31.01.2015 Views

Review ゾウリムシのトリコシストの防御機能 - 日本原生動物学会

Review ゾウリムシのトリコシストの防御機能 - 日本原生動物学会

Review ゾウリムシのトリコシストの防御機能 - 日本原生動物学会

SHOW MORE
SHOW LESS

Create successful ePaper yourself

Turn your PDF publications into a flip-book with our unique Google optimized e-Paper software.

126 原 生 動 物 学 雑 誌 第 35 巻 2002 年<br />

図 2 ゾウリムシのトリコシスト( 放 出 前 )の 模<br />

式 図 。<br />

図 3 ディレプタスのプロボーシスが 野 生 型 また<br />

はトリコシストの 放 出 突 然 変 異 体 に 当 たっ<br />

た 時 に 捕 らえられた 細 胞 の 数 (n = 50)。<br />

***, H = 44.02, P < 0.001 (P. tetraurelia),<br />

H = 37.73, P < 0.001 (P. caudatum)。 棒 は95%<br />

信 頼 区 間 を 表 す。 Harumoto and Miyake,<br />

1991より 改 編 。<br />

2.ディレプタスに 対 するゾウリムシのトリコシスト<br />

の 防 御 機 能<br />

繊 毛 虫 門 毒 胞 亜 綱 のディレプタス(Dileptus margaritifer)<br />

は 細 胞 体 の 前 方 に 長 く 伸 びたプロボーシス( 吻 )<br />

をもち,この 内 側 にトキシシストというエクストル<br />

ソームをもつ。プロボーシスが 餌 となる 小 型 の 繊 毛 虫<br />

などに 触 れるとトキシシストが 放 出 される。トキシシ<br />

ストには 毒 性 物 質 が 含 まれるとされ,これによって<br />

ディレプタスは 獲 物 の 細 胞 を 麻 痺 させて 捕 える。とこ<br />

ろが,ゾウリムシはディレプタスに 攻 撃 されると, 攻<br />

撃 された 部 位 からトリコシストを 放 出 して 逃 げるこ<br />

とがわかった。 野 生 型 のゾウリムシはほとんどディレ<br />

プタスに 捕 食 されることはないが,トリコシストを 放<br />

出 できない 突 然 変 異 体 は 瞬 時 に 捕 えられた(Miyake,<br />

et al. 1989; Harumoto and Miyake, 1991)。ゾウリムシの<br />

浮 遊 液 に 一 匹 のディレプタスを 入 れ, 実 体 顕 微 鏡 下 で<br />

観 察 しながら,ディレプタスのプロボーシスが 初 めて<br />

ゾウリムシに 触 れた 時 にゾウリムシが 逃 げたか 捕 食<br />

されたかを, 野 生 型 と 突 然 変 異 体 とで 比 較 したのが 図<br />

3である(Harumoto and Miyake, 1991)。 野 生 型 のゾウ<br />

リムシは 突 然 変 異 体 に 比 べて 有 意 に 逃 げる 頻 度 が 高<br />

いことがわかる。ここで 用 いた 突 然 変 異 体 株 nd7と<br />

tnd2はトリコシストをもち,トリコシストは 正 常 の 位<br />

置 にドッキングしているが,エキソサイトーシスの 最<br />

後 のステップに 欠 陥 があるために 放 出 できないこと<br />

が 知 られている(Lefort-Tran et al. 1981; Takei, et al.<br />

1986)。 遊 泳 速 度 , 細 胞 の 大 きさなどその 他 の 形 質 に<br />

ついてはこの 突 然 変 異 体 は 正 常 である。 従 って, 野 生<br />

型 とこの 突 然 変 異 体 に 見 られた 捕 食 のされやすさの<br />

違 いは,トリコシストを 放 出 できるかどうかに 起 因 す<br />

るものと 考 えられる。 次 に, 図 4では,ゾウリムシの<br />

浮 遊 液 に5 匹 のディレプタスを 入 れた 後 , 時 間 を 追 っ<br />

て, 何 匹 のディレプタスが 食 胞 を 形 成 したかを 調 べた<br />

(Harumoto and Miyake, 1991)。この 実 験 でも, 突 然 変<br />

異 体 は 野 生 型 に 比 べてずっと 速 く 捕 食 されているこ<br />

とがわかる。ここでは 野 生 型 と 突 然 変 異 体 の 他 に, 人<br />

為 的 に 作 製 したトリコシスト 欠 損 細 胞 を 用 いた。トリ<br />

コシストは 様 々な 化 学 的 試 薬 によって 放 出 させるこ<br />

とができる。その 中 でもリゾチームやAED<br />

(aminoethyl dextran)は, 低 濃 度 で 細 胞 を 殺 すことな<br />

くトリコシスト 放 出 を 誘 導 することから 有 用 なトリ<br />

コシスト 誘 導 試 薬 である(Harumoto and Miyake, 1991;<br />

Plattner, et al. 1985)。しかも,その 濃 度 に 応 じて 様 々<br />

な 程 度 にトリコシスト 放 出 を 誘 導 することができる。<br />

トリコシストは 放 出 された 後 , 再 生 されるのに 数 時 間<br />

かかるので, 再 生 前 の 細 胞 の 集 団 を 用 いれば, 様 々な<br />

トリコシスト 放 出 能 をもった 細 胞 の 集 団 を 得 ること<br />

ができる。 図 4に 示 すように,リゾチームで 処 理 した<br />

細 胞 は 野 生 型 よりも 速 く 捕 食 され, 処 理 濃 度 が 高 けれ<br />

ば 高 いほどより 多 く 捕 食 された。 同 様 な 結 果 は,ゾウ<br />

リムシの3 種 (Paramecium caudatum, P. tetraurelia, P.<br />

jenningsi)で 確 かめられた。また,ここには 示 していな<br />

いが,P. multimicronucleatumでも 同 様 な 結 果 が 得 られ

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!