 くの 捕 食 者 に 対 する 防 御 機 能 を 調 べ<br />
ていくことは 意 味 のあることであろう。どのような 捕<br />
食 者 に 対 して 防 御 効 果 があるのか,どのような 攻 撃 に<br />
対 して 有 効 な 防 御 手 段 となるのか,それらを 調 べるこ<br />
とによって, 以 下 にも 少 し 述 べるが,トリコシストに<br />
よる 防 御 の 機 構 や,ゾウリムシが 捕 食 者 を 識 別 する 機<br />
構 などが 明 らかになる 可 能 性 もある。また,これまで<br />
に 我 々は, 捕 食 者 として 原 生 動 物 のみを 扱 ってきた<br />
が,トリコシストが 多 細 胞 生 物 の 捕 食 者 に 対 して 防 御<br />
機 能 があるかどうかについても, 今 後 実 験 的 に 調 べて<br />
みる 必 要 があるであろう。また,トリコシストが 防 御<br />
の 他 に 何 らかの 機 能 があるという 可 能 性 も 残 されて<br />
いる。これらは 今 後 の 研 究 の 成 果 を 待 たねばならな<br />
い。<br />
4.ゾウリムシ 以 外 のトリコシストの 機 能 について<br />
繊 毛 虫 門 ゾウリムシ 目 フロントニア(Frontonia<br />
leucas)もゾウリムシのトリコシストに 似 た 形 態 のト<br />
リコシストをもつ。フロントニアにはゾウリムシのよ<br />
うに 有 用 な 突 然 変 異 体 が 存 在 しないので,リゾチーム<br />
処 理 によって 人 為 的 にトリコシストを 放 出 させたフ<br />
ロントニアを 得 た。このフロントニアは, 処 理 しない<br />
ものに 比 べディレ プタスに 容 易 に 殺 された<br />
(Hayashibara, et al., 2000)。また,Robert K. Peck 博 士<br />
( 私 信 )によると,シュードマイクロソラックス<br />
(Pseudomicrothorax dubius)のトリコシストを 欠 いた<br />
細 胞 はディレプタスにより 多 く 捕 食 されたという。こ<br />
れらの 結 果 は, 他 の 繊 毛 虫 のトリコシストも 捕 食 者 に<br />
対 して 防 御 の 役 割 を 果 たしていることを 示 唆 してい<br />
る。<br />
5.ゾウリムシのトリコシストの 防 御 機 構<br />
トリコシストはどのようにしてゾウリムシを 捕 食<br />
者 から 防 御 するのか。トリコシストに 毒 性 物 質 が 含 ま<br />
れているという 報 告 はない。ディレプタスは 放 出 され<br />
たトリコシストを 捕 食 することすらある。<br />
Plattnerらのグループは 興 味 深 い 報 告 をしている<br />
(Knoll, et al., 1991)。トリコシストの 放 出 の 際 に,ゾ<br />
ウリムシはトリコシストの 放 出 方 向 とは 逆 の 方 向 に<br />
わずかに 跳 び 退 くという。この 側 方 向 への 動 きがディ<br />
レプタスとゾウリムシの 間 に 空 隙 を 作 り,それがトキ<br />
シシストによる 攻 撃 を 無 にしてしまうのではないか<br />
と 考 えられる。<br />
我 々は, 防 御 機 能 に 関 係 しているのではないかと 考
Jpn. J. Protozool. Vol. 35, No. 2. (2002)<br />
131<br />
図 7 A:クリマコストマムがゾウリムシの 野 生 型 を 飲 み 込 んだところを 固 定 し、クリマコストマムの<br />
囲 口 部 を 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 したもの。 放 出 されたトリコシストが 多 数 見 られる。Tr; 放<br />
出 されたトリコシスト。A:バーは1µm。B: 白 矢 印 ;クリマコストマムの 囲 口 部 の 表 層 に 見 ら<br />
れたトリコシスト。バーは1µm。C:Bの 一 部 を 拡 大 。バーは 200 nm。 写 真 は 洲 崎 敏 伸 氏 によ<br />
る。<br />
える 興 味 深 い 現 象 を 観 察 している。 上 に 述 べたよう<br />
に,クリマコストマムとの 相 互 作 用 で, 野 生 型 のゾウ<br />
リムシはトリコシストを 放 出 して 逃 げた(Sugibayashi<br />
and Harumoto, 2000)。これと 同 時 に,60%のクリマ<br />
コストマムは 後 退 遊 泳 を 示 していることがわかった。<br />
これは,トリコシストの 放 出 がクリマコストマムに 繊<br />
毛 逆 転 を 引 き 起 こしているという 可 能 性 を 示 唆 して<br />
いる。そこでゾウリムシがクリマコストマムの 口 部 に<br />
吸 い 込 まれた 瞬 間 に 固 定 液 を 滴 下 し, 電 子 顕 微 鏡 用 の<br />
試 料 を 作 製 した。 図 7は,クリマコストマムの 口 部 の<br />
内 部 の 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 像 である。 放 出 された 多 くの<br />
トリコシストが 見 られる( 図 7A)。その 中 に,トリ<br />
コシストがクリマコストマムの 口 部 の 表 層 に 突 き 刺<br />
さっている 像 が 得 られた( 図 7,B,C)。 放 出 され<br />
たトリコシストが 勢 いよく 表 層 に 突 き 刺 さり,それが<br />
機 械 的 刺 激 となってクリマコストマムに 後 退 遊 泳 を<br />
起 こさせ,ゾウリムシの 逃 避 行 動 を 助 けているのでは<br />
ないかと 我 々は 考 えている。トリコシストが 捕 食 者 に
132 原 生 動 物 学 雑 誌 第 35 巻 2002 年<br />
突 き 刺 さるという 現 象 は,これまでのところクリマコ<br />
ストマムでしか 観 察 していないが,このような 現 象 が<br />
他 の 捕 食 者 に 対 しても 防 御 の 機 構 となっている 可 能<br />
性 がある。<br />
6.おわりに<br />
これまでの 研 究 から,ゾウリムシのトリコシストの<br />
主 な 機 能 は 捕 食 者 に 対 する 防 御 であると 結 論 する。ゾ<br />
ウリムシのトリコシストは 捕 食 者 に 対 する 防 御 の 器<br />
官 といえる。トリコシストが 防 御 のための 器 官 とする<br />
と,トリコシストがなぜ 瞬 時 に 放 出 されるのか,なぜ<br />
細 胞 全 体 に 渡 って 存 在 するのか,なぜ 部 域 的 に 放 出 さ<br />
れるのかという 理 由 が 説 明 できる。 以 前 にも,トリコ<br />
シストが 防 御 機 能 をもつのではないかという 推 測 は<br />
あった。Visscher は,ディレプタス(Dileptus gigas)と<br />
ゾウリムシの 相 互 作 用 において,ゾウリムシがトリコ<br />
シストを 放 出 して 逃 げる 様 子 を 観 察 し,トリコシスト<br />
に 防 御 の 機 能 があることを 示 唆 している (Visscher,<br />
1923)。Spoon らも,ヘリオフィルヤから 逃 げる 際 にゾ<br />
ウリムシがトリコシストを 放 出 することを 観 察 して<br />
いる(Spoon, et al., 1976)。しかし, 一 方 で,ディディ<br />
ニウムに 対 しては 防 御 効 果 がないことから,トリコシ<br />
ストの 防 御 機 能 は 長 い 間 疑 問 視 されていた。はじめに<br />
述 べたように,トリコシストについて 防 御 以 外 に 数 多<br />
くの 機 能 が 示 唆 されていたのはそのためであり,トリ<br />
コシストの 放 出 は 障 害 に 対 する 反 応 にすぎないとも<br />
考 えられていた(Wichterman, 1953,1986)。Pollack<br />
(1974)はゾウリムシのトリコシスト 欠 損 突 然 変 異 体 を<br />
用 いて,トリコシストに 捕 食 者 に 対 する 防 御 機 能 があ<br />
るかどうか 検 討 した。この 方 法 は 正 しかったのだが,<br />
捕 食 者 にディディニウムを 用 いたので, 否 定 的 な 結 果<br />
しか 得 られなかった。<br />
1883 年 に 原 生 動 物 学 の 草 分 けの 一 人 Maupas<br />
が,トリコシストの 機 能 が 防 御 であることは,その 形<br />
態 を 見 れば 自 明 であろ うと 述 べ ている(Maupas,<br />
1983)。この 予 言 的 仮 説 は,1 世 紀 余 の 紆 余 曲 折 を 経<br />
て, 遂 に 正 しかったことが 実 験 的 に 証 明 されたと 言 え<br />
るだろう。<br />
この 総 説 を 故 稲 葉 文 枝 奈 良 女 子 大 学 名 誉 教 授 に 捧<br />
げます。<br />
謝 辞<br />
共 同 研 究 者 のイタリアカメリーノ 大 学 三 宅 章 雄 教<br />
授 , 電 子 顕 微 鏡 の 仕 事 で 共 同 研 究 をしてくださり, 太<br />
陽 虫 の 株 を 供 与 してくださった 神 戸 大 学 洲 崎 敏 伸 助<br />
教 授 , 研 究 において 有 益 な 助 言 をいただいた 奈 良 女 子<br />
大 学 高 木 由 臣 教 授 に 感 謝 いたします。また,ゾウリム<br />
シの 突 然 変 異 体 を 供 与 してくださったフランスCN<br />
R 研 究 所 のJean Cohen 博 士 と 筑 波 大 学 の 高 橋 三 保 子<br />
教 授 ,フロントニアとオオアメーバの 株 を 供 与 してく<br />
ださった 法 政 大 学 月 井 雄 二 教 授 にお 礼 を 申 し 上 げま<br />
す。また, 大 学 院 生 としてこの 研 究 に 携 わった 杉 林 里<br />
香 さん, 林 原 美 沙 子 さんに 感 謝 します。<br />
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