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中国の新興内陸地域 (ネクストフロンティア) 事業環境調査報告書 - JETRO

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中 国 の 新 興 内 陸 地 域<br />

(ネクストフロンティア)<br />

事 業 環 境 調 査 報 告 書<br />

2012 年 7 月<br />

日 本 貿 易 振 興 機 構 (ジェトロ)<br />

海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課


本 レポートに 関 する 問 い 合 わせ 先 :<br />

日 本 貿 易 振 興 機 構 (ジェトロ)<br />

海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課<br />

〒107-6006 東 京 都 港 区 赤 坂 1-12-32<br />

TEL:03-3582-5181<br />

E-mail:ORG@jetro.go.jp<br />

【 免 責 条 項 】 本 レポートで 提 供 している 情 報 は、ご 利 用 される 方 のご 判 断 ・ 責 任 におい<br />

てご 使 用 下 さい。ジェトロでは、できるだけ 正 確 な 情 報 の 提 供 を 心 掛 けておりますが、<br />

本 レポートで 提 供 した 内 容 に 関 連 して、ご 利 用 される 方 が 不 利 益 等 を 被 る 事 態 が 生 じた<br />

としても、ジェトロおよび 執 筆 者 は 一 切 の 責 任 を 負 いかねますので、ご 了 承 下 さい。


アンケート 返 送 先<br />

FAX:03-3582-5309 e-mail:ORG@jetro.go.jp<br />

日 本 貿 易 振 興 機 構 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 宛<br />

● ジェトロアンケート ●<br />

調 査 タイトル: 中 国 の 新 興 内 陸 地 域 (ネクストフロンティア) 事 業 環 境 調 査 報 告 書<br />

ジェトロでは、 中 国 ビジネスに 取 り 組 まれている 企 業 の 皆 様 への 情 報 提 供 を 目 的 に 本 調 査 を 実<br />

施 いたしました。 報 告 書 をお 読 みいただいた 後 、 是 非 アンケートにご 協 力 をお 願 い 致 します。 今 後<br />

の 調 査 テーマ 選 定 などの 参 考 にさせていただきます。<br />

■ 質 問 1: 本 報 告 書 は 参 考 になりましたか?(○をひとつ)<br />

4: 役 に 立 った 3:まあ 役 に 立 った 2:あまり 役 に 立 たなかった 1: 役 に 立 たなかった<br />

■ 質 問 2:1 使 用 用 途 、2 上 記 のように 判 断 された 理 由 、3その 他 、 本 報 告 書 に 関 するご 感 想 を<br />

ご 記 入 下 さい。<br />

■ 質 問 3: 今 後 のジェトロの 調 査 テーマについてご 希 望 等 がございましたら、ご 記 入 願 います。<br />

■お 客 様 の 会 社 名 等 をご 記 入 ください。( 任 意 記 入 )<br />

会 社 ・ 団 体 名<br />

ご 所 属<br />

□ 企 業 ・ 団 体<br />

□ 個 人<br />

部 署 名<br />

お 名 前<br />

※ご 提 供 頂 いたお 客 様 の 個 人 情 報 については、ジェトロ 個 人 情 報 保 護 方 針 (http://www.jetro.go.jp/privacy/)に 基 づき、 適 正 に 管 理 運 用 させてい<br />

ただきます。また、 上 記 のアンケートにご 記 載 いただいた 内 容 については、ジェトロの 事 業 活 動 の 評 価 及 び 業 務 改 善 、 事 業 フォローアップのため<br />

に 利 用 いたします。<br />

~ご 協 力 有 難 うございました~


はじめに<br />

近 年 、 中 国 政 府 が 地 域 発 展 戦 略 を 加 速 し、 経 済 成 長 の 牽 引 役 がこれまでの 沿 海 地 域 から<br />

内 陸 地 域 へ 拡 大 する 中 、 同 地 域 を 視 野 に 入 れたビジネス 展 開 が 注 目 を 集 めています。 実 際 、<br />

日 本 企 業 にも 内 陸 地 域 に 拠 点 を 設 置 する 動 きが 広 がりつつあります。<br />

ジェトロでは、こうした 動 きを 踏 まえ、 内 陸 地 域 に 位 置 する 18 の 省 ・ 自 治 区 ・ 直 轄 市 の<br />

うち、 経 済 規 模 の 大 きい 有 望 8 地 域 ( 四 川 省 、 重 慶 市 、 陝 西 省 、 広 西 チワン 族 自 治 区 、 河<br />

南 省 、 安 徽 省 、 湖 北 省 、 湖 南 省 )の 事 業 環 境 に 関 する 調 査 を 実 施 、2010 年 4 月 に 報 告 書 『 中<br />

国 「 新 興 」 地 域 の 事 業 環 境 と 日 系 企 業 のビジネスチャンスとリスク』を 公 表 いたしました。<br />

それから2 年 余 りが 経 過 しましたが、 同 調 査 で 取 り 上 げなかった 地 域 でも 経 済 発 展 がテ<br />

イクオフする 段 階 を 迎 えつつあることから、ジェトロではその 中 から9 地 域 ( 山 西 省 、 江<br />

西 省 、 貴 州 省 、 雲 南 省 、 青 海 省 、 新 疆 ウイグル 自 治 区 、 甘 粛 省 、 寧 夏 回 族 自 治 区 、 内 モン<br />

ゴル 自 治 区 )を 中 国 の「ネクストフロンティア」として 位 置 付 け、これら 地 域 の 事 業 環 境<br />

に 関 する 現 地 調 査 を 2012 年 1~3 月 にかけて 実 施 いたしました。<br />

今 回 調 査 を 行 った「ネクストフロンティア」 地 域 は、ハード・ソフト 面 でのインフラ、<br />

裾 野 産 業 の 集 積 、 市 場 規 模 などが 現 時 点 では 沿 海 地 域 に 比 較 して 劣 っていることは 否 めま<br />

せんが、 豊 富 な 天 然 ・ 農 産 物 資 源 、 低 廉 な 労 働 ・インフラコストといった 優 位 性 を 有 して<br />

います。また、 市 場 としても 大 きなポテンシャルを 秘 めており、 今 後 の 発 展 が 期 待 されて<br />

いる 地 域 といえます。<br />

加 えて、 地 域 格 差 の 是 正 を 図 るべく、 中 国 政 府 は 同 地 域 への 支 援 を 強 化 しており、 今 後<br />

は 沿 海 地 域 にキャッチアップしていくことが 予 想 されます。 日 本 企 業 としては、 各 地 域 の<br />

優 位 性 を 活 かしつつ、 中 国 政 府 の 政 策 に 沿 った 分 野 で 優 遇 措 置 による 支 援 なども 受 けなが<br />

ら、ビジネスチャンスを 模 索 していくことも1つの 戦 略 になるものと 考 えられます。<br />

本 調 査 報 告 書 は、 第 1 章 で「ネクストフロンティア」 地 域 の 発 展 戦 略 について 全 般 的 に<br />

概 観 した 上 で、 第 2 章 では、 各 地 域 の 経 済 概 況 、 政 策 動 向 、 事 業 環 境 について 概 要 をとり<br />

まとめました。また、 巻 末 には 参 考 資 料 として、 中 国 の 31 省 ・ 直 轄 市 ・ 自 治 区 の 最 新 マク<br />

ロ 経 済 指 標 (2011 年 )も 掲 載 しております。<br />

本 調 査 報 告 書 が 中 国 ビジネスに 関 わる 関 係 各 位 のご 参 考 となれば 幸 甚 に 存 じます。<br />

2012 年 7 月<br />

日 本 貿 易 振 興 機 構 (ジェトロ)<br />

海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課


目 次 ><br />

第 1 章 中 国 新 興 内 陸 地 域 の 発 展 戦 略 と 今 後 の 展 望 ( 総 論 )・・・・・・・・・・・・・・ 1<br />

1.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1<br />

2. 動 き 出 すネクストフロンティア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2<br />

3. 地 域 性 や 優 位 性 を 活 かした 経 済 発 展 を 模 索 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3<br />

4.ネクストフロンティアのビジネスチャンスとリスク・・・・・・・・・・・・・・・・ 3<br />

第 2 章 各 地 域 の 経 済 概 況 、 政 策 動 向 および 事 業 環 境 ( 各 論 )・・・・・・・・・・・・・・ 6<br />

1. 山 西 省 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11<br />

2. 江 西 省 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19<br />

3. 貴 州 省 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31<br />

4. 雲 南 省 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40<br />

5. 青 海 省 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50


6. 新 疆 ウイグル 自 治 区 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59<br />

7. 甘 粛 省 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66<br />

8. 寧 夏 回 族 自 治 区 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74<br />

9. 内 モンゴル 自 治 区 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77<br />

(1) 経 済 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77<br />

(2) 政 策 動 向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81<br />

(3) 事 業 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87<br />

参 考 資 料 : 中 国 の 31 省 ・ 直 轄 市 ・ 自 治 区 の 最 新 マクロ 経 済 指 標 (2011 年 )・・・・・・・・・ 88


第 1 章 中 国 新 興 内 陸 地 域 の 発 展 戦 略 と 今 後 の 展 望 ( 総 論 )<br />

1.はじめに<br />

中 国 の 経 済 成 長 の 牽 引 役 がこれまでの 沿 海 地 域 から 内 陸 地 域 へ 拡 大 する 中 、 日 本 企 業 も<br />

同 地 域 でのビジネスを 検 討 する 動 きが 広 がりつつある。こうした 動 きを 踏 まえ、ジェトロ<br />

は 内 陸 地 域 に 位 置 する 18 の 省 ・ 自 治 区 ・ 直 轄 市 のうち、 経 済 規 模 の 大 きい 有 望 8 地 域 ( 四<br />

川 省 、 重 慶 市 、 陝 西 省 、 広 西 チワン 族 自 治 区 、 河 南 省 、 安 徽 省 、 湖 北 省 、 湖 南 省 )の 事 業<br />

環 境 に 関 する 調 査 を 実 施 、2010 年 4 月 に 報 告 書 『 中 国 「 新 興 」 地 域 の 事 業 環 境 と 日 系 企 業<br />

のビジネスチャンスとリスク』を 公 表 した( 同 報 告 書 はジェトロのウェブサイトで 閲 覧 可<br />

能 。URL は http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/reports/07000222)。<br />

それから2 年 余 りが 経 過 し、 同 調 査 では 取 り 上 げなかった 地 域 でも、 経 済 発 展 が「 離 陸 」<br />

の 段 階 を 迎 えつつあることから、ジェトロはその 中 から 今 後 の 発 展 が 期 待 される9つの<br />

省 ・ 自 治 区 ( 山 西 省 、 江 西 省 、 貴 州 省 、 雲 南 省 、 青 海 省 、 新 疆 ウイグル 自 治 区 、 甘 粛 省 、<br />

寧 夏 回 族 自 治 区 、 内 モンゴル 自 治 区 )を 中 国 の「ネクストフロンティア」として 位 置 付 け、<br />

2012 年 1~3 月 にかけて 現 地 調 査 を 実 施 した。 本 章 では、これら 地 域 の 経 済 ・ビジネス 環<br />

境 の 現 状 と 政 府 の 地 域 発 展 戦 略 を 概 観 する( 図 1)。<br />

図 1 中 国 のネクストフロンティア 地 域 の 概 況<br />

凡 例 (2011 年 )<br />

1 常 住 人 口<br />

2 域 内 総 生 産 (GRP)<br />

3 1 人 当 たりGRP<br />

4 日 系 企 業 進 出 数<br />

5 当 該 地 域 の 特 徴<br />

新 疆 ウイグル 自 治 区<br />

1 2,209 万 人<br />

2 6,575 億 元 ( 約 1,039 億 ドル)<br />

3 29,924 元 ( 約 4,729ドル)<br />

4 11 社 ( 同 自 治 区 政 府 による)<br />

中 央 アジアへの 窓 口 としての 発<br />

5<br />

展 を 図 る<br />

青 海 省<br />

1 568 万 人<br />

2 1,635 億 元 ( 約 258 億 ドル)<br />

3 24,115 元 ( 約 3,625ドル、2010 年 )<br />

4 3 社 ( 同 省 政 府 による)<br />

豊 富 な 資 源 と 農 業 ・ 牧 畜 業 を 軸<br />

5<br />

に 環 境 保 護 型 の 発 展 を 目 指 す<br />

雲 南 省<br />

1 4,602 万 人 (2010 年 総 人 口 )<br />

2 8,751 億 元 ( 約 1,383 億 ドル)<br />

3 18,957 元 ( 約 2,996ドル)<br />

4 7 社 ( 雲 南 日 本 商 工 会 会 員 )<br />

5 「 東 南 ・ 南 アジアへのゲートウェ<br />

イ」としての 期 待 が 高 まる<br />

甘 粛 省<br />

1 2,564 万 人<br />

2 5,020 億 元 ( 約 793 億 ドル)<br />

3 16,113 元 ( 約 2,422ドル、2010 年 )<br />

4 11 社 ( 蘭 州 市 政 府 による)<br />

西 部 地 域 の 交 通 ・ 物 流 ハブとして<br />

5<br />

の 発 展 を 目 指 す<br />

寧 夏 回 族 自 治 区<br />

1 639 万 人<br />

2 2,061 億 元 ( 約 326 億 ドル)<br />

3 32,392 元 ( 約 5,119ドル)<br />

4 3 社 ( 主 要 企 業 )<br />

5 イスラム 地 域 との 連 携 強 化 に<br />

よる 発 展 を 志 向<br />

( 注 )ドル 換 算 レートは2011 年 の 平 均 レート<br />

( 出 所 ) 各 地 域 の 統 計 公 報 、 各 種 資 料 、ヒアリング 等 を 基 に 作 成<br />

( 地 図 )Copyright(C) 中 国 まるごと 百 科 事 典 (www.allchinainfo.com)<br />

( 出 所 ) 各 地 域 の 統 計 公 報 、 各 種 資 料 、ヒアリング 等 を 基 に 作 成<br />

1<br />

Copyright (C) 2012 <strong>JETRO</strong>. All rights reserved.<br />

内 モンゴル 自 治 区<br />

1 2,482 万 人<br />

2 1 兆 4,246 億 元 ( 約 2,251 億 ドル)<br />

3 57,515 元 ( 約 9,089ドル)<br />

4 約 100 社 ( 同 自 治 区 商 務 庁 による)<br />

中 国 一 の 豊 富 な 資 源 を 糧 に 発<br />

5<br />

展 を 遂 げる<br />

山 西 省<br />

1 3,593 万 人<br />

2 1 兆 1,100 億 元 ( 約 1,754 億 ドル)<br />

3 30,974 元 ( 約 4,895ドル)<br />

4 14 社 ( 蒼 蒼 社 「 中 国 進 出 企 業 一 覧<br />

2011~2012 年 版 」)<br />

5 「 石 炭 の 里 」からの 産 業 構 造 の<br />

転 換 を 図 る<br />

江 西 省<br />

1 4,488 万 人<br />

2 1 兆 1,584 億 元 ( 約 1,831 億 ドル)<br />

3 25,990 元 ( 約 4,107ドル)<br />

4 81 社 ( 同 省 商 務 庁 による)<br />

華 南 ・ 華 東 から 半 日 圏 、 産 業 移<br />

5<br />

転 の 受 け 入 れ 目 指 す<br />

貴 州 省<br />

1 3,469 万 人<br />

2 5,702 億 元 ( 約 901 億 ドル)<br />

3 13,119 元 ( 約 1,972ドル、2010 年 )<br />

4 39 社 ( 同 省 投 資 促 進 局 による)<br />

政 府 の 積 極 支 援 を 受 けて「 小 康 社<br />

5<br />

会 」の 実 現 を 目 指 す


2. 動 き 出 すネクストフロンティア<br />

中 国 の 2011 年 の 名 目 GDP( 国 内 総 生 産 )は 47 兆 1,564 億 元 (1 人 民 元 = 約 12.5 円 )<br />

となり、 前 年 比 で7 兆 元 を 超 える 大 幅 な 増 加 となった。ドル 換 算 すれば GDP は1 兆 4,000<br />

ドル 増 えたことになり、これはわずか1 年 で、 先 進 国 であればオーストラリア、 開 発 途 上<br />

国 でいえばトルコとインドネシアを 合 わせた 規 模 に 匹 敵 する 経 済 が 新 たに 生 まれたことを<br />

意 味 する。<br />

中 国 の 驚 異 的 な 経 済 成 長 のけん 引 役 の1つが 内 陸 地 域 である。 同 地 域 は 中 部 と 西 部 に 分<br />

かれ、12 省 、5 自 治 区 、1 直 轄 市 から 構 成 される。これまでは、 相 対 的 には 発 展 の 遅 れた<br />

地 域 であったが、 近 年 は 沿 海 地 域 を 上 回 る 経 済 成 長 を 持 続 しており、2011 年 の 成 長 率 は 軒<br />

並 み 10%を 超 える2ケタ 成 長 を 達 成 。これに 対 し、 経 済 成 長 のエンジンだった 沿 海 地 域 で<br />

は、 北 京 市 、 上 海 市 、 浙 江 省 が1ケタ 成 長 にとどまった。<br />

中 西 部 地 域 の 経 済 成 長 の 背 景 にあるのが、 地 域 間 の 調 和 の 取 れた 発 展 を 目 指 す 中 国 政 府<br />

の 政 策 支 援 である。 西 部 地 域 では、 大 規 模 なインフラ 開 発 を 中 心 とした「 西 部 大 開 発 戦 略 」<br />

を 2000 年 より 開 始 。 中 部 地 域 では 産 業 移 転 の 受 け 皿 としての 発 展 を 軸 とした「 中 部 振 興<br />

戦 略 」を 2006 年 から 推 進 するなど、 中 国 政 府 は 地 域 振 興 政 策 を 強 化 してきた。<br />

西 部 大 開 発 戦 略 は 2000~09 年 の 10 年 間 に2 兆 2,000 億 元 を 投 じ、120 のプロジェクト<br />

を 実 施 してきた。 中 国 共 産 党 は 2010 年 5 月 、 胡 錦 濤 ・ 国 家 主 席 の 主 宰 で 政 治 局 会 議 を 開<br />

催 。 同 戦 略 をさらに 10 年 間 延 長 し、 資 金 を 一 層 投 じて 支 援 策 を 拡 充 する 方 針 を 決 定 した。<br />

加 えて、2012 年 1 月 には、 温 家 宝 総 理 が 国 務 院 西 部 地 区 開 発 指 導 グループ 会 議 を 主 宰 し、<br />

「 西 部 大 開 発 ・ 第 12 次 5ヵ 年 規 画 (2011~15 年 )」を 採 択 。インフラ 建 設 の 加 速 、 優 位<br />

性 産 業 や 近 代 的 農 業 の 発 展 による 経 済 成 長 を 目 指 す 方 針 が 示 された。 同 規 画 のポイントは<br />

以 下 の 通 りである。<br />

1 「 主 体 性 機 能 区 」( 重 点 的 な 経 済 区 、 農 業 生 産 区 、 環 境 保 護 区 、 資 源 集 中 区 、 辺 境 開<br />

発 区 、 特 別 困 難 地 区 )について、それぞれ 異 なる 方 針 を 実 施 し、その 発 展 を 指 導 す<br />

る。<br />

2 インフラ 建 設 を 優 先 する。 特 に 交 通 と 水 利 施 設 の 建 設 に 注 力 し、 近 代 的 なインフラ<br />

体 系 の 構 築 を 加 速 する。<br />

3 環 境 保 護 を 強 化 し、 環 境 悪 化 を 阻 止 する。 省 エネと 排 出 削 減 を 強 化 し、 循 環 型 経 済<br />

の 発 展 に 注 力 する。<br />

4 特 色 のある 優 位 性 産 業 を 発 展 させ、 国 家 エネルギー 基 地 、 資 源 加 工 基 地 、 設 備 製 造<br />

業 基 地 、 戦 略 的 振 興 産 業 基 地 を 建 設 する。<br />

5 特 色 のある 近 代 的 農 業 の 発 展 を 加 速 し、 農 産 品 加 工 生 産 体 系 を 確 立 、 農 民 増 収 のル<br />

ートを 拡 大 する。<br />

6 中 小 都 市 および 特 色 のある 小 都 市 を 育 成 し、 都 市 化 の 水 準 を 向 上 させる。<br />

7 教 育 を 優 先 的 に 発 展 させ、 雇 用 を 拡 大 し、 公 共 サービスの 均 等 化 を 促 進 するととも<br />

に 技 術 革 新 力 を 増 強 する。<br />

8 全 面 的 に 開 放 を 拡 大 し、 発 展 の 動 力 と 活 力 を 増 強 する。<br />

2<br />

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3. 地 域 性 や 優 位 性 を 活 かした 経 済 発 展 を 模 索<br />

今 後 の 経 済 発 展 が 見 込 まれるネクストフロンティアの 特 徴 を 概 観 すると、 各 地 域 とも 状<br />

況 はそれぞれ 異 なるが、いずれも 自 らが 持 つ 地 域 性 や 優 位 性 を 活 かしつつ、 政 府 の 政 策 支<br />

援 も 受 けながら、 経 済 発 展 を 模 索 するという 方 向 性 がうかがわれる。<br />

山 西 省 は 石 炭 を 始 めとする 天 然 資 源 に 依 存 して 経 済 発 展 を 遂 げてきたが、その 弊 害 で 産<br />

業 構 造 の 偏 りや 環 境 汚 染 などの 問 題 が 顕 在 化 している。 同 省 は 2009 年 に 国 務 院 より「 資<br />

源 型 産 業 構 造 転 換 試 験 地 域 」としての 指 定 を 受 けたことを 契 機 に、 産 業 構 造 の 転 換 による<br />

発 展 を 目 指 している。<br />

江 西 省 も 同 様 に 資 源 加 工 業 に 依 存 した 産 業 構 造 であったが、 華 東 地 域 と 華 南 地 域 の 二 大<br />

経 済 圏 と 内 陸 地 域 の 要 衝 に 位 置 する 優 位 性 を 活 かし、 同 省 への 産 業 移 転 を 通 じた 発 展 を 推<br />

進 している。<br />

貴 州 省 は 最 も 発 展 の 遅 れた 地 域 の1つであるが、2012 年 に 国 務 院 が 三 農 ( 農 業 ・ 農 村 ・<br />

農 民 ) 問 題 に 次 いで 解 決 すべき 重 要 課 題 として 同 省 の 経 済 発 展 を 取 り 上 げたことを 受 け、<br />

今 後 は 産 業 振 興 やインフラ 整 備 に 対 する 支 援 をさらに 強 化 する 方 針 が 示 されている。 同 省<br />

は 2020 年 に「 小 康 社 会 (いくらかゆとりのある 社 会 )」を 実 現 することを 目 指 している。<br />

雲 南 省 はラオス、ベトナム、ミャンマーと 国 境 を 接 していることから、 同 省 を 中 国 から<br />

東 南 ・ 南 アジアへのゲートウエーとして 展 開 する 戦 略 を 国 家 レベルの 地 域 戦 略 として 位 置<br />

付 け、インフラ 建 設 を 推 進 中 だ。<br />

青 海 省 は 省 面 積 の 約 4 割 が 開 発 を 制 限 もしくは 禁 止 する 区 域 に 指 定 されており、こうし<br />

た 制 約 のある 中 で、 優 位 性 を 持 つ 資 源 や 農 ・ 畜 産 業 の 高 付 加 価 値 化 に 活 路 を 見 出 そうとし<br />

ている。<br />

新 疆 ウイグル 自 治 区 は 中 国 の 最 西 部 に 位 置 し、ロシアや 中 央 アジア 諸 国 と 国 境 を 接 する<br />

という 地 理 的 優 位 性 を 活 かし、 対 中 央 アジア 貿 易 の 要 衝 としての 発 展 を 志 向 している。<br />

甘 粛 省 は 省 都 の 蘭 州 市 が 地 理 的 に 中 国 のほぼ 中 央 に 位 置 するという 優 位 性 を 活 かし、 西<br />

部 地 域 の 交 通 の 要 衝 として、 周 辺 地 域 を 商 圏 として 取 り 込 みつつ 発 展 を 図 ろうとしている。<br />

寧 夏 回 族 自 治 区 はイスラム 教 を 信 仰 する 回 族 が 多 く 居 住 するという 特 色 を 活 かし、イス<br />

ラム 地 域 との 連 携 強 化 による 経 済 発 展 に 政 策 の 重 点 を 置 いている。<br />

内 モンゴル 自 治 区 は 中 国 で 最 も 豊 富 に 資 源 を 賦 存 するという 優 位 性 を 活 かし、 資 源 需 要<br />

の 高 まりの 中 、 急 成 長 を 遂 げているが、 資 源 一 辺 倒 の 産 業 構 造 から 転 換 する 方 針 も 打 ち 出<br />

している。<br />

4.ネクストフロンティアのビジネスチャンスとリスク<br />

それでは、 中 国 のネクストフロンティアでの 事 業 展 開 において、 日 本 企 業 はどのような<br />

ビジネスチャンスが 見 出 せるのか、また 直 面 するリスクは 何 か。これを 検 証 するには、 内<br />

陸 地 域 の SWOT 分 析 が 重 要 だ。すなわち 同 地 域 が 内 部 環 境 としていかなる 強 み(Strength)<br />

や 弱 み(Weakness)を 持 ち、 外 部 環 境 としてどのような 機 会 (Opportunities)や 脅 威<br />

(Threats)があるのかを 客 観 的 に 評 価 して 初 めて、 有 効 な 戦 略 を 打 ち 出 すことができる<br />

といえよう( 図 2)。<br />

3<br />

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内 陸 地 域 の「 強 み」として 各 地 域 に 共 通 するのが、 天 然 ・ 農 産 物 資 源 が 豊 富 なことだ。<br />

進 出 企 業 の 事 業 運 営 をみると、 現 地 の 資 源 を 加 工 して 輸 出 、あるいは 国 内 販 売 を 行 ってい<br />

る 事 例 が 多 くみられる。なお、この 強 みを 活 かすためには、 各 地 域 における 資 源 の 埋 蔵 量<br />

や 生 産 量 を 把 握 することが 重 要 だ( 表 1)。<br />

図 2 内 陸 地 域 の SWOT 分 析<br />

内 部<br />

環 境<br />

外 部<br />

環 境<br />

強 み(Strength)<br />

• 豊 富 な 天 然 ・ 農 産 物 資 源<br />

• 地 理 的 な 優 位 性 ( 周 辺 国 へのゲー<br />

トウエイ、 東 西 南 北 への360 度 展 開 )<br />

• 低 廉 な 労 働 ・インフラ( 電 気 ・ 水 道<br />

等 )コスト<br />

• 所 得 の 伸 びと 今 後 の 市 場 潜 在 性 の<br />

高 さ<br />

• 外 資 に 対 する 現 地 政 府 の 歓 迎 度 の<br />

高 さ<br />

• 優 遇 措 置 の 享 受 が 可 能<br />

機 会 (Opportunity)<br />

• 地 域 経 済 の 振 興 に 向 けた 中 国 政 府<br />

の 積 極 的 な 支 援<br />

弱 み(Weakness)<br />

•インフラの 未 整 備 、 不 十 分 な 裾 野 産 業<br />

の 集 積<br />

• 物 流 ・ 商 流 面 でのコストの 高 さ<br />

• 沿 海 部 に 比 較 して 相 対 的 に 小 さい 市 場<br />

規 模<br />

• 少 数 民 族 問 題 に 関 連 するリスク<br />

• 日 本 からの 相 対 的 な 距 離 の 遠 さ、 日 本<br />

人 にとって 厳 しい 生 活 環 境<br />

• 対 外 開 放 の 遅 れおよび 外 資 導 入 に 不 慣<br />

れな 現 地 政 府<br />

脅 威 (Threat)<br />

• 中 国 の 他 地 域 や 新 興 国 ・ 地 域 との 外 資<br />

誘 致 における 競 合<br />

( 出 所 ) 各 種 資 料 、ヒアリング 等 より 作 成<br />

表 1 内 陸 地 域 における 天 然 ・ 農 産 物 資 源 の 概 況 (2010 年 )<br />

省 ・ 自 治 区 名<br />

山 西 省<br />

江 西 省<br />

貴 州 省<br />

雲 南 省<br />

青 海 省<br />

新 疆 ウイグル 自 治 区<br />

甘 粛 省<br />

寧 夏 回 族 自 治 区<br />

内 モンゴル 自 治 区<br />

埋 蔵 量 および 生 産 量<br />

石 炭 の 埋 蔵 量 は 第 1 位 。 鉄 鉱 、 銅 、ボーキサイトはいずれも 第 4 位 。<br />

リンゴの 生 産 量 は 第 5 位 。<br />

銅 の 埋 蔵 量 は 第 1 位 、 硫 黄 は 第 5 位 。<br />

ゴマの 生 産 量 は 第 4 位 、 柑 橘 類 は 第 7 位 。<br />

マンガン、ボーキサイトの 埋 蔵 量 はともに 第 3 位 。 石 炭 は 第 5 位 。<br />

タバコの 生 産 量 は 第 2 位 、 塊 茎 類 は 第 5 位 。<br />

亜 鉛 の 埋 蔵 量 は 第 1 位 。 鉛 とリンが 第 2 位 。 銅 が 第 3 位 、<br />

タバコの 生 産 量 は 第 1 位 。ゴムは 第 2 位 だがシェアは47.9%。また、お 茶 、サトウキビも 第 2 位 、 松 脂<br />

が 第 3 位 、バナナが 第 4 位 。<br />

天 然 ガス、 鉛 の 埋 蔵 量 は 第 7 位 。<br />

羊 毛 の 生 産 量 は 第 7 位 。<br />

天 然 ガスの 埋 蔵 量 は 第 1 位 。また、 石 油 は 第 2 位 、 石 炭 は 第 3 位 。<br />

羊 肉 、 羊 毛 の 生 産 量 は 第 2 位 。 綿 花 (シェア41.6%)、ブドウの 生 産 量 はともに 第 1 位 。ナシが 第 4 位 、<br />

小 麦 が 第 6 位 。<br />

クロムの 埋 蔵 量 は 第 2 位 。また、 亜 鉛 は 第 3 位 、バナジウム 第 4 位 、 鉛 は 第 5 位 。<br />

羊 毛 、 塊 茎 類 の 生 産 量 は 第 4 位 。<br />

資 源 ・ 農 産 品 が 全 国 に 占 めるシェアは 極 めて 小 さい( 牛 乳 2.4%、 石 炭 1.9%、 羊 肉 1.8%など)<br />

鉛 の 埋 蔵 量 は 第 1 位 。 天 然 ガス、 石 炭 、 銅 、 亜 鉛 はいずれも 第 2 位 。クロム、 硫 黄 が 第 3 位 。<br />

羊 肉 、 牛 乳 、 羊 毛 の 生 産 量 はいずれも 第 1 位 。この 他 、 豆 類 は 第 2 位 、 牛 肉 は 第 4 位 、トウモロコシ<br />

は 第 6 位 。<br />

( 出 所 ) 中 国 統 計 年 鑑 2011 年 版 を 基 に 作 成 。<br />

4<br />

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また、 地 理 的 な 優 位 性 も 強 みとなる。 中 部 地 域 は 華 北 、 華 東 、 華 南 と 西 部 を 結 ぶ 中 間 に<br />

立 地 しており、 現 地 を 起 点 に 360 度 での 事 業 展 開 が 可 能 だ。また、 他 国 ・ 地 域 と 国 境 を 接<br />

する 西 部 地 域 では、 現 地 を 起 点 に 雲 南 省 であれば 東 南 ・ 南 アジア、 新 疆 ウイグル 自 治 区 で<br />

あればロシアや 中 央 アジアといった 形 で 第 3 国 展 開 も 展 望 できる。<br />

さらに、 低 廉 な 労 働 ・インフラ( 電 気 ・ 水 道 等 )コストも 魅 力 だ。2010 年 の 都 市 部 の 平<br />

均 賃 金 は、 今 回 取 り 上 げた 地 域 で 最 も 高 い 寧 夏 回 族 自 治 区 が 37,166 元 、 最 も 低 い 江 西 省<br />

で 28,363 元 と、 上 海 市 (66,115 元 )より4~6 割 安 い 水 準 にある。ただし、こうした 地<br />

域 でも 賃 金 の 上 昇 傾 向 が 続 いていることから、 単 に 人 件 費 の 安 さだけを 求 めて 進 出 するの<br />

は 得 策 ではないだろう。 他 方 で、 所 得 の 伸 びの 高 さは 今 後 の 市 場 としての 潜 在 性 の 高 さを<br />

期 待 させる。 経 済 規 模 は 沿 海 地 域 に 比 較 すれば 小 さいものの「 伸 びしろ」が 大 きいことは<br />

確 かだ。<br />

加 えて、 外 資 系 企 業 の 進 出 が 少 ないため、 現 地 政 府 の 歓 迎 度 が 高 いことや、 中 西 部 進 出<br />

企 業 に 対 する 優 遇 措 置 により、 税 制 や 土 地 利 用 などの 面 でインセンティブを 享 受 すること<br />

が 可 能 といった 点 も 強 みとなろう。<br />

「 弱 み」としては、ハード・ソフト 面 でのインフラ、 裾 野 産 業 の 集 積 が 現 時 点 では 沿 海<br />

地 域 に 比 較 して 劣 っていることは 否 めない。また、 沿 海 地 域 から 距 離 的 に 離 れていること<br />

から、 物 流 ・ 商 流 面 でのコストの 高 さを 指 摘 する 向 きも 多 い。ただし、 交 通 インフラ 整 備<br />

の 進 展 に 伴 い、 従 来 に 比 べれば 改 善 したとの 声 も 少 なくない。さらに、 沿 海 地 域 に 比 較 し<br />

て 経 済 規 模 が 小 さいことや、 広 範 な 地 域 に 都 市 が 点 在 しているため、 面 としての 展 開 が 図<br />

りにくいといった 市 場 開 拓 上 の 限 界 も 指 摘 されている。<br />

この 他 、 少 数 民 族 の 多 い 地 域 では、 言 葉 や 宗 教 など、 生 活 習 慣 上 の 問 題 があること、 日<br />

本 からの 距 離 が 沿 海 地 域 に 比 較 して 遠 く、 日 本 人 にとって 生 活 環 境 が 厳 しい 面 も 多 いこと、<br />

対 外 開 放 の 遅 れもあって、 現 地 政 府 の 対 応 が 外 資 に 対 して 不 慣 れなことなども 弱 みとして<br />

挙 げられる。<br />

「 機 会 」としては、 地 域 経 済 の 振 興 に 向 けた 中 国 政 府 の 積 極 的 な 支 援 が 挙 げられる。 中<br />

国 政 府 は 地 域 格 差 の 是 正 を 図 るべく、 中 西 部 地 域 への 外 資 誘 致 を 推 進 するなど、 同 地 域 へ<br />

の 支 援 を 強 化 しており、 急 速 に 沿 海 地 域 にキャッチアップしつつある。 日 本 企 業 としては、<br />

こうした 中 国 政 府 の 政 策 に 沿 った 分 野 で 優 遇 措 置 による 支 援 なども 受 けながら、ビジネス<br />

チャンスを 模 索 していくことも1つの 戦 略 となろう。<br />

「 脅 威 」としては、 中 国 の 他 地 域 やアジアの 新 興 国 ・ 地 域 と 外 資 誘 致 において 競 合 して<br />

いることが 挙 げられる。 外 資 誘 致 が 十 分 に 進 まなかった 場 合 、 期 待 されるような 経 済 成 長<br />

が 難 しくなることがリスク 要 因 として 考 えられる。<br />

本 調 査 報 告 書 で 取 り 上 げた 地 域 は 日 本 人 にとっては 余 り 馴 染 みのないところが 多 い。 日<br />

本 企 業 の 進 出 も 少 ないのが 現 状 だ。また、 投 資 環 境 も 沿 海 地 域 に 比 較 すればリスクが 高 い<br />

といわざるを 得 ない。<br />

他 方 で、そのポテンシャルは 決 して 小 さくなく、 各 地 域 が 持 つ 強 みを 自 社 の 強 みに 活 か<br />

せればビジネスチャンスの 拡 大 が 期 待 できる。 先 行 参 入 企 業 が 優 位 性 を 確 保 できるのが 新<br />

興 市 場 。 経 済 発 展 がテイクオフの 段 階 を 迎 えた 今 、 新 興 内 陸 地 域 を 中 国 のネクストフロン<br />

ティアとして 捉 え、ビジネス 展 開 を 検 討 していく 意 義 は 高 まっているといえよう。<br />

( 真 家 陽 一 )<br />

5<br />

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第 2 章 各 地 域 の 経 済 概 況 、 政 策 動 向 および 事 業 環 境 ( 各 論 )<br />

1. 山 西 省<br />

中 部 地 域 に 位 置 する 山 西 省 は、その 豊 富 な 石 炭 埋 蔵 量 から「 石 炭 の 里 」と 称 されてきた。<br />

沿 海 地 域 に 比 べると 経 済 発 展 の 段 階 はまだ 低 いが、2009 年 に「 資 源 型 産 業 構 造 転 換 試 験 地<br />

域 」に 指 定 されたことを 契 機 に、これまでの 石 炭 に 依 存 した 経 済 発 展 モデルからの 転 換 を<br />

図 ろうとしている。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

<br />

山 西 省 は 中 部 地 域 に 位 置 し、 東 は 河 北 省 、 西 は 陝 西 省 、 南 は 河 南 省 、 北 は 内 モンゴル 自<br />

治 区 とそれぞれ 接 している( 図 1 参 照 )。 省 都 の 太 原 市 のほか、 大 同 市 、 陽 泉 市 、 晋 中 市<br />

など 11 市 で 構 成 され、 面 積 は 15 万 6,300 平 方 キロメートル、 人 口 は 3,593 万 人 。<br />

図 1 山 西 省 の 位 置<br />

内 モンゴル 自 治 区<br />

北 京 市<br />

河 北 省<br />

山 西 省<br />

陝 西 省<br />

河 南 省<br />

山 西 省 は 近 年 、 顕 著 な 経 済 成 長 を 続 けている。 実 質 域 内 総 生 産 (GRP)は、2009 年 は<br />

リーマン・ショックの 影 響 で 前 年 比 0.6% 増 にとどまったが、2010 年 には 13.9% 増 と V<br />

字 回 復 を 遂 げ、2011 年 には 13.0% 増 の 1 兆 1,100 億 1,800 万 元 (1 元 = 約 12.5 円 )と 初<br />

めて 1 兆 元 の 大 台 を 突 破 した( 図 2 参 照 )。<br />

6<br />

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図 2 山 西 省 のGRPの 推 移<br />

( 億 元 ) GRP( 左 目 盛 り) 伸 び 率 ( 右 目 盛 り) (%)<br />

12,000<br />

30.0<br />

25.1<br />

22.8<br />

23.5<br />

10,000<br />

21.4<br />

25.0<br />

8,000<br />

6,000<br />

4,000<br />

2,000<br />

10.0<br />

14.5<br />

18.5<br />

15.3<br />

0.6<br />

20.0<br />

13.9 13.0 15.0<br />

10.0<br />

5.0<br />

0.0<br />

0<br />

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11<br />

( 出 所 )2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報 を 基 に 作 成<br />

2011 年 の GRP を 産 業 別 にみると、 第 一 次 産 業 が 5.9% 増 の 641 億 4,100 万 元 (シェア<br />

5.8%)、 第 二 次 産 業 が 16.5% 増 の 6,577 億 8,400 万 元 (59.3%)、 第 三 次 産 業 が 8.6% 増<br />

の 3,880 億 9,300 万 元 (35.0%)で、 第 二 次 産 業 のシェアが 相 対 的 に 高 いのが 特 徴 だ( 表<br />

1 参 照 )。<br />

第 二 次 産 業 について、2011 年 の 一 定 規 模 以 上 の 工 業 生 産 額 は、 軽 工 業 が 22.5% 増 の 280<br />

億 2,000 万 元 、 重 工 業 は 17.7% 増 の 5,664 億 5,000 万 元 と、ともに 大 きく 増 加 した。この<br />

うち、 主 要 5 大 産 業 の 石 炭 、 冶 金 (やきん)、 機 械 、 電 力 、 化 学 が、 工 業 付 加 価 値 全 体 の<br />

8 割 以 上 を 占 めており、 山 西 省 経 済 の 牽 引 役 になっている。<br />

太 原 市 内 には 20~30 階 建 てのマンション 建 設 が 進 む<br />

7<br />

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表 1 山 西 省 の 主 要 経 済 指 標<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

構 成 比<br />

単 位 数 値<br />

平 方 キロ 156,300<br />

万 人 3,593<br />

% 49.7<br />

% 13.0<br />

億 元 11,100<br />

第 一 次 産 業 % 5.8<br />

第 二 次 産 業 % 59.3<br />

第 三 次 産 業 % 35.0<br />

一 人 当 たりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

財 政 収 入<br />

財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)<br />

都 市 部 住 民 1 人 当 たり 可 処 分 所 得<br />

農 村 住 民 1 人 当 たり 純 収 入 額<br />

( 注 )データの 基 準 年 は2011 年<br />

( 出 所 ) 図 2に 同 じ<br />

元 30,974<br />

億 元 5,945<br />

億 元 7,373<br />

億 元 3,774<br />

% 5.2<br />

億 元 1,213<br />

億 元 2,369<br />

億 ドル 148<br />

億 ドル 54<br />

億 ドル 93<br />

億 ドル 21<br />

元 18,124<br />

元 5,601<br />

< 貿 易 額 は 2 年 連 続 で 2 ケタ 成 長 ><br />

2011 年 の 貿 易 総 額 は、 前 年 比 17.4% 増 の 147 億 6,000 万 ドル、うち 輸 出 は 15.4% 増 の<br />

54 億 3,000 万 ドル、 輸 入 は 18.5% 増 の 93 億 3,000 万 ドルだった( 図 3 参 照 )。 貿 易 総 額<br />

の 伸 び 率 は 2010 年 の 47.0%から 29.6 ポイント 下 落 したものの、2 年 連 続 で 2 ケタ 成 長 を<br />

維 持 し、 金 額 はリーマン・ショック 前 の 2008 年 の 水 準 に 回 復 した。<br />

輸 出 の 内 訳 をみると、 石 炭 が 24.6% 増 の 4 億 2,000 万 ドル、コークスが 9.2% 増 の 7 億<br />

6,000 万 ドル、マグネシウムが 10.2% 増 の 3 億 ドル、 鋼 材 が 21.4% 増 の 14 億 7,000 万 ド<br />

ル、 電 気 ・ 電 子 が 31.2% 増 の 15 億 9,000 万 ドルと 総 じて 好 調 だった。<br />

国 ・ 地 域 別 のシェアは、 韓 国 が 14.9%( 第 1 位 )、 米 国 が 11.6%( 第 2 位 )、 日 本 が<br />

7.6%( 第 3 位 )を 占 めた。このうち 日 本 への 輸 出 額 は 11.6% 増 の 4 億 1,000 万 ドルだっ<br />

た。<br />

輸 入 の 内 訳 は、 鉄 鉱 石 が 49.6% 増 の 43 億 ドル、 電 気 ・ 電 子 が 19.2% 増 の 23 億 8,000<br />

万 ドルだった。 国 ・ 地 域 別 のシェアは、オーストラリアが 25.6%( 第 1 位 )、ブラジルが<br />

11.6%( 第 2 位 )、ドイツが 6.6%( 第 3 位 )だった。 日 本 からの 輸 入 は、31.9% 増 の 4<br />

億 7,000 万 ドルで、シェアは 5.0%( 第 4 位 )を 占 めた。<br />

8<br />

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( 億 ドル)<br />

160<br />

140<br />

78.1<br />

120<br />

64.6<br />

100<br />

80<br />

60<br />

40<br />

20<br />

図 3 山 西 省 の 対 外 貿 易 の 推 移<br />

輸 入 輸 出 輸 出 伸 び 率 輸 入 伸 び 率 (%)<br />

102.5<br />

120<br />

100<br />

80<br />

49.8<br />

65.9<br />

41.5<br />

60<br />

23.3<br />

57.8<br />

40<br />

11.1 37.7<br />

18.5<br />

20<br />

‐12.5<br />

17.3<br />

2.1<br />

15.4 0<br />

‐20<br />

‐40<br />

‐60<br />

0<br />

‐69.3<br />

04 05 06 07 08 09 10 11<br />

‐80<br />

( 出 所 ) 山 西 統 計 年 鑑 各 年 版 を 基 に 作 成<br />

2011 年 の 対 内 直 接 投 資 は、 契 約 件 数 が 19.2% 増 の 62 件 、 契 約 額 は 55.2% 増 の 15 億 6,000<br />

万 ドル、 実 行 額 は 37.3% 増 の 20 億 7,000 万 ドルだった( 図 4 参 照 )。 契 約 件 数 を 産 業 別<br />

でみると、 第 一 次 産 業 が 6 件 、 第 二 次 産 業 が 25 件 、 第 三 次 産 業 が 31 件 と、 第 三 次 産 業 が<br />

5 割 を 占 めている。 国 ・ 地 域 別 では、 香 港 が 36 件 、オーストラリアが 3 件 、 米 国 が 2 件 、<br />

韓 国 が 2 件 と 続 いた。 日 本 からの 投 資 は 3 件 あったものの、 実 行 額 は 358 万 ドルと 小 規 模<br />

だった。<br />

30.0<br />

25.0<br />

20.0<br />

15.0<br />

10.0<br />

5.0<br />

0.0<br />

46.2<br />

13.6<br />

79.4<br />

24.4<br />

図 4 山 西 省 の 対 内 直 接 投 資 の 推 移<br />

( 億 ドル) 対 内 直 接 投 資 ( 左 目 盛 り) 伸 び 率 ( 右 目 盛 り) (%)<br />

13.4<br />

‐45.1<br />

68.7<br />

22.6<br />

20.8<br />

27.3<br />

13.5<br />

‐50.5<br />

11.9<br />

15.1<br />

04 05 06 07 08 09 10 11<br />

37.3<br />

20.7<br />

100<br />

80<br />

60<br />

40<br />

20<br />

0<br />

‐20<br />

‐40<br />

‐60<br />

( 出 所 ) 山 西 省 商 務 庁 発 表 を 基 に 作 成<br />

9<br />

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(2) 政 策 動 向<br />

< 石 炭 産 業 の 高 度 化 が 持 続 的 経 済 発 展 のカギ><br />

山 西 省 は 石 炭 を 中 心 に 豊 富 な 鉱 産 資 源 を 持 つ。 現 在 までに 発 見 されている 地 下 資 源 は<br />

120 種 以 上 に 上 り、その 中 で 石 炭 の 埋 蔵 量 は 全 国 第 1 位 で、 山 西 省 は 古 くから「 石 炭 の 里 」<br />

と 称 されてきた。その 豊 富 な 石 炭 埋 蔵 量 から、 山 西 省 は 華 北 地 区 の 電 力 網 の 中 でも 重 要 な<br />

役 割 を 果 たしており、 同 省 政 府 によると、 北 京 で 使 用 される 電 力 の 4 分 の 1 は 山 西 省 によ<br />

って 供 給 されている。<br />

他 方 、 石 炭 採 掘 に 当 たっては、 炭 鉱 事 故 や 環 境 破 壊 の 問 題 も 懸 念 されている。 背 景 にあ<br />

るのは、 小 規 模 炭 鉱 での 無 作 為 な 採 掘 と 採 掘 条 件 だ。 採 掘 については、 以 前 は 技 術 水 準 の<br />

低 い 小 規 模 炭 鉱 が 多 く、 地 表 に 開 けた 穴 に 爆 薬 を 詰 めて 採 掘 する 方 法 を 取 っていた。これ<br />

が 安 全 性 に 欠 けることに 加 え、 環 境 悪 化 を 招 いたとされる。オーストラリアや 米 国 、モン<br />

ゴルなどが 露 天 採 掘 の 方 法 で 石 炭 を 採 掘 するのに 対 して、 山 西 省 は 地 下 採 掘 を 行 う 必 要 が<br />

ある。 地 下 採 掘 は、 地 下 水 やガスを 多 く 含 む 地 層 に 機 械 類 を 持 ち 込 んで 作 業 を 行 うことに<br />

なるため、 当 然 ガス 事 故 などにつながる 危 険 性 が 高 かったといえる。<br />

省 政 府 は 生 産 、 人 材 、 技 術 の 3 つの 面 で、こうした 状 況 の 改 善 を 図 っている。 生 産 面 で<br />

は、 炭 鉱 の 整 理 計 画 を 掲 げ、これまで 2,600 ヵ 所 あった 炭 鉱 を 1,053 ヵ 所 まで 削 減 した。<br />

また、「グリーン 炭 鉱 」と 称 する 地 下 水 源 を 汚 染 しない 方 法 で 採 掘 を 行 うことで 地 盤 沈 下<br />

を 防 ぎ、 植 林 を 進 めて 破 壊 された 環 境 の 修 復 も 行 っている。<br />

人 材 面 では、マネジメントの 徹 底 、 作 業 員 の 安 全 意 識 の 向 上 、 資 格 導 入 や 監 察 部 門 の 設<br />

置 などにより 人 材 育 成 を 図 り、 事 故 の 防 止 につなげようとしている。 技 術 面 では、オース<br />

トラリアなど 外 資 系 企 業 の 技 術 を 積 極 的 に 取 り 入 れることで、 採 掘 技 術 の 向 上 を 図 ってい<br />

る。<br />

山 西 省 はこれまで 中 核 産 業 の 石 炭 採 掘 を 中 心 に 経 済 発 展 を 遂 げてきた。 政 府 主 導 で 安 全<br />

性 の 向 上 と 環 境 保 護 の 両 立 を 図 ることが、 今 後 の 持 続 的 な 経 済 発 展 に 向 けた 条 件 の 1 つと<br />

いえよう。<br />

< 国 の 地 域 指 定 を 受 け、 産 業 構 造 の 転 換 を 図 る><br />

山 西 省 は 2009 年 に 国 務 院 から「 資 源 型 産 業 構 造 転 換 試 験 地 域 」の 指 定 を 受 けた。 山 西<br />

省 政 府 は 同 試 験 地 域 の 重 点 分 野 として、(1) 産 業 構 造 の 転 換 、(2) 環 境 の 保 護 、(3)<br />

都 市 ・ 農 村 部 の 構 造 転 換 、(4) 国 民 生 活 水 準 の 向 上 、の 4 点 を 掲 げている。<br />

(1)については、 資 源 産 業 での 技 術 革 新 と、 生 産 性 の 低 い 企 業 の 淘 汰 (とうた)を 通 じ<br />

て 生 産 性 を 向 上 させ、 戦 略 的 新 興 産 業 や 物 流 、 旅 行 を 中 心 とした 第 三 次 産 業 を 発 展 させる<br />

ことだ。<br />

(2)は、 大 規 模 植 林 や 水 資 源 の 有 効 利 用 などを 通 じて、 石 炭 採 掘 などにより 破 壊 された<br />

環 境 の 修 復 を 行 う。また、これを 実 現 させるため、 省 エネ・ 環 境 保 護 産 業 や、 同 産 業 にか<br />

かわるコンサルタント 業 の 育 成 を 行 う。<br />

(3)では、 都 市 化 やインフラ 整 備 を 積 極 的 に 推 進 する。とりわけインフラ 整 備 について<br />

は、 高 速 道 路 を 現 在 の 3,000 キロから 2015 年 には 6,000 キロに 延 ばし、 省 南 部 に 石 炭 輸<br />

送 専 用 の 鉄 道 を 建 設 する。 省 内 の 空 港 を 現 在 の 4 ヵ 所 から 7 ヵ 所 ( 最 終 的 には 11 ヵ 所 を<br />

目 指 す)に 増 やす。<br />

10<br />

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(4)については、 就 業 率 の 向 上 を 通 じて 国 民 所 得 の 増 加 を 図 るとともに、 公 共 サービス<br />

の 質 を 向 上 させるよう、 学 校 や 病 院 の 建 設 、あるいは 保 険 加 入 者 の 増 加 を 通 じて 都 市 と 農<br />

村 の 差 を 縮 める。<br />

これら 4 重 点 分 野 を 実 現 させるための 具 体 策 として、 環 境 の 悪 化 要 因 となり 得 る 企 業 の<br />

生 産 能 力 制 限 と 参 入 制 限 、 技 術 水 準 の 高 い 製 造 業 へのサポート、 税 制 面 の 優 遇 政 策 、イノ<br />

ベーションによる 産 業 構 造 の 転 換 を 挙 げている。<br />

山 西 省 は 以 前 から 石 炭 資 源 に 依 存 して 経 済 発 展 を 遂 げてきた。その 一 方 で 第 三 次 産 業 の<br />

比 率 は 相 対 的 に 低 く、2011 年 の 域 内 総 生 産 (GRP)に 占 めるシェアは 35.0%にとどまっ<br />

ている。 試 験 区 への 認 定 を 契 機 とした 構 造 転 換 により、 今 後 の 持 続 的 な 経 済 発 展 が 期 待 さ<br />

れる。<br />

(3) 事 業 環 境<br />

< 平 均 賃 金 は 沿 海 部 の 半 分 ><br />

山 西 省 の 事 業 環 境 面 のメリットとして、 第 1 に 豊 富 な 資 源 が 挙 げられる。 現 在 までに 発<br />

見 されている 地 下 資 源 は 120 種 以 上 に 上 り、 国 家 統 計 局 によると、2010 年 の 石 炭 埋 蔵 量<br />

のシェアは 30.2%で、 全 国 の 省 ・ 自 治 区 の 中 で 第 1 位 だ( 図 5 参 照 )。また、ボーキサイ<br />

トは 15.1%( 図 6 参 照 )、 銅 は 7.5%、 鉄 鉱 は 5.5%で、いずれも 第 4 位 となっている。<br />

図 5 2010 年 の 石 炭 埋 蔵 量 のシェア<br />

その 他<br />

24.3%<br />

山 西 省<br />

30.2%<br />

河 南 省<br />

4.1%<br />

貴 州 省<br />

4.2%<br />

陝 西 省<br />

4.3%<br />

新 疆 ウイグル<br />

自 治 区<br />

5.3%<br />

内 モンゴル 自<br />

治 区<br />

27.6%<br />

( 出 所 ) 中 国 統 計 年 鑑 2011 年 版 を 基 に 作 成<br />

11<br />

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図 6 2010 年 のボーキサイト 埋 蔵 量 のシェア<br />

重 慶 市<br />

4.1%<br />

雲 南 省<br />

1.7%<br />

その 他<br />

2.3%<br />

広 西 チワン 族<br />

自 治 区<br />

30.4%<br />

山 西 省<br />

15.1%<br />

貴 州 省<br />

22.5%<br />

河 南 省<br />

24.0%<br />

( 出 所 ) 図 5 に 同 じ<br />

第 2 は、 低 廉 な 労 働 力 。 国 家 統 計 局 によると、2010 年 の 山 西 省 都 市 部 の 平 均 賃 金 は 年<br />

間 3 万 3,057 元 (1 元 = 約 12.5 円 )と、 沿 海 部 ( 例 : 北 京 は 6 万 5,158 元 、 上 海 は 6 万<br />

6,115 元 )の 半 分 の 水 準 で、 定 着 率 も 高 いといわれる。 定 着 率 の 高 さにより、 生 産 面 では<br />

作 業 員 の 技 術 が 熟 練 し 生 産 効 率 が 上 がり、 販 売 面 では 従 業 員 が 頻 繁 に 変 わる 場 合 に 比 べ 顧<br />

客 に 安 心 感 を 与 えるというメリットがある。また、 進 出 日 系 企 業 によると、 従 業 員 には 残<br />

業 への 抵 抗 感 も 比 較 的 少 ないという。<br />

第 3 は、 電 力 コストの 安 さ。 山 西 省 は 石 炭 が 豊 富 な 地 域 なので、 石 炭 の 輸 送 コストがほ<br />

とんどかからず、 他 省 に 比 べて 電 力 料 金 は 比 較 的 低 く 抑 えられている。<br />

第 4 は、 地 理 的 な 優 位 性 だ。 山 西 省 と 同 様 に 豊 富 な 資 源 がある 内 モンゴル 自 治 区 から 沿<br />

海 部 へ 抜 ける 物 流 ルートの 中 間 に 位 置 するため、その 周 辺 需 要 を 取 り 込 むチャンスに 恵 ま<br />

れる。また、インフラ 面 の 課 題 は 残 るものの、 長 期 的 にみれば 東 西 南 北 360 度 に 販 売 ・ 物<br />

流 ルートを 構 築 できる 内 陸 地 域 としての 魅 力 も 備 えている。<br />

第 5 は、 地 元 政 府 との 関 係 構 築 が 比 較 的 容 易 なことだ。 外 資 系 企 業 の 進 出 はまだ 少 ない<br />

ため、 地 元 政 府 に 歓 迎 され、 良 好 な 関 係 を 構 築 しやすい。<br />

< 物 流 インフラは 立 ち 遅 れ><br />

他 方 、デメリットとしては、 第 1 に 物 流 面 が 挙 げられる。 経 済 発 展 に 伴 う 旺 盛 な 物 流 量<br />

に 対 してインフラ 整 備 が 追 い 付 いていない。 高 速 道 路 は 幅 が 狭 く、 渋 滞 が 慢 性 化 しており、<br />

1 日 当 たりの 通 行 許 容 量 が 8,000 台 の 高 速 道 路 を、 多 い 日 は 1 万 4,000 台 も 通 行 するとい<br />

う。<br />

第 2 は、 消 費 市 場 としての 限 界 だ。 太 原 市 の 2011 年 末 時 点 の 人 口 は 424 万 人 (うち 都<br />

市 部 人 口 353 万 人 )で、 省 都 としては 比 較 的 小 規 模 といえる。 同 市 内 にはカルフール、ウ<br />

12<br />

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ォルマートがそれぞれ 2 店 、マクドナルドが 11 店 進 出 している。また、 市 内 では 高 級 車<br />

を 見 掛 けるものの、 市 民 の 生 活 水 準 は 全 国 でも 低 い 方 で、 生 活 は 質 素 といわれている。 一<br />

般 消 費 者 向 けのビジネスを 行 う 場 合 は、 特 定 の 層 に 的 を 絞 ったターゲットマーケティング<br />

を 的 確 に 行 うことが 肝 要 だろう。<br />

太 原 市 内 のカルフール<br />

服 飾 専 門 の 大 型 商 業 ビル「 龍 馬 服 飾 批 発 市 場 」<br />

第 3 は、 地 場 企 業 のレベルが 相 対 的 に 低 いことだ。これまで 経 済 の 牽 引 役 として 発 展 を<br />

遂 げてきた 石 炭 産 業 、あるいはそのほかの 業 種 でも、 地 場 企 業 のレベルは 生 産 面 ・ 販 売 面<br />

ともに 総 じて 低 いという。 進 出 日 系 企 業 からは「 高 技 術 ・ 高 品 質 といった 日 本 企 業 の 優 位<br />

性 、あるいは 日 本 でのビジネスの 経 験 を 武 器 に 市 場 開 拓 を 試 みても、 地 場 企 業 はそれを 生<br />

かせるほどのレベルに 達 していない」との 声 も 出 ている。<br />

( 米 川 拓 也 )<br />

13<br />

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2. 江 西 省<br />

江 西 省 は、 長 江 の 中 下 流 の 南 岸 に 位 置 し、2 大 経 済 圏 の 華 東 地 域 と 華 南 地 域 の 中 間 にあ<br />

る 中 部 振 興 政 策 対 象 地 域 だ。 近 年 、 交 通 インフラが 発 達 し、 沿 海 部 に 近 いという 地 理 的 優<br />

位 性 が 見 直 されている。 江 西 省 に 進 出 する 日 系 企 業 は 同 省 の 資 源 を 生 かした 加 工 業 が 多 か<br />

ったが、2009 年 以 降 は、 労 働 力 の 確 保 や 生 産 コストの 低 減 、 沿 海 部 へのアクセスといった<br />

面 から、 沿 海 部 の 既 存 工 場 の 第 2 工 場 と 位 置 付 けて 進 出 する 企 業 も 出 てきた。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

< 域 内 総 生 産 は 1 兆 元 を 突 破 ><br />

江 西 省 は 長 江 の 中 下 流 の 南 岸 に 位 置 し、 東 は 浙 江 省 、 福 建 省 、 南 は 広 東 省 、 西 は 湖 南 省 、<br />

北 は 湖 北 省 、 安 徽 省 に 接 する( 図 1 参 照 )。 華 東 、 華 南 の 2 大 経 済 圏 の 中 間 に 位 置 する 地<br />

理 的 優 位 性 と 豊 富 な 鉱 物 資 源 を 抱 えているにもかかわらず、 経 済 規 模 の 大 きい 隣 接 6 省 の<br />

陰 に 隠 れた 存 在 となっていた。<br />

2011 年 の 域 内 総 生 産 (GRP)は、 全 31 省 ・ 自 治 区 ・ 直 轄 市 中 19 位 、 中 部 6 省 ( 河 南<br />

省 、 湖 南 省 、 湖 北 省 、 安 徽 省 、 江 西 省 、 山 西 省 )の 中 で 5 位 と 低 い。ただし、 実 質 GRP<br />

成 長 率 は 2002 年 以 降 10 年 連 続 で 2 ケタ 成 長 が 続 き、2011 年 は 12.5%、GRP は 1 兆 1,583<br />

億 8,000 万 元 (1 元 = 約 12.5 円 )と 1 兆 元 を 突 破 した( 図 2 参 照 )。<br />

図 1 江 西 省 の 位 置<br />

14<br />

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図 2 江 西 省 のGRPの 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

14,000<br />

13.0 13.2 12.8<br />

13.2 13.2 13.1 14.0 16<br />

GRP<br />

12.5<br />

12,000 伸 び 率<br />

14<br />

12.3<br />

10,000 10.5<br />

12<br />

8,000<br />

8.8<br />

10<br />

8<br />

6,000<br />

6<br />

4,000<br />

4<br />

2,000<br />

2<br />

0<br />

0<br />

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11<br />

( 年 )<br />

( 出 所 )「 中 国 統 計 年 鑑 」 各 年 版 、 江 西 省 統 計 局 発 表 を 基 に 作 成<br />

GRP を 産 業 別 にみると、 第 一 次 産 業 が 4.2% 増 の 1,391 億 1,000 万 元 (シェア 12.0%)、<br />

第 二 次 産 業 が 15.5% 増 の 6,592 億 2,000 万 元 (56.9%)、 第 三 次 産 業 が 10.7% 増 の 3,600<br />

億 5,000 万 元 (31.1%)で、 第 二 次 産 業 のシェアが 相 対 的 に 高 い( 表 1 参 照 )。<br />

江 西 省 の 経 済 成 長 の 牽 引 役 になっているのが、 全 社 会 固 定 資 産 投 資 で、2011 年 は 25.6%<br />

増 の 1 兆 1,020 億 元 だった。 消 費 動 向 を 示 す 社 会 消 費 品 小 売 総 額 は 17.9% 増 の 3,457 億<br />

7,000 万 元 と 堅 調 に 推 移 した。<br />

贛 州 市 内 の 商 業 地<br />

15<br />

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表 1 江 西 省 の 概 況 とマクロ 経 済 指 標<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

構 成 比<br />

単 位 数 値<br />

平 方 キロ 166,900<br />

万 人 4,488<br />

% 45.7<br />

% 12.5<br />

億 元 11,584<br />

第 一 次 産 業 % 12.0<br />

第 二 次 産 業 % 56.9<br />

第 三 次 産 業 % 31.1<br />

一 人 あたりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

財 政 収 入<br />

財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額<br />

( 注 )データの 基 準 年 は2011 年 。<br />

( 出 所 ) 江 西 省 統 計 局 発 表 などを 基 に 作 成<br />

元 25,990<br />

億 元 3,911<br />

億 元 11,020<br />

億 元 3,458<br />

% 5.2<br />

億 元 1,645<br />

億 元 2,530<br />

億 ドル 316<br />

億 ドル 219<br />

億 ドル 97<br />

億 ドル 61<br />

元 17,495<br />

元 6,892<br />

< 香 港 、 台 湾 からの 投 資 が 8 割 超 ><br />

2011 年 の 貿 易 額 は 前 年 比 46.1% 増 の 315 億 5,600 万 ドルだった。 全 国 に 占 めるシェア<br />

は 0.9%と 低 いものの、 金 融 危 機 の 影 響 が 大 きかった 2009 年 を 除 くと、 近 年 は 2 ケタ 成 長<br />

が 続 いている。2011 年 の 輸 出 は 63.1% 増 の 218 億 8,121 万 ドル、 輸 入 は 17.9% 増 の 96<br />

億 7,498 万 ドルと、 大 幅 な 貿 易 黒 字 になっている。<br />

主 要 輸 出 品 目 は、 機 電 製 品 (シェア 37.3%)、ハイテク 製 品 (17.5%)、 紡 績 ・アパレ<br />

ル(14.0%)、 主 要 輸 入 品 目 は、 機 電 製 品 (27.0%)、 銅 鉱 (24.3%)、ハイテク 製 品 (18.1%)<br />

など。 貿 易 相 手 国 ・ 地 域 として 日 本 は、 輸 出 が EU、 米 国 、ASEAN、 香 港 に 次 いで 第 5<br />

位 (6.8%)、 輸 入 はチリ、EU、 台 湾 、ブラジル、オーストラリア、ペルー、ASEAN に<br />

次 いで 第 8 位 (4.3%)となっている( 表 2、3 参 照 )。<br />

2011 年 の 対 内 直 接 投 資 は、 契 約 件 数 が 25.6% 減 の 812 件 、 契 約 額 が 12.7% 増 の 84 億<br />

4,500 万 ドル、 実 行 額 は 18.8% 増 の 60 億 5,900 万 ドルだった。 国 ・ 地 域 別 では、 香 港 が<br />

実 行 額 で 72.5%のシェアを 占 め、 台 湾 (9.2%)と 合 わせて 8 割 以 上 を 占 める( 表 4 参 照 )。<br />

江 西 省 商 務 庁 によると、 香 港 からの 投 資 は 製 造 業 が 少 なく、 製 造 業 投 資 は 欧 米 と 日 本 から<br />

が 多 いという。 日 本 からの 投 資 は 上 位 10 ヵ 国 ・ 地 域 に 入 っておらず、 公 式 発 表 にはない<br />

が、 同 庁 担 当 者 によると、 実 行 額 で 2,205 万 ドルだった。<br />

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表 2 江 西 省 の 国 ・ 地 域 別 輸 出 額 (2011 年 ) 表 3 江 西 省 の 国 ・ 地 域 別 輸 入 額 (2011 年 )<br />

( 単 位 : 万 ドル、%) ( 単 位 : 万 ドル、%)<br />

輸 出 額 伸 び 率 構 成 比 輸 入 額 伸 び 率 構 成 比<br />

1EU 495,585 68.6 22.6 1チリ 183,645 77.3 19.0<br />

(うちドイツ) 137,737 59.3 6.3 2EU 125,650 28.1 13.0<br />

2 米 国 351,811 83.1 16.1 3 台 湾 97,283 75.0 10.1<br />

3ASEAN 227,992 46.7 10.4 4ブラジル 75,028 31.6 7.8<br />

4 香 港 194,701 83.0 8.9 5オーストラリア 68,717 △ 9.2 7.1<br />

5 日 本 149,228 125.8 6.8 6ペルー 63,988 2.7 6.6<br />

6 韓 国 51,877 2.7 2.4 7ASEAN 60,412 24.3 6.2<br />

7インド 47,841 39.6 2.2 8 日 本 41,606 20.2 4.3<br />

8イラン 47,705 92.8 2.2 9 米 国 39,821 6.8 4.1<br />

9 アラブ 首 長 国 連 邦 40,229 74.7 1.8 10 ザイール 28,099 24.0 2.9<br />

10 台 湾 36,721 △ 17.8 1.7 合 計 967,498 20.4 100.0<br />

合 計 2,188,121 63.1 100.0 ( 出 所 ) 江 西 省 商 務 庁 発 表 を 基 に 作 成<br />

( 出 所 ) 江 西 省 商 務 庁 を 基 に 作 成<br />

表 4 江 西 省 の 国 ・ 地 域 別 対 内 直 接 投 資 (2011 年 )<br />

( 単 位 : 件 、%、100 万 ドル)<br />

順<br />

契 約 ベース<br />

実 行 ベース<br />

国 ・ 地 域<br />

位<br />

件 数 シェア 前 年 比 契 約 金 額 シェア 前 年 比 実 行 金 額 シェア 前 年 比<br />

1 香 港 597 73.5 △ 18.4 6,698 79.3 32.6 4,390 72.5 35.5<br />

2 台 湾 94 11.6 △ 51.0 649 7.7 △ 38.6 554 9.2 △ 21.9<br />

英 領 ヴァージ<br />

3<br />

ン 諸 島<br />

11 1.4 △ 47.6 106 1.3 △ 52.8 185 3.1 41.9<br />

4 マカオ 24 3.0 △ 22.6 280 3.3 12.6 150 2.5 20.2<br />

5 シンガポール 7 0.9 △ 36.4 156 1.9 431.2 115 1.9 46.4<br />

6 米 国 7 0.9 △ 75.0 45 0.5 △ 80.1 107 1.8 △ 47.1<br />

7 投 資 性 会 社 4 0.5 △ 20.0 31 0.4 △ 99.3 49 0.8 △ 71.2<br />

8 サモア 11 1.4 n.a. 62 0.7 n.a. 45 0.8 n.a.<br />

9 ケイマン 諸 島 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 43 0.7 △ 75.2<br />

10 フィリピン 2 0.3 △ 81.8 41 0.5 △ 98.6 36 0.6 △ 99.5<br />

その 他 55 6.8 n.a. 376 4.5 n.a. 384 6.3 n.a.<br />

合 計 812 100.0 △ 25.6 8,445 100.0 12.7 6,059 100.0 18.8<br />

( 出 所 ) 江 西 省 商 務 庁 発 表 を 基 に 作 成<br />

(2) 政 策 動 向<br />

< 主 要 産 業 を 軸 に 産 業 集 積 を 図 る><br />

江 西 省 は、 銅 、タングステン、レアアース( 希 土 類 金 属 )の 埋 蔵 量 が 豊 富 で、これらの<br />

資 源 を 生 かした 産 業 が 発 展 している。 政 府 は 後 述 の 通 り 国 家 戦 略 に 引 き 上 げられた 省 北 部<br />

の「 鄱 陽 湖 生 態 経 済 区 」 中 心 に、 生 態 系 の 保 護 との 調 和 をとりながら、 地 域 ごとの 主 要 産<br />

業 を 軸 に 特 色 ある 産 業 を 集 積 させていく 方 針 だ。<br />

江 西 省 の 代 表 的 な 地 場 企 業 として、フォードと 自 動 車 生 産 の 合 弁 を 組 む 江 鈴 汽 車 、ヘリ<br />

コプター 製 造 の 昌 河 飛 機 工 業 、 太 陽 電 池 に 使 われるシリコンウエハーを 製 造 しニューヨー<br />

ク 証 券 取 引 所 に 上 場 する 新 興 企 業 の LDK ソーラー、 中 国 最 大 の 総 合 銅 メーカー 江 西 銅 鉱<br />

とその 傘 下 で 中 国 最 大 規 模 の 露 天 掘 り 銅 鉱 山 の 徳 興 銅 鉱 、 希 土 類 の 探 査 ・ 採 掘 から 加 工 を<br />

手 掛 ける 江 西 レアアースレアメタルタングステンなどが 挙 げられる。<br />

江 西 省 は、このようなリーディングカンパニーや 主 要 産 業 を 軸 に 産 業 集 積 を 図 ることで、<br />

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特 色 ある 産 業 発 展 を 進 めることを 省 の 第 12 次 5 ヵ 年 規 画 (2011~15 年 )でうたっている<br />

( 図 3 参 照 )。<br />

図 3 江 西 省 の 主 要 産 業<br />

【 贛 北 地 区 ( 南 昌 市 、 九 江 市 、 景 徳 鎮 市 )】<br />

自 動 車 、 航 空 、 太 陽 光 エネルギー、 鋼 材 、 光 電 子 、<br />

家 電 、 化 学 工 業 、 陶 器 、 建 材 、 電 子 情 報 、 食 品 加 工 、<br />

紡 織 服 装 、バイオ・ 新 薬 、サービスアウトソーシング<br />

【 贛 西 地 区 ( 新 余 市 、 宜<br />

春 市 、 萍 郷 市 )】<br />

冶 金 、 太 陽 光 エネルギー、<br />

リチウム 電 池 、 医 薬 、 陶<br />

器 、 紡 織 服 装 、 機 械 電 子 、<br />

竹 木 加 工 、 花 火 爆 竹 、 食<br />

品 加 工<br />

【 贛 東 北 地 区 ( 上 饒<br />

市 、 鷹 潭 市 )】<br />

銅 材 加 工 、 太 陽 光<br />

エネルギー、 建 材 、<br />

食 品 、 漢 方 薬 、 光 学 、<br />

水 利 、 精 密 機 械<br />

( 出 所 ) 江 西 省 第 12 次 5ヵ 年 規 画 を 基 に 作 成<br />

【 贛 中 地 区 ( 贛 州 市 、 吉 安 市 、 撫 州 市 )】<br />

レアメタル 加 工 、 電 子 情 報 、 通 信 端 末 、バイオ<br />

製 薬 、 食 品 加 工 、 紡 織 服 装 、 新 エネルギー、<br />

化 学 工 業 建 材 、 機 械<br />

<br />

2009 年 末 、 江 西 省 北 部 の「 鄱 陽 湖 生 態 経 済 区 」が、 国 家 戦 略 に 引 き 上 げられた。 江 西 省<br />

北 部 に 位 置 する 中 国 最 大 の 淡 水 湖 「 鄱 陽 湖 」と、 省 都 ・ 南 昌 、 景 徳 鎮 、 鷹 潭 の 3 市 と、 九<br />

江 、 新 余 、 撫 州 、 宜 春 、 上 饒 、 吉 安 の 6 市 のうち 38 の 県 ( 市 、 区 )が 含 まれる 地 域 を 対<br />

象 に、 地 域 の 生 態 系 の 保 護 だけでなく、 生 態 系 と 経 済 の 調 和 の 取 れた 発 展 を 促 進 すること<br />

が 目 的 だ。 対 象 地 域 の 面 積 は 5 万 平 方 キロと 省 総 面 積 の 約 3 割 に 達 し、 人 口 は 約 2,600 万<br />

人 で 省 全 体 の 人 口 の 半 分 、 経 済 規 模 は 省 全 体 の 約 6 割 を 占 める。<br />

2015 年 までに 地 域 生 態 環 境 の 質 で 全 国 上 位 になり、 発 展 の 遅 れた 地 区 で 生 態 産 業 システ<br />

ムを 率 先 して 構 築 し、 生 態 文 明 の 建 設 で 全 国 のトップレベルを 目 指 している。<br />

また、2020 年 までに 強 力 な 保 障 力 を 持 つ 生 態 安 全 システムを 構 築 し、 先 進 的 で 効 率 的 な<br />

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生 態 産 業 クラスターを 形 成 し、 生 態 的 な 居 住 に 適 した 新 たな 都 市 クラスターを 構 築 するこ<br />

とを 掲 げている。2012 年 の 江 西 省 の 政 府 活 動 報 告 では、 同 省 が 重 点 的 に 取 り 組 む 活 動 とし<br />

て、まず 初 めに「 鄱 陽 湖 生 態 経 済 区 」の 建 設 が 取 り 上 げられ、 長 江 沿 岸 の 重 要 港 湾 都 市 で<br />

ある 九 江 の 開 発 などが 挙 げられている。<br />

同 経 済 区 と 湖 北 省 の 武 漢 都 市 圏 、 湖 南 省 の 長 株 潭 都 市 群 を 中 心 に 省 をまたいだ「 長 江 中<br />

流 域 都 市 群 」( 別 名 「 中 三 角 」) 構 想 も 2012 年 に 始 動 した。 珠 江 デルタ、 長 江 デルタ、<br />

環 渤 海 の 3 大 都 市 群 に 続 く 中 国 の 経 済 発 展 の 4 番 目 の 重 要 な 成 長 エンジンとして 発 展 させ<br />

る 構 想 だ。 都 市 群 の 共 同 構 築 を 通 じて 地 域 を 統 合 した 一 大 市 場 を 形 成 することで、 内 需 拡<br />

大 の 原 動 力 となることも 期 待 されている。 江 西 省 は、 地 域 発 展 戦 略 を 生 かし、 経 済 の 底 上<br />

げを 図 る。<br />

(3) 事 業 環 境<br />

< 沿 海 部 からトラックで 半 日 圏 ><br />

江 西 省 商 務 庁 によると、 同 省 に 進 出 する 日 系 企 業 数 は 2012 年 2 月 現 在 81 社 。1990 年<br />

代 は、いすゞ 自 動 車 、スズキの 自 動 車 メーカーとタングステン 加 工 の 東 芝 、2000 年 代 は、<br />

蛍 石 加 工 のダイキン 工 業 、タングステン 粉 末 生 産 の 住 友 商 事 、ネオジウム 系 磁 石 合 金 生 産<br />

の 昭 和 電 工 など 資 源 加 工 業 が 中 心 だった。<br />

2009 年 以 降 は、 労 働 力 の 確 保 が 比 較 的 容 易 で 生 産 コストの 低 減 を 図 れ、 沿 海 部 へのアク<br />

セスにも 便 利 といった 投 資 環 境 を 評 価 して、 広 東 省 や 上 海 市 などの 沿 海 部 既 存 工 場 の 第 2<br />

工 場 と 位 置 付 けて 進 出 する 企 業 も 増 えている( 表 5 参 照 )。<br />

江 西 省 は、 華 東 地 域 と 華 南 地 域 という 2 大 経 済 圏 と 内 陸 部 を 結 ぶ 要 衝 に 位 置 し、 省 内 は<br />

香 港 、 深 セン、 広 州 、 厦 門 、 上 海 、 南 京 、 合 肥 、 武 漢 、 長 沙 などの 大 都 市 と 直 線 距 離 で 600<br />

~700 キロにある。 近 年 、 交 通 インフラが 大 幅 に 改 善 され、これら 主 要 都 市 がトラック 輸<br />

送 でほぼ 半 日 圏 内 となった。<br />

また、2005 年 に 中 部 地 域 の 経 済 発 展 を 加 速 させるための 具 体 的 な 措 置 として、 商 務 部 が<br />

中 部 6 省 の 各 省 商 務 主 管 部 門 に 通 達 した「 中 部 振 興 の 促 進 に 関 する 指 導 意 見 」では、 外 資<br />

を 積 極 的 に 導 入 して、アパレル、 食 品 、 軽 工 業 、 電 子 などの 労 働 集 約 型 産 業 を 発 展 させ、<br />

雇 用 を 促 進 することが 挙 げられた。 加 工 貿 易 など 移 転 産 業 受 け 入 れ 拠 点 としての 期 待 と、<br />

一 層 の 政 策 支 援 が 明 言 され、 江 西 省 では 開 発 区 の 整 備 も 進 んだ。<br />

19<br />

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表 5 2009 年 以 降 の 江 西 省 への 進 出 日 系 企 業 事 例<br />

企 業 名 進 出 先 概 要<br />

マブチ<br />

モーター<br />

スミダコー<br />

ポレーショ<br />

ン<br />

鷹 潭 市<br />

吉 安 市<br />

タカショー 九 江 市<br />

東 光<br />

太 陽 光 機<br />

DOWAエ<br />

コシステム<br />

マブチ<br />

モーター<br />

巴 川 製 紙<br />

所<br />

ニホンフ<br />

ラッシュ<br />

アイトス<br />

阪 和 興 業<br />

田 淵 電 機<br />

2009 年 、 小 型 モーターの 生 産 拠 点 を 設 立 。 豊 富 な 人 的 資 源 、<br />

生 産 コスト 条 件 、モーター 需 要 地 である 沿 海 部 各 都 市 と 広 東<br />

省 の 工 場 からのアクセスといった 江 西 省 の 優 れた 条 件 を 活 用 。<br />

2010 年 、 内 陸 部 の 豊 富 な 人 材 の 活 用 と 生 産 コスト 低 減 のた<br />

め、 広 東 省 にある 同 社 主 力 工 場 のサテライト 工 場 を 設 立 。 自 動<br />

車 や 家 電 向 けのコイルを 製 造 。<br />

2010 年 、ワイヤー、スチールパイプ 等 、 庭 園 資 材 の 製 造 販 売<br />

孫 会 社 を 設 立 。 欧 州 をはじめとする 世 界 の 関 連 会 社 と 中 国 国<br />

内 マーケットへの 供 給 販 売 を 行 う。<br />

2011 年 、 生 産 コストの 低 減 と 工 場 人 員 の 安 定 確 保 を 目 指 し<br />

南 昌 市<br />

て、コイル、インダクタを 生 産 する 工 場 を 設 立 。<br />

2011 年 、 福 建 省 福 州 市 に 次 ぐ 中 国 2 番 目 の 拠 点 を 設 立 。コイ<br />

九 江 市<br />

ル 製 造 ・ 組 み 立 て。<br />

2011 年 、 政 府 系 企 業 と 廃 家 電 ・ 廃 電 子 機 器 のリサイクルを 手<br />

鷹 潭 市<br />

掛 ける 合 弁 会 社 を 設 立 。<br />

2011 年 、 中 国 国 内 市 場 への 対 応 強 化 とコスト 競 争 力 追 求 のた<br />

贛 州 市<br />

め、 香 港 マブチ 出 資 で 小 型 モーター・ 部 品 工 場 を 設 立 。<br />

2011 年 、 香 港 の 持 株 会 社 100% 出 資 でトナーの 生 産 拠 点 を 設<br />

九 江 市<br />

立 。<br />

2011 年 、 華 中 ・ 華 南 地 域 への 供 給 体 制 を 拡 充 するため、 室 内<br />

宜 春 市<br />

ドア・ 化 粧 造 作 材 等 生 産 会 社 を 設 立 。<br />

2011 年 、 上 海 工 場 の 縫 製 工 員 の 縫 製 工 場 離 れを 補 うため、 上<br />

上 饒 市<br />

海 アイトスの 第 3、4 工 場 として 稼 働 。<br />

2012 年 末 稼 動 予 定 のコイルセンター 設 立 中 。 中 国 内 陸 部 の<br />

贛 州 市<br />

ユーザー 向 け 加 工 拠 点 として 運 用 。<br />

2012 年 、 中 国 市 場 での 基 盤 強 化 のため、 上 海 の 連 結 子 会 社<br />

宜 春 市 と 中 国 企 業 の 合 弁 で、インバータエアコン 用 リアクトルの 製 造<br />

販 売 会 社 を 設 立 。<br />

( 出 所 ) 各 社 記 者 発 表 資 料 、 報 道 資 料 を 基 に 作 成<br />

< 部 品 調 達 コストをかけても 人 件 費 の 安 さが 勝 る><br />

労 働 集 約 型 産 業 の 移 転 先 として 江 西 省 を 選 ぶのは 日 系 企 業 にとどまらない。シンガポー<br />

ルに 本 社 がある EMS( 電 子 機 器 受 託 生 産 サービス) 企 業 のフレクストロニクスは、2010<br />

年 、 江 西 省 南 部 の 贛 州 輸 出 加 工 区 に 進 出 、 輸 出 用 のトランスフォーマーを 生 産 している。<br />

既 存 の 工 場 がある 広 東 省 では 難 しくなったワーカーの 確 保 と、 地 元 政 府 から 土 地 取 得 費 用<br />

などの 優 遇 政 策 を 享 受 できることから、 進 出 先 として 贛 州 を 選 んだという。<br />

進 出 当 初 は、ワーカー 確 保 に 苦 労 し 離 職 率 も 高 かったが、 従 業 員 寮 や 寮 周 辺 の 商 業 施 設<br />

を 整 備 後 、 離 職 率 は 低 下 した。 同 社 にインタビューした 2 月 時 点 で、 従 業 員 数 は 3,500 人<br />

に 達 している。 投 資 環 境 上 の 課 題 は、 部 品 産 業 が 集 積 していないため、 現 地 調 達 できるも<br />

のが 限 られていることだ。ただし、 沿 海 部 より 人 件 費 が 40~50% 安 いので、 部 材 の 多 くを<br />

広 東 省 から 調 達 する 物 流 費 をかけても、トータルコストは 深 セン 工 場 より 安 いという。ま<br />

た、 地 理 的 には、 広 東 省 の 主 要 都 市 や 江 西 省 の 省 都 ・ 南 昌 市 まで 車 で 4~5 時 間 と 近 く、<br />

車 で 1 時 間 圏 に 空 港 があり、 交 通 が 便 利 なことを 評 価 している。<br />

20<br />

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フレクストロニクスの 工 場 ( 贛 州 輸 出 加 工 区 )<br />

< 低 廉 な 労 働 力 以 外 のメリットも 必 要 ><br />

江 西 省 の 南 昌 市 、 贛 州 市 、 鷹 潭 市 に 進 出 している 外 資 系 企 業 6 社 に 2012 年 2 月 、 進 出<br />

先 の 投 資 環 境 についてヒアリング 調 査 を 実 施 した。 企 業 の 声 をまとめると、メリットとし<br />

てまず、 地 理 的 な 優 位 性 が 挙 げられる。 鉄 道 が 東 西 南 北 にクロスし、 近 年 は 高 速 道 路 網 も<br />

整 備 され 沿 海 部 への 移 動 が 便 利 になっている。 上 海 への 河 川 物 流 の 拠 点 である 九 江 も 開 発<br />

中 だ。<br />

また、 低 廉 な 労 働 力 もメリットだ。 企 業 によって 異 なるが、 沿 海 部 より 人 件 費 が 40~60%<br />

安 いという 声 もあった。 加 えて、 安 定 した 電 力 供 給 も 魅 力 になっている。 広 東 省 に 拠 点 が<br />

ある 企 業 は、 同 省 との 比 較 で 電 力 使 用 制 限 がほとんどないことをメリットとして 挙 げてい<br />

た。さらに、 地 元 政 府 による 企 業 支 援 の 意 向 は、 外 資 系 企 業 の 進 出 が 多 い 沿 海 部 と 比 べて<br />

強 いととらえる 企 業 が 少 なくなかった。<br />

他 方 、デメリットとしては、 部 品 産 業 の 集 積 が 進 んでおらず、 広 東 省 などの 沿 海 部 から<br />

の 調 達 依 存 が 高 いことが 挙 げられる。また、 労 働 力 の 確 保 については、 外 部 からの 流 入 人<br />

口 がほとんどないため、 労 働 集 約 型 企 業 の 進 出 が 多 くなると、 労 働 力 の 供 給 が 追 い 付 かな<br />

くなるという 懸 念 がある。<br />

地 元 政 府 に 外 資 系 企 業 を 支 援 する 意 向 が 強 いにもかかわらず、 進 出 企 業 が 少 ないのは、<br />

地 元 政 府 が 外 資 系 企 業 の 企 業 活 動 への 対 応 に 慣 れていないことと 裏 腹 だ。 加 工 貿 易 の 手 続<br />

きなどについての 地 元 政 府 の 理 解 不 足 で、 手 続 きが 遅 延 した 事 例 もあった。<br />

現 在 進 出 している 企 業 は、 江 西 省 の 投 資 環 境 をおおむね 評 価 しているが、 将 来 的 な 労 働<br />

力 供 給 の 維 持 に 加 えて、 低 廉 な 労 働 力 以 外 にどのような 投 資 環 境 上 のメリットを 加 えるこ<br />

とができるかが、 同 省 にとって 中 長 期 的 な 課 題 になっている。<br />

21<br />

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贛 州 経 済 技 術 開 発 区 内 の 香 港 工 業 園<br />

鷹 潭 市 経 済 技 術 開 発 区 内 の 労 働 者 募 集 所<br />

( 日 向 裕 弥 )<br />

22<br />

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3. 貴 州 省<br />

貴 州 省 は 国 内 では 相 対 的 に 経 済 発 展 が 遅 れた 地 域 の 1 つとされているが、 近 年 は 交 通 イ<br />

ンフラの 整 備 が 進 められており、 今 後 の 経 済 発 展 が 期 待 されている。 国 務 院 は 2012 年 1<br />

月 に「 貴 州 経 済 社 会 を 好 調 にかつ 速 い 速 度 でさらに 発 展 させることに 関 する 若 干 の 意 見 」<br />

を 公 布 し、 国 家 レベルで 貴 州 省 の 発 展 を 加 速 させようとしている。 外 資 の 有 効 活 用 にも 力<br />

を 入 れていく 方 針 だ。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

<br />

貴 州 省 は 西 南 部 に 位 置 し、2011 年 の 常 住 人 口 は 3,469 万 人 、 少 数 民 族 が 全 省 人 口 の 3<br />

割 以 上 を 占 める。 主 な 少 数 民 族 はミャオ 族 、プイ 族 、トン 族 など。 面 積 は 約 17 万 6,167<br />

平 方 キロ、うち 山 地 ・ 丘 陵 地 が 9 割 以 上 を 占 め、 平 均 海 抜 が 1,170 メートルの 内 陸 地 域 だ。<br />

マクロ 経 済 状 況 をみると、2011 年 の 域 内 総 生 産 (GRP)は 5,701 億 8,400 万 元 (1 元 = 約<br />

12.5 円 )、 実 質 GRP 成 長 率 は 15.0%と、1985 年 以 降 で 最 高 を 記 録 した。 高 成 長 の 牽 引<br />

役 を 果 たしたのが 固 定 資 産 投 資 だ( 表 1、 図 1、 図 2 参 照 )。<br />

表 1 貴 州 省 の 主 要 経 済 指 標<br />

構 成 比<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

単 位 数 値<br />

平 方 キロ 176,167<br />

万 人 3,469<br />

% 35.0<br />

% 15.0<br />

億 元 5,702<br />

第 一 次 産 業 % 12.7<br />

第 二 次 産 業 % 40.9<br />

第 三 次 産 業 % 46.4<br />

一 人 あたりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

財 政 収 入<br />

財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

元 16,413<br />

億 元 1,639<br />

億 元 5,102<br />

億 元 1,752<br />

% 5.1<br />

億 元 773<br />

億 元 2,244<br />

億 ドル 49<br />

億 ドル 30<br />

億 ドル 19<br />

億 ドル 7<br />

元 16,495<br />

元 4,145<br />

実 際 利 用 外 資 額<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額<br />

( 注 ) 工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)は 一 定 規 模 以 上 の<br />

ものを 記 載 。データの 基 準 年 は2011 年 。<br />

( 出 所 )2011 年 貴 州 省 国 民 経 済 と 社 会 発 展 統 計 公 報 などを 基 に 作 成 。<br />

23<br />

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2011 年 の 全 社 会 固 定 資 産 投 資 額 は 前 年 比 60.1% 増 の 5,101 億 5,500 万 元 と 大 幅 に 増 加<br />

し、これが 実 質 GRP 成 長 率 を 10 ポイント 押 し 上 げた。うち、インフラ 投 資 が 全 体 の 6 割<br />

弱 を 占 め、70.5% 増 の 3,004 億 9,600 万 元 だった。 同 省 の 政 府 活 動 報 告 によると、2011<br />

年 には 高 速 道 路 が 新 たに 516 キロ 建 設 され、 総 距 離 は 2,023 キロに 達 した。 今 後 2,680 キ<br />

ロ 延 長 する 予 定 だ。また、 貴 陽 龍 洞 堡 国 際 空 港 は 現 在 第 2 期 拡 張 工 事 中 で、2012 年 には<br />

さらに 第 3 期 拡 張 工 事 の 開 始 も 予 定 している。<br />

消 費 動 向 をみると、2011 年 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 は 18.1% 増 の 1,751 億 6,200 万 元 で、<br />

2005 年 以 降 15% 以 上 の 伸 び 率 を 維 持 している( 図 3 参 照 )。しかし、31 の 省 ・ 自 治 区 ・<br />

直 轄 市 の 中 では 25 番 目 の 規 模 で、 相 対 的 には 小 さい。 都 市 部 住 民 1 人 当 たり 可 処 分 所 得<br />

額 、 農 村 住 民 1 人 当 たり 純 収 入 額 は、それぞれ 1 万 6,495 元 (26 番 目 )、4,145 元 (30<br />

番 目 )だ。このように、 市 場 規 模 、 所 得 は 依 然 低 い 水 準 にとどまり、 同 省 の 消 費 市 場 を 狙<br />

った 外 資 系 小 売 業 ・ 外 食 産 業 などの 進 出 は、カルフールが 1 店 、 味 千 ラーメンが 7 店 など<br />

にとどまっている。<br />

図 1 貴 州 省 の GRP と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

14.8<br />

6,000<br />

15.0 16.0<br />

GRP<br />

伸 び 率<br />

12.7 12.8<br />

12.8<br />

11.3<br />

14.0<br />

5,000<br />

11.4<br />

11.4<br />

12.0<br />

10.1<br />

4,000<br />

8.4 8.8 9.1<br />

10.0<br />

3,000<br />

8.0<br />

2,000<br />

1,000<br />

0<br />

6.0<br />

4.0<br />

2.0<br />

0.0<br />

( 出 所 ) 貴 州 統 計 年 鑑 などを 基 に 作 成<br />

24<br />

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図 2 貴 州 省 の 固 定 資 産 投 資 額 と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

6,000<br />

5,000<br />

固 定 資 産 投 資<br />

伸 び 率<br />

60.1<br />

70.0<br />

60.0<br />

4,000<br />

3,000<br />

2,000<br />

20.5<br />

32.6<br />

18.5 19.2<br />

15.3<br />

17.1 17.6<br />

24.3 25.2<br />

31.5 30.0<br />

50.0<br />

40.0<br />

30.0<br />

20.0<br />

1,000<br />

10.0<br />

0<br />

0.0<br />

( 出 所 ) 貴 州 統 計 年 鑑 などを 基 に 作 成<br />

図 3 貴 州 省 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

2,000<br />

30.0<br />

1,800<br />

25.3<br />

25.0<br />

1,600<br />

20.9<br />

18.9<br />

1,400<br />

18.1<br />

16.0<br />

20.0<br />

1,200<br />

15.0 15.3<br />

1,000<br />

12.8<br />

15.0<br />

800 9.5 10.0 10.1 10.2<br />

600<br />

10.0<br />

400<br />

5.0<br />

200<br />

0<br />

0.0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 貴 州 統 計 年 鑑 などを 基 に 作 成<br />

< 豊 富 な 資 源 を 生 かした 産 業 が 発 達 ><br />

2011 年 の GRP を 産 業 別 にみると、 第 一 次 産 業 が 1.2% 増 の 726 億 2,200 万 元 (シェア<br />

12.7%)、 第 二 次 産 業 が 20.7% 増 の 2,334 億 200 万 元 (40.9%)、 第 三 次 産 業 が 14.2% 増<br />

の 2,641 億 6,000 万 元 (46.4%)だった。 産 業 別 の 割 合 を 中 国 全 体 の 10.1%、46.8%、43.1%<br />

と 比 較 すると、 第 二 次 産 業 の 発 展 がほかの 地 域 に 比 べて 遅 れていることが 分 かる。<br />

貴 州 省 発 展 改 革 委 員 会 は、 同 省 の 重 点 産 業 として、エネルギー・ 電 力 、 資 源 深 加 工 ( 高<br />

25<br />

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付 加 価 値 の 資 源 加 工 )、 設 備 製 造 、 航 空 宇 宙 、 電 子 情 報 、 新 材 料 、 漢 方 薬 、 特 色 食 品 、 観<br />

光 、 白 酒 ・タバコを 挙 げた。<br />

中 でも、 長 江 上 流 の 烏 江 などの 水 資 源 や、 埋 蔵 量 全 国 5 位 の 石 炭 を 生 かしたエネルギー・<br />

電 力 は、 重 点 産 業 でも 第 1 に 挙 げられた。 同 省 で 発 電 した 電 力 は、 省 内 で 消 費 されるほか、<br />

「 西 電 東 送 」プロジェクト( 注 1)で 湖 南 省 、 重 慶 市 、 広 東 省 などに 送 られている。2011<br />

年 には 発 電 実 績 3,300 万 キロワットのうち 15%に 相 当 する 500 万 キロワットがこうした<br />

省 外 地 域 に 送 られた。<br />

また、 石 炭 をはじめ 豊 富 な 鉱 物 資 源 を 生 かし、 石 炭 加 工 、リン 加 工 、アルミ 加 工 といっ<br />

た 資 源 深 加 工 も 盛 んだ。<br />

さらに、1960~70 年 代 の「 三 線 建 設 」( 戦 争 を 想 定 した 内 陸 後 方 基 地 建 設 ) 時 期 に、<br />

国 家 が 同 省 に 大 量 の 工 場 や 技 術 者 を 移 転 したことから、 設 備 製 造 や 航 空 宇 宙 、これら 分 野<br />

の 技 術 を 生 かした 電 子 情 報 、 新 材 料 などでも 一 定 の 産 業 基 盤 が 形 成 された。 同 省 で 自 動 車<br />

用 のドアロックを 製 造 する 三 井 金 属 アクトも、 三 線 企 業 ( 注 2)の 貴 州 航 空 工 業 集 団 の 貴<br />

州 華 陽 電 工 との 合 弁 で 進 出 している。<br />

加 えて、 同 省 内 の 少 数 民 族 自 治 区 では、 漢 方 薬 や 特 色 食 品 が 生 産 されており、これらの<br />

生 産 地 としても 名 高 いほか、 黄 果 樹 滝 、 鍾 乳 洞 など 豊 かな 自 然 資 源 を 生 かした 観 光 にも 力<br />

を 入 れている。<br />

このほか、 同 省 の 伝 統 産 業 としてはタバコ・ 白 酒 がある。タバコは 全 国 で 雲 南 省 に 次 ぐ<br />

2 位 の 生 産 量 を 誇 り、 白 酒 は「 貴 州 茅 台 酒 」が 全 国 8 大 名 酒 の 1 つに 数 えられる。<br />

省 都 貴 陽 市 内 の 様 子 1<br />

26<br />

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省 都 貴 陽 市 内 の 様 子 2<br />

< 対 内 投 資 は 広 東 省 の 3% 規 模 ><br />

対 外 経 済 関 係 をみると、2011 年 の 対 内 直 接 投 資 は 前 年 比 2.3 倍 の 6 億 7,300 万 ドルと 大<br />

幅 に 増 加 した( 図 4 参 照 )。ただし、2011 年 の 広 東 省 (217 億 9,800 万 ドル)と 比 べると、<br />

その 規 模 は 約 3%にとどまり、 外 資 導 入 は 相 対 的 に 遅 れていることが 分 かる。<br />

貴 州 省 投 資 促 進 局 によると、2011 年 末 時 点 の 累 計 外 資 企 業 数 は 2,013 社 、 投 資 額 は 契 約<br />

ベースで 60 億 ドル、 実 行 ベースで 19 億 ドルだった。 投 資 分 野 は 製 造 業 や 鉱 業 といった 第<br />

二 次 産 業 が 中 心 となっているが、2011 年 からは 第 三 次 産 業 も 増 加 傾 向 にあるという。<br />

外 資 企 業 を 国 ・ 地 域 別 にみると、 香 港 が 6~7 割 を 占 め、そのほか 欧 米 、 東 南 アジア、<br />

台 湾 などが 続 く。 投 資 実 績 のある 大 手 企 業 としては、ウォルマート( 米 国 )、ダノン(フ<br />

ランス)、 航 空 機 エンジンブレードを 製 造 するサフラングループ(フランス)の 子 会 社 な<br />

どが 挙 げられる。<br />

図 4 貴 州 省 の 対 内 直 接 投 資 の 推 移<br />

( 億 ドル) (%)<br />

8.0<br />

対 内 直 接 投 資<br />

140.0<br />

7.0 伸 び 率<br />

120.0<br />

6.0<br />

100.0<br />

5.0<br />

4.0<br />

3.0<br />

2.0<br />

1.0<br />

0.4<br />

13.1<br />

30.8<br />

52.1<br />

16.1<br />

64.8<br />

12.9<br />

34.8<br />

17.8<br />

10.3<br />

121.1 127.9 20.0<br />

80.0<br />

60.0<br />

40.0<br />

20.0<br />

0.0<br />

0.0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 貴 州 統 計 年 鑑 などを 基 に 作 成<br />

27<br />

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また、 日 本 企 業 は 2011 年 末 時 点 で 累 計 39 社 、うち 2011 年 の 年 度 検 査 通 過 企 業 ( 注 3)<br />

は 21 社 で、 累 計 契 約 額 は 6,000 万 ドルにとどまる。 主 な 業 種 は 自 動 車 部 品 、 不 動 産 、 卸 ・<br />

小 売 り、 農 製 品 加 工 などで、 中 小 企 業 による 投 資 が 大 半 を 占 め、1 件 当 たりの 投 資 規 模 も<br />

比 較 的 小 さいという。 三 井 金 属 アクトのほか、 清 和 肥 料 工 業 が 現 地 企 業 との 合 弁 で 肥 料 な<br />

どを 生 産 している。また、 静 岡 県 で 人 材 派 遣 などを 行 うイカイが、 日 本 からのものづくり<br />

専 門 家 派 遣 や 自 動 車 用 工 具 ・ 部 品 を 生 産 する 企 業 などを 設 立 している。<br />

同 省 の 投 資 促 進 局 と 同 省 商 務 庁 は、 外 資 企 業 誘 致 の 重 点 分 野 として、 製 造 、 不 動 産 、 鉱<br />

物 採 掘 、エネルギー・ 電 力 を 挙 げた。また、 特 に 日 本 企 業 に 期 待 する 分 野 としては、これ<br />

らの 分 野 に 加 え、 日 本 が 高 い 技 術 を 持 つ 金 型 、アニメーションをはじめとするコンテンツ、<br />

現 代 サービス、 旅 行 、 環 境 保 護 、NC 工 作 機 械 などの 設 備 製 造 などを 挙 げた。<br />

対 外 貿 易 をみると、2011 年 の 輸 出 額 は 55.5% 増 の 29 億 8,500 万 ドル。 輸 入 は 54.8% 増<br />

の 18 億 9,900 万 ドルと、 輸 出 、 輸 入 いずれも 大 幅 に 増 加 した( 図 5 参 照 )。<br />

また、 対 日 貿 易 について、 同 省 商 務 庁 へのヒアリングによると、2011 年 の 輸 出 は 1 億<br />

741 万 ドルで、シェアは 全 体 の 3.6%にとどまる。 主 な 輸 出 品 目 は、 化 学 肥 料 原 料 のリン<br />

や、 液 晶 ディスプレーなどの 製 造 工 程 に 用 いられるリン 化 学 製 品 、 顔 料 、 染 料 などに 用 い<br />

られる 炭 酸 バリウムなどの 鉱 物 のほか 農 産 品 など。 輸 入 は 3,467 万 ドルで、 主 な 輸 入 品 目<br />

は 機 電 製 品 、 自 動 車 部 品 などである。<br />

図 5 貴 州 省 の 貿 易 総 額 の 推 移<br />

( 億 ドル)<br />

60.0<br />

50.0<br />

40.0<br />

30.0<br />

20.0<br />

10.0<br />

0.0<br />

0.3<br />

‐4.7<br />

0.2 0.3<br />

輸 入<br />

輸 出<br />

輸 出 伸 び 率<br />

輸 入 伸 び 率<br />

58.8<br />

63.3<br />

9.4<br />

4.8<br />

33.2<br />

47.4<br />

‐0.9<br />

‐15.8 6.2<br />

20.9<br />

39.6<br />

41.0<br />

81.9<br />

29.7<br />

‐35.4<br />

‐28.5<br />

28.5<br />

41.3<br />

54.8<br />

55.5<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

(%)<br />

100.0<br />

80.0<br />

60.0<br />

40.0<br />

20.0<br />

0.0<br />

‐20.0<br />

‐40.0<br />

‐60.0<br />

( 出 所 ) 貴 州 統 計 年 鑑 などを 基 に 作 成<br />

28<br />

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貴 陽 市 内 商 業 施 設 の 様 子 1<br />

貴 陽 市 内 商 業 施 設 の 様 子 2<br />

(2) 政 策 動 向<br />

< 中 央 政 府 が 貴 州 省 経 済 発 展 を 支 援 ><br />

中 央 政 府 は 2012 年 1 月 12 日 、 貴 州 省 の 経 済 発 展 のテコ 入 れを 図 るため、「 国 務 院 の 貴<br />

州 経 済 社 会 を 好 調 にかつ 速 い 速 度 でさらに 発 展 させることに 関 する 若 干 の 意 見 」(2 号 文<br />

件 )を 公 布 した。<br />

2 号 文 件 では、 同 省 が 優 位 性 を 持 つ 産 業 の 振 興 政 策 のほか、 交 通 インフラの 建 設 増 強 、<br />

都 市 化 加 速 と 新 農 村 建 設 の 推 進 、 貧 困 扶 助 開 発 や 少 数 民 族 自 治 区 の 発 展 推 進 などが 盛 り 込<br />

まれている( 図 6、 図 7 参 照 )。<br />

また、2015 年 までの 発 展 目 標 として、 交 通 、 水 利 を 重 点 とした 基 礎 インフラ 整 備 の 推 進 、<br />

工 業 化 ・ 都 市 化 による 総 合 経 済 力 の 増 強 、 単 位 GRP 当 たりのエネルギー 消 費 量 の 抑 制 、<br />

森 林 カバー 率 引 き 上 げ(45%)、 小 康 社 会 (ゆとりある 社 会 )の 実 現 率 を 西 部 地 域 レベル<br />

に 高 めることなどが 掲 げられた。さらに、2020 年 までの 目 標 としては、 現 代 総 合 交 通 運 輸<br />

システムと 水 利 工 程 システムの 構 築 、 総 合 競 争 力 の 増 強 、 都 市 化 レベルの 大 幅 な 向 上 、 科<br />

29<br />

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学 技 術 イノベーション 能 力 の 強 化 、 森 林 カバー 率 引 き 上 げ(50%)、 収 入 増 加 により、 全<br />

面 的 に 小 康 社 会 を 実 現 することなどが 挙 げられている。<br />

同 省 政 府 関 係 者 によると、2 号 文 件 は 中 央 政 府 が 1 つの 省 の 経 済 発 展 を 支 援 することを<br />

うたった 初 めての 文 件 で、 今 後 、 金 融 政 策 なども 含 めた 各 種 支 援 制 度 も 発 表 される 見 通 し<br />

だという。 中 央 政 府 の 支 援 の 下 、 同 省 経 済 発 展 のさらなる 加 速 が 期 待 される。<br />

貴 陽 市 の 省 政 府 建 物<br />

図 6 2 号 文 件 の 重 要 11 部 分 と 注 目 点<br />

1 全 体 要 求<br />

2 交 通 基 礎 インフラの 建 設 増 強<br />

3「 三 位 一 体 」 規 画 ( 貴 州 省 水 利 建 設 生 態 建 設 石 獏 化 治 理 総 合 規 画 )の 全 面 実 施<br />

4 特 色 有 力 産 業 を 振 興<br />

(エネルギー 産 業 、 資 源 高 付 加 価 値 加 工 業 、 設 備 製 造 業 、 特 色 のある 軽 工 業 、 戦 略 的 振 興<br />

産 業 、 現 代 サービス 業 、 文 化 旅 行 業 )<br />

5 都 市 化 加 速 と 新 農 村 建 設 の 推 進<br />

6 現 代 農 業 を 発 展 させ、 農 業 基 礎 を 強 化<br />

7 貧 困 扶 助 開 発 を 推 進 、 民 族 地 区 の 目 覚 しい 発 展 を<br />

8 社 会 事 業 を 発 展 させ、 基 本 公 共 サービスをレベルアップ<br />

9 体 制 メカニズム 改 革 を 深 化 させ、 全 面 的 に 対 内 外 開 放 を 推 進<br />

10 政 策 支 援 を 強 化<br />

( 財 政 政 策 、 投 資 政 策 、 金 融 政 策 、 産 業 政 策 、 土 地 政 策 、 人 材 政 策 、マッチング 支 援 政 策 )<br />

11 組 織 の 指 導 を 強 化 、 各 種 任 務 を 確 実 なものにする<br />

( 出 所 )2 号 文 件 をもとに 作 成<br />

30<br />

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図 7 2 号 文 件 における 地 域 発 展 戦 略<br />

地 域 発 展 戦 略 の 原 則 「 黔 中 が 牽 引 し、 黔 北 がレベルアップし、 両 翼 は<br />

目 覚 しく、 調 和 をとりながら 推 進 する」<br />

1 黔 中 経 済 区 が 牽 引 作 用<br />

を 十 分 に 発 揮 する。<br />

⇒ 貴 陽 と 安 順 を 中 心 とし<br />

て 経 済 一 体 化 を 進 め、<br />

「 貴 安 新 区 」の 建 設 を<br />

加 速 し、 設 備 製 造 、 資<br />

源 高 付 加 価 値 加 工 、 戦<br />

略 的 新 興 産 業 、 現 代<br />

サービス 業 を 発 展 させ<br />

る。<br />

3 畢 水 興 ( 畢 節 、 六 盤 水 、<br />

興 義 )エネルギー 資 源 密<br />

集 区 での 持 続 可 能 な 発 展<br />

を 推 進 する。<br />

⇒ 畢 節 、 六 盤 水 、 興 義 を<br />

結 節 都 市 として、エネ<br />

ルギー 鉱 物 資 源 を 豊 富<br />

に 有 する 優 位 性 を 発 揮<br />

し、 南 方 の 重 要 な 戦 略<br />

資 源 サポート 基 地 を 建<br />

設 する。 石 炭 電 力 ・ 石<br />

炭 化 学 工 業 、 鉄 鋼 ・ 有<br />

色 金 属 、 自 動 車 設 備 製<br />

造 、 新 エネルギー 等 を<br />

重 点 的 に 発 展 させる。<br />

( 地 図 )Copyright(C) 中 国 まるごと 百 科 事 典<br />

(www.allchinainfo.com)<br />

( 注 ) 上 記 はあくまでもイメージである<br />

2 黔 北 経 済 協 力 区 の<br />

建 設 を 加 速 する。<br />

⇒ 遵 義 、 銅 仁 を 結 節<br />

都 市 として、 成 渝<br />

経 済 区 と 黔 中 経 済<br />

区 をつなぐ 経 済 回<br />

廊 を 積 極 的 に 構 成<br />

し、 航 空 宇 宙 など<br />

設 備 製 造 、 金 属 冶<br />

金 ・ 高 付 加 価 値 加<br />

工 、 化 学 工 業 、 特<br />

色 軽 工 業 、 旅 行 な<br />

どを 発 展 させる。<br />

4 三 州 ( 黔 東 南 州 、<br />

黔 南 州 、 黔 西 南<br />

州 )などの 民 族 地<br />

区 の 目 覚 しい 発 展<br />

を 推 進 する。<br />

⇒ 重 点 的 に 文 化 旅<br />

行 、 燐 石 炭 化 学<br />

工 業 、 新 型 建 材 、<br />

民 族 医 薬 ・ 農 林<br />

産 品 加 工 業 など<br />

を 発 展 させる。<br />

( 出 所 )2 号 文 件 をもとに 作 成<br />

(3) 事 業 環 境<br />

<br />

省 都 の 貴 陽 市 にある 貴 陽 国 家 ハイテク 産 業 開 発 区 は、1992 年 に 設 立 された 同 省 唯 一 の 国<br />

家 レベルのハイテク 産 業 開 発 区 である。 同 省 の 貴 陽 経 済 技 術 開 発 区 、 遵 義 経 済 術 開 発 区 が<br />

設 備 製 造 業 など 大 型 製 造 業 誘 致 に 主 眼 を 置 いているのに 対 して、 同 区 は 中 小 企 業 を 含 め、<br />

優 れたハイテク 技 術 を 持 つ 企 業 やイノベーションが 可 能 になる 企 業 などの 誘 致 に 力 を 入 れ<br />

ている。<br />

同 区 では「 一 区 三 園 」の 発 展 構 想 の 下 で 開 発 が 進 められている。 三 園 の 第 1 は、 金 陽 科<br />

技 産 業 園 で 面 積 は 1.66 平 方 キロ。 地 元 有 力 メーカーで、サファイアインゴットの 生 産 加 工<br />

を 手 掛 ける 貴 州 皓 天 光 電 科 技 や、 注 射 液 を 製 造 する 貴 州 泛 特 尓 生 物 のほか、 省 の 研 究 機 関<br />

も 入 居 している。 今 後 はハイテク・ 生 産 性 サービス 業 や 技 術 開 発 センターなどを 重 点 的 に<br />

誘 致 する 方 針 だ。<br />

第 2 は、 新 天 ハイテク 工 業 園 で、 面 積 は 1.31 平 方 キロ。 北 京 に 本 拠 地 を 置 き、 逆 浸 透 膜<br />

(RO 膜 )などを 生 産 するハイテク 企 業 の 時 代 沃 頓 、 地 元 有 力 製 薬 メーカーの 貴 州 健 興 薬<br />

業 、 貴 州 新 天 薬 業 などが 入 居 しており、 光 通 信 などの 光 機 電 産 業 と 製 薬 産 業 が 集 積 してい<br />

る。<br />

第 3 は、 同 区 が 現 在 最 も 力 を 注 いで 建 設 している 沙 文 生 態 科 技 産 業 園 だ。 第 1 期 開 発 面<br />

積 は 17 平 方 キロで、 将 来 は 92 平 方 キロに 拡 張 する 予 定 。 生 態 系 に 配 慮 した 開 発 を 行 う 予<br />

31<br />

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定 で、 科 学 技 術 のイノベーションと、 戦 略 的 新 興 産 業 の 振 興 を 主 要 目 標 に 掲 げている。 航<br />

空 機 エンジン 部 品 を 生 産 する 中 航 工 業 貴 州 黎 陽 航 空 発 動 機 や、 鉄 道 車 両 大 手 の 南 車 集 団 な<br />

どが 既 に 工 場 建 設 を 開 始 している。 同 園 の 中 には、 新 材 料 ・ 新 エネルギー(2.3 平 方 キロ)、<br />

ハイテク 設 備 製 造 (1.6 平 方 キロ)、バイオ・ 医 薬 (1.7 平 方 キロ)、 電 子 情 報 (2.7 平 方<br />

キロ)の 4 つの 主 要 産 業 基 地 を 建 設 しており、これらの 分 野 の 産 業 集 積 を 図 る。<br />

併 せて 国 家 レベルの 総 合 保 税 区 も 建 設 中 だ。 現 在 は 広 東 省 の 広 州 、 深 セン、 広 西 チワン<br />

族 自 治 区 の 北 海 で 通 関 をしているが、これにより、 現 地 での 通 関 が 可 能 になる 予 定 。<br />

同 区 管 理 委 員 会 は「 国 家 指 導 者 が 貴 州 省 を 頻 繁 に 視 察 し、その 際 には 同 区 が 視 察 ルート<br />

に 入 ることが 多 い」という。 沙 文 生 態 科 技 産 業 園 内 には、3D 画 像 で 同 区 の 概 要 が 分 かる<br />

視 聴 覚 室 を 備 えた 企 画 展 覧 室 が 整 備 されている。 国 家 指 導 者 の 視 察 が 誘 致 にすぐ 結 び 付 く<br />

わけではないが、 同 園 重 視 の 姿 勢 はうかがえる。<br />

最 新 鋭 の 貴 陽 国 家 ハイテク 産 業 開 発 区 企 画 展 覧 室<br />

<br />

同 区 に 進 出 している 外 資 系 企 業 は、 欧 州 、 台 湾 、 香 港 、 韓 国 、シンガポール 企 業 など 16<br />

~17 社 にとどまっており、 沿 海 のハイテク 産 業 技 術 開 発 区 に 比 較 すると 少 ない。 大 手 企 業<br />

としては、フランスのサフラングループ 子 会 社 が 航 空 機 エンジンのブレードを 金 陽 科 技 産<br />

業 園 で 生 産 しているほか、デンマークのダンフォスグループも 金 陽 科 技 産 業 園 で 自 動 車 ・<br />

空 調 の 熱 交 換 器 を 製 造 している。<br />

日 本 企 業 は、かつて 京 セラが 合 弁 会 社 を 設 立 し、 新 天 ハイテク 工 業 園 で 符 号 分 割 多 重 接<br />

続 (CDMA) 端 末 の 生 産 を 行 っていたが、2008 年 に 撤 退 した。 同 区 誘 致 担 当 者 によると、<br />

現 在 はソフトウエアアウトソーシングを 行 う 日 本 企 業 が 入 居 しているという。<br />

同 区 管 理 委 員 会 は「 日 本 から 最 先 端 技 術 、 材 料 活 用 、 精 密 加 工 、アニメーション、 電 子<br />

情 報 、アウトソーシング、 応 用 ソフトの 関 連 企 業 に 来 てほしい」と 語 る。 進 出 するメリッ<br />

トとしては、1 条 件 を 満 たせば 西 部 地 区 に 対 する 優 遇 税 制 を 享 受 できる、2 石 炭 、アルミ<br />

ニウム、リン、レアアースなど 貴 州 省 の 豊 富 な 鉱 物 資 源 を 活 用 できる、3 沿 海 部 と 比 較 し<br />

て、 労 働 力 の 確 保 が 容 易 、4 水 ・ 電 力 が 豊 富 、 安 定 した 生 産 を 行 うことができる、といっ<br />

た 点 を 挙 げた。<br />

32<br />

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労 働 集 約 型 産 業 についても、 加 工 貿 易 やサービスアウトソーシング 分 野 の 進 出 を 歓 迎 す<br />

るという。しかし、 一 定 の 技 術 を 持 ち、 一 定 の 業 績 を 確 保 できる 企 業 で、 環 境 保 護 の 要 求<br />

を 満 たせることを 条 件 に 挙 げた。 西 部 地 域 でも、 選 択 と 集 中 の 旗 印 の 下 に、 外 資 系 企 業 の<br />

誘 致 が 図 られていることがうかがえる。<br />

このほか、1 月 に 国 務 院 が「 貴 州 経 済 社 会 を 好 調 にかつ 速 い 速 度 でさらに 発 展 させるこ<br />

とに 関 する 若 干 の 意 見 」を 公 布 したことから、 同 区 管 理 委 員 会 は、インフラなどの 投 資 環<br />

境 整 備 、 資 金 面 のサポートを 含 む 国 の 支 援 策 が 展 開 されるとみている。<br />

「 若 干 の 意 見 」では 日 本 との 直 行 便 の 開 設 についても 触 れており、 貴 陽 竜 洞 堡 国 際 空 港<br />

は 現 在 拡 張 工 事 が 行 われている。また、 同 省 は 鉄 道 網 の 整 備 も 進 めている。 貴 陽 と 広 州 間<br />

の 高 速 鉄 道 は 2014 年 に 完 成 予 定 で、 開 通 後 は 移 動 時 間 が 現 在 の 22 時 間 から 4 時 間 未 満 に<br />

短 縮 される。 貴 州 と 成 都 、 昆 明 、 長 沙 、 重 慶 それぞれの 都 市 を 結 ぶ 高 速 鉄 道 も、 遅 くとも<br />

2015 年 には 完 成 する 予 定 で、 交 通 網 の 整 備 はここ 2~3 年 で 急 速 に 進 む 見 通 しだ。<br />

建 設 が 進 む 沙 文 生 態 科 技 産 業 園 の 様 子<br />

( 注 1)「 西 電 東 送 」プロジェクトとは、 貴 州 省 、 雲 南 省 、 広 西 チワン 族 自 治 区 、 四 川 省 、<br />

内 モンゴル 自 治 区 、 山 西 省 など 中 西 部 地 域 が 広 東 省 など 東 部 地 域 に 電 力 を 供 給 するプロジ<br />

ェクト。<br />

( 注 2) 三 線 建 設 を 背 景 に、 内 陸 移 転 した 企 業 を 指 す。<br />

( 注 3) 企 業 は 毎 年 3 月 1 日 から 6 月 30 日 までの 期 間 に 工 商 行 政 管 理 機 関 に 登 記 事 項 の<br />

状 況 、 対 外 投 資 の 状 況 、 経 営 状 況 などを 記 した 年 度 検 査 報 告 書 などの 必 要 書 類 を 提 出 し、<br />

定 期 検 査 を 受 けることが 義 務 付 けられている。 規 定 どおりに 年 度 検 査 を 受 けない 場 合 、 罰<br />

金 が 課 されたり、 営 業 許 可 証 が 取 り 消 されたりすることになる。<br />

( 宗 金 建 志 、 小 林 伶 )<br />

33<br />

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4. 雲 南 省<br />

ベトナム、ラオス、ミャンマーと 国 境 を 接 する 雲 南 省 は 近 年 2 ケタ 成 長 が 続 いており、<br />

中 央 政 府 は 東 南 アジアへの 橋 頭 堡 と 位 置 付 けている。 雲 南 省 には 豊 富 な 生 物 ・ 鉱 物 資 源 が<br />

あり、また、 中 央 政 府 から 東 南 ・ 南 アジアへのゲートウエーとして 位 置 付 けられ、 注 目 さ<br />

れている。 近 年 、 交 通 インフラの 整 備 も 急 速 に 進 められている。 同 省 政 府 はこうした 優 位<br />

性 を 生 かし、 企 業 誘 致 を 図 っていく 方 針 だ。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

雲 南 省 は 面 積 39 万 4,000 平 方 キロで 日 本 とほぼ 同 じ、2011 年 末 時 点 の 常 住 人 口 は 4,631<br />

万 人 、その 3 分 の 1 が 少 数 民 族 だ。ベトナム、ラオス、ミャンマーと 接 する 国 境 線 は 4,061<br />

キロに 及 ぶ。<br />

<br />

雲 南 省 の 2011 年 の 域 内 総 生 産 (GRP)は 8,751 億 元 (1 元 = 約 12.5 円 )、 実 質 GRP<br />

成 長 率 は 前 年 比 13.7% 増 と、 国 全 体 の 成 長 率 (9.2%)を 4.5 ポイント 上 回 っている。 近 年<br />

の 推 移 をみても、2006 年 から 2 ケタの 高 成 長 が 続 いている( 図 1 参 照 )。ただし、 沿 海<br />

の 広 東 省 の 2011 年 の GRP(5 兆 2,674 億 元 )と 比 較 すると、まだ 5 分 の 1 でしかない。<br />

産 業 別 では、 第 一 次 産 業 、 第 二 次 産 業 、 第 三 次 産 業 の 割 合 がそれぞれ 16.1%、45.6%、<br />

38.3%で、 国 全 体 の 10.1%、46.8%、43.1%に 比 べると、 第 一 次 産 業 の 占 める 割 合 が 大 き<br />

い。<br />

表 1 雲 南 省 の 主 要 経 済 指 標<br />

構 成 比<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

基 準 年 単 位 数 値<br />

- 平 方 キロ 394,000<br />

2011 万 人 4,631<br />

2011 % 36.8<br />

2011 % 13.7<br />

2011 億 元 8,751<br />

第 一 次 産 業 2011 % 16.1<br />

第 二 次 産 業 2011 % 45.6<br />

第 三 次 産 業 2011 % 38.3<br />

一 人 あたりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

財 政 収 入<br />

財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額<br />

( 出 所 ) 雲 南 省 2011 年 統 計 公 報 より 作 成<br />

2011 元 18,957<br />

2011 億 元 3,206<br />

2011 億 元 7,110<br />

2011 億 元 3,000<br />

2011 % 4.9<br />

2011 億 元 1,111<br />

2011 億 元 2,930<br />

2011 億 ドル 161<br />

2011 億 ドル 95<br />

2011 億 ドル 66<br />

2011 億 ドル 17<br />

2011 元 18,576<br />

2011 元 4,722<br />

34<br />

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図 1 雲 南 省 の GRP と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

10,000<br />

9,000<br />

8,000<br />

7,000<br />

6,000<br />

5,000<br />

4,000<br />

3,000<br />

2,000<br />

1,000<br />

0<br />

7.5<br />

6.8<br />

GRP<br />

伸 び 率<br />

9.0 8.8<br />

11.3<br />

8.9<br />

11.6<br />

12.2<br />

10.6<br />

12.1 12.3<br />

13.7<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

16.0<br />

14.0<br />

12.0<br />

10.0<br />

8.0<br />

6.0<br />

4.0<br />

2.0<br />

0.0<br />

( 出 所 ) 雲 南 統 計 年 鑑 および 雲 南 省 統 計 局 ウェブサイトより 作 成<br />

同 省 の 5 大 支 柱 産 業 は、タバコ、 電 力 、 鉱 物 、バイオ、 観 光 だ。 国 内 のタバコの 約 3 分<br />

の 1 は 同 省 で 生 産 されており、 生 産 量 は 全 国 1 位 。 次 に、 電 力 産 業 は 金 沙 江 、●(さんず<br />

いに 闌 ) 倉 江 (メコン 川 上 流 )などがあり、 水 資 源 が 豊 富 だ。 西 電 東 送 ( 西 部 の 電 力 を 東<br />

部 に 送 る)プロジェクトも 実 施 されており、2010 年 には 同 省 から 省 外 に 350 億 キロワッ<br />

ト 時 (kWh) 以 上 送 電 された。このほか、 日 照 時 間 が 長 いため、 太 陽 光 発 電 も 盛 んで、 風<br />

力 発 電 、バイオマスなどの 新 エネルギーの 潜 在 力 も 大 きい。<br />

また、 同 省 の 亜 鉛 の 埋 蔵 量 は 全 国 1 位 で、 鉛 とリンは 2 位 、 銅 は 3 位 、マンガンとボー<br />

キサイトは 6 位 など、 資 源 が 豊 富 だ。<br />

バイオ 産 業 も 盛 んだ。 省 内 の 海 抜 の 高 度 差 が 大 きく、さまざまな 気 候 帯 があるため、 動<br />

植 物 の 種 類 が 多 く、「 植 物 王 国 」、「 動 物 王 国 」、「 生 物 多 品 種 王 国 」と 称 されている。<br />

タバコ、 乾 燥 タバコの 生 産 量 は 全 国 1 位 で、 茶 、サトウキビ、ゴムは 2 位 、 松 脂 は 3 位 、<br />

バナナは 4 位 。なお、 同 省 は 切 り 花 、 漢 方 薬 などの 輸 出 でも 有 名 だ。<br />

このほか、 同 省 は 国 家 旅 遊 局 から、 国 家 旅 遊 産 業 改 革 発 展 モデルテスト 省 に 指 定 されて<br />

おり、 旅 行 施 設 の 一 層 の 整 備 などが 図 られている。2011 年 は 国 内 外 から 延 べ 1 億 6,700<br />

万 人 の 旅 行 客 が 訪 れ、2011 年 の 旅 行 収 入 は 1,300 億 元 に 達 した。<br />

< 日 本 の 貿 易 、 投 資 はまだ 小 規 模 ><br />

海 外 との 関 係 をみると、 近 年 、 同 省 への 対 内 直 接 投 資 が 盛 んだ。2000 年 に 1 億 2,812<br />

万 ドルだった 対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)は、2011 年 には 前 年 比 30.7% 増 の 17 億 3,754<br />

万 ドルと、 約 14 倍 にも 拡 大 した。2010 年 の 統 計 でみると、 香 港 からの 投 資 がシェア 55.6%<br />

と 最 大 で、 次 いで 英 領 バージン 諸 島 が 15.8%となっている。これらは 他 国 ・ 地 域 からの 迂<br />

回 投 資 の 多 い 地 域 だ。<br />

35<br />

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図 2 雲 南 省 の 対 内 直 接 投 資 の 推 移<br />

( 億 ドル) (%)<br />

20.0<br />

対 内 直 接 投 資<br />

120.0<br />

18.0 伸 び 率<br />

96.9<br />

100.0<br />

16.0<br />

72.9<br />

74.2<br />

80.0<br />

14.0<br />

50.0<br />

46.0 60.0<br />

12.0<br />

10.0<br />

30.5<br />

8.0<br />

22.6<br />

17.1<br />

30.7 40.0<br />

20.0<br />

0.0<br />

6.0<br />

‐16.7<br />

4.0<br />

‐15.5<br />

‐20.0<br />

2.0<br />

‐49.6<br />

‐40.0<br />

0.0<br />

‐60.0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 雲 南 統 計 年 鑑 および 雲 南 省 統 計 局 ウェブサイトより 作 成<br />

同 じく 2010 年 の 統 計 でみた 日 本 のシェアは 0.5%。 雲 南 省 招 商 合 作 局 によると、1984<br />

年 から 2012 年 1 月 までに 日 本 から 121 社 が 投 資 したが、 直 接 投 資 額 は 契 約 ベースで 9,709<br />

万 ドル、 実 行 ベースで 6,500 万 ドルにとどまっている。 現 地 日 系 企 業 などの 任 意 の 友 好 組<br />

織 、 雲 南 日 本 商 工 会 によると、 同 会 の 日 系 会 員 企 業 は 7 社 と、 進 出 日 系 企 業 はまだ 少 ない。<br />

進 出 日 系 企 業 は、ビタミン E の 100~1,000 倍 ともいわれ 強 力 な 抗 酸 化 作 用 を 持 つアス<br />

タキサンチンを 生 産 するバイオジェニック、ハーブの 栽 培 を 行 うエスビー 食 品 などで、 食<br />

品 関 連 企 業 が 多 い。 同 省 の 自 然 環 境 と 資 源 を 活 用 する 原 料 立 地 型 の 進 出 が 中 心 だ。<br />

同 省 招 商 合 作 局 も 日 本 企 業 の 進 出 可 能 性 が 高 い 分 野 として 食 品 産 業 を 挙 げている。 前 述<br />

の 要 因 に 加 えて、 中 国 で 日 本 食 品 の 安 全 性 への 信 頼 や、 消 費 レベルが 向 上 していることも<br />

あり、 今 後 は 内 販 の 可 能 性 も 高 いと 考 えられる。2012 年 2 月 24 日 には 良 品 計 画 の「 無 印<br />

良 品 昆 明 第 一 店 舗 」がオープンした。 現 地 政 府 幹 部 ・ 日 系 企 業 駐 在 員 からは「 昆 明 市 民 は<br />

消 費 意 欲 が 高 く、 流 行 にも 敏 感 」との 声 もある。<br />

また、 同 省 招 商 合 作 局 は「 日 本 を 含 めて 外 資 導 入 を 図 りたい 産 業 は、タバコ、エネルギ<br />

ー、 非 鉄 金 属 、 黒 色 金 属 ( 鉄 、マンガンなど)、 石 油 化 学 、バイオ、 旅 行 文 化 、 商 業 貿 易<br />

物 流 、 設 備 製 造 、 光 電 子 、 社 会 サービスだ」という。 同 省 の 優 位 性 を 生 かせる 産 業 を 中 心<br />

に 誘 致 を 図 る 構 えだ。<br />

貿 易 面 では、2011 年 の 同 省 の 貿 易 総 額 は 前 年 比 20.1% 増 の 160 億 5,000 万 ドルだった。<br />

2000 年 に 18 億 1,283 万 ドルだったことを 考 えると、 近 年 の 伸 びの 大 きさがうかがえる。<br />

特 に 近 年 は 輸 出 額 が 輸 入 額 を 大 きく 上 回 っており、2011 年 の 貿 易 収 支 は 28 億 9,000 万 ド<br />

ルの 黒 字 。なお、2010 年 の 統 計 によると、 同 省 の 輸 出 、 輸 入 に 占 める ASEAN のシェア<br />

はそれぞれ 56.7%、62.2%で、 中 国 全 体 の 9.0%、11.1%と 比 べれば、その 大 きさがうか<br />

がえる。<br />

36<br />

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図 3 雲 南 省 の 貿 易 総 額 の 推 移<br />

( 億 ドル)<br />

180<br />

160<br />

140<br />

120<br />

100<br />

13.6<br />

80<br />

60<br />

2.0<br />

輸 入<br />

輸 出<br />

輸 出 伸 び 率<br />

輸 入 伸 び 率<br />

24.4<br />

16.8<br />

14.9<br />

17.3<br />

5.9 6.9<br />

52.3<br />

33.5<br />

33.0<br />

18.0<br />

68.5<br />

64.4<br />

41.5 42.4<br />

39.6<br />

28.4<br />

14.1<br />

5.3 ‐9.5<br />

24.6<br />

13.2<br />

(%)<br />

80.0<br />

60.0<br />

40.0<br />

20.0<br />

0.0<br />

40<br />

20<br />

‐24.0<br />

‐20.0<br />

0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

‐40.0<br />

( 出 所 ) 雲 南 統 計 年 鑑 および 雲 南 省 統 計 局 ウェブサイトより 作 成<br />

今 後 も、 前 述 の 国 家 戦 略 の 展 開 や、ASEAN・ 中 国 自 由 貿 易 協 定 (ACFTA)の 効 果 など<br />

によって、ASEAN との 関 係 は 緊 密 化 していくと 予 想 される。 現 地 の 有 力 な 漢 方 薬 メーカ<br />

ーで、インドネシア、マレーシア、ロシアなどに 漢 方 薬 を 輸 出 している 昆 明 聖 火 薬 業 ( 集<br />

団 )の 担 当 者 も「 今 後 は 東 南 アジアとの 協 力 関 係 を 強 化 したい」と 語 っている。また、 燕<br />

京 ビールの 昆 明 工 場 責 任 者 も、 昆 明 への 進 出 (2011 年 に 生 産 開 始 )は「 雲 南 省 ・ 貴 州 省 で<br />

の 販 売 拡 大 が 目 的 だ」としながらも、「 橋 頭 堡 戦 略 が 展 開 されていることもあり、 東 南 ア<br />

ジア 市 場 開 拓 で 有 利 な 戦 略 を 展 開 できるという 側 面 もあった」と 述 べている。<br />

商 品 別 にみると、2011 年 の 輸 出 は、 機 械 ・ 電 機 製 品 が 17.6% 増 の 20 億 2,800 万 ドル、<br />

農 産 品 が 34.9% 増 の 17 億 5,700 万 ドル、リン 化 学 工 業 製 品 が 30.2% 増 の 14 億 9,400 万<br />

ドルだった。 他 方 、 輸 入 は、 金 属 鉱 砂 が 3.7% 増 の 26 億 5,200 万 ドル、 農 産 品 が 24.8% 増<br />

の 10 億 8,200 万 ドル、 機 電 製 品 が 5.4% 減 の 7 億 9,900 万 ドルだった。<br />

同 省 招 商 合 作 局 によると、2011 年 の 日 本 への 輸 出 額 は 3 億 30 万 ドルで、 主 な 品 目 はマ<br />

ツタケ、コーヒー、 花 卉 (かき)、 野 菜 、 黄 リン、レアメタル、 化 学 肥 料 など。 日 本 から<br />

の 輸 入 額 は 1 億 9,500 万 ドルで、 主 な 品 目 はプラスチック、 機 械 など。この 数 値 を 用 いて、<br />

同 省 の 輸 出 、 輸 入 に 占 める 日 本 のシェアを 算 出 すると、それぞれ 3.2%、3.0%と 現 状 では<br />

まだ 非 常 に 小 さい。しかし、 同 省 政 府 は 同 省 が 東 南 アジア、 南 アジアへのゲートウエーと<br />

位 置 付 けられたことを 踏 まえ、そこを 狙 った 日 系 企 業 の 進 出 増 加 や 経 済 交 流 の 活 発 化 に 期<br />

待 を 寄 せている。<br />

37<br />

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(2) 政 策 動 向<br />

< 橋 頭 堡 戦 略 を 展 開 ><br />

省 内 ではインフラ 整 備 が 急 速 に 進 んでおり、 既 に 開 通 した 高 速 道 路 は 2,630 キロと、 全<br />

国 第 9 位 の 規 模 。2015 年 には 4,500 キロに 達 する 予 定 だ。 昆 明 からベトナムとの 国 境 都<br />

市 、 河 口 へは 高 速 道 路 、 鉄 道 が 開 通 し、ラオスとの 国 境 都 市 、 磨 ●( 敢 の 下 に 心 )へは 高<br />

速 道 路 が 開 通 した( 鉄 道 は 建 設 中 )。ミャンマーとの 国 境 都 市 、 瑞 麗 へは 高 速 道 路 が 開 通<br />

し、 昆 明 から 瑞 麗 までの 区 間 のうち、 昆 明 から 大 理 までは 鉄 道 が 開 通 した。<br />

民 用 空 港 は 既 に 12 あり、2015 年 までに 19 に 増 える 予 定 。2012 年 6 月 28 日 には、 国<br />

際 空 港 としては 北 京 、 上 海 、 広 州 に 次 いで 4 番 目 に 規 模 の 大 きい 長 水 国 際 空 港 が 開 港 した。<br />

2009 年 7 月 に 胡 錦 涛 国 家 主 席 が 雲 南 省 を 視 察 し、その 後 「 雲 南 省 を 中 国 の 西 南 に 対 す<br />

る 開 放 の 橋 頭 堡 とする」と 発 言 したことを 受 けて、 同 省 を 中 国 から 東 南 アジア、 南 アジア<br />

へのゲートウエーとして 発 展 させる「 橋 頭 堡 戦 略 」が 展 開 されている。2011 年 5 月 には<br />

「 国 務 院 の 雲 南 省 が 西 南 に 対 する 開 放 の 重 要 な 橋 頭 堡 建 設 を 加 速 させることを 支 持 する 関<br />

連 意 見 」が 公 布 され、 国 家 レベルの 地 域 戦 略 にも 位 置 付 けられた。 大 規 模 な 幹 線 道 路 や、<br />

中 国 とミャンマー 間 のパイプライン、 瑞 麗 開 発 開 放 試 験 区 などの 建 設 が 中 心 プロジェクト<br />

だ。<br />

また、2010 年 6 月 には、ミャンマー 西 海 岸 から 雲 南 省 昆 明 市 までの 原 油 ・ 天 然 ガスパ<br />

イプライン 建 設 がスタートした。パイプラインの 全 長 は 約 1,100 キロに 及 び、 完 成 後 は 年<br />

間 2,000 万 トンの 原 油 、120 億 立 方 メートルの 天 然 ガスが 輸 送 される 予 定 だ。<br />

このほか、 同 省 は 重 要 な 辺 境 開 放 経 済 帯 の 建 設 にも 力 を 入 れていく 方 針 だ。 中 でも 瑞 麗<br />

開 発 開 放 試 験 区 は 重 視 されている。2010 年 6 月 に 公 布 された「 中 共 中 央 、 国 務 院 の 西 部<br />

大 開 発 戦 略 を 進 化 させることに 関 する 若 干 の 意 見 」は、 広 西 チワン 族 自 治 区 の 東 興 、 内 モ<br />

ンゴルの 煎 馴 里 などとともに 瑞 麗 を 重 要 都 市 として 挙 げており、 国 家 が 先 行 モデル 地 区 と<br />

して、 試 験 的 に 特 殊 政 策 を 展 開 するとしている。 国 際 貿 易 、 旅 行 、 金 融 サービス、 加 工 貿<br />

易 などの 拠 点 としての 機 能 を 持 たせ、 西 南 への 開 放 された 港 ・ 国 際 交 通 の 要 ・ 文 化 交 流 窓<br />

口 として 成 長 が 期 待 される。<br />

なお、 国 務 院 の 意 見 は、2015 年 までに 道 路 と 物 流 体 系 を 基 本 的 に 完 成 し、 交 通 、エネル<br />

ギー、 水 利 、 通 信 などの 基 礎 インフラ 整 備 を 進 展 させ、2020 年 までに 国 内 外 の 道 路 、 鉄 道 、<br />

パイプライン、 電 力 網 、 通 信 設 備 を 結 び 付 け、 交 通 、エネルギー、 物 流 、 情 報 などのルー<br />

トを 整 備 し、 西 南 に 向 けたプラットフォームとゲートウエーの 作 用 を 増 強 する、などの 目<br />

標 を 掲 げている。<br />

また、 今 後 は 農 業 、 金 融 などの 政 府 関 連 部 門 で、この 戦 略 をより 具 体 的 に 実 施 するため<br />

の 関 連 規 定 が 公 布 される 予 定 だ。<br />

38<br />

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省 都 昆 明 市 内 の 様 子 (カルフール)<br />

省 都 昆 明 市 内 の 様 子 (スターバックス)<br />

省 都 昆 明 市 内 の 様 子 (H&M)<br />

39<br />

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(3) 事 業 環 境<br />

1 昆 明 国 家 経 済 技 術 開 発 区<br />

< 産 業 集 積 や 生 物 資 源 、 地 理 的 優 位 性 を 生 かし、 産 業 の 高 度 化 を 図 る><br />

昆 明 国 家 経 済 技 術 開 発 区 は 1992 年 5 月 に 設 立 され、2000 年 2 月 に 国 務 院 の 承 認 を 受 け<br />

て 国 家 級 の 経 済 技 術 開 発 区 になった。 雲 南 省 には 同 区 と 昆 明 ハイテク 技 術 産 業 開 発 区 の 2<br />

つの 国 家 級 開 発 区 がある。<br />

昆 明 国 家 経 済 技 術 開 発 区 は 昆 明 中 心 市 街 、 呈 貢 新 城 ( 市 政 府 や 大 学 などが 移 転 した 新 市<br />

街 )、 新 設 中 の 長 水 国 際 空 港 の 3 地 点 の 中 心 にあり、 地 理 的 優 位 性 がある。 現 在 、 拡 張 工<br />

事 を 実 施 しており、 開 発 面 積 は 2012 年 中 に 156.6 平 方 キロに 達 する 予 定 だ。<br />

同 区 には、1 電 子 光 学 産 業 基 地 、2 情 報 産 業 基 地 、3 輸 出 加 工 区 、4 設 備 製 造 業 基 地 、<br />

5 現 代 物 流 産 業 基 地 、6バイオ 医 薬 産 業 基 地 、7 科 技 産 業 インキュベーションパークの 7<br />

つ 重 点 園 区 があり、これらの 産 業 を 中 心 に 企 業 誘 致 を 図 っている。<br />

1の 電 子 光 学 産 業 基 地 ( 計 画 面 積 1.7 平 方 キロ)は、 赤 外 線 システム、 電 子 光 学 製 品 ・<br />

材 料 、モニター、 太 陽 電 池 などのハイテク 技 術 製 品 を 重 点 分 野 とし、 電 子 光 学 産 業 の 集 積<br />

を 目 指 している。 主 な 入 居 企 業 には、 赤 外 線 関 連 装 置 を 製 造 する 昆 明 北 方 紅 外 技 術 や、 太<br />

陽 光 発 電 装 置 を 製 造 する 雲 南 天 達 光 伏 科 技 などがある。<br />

2 情 報 産 業 基 地 (6.7 平 方 キロ)は、 金 融 電 子 化 、 物 流 自 動 化 、 通 信 、マイクロエレク<br />

トロニクス、 電 子 材 料 、 新 型 電 子 コンポーネントなどを 重 点 分 野 とし、ソフト・サービス<br />

のアウトソーシング 分 野 の 発 展 にも 注 力 している。また、 東 南 ・ 南 アジア 地 域 へのゲート<br />

ウエーとして、 同 地 域 との 情 報 産 業 協 力 を 行 うモデル 基 地 の 建 設 を 目 指 すほか、 国 内 東 部<br />

地 域 からの 産 業 移 転 の 受 け 入 れも 推 進 する。 主 な 入 居 企 業 には、 大 手 金 融 電 子 化 関 連 設 備<br />

メーカーの 雲 南 南 天 電 子 信 息 産 業 などがある。<br />

3 輸 出 加 工 区 (2.5 平 方 キロ)は、 宝 石 ・ダイヤモンド 加 工 、 新 材 料 、 生 物 資 源 開 発 、<br />

光 学 ・ 機 械 電 子 製 品 製 造 などを 重 点 分 野 としている。 区 内 に 建 設 中 の 宝 石 産 業 園 では、 宝<br />

石 の 原 材 料 輸 入 、 加 工 、 設 計 、 展 示 、オークション、 国 際 交 易 、 専 門 人 材 育 成 などの 総 合<br />

的 な 機 能 が 整 備 される。<br />

4 設 備 製 造 業 基 地 (4.5 平 方 キロ)は、デジタル 工 作 機 械 、 自 動 化 物 流 システム、 太 陽<br />

光 発 電 システム、 交 通 設 備 、 印 刷 機 械 、 農 業 機 械 などを 重 点 分 野 としている。 主 な 入 居 企<br />

業 には、 工 作 機 械 大 手 の 瀋 陽 机 床 や 台 湾 の 昆 明 台 工 精 密 机 械 などがある。<br />

5 現 代 物 流 産 業 基 地 (15.7 平 方 キロ)は、 昆 明 とシンガポールを 結 ぶ「 凡 アジア 鉄 道 」<br />

で 貨 物 集 積 地 としての 役 割 を 担 う 昆 明 鉄 道 コンテナ 物 流 センターなどの 建 設 を 進 め、 現 代<br />

物 流 業 と 物 流 サービス 業 の 発 展 を 推 進 し、 東 南 ・ 南 アジアとの 交 易 上 の 現 代 物 流 センター<br />

の 形 成 を 目 指 している。<br />

6バイオ 医 薬 産 業 基 地 (20.2 平 方 キロ)は、 雲 南 の 豊 富 な 生 物 資 源 を 生 かしたバイオ 科<br />

学 技 術 、バイオ 医 薬 などを 重 点 分 野 とする。 主 な 入 居 企 業 には、 中 国 医 薬 工 業 「50 強 企 業 」<br />

( 上 位 50 社 )の 1 つ 昆 明 製 薬 集 団 や、 同 省 特 産 品 の 漢 方 薬 「 三 七 」を 活 用 する 製 薬 大 手<br />

の 聖 火 製 薬 などがある。<br />

7 科 技 産 業 インキュベーションパーク(2.5 平 方 キロ)は、 金 融 ・ 科 学 研 究 ・ 情 報 分 野<br />

などの 現 代 サービス 業 の 発 展 を 推 進 し、 国 家 級 の 科 学 研 究 機 関 や、 同 省 の 科 学 研 究 企 業 、<br />

新 興 技 術 ・ハイテク 企 業 のインキュベーション 施 設 などの 誘 致 を 図 る。<br />

40<br />

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外 資 企 業 は 日 系 5 社 含 め 約 100 社 ><br />

同 区 への 企 業 の 進 出 状 況 をみると、 中 国 企 業 が 大 半 を 占 めている。 第 11 次 5 ヵ 年 規 画<br />

の 期 間 中 (2006~2010 年 )、 中 国 企 業 による 投 資 額 が 366 億 2,800 万 元 だったのに 対 し、<br />

外 資 企 業 による 投 資 額 は 5 億 2,600 万 元 にとどまっている。<br />

同 区 管 理 委 員 会 投 資 促 進 2 局 によると、 中 国 企 業 は、 貿 易 ・ 販 売 会 社 を 含 め 約 1 万 社 入<br />

居 しており、うち 製 造 業 は 約 4,000~5,000 社 という。 中 国 企 業 の 主 な 投 資 分 野 はたばこ<br />

加 工 、 工 作 機 械 、 飲 料 ・ 食 品 、LED、 電 子 情 報 、バイオ 医 薬 分 野 などで、そのほか 金 融 、<br />

保 険 、 商 業 分 野 への 投 資 も 増 加 しているという。 主 な 入 居 企 業 には 前 述 の 瀋 陽 机 床 、 雲 南<br />

南 天 電 子 信 息 産 業 のほか、 長 安 汽 車 の 親 会 社 でもある 国 営 企 業 の 中 国 兵 器 装 備 集 団 や、 全<br />

国 18 省 2 直 轄 市 で 都 市 ガス 業 務 を 運 営 する 華 潤 燃 気 ( 集 団 )などがある。<br />

外 資 系 企 業 は 約 100 社 が 入 居 しており、 香 港 企 業 が 大 半 を 占 め、 統 一 食 品 など 台 湾 企 業<br />

も 多 い。 日 系 企 業 は、 食 品 関 連 企 業 3 社 (バイオジェニック、 三 栄 源 エフ・エフ・アイな<br />

ど)、ソフトウエア 開 発 関 連 企 業 2 社 の 計 5 社 が 進 出 している。<br />

同 区 管 理 委 員 会 投 資 促 進 2 局 は「 外 資 誘 致 の 重 点 分 野 は、 以 前 は 工 業 が 中 心 だったが、<br />

現 在 は 環 境 省 エネ、 太 陽 光 発 電 、 風 力 発 電 分 野 のほか、 金 融 、 貿 易 、サービス、アニメな<br />

どサービス 分 野 でも 誘 致 を 図 っている」と 語 った。<br />

なお、 同 区 の 優 遇 政 策 には、 同 区 の 産 業 発 展 計 画 と 合 致 した 業 種 であることを 前 提 とし<br />

て、 土 地 購 入 、 固 定 資 産 投 資 額 3,000 万 元 以 上 に 達 するプロジェクトの 場 合 、1 増 値 税 の<br />

2 免 3 減 半 ( 注 1) 措 置 や、2 企 業 所 得 税 の 5 免 5 減 半 ( 注 2) 措 置 などが 適 用 される。<br />

また、 資 本 金 100 万 元 以 上 または 増 値 税 ・ 営 業 税 ・ 企 業 所 得 税 などの 納 付 額 の 地 方 財 政 収<br />

入 経 済 開 発 区 収 入 部 分 が 4 万 元 以 上 の 場 合 には、 不 動 産 類 はその 納 付 額 ( 地 方 財 政 収 入 経<br />

済 開 発 区 収 入 部 分 )の 30%、 商 業 ・ 貿 易 ・サービス 類 は 40%、 工 業 生 産 類 ( 科 学 技 術 開<br />

発 を 含 む)は 50%が 還 付 されるといった 制 度 がある。<br />

昆 明 国 家 経 済 技 術 開 発 区 管 理 委 員 会<br />

41<br />

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中 国 企 業 の 増 加 で 土 地 不 足 問 題 も><br />

同 区 はインフラ 整 備 や 優 遇 政 策 などを 推 進 し、 企 業 誘 致 を 図 っているが、 土 地 不 足 の 問<br />

題 を 指 摘 する 声 もある。 既 存 エリアへの 進 出 は 困 難 で、 現 在 建 設 中 のエリアも 7 月 の 完 成<br />

を 前 に 既 に 入 居 企 業 が 決 まりつつあるという。また、 土 地 の 購 入 額 も 4~5 年 前 の 1 ムー<br />

(1 ムー= 約 6.67 アール) 当 たり 約 4 万 元 から、 現 在 はその 約 10 倍 に 高 騰 しているとさ<br />

れる。<br />

土 地 不 足 の 理 由 について、 同 区 管 理 委 員 会 投 資 促 進 2 局 は、「 雲 南 省 は 約 9 割 が 丘 陵 地 ・<br />

山 地 で、 工 業 用 地 に 向 く 盆 地 が 限 られている 上 、 雲 南 省 政 府 が 1 年 間 に 供 給 する 土 地 は 道<br />

路 部 分 を 含 めて 2,000 ムーにとどまる」と 説 明 する。 多 くの 企 業 進 出 により 開 発 区 内 に 販<br />

売 できる 土 地 がなくなった 場 合 には、 同 区 は 中 央 政 府 にさらに 拡 大 を 申 請 する 方 針 だが、<br />

開 発 区 の 拡 大 には、 農 民 の 土 地 の 買 い 取 りと 立 ち 退 き 問 題 も 伴 う。 今 後 、いかに 有 力 企 業<br />

の 入 居 率 を 高 め、 限 られた 土 地 で 生 産 性 を 向 上 させていくかが 課 題 だ。<br />

昆 明 輸 出 加 工 区<br />

2 雲 南 嵩 明 楊 林 工 業 園 区<br />

< 利 便 性 の 高 い 立 地 ><br />

雲 南 嵩 明 楊 林 工 業 園 区 は、1992 年 に 省 政 府 が 承 認 した 省 級 工 業 園 区 。2015 年 までに 国<br />

家 級 の 開 発 区 として 承 認 を 受 けようと、 現 在 、 申 請 手 続 きを 行 っている。 計 画 面 積 は 54<br />

平 方 キロ。<br />

同 区 は、12 年 5 月 から 利 用 できる 新 設 の 長 水 国 際 空 港 から 12 キロ、 現 在 建 設 中 の 同 区<br />

中 心 部 を 走 る「 空 港 大 道 」が 開 通 すると、 同 空 港 から 車 で 10~15 分 だ。また、 昆 明 市 街<br />

中 心 地 区 からは 34 キロで、 既 に 高 速 道 路 が 開 通 しているほか、ライトレール( 軽 軌 )も<br />

建 設 中 だ。さらに、 昆 明 市 嵩 明 県 経 済 貿 易 投 資 促 進 局 によると、 建 設 中 の 高 速 鉄 道 ( 上 海<br />

~ 長 沙 ~ 昆 明 )の 駅 も 同 区 内 に 設 置 される 予 定 で、 開 通 すれば 長 沙 とは 約 4 時 間 、 上 海 と<br />

は 約 9 時 間 で 結 ばれる( 開 通 は 5 年 以 内 を 予 定 )。<br />

42<br />

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同 区 は 重 点 投 資 分 野 として「1+4」 産 業 を 掲 げている。「1」は 自 動 車 産 業 を、「4」は<br />

設 備 製 造 業 、 食 品 ・ 飲 料 産 業 、 情 報 産 業 、 新 材 料 産 業 を 指 す。 自 動 車 分 野 では、 長 安 汽 車<br />

が 入 居 を 決 め、 完 成 車 の 製 造 を 予 定 しているほか、 東 風 汽 車 やゼネラル・モーターズ(GM)<br />

も 入 居 を 検 討 中 だという。 新 民 網 (2011 年 8 月 23 日 )によると、 同 区 は 長 安 汽 車 を 中 心<br />

に、 生 産 額 200 億 元 を 超 える 自 動 車 産 業 の 集 積 を 目 指 している。また、 食 品 ・ 飲 料 分 野 で<br />

は、 燕 京 ビールや 台 湾 の 康 師 傳 などが、 設 備 製 造 分 野 では、 瀋 陽 機 床 などが 入 居 している。<br />

このほかの 分 野 では、 非 鉄 金 属 大 手 の 雲 南 冶 金 などが 入 居 している。<br />

2005 年 ごろから 入 居 企 業 が 増 加 し 始 め、 現 在 は 約 170 社 に 達 した。 企 業 増 加 の 背 景 に<br />

ついて、 同 局 は「 販 売 地 域 の 近 くに 工 場 を 設 けるという 方 針 があるほか、 沿 岸 部 のコスト<br />

上 昇 や、 南 アジア・ 東 南 アジアへの 販 売 を 視 野 に 入 れた 際 の 地 理 的 優 位 性 などが 考 慮 され<br />

ている」とみている。 同 省 では、 東 南 アジア、 南 アジアへのゲートウエーとして 同 省 を 発<br />

展 させる 国 家 プロジェクト「 橋 頭 堡 (ほ) 戦 略 」が 展 開 されており、その 中 心 プロジェク<br />

トとして、 国 境 を 接 するベトナム、ラオス、ミャンマーとを 結 ぶ 交 通 インフラの 整 備 や、<br />

ミャンマーとの 間 の 原 油 ・ 天 然 ガスパイプライン 建 設 などが 進 められている。<br />

このほか、 隣 接 する 雲 南 嵩 明 職 業 教 育 基 地 に 職 業 訓 練 学 校 など 10 校 が 入 居 を 予 定 して<br />

おり、 同 局 は 新 たな 人 材 の 供 給 基 地 として 期 待 できる 点 も 企 業 増 加 の 要 因 に 挙 げた。 同 区<br />

は 今 後 、 外 資 企 業 の 誘 致 も 積 極 的 に 推 進 するとしており、2012 年 には 日 本 でも 誘 致 イベン<br />

トの 開 催 を 検 討 している。<br />

< 一 定 の 投 資 条 件 クリアが 必 要 ><br />

燕 京 ビールの 工 場 責 任 者 に 同 区 への 入 居 を 決 めた 理 由 を 聞 いたところ、 交 通 の 利 便 性 や<br />

開 発 区 担 当 者 の 対 応 の 良 さなどのほか、 一 定 の 面 積 の 平 地 を 希 望 どおりに 取 得 できたこと<br />

を 挙 げた。 雲 南 省 は 山 地 が 多 く、 工 業 用 地 に 向 く 土 地 が 限 られていることもあり、 昆 明 国<br />

家 経 済 技 術 開 発 区 などでは 土 地 不 足 の 問 題 も 指 摘 されているが、 同 区 の 土 地 にはまだ 余 裕<br />

があるという。<br />

雲 南 嵩 明 楊 林 工 業 園 区 内 の 燕 京 ビールの 工 場<br />

43<br />

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ただし、 同 区 では 100 ムー(1 ムー= 約 6.67 アール) 以 上 を 利 用 して 初 めて 50 年 の 土<br />

地 使 用 権 を 購 入 できる。 使 用 権 は 1 ムー 当 たり 23 万 元 。100 ムー 以 下 の 場 合 は 原 則 、 標<br />

準 工 場 に 入 居 することになり、その 賃 料 は 1 平 方 メートル 当 たり 月 18 元 (4 階 建 て)とな<br />

っている(2012 年 2 月 時 点 )。また、 同 区 への 入 居 条 件 としては、ほかの 開 発 区 と 同 様<br />

に「 投 資 強 度 」などが 設 定 されている( 表 2 参 照 )。<br />

投 資 強 度 とは、 一 般 的 にはプロジェクト 用 地 の 単 位 面 積 に 対 する 固 定 資 産 投 資 額 を 指 す。<br />

同 区 の 場 合 は、1 ムー 当 たりの 土 地 取 得 コストを 除 いた 固 定 資 産 投 資 額 と 定 義 しており、<br />

設 備 製 造 業 、 木 製 家 具 産 業 、 新 材 料 産 業 については 1 ムー 当 たり 250 万 元 以 上 、ハイテク<br />

産 業 、 電 子 情 報 産 業 については 同 300 万 元 以 上 の 投 資 強 度 が 求 められている。このほか、<br />

1 ムー 当 たりの 生 産 額 や 納 税 額 についても 下 限 が 設 けられており、 一 定 の 投 資 条 件 をクリ<br />

アして 初 めて 入 居 可 能 となる。<br />

表 2 雲 南 嵩 明 楊 林 工 業 園 区 の 入 居 条 件<br />

設 備 製 造 業 ・ 木 製 家 具<br />

産 業 ・ 新 材 料 産 業<br />

ハイテク 産 業 ・ 電 子 情<br />

報 産 業<br />

投 資 強 度 (1ムー 当 たり) 生 産 額 (1ムー 当 たり) 納 税 額 (1ムー 当 たり)<br />

250 万 元 以 上 400 万 元 以 上 8 万 元 以 上<br />

300 万 元 以 上 400 万 元 以 上 10 万 元 以 上<br />

( 出 所 ) 雲 南 嵩 明 楊 林 工 業 園 区 提 供 資 料 より 作 成<br />

( 注 1) 企 業 納 付 の 増 値 税 の 地 方 財 政 収 入 経 済 開 発 区 収 入 部 分 について、2 年 間 は 免 除 さ<br />

れ、その 後 3 年 間 は 増 値 税 率 が 半 減 される。<br />

( 注 2) 企 業 納 付 の 企 業 所 得 税 の 地 方 財 政 収 入 経 済 開 発 区 収 入 部 分 について、5 年 間 は 免<br />

除 、その 後 5 年 間 は 所 得 税 率 が 半 減 される。<br />

( 小 林 伶 、 宗 金 建 志 )<br />

44<br />

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5. 青 海 省<br />

青 海 省 は 豊 富 な 資 源 や 長 い 日 照 時 間 、 広 大 な 草 地 などの 恵 まれた 環 境 を 活 用 した 資 源 関<br />

連 産 業 や 農 業 ・ 牧 畜 業 の 発 展 を 背 景 に、 実 質 域 内 総 生 産 (GRP) 成 長 率 は 11 年 連 続 で 2<br />

ケタ 成 長 を 続 けている。 低 廉 な 人 件 費 や 電 力 、 水 、ガスの 低 コストでの 供 給 、 現 地 政 府 の<br />

協 力 的 姿 勢 といったメリットがあるものの、 市 場 規 模 が 限 定 的 で、 沿 岸 部 の 都 市 に 比 べ 港<br />

から 遠 いことによる 物 流 面 での 課 題 、 省 の 面 積 の 約 4 割 を 占 める 開 発 制 限 ・ 禁 止 区 域 や 国<br />

家 級 生 態 保 護 区 の 存 在 により、 環 境 保 護 に 注 意 が 必 要 などのデメリットもある。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

<br />

青 海 省 の 面 積 は 71 万 7,481 平 方 キロ、 人 口 は 2011 年 末 時 点 で 568 万 人 だ。 全 国 55 の<br />

少 数 民 族 のうち 54 民 族 が 居 住 し、 省 内 人 口 に 占 める 少 数 民 族 の 割 合 は 46%。また 省 の 面<br />

積 の 98%が 民 族 自 治 州 と 民 族 自 治 県 だ。<br />

2011 年 の GRP 総 額 は 1,635 億 元 (1 元 = 約 12.5 円 )、 実 質 GRP 成 長 率 は 13.5%と<br />

11 年 連 続 2 ケタ 成 長 を 達 成 した( 図 1 参 照 )。 固 定 資 産 投 資 は 前 年 比 34.2% 増 の 1,434<br />

億 元 、 社 会 消 費 品 小 売 総 額 は 17.0% 増 の 405 億 元 と、それぞれ 高 い 伸 びを 示 している( 表<br />

1、 図 1、 図 2 参 照 )。<br />

表 1 青 海 省 の 主 要 経 済 指 標<br />

構 成 比<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

基 準 年 単 位 数 値<br />

- 平 方 キロ 717,481<br />

2011 万 人 568<br />

2011 % 46.2<br />

2011 % 13.5<br />

2011 億 元 1,635<br />

第 一 次 産 業 2011 % 9.5<br />

第 二 次 産 業 2011 % 57.5<br />

第 三 次 産 業 2011 % 33<br />

一 人 あたりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

財 政 収 入<br />

財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額<br />

2011 元 n.a<br />

2011 億 元 781<br />

2011 億 元 1,434<br />

2011 億 元 405<br />

2011 % 6.1<br />

2011 億 元 152<br />

2011 億 元 967<br />

2011 億 ドル 9<br />

2011 億 ドル 7<br />

2011 億 ドル 3<br />

2011 億 ドル 2<br />

2011 元 15,603<br />

2011 元 4,608<br />

( 出 所 )2011 年 青 海 省 国 民 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報 、2011 年 中 国 城 市 年 鑑<br />

45<br />

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図 1 青 海 省 の GRP と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

1,800<br />

1,600<br />

1,400<br />

1,200<br />

1,000<br />

800<br />

600<br />

400<br />

200<br />

0<br />

8.9<br />

GRP<br />

伸 び 率<br />

11.7 12.1 11.9 12.3 12.2 13.3 13.5 13.5<br />

10.1<br />

15.3<br />

13.5<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

18.0<br />

16.0<br />

14.0<br />

12.0<br />

10.0<br />

8.0<br />

6.0<br />

4.0<br />

2.0<br />

0.0<br />

( 出 所 ) 青 海 統 計 年 鑑 各 年 版 、2011 年 青 海 省 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報 を 基 に 作 成<br />

図 2 青 海 省 の 固 定 資 産 投 資 額 と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

1,600 固 定 資 産 投 資<br />

37.3<br />

40.0<br />

33.5 34.2<br />

1,400 伸 び 率<br />

35.0<br />

1,200 30.2<br />

30.0<br />

1,000<br />

800<br />

600<br />

21.5<br />

16.4<br />

11.6<br />

15.4 14.3<br />

16.2<br />

19.6<br />

25.0<br />

20.0<br />

15.0<br />

400<br />

10.0<br />

200<br />

5.0<br />

0<br />

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

0.0<br />

( 出 所 ) 図 1 に 同 じ<br />

46<br />

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図 3 青 海 省 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 の 推 移<br />

( 億 元 )<br />

(%)<br />

450<br />

25.0<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

22.2<br />

400<br />

伸 び 率<br />

350<br />

20.0<br />

16.4<br />

17.0<br />

15.7<br />

300<br />

14.4 15.2<br />

12.6 13.0 15.0<br />

250<br />

11.8<br />

200 9.2<br />

10.1<br />

10.0<br />

150<br />

100<br />

5.0<br />

1.6<br />

50<br />

0<br />

0.0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 図 1 に 同 じ<br />

貿 易 は 輸 出 が 前 年 比 42.0% 増 の 6 億 6,182 万 ドル、うち 日 本 向 けが 2 億 634 万 ドルで<br />

31.2%を 占 め、 最 大 の 相 手 先 となっている。 主 な 輸 出 品 目 はフェロシリコンのほか、カシ<br />

ミアなどの 紡 績 関 連 製 品 だ。 輸 入 は 30.0% 減 の 2 億 6,199 万 ドル、うちオーストラリアか<br />

らが 1 億 3,047 万 ドルで 49.8%を 占 め、 日 本 からは 721 万 ドルでシェアは 2.9%にとどま<br />

っている。 主 な 輸 入 品 目 はアルミナ、 電 気 ・ 機 械 製 品 。 貿 易 収 支 は 2000 年 以 来 、リーマ<br />

ン・ショックの 影 響 を 受 けた 2009 年 を 除 き、 一 貫 して 入 超 となっている。<br />

図 4 青 海 省 の 貿 易 総 額 の 推 移<br />

( 億 ドル)<br />

10<br />

輸 入 輸 出<br />

輸 出 伸 び 率 輸 入 伸 び 率<br />

92.4<br />

9<br />

85.0<br />

8 59.6<br />

81.1<br />

65.3<br />

85.8<br />

7<br />

43.1 66.2<br />

16.8<br />

30.4<br />

6<br />

19.3 24.2 42.0<br />

5<br />

‐18.2<br />

28.9 33.2<br />

4<br />

‐3.6<br />

8.5<br />

3<br />

‐25.3<br />

‐30.0<br />

2<br />

1.3<br />

1<br />

‐28.9 ‐27.8<br />

0<br />

‐40.1<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

(%)<br />

100.0<br />

80.0<br />

60.0<br />

40.0<br />

20.0<br />

0.0<br />

‐20.0<br />

‐40.0<br />

‐60.0<br />

( 出 所 ) 図 1 に 同 じ<br />

47<br />

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2011 年 の 対 内 直 接 投 資 は、 実 行 ベースで 前 年 比 22.9% 減 の 1 億 6,900 万 ドル。 青 海 省<br />

政 府 によると、2011 年 3 月 7 日 時 点 の 進 出 日 系 企 業 数 は、 登 記 ベースで 18 社 だが、 実 際<br />

に 活 動 を 行 っているのはわずか 3 社 だという。<br />

人 口 や 経 済 は、 省 都 の 西 寧 市 に 集 中 している。2010 年 には 省 全 体 の 人 口 の 39.3%、GRP<br />

の 45.3%、 固 定 資 産 投 資 の 47.8%、 小 売 総 額 の 66.2%を 西 寧 市 が 占 めた。<br />

<br />

青 海 省 の 大 きな 優 位 性 として、 豊 富 な 資 源 が 挙 げられる。「 中 国 統 計 年 鑑 」(2011)に<br />

よると、2010 年 の 国 内 の 天 然 資 源 埋 蔵 量 に 占 める 同 省 のシェアは、 天 然 ガスが 3.8%(1,322<br />

億 立 方 メートル、 海 域 を 除 く)、 鉛 が 6.2%(79 万 トン)で、ともに 全 国 第 7 位 になって<br />

いる。<br />

黄 河 流 域 は 水 資 源 も 豊 富 で、 水 力 発 電 所 を 備 えたダムが 178 ヵ 所 あり、 最 大 出 力 は 2,166<br />

万 キロワット(kW)で 全 国 第 5 位 。2010 年 にはエネルギー 生 産 量 の 33.9%を 水 力 発 電 が<br />

占 め( 図 5 参 照 )、 自 給 率 は 140%を 超 える。 年 間 2,000~3,600 時 間 という 長 い 日 照 時 間<br />

は、 太 陽 光 発 電 でも 有 利 だ。<br />

恵 まれた 環 境 を 利 用 した 農 産 物 ・ 畜 産 物 の 生 産 も 盛 んだ。 農 産 物 は、 長 い 日 照 時 間 、 昼<br />

夜 の 寒 暖 の 差 を 利 用 して、 小 麦 、ハダカ 麦 、ジャガイモ、アブラナ、ソラマメ、エンドウ、<br />

グミ 科 の 植 物 の 沙 棘 (サジー、 英 名 :sea buckthorn)などが 生 産 されている。 畜 産 物 は、<br />

全 国 第 4 位 となる 3,646 万 6,000 ヘクタールの 草 地 で、チベット 綿 羊 、ヤク、 馬 など 約 1,980<br />

万 頭 が 飼 育 されており、 主 要 な 輸 出 品 のカシミアなど 紡 績 関 連 産 業 の 原 料 供 給 源 となって<br />

いる。<br />

図 5 青 海 省 のエネルギー 生 産 の 構 成 (2010 年 )<br />

青 海 省 のエネルギー 生 産 の 構 成 (2010 年 )<br />

石 油<br />

7.3%<br />

天 然 ガス<br />

19.7%<br />

石 炭<br />

39.1%<br />

水 力<br />

33.9%<br />

( 出 所 ) 青 海 省 統 計 年 鑑 (2011 年 )<br />

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(2) 政 策 動 向<br />

< 省 面 積 の 約 4 割 を 占 める 開 発 禁 止 ・ 制 限 区 域 ><br />

中 央 政 府 は 2011 年 6 月 に「 主 体 機 能 区 規 画 」を 制 定 した。これにより、 国 土 は 機 能 別<br />

に 4 つの「 主 体 性 機 能 区 」に 分 類 されることになった。 中 国 の 中 でも 経 済 成 長 が 進 み、 量<br />

よりも 質 的 な 発 展 を 追 求 する「 最 適 化 開 発 区 域 」、 成 長 に 向 けた 潜 在 性 が 高 く、 中 国 経 済<br />

発 展 の 中 核 となるべき「 重 点 開 発 区 域 」、 農 産 品 の 生 産 、 生 態 環 境 保 護 が 工 業 化 ・ 都 市 化<br />

よりも 優 先 され、 大 規 模 な 開 発 が 制 限 される「 開 発 制 限 区 域 」、 世 界 遺 産 や 自 然 公 園 など<br />

国 家 的 に 保 全 が 必 要 で、 開 発 を 禁 止 すべき「 開 発 禁 止 区 域 」だ。このうち 青 海 省 は「 重 点<br />

開 発 区 域 」、「 開 発 制 限 区 域 」、「 開 発 禁 止 区 域 」の 3 つに 区 分 された。<br />

「 重 点 開 発 区 域 」としては「 国 家 蘭 州 ・ 西 寧 重 点 開 発 区 域 」があり、 西 寧 を 中 心 とする 東<br />

部 地 域 と 西 部 の 柴 達 木 地 域 が 主 要 地 域 となる。 同 区 域 では 主 に 新 エネルギー、 水 力 発 電 、<br />

石 油 化 学 、 非 鉄 金 属 、 農 ・ 畜 産 物 加 工 、 新 素 材 、バイオ・ 医 薬 産 業 の 発 展 を 目 指 している。<br />

「 開 発 制 限 区 域 」としては「 国 家 級 三 江 源 草 原 湿 地 生 態 機 能 区 」などがある。 開 発 可 能 な<br />

分 野 は 鉱 業 、 水 力 発 電 などの 資 源 関 連 産 業 に 限 られる。<br />

「 開 発 禁 止 区 域 」としては「 三 江 源 国 家 級 自 然 保 護 区 」( 約 15 万 2,300 平 方 キロ)、「 可<br />

可 西 里 国 家 級 自 然 保 護 区 」( 約 4 万 5,000 平 方 キロ)のほか、 森 林 公 園 や 歴 史 文 化 遺 産 保<br />

護 地 、 重 要 水 源 保 護 区 など 約 20 万 6,000 平 方 キロが 指 定 されており、 省 面 積 の 28.5%に<br />

達 する。「 開 発 制 限 区 域 」と「 開 発 禁 止 区 域 」を 合 わせると、 省 面 積 の 約 4 割 に 達 する。<br />

< 環 境 保 護 を 踏 まえた 産 業 別 発 展 方 針 を 策 定 ><br />

青 海 省 は 環 境 保 護 の 必 要 性 を 踏 まえ、 農 業 ・ 牧 畜 業 、 工 業 、サービス 業 など 産 業 別 に 具<br />

体 的 な 発 展 方 針 を 定 めている( 表 2 参 照 )。<br />

表 2 青 海 省 の 産 業 別 発 展 方 針<br />

産 業 発 展 方 針 品 種 ・ 業 種<br />

農 業 ・ 牧 畜 業 効 率 化 、ブランド 化 アブラナ、ジャガイモ、ソラマメ、 野 菜 、 漢 方 、 果 物 、<br />

牛 ・ 羊 肉 、 乳 牛 、コード、 牧 草 ・ 飼 料 、 沙 棘 、クコ、<br />

高 原 花 卉 、 魚 介 類 の 養 殖 、 養 蜂 など。<br />

工 業<br />

サービス 業<br />

( 出 所 ) 青 海 投 資 指 南<br />

二 酸 化 炭 素 排 出 削 減 、 循 環 型 化 、 無<br />

公 害 化<br />

新 エネルギー、 非 鉄 金 属 、 石 油 ・ガス、 塩 湖 資 源 を<br />

利 用 した 化 学 工 業 石 炭 、 設 備 製 造 、 鉄 鋼 、 軽 工<br />

業 、 紡 績 、バイオなど。<br />

大 規 模 化 、ブランド 化 、ネットワーク 化 金 融 、 物 流 、 科 学 技 術 サービス、 情 報 、 飲 食 、 不<br />

動 産 、 旅 行 、 文 化 ・ 体 育 など。<br />

まず 農 業 ・ 牧 畜 業 は、 広 大 な 土 地 を 利 用 して 生 産 される 農 産 物 や、 放 し 飼 いで 育 成 され<br />

る、 品 質 の 優 れた 羊 や 牛 を 利 用 した 加 工 製 品 に 力 を 入 れる。 主 な 品 種 ・ 業 種 は、アブラナ、<br />

ジャガイモ、ソラマメ、 野 菜 、 漢 方 、 果 物 、 牛 ・ 牛 肉 、 牛 乳 、 牧 草 ・ 飼 料 、 沙 棘 、クコ、<br />

高 原 花 卉 (かき)、 魚 介 類 の 養 殖 、 養 蜂 。<br />

工 業 は、 豊 富 な 資 源 を 利 用 した 加 工 製 品 、 長 い 日 照 時 間 を 利 用 した 太 陽 光 発 電 、 風 力 発<br />

電 など 資 源 ・ 環 境 関 連 産 業 の 発 展 を 目 指 している。 業 種 としては、 新 エネルギー、 塩 湖 資<br />

49<br />

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源 を 利 用 した 化 学 工 業 、 非 鉄 金 属 、 石 油 ・ガス、 石 炭 、 設 備 製 造 、 鉄 鋼 、 軽 工 業 、 紡 績 、<br />

バイオなど。サービス 業 は 金 融 、 物 流 、 科 学 技 術 サービス、 情 報 、 飲 食 、 不 動 産 、 旅 行 、<br />

文 化 ・ 体 育 などの 発 展 が 重 点 となっている。<br />

また、 発 展 方 針 を 推 進 するために「 柴 達 木 循 環 経 済 試 験 区 」、「 西 寧 国 家 級 経 済 技 術 開<br />

発 区 」、「 海 東 総 合 経 済 区 」などの 開 発 区 の 建 設 を 進 めている( 表 3 参 照 )。<br />

表 3 青 海 省 の 開 発 区<br />

柴 達 木 循 環 経 済 試 験 区<br />

西 寧 国 家 級 経 済 技 術 開 発 区<br />

海 東 総 合 経 済 区<br />

格 爾 木 工 業 園<br />

徳 令 哈 工 業 園<br />

大 柴 旦 工 業 園<br />

烏 蘭 工 業 園<br />

格 爾 木 蔵 青 工 業 園<br />

東 川 工 業 園<br />

青 海 国 家 高 新 技 術 産 業<br />

開 発 区<br />

甘 河 工 業 園<br />

南 川 工 業 園<br />

曹 家 堡 臨 空 総 合 経 済 区<br />

楽 都 装 備 園 区<br />

民 和 下 川 口 工 業 園 区<br />

塩 湖 資 源 を 利 用 した 化 学 工 業 、 石<br />

油 ・ 天 然 ガス 化 学 工 業 、 非 鉄 金 属 な<br />

ど。<br />

ソーダ、カーバイト、PVC、 塩 化 カル<br />

シウム、 酸 化 マグネシウム、 有 機 シ<br />

リコン、コールタール、ストロンチウ<br />

ム、セメント、 高 原 生 物 製 品 など。<br />

石 炭 、 電 力 、メタノール、カーバイト、<br />

亜 鉛 、 金 、ホウ 酸 、 硫 化 ソーダなど。<br />

コールタール 油 、メタノール、 精 製<br />

塩 、 金 属 ナトリウム、 硫 酸 カリウムな<br />

ど。<br />

非 鉄 金 属 冶 金 、 塩 湖 資 源 を 利 用 した<br />

化 学 工 業 など。<br />

多 結 晶 シリコン、 単 結 晶 シリコン、 太<br />

陽 エネルギー 関 連 部 品 、アルミ 合 金<br />

加 工 など。<br />

大 型 精 密 デジタル 工 作 機 械 、 新 エネ<br />

ルギー 自 動 車 、 業 務 用 自 動 車 、 風<br />

力 エネルギー 設 備 、 漢 方 薬 、 食 品 な<br />

ど。<br />

非 鉄 金 属 冶 金 など。<br />

チベット 絨 毯 、 紡 績 業 ( 牛 ・ 羊 ・ラク<br />

ダ)など。<br />

アルミ、 農 産 品 加 工 、 生 物 医 薬 、 紡<br />

績 、 新 エネルギー、 新 素 材 、 電 子 材<br />

料 、シリコン、 太 陽 電 池 など。<br />

精 密 鋳 造 ・ 鍛 造 、 設 備 製 造 、 自 動<br />

車 、 船 舶 、 航 空 宇 宙 、 核 、 電 力 。<br />

金 属 精 密 加 工 、 熱 発 電 など。<br />

( 出 所 ) 表 2 に 同 じ<br />

(3) 事 業 環 境<br />

< 平 均 賃 金 は 北 京 の 5 割 程 度 ><br />

青 海 省 でのビジネスには、いくつかのメリットとデメリットが 考 えられる。まず、メリ<br />

ットとしては、 次 の 3 点 が 挙 げられる。1 つ 目 は 低 廉 な 人 件 費 だ。2010 年 の 平 均 賃 金 は 年<br />

間 3 万 6,121 元 と、 北 京 市 の 6 万 5,158 元 、 上 海 市 の 6 万 6,115 元 、 広 東 省 の 4 万 432 元<br />

などと 比 べて 大 幅 に 低 い。<br />

2 つ 目 は 電 力 、ガス、 水 が 低 コストなことだ。 特 に 電 力 は 火 力 、 水 力 、 風 力 、 太 陽 光 い<br />

ずれの 発 電 資 源 も 充 実 しているため、 安 価 で 安 定 した 供 給 が 可 能 だ。<br />

3 つ 目 は 外 資 系 企 業 の 進 出 が 比 較 的 少 ないため、 投 資 促 進 を 狙 う 現 地 政 府 に 歓 迎 され、<br />

50<br />

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良 好 な 関 係 を 構 築 しやすいことが 挙 げられる。<br />

< 厳 しい 開 発 規 制 ><br />

デメリットとしては、 次 の 3 点 が 挙 げられる。 第 1 に、 低 い 所 得 水 準 と 少 ない 人 口 の 影<br />

響 もあり、 市 場 規 模 が 限 定 的 なことだ。2011 年 の 都 市 部 住 民 の 1 人 当 たりの 平 均 可 処 分<br />

所 得 は 1 万 5,603 元 と、 全 国 で 甘 粛 省 、 新 疆 ウイグル 自 治 区 に 次 いで 少 なく、 平 均 消 費 支<br />

出 は 1 万 955 元 とチベット 自 治 区 に 次 いで 少 ない( 図 6、 図 7 参 照 )。<br />

また、 人 口 はチベット 自 治 区 に 次 いで 少 なく、 市 場 規 模 が 小 さい。 外 資 系 大 手 小 売 企 業<br />

のカルフール、ウォルマート、 大 手 外 食 企 業 のマクドナルド、スターバックスなども、2012<br />

年 2 月 末 時 点 でまだ 進 出 していない。<br />

第 2 に、 沿 岸 部 の 都 市 に 比 べ、 物 流 面 で 不 利 だ。 最 も 近 い 港 の 天 津 港 まで 2,200 キロ 以<br />

上 離 れており、 海 運 を 利 用 する 場 合 には 沿 岸 部 の 都 市 に 比 べて 余 分 なコスト、 時 間 が 必 要<br />

になる。<br />

第 3 に、 開 発 可 能 面 積 に 制 限 があり、 開 発 可 能 地 域 でも 環 境 保 護 に 注 意 が 必 要 な 点 だ。<br />

青 海 省 は 全 面 積 の 約 4 割 が 開 発 禁 止 ・ 制 限 区 域 に 指 定 されているため、 開 発 できる 土 地 自<br />

体 に 限 りがある。さらに、 国 家 級 生 態 保 護 区 があることや、 黄 河 、 長 江 の 水 源 を 持 ち、 開<br />

発 による 汚 染 が 流 域 26 の 省 市 に 影 響 することなどから、 現 地 政 府 は 環 境 汚 染 に 多 大 の 注<br />

意 を 払 っている。 開 発 可 能 な 地 域 でも、 政 府 の 環 境 汚 染 に 関 する 厳 しい 対 応 に 留 意 する 必<br />

要 がある。<br />

図 6 都 市 部 住 民 の 一 人 当 たり 平 均 可 処 分 所 得 (2011 年 )<br />

( 元 )<br />

40,000<br />

35,000<br />

30,000<br />

25,000<br />

20,000<br />

15,000<br />

10,000<br />

5,000<br />

0<br />

上 北 浙 天 広 江 福 山 遼 内 重 広 湖 安 雲 湖 海 河 陕 河 山 四 吉 寧 江 貴<br />

海 京 江 津 東 蘇 建 東 寧 モ 慶 西 南 徽 南 北 南 北 西 南 西 川 林 夏 西 州<br />

ン<br />

ゴ<br />

ル<br />

チ<br />

ベ<br />

ッ<br />

ト<br />

黒 青 新 甘<br />

竜 海 疆 粛<br />

江<br />

( 出 所 )CEIC<br />

51<br />

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図 7 都 市 部 住 民 の 一 人 当 たり 平 均 消 費 支 出 (2011 年 )<br />

( 元 )<br />

30,000<br />

25,000<br />

20,000<br />

15,000<br />

10,000<br />

5,000<br />

0<br />

上 北 浙 広 天 江 福 内 重 遼 山<br />

海 京 江 東 津 蘇 建 モ 慶 寧 東<br />

ン<br />

ゴ<br />

ル<br />

陕<br />

西<br />

省<br />

四 湖 安<br />

川 南 徽<br />

省 省 省<br />

湖 吉 寧 広 海 河 雲 黒 新 江 河 山 貴 甘 青<br />

北 林 夏 西 南 南 南 竜 疆 西 北 西 州 粛 海<br />

省<br />

江<br />

チ<br />

ベ<br />

ッ<br />

ト<br />

( 出 所 )CEIC<br />

西 寧 市 内 の 百 貨 店<br />

< 特 産 農 産 物 を 活 用 する 地 場 企 業 ><br />

青 海 省 の 特 産 品 を 活 用 し、 発 展 を 目 指 す 地 場 企 業 もある。2005 年 9 月 に 清 華 大 学 と 生<br />

物 科 技 産 業 園 が 共 同 で 設 立 した 青 海 清 華 博 衆 生 物 技 術 だ。 省 内 で 収 穫 された 農 産 品 を 高 い<br />

技 術 で 加 工 し、 付 加 価 値 を 高 め 国 内 外 へ 販 売 している。 主 に 沙 棘 を 独 自 の 技 術 で 加 工 し、<br />

酒 、 油 、 茶 、 酢 、 健 康 食 品 などを 製 造 、 原 料 は 現 地 の 契 約 農 家 から 無 農 薬 で 栽 培 したもの<br />

52<br />

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を 仕 入 れている。<br />

2007 年 からは EU へも 輸 出 を 開 始 し、2011 年 の 輸 出 額 は 1,000 万 ドルを 超 えた。 敷 地<br />

内 に 研 究 所 を 持 ち、 成 分 分 析 や 技 術 開 発 を 行 っており、 既 に 中 国 と EU で 醸 造 方 法 や 粉 末<br />

化 技 術 など 18 の 特 許 を 取 得 している。<br />

青 海 清 華 博 衆 生 物 技 術 の 正 門 周 辺 の 様 子<br />

< 青 海 緑 色 投 資 貿 易 商 談 会 を 毎 年 開 催 ><br />

省 政 府 は 国 内 外 から 高 い 技 術 を 持 つ 企 業 を 誘 致 するため、 毎 年 6 月 に「 青 海 緑 色 投 資 貿<br />

易 商 談 会 」を 開 催 、2012 年 で 13 回 目 を 迎 える。2011 年 の 商 談 会 での 契 約 件 数 は 259 件 、<br />

契 約 額 は 1,502 億 元 だった。 外 資 系 企 業 との 間 では、9 件 のプロジェクトを 締 結 し、 契 約<br />

額 は 1 億 1,600 万 元 となった。 国 内 からは 工 業 、インフラ 整 備 、 農 ・ 牧 畜 業 、 旅 行 、 物 流 、<br />

鉱 物 、 金 融 、 新 エネルギー、 新 素 材 などの 分 野 の 企 業 が 出 展 した。<br />

( 河 野 円 洋 )<br />

53<br />

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6. 新 疆 ウイグル 自 治 区<br />

新 疆 ウイグル 自 治 区 は、 資 源 や 農 産 物 が 豊 富 なことに 加 えて、8 ヵ 国 (ロシア、モンゴ<br />

ル、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド)と<br />

国 境 を 接 し、これら 周 辺 諸 国 との 経 済 交 流 のゲートウエーになり 得 るという 地 理 的 な 優 位<br />

性 を 持 つ。とりわけ 資 源 価 格 の 高 騰 を 受 けて 急 成 長 する 中 央 アジア 諸 国 との 中 継 貿 易 地 と<br />

しての 地 位 を 確 立 し、 急 速 な 経 済 発 展 を 遂 げている。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

<br />

北 西 部 の 国 境 地 域 にある 新 疆 ウイグル 自 治 区 の 面 積 は 約 164 万 平 方 キロ、 国 土 面 積 の 6<br />

分 の 1 余 りを 占 め、 行 政 区 の 中 で 最 大 だ。 人 口 は 2011 年 末 時 点 で 2,209 万 人 。47 民 族 が<br />

居 住 しており、うち 漢 民 族 は 約 4 割 、そのほかの 少 数 民 族 が 6 割 で、 少 数 民 族 の 大 半 をウ<br />

イグル 族 が 占 める。<br />

対 中 央 アジア 向 け 輸 出 の 増 加 などによって、 実 質 域 内 総 生 産 (GRP) 成 長 率 は 2003 年<br />

以 降 、リーマン・ショックの 影 響 を 受 けた 2009 年 を 除 き、2 ケタの 伸 びが 続 いている( 図<br />

1 参 照 )。2011 年 の 成 長 率 は 12.0%で、GRP は 6,574 億 5,400 万 元 に 達 し( 表 1 参 照 )、<br />

ドル 換 算 で 1,039 億 ドル(1 ドル=6.2381 元 、2011 年 平 均 レート)と、1,000 億 ドルを 突<br />

破 した。これはバングラデシュやベトナムの GDP に 相 当 する 水 準 だ。<br />

図 1 新 疆 ウイグル 自 治 区 の GRP と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

7,000<br />

6,000<br />

GRP<br />

伸 び 率<br />

11.2 11.4 10.9 11.0<br />

12.2<br />

11.0<br />

10.6<br />

12.0<br />

14.0<br />

12.0<br />

5,000<br />

4,000<br />

8.7 8.6<br />

8.2<br />

8.1<br />

10.0<br />

8.0<br />

3,000<br />

6.0<br />

2,000<br />

4.0<br />

1,000<br />

2.0<br />

0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

0.0<br />

( 出 所 ) 新 疆 統 計 年 鑑 各 年 版 、 新 疆 ウイグル 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

54<br />

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表 1 新 疆 ウイグル 自 治 区 の 主 要 経 済 指 標<br />

構 成 比<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

基 準 年 単 位 数 値<br />

- 平 方 キロ 1,637,829<br />

2011 万 人 2,209<br />

2011 % 43.5<br />

2011 % 12.0<br />

2011 億 元 6,575<br />

第 一 次 産 業 2011 % 17.3<br />

第 二 次 産 業 2011 % 50.0<br />

第 三 次 産 業 2011 % 32.7<br />

一 人 あたりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

財 政 収 入<br />

財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額<br />

2011 元 29,924<br />

2011 億 元 2,764<br />

2011 億 元 4,713<br />

2011 億 元 1,557<br />

2011 % 5.9<br />

2011 億 元 721<br />

2011 億 元 2,283<br />

2011 億 ドル 228<br />

2011 億 ドル 168<br />

2011 億 ドル 60<br />

2011 億 ドル 3<br />

2011 元 15,514<br />

2011 元 5,442<br />

( 出 所 ) 新 疆 ウイグル 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報 、2011 年 中 国 城 市 年 鑑<br />

ウルムチ 市 はローマ 帝 国 時 代 、 中 国 王 朝 による 東 西 交 易 の 拠 点 で、 古 来 シルクロードの<br />

要 所 の 1 つだった。ウルムチとは、モンゴル 語 で「 美 しい 牧 場 」を 意 味 するといわれるが、<br />

現 在 は 高 層 ビルが 林 立 する 都 市 になっている。<br />

GRP 以 外 の 主 要 経 済 指 標 をみると、 全 社 会 固 定 資 産 投 資 は 2008 年 から 前 年 比 20% 以 上<br />

の 増 加 を 維 持 し、2011 年 には 33.1% 増 の 4,712 億 7,700 万 元 (1 元 = 約 12.7 円 )となっ<br />

た。このうち 地 方 政 府 投 資 が 45.3% 増 の 3,533 億 5,700 万 元 と 大 幅 に 増 加 しており、75.0%<br />

のシェアを 占 めている。 業 種 別 では 不 動 産 開 発 投 資 が 49.0% 増 の 518 億 2,600 万 元 と 顕 著<br />

な 伸 びを 示 している。<br />

また、2011 年 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 は、17.5% 増 の 1,557 億 1,000 万 元 と 堅 調 に 増 加 し<br />

た。 業 種 別 では、 卸 ・ 小 売 業 が 17.8% 増 の 1,341 億 5,700 万 元 、ホテル・ 飲 食 業 が 27.2%<br />

増 の 215 億 5,300 万 元 だった。<br />

2011 年 の 貿 易 総 額 は 33.2% 増 の 228 億 2,200 万 ドルだった。うち、 輸 出 は 29.8% 増 の<br />

168 億 2,900 万 ドルで、 主 要 品 目 は 衣 類 ・ 同 付 属 品 、 機 械 ・ 電 機 製 品 、 靴 、 織 物 糸 ・ 織 物 ・<br />

同 製 品 。 輸 入 は 44.0% 増 の 59 億 9,300 万 ドルで、 主 要 品 目 は 原 油 、 機 械 ・ 電 機 製 品 、 鉱<br />

物 、 農 産 物 。<br />

対 内 直 接 投 資 については、2011 年 に 設 立 を 認 可 された 外 資 系 企 業 は 2.0% 減 の 50 社 と<br />

微 減 だったものの、 契 約 件 数 は 17.0% 増 の 69 件 、 実 行 額 は 41.0% 増 の 3 億 3,500 万 ドル<br />

と 大 幅 に 増 加 した。<br />

55<br />

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図 2 新 疆 ウイグル 自 治 区 の 固 定 資 産 投 資 額 と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

5,000 固 定 資 産 投 資<br />

33.1<br />

35.0<br />

4,500 伸 び 率<br />

30.0<br />

4,000<br />

25.1 25.2<br />

23.3<br />

3,500<br />

22.1<br />

25.0<br />

3,000<br />

18.1<br />

15.7 15.2 15.9 16.4 15.9<br />

2,500<br />

20.0<br />

2,000<br />

15.0<br />

1,500<br />

10.0<br />

1,000<br />

500<br />

5.0<br />

0<br />

0.0<br />

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 図 1 に 同 じ<br />

図 3 新 疆 ウイグル 自 治 区 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 )<br />

(%)<br />

1,800 社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

40.0<br />

1,600 伸 び 率<br />

33.8<br />

35.0<br />

1,400<br />

30.0<br />

21.5<br />

25.0<br />

1,200<br />

17.0<br />

17.5<br />

20.0<br />

1,000<br />

13.6 14.5<br />

13.1 12.5<br />

15.0<br />

800 7.8 8.5 9.0<br />

10.0<br />

600<br />

5.0<br />

400<br />

‐4.9<br />

0.0<br />

200<br />

‐5.0<br />

0<br />

‐10.0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 図 1 に 同 じ<br />

(2) 政 策 動 向<br />

< 中 央 アジア 5 ヵ 国 と 緊 密 な 経 済 関 係 に><br />

新 疆 ウイグル 自 治 区 の 経 済 発 展 の 背 景 には、 国 境 を 接 する 中 央 アジア(カザフスタン、<br />

キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンの 5 ヵ 国 )との 経 済 緊 密 化<br />

56<br />

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がある。 中 国 と 中 央 アジアとの 貿 易 の 約 5 割 は 同 自 治 区 経 由 で 行 われており、 貿 易 の 要 衝<br />

となっている。<br />

中 央 アジアは、 経 済 発 展 の 著 しい BRICs(ブラジル、ロシア、インド、 中 国 )4 ヵ 国 の<br />

うち、ブラジルを 除 く 3 ヵ 国 に 囲 まれている。また 石 油 ・ 天 然 ガスなどの 資 源 にも 恵 まれ、<br />

地 政 学 的 にも 極 めて 重 要 な 地 域 だ。 旧 ソ 連 崩 壊 に 伴 う 独 立 から 20 年 余 り 経 ち、 経 済 も 急<br />

速 に 回 復 している。2010 年 の 実 質 GDP 成 長 率 はカザフスタンが 7.3%、ウズベキスタン<br />

が 8.5%、トルクメニスタンが 9.2%などとなっている。<br />

また、 中 央 アジア 5 ヵ 国 の 人 口 は 合 計 で 6,300 万 人 を 超 えており、 市 場 としても 有 望 視<br />

されている。 最 近 では、ミニストップとセンコーが 2012 年 3 月 14 日 、カザフスタンで 小<br />

売 ・ 広 告 事 業 をしている RTS と、 同 国 でのコンビニエンスストアの 展 開 を 目 的 とした 合<br />

弁 事 業 会 社 設 立 に 合 意 したと 発 表 するなど、 日 系 企 業 の 関 心 も 高 まりつつある。<br />

中 央 アジアと 中 国 の 貿 易 は、2000 年 代 に 入 ってから 急 拡 大 している。 貿 易 総 額 は 2001<br />

~10 年 の 10 年 間 、 年 平 均 で 36.7%も 伸 びた。これは、 中 国 の 全 世 界 に 対 する 貿 易 総 額 の<br />

伸 び 率 (21.1%)を 大 きく 上 回 る。2011 年 には 前 年 比 31.7% 増 の 396 億 4,299 万 ドルに<br />

達 している(ちなみに、 日 本 と 中 央 アジアの 2011 年 の 貿 易 総 額 は 17 億 4,869 万 ドルで、<br />

この 22.7 倍 に 相 当 する)。<br />

貿 易 収 支 は 2002 年 までは 中 国 側 の 輸 入 超 過 が 続 いていたが、2003 年 以 降 は 輸 出 が 急 増<br />

し、 中 国 側 の 黒 字 に 転 換 した。しかし、2009 年 以 降 は 輸 入 の 伸 びが 輸 出 を 上 回 るようにな<br />

り、2011 年 は 中 国 側 の 赤 字 (24 億 7,022 万 ドル)となった。<br />

国 別 では、 中 央 アジア 5 ヵ 国 の 中 ではカザフスタンとの 貿 易 額 が 最 も 大 きく、2011 年<br />

は 輸 出 で 51.5%、 輸 入 で 73.1%のシェアを 占 めた。<br />

カザフスタン 向 けの 最 大 の 輸 出 品 目 は 繊 維 原 材 料 ・ 繊 維 製 品 で、 全 体 の 33.3%を 占 めた。<br />

うち 約 6 割 が 衣 類 ・ 同 付 属 品 だ。これに 続 くのが、 機 械 ・ 電 気 、AV 製 品 ・ 同 部 品 で、20.6%<br />

のシェア。うち 約 6 割 が 機 械 類 ・ 同 部 品 だ。<br />

他 方 、 最 大 の 輸 入 品 目 は 73.3%のシェアを 占 める 鉱 産 品 。うち、85.6%が 原 油 などの 鉱<br />

物 燃 料 、 鉱 物 油 ・ 同 製 品 だ。2 位 は 卑 金 属 ・ 同 製 品 で、シェア 16.7%。うち 67.5%が 銅 ・<br />

同 製 品 だ。 輸 入 は 鉱 産 品 と 卑 金 属 ・ 同 製 品 の 2 品 目 で 90.0%を 占 める。<br />

< 輸 出 の 牽 引 役 となる 巨 大 な 卸 売 市 場 ><br />

新 疆 ウイグル 自 治 区 の 対 中 央 アジア 輸 出 の 牽 引 役 として 大 きな 役 割 を 果 たしているのが<br />

卸 売 市 場 だ。ウルムチ 市 の 中 心 部 には、 自 治 区 を 代 表 する 企 業 グループ「 新 疆 華 凌 工 貿 ( 集<br />

団 )」( 華 凌 集 団 )が 設 立 したウルムチ 華 凌 総 合 卸 売 市 場 がある。 同 卸 売 市 場 は、100 ヘ<br />

クタール 余 りの 広 大 な 敷 地 の 中 に、 華 凌 国 際 商 貿 広 場 、 華 凌 貿 易 城 など 建 築 面 積 60 万 平<br />

方 メートル 余 りの 巨 大 なマーケットが 並 び、8,000 を 超 す 店 舗 が 入 居 している。 取 扱 商 品<br />

は 家 具 を 中 心 に、 建 材 、 家 電 、 日 用 品 など、ありとあらゆるものがそろっている。<br />

華 凌 集 団 によると、1 日 の 入 場 者 数 は 10 万 人 に 達 し、 売 り 上 げの 6~7 割 が 中 央 アジア<br />

からのバイヤーだという。 中 央 アジアでは 中 国 の 工 業 品 に 対 するニーズが 高 まっている。<br />

市 場 内 には 税 関 もあり、ワンストップで 輸 出 できるようになっている。 新 疆 ウイグル 自 治<br />

区 は 内 陸 部 のため、 沿 海 部 に 比 べて 競 争 が 厳 しくなく、 利 益 率 は 相 対 的 に 高 いという。<br />

また、 華 凌 国 際 商 貿 広 場 の 最 上 階 には 3 万 平 方 メートルの 室 内 展 示 場 も 設 置 されており、<br />

57<br />

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新 疆 ウイグル 自 治 区 各 州 ・ 市 の 特 産 品 が 展 示 されている。 華 凌 集 団 が 毎 年 同 展 示 場 で 開 く<br />

建 材 の 展 示 会 には、 中 央 アジアからも 数 多 くのバイヤーが 訪 れるという。<br />

また、 華 凌 貿 易 城 の 一 角 には 韓 国 企 業 がアンテナショップを 運 営 しており、アパレル、<br />

日 用 品 、 化 粧 品 、 建 材 、 食 品 などを 販 売 している。<br />

華 凌 国 際 商 貿 広 場 の 入 り 口 付 近<br />

華 凌 貿 易 城 の 全 景<br />

< 中 央 アジアとの 相 互 補 完 的 な 貿 易 が 拡 大 ><br />

中 国 と 中 央 アジアは 貿 易 面 で 強 い 相 互 補 完 関 係 を 持 つ。 中 国 は 急 速 な 経 済 成 長 に 伴 い、<br />

1993 年 には 石 油 の 純 輸 入 国 となり、この 後 は 資 源 確 保 に 向 けた 動 きを 活 発 化 させている。<br />

エネルギー 安 全 保 障 のために、 供 給 ルートを 多 様 化 するという 観 点 からも、 中 央 アジアの<br />

豊 富 な 資 源 は 極 めて 重 要 な 意 味 を 持 つ。<br />

一 方 、 急 速 な 経 済 成 長 に 加 えて、 資 源 価 格 の 高 騰 によって 購 買 力 の 増 している 中 央 アジ<br />

アは、 中 国 企 業 にとって 有 望 な 市 場 となっている。<br />

58<br />

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他 方 、 中 央 アジアにとっても、 中 国 から 輸 出 される 安 価 な 機 械 類 や 繊 維 製 品 、 家 電 など<br />

の 生 活 必 需 品 は、もはや 必 要 不 可 欠 だ。また、 非 ロシア 経 由 ルートによる 資 源 供 給 という<br />

点 でも 中 国 の 存 在 意 義 が 高 まっている。<br />

急 増 しているとはいえ、 中 国 の 貿 易 総 額 に 占 める 中 央 アジアのシェアは、2011 年 末 現 在 、<br />

1.8%にすぎず、 相 互 補 完 関 係 の 高 まりを 考 慮 すれば、さらなる 拡 大 が 期 待 されている。 新<br />

疆 ウイグル 自 治 区 は、 中 央 アジアと 中 国 との 貿 易 ・ 物 流 の 要 衝 としての 役 割 を 今 後 も 増 し<br />

ていくとみられる。<br />

< 中 央 アジア 以 外 とも 経 済 交 流 を 目 指 す><br />

新 疆 ウイグル 自 治 区 は、 中 央 アジア 以 外 の 諸 外 国 との 経 済 交 流 も 模 索 している。その 試<br />

みの 1 つが、 同 自 治 区 最 大 の 国 家 級 貿 易 投 資 博 覧 会 「 中 国 アジア 欧 州 博 覧 会 」だ。 同 博 覧<br />

会 は 新 疆 ウイグル 自 治 区 政 府 と 商 務 部 、 外 交 部 、 国 家 発 展 ・ 改 革 委 員 会 など 29 の 部 門 の<br />

共 催 により、2011 年 9 月 に 第 1 回 がウルムチ 市 で 開 催 された。<br />

博 覧 会 には 33 ヵ 国 が 出 展 し、バイヤーは 国 内 から 2 万 人 余 り、 海 外 から 4,000 人 余 り<br />

が 来 場 した。また、 会 期 中 の 入 場 者 数 は 31 万 5,808 人 、 契 約 額 は 55 億 6,000 万 ドルに 達<br />

した。 第 2 回 博 覧 会 は 2012 年 9 月 1~5 日 の 日 程 で、ウルムチ 市 で 開 催 される 予 定 だ。<br />

(3) 事 業 環 境<br />

< 物 流 インフラが 発 展 のボトルネック><br />

新 疆 ウイグル 自 治 区 の 事 業 環 境 面 のメリットとして、 第 1 に 豊 富 な 資 源 が 挙 げられる。<br />

「 中 国 統 計 年 鑑 (2011 年 版 )」によると、2010 年 の 鉱 産 物 資 源 の 埋 蔵 量 の 国 内 シェアは、<br />

天 然 ガスが 24.5%で 第 1 位 、 石 油 が 18.7%で 第 2 位 (いずれも 海 域 を 除 く)、 石 炭 は 5.3%<br />

で 第 3 位 など、 鉱 産 物 資 源 が 豊 富 だ。このほか、 風 力 、 太 陽 光 発 電 といった 再 生 可 能 エネ<br />

ルギー(RE)についても 発 展 のポテンシャルが 高 い。<br />

また、 農 産 物 も 豊 富 な 生 産 量 を 誇 り、2010 年 の 綿 花 の 国 内 シェアは 41.6%、ブドウは<br />

23.0%でともに 第 1 位 、ナシは 7.0%で 第 4 位 、 小 麦 は 5.4%で 第 6 位 。 畜 産 品 では、 羊 肉<br />

が 11.8%、 羊 毛 は 21.7%のシェアを 持 ち、ともに 内 モンゴル 自 治 区 に 次 いで 第 2 位 だ。 加<br />

えて、 観 光 資 源 にも 恵 まれており、2010 年 に 自 治 区 を 訪 れた 観 光 客 は、 国 内 3,038 万 人 、<br />

海 外 106 万 5,261 人 ( 香 港 、マカオ、 台 湾 を 含 む)に 達 した。<br />

第 2 は、 地 理 的 な 優 位 性 だ。 国 境 線 は 5,600 キロに 及 び、8 ヵ 国 (ロシア、モンゴル、<br />

カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド)と 接 し<br />

ている。これら 周 辺 諸 国 との 経 済 交 流 のゲートウエーになり 得 るだけでなく、とりわけ 中<br />

央 アジア 諸 国 との 中 継 貿 易 地 としての 地 位 を 確 立 している。<br />

第 3 は、 低 廉 な 労 働 力 だ。 沿 海 地 域 に 比 べて 人 件 費 が 相 対 的 に 低 く、 定 着 率 も 高 いとい<br />

われる。ただし、ウルムチ 市 では 経 済 の 急 成 長 に 伴 い、 人 件 費 も 急 速 に 上 昇 していること<br />

には 留 意 が 必 要 だ。<br />

他 方 、デメリットとしては 第 1 に、インフラが 発 展 のボトルネックになっていることが<br />

挙 げられる。 特 に、 物 流 面 でのインフラ 整 備 が 沿 海 地 域 に 比 較 して 遅 れている。 同 自 治 区<br />

から 沿 海 地 域 への 物 流 量 に 対 して、 沿 海 地 域 からの 同 自 治 区 への 物 流 量 が 少 なく、 結 果 的<br />

に 物 流 コストが 高 くなる 傾 向 が 強 い。ただし、 近 年 は 鉄 道 、 道 路 、 航 空 などの 物 流 網 の 整<br />

59<br />

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備 が 急 速 に 進 んでおり、 今 後 の 改 善 が 期 待 される。<br />

第 2 は、 対 外 開 放 の 遅 れ。 中 国 の 貿 易 ・ 投 資 に 占 めるシェアが 低 く、 対 外 開 放 が 遅 れて<br />

いるため、 現 地 政 府 も 沿 海 地 域 に 比 較 すると、 外 資 導 入 に 慣 れているとはいいにくい 面 も<br />

ある。<br />

第 3 は、 市 場 としての 限 界 だ。 人 口 が 2,209 万 人 (2011 年 )と 国 内 では 相 対 的 に 少 な<br />

く、 一 方 で、 国 内 最 大 の 面 積 を 持 つ 広 範 な 地 域 に 都 市 が 点 在 しているため、 面 としての 市<br />

場 開 拓 が 図 りにくい。また、ウルムチ 市 は 購 買 力 が 比 較 的 高 いものの、そのほかの 地 域 と<br />

の 経 済 格 差 が 大 きい。<br />

第 4 は、 民 族 上 の 問 題 だ。 民 族 別 ではウイグル 族 が 最 大 のシェアを 占 めており、 言 語 (ウ<br />

イグル 語 )や 宗 教 など、 生 活 習 慣 上 の 問 題 を 指 摘 する 向 きもある。<br />

< 進 出 日 系 企 業 はわずか 11 社 ><br />

中 央 アジアとの 貿 易 、 物 流 の 要 所 としての 役 割 が 高 まる 中 、 日 系 企 業 は 同 自 治 区 でどの<br />

ような 事 業 を 展 開 しているのか。「 新 疆 統 計 年 鑑 (2011 年 版 )」によると、2010 年 末 時<br />

点 で 同 自 治 区 に 進 出 している 外 資 系 企 業 は 499 社 あるが、そのうち 日 系 企 業 はわずか 11<br />

社 だ( 表 2 参 照 )。<br />

表 2 新 疆 ウイグル 自 治 区 の 外 資 系 企 業 数 (2010 年 )<br />

( 単 位 : 社 、%)<br />

国 ・ 地 域 名 企 業 数 シェア<br />

香 港 181 36.3<br />

CIS 88 17.6<br />

米 国 28 5.6<br />

台 湾 22 4.4<br />

韓 国 19 3.8<br />

カナダ 14 2.8<br />

シンガポール 14 2.8<br />

オーストラリア 12 2.4<br />

日 本 11 2.2<br />

トルコ 10 2.0<br />

その 他 100 20.0<br />

合 計 499 100.0<br />

( 出 所 ) 新 疆 統 計 年 鑑 (2011 年 版 )<br />

進 出 企 業 の 事 業 内 容 をみると、 第 1 に 資 源 ・ 農 産 物 活 用 型 の 事 例 がみられる。アルプス<br />

薬 品 工 業 は 1986 年 、ウルムチ 市 に 合 弁 企 業 、 新 彊 天 山 製 薬 工 業 を 設 立 、 漢 方 薬 ( 甘 草 )<br />

の 生 産 ・ 販 売 を 行 っている。<br />

サッポロビールと 豊 田 通 商 は 87 年 、 阜 康 市 阜 北 農 工 商 連 合 企 業 と 合 弁 でホップの 生 産 ・<br />

販 売 会 社 、 新 疆 三 宝 楽 (サッポロ) 農 業 科 技 開 発 をウルムチ 市 に 設 立 。 自 治 区 で 研 究 を 重<br />

ね、1997 年 には 農 薬 を 一 切 使 用 しないホップの 自 家 栽 培 に 成 功 している。<br />

第 2 に 同 自 治 区 の 市 場 を 狙 って 進 出 した 事 例 が 挙 げられる。 大 阪 の 繊 維 商 社 の 辰 野 は、<br />

地 下 商 店 街 建 設 ・テナント 賃 貸 の 新 疆 中 辰 地 下 城 開 発 を 設 立 し、1998 年 1 月 に 地 下 ファ<br />

60<br />

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ッション 名 品 街 「 辰 野 名 品 広 場 」をウルムチ 市 にオープンさせた。2007 年 5 月 に 第 3 期<br />

工 事 が 完 成 し、 現 在 建 築 面 積 1 万 3,000 平 方 メートル、 営 業 面 積 7,000 平 方 メートル 余 り<br />

の 売 り 場 に 110 店 が 入 居 している。 販 売 商 品 はアパレル、 化 粧 品 、かばん、 下 着 、 靴 、ア<br />

クセサリーなどで、25~40 歳 の 女 性 を 対 象 にしている。1 日 の 来 店 客 数 は 3,000 人 超 にも<br />

上 るという。<br />

辰 野 名 品 広 場 入 り 口<br />

辰 野 名 品 広 場 内<br />

また、 豊 田 通 商 は、 重 点 地 域 の 中 国 、アフリカ、アジアを 中 心 に 自 動 車 販 売 拠 点 を 積 極<br />

的 に 展 開 しており、 中 国 ではウルムチ 市 (2002 年 )をはじめ、 現 在 33 店 を 設 置 している。<br />

ウルムチでは 地 域 性 もあって、 政 府 や 企 業 向 けを 中 心 に、「ランドクルーザー」や「プラ<br />

ド」、「RAV4」の 販 売 が 好 調 だという。<br />

同 社 は、 完 成 車 の 販 売 では、「Sale( 販 売 )」「Spare part( 部 品 )」「Service(サー<br />

ビス)」「Survey( 情 報 フィードバック)」の 4 つが 一 体 となった 体 制 を 構 築 。サービス<br />

や 技 術 の 向 上 を 図 るために、スタッフの 育 成 にも 積 極 的 に 取 り 組 んでいる。<br />

61<br />

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第 3 に 同 自 治 区 をゲートウエーとして 活 用 し、 中 央 アジア 市 場 を 攻 める 動 きも 顕 在 化 し<br />

ている。 積 水 化 学 工 業 は 05 年 4 月 、 急 速 に 拡 大 している 中 国 の 水 環 境 インフラ 市 場 に 進<br />

出 するため、 中 国 最 大 手 の 強 化 プラスチック 複 合 管 (GRP 管 )メーカー、 新 疆 永 昌 積 水 複<br />

合 材 料 の 経 営 権 を 取 得 したと 発 表 した。<br />

経 営 権 取 得 の 狙 いは、1 両 社 が 製 品 、 技 術 の 強 みを 持 ち 寄 り、 市 場 優 位 性 をより 強 固 な<br />

ものにする、2 永 昌 社 の 販 売 実 績 と 営 業 力 をベースに、 中 国 国 内 で 重 点 的 な 地 域 戦 略 を 展<br />

開 し、 一 層 のシェア 拡 大 を 図 る、3 中 国 西 部 の 拠 点 をベースに 他 地 域 ( 中 央 アジアなど)<br />

への 輸 出 を 拡 大 する、ことにあった。<br />

同 社 は、 第 1 段 階 として 西 部 地 域 、 第 2 段 階 として 中 央 アジア(アゼルバイジャン、カ<br />

ザフスタン、ウズベキスタンなど)で 実 績 を 蓄 積 。 現 在 、 第 3 段 階 として、 同 自 治 区 でバ<br />

リューチェーン 展 開 (EPC 受 注 )に 注 力 している。<br />

< 中 央 アジア 市 場 へのゲートウエーとして 活 用 ><br />

新 疆 ウイグル 自 治 区 での 日 本 企 業 の 事 業 展 開 の 方 向 性 としては 以 下 の 3 点 が 考 えられる。<br />

第 1 は、 対 中 央 アジアの 戦 略 的 マーケティング 拠 点 としての 活 用 だ。 中 央 アジア 地 域 の<br />

投 資 環 境 は 十 分 に 整 備 されているとはいいにくく、 参 入 は 容 易 ではない。 他 方 、 同 自 治 区<br />

には 中 央 アジア 向 け 卸 売 市 場 があり、 数 多 くのバイヤーが 訪 れている。 従 って、 中 央 アジ<br />

アとのビジネスでは、まずこうした 卸 売 市 場 に 試 験 的 に 出 品 し、 自 社 製 品 のマーケティン<br />

グ 拠 点 として 活 用 、 貿 易 取 引 を 通 じたビジネスからスタートするのも 一 案 といえる。<br />

第 2 は、 対 中 央 アジア 向 け 模 倣 品 輸 出 の 取 り 締 まり 拠 点 としての 活 用 だ。 同 自 治 区 の 卸<br />

売 市 場 では、 日 本 製 を 含 む 外 国 製 品 の 模 倣 品 が 取 引 されており、いわば 中 央 アジア 向 けの<br />

模 倣 品 の 輸 出 拠 点 にもなっている。 従 って、 同 自 治 区 を 模 倣 品 輸 出 の 取 り 締 まり 拠 点 とし<br />

て 活 用 し、 模 倣 品 対 策 の 強 化 を 図 ることも 検 討 すべきだろう。<br />

第 3 は、 中 国 企 業 とのビジネスアライアンスを 通 じた 中 央 アジア 市 場 開 拓 の 可 能 性 の 模<br />

索 だ。 中 国 の 中 央 アジア 5 ヵ 国 との 貿 易 額 は、 日 本 の 22.7 倍 (2011 年 )だ。また、 長 い<br />

国 境 を 接 し、 古 くから 交 易 してきたために、 中 国 企 業 には 中 央 アジアビジネスの 経 験 やノ<br />

ウハウがあり、 幅 広 い 人 脈 を 持 っていることも 少 なくない。こうした 中 国 企 業 とアライア<br />

ンスを 組 んで 中 央 アジア 市 場 開 拓 の 可 能 性 を 模 索 することも、リスク 低 減 につながると 考<br />

えられる。<br />

( 真 家 陽 一 、 河 野 円 洋 )<br />

62<br />

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7. 甘 粛 省<br />

甘 粛 省 は 域 内 総 生 産 (GRP) 成 長 率 が 2003 年 以 降 9 年 連 続 2 ケタ 増 となるなど、 高 成<br />

長 を 続 けている。 中 西 部 の 交 通 ・ 物 流 ハブとしての 地 理 的 優 位 性 、 鉱 物 など 豊 富 な 天 然 資<br />

源 を 背 景 に、2 つの 経 済 圏 と 8 つの 支 柱 産 業 を 軸 としたさらなる 発 展 を 目 指 す。 同 省 での<br />

ビジネスには 低 廉 な 人 件 費 や 低 コストの 電 力 、 水 、ガスの 供 給 などのメリットがある。し<br />

かし、 市 場 として 限 定 的 なことや、 沿 海 部 から 離 れていることによる 物 流 面 での 問 題 など<br />

のデメリットもある。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

<br />

甘 粛 省 は 中 国 の 西 北 部 に 位 置 し、 北 端 はモンゴルと 国 境 を 接 する。 国 内 では 新 疆 ウイグ<br />

ル 自 治 区 、 青 海 省 、 内 モンゴル 自 治 区 、 四 川 省 、 寧 夏 回 族 自 治 区 、 陝 西 省 と 境 界 を 接 する。<br />

人 口 は 2011 年 末 時 点 で 2,564 万 人 、 面 積 は 約 45 万 平 方 キロで 全 国 第 7 位 、うち 78.2%<br />

を 山 地 ・ 丘 陵 地 帯 が 占 める( 表 1 参 照 )。<br />

表 1 甘 粛 省 の 主 要 経 済 指 標<br />

構 成 比<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

基 準 年 単 位 数 値<br />

- 平 方 キロ 454,774<br />

2011 万 人 2,564<br />

2011 % 37.15<br />

2011 % 12.5<br />

2011 億 元 5,020<br />

第 一 次 産 業 2010 % 13.5<br />

第 二 次 産 業 2010 % 50.3<br />

第 三 次 産 業 2010 % 36.2<br />

一 人 あたりGRP<br />

2011 元 n.a.<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース) 2011 億 元 2,071<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額 2011 億 元 4,180<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額 2011 億 元 1,618<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率 2011 % 5.9<br />

財 政 収 入<br />

2011 億 元 450<br />

財 政 支 出<br />

2011 億 元 1,790<br />

貿 易 総 額<br />

2011 億 ドル 88<br />

輸 出 総 額<br />

2011 億 ドル 22<br />

輸 入 総 額<br />

2011 億 ドル 66<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース) 2011 億 ドル 1<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額 2011 元 14,989<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額 2011 元 3,909<br />

( 出 所 ) 甘 粛 省 統 計 年 鑑 (2011 年 版 )、 甘 粛 省 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報 (2011 年 )、2011<br />

年 中 国 城 市 年 鑑<br />

省 経 済 は 着 実 に 成 長 している。2011 年 の GRP 総 額 は 5,020 億 元 (1 元 = 約 12.5 円 )、<br />

実 質 GRP 成 長 率 は 12.5%だった。 特 に 第 二 次 産 業 の 伸 び 率 が 15.8%と 全 体 を 押 し 上 げた。<br />

米 国 発 の 金 融 危 機 の 影 響 が 深 刻 化 した 2009 年 も 含 め、9 年 連 続 で 2 ケタ 成 長 を 遂 げた( 図<br />

1 参 照 )。<br />

63<br />

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図 1 甘 粛 省 の GRP と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

6,000<br />

12.3<br />

9.7 9.8 9.9 10.7 11.5 11.8 11.5<br />

11.8 12.5 14.0<br />

GRP<br />

伸 び 率<br />

5,000<br />

10.1 12.0<br />

10.3<br />

10.0<br />

4,000<br />

8.0<br />

3,000<br />

6.0<br />

2,000<br />

4.0<br />

1,000<br />

2.0<br />

0.0<br />

0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 甘 粛 発 展 年 鑑 各 年 版 、2011 年 甘 粛 省 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 は 前 年 比 40.2% 増 の 4,180 億 元 で、 伸 び 率 は 2007 年 以 来 、 一 貫 し<br />

て 20%を 超 えている。 社 会 消 費 品 小 売 総 額 は 18.2% 増 の 1,618 億 元 となった。うち、 都<br />

市 部 が 17.8% 増 の 1,293 億 元 、 農 村 部 が 19.8% 増 の 325 億 元 だった。<br />

図 2 甘 粛 省 の 固 定 資 産 投 資 額 と 伸 び 率 の 推 移<br />

( 億 元 ) (%)<br />

42.9<br />

4,500<br />

40.2 45.0<br />

固 定 資 産 投 資<br />

4,000<br />

36.2 40.0<br />

伸 び 率<br />

3,500<br />

32.5<br />

35.0<br />

3,000<br />

27.9<br />

30.0<br />

2,500<br />

25.0<br />

2,000<br />

17.2<br />

14.5 15.4 15.7<br />

20.0<br />

13.9 13.8<br />

1,500<br />

15.0<br />

1,000<br />

10.0<br />

500<br />

5.0<br />

0<br />

0.0<br />

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 図 1 に 同 じ<br />

64<br />

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図 3 甘 粛 省 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 の 推 移<br />

( 億 元 )<br />

(%)<br />

1,800<br />

25.0<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

1,600<br />

19.8<br />

伸 び 率<br />

1,400<br />

17.9 18.2 20.0<br />

17.1<br />

13.8<br />

12.9<br />

14.3 15.6<br />

1,200<br />

15.0<br />

1,000<br />

800 9.4 9.0 9.6 9.5<br />

10.0<br />

600<br />

400<br />

5.0<br />

200<br />

0<br />

0.0<br />

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011<br />

( 出 所 ) 図 1 に 同 じ<br />

対 外 貿 易 は 輸 出 が 33.4% 増 の 21 億 8,500 万 ドルで、 主 要 品 目 はニッケル、コバルト、<br />

フェロシリコン、りんご 果 汁 、ベアリング。 輸 出 相 手 先 別 のシェアは 米 国 (15.3%)、 韓<br />

国 (10.7%)、 日 本 (6.0%)、 香 港 (4.8%)、ドイツ(3.6%)など。 輸 入 は 14.4% 増 の<br />

65 億 7,900 万 ドルで、 主 要 品 目 は 銅 、ニッケル、 鉄 鉱 、 亜 鉛 、コバルト。 輸 入 相 手 先 別 の<br />

シェアはオーストラリア(21.3%)、チリ(19.5%)、 米 国 (2.4%)などとなっている。<br />

対 内 直 接 投 資 の 契 約 件 数 は 前 年 と 変 わらず 28 件 、 実 行 額 は 48.1% 減 の 7,000 万 ドルだ<br />

った。 甘 粛 省 政 府 によると、2011 年 2 月 末 時 点 の 進 出 日 系 企 業 数 は 登 記 ベースで 83 社 と<br />

なっているが、 実 際 に 企 業 活 動 を 行 っているのは 11 社 にとどまっているという。<br />

事 例 としては、 建 設 コンサルタント 会 社 のアーキジオ( 本 社 : 富 山 県 高 岡 市 )が 2004<br />

年 4 月 、 蘭 州 扶 桑 緑 化 技 術 に 出 資 している。<br />

(2) 政 策 動 向<br />

< 一 次 産 業 から 三 次 産 業 まで 総 合 的 に 底 上 げ><br />

省 政 府 は、 産 業 全 体 の 発 展 構 想 のスローガンとして「 一 二 三 次 産 業 整 体 提 昇 」を 打 ち 出<br />

している。 経 済 全 体 の 発 展 状 況 に 立 脚 し、 経 済 構 造 の 転 換 と 産 業 のレベルアップを 通 じ、<br />

伝 統 産 業 の 付 加 価 値 向 上 、 新 興 産 業 の 発 展 により、 第 一 次 から 第 三 次 産 業 までの 総 体 的 な<br />

水 準 向 上 を 目 指 すものだ。<br />

このスローガンの 下 、 第 一 次 産 業 は 地 勢 、 資 源 面 の 優 位 性 を 生 かした 産 業 化 の 推 進 、 第<br />

二 次 産 業 は 伝 統 産 業 について 技 術 開 発 、 生 産 規 模 拡 大 、 産 業 チェーンの 延 伸 による 付 加 価<br />

値 の 向 上 、 第 三 次 産 業 は 物 流 、 金 融 、 保 険 、コンベンション 産 業 など 現 代 サービス 業 の 発<br />

展 をそれぞれ 目 指 す。<br />

また、スローガンを 具 体 的 に 実 行 するため、 省 政 府 は 蘭 州 市 を 中 心 とした 2 つの 経 済 圏 、<br />

8 つの 支 柱 産 業 を 定 めた。<br />

65<br />

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経 済 圏 の 1 つ 目 は「 蘭 州 新 区 」、「 蘭 州 国 家 高 新 技 術 産 業 開 発 区 」、「 蘭 州 経 済 区 」の<br />

3 つの 区 と 8 つの 県 ・ 区 からなる「3+8 プレート 経 済 圏 」、2 つ 目 は 蘭 州 市 、 白 銀 市 と 周<br />

辺 都 市 からなる「 蘭 白 都 市 経 済 圏 」だ。<br />

他 方 、 支 柱 産 業 として 設 定 されたのは、 石 油 化 学 、 非 鉄 金 属 、 設 備 製 造 、エネルギー・<br />

新 エネルギー、 戦 略 的 新 興 産 業 、 現 代 サービス 業 、 文 化 ・ 観 光 、 農 産 品 加 工 の 8 産 業 だ。<br />

< 発 展 構 想 の 中 心 は 蘭 州 新 区 など 3 区 ><br />

「3+8 プレート 経 済 圏 」の 中 でも「 蘭 州 新 区 」、「 蘭 州 国 家 高 新 技 術 産 業 開 発 区 」、「 蘭<br />

州 経 済 技 術 開 発 区 」の 3 区 が 発 展 構 想 の 中 心 になる。「 蘭 州 新 区 」は「 再 造 蘭 州 」のスロ<br />

ーガンの 下 、 蘭 州 市 から 60 キロ 離 れた 地 域 に 建 設 されている。 計 画 面 積 は 806 平 方 キロ、<br />

中 心 区 は 460 平 方 キロで 省 内 最 大 の 空 港 を 備 える 予 定 だ。<br />

区 内 は「 農 業 ・ 生 態 建 設 区 」、「 中 心 発 展 区 」、「 生 態 保 護 区 」、「 産 業 総 合 発 展 区 」<br />

からなり、 中 心 発 展 区 は 総 合 保 税 区 など 3 つに 分 かれる。 省 政 府 は 同 区 を「 戦 略 的 新 興 産<br />

業 、ハイテク 産 業 および 循 環 経 済 の 集 積 地 として、 国 家 経 済 構 造 の 転 換 および 東 部 ・ 中 部<br />

地 域 からの 設 備 製 造 業 の 移 転 地 、 伝 統 的 産 業 と 現 代 サービス 業 の 拡 大 地 として、 西 北 地 区<br />

の 交 通 ・ 物 流 ハブとする」と 位 置 付 けている。<br />

また、 区 内 の 重 点 産 業 として、 戦 略 的 新 興 産 業 、 石 油 化 学 、 設 備 製 造 、 新 素 材 、バイオ・<br />

医 薬 、 現 代 化 農 業 、 現 代 物 流 を 挙 げている。 同 区 は 2015 年 までに 基 本 設 備 を 整 え、2020<br />

年 には 域 内 総 生 産 (GRP)1,000 億 元 、 人 口 50 万 人 以 上 を 目 標 としている。<br />

「 蘭 州 国 家 高 新 技 術 産 業 開 発 区 」は 1991 年 3 月 に 建 設 を 開 始 、2011 年 には 区 域 が 拡 張 さ<br />

れ、 総 面 積 34 平 方 キロから 128 平 方 キロに 拡 大 した。 現 在 1,300 社 が 入 居 しており、う<br />

ちハイテク 企 業 は 138 社 で、 省 内 ハイテク 企 業 の 70.4%を 占 める。<br />

「 蘭 州 経 済 技 術 開 発 区 」は 1993 年 に 建 設 が 開 始 され、2002 年 に 国 家 級 の 経 済 技 術 開 発 区<br />

となった。 総 面 積 87 平 方 キロ。コカ・コーラ、 中 国 石 油 、 華 能 集 団 、 雪 花 ビール、 九 州<br />

通 医 薬 、 莫 高 酒 業 などが 投 資 している。 甘 粛 農 業 大 学 、 蘭 州 交 通 大 学 、 西 北 師 範 大 学 、 甘<br />

粛 農 業 科 学 院 、 甘 粛 社 会 科 学 院 など、30 以 上 の 教 育 機 関 ・ 研 究 所 があり、3 万 人 近 い 科 学<br />

技 術 人 材 を 擁 する。 航 空 宇 宙 産 業 、 精 密 加 工 、 新 エネルギー、 新 素 材 、 旅 行 、 非 鉄 金 属 冶<br />

金 、 石 炭 工 業 などが 主 要 産 業 だ。<br />

(3) 事 業 環 境<br />

< 周 辺 地 域 をつなぐ 交 通 ・ 物 流 ハブの 役 割 ><br />

省 都 の 蘭 州 市 は、 周 辺 の 省 ・ 自 治 区 の 交 通 ・ 物 流 ハブとしての 優 位 性 を 持 つ。 蘭 州 市 と<br />

ほかの 地 域 を 結 ぶ 主 要 鉄 道 路 線 としては、 蘭 渝 鉄 道 ( 蘭 州 市 ~ 重 慶 市 )、 蘭 成 鉄 道 ( 蘭 州<br />

市 ~ 四 川 省 成 都 市 )、 隴 海 鉄 道 ( 江 蘇 省 連 雲 港 市 ~ 蘭 州 市 )、 蘭 新 鉄 道 ( 蘭 州 市 ~ 新 疆 ウ<br />

イグル 自 治 区 ウルムチ 市 )、 蘭 新 鉄 道 第 2 路 線 、 蘭 青 鉄 道 ( 蘭 州 市 ~ 青 海 省 西 寧 市 )、 包<br />

蘭 鉄 道 ( 内 モンゴル 自 治 区 包 頭 市 ~ 蘭 州 市 )がある。また、 蘭 州 西 貨 物 駅 は 西 北 地 域 で 最<br />

大 規 模 を 誇 り、 最 新 技 術 を 導 入 したコンテナ 集 積 地 となっている( 表 2 参 照 )。<br />

高 速 道 路 は 蘭 州 市 ~ 西 寧 市 、 蘭 州 市 ~ 銀 川 市 ( 寧 夏 回 族 自 治 区 )など 5 路 線 が 開 通 して<br />

いる。 空 路 は 蘭 州 中 川 空 港 から 国 内 30 以 上 の 都 市 に 直 行 便 があり、 海 外 へはシンガポー<br />

ル、 香 港 へ 旅 行 用 チャーター 便 が 発 着 。10 年 の 貨 物 取 扱 量 は 2 億 9,000 万 トンに 達 した。<br />

66<br />

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表 2 甘 粛 省 と 周 辺 都 市 を 結 ぶ 主 要 交 通 網<br />

主 要 鉄 道 路 線<br />

主 要 高 速 道 路<br />

蘭 渝 鉄 道 ( 蘭 州 市 ~ 重 慶 市 )<br />

蘭 成 鉄 道 ( 蘭 州 市 ~ 四 川 省 成 都 市 )<br />

隴 海 鉄 道 ( 江 蘇 省 連 運 港 市 ~ 蘭 州 市 )<br />

蘭 新 鉄 道 ( 蘭 州 市 ~ 新 疆 ウイグル 自 治 区 ウルムチ 市 )<br />

蘭 新 鉄 道 第 二 路 線<br />

蘭 青 鉄 道 ( 蘭 州 ~ 青 海 省 西 寧 市 )<br />

包 蘭 鉄 道 ( 内 モンゴル 自 治 区 包 頭 市 ~ 蘭 州 市 )<br />

蘭 州 市 ~ 青 海 省 西 寧 市 、 蘭 州 市 ~ 寧 夏 回 族 自 治 区 銀 川<br />

市 など 周 辺 都 市 をつなぐ 高 速 道 路 が5 路 線 開 通 。<br />

蘭 州 中 川 空 港 からは 国 内 30 以 上 の 都 市 に 直 行 便 がありシ<br />

主 要 空 路<br />

ンガポール、 香 港 へ 旅 行 用 チャーター 便 が 発 着 。<br />

( 出 所 ) 蘭 州 投 資 指 南 (2011)、 蘭 州 市 政 府 へのヒアリング<br />

< 豊 富 な 天 然 資 源 ><br />

甘 粛 省 が 持 つもう 1 つの 優 位 性 は、 豊 富 な 天 然 資 源 だ。「 中 国 統 計 年 鑑 」(2011)によ<br />

ると、2010 年 の 国 内 埋 蔵 量 のシェアは、クロムが 28.2%(125 万 トン)で 第 2 位 、 亜 鉛<br />

が 11.7%(380 万 トン)で 第 3 位 、バナジウムが 7.2%(90 万 トン)で 第 4 位 、 鉛 が 6.6%<br />

(84 万 トン)で 第 5 位 などとなっている。また、 蘭 州 市 の 年 間 平 均 日 照 時 間 は 約 2,651<br />

時 間 に 達 し、 全 国 主 要 31 都 市 の 中 で 5 番 目 に 長 く、 太 陽 光 発 電 にも 優 位 性 を 持 つ。<br />

また、「 甘 粛 発 展 年 鑑 」(2011)によると、 風 力 資 源 量 は 第 5 位 で、2 億 3,700 万 キロ<br />

ワットの 発 電 が 可 能 だ。そのほかに 漢 方 薬 の 材 料 も 豊 富 で、 省 内 では 野 生 のものを 含 める<br />

と 9,500 種 の 薬 材 があり、 国 内 生 産 量 は 国 内 第 2 位 。うち 450 種 については 商 業 用 に 生 産<br />

されており、トウキ、ヒカゲツルニンジンは 海 外 へも 輸 出 されている。<br />

< 人 件 費 コスト、 電 力 供 給 でメリット><br />

日 系 企 業 による 同 省 での 事 業 展 開 の 方 向 性 としては、 高 い 技 術 を 用 いて、 鉱 物 など 天 然<br />

資 源 を 精 練 ・ 加 工 し、 交 通 網 を 利 用 して 内 陸 各 地 へ 販 売 することが 考 えられる。また、 太<br />

陽 光 ・ 風 力 発 電 などへの 投 資 も 現 地 政 府 の 方 針 と 一 致 する。<br />

同 省 でのビジネス 上 のメリットとしては、 第 1 に 低 廉 な 労 働 力 だ。 人 件 費 は、 平 均 賃 金<br />

が 2 万 9,096 元 (2010 年 )と 沿 海 部 ( 北 京 6 万 5,158 元 、 上 海 6 万 6,115 元 、 広 東 4 万<br />

432 元 )に 比 べて 3~5 割 も 安 価 だ。また「 蘭 州 経 済 技 術 開 発 区 」には 3 万 人 近 い 科 学 技<br />

術 人 材 がいるなど、ワーカーだけでなく 高 い 技 術 レベルの 人 材 の 確 保 も 期 待 できる。<br />

第 2 に 低 コストの 電 力 ・ガス・ 水 の 供 給 がある。 火 力 、 水 力 、 風 力 、 太 陽 光 いずれの 発<br />

電 資 源 も 豊 富 なため、 電 力 は 安 価 で 安 定 した 供 給 が 可 能 だ。<br />

第 3 に 外 資 系 企 業 の 進 出 が 少 ないこともあり、 現 地 政 府 は 蘭 州 新 区 などの 開 発 区 への 外<br />

資 系 企 業 の 導 入 に 積 極 的 で、 地 元 政 府 と 良 好 な 関 係 を 構 築 しやすい。<br />

<br />

デメリットとしては、まず 沿 海 部 までの 距 離 がある。 江 蘇 省 連 雲 港 市 まで 隴 海 鉄 道 で 直<br />

接 結 ばれているものの、 距 離 は 1,759 キロもあり、 沿 海 地 域 に 比 べ 輸 送 時 間 ・ 物 流 コスト<br />

の 面 で 劣 る。<br />

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第 2 に 市 場 規 模 が 限 定 的 なことだ。そもそも 人 口 が 2,564 万 人 と 少 ないことに 加 えて、<br />

2011 年 の 甘 粛 省 の 都 市 部 住 民 1 人 当 たり 平 均 可 処 分 所 得 は 1 万 4,989 元 で、31 の 省 ・ 自<br />

治 区 ・ 直 轄 市 で 最 下 位 、 平 均 消 費 支 出 は 1 万 1,189 元 で 29 位 にとどまっている。ただし、<br />

今 後 の 交 通 網 の 発 展 に 伴 い、 周 辺 地 域 が 甘 粛 省 の 商 圏 に 入 ってくることも 考 えられるため、<br />

市 場 としての 潜 在 性 が 期 待 されている。<br />

蘭 州 市 内 のショッピングセンター<br />

蘭 州 市 内 の 町 並 み<br />

( 河 野 円 洋 )<br />

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8. 寧 夏 回 族 自 治 区<br />

寧 夏 回 族 自 治 区 は、 東 部 沿 海 地 域 に 比 べると 経 済 の 発 展 は 遅 れているが、 石 炭 などの 資<br />

源 が 豊 富 という 優 位 性 もある。また、イスラム 教 を 信 仰 する 少 数 民 族 の 回 族 が 多 いという<br />

特 色 を 生 かし、イスラム 文 化 を 絡 めた 発 展 の 方 向 性 を 打 ち 出 している。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

< 人 口 の 3 分 の 1 が 回 族 ><br />

中 国 の 北 西 部 に 位 置 する 寧 夏 回 族 自 治 区 は、 内 モンゴル 自 治 区 、 甘 粛 省 、 陝 西 省 と 接 し、<br />

面 積 は 5 万 1,954 平 方 キロと、31 省 ・ 自 治 区 ・ 直 轄 市 の 中 では 5 番 目 に 小 さく、 日 本 の 北<br />

海 道 の 約 8 割 だ。 人 口 も 639 万 人 と、チベット 自 治 区 、 青 海 省 に 次 いで 少 ない。 最 も 多 い<br />

のは 漢 族 だが、イスラム 教 を 信 仰 する 少 数 民 族 の 回 族 が 人 口 の 約 3 分 の 1 を 占 める。その<br />

ほかには 満 州 族 、モンゴル 族 、 朝 鮮 族 など 33 の 少 数 民 族 が 暮 らす。<br />

「 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 と 社 会 発 展 統 計 公 報 」(2012 年 3 月 15 日 発 表 、 以 下 、 統 計 公<br />

報 )によると、2011 年 の 自 治 区 の 実 質 域 内 総 生 産 (GRP) 成 長 率 は 12.0%と、2000 年 か<br />

ら 12 年 続 けて 2 桁 成 長 を 続 けている( 図 1 参 照 )。<br />

表 1 寧 夏 回 族 自 治 区 の 主 要 経 済 指 標<br />

構 成 比<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

基 準 年 単 位 数 値<br />

- 平 方 キロ 51,954<br />

2011 万 人 639<br />

2011 % 49.8<br />

2011 % 12.0<br />

2011 億 元 2,061<br />

第 一 次 産 業 2011 % 8.9<br />

第 二 次 産 業 2011 % 52.2<br />

第 三 次 産 業 2011 % 38.9<br />

一 人 あたりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

財 政 収 入<br />

財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額<br />

2011 元 32,392<br />

2011 億 元 724<br />

2011 億 元 1,648<br />

2011 億 元 478<br />

2011 % 6.3<br />

2011 億 元 220<br />

2011 億 元 711<br />

2011 億 ドル 23<br />

2011 億 ドル 16<br />

2011 億 ドル 7<br />

2011 億 ドル 2<br />

2011 元 17,579<br />

2011 元 5,410<br />

( 出 所 ) 寧 夏 回 族 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 と 社 会 発 展 統 計 公 報 、2011 年 中 国 城 市 年 鑑<br />

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図 1 寧 夏 回 族 自 治 区 の GRP の 推 移<br />

( 出 所 ) 国 家 統 計 局<br />

しかし、1 人 当 たり GRP は 3 万 2,392 元 (1 元 = 約 12.5 円 )、 都 市 部 住 民 1 人 当 たり<br />

可 処 分 所 得 額 は 1 万 7,579 元 、 農 村 住 民 1 人 当 たり 純 収 入 額 は 5,410 元 と、 全 国 平 均 (そ<br />

れぞれ 2 万 1,810 元 、6,977 元 )の 約 8 割 だ。<br />

ほかの 地 域 に 比 べると、 経 済 の 発 展 段 階 は 低 いが、 最 近 の 経 済 成 長 は 比 較 的 速 く、2011<br />

年 の 全 社 会 固 定 資 産 投 資 額 は 前 年 比 12.5% 増 の 1,648 億 元 、 社 会 消 費 品 小 売 総 額 は 18.3%<br />

増 の 478 億 元 となった。 産 業 別 では、 第 一 次 産 業 、 第 二 次 産 業 、 第 三 次 産 業 のシェアがそ<br />

れぞれ 8.9%、52.2%、38.9%となっており、 中 国 全 体 の 10.1%、46.8%、43.1%と 比 較<br />

すると、 第 二 次 産 業 のシェアがやや 大 きい。<br />

図 2 寧 夏 回 族 自 治 区 の 固 定 資 産 投 資 額 の 推 移<br />

( 出 所 ) 国 家 統 計 局<br />

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消 費 市 場 としてみた 場 合 、 区 都 の 銀 川 市 の 人 口 は 2010 年 末 時 点 で 203 万 人 と、 比 較 的<br />

小 規 模 だ。また、 自 治 区 都 市 部 住 民 の 可 処 分 所 得 や 農 村 住 民 の 純 収 入 は 全 国 平 均 の 約 8 割<br />

で、 市 場 規 模 はまだ 小 さい。<br />

図 2 寧 夏 回 族 自 治 区 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 の 推 移<br />

( 出 所 ) 国 家 統 計 局<br />

商 業 施 設 やマンションの 建 設 が 急 速 に 進 む 区 都 銀 川 市<br />

(2) 政 策 動 向<br />

< 農 業 :クコが 特 産 、ワイン 原 料 のブドウにも 注 力 ><br />

寧 夏 には、「 天 下 黄 河 富 寧 夏 」( 天 下 の 黄 河 が 寧 夏 を 富 ます)という 言 葉 がある。 寧 夏<br />

は 内 陸 部 のため 乾 燥 しており、 南 部 は 砂 漠 地 帯 になっているが、 黄 河 の 上 流 域 に 位 置 して<br />

いる。また、 黄 河 はさらに 上 流 域 の 青 海 省 、 甘 粛 省 では 急 流 だが、 寧 夏 での 流 れは 緩 やか<br />

だ。そのため、 寧 夏 は 年 間 降 水 量 が 300 ミリに 達 しないにもかかわらず、 古 くから 黄 河 の<br />

灌 漑 を 利 用 して 盛 んに 農 業 が 行 われてきた。<br />

寧 夏 の 耕 地 面 積 は 1,650 万 ムー(1 ムー=666.7 平 方 メートル)で、そのうち 灌 漑 可 能<br />

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な 土 地 は 690 万 ムー。 寧 夏 の 人 口 は 約 639 万 人 なので、1 人 当 たりの 灌 漑 可 能 面 積 は 1 ム<br />

ー 以 上 になる。 食 糧 の 生 産 量 は 360 万 トンで、1 人 当 たりの 食 糧 生 産 量 は 500 キロ 以 上 に<br />

なり、ほかの 地 域 にも 移 出 している。<br />

また、 寧 夏 の 地 理 的 条 件 を 利 用 した 特 産 物 としては、 栄 養 価 が 高 く、 食 用 や 薬 用 に 利 用<br />

されるクコ( 枸 杞 )が 有 名 だ。 寧 夏 産 のクコの 品 質 は 世 界 的 にも 水 準 が 高 いといわれる。<br />

ワイン 用 のブドウの 生 産 も 盛 んだ。 西 北 部 に 位 置 する 賀 蘭 山 の 麓 はワイン 用 のブドウを 生<br />

産 するのに 適 した 土 地 で、 寧 夏 は 中 国 のボルドーともいわれ、 賀 蘭 山 のワインは 国 内 外 の<br />

コンテストでも 高 い 評 価 を 受 けている。 自 治 区 は 今 後 、 賀 蘭 山 の 麓 に、100 万 ムーのワイ<br />

ン 用 ブドウ 畑 、10 の 特 色 あるワイン 街 、100 ヵ 所 のワイナリー 村 を 開 発 する 計 画 だ( 注 )。<br />

そのほか、ジャガイモ、スイカ、ナツメの 生 産 が 盛 んだ。 畜 産 では 羊 の 飼 育 が 盛 んで、<br />

食 肉 用 のほか、 白 宝 と 呼 ばれる 幼 い 羊 の 皮 を 生 産 している。 白 宝 は 高 級 品 で、マフラーな<br />

どに 使 用 される。<br />

< 工 業 : 豊 富 な 石 炭 に 根 ざした 産 業 が 発 展 ><br />

工 業 は 豊 富 な 資 源 、 特 に 石 炭 やケイ 素 などを 生 かして 成 長 している。 寧 夏 には 良 質 な 石<br />

炭 があり、 埋 蔵 量 は 380 億 トン、1 年 間 の 生 産 能 力 は 7,000 万 トンに 上 る。 石 炭 は 主 に 発<br />

電 用 だが、 寧 夏 の 発 電 設 備 能 力 は 1,900 万 キロワットで、1 人 当 たりの 発 電 量 は 全 国 第 1<br />

位 だ。<br />

寧 夏 では 2003 年 7 月 から 寧 東 能 源 (エネルギー) 化 工 基 地 計 画 がスタートしており、<br />

鉱 物 資 源 開 発 、 石 炭 火 力 発 電 、 石 炭 化 学 工 業 を 推 進 している。 銀 川 市 街 地 から 基 地 中 心 ま<br />

で 約 42 キロ、 計 画 面 積 は 3,834 平 方 キロ。 基 地 内 には 7 つの 炭 鉱 があり、11 種 の 石 炭 が<br />

採 掘 できる。 埋 蔵 量 は 273 億 トンと 自 治 区 全 体 の 約 7 割 を 占 める。 現 在 は 発 電 量 の 87%<br />

が 寧 夏 で 使 用 されているが、 既 に 甘 粛 省 の 省 都 蘭 州 市 までの 送 電 網 が 整 備 されており、 今<br />

後 は 発 電 能 力 を 高 め、20 年 までには 発 電 量 の 半 分 を 華 北 、 華 東 地 域 に 送 電 する 計 画 だ。2007<br />

年 には 胡 錦 濤 国 家 主 席 も 基 地 を 訪 れており、 中 国 の 5 大 電 力 会 社 がすべて 進 出 していると<br />

いう。<br />

寧 夏 では 豊 富 な 電 力 を 利 用 して、アルミニウム 塊 、 合 金 鉄 の 精 錬 などが 行 われている。<br />

アルミの 精 錬 能 力 は 200 万 トン。 第 12 次 5 ヵ 年 規 画 (2011~15 年 ) 期 間 中 には、 精 錬 能<br />

力 を 300 万 トンにまで 高 めていく 計 画 で、 今 後 はアルミニウムの 精 密 加 工 分 野 も 発 展 させ<br />

ていきたい 意 向 だ。<br />

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稼 働 中 の 石 炭 火 力 発 電 所 ( 寧 東 能 源 化 工 基 地 )<br />

石 炭 化 学 工 業 にも 力 を 入 れている。プラスチックの 原 料 になる 石 炭 性 のオルフィンの 生<br />

産 量 を 今 後 200 万 トンまで 高 めていく 方 針 で、 既 に 50 万 トンの 生 産 設 備 が 稼 働 している。<br />

また、 石 炭 から 石 油 を 取 り 出 す 工 場 も 今 後 稼 働 させ、 第 12 次 5 ヵ 年 規 画 期 間 中 には 400<br />

万 トンまで 生 産 量 を 高 める 予 定 だ。<br />

化 学 肥 料 の 生 産 も 盛 んだ。 尿 素 の 生 産 量 は 100 万 トン。うち、 寧 夏 内 で 使 用 するのは 20<br />

万 トンで、 残 り 80 万 トンはほかの 地 域 に 移 出 している。<br />

このほか、 設 備 製 造 業 も 特 色 ある 産 業 だ。 日 本 のヤマザキマザックの 中 国 現 地 法 人 の 小<br />

巨 人 机 床 が 寧 夏 に 工 場 を 構 えているほか、 寧 夏 の 西 端 の 中 衛 市 にも、 工 作 機 械 工 場 が 集 積<br />

しており、 国 内 でも 技 術 的 に 進 んでいるという。 石 炭 掘 削 機 械 なども 地 域 の 特 色 が 出 てい<br />

る。このほかに、ベアリングも 生 産 している。カシミア 産 業 も 盛 んで、 寧 夏 は 全 国 のカシ<br />

ミア 生 産 量 の 20%を 占 めており、 関 連 産 業 も 盛 んだ。<br />

<br />

サービス 産 業 の 中 では、まず、 観 光 業 に 力 を 入 れていく 方 針 だ。 現 在 の 銀 川 市 にはかつ<br />

て「 西 夏 王 国 (1038~1227 年 )」の 都 があり、 現 在 でも 西 夏 王 陵 などの 歴 史 遺 産 がある。<br />

また、 寧 夏 は「 寧 夏 回 族 自 治 区 」の 名 称 のとおり、 中 国 で 唯 一 、 回 族 の 自 治 区 だ。 中 国<br />

で 最 も 回 族 が 集 住 する 地 域 で、 全 国 最 大 のイスラム 文 化 がある。 自 治 区 政 府 も、 従 来 から<br />

のエネルギー 分 野 での 優 位 性 のほか、ここ 数 年 は、 回 族 のイスラム 文 化 を 通 じた 観 光 業 や<br />

アラブ・イスラム 地 域 との 交 流 に 政 策 の 重 点 を 置 いており、 同 地 域 との 連 携 を 軸 とした 内<br />

陸 地 域 の 開 放 型 経 済 発 展 を 目 指 している。<br />

改 革 開 放 からこれまでの 30 年 は、 寧 夏 も 主 に 欧 米 、 日 本 、 韓 国 など 東 部 地 域 への 対 外<br />

開 放 を 展 開 してきた。しかし、これでは 東 部 沿 海 地 域 と 競 合 関 係 になってしまう 可 能 性 も<br />

否 めなかった。 今 後 は、 東 部 地 域 への 開 放 も 続 けていくが、 重 点 はイスラム 文 化 、アラビ<br />

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ア 語 を 使 う 西 部 地 域 への 開 放 にシフトさせる 意 向 を 示 している。<br />

中 央 政 府 も、 内 陸 地 域 の 開 放 性 経 済 を 発 展 させるとの 目 標 を 示 しており、 自 治 区 政 府 の<br />

方 針 は 中 央 政 府 の 方 針 とも 符 合 している。こうした 動 きを 具 体 化 させるため、2010、2011<br />

年 と 2 年 連 続 で 中 国 アラブ 経 済 貿 易 フォーラムが 寧 夏 で 開 催 された。2012 年 も 第 3 回 の<br />

継 続 開 催 を 予 定 している。 現 在 、 中 央 政 府 に 対 し、 中 国 アラブ 博 覧 会 の 実 施 を 申 請 してお<br />

り、 認 められれば、 中 国 北 東 アジア 博 覧 会 や 中 国 ・ASEAN 博 覧 会 と 並 ぶレベルの 博 覧 会<br />

への 成 長 を 目 指 す。<br />

そのほか、 中 央 政 府 に 対 し、 内 陸 開 放 性 経 済 特 区 の 申 請 も 行 っている。このほど 商 務 部<br />

の 調 査 団 が 寧 夏 を 訪 れ、 構 想 には 賛 成 だが、 名 称 は 内 陸 開 放 型 経 済 試 験 区 とするとの 見 解<br />

が 示 されたという。 内 陸 地 域 では、 新 疆 ウイグル 自 治 区 のカシュガルとホルゴスが 試 験 区<br />

として 既 に 認 可 されており、 試 験 区 では、5 年 間 の 所 得 税 免 税 措 置 と 土 地 建 設 用 地 の 規 制<br />

緩 和 に 向 けた 政 策 がとられている。 黄 河 周 辺 地 域 を 沿 黄 経 済 区 として 開 発 する 構 想 も 進 ん<br />

でいる。 黄 河 の 両 岸 に 濱 河 大 道 を 作 り、 緑 化 を 図 っていく 方 針 だ。<br />

自 治 区 内 にはモスク( 写 真 )や 清 真 (ハラル) 料 理 店 がいたるところにある<br />

(3) 事 業 環 境<br />

< 少 数 ながらも 日 系 企 業 が 活 躍 ><br />

統 計 公 報 によると、2011 年 末 時 点 で 寧 夏 回 族 自 治 区 に 進 出 している 外 資 系 企 業 は、 登 記<br />

ベースで 175 社 にとどまる。しかし、2011 年 の 自 治 区 への 対 内 直 接 投 資 額 は、 前 年 比 約<br />

1.5 倍 の 2 億 200 万 ドルと 急 増 している。 海 外 からの 直 接 投 資 は、1984 年 のカナダ 企 業 に<br />

よる 案 件 から 始 まった。 投 資 認 可 件 数 は 累 計 800 件 で 日 本 、 米 国 、カナダ、オーストラリ<br />

ア、 南 アフリカ 共 和 国 、マレーシアなど 30 ヵ 国 ・ 地 域 から 投 資 を 受 け 入 れている。 分 野<br />

別 では、 農 業 、 石 炭 、 製 造 業 、 非 鉄 金 属 、 卸 ・ 小 売 業 などで、 産 業 別 の 内 訳 をみると、 第<br />

一 次 産 業 分 野 への 投 資 が 12%、 第 二 次 産 業 が 53%、 第 三 次 産 業 が 35%となっており、 第<br />

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二 次 産 業 で 石 炭 など 自 治 区 の 資 源 を 生 かした 投 資 が 多 い。<br />

進 出 日 系 企 業 数 は 少 ないが、 事 業 を 成 長 ・ 拡 大 させている 企 業 もある。 主 な 進 出 事 例 と<br />

しては、 大 手 工 作 機 械 メーカーのヤマザキマザック( 本 社 : 愛 知 県 大 口 町 )が 2000 年 5<br />

月 、 銀 川 市 に 中 国 企 業 との 合 弁 会 社 、 小 巨 人 机 床 を 設 立 。2005 年 に 中 国 側 の 出 資 分 を 全 額<br />

買 い 取 り、 単 独 資 本 の 企 業 になった。 同 社 は 米 国 、 英 国 、シンガポール、 中 国 の 4 ヵ 所 に<br />

海 外 生 産 拠 点 を 開 設 している。 中 国 では 現 在 寧 夏 回 族 自 治 区 だけだが、2012 年 内 に 遼 寧 省<br />

大 連 市 にも 工 場 を 設 立 する 予 定 だ。<br />

また、 大 手 化 学 メーカー、クラレのグループ 会 社 クラレケミカル( 本 社 : 大 阪 市 )は 2004<br />

年 、 自 治 区 の 北 部 、 銀 川 市 から 車 で 約 1 時 間 の 距 離 にある 石 嘴 山 市 に 単 独 資 本 で 進 出 し、<br />

石 炭 を 原 料 にして 活 性 炭 を 製 造 している。<br />

自 治 区 は 良 質 な 石 炭 を 産 出 するため、 火 力 発 電 による 電 力 が 比 較 的 豊 富 だ。 黄 河 が 流 れ<br />

ているため、 流 域 では 水 資 源 も 豊 富 で、コストも 低 い。 一 方 、 外 資 誘 致 では、 銀 川 市 以 北<br />

の 地 域 は、 誘 致 するプロジェクトが 現 地 の 伸 ばすべき 産 業 の 方 向 性 と 合 致 しているかを 踏<br />

まえ、 選 別 される 傾 向 が 強 くなっている。 住 宅 などが 増 えてきたことから、 政 府 は 2008<br />

年 ごろから 都 市 部 近 辺 の 産 業 構 造 の 転 換 を 模 索 しており、 近 年 は 厳 しい 環 境 基 準 が 求 めら<br />

れている。エネルギーを 大 量 に 消 費 したり、 環 境 に 悪 影 響 を 与 えたりする 業 種 での 進 出 は<br />

難 しくなっていることに 要 注 意 だ。<br />

ワーカーは 従 来 、 陝 西 省 西 安 市 などからの 出 稼 ぎ 労 働 者 が 多 かったが、 近 年 は 地 元 出 身<br />

者 の 採 用 が 多 いという。しかし、 人 は 集 めにくく、 従 業 員 の 定 着 率 もそれほど 高 くはない。<br />

なお、 日 本 人 駐 在 員 は 単 身 赴 任 者 がほとんどだ。 日 本 食 を 提 供 する 飲 食 店 はない。<br />

< 島 根 県 との 交 流 が 盛 ん><br />

日 本 の 地 方 自 治 体 とは、1993 年 に 島 根 県 と 友 好 提 携 している。また、1994 年 に 石 嘴 山<br />

市 が 島 根 県 浜 田 市 と、2004 年 に 銀 川 市 が 島 根 県 松 江 市 と 友 好 提 携 している。 自 治 区 と 島 根<br />

県 との 友 好 提 携 のきっかけになったのは、1987 年 からの 寧 夏 大 学 と 島 根 大 学 による 農 業 分<br />

野 での 学 術 交 流 だ。 両 校 は 1997 年 には 交 流 協 定 を 締 結 、2004 年 には「 島 根 大 学 ・ 寧 夏 大<br />

学 国 際 共 同 研 究 所 」を 設 置 している。<br />

また、 寧 夏 は 2003 年 、 北 東 アジア 地 域 自 治 体 連 合 に 加 わった。 北 東 アジア 地 域 自 治 体<br />

連 合 は 北 東 アジア 地 域 の 交 流 ・ 協 力 の 促 進 、 共 同 発 展 と 世 界 平 和 への 寄 与 を 目 的 に、96 年<br />

に 設 立 された 自 治 体 による 国 際 組 織 。 中 国 の 6 つの 地 域 ( 黒 龍 江 省 、 山 東 省 、 河 南 省 、 寧<br />

夏 回 族 自 治 区 、 湖 北 省 、 湖 南 省 )、 日 本 の 10 府 県 ( 青 森 県 、 山 形 県 、 新 潟 県 、 富 山 県 、<br />

石 川 県 、 福 井 県 、 京 都 府 、 兵 庫 県 、 鳥 取 県 、 島 根 県 )、モンゴル、 韓 国 、ロシア、 北 朝 鮮<br />

の 計 6 ヵ 国 70 自 治 体 によって 構 成 される。2011 年 7 月 に 第 8 回 実 務 委 員 会 全 体 会 議 が 自<br />

治 区 で 開 催 され、2012 年 も 引 き 続 き 自 治 区 での 開 催 が 予 定 されている。<br />

< 西 部 地 域 への 開 放 に 重 点 ><br />

寧 夏 の 優 位 性 は、 石 炭 などエネルギー 原 材 料 の 豊 富 さと、 内 陸 の 開 放 型 経 済 発 展 の 2 点<br />

にあるといえる。しかし、 資 源 への 依 存 は、 省 エネルギーの 観 点 からは 大 きな 問 題 を 抱 え<br />

る。 中 国 の 第 11 次 5 ヵ 年 規 画 では、 単 位 GDP 当 たりのエネルギー 消 費 量 を 年 平 均 4%、<br />

第 12 次 5 ヵ 年 規 画 では 3%の 削 減 が 義 務 付 けられている。 一 方 で 寧 夏 の 単 位 GRP 当 たり<br />

75<br />

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のエネルギー 消 費 量 は 全 国 の 約 3 倍 になっており、 資 源 面 での 優 位 性 だけでは 持 続 可 能 な<br />

発 展 は 見 込 めない。<br />

そこで 内 陸 の 開 放 型 経 済 が 打 ち 出 されている。 全 方 位 的 な 開 放 となるが、 中 でも 重 点 と<br />

しているのが 西 部 地 域 (アラブ・イスラム 地 域 )への 開 放 だ。これまで 推 進 してきた 北 東<br />

アジア 地 域 との 経 済 交 流 に 加 え、イスラム 地 域 からの 観 光 客 や 長 期 滞 在 者 の 増 加 を 目 指 し<br />

ている。<br />

( 注 )「21 世 紀 経 済 報 道 」(2012 年 3 月 15 日 )によると、クコの 加 工 などを 手 掛 ける<br />

民 営 企 業 「 寧 夏 紅 枸 杞 産 業 集 団 」は、フランスのボルドーにあるワイン 醸 造 業 者 の 全 資 産<br />

を 取 得 したことを 明 らかにした。 買 収 対 象 はブドウ 園 、 醸 造 施 設 、 商 標 などで、 取 得 額 は<br />

1,000 万 ユーロ。 中 国 でワインの 輸 入 拡 大 を 図 るほか、クコ 入 り 果 実 酒 の 欧 州 輸 出 も 計 画<br />

しているという。<br />

( 鷲 北 弥 那 子 )<br />

76<br />

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9. 内 モンゴル 自 治 区<br />

内 モンゴル 自 治 区 は 中 国 の 北 部 に 位 置 し、モンゴル、ロシアと 国 境 を 接 する。 中 華 人 民<br />

共 和 国 建 国 前 の 1947 年 に 設 立 された 国 内 最 初 の 少 数 民 族 自 治 区 だ。 近 年 、 世 界 的 な 資 源<br />

価 格 の 高 騰 、 需 要 の 拡 大 もあり、 資 源 が 豊 富 な 同 自 治 区 の 経 済 は 大 きく 発 展 。 第 11 次 5<br />

ヵ 年 規 画 期 間 中 (2006~10 年 )の 平 均 成 長 率 は 17.6%に 達 した。 第 12 次 5 ヵ 年 規 画 期 間<br />

(2011~15 年 )に 入 り、 中 央 政 府 も 内 モンゴル 自 治 区 の 経 済 発 展 の 促 進 を 後 押 しする 姿<br />

勢 を 強 めている。 政 府 は 2011 年 5 月 、「 内 モンゴルの 経 済 社 会 の 良 好 で 速 い 発 展 のさらな<br />

る 促 進 に 関 する 若 干 の 意 見 」を 発 表 した。<br />

(1) 経 済 概 況<br />

<br />

自 治 区 の 面 積 は 118 万 3,000 平 方 キロと( 表 1 参 照 )、 日 本 の 3.1 倍 、 中 国 全 土 の 12.3%<br />

を 占 める。 東 西 方 向 に 約 2,400 キロの 幅 があり、ロシア・モンゴルとの 国 境 線 の 長 さは 4,221<br />

キロに 達 する。また、 国 内 では、 黒 龍 江 省 、 吉 林 省 、 遼 寧 省 、 河 北 省 、 山 西 省 、 陝 西 省 、<br />

寧 夏 回 族 自 治 区 、 甘 粛 省 と 境 を 接 している。<br />

2011 年 末 現 在 の 常 住 人 口 は 2,482 万 人 。 少 数 民 族 自 治 区 だが、 総 人 口 に 占 める 割 合 が 最<br />

も 大 きいのは 漢 族 で、2010 年 時 点 で 自 治 区 人 口 の 78.3%を 占 める。 次 いでモンゴル 族 が<br />

18.0%、 満 州 族 が 2.1%となっている。<br />

表 1 内 モンゴル 自 治 区 の 概 況 とマクロ 経 済 指 標<br />

項 目<br />

面 積<br />

常 住 人 口<br />

都 市 化 率<br />

実 質 GRP 成 長 率<br />

GRP 総 額<br />

構 成 比<br />

一 人 あたりGRP<br />

工 業 生 産 増 加 額 ( 付 加 価 値 ベース)<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 額<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額<br />

消 費 者 物 価 指 数 (CPI) 上 昇 率<br />

基 準 年 単 位 数 値<br />

- 平 方 キロ 1,183,000<br />

2011 年 万 人 2,482<br />

2011 年 % 56.6<br />

2011 年 % 14.3<br />

2011 年 億 元 14,246<br />

第 一 次 産 業 2011 年 % 9.2<br />

第 二 次 産 業 2011 年 % 56.8<br />

第 三 次 産 業 2011 年 % 34.0<br />

2011 年 元 57,515<br />

2011 年 億 元 7,159<br />

2011 年 億 元 10,900<br />

2011 年 億 元 3,937<br />

2011 年 % 5.6<br />

2011 年 億 元 1,357<br />

2011 年 億 元 2,989<br />

2011 年 億 ドル 119<br />

2011 年 億 ドル 47<br />

2011 年 億 ドル 73<br />

2011 年 億 ドル 38<br />

2011 年 元 20,408<br />

2011 年 元 5,508<br />

地 方 財 政 収 入<br />

地 方 財 政 支 出<br />

貿 易 総 額<br />

輸 出 総 額<br />

輸 入 総 額<br />

対 内 直 接 投 資 額 ( 実 行 ベース)<br />

都 市 部 住 民 1 人 あたり 可 処 分 所 得 額<br />

農 村 住 民 1 人 あたり 純 収 入 額<br />

( 出 所 ) 内 蒙 古 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

77<br />

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天 然 資 源 は 豊 富 だ。 自 治 区 発 展 改 革 委 員 会 の 資 料 によると、2010 年 現 在 、1 人 当 たりの<br />

草 原 ・ 森 林 ・ 耕 地 面 積 は、 全 国 31 省 ・ 直 轄 市 ・ 自 治 区 の 中 でトップ。また、2011 年 の 石<br />

炭 の 生 産 量 は 前 年 比 25.1% 増 の 9 億 7,926 万 トンで、 全 国 1 位 。 埋 蔵 量 でみると、 石 炭 、<br />

天 然 ガスは 全 国 2 位 、クロムは 全 国 3 位 となっている。そのほか、 農 業 ・ 牧 畜 が 盛 んで、<br />

羊 肉 ・ 羊 毛 ・カシミアや 牛 乳 ・ 乳 製 品 の 生 産 量 は 全 国 1 位 だ。<br />

< 第 三 次 産 業 への 投 資 が 急 増 ><br />

2011 年 の 域 内 総 生 産 (GRP) 総 額 は 1 兆 4,246 億 元 (1 元 = 約 12.5 円 )、 同 年 の 実 質<br />

GRP 成 長 率 は 14.3%に 達 した。1999 年 以 降 、13 年 連 続 で 2 桁 成 長 を 続 けている( 図 1<br />

参 照 )。<br />

GRP を 産 業 別 にみると、 最 も 比 率 が 高 いのが 全 体 の 56.8%を 占 める 第 二 次 産 業 。 次 い<br />

で 第 三 次 産 業 34.0%で、 農 業 、 牧 畜 業 が 盛 んな 地 域 ではあるものの 第 一 次 産 業 のシェアは<br />

9.2%と、10%を 割 り 込 んでいる。<br />

図 1 内 モンゴル 自 治 区 の GRP の 推 移<br />

%<br />

25<br />

20<br />

15<br />

10<br />

内 モンゴル 自 治 区 のGRP 総 額 および 成 長 率 推 移<br />

23.8<br />

20.5<br />

19.1 19.2<br />

17.9<br />

17.8<br />

16.9<br />

13.2<br />

10.8 10.7<br />

15.0<br />

億 元<br />

16,000<br />

14,000<br />

12,000<br />

10,000<br />

14.3<br />

8,000<br />

6,000<br />

5<br />

4,000<br />

2,000<br />

0<br />

年<br />

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11<br />

0<br />

GRP 総 額<br />

GRP 成 長 率 推 移<br />

出 所 : 内 蒙 古 統 計 年 鑑 、 内 蒙 古 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

( 出 所 ) 内 モンゴル 統 計 年 鑑 、 内 モンゴル 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

需 要 面 では、 全 社 会 固 定 資 産 投 資 が 前 年 比 21.5% 増 の 1 兆 900 億 元 と、1 兆 元 の 大 台 を<br />

突 破 した( 図 表 2)。 産 業 別 では、 第 一 次 産 業 の 投 資 が 23.2% 増 の 549 億 9,400 万 元 、 第<br />

二 次 産 業 が 16.1% 増 の 5,156 億 9,400 万 元 、 第 三 次 産 業 が 27.2% 増 の 5,193 億 2,200 万 元 。<br />

特 に 第 三 次 産 業 の 投 資 の 伸 びが 大 きく、 投 資 額 は 初 めて 第 二 次 産 業 を 上 回 った。その 中 で<br />

目 立 つのが 不 動 産 投 資 で、 都 市 部 の 不 動 産 開 発 投 資 は 47.3% 増 の 1,650 億 200 万 元 と、5<br />

割 近 い 伸 びを 記 録 した。<br />

78<br />

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図 2 内 モンゴル 自 治 区 の 全 社 会 固 定 資 産 投 資 の 推 移<br />

%<br />

80.0<br />

内 モンゴル 自 治 区 の<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 推 移<br />

億 元<br />

12,000<br />

70.0<br />

69.1<br />

10,000<br />

60.0<br />

50.0<br />

40.0<br />

30.0<br />

20.0<br />

10.0<br />

12.3<br />

15.3<br />

44.0<br />

49.6 48.6<br />

26.7<br />

29.3<br />

27.2<br />

34.4<br />

19.1<br />

8,000<br />

6,000<br />

4,000<br />

21.5<br />

2,000<br />

0.0<br />

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11<br />

全 社 会 固 定 資 産 投 資 伸 び 率<br />

出 所 : 内 蒙 古 統 計 年 鑑 、 内 蒙 古 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

0<br />

( 出 所 ) 内 モンゴル 統 計 年 鑑 、 内 モンゴル 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額 は 18.0% 増 の 3,936 億 6,100 万 元 だった( 図 3)。 統 計 公 報 では、<br />

2011 年 の 消 費 の 特 徴 として、 農 村 地 域 の 消 費 の 伸 びが 18.3%と、 都 市 部 の 伸 び(17.9%)<br />

を 0.4 ポイント 上 回 ったことを 強 調 している。 所 得 水 準 をみても、 都 市 部 住 民 の 1 人 当 た<br />

り 可 処 分 所 得 は 15.3% 増 の 2 万 408 元 、 農 村 住 民 の 1 人 当 たり 純 収 入 は 20.1% 増 の 5,508<br />

元 と、 農 村 住 民 の 取 得 の 伸 びが 都 市 を 上 回 っている。<br />

図 3 内 モンゴル 自 治 区 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 の 推 移<br />

% 内 モンゴル 自 治 区 の 社 会 消 費 品 小 売 総 額 推 移<br />

30.0<br />

億 元<br />

4,500<br />

25.0<br />

25.4<br />

4,000<br />

3,500<br />

20.0<br />

15.0<br />

14.3 14.4<br />

18.6<br />

15.9<br />

21.4<br />

17.0<br />

19.9<br />

20.6<br />

15.9<br />

18.5<br />

3,000<br />

18.0<br />

2,500<br />

2,000<br />

10.0<br />

1,500<br />

5.0<br />

1,000<br />

500<br />

0.0<br />

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11<br />

社 会 消 費 品 小 売 総 額 伸 び 率<br />

出 所 : 内 蒙 古 統 計 年 鑑 、 中 国 統 計 年 鑑 、 内 蒙 古 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

( 出 所 ) 内 モンゴル 統 計 年 鑑 、 内 モンゴル 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

79<br />

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0


加 工 貿 易 型 の 輸 出 は 全 国 平 均 を 下 回 る><br />

対 外 貿 易 をみると、2011 年 の 輸 出 は 前 年 比 40.6% 増 の 46 億 8,700 万 ドル、 輸 入 は 38.2%<br />

増 の 72 億 5,200 万 ドルと、 依 然 入 超 が 続 いている( 図 4)。 輸 出 構 造 をみると、 一 般 貿 易<br />

形 態 が 34 億 6,200 万 ドルと、 全 体 の 73.9%を 占 める 一 方 で、 加 工 貿 易 形 態 は 5 億 2,200<br />

万 ドルと、 全 国 平 均 を 大 きく 下 回 っている。<br />

図 4 内 モンゴル 自 治 区 の 輸 出 入 の 推 移<br />

%<br />

内 モンゴル 自 治 区 の 輸 出 ・ 輸 入 推 移<br />

億 ドル<br />

50.0<br />

40.0<br />

30.0<br />

20.0<br />

10.0<br />

0.0<br />

44.5<br />

38.8<br />

12.8 11.6<br />

20.2<br />

16.1<br />

5.1<br />

2.4<br />

41.5<br />

16.7<br />

30.8<br />

22.8<br />

22.9<br />

3.7<br />

37.6<br />

26.1<br />

21.4<br />

11.6<br />

44.0<br />

21.0<br />

120.0<br />

40.6<br />

34.7 100.0<br />

80.0<br />

60.0<br />

‐10.0<br />

‐20.0<br />

‐30.0<br />

‐40.0<br />

‐16.9<br />

‐35.3<br />

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11<br />

輸 出 額 輸 入 額 輸 出 伸 び 率 輸 入 伸 び 率<br />

40.0<br />

20.0<br />

0.0<br />

年<br />

出 所 : 内 蒙 古 統 計 年 鑑 、 内 蒙 古 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

( 出 所 ) 内 モンゴル 統 計 年 鑑 、 内 モンゴル 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

また、 対 内 直 接 投 資 の 2011 年 の 実 行 額 は 13.4% 増 の 38 億 3,800 万 ドルだった。 実 行<br />

額 上 位 は、 香 港 、モーリシャス、シンガポール、 英 国 、デンマークなどで、 主 な 投 資 対 象<br />

業 種 は、 製 造 業 、 電 力 、ガス・ 水 生 産 供 給 業 、 不 動 産 業 、 鉱 山 採 掘 業 、リース・ビジネス<br />

サービス 業 など。 各 都 市 別 の 投 資 状 況 をみると、オルドス 市 が 1 位 で 18.0% 増 の 12 億 7,000<br />

万 ドル、 包 頭 市 が 2 位 で 12 億 4,000 万 ドル、フフホト 市 が 3 位 で 8 億 9,000 万 ドルとな<br />

っている。<br />

自 治 区 工 商 行 政 管 理 局 によると、2011 年 末 時 点 で 自 治 区 に 法 人 登 記 された 外 資 系 企 業 は<br />

862 社 、 投 資 総 額 は 255 億 1,900 万 ドル、 登 録 資 本 金 は 135 億 6,100 万 ドル。 工 商 行 政 管<br />

理 局 は、 近 年 の 自 治 区 への 投 資 の 特 徴 として、1 投 資 総 額 が 1,000 万 ドル 以 上 の 投 資 を 行<br />

う 企 業 、2 増 資 する 企 業 、3 外 国 企 業 による M&A 案 件 、のいずれも 増 加 したことを 挙 げ<br />

ている。<br />

第 三 次 産 業 への 投 資 も 伸 びている。2011 年 に 新 規 登 録 された 外 資 系 企 業 のうち、70.1%<br />

に 当 たる 68 社 が 第 三 次 産 業 分 野 の 企 業 として 新 たに 登 記 された。<br />

また、 新 しい 分 野 として、 近 年 は 風 力 発 電 分 野 の 投 資 も 増 大 。2011 年 までに 38 社 の 風<br />

力 関 連 企 業 が 内 モンゴルに 投 資 しており、 累 計 の 投 資 総 額 は 182 億 2,900 万 ドルに 達 して<br />

いる。<br />

80<br />

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図 5 内 モンゴル 自 治 区 の 対 内 直 接 投 資 の 推 移<br />

%<br />

120.0<br />

内 モンゴル 自 治 区 の<br />

対 内 直 接 投 資 額 推 移<br />

億 ドル<br />

40.0<br />

100.0<br />

109.6<br />

35.0<br />

80.0<br />

60.0<br />

40.0<br />

20.0<br />

18.9<br />

61.4<br />

70.5<br />

89.0<br />

46.8<br />

23.5 23.4<br />

30.0<br />

25.0<br />

20.0<br />

15.0<br />

12.6 13.4 13.410.0<br />

0.0<br />

‐3.2<br />

5.0<br />

‐20.0<br />

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11<br />

対 内 直 接 投 資 額 伸 び 率<br />

出 所 : 内 蒙 古 統 計 年 鑑 、 内 蒙 古 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

0.0<br />

( 出 所 ) 内 モンゴル 統 計 年 鑑 、 内 モンゴル 自 治 区 2011 年 国 民 経 済 ・ 社 会 発 展 統 計 公 報<br />

(2) 政 策 動 向<br />

< 東 部 地 域 :「 向 北 開 放 」の 最 前 線 ><br />

自 治 区 の 行 政 区 域 は 9 市 3 盟 ( 内 モンゴル 独 自 の 行 政 単 位 )から 成 り 立 っているが、 地<br />

理 的 に 大 別 すると、 東 部 ・ 西 部 とその 間 の 中 部 の 3 地 域 になる( 表 2 参 照 )。<br />

まず 東 部 地 域 は、 東 北 3 省 ( 黒 龍 江 省 、 吉 林 省 、 遼 寧 省 )に 近 接 しており、3 省 との 関<br />

係 が 緊 密 だ。 西 部 大 開 発 計 画 の 対 象 になっているほか、2007 年 8 月 に 制 定 された「 東 北<br />

地 域 振 興 規 画 」で、 東 北 振 興 の 対 象 地 域 として 新 たに 認 定 された。<br />

東 北 振 興 の 対 象 となったことについて、 国 務 院 東 北 振 興 弁 公 室 の 張 国 宝 主 任 は、1 歴 史<br />

的 にみて、かつて 内 モンゴル 東 部 は 東 北 3 省 が 管 轄 しており、 経 済 的 な 関 係 も 緊 密 なこと、<br />

2 内 モンゴル 東 部 の 送 電 網 は 東 北 3 省 の 送 電 網 の 一 部 になっていること、3 内 モンゴル 東<br />

部 地 域 は 東 北 地 域 の 生 態 防 波 堤 としての 役 割 を 果 たしていること、4 地 理 的 な 位 置 付 けか<br />

ら、 内 モンゴル 東 部 と 東 北 3 省 は、 東 北 地 域 の 北 方 向 への 開 放 ( 向 北 開 放 )に 向 けた 最 前<br />

線 であること、などを 挙 げている(「 北 京 青 年 報 」2007 年 8 月 21 日 )。<br />

東 部 地 域 は、 農 業 が 発 展 しているほか、 石 炭 などの 資 源 も 豊 富 だ。 大 興 安 嶺 を 中 心 に、<br />

森 林 など 自 然 環 境 にも 恵 まれている。また、ロシアとの 国 境 に 位 置 する 満 州 里 は、 中 国 最<br />

大 の 陸 上 の 通 商 窓 口 になっている。 中 央 政 府 は 2010 年 6 月 に 発 表 した「 西 部 大 開 発 戦 略<br />

のより 踏 み 込 んだ 実 施 に 関 する 若 干 の 意 見 」の 中 で、「 広 西 チワン 族 自 治 区 の 東 興 、 雲 南<br />

省 の 瑞 麗 、 内 モンゴルの 満 州 里 など、 重 点 開 発 開 放 試 験 区 の 積 極 的 建 設 」を 盛 り 込 んだ。<br />

これにより 満 州 里 は、ロシアとの 玄 関 口 としてさらなる 発 展 を 遂 げるよう、 政 府 を 挙 げて<br />

取 り 組 みを 強 化 している。<br />

81<br />

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表 2 内 モンゴル 自 治 区 の9 市 3 盟 の 概 況 (2010 年 )<br />

地 域 都 市 名 面 積 人 口 GRP<br />

1 人 あた<br />

りGRP<br />

都 市 部<br />

住 民 1 人<br />

当 たり<br />

の 可 処<br />

分 所 得<br />

単 位<br />

万 平 方<br />

キロ<br />

万 人 億 元 元 元<br />

フフホト 市 1.7 287 1,866 65,518 25,174<br />

中 部<br />

包 頭 市 2.8 266 2,461 93,441 25,962<br />

オルドス 市 8.7 195 2,643 138,109 25,205<br />

ウランチャブ 市 5.5 214 568 26,459 14,289<br />

バヤンノール 市 6.4 167 603 36,048 14,422<br />

西 部<br />

烏 海 市 0.2 53 391 73,801 19,741<br />

アルシャ 盟 27.0 23 306 133,058 19,111<br />

バヤンノール 市 20.3 103 592 57,727 15,464<br />

赤 峰 市 9.0 434 1,086 24,967 14,109<br />

東 部<br />

興 安 盟 6.0 161 261 16,203 11,505<br />

フルンベール 市 25.3 255 932 36,652 14,858<br />

通 遼 市 6.0 314 1,177 37,489 14,263<br />

( 出 所 ) 内 モンゴル 統 計 年 鑑 2011より 作 成<br />

< 西 部 地 域 : 豊 富 な 石 炭 資 源 の 輸 送 力 強 化 が 課 題 ><br />

西 部 地 域 は、 広 大 な 砂 漠 が 広 がっていることもあり、 人 口 は 少 ないものの、 石 炭 など 資<br />

源 が 豊 富 だ。 中 国 では 輸 送 力 の 不 足 もあり、 工 業 化 が 進 み、エネルギー・ 資 源 需 要 が 旺 盛<br />

な 中 国 南 部 地 域 に、 北 部 の 豊 富 な 資 源 が 十 分 に 輸 送 できないといった 問 題 が 指 摘 されてい<br />

る。こうした 中 、 中 央 政 府 は 2012 年 3 月 に 開 催 された 全 国 人 民 代 表 大 会 で 報 告 した「 国<br />

民 経 済 社 会 発 展 計 画 」の 中 で、「 内 モンゴル 西 部 から 華 中 地 域 への 石 炭 輸 送 ルートのでき<br />

る 限 り 早 い 着 工 」を 求 めるなど、 石 炭 が 豊 富 な 西 部 地 域 からの 石 炭 輸 送 力 の 増 強 を 目 指 す<br />

方 針 を 示 している。<br />

そのほか 近 年 は、 満 州 里 や 二 連 浩 特 市 などの 既 存 の 国 境 通 商 窓 口 に 加 え、 西 部 地 域 でも、<br />

モンゴルと 国 境 を 接 するバヤンノール 市 やアルシャ 盟 で、 同 国 との 通 商 窓 口 の 整 備 が 進 む<br />

など、 国 境 貿 易 の 新 たな 拠 点 としての 発 展 も 期 待 されている。<br />

< 中 部 地 域 : 自 治 区 の 経 済 の 中 心 として 発 展 ><br />

自 治 区 の 中 で 最 も 経 済 レベルが 高 いのが 中 部 地 域 だ。 中 部 地 域 には、フフホト 市 、 包 頭<br />

市 、オルドス 市 という 自 治 区 の 3 大 主 要 都 市 がある。 面 積 では 自 治 区 全 体 の 16%だが、 域<br />

内 総 生 産 (GRP)では 全 体 の 58%を 占 めており、 自 治 区 経 済 の 中 心 として 機 能 している。<br />

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3 市 の 中 で 最 も 経 済 規 模 が 大 きいのがオルドス 市 で、2011 年 の GRP は 3,218 億 5,000<br />

万 元 (1 元 = 約 12.6 円 )に 達 している。 特 に 2010 年 の 1 人 当 たり GRP は 13 万 8,109 元<br />

と、 区 都 のフフホトの 2 倍 以 上 になっているほか、 上 海 市 、 北 京 市 の 1 人 当 たり GRP を<br />

も 上 回 っている。 特 に 2004~09 年 にかけての 成 長 率 は 毎 年 20% 超 と 極 めて 高 い 成 長 を 続<br />

けてきた。<br />

同 市 経 済 が 急 速 な 発 展 を 遂 げた 背 景 には、 豊 富 な 資 源 の 存 在 がある。2011 年 の 同 市 の 石<br />

炭 生 産 量 は 前 年 比 31.5% 増 の 5 億 8,790 万 トンと、 自 治 区 全 体 の 半 分 を 超 え、 天 然 ガスの<br />

生 産 も 32.9% 増 の 248 億 6,043 万 立 方 メートルに 達 している。 近 年 は、 投 機 的 ともいえる<br />

不 動 産 開 発 の 実 態 が 全 国 的 な 注 目 を 集 めた。<br />

<br />

オルドス 市 に 次 いで 経 済 規 模 が 大 きいのが 包 頭 市 だ。 同 市 は、 自 治 区 有 数 の 重 工 業 都 市<br />

で、 中 でも 包 頭 鋼 鉄 は 1954 年 に 設 立 され 59 年 から 生 産 を 開 始 した 国 有 企 業 で、 包 頭 市 は<br />

同 社 の 成 長 とともに 発 展 してきたといっても 過 言 ではない。 同 市 のメインストリートが「 鋼<br />

鉄 大 街 」と 名 付 けられていることからも、 鉄 鋼 産 業 で 発 展 してきた 歴 史 がうかがえる。ま<br />

た、レアアースが 豊 富 な 地 域 としても 知 られている。2011 年 の 同 市 の GRP 総 額 は 3,005<br />

億 元 、 実 質 GRP 成 長 率 は 15.5%だった。<br />

同 市 関 係 者 によると、レアアース 関 連 企 業 を 中 心 に 日 系 企 業 が 6 社 進 出 している。 同 市<br />

の 投 資 環 境 について、 進 出 日 系 企 業 に 聞 いたところ、 同 市 には 発 電 用 に 利 用 する 石 炭 が 豊<br />

富 な 上 、 同 市 郊 外 を 流 れる 黄 河 の 伏 流 水 が 豊 富 なこともあり、 全 国 各 地 で 水 不 足 、 電 力 不<br />

足 が 顕 在 化 する 中 でも、 同 市 の 水 ・ 電 力 事 情 に 問 題 はないという。<br />

同 市 が 今 後 成 長 の 柱 として 考 えている 6 大 産 業 は、 鉄 鋼 、アルミ、 電 力 、 石 炭 化 工 、レ<br />

アアース、 設 備 製 造 業 で、この 6 つの 産 業 を 中 心 に 今 後 発 展 を 考 えていくとみられる。 中<br />

でもレアアースは、 国 家 級 の 包 頭 レアアースハイテク 開 発 区 が 設 置 されている。 中 国 では<br />

唯 一 資 源 名 を 冠 した 国 家 級 ハイテク 開 発 区 となっており、 日 系 企 業 も 含 め、レアアース 関<br />

連 の 企 業 が 集 積 している。<br />

そのほか、 同 市 はサービス 業 の 一 層 の 発 展 を 目 指 している。 同 市 の 第 12 次 5 ヵ 年 規 画<br />

では、2015 年 まで 年 率 平 均 17%の 成 長 を 達 成 し、GRP に 占 めるサービス 業 のシェアを<br />

45.7%に、 全 雇 用 人 口 に 占 めるサービス 業 のシェアを 60%に、それぞれ 高 める 目 標 を 掲 げ<br />

ている。サービス 業 関 連 では、 羊 肉 のしゃぶしゃぶ 料 理 店 として、 日 本 にも 進 出 した「 小<br />

肥 羊 」および「 小 尾 羊 」の 本 店 が 包 頭 にある。<br />

また、 近 年 は、 百 貨 店 の 進 出 が 相 次 いでいる。 中 でも 2010 年 11 月 には「 万 達 広 場 」が<br />

オープンした。 同 広 場 は、 百 貨 店 などを 含 むショッピングセンター、 映 画 館 5 つ 星 ホテル<br />

が 一 体 化 した 施 設 で、 吉 野 家 、 味 千 ラーメンなど 新 たな 飲 食 店 も 数 多 く 進 出 、 同 市 の 消 費<br />

市 場 のレベルアップにつながっている。<br />

その 一 方 で、 物 流 面 ではまだまだ 大 きな 課 題 を 抱 えている。 北 京 を 経 由 してフフホト、<br />

包 頭 までの 高 速 道 路 は 現 在 片 側 4 車 線 化 に 向 け 工 事 が 続 いているが、 道 路 状 況 によっては、<br />

沿 海 地 域 までの 輸 送 が、 予 定 よりも 大 幅 に 遅 れることも 少 なくないという。また、 賃 金 水<br />

準 も、 地 元 の 大 手 企 業 の 業 績 が 好 調 で、 賃 金 レベルが 上 昇 していることもあり、 内 モンゴ<br />

ルという 地 域 性 から 勘 案 すると 高 水 準 で、 低 賃 金 では 人 が 集 まりにくい。<br />

83<br />

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包 頭 レアアースハイテク 産 業 開 発 区 管 理 委 員 会<br />

<br />

オルドス 市 、 包 頭 市 に 次 いで、 経 済 規 模 第 3 位 は 区 都 のフフホト 市 だ。オルドス、 包 頭<br />

と 比 べて 重 工 業 をはじめとする 工 業 化 はそれほど 進 展 していない。2012 年 の 同 市 の 政 府 活<br />

動 報 告 でも「 産 業 発 展 が 不 十 分 で 特 に 工 業 の 実 力 が 乏 しい」と 指 摘 している。<br />

フフホトの 特 徴 は、 内 モンゴル 自 治 区 9 市 3 盟 のうち、GRP 総 額 に 占 める 第 三 次 産 業<br />

の 比 率 が 唯 一 50%を 上 回 っていることだ。 自 治 区 内 では 最 もサービス 産 業 が 発 展 していて、<br />

市 内 には 大 型 の 百 貨 店 やショッピングセンターが 軒 を 連 ねているほか、 不 動 産 開 発 も 旺 盛<br />

だ。<br />

同 市 は、ほかの 2 市 に 比 べ 立 ち 遅 れている 工 業 のレベルアップを 図 るとともに、 強 みを<br />

持 つサービス 業 分 野 を 一 層 発 展 させていく 方 針 だ。<br />

フフホト 市 のメインストリート<br />

84<br />

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意 見 の 冒 頭 に、 中 央 政 府 が 自 治 区 に 期 待 する 役 割 、つまり 中 央 政 府 が 定 めた 自 治 区 の<br />

戦 略 的 地 位 について 記 載 されている( 表 3 参 照 )。 自 治 区 の 地 理 的 位 置 付 けから、 自 治 区<br />

を「 北 方 への 開 放 拠 点 」、「 重 要 な 生 態 安 全 上 の 障 壁 」として 位 置 付 けているほか、 資 源 ・<br />

農 畜 産 品 の 生 産 拠 点 としての 優 位 性 を 踏 まえた、 資 源 基 地 としての 役 割 を 果 たすよう 求 め<br />

ている。<br />

その 上 で、 意 見 は 自 治 区 の 発 展 に 向 けた 基 本 原 則 として、1 経 済 構 造 の 戦 略 的 調 整 の 推<br />

進 、2 民 生 の 保 障 ・ 改 善 、3 省 資 源 ・ 環 境 保 護 、4 改 革 の 深 化 と 開 放 の 拡 大 、5 民 族 団 結 ・<br />

社 会 の 安 定 促 進 、の 5 点 を 堅 持 していく 方 針 を 示 した。<br />

表 3 中 国 政 府 が 定 めた 内 モンゴル 自 治 区 の 戦 略 的 地 位<br />

戦 略 的 地 位<br />

中 国 北 方 の 重 要 な 生 態 安 全 上 の 障 壁<br />

国 家 の 重 要 なエネルギー 基 地 、 新 型 化 学 工<br />

業 基 地 、 非 鉄 金 属 生 産 加 工 基 地 、 緑 色 農 畜<br />

産 品 生 産 加 工 基 地 。<br />

我 が 国 の 北 方 への 開 放 に 向 けた 重 要 な 橋 里<br />

堡<br />

繁 栄 し 安 定 した 民 族 自 治 区<br />

当 該 位 置 付 け 達 成 に 向 けた 施 策<br />

生 態 保 護 ・ 建 設 計 画 を 全 面 的 に 実 施 し、 重 大 な 生 態 プロジェク<br />

ト 建 設 を 推 進 、 重 点 地 域 、 流 域 生 態 建 設 および 環 境 保 護 を 強<br />

化 。 草 原 、 森 林 を 中 心 とする 生 態 システムの 良 性 循 環 、 人 と 自<br />

然 とが 調 和 し 共 存 できる 国 家 生 態 安 全 障 壁 を 構 築<br />

豊 富 な 資 源 、 市 場 に 近 接 、インフラが 整 っているという 優 位 性<br />

を 充 分 に 発 揮 し、 特 色 ある 優 位 産 業 を 強 化 。 多 元 化 された 現 代<br />

産 業 システムの 構 築 を 加 速 化 し、 内 モンゴルを 国 家 戦 略 資 源 基<br />

地 ・ 新 たな 経 済 成 長 点 として 建 設<br />

辺 境 開 放 政 策 を 大 規 模 に 実 施 し、 重 要 な 出 入 国 窓 口 ・ 合 作 園 区<br />

を 通 じて 国 際 ルート、 対 外 窓 口 、 辺 境 開 発 開 放 試 験 区 の 建 設 を<br />

加 速 化 し、ロシア、モンゴルなどとの 経 済 貿 易 協 力 ・ 交 流 を 深<br />

化<br />

民 族 地 域 の 自 治 制 度 を 堅 持 ・ 完 全 なものにし、 民 族 地 域 経 済 を<br />

大 きく 発 展<br />

( 出 所 )「 内 モンゴルの 経 済 社 会 の 良 好 で 速 い 発 展 のさらなる 促 進 に 関 する 若 干 の 意 見 」より 作 成<br />

<br />

さらに 意 見 は、 中 長 期 に 向 けた 具 体 的 な 目 標 として、インフラについては 2015 年 まで<br />

に 最 低 限 の 整 備 を 行 うこと、2020 年 には 発 展 需 要 を 満 たすレベルにまで 改 善 することを 定<br />

めている。また、 収 入 レベルも 2015 年 には 全 国 平 均 レベルに、2020 年 には 全 国 平 均 を 上<br />

回 るレベルにまで 引 き 上 げることを 目 標 に 掲 げている( 表 4 参 照 )。<br />

さらに、 意 見 では、 自 治 区 の 今 後 の 産 業 発 展 の 方 向 性 として、 主 に 6 つの 分 野 を 取 り 上<br />

げて 発 展 を 目 指 しており( 表 5 参 照 )、 今 後 の 外 資 系 企 業 の 自 治 区 への 進 出 ・ 投 資 に 当 た<br />

っては、こうした 産 業 分 野 を 念 頭 に、 自 治 区 での 事 業 展 開 を 考 えていく 必 要 があろう。<br />

85<br />

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表 4 内 モンゴル 自 治 区 の 中 長 期 目 標<br />

2015 年 までの 目 標 2020 年 までの 目 標<br />

交 通 、エネルギー、 水 利 、 農 牧 業 などのインフラ 施 設 面<br />

のボトルネック・ 制 約 要 因 を 改 善 。<br />

多 元 的 に 発 展 できる 産 業 システムを 形 成 。 自 主 イノベー<br />

ション 能 力 を 高 め、 経 済 面 の 実 力 をより 一 層 高 める。<br />

農 業 ・ 牧 畜 地 域 の 生 活 条 件 を 改 善 し、 都 市 ・ 農 村 住 民 収<br />

入 を 全 国 平 均 レベルにまで 高 める。<br />

基 本 となる 公 共 サービス 能 力 を 向 上 させ、 地 域 の 発 展 格<br />

差 を 縮 小 し、 貧 困 人 口 の 大 幅 な 減 少 を 図 る。<br />

経 済 社 会 の 発 展 需 要 を 満 たすレベルにまで、インフラを<br />

改 善 。<br />

経 済 構 造 をより 最 適 化 し、 経 済 発 展 レベルを 引 き 上 げ、<br />

都 市 ・ 農 村 住 民 収 入 を 全 国 平 均 レベル 以 上 とする。<br />

基 本 となる 公 共 サービスの 均 等 化 を 図 り、 域 内 発 展 の 協<br />

調 性 をより 一 層 高 める。<br />

貧 困 地 域 の 経 済 ・ 社 会 発 展 レベルを 引 き 上 げ、 貧 困 から<br />

の 脱 却 を 図 る。<br />

生 態 環 境 悪 化 に 歯 止 めをかける。 草 原 における 植 生 カ 草 原 の 植 生 カバー 率 や 森 林 カバー 率 をさらに 高 め、 生 態<br />

バー 率 を43%に 高 めるほか、 森 林 カバー 率 を21.5%に 高 状 況 をより 一 層 改 善 。 主 要 生 態 システムの 良 性 循 環 を 図<br />

める。<br />

り、 持 続 可 能 な 発 展 能 力 をより 一 層 増 強 。<br />

省 エネ・ 排 出 削 減 への 取 り 組 みによる 成 果 を 出 す。GRP<br />

1 単 位 あたりのエネルギー 消 費 量 を 削 減 し、 主 要 汚 染 物<br />

ならびに 二 酸 化 炭 素 の 排 出 削 減 目 標 を 達 成 。<br />

生 産 発 展 、 生 活 富 裕 、 生 態 が 良 好 な 現 代 化 された 内 モン<br />

ゴルの 新 局 面 を 形 成 。<br />

( 出 所 ) 内 モンゴルの 経 済 社 会 の 良 好 で 速 い 発 展 の 更 なる 促 進 に 関 する 若 干 の 意 見 」より 作 成<br />

表 5 内 モンゴル 自 治 区 の 今 後 の 産 業 発 展 の 方 向 性<br />

産 業 発 展 の 主 要 目 標<br />

具 体 的 な 施 策<br />

国 家 エネルギー 基 地<br />

の 推 進<br />

資 源 加 工 度 の 高 い 産<br />

業 を 発 展<br />

・ 石 炭 資 源 開 発 の 最 適 化 。 大 規 模 炭 鉱 の 建 設<br />

・ 内 モンゴル 西 部 ・ 東 部 での 風 力 発 電 基 地 の 建 設<br />

・ 太 陽 光 エネルギーが 豊 富 な 地 域 での 太 陽 光 発 電 基 地 の 建 設<br />

・ 石 炭 、 非 鉄 金 属 、 農 畜 産 品 等 の 資 源 面 の 優 位 性 において 開 発 、 加 工<br />

レベルを 向 上<br />

・ 内 モンゴル 西 部 ・ 東 部 での 風 力 発 電 基 地 の 建 設<br />

・ 太 陽 光 エネルギーが 豊 富 な 地 域 での 太 陽 光 発 電 基 地 の 建 設<br />

伝 統 産 業 の 改 造 ・<br />

レベルアップ<br />

設 備 製 造 業 の 発 展<br />

・ 冶 金 、 建 材 、 繊 維 などの 産 業 の 技 術 装 備 レベル、 製 品 競 争 力 を 向 上<br />

・ 鉄 鋼 製 品 の 構 造 調 整 ・レベルアップを 推 進 。 包 頭 に 鉄 鋼 基 地 を 建 設<br />

・ 工 作 機 械 、 鉱 山 機 械 など、 優 位 性 を 持 った 産 業 の 発 展 レベルを 向 上 。<br />

・ 風 力 発 電 、 送 配 電 、 化 学 工 業 、 冶 金 、 環 境 保 護 ・ 総 合 利 用 装 備 および<br />

農 牧 業 機 械 分 野 の 発 展 を 支 援<br />

戦 略 的 新 興 産 業 の<br />

積 極 的 な 育 成<br />

・ 新 素 材 、 新 医 薬 、 新 世 代 IT 技 術 ・ 省 エネ・ 環 境 保 護 などの 戦 略 的 新 興<br />

産 業 を 積 極 的 に 育 成<br />

・レアアース 資 源 保 護 を 強 化 し、 資 源 開 発 の 統 合 、 備 蓄 力 を 高 め、レア<br />

アースを 用 いた 応 用 技 術 開 発 、 研 究 成 果 の 産 業 化 を 進 め、レアアースの<br />

開 発 利 用 レベルを 向 上 。 包 頭 を 重 点 とし、レアアースなど 新 素 材 産 業 を<br />

発 展<br />

・サービス 業 を 産 業 構 造 の 最 適 化 ・レベルアップの 重 点 とする<br />

サービス 業 の ・ 生 産 性 サービス 業 および 生 活 性 サービス 業 の 発 展 を 推 進<br />

発 展 の 加 速 化 ・ 地 域 物 流 の 結 節 点 となる 都 市 の 物 流 インフラ 施 設 を 建 設<br />

・ 満 州 里 に 北 東 アジア 国 際 物 流 センターを 建 設<br />

( 出 所 )「 内 モンゴルの 経 済 社 会 の 良 好 で 速 い 発 展 の 更 なる 促 進 に 関 する 若 干 の 意 見 」より 作 成<br />

86<br />

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(3) 事 業 環 境<br />

< 資 源 や 西 部 大 開 発 計 画 、 東 北 振 興 策 などの 優 遇 措 置 がメリットに><br />

自 治 区 の 中 長 期 的 な 発 展 戦 略 ・ 方 針 が 明 確 になる 中 で、 外 資 が 自 治 区 で 事 業 展 開 するに<br />

当 たってのビジネス 環 境 上 のメリットと 課 題 として、 以 下 が 挙 げられる。<br />

まず、メリットとしては、 石 炭 をはじめとする 資 源 や、 電 力 ・ 水 資 源 が 豊 富 なことだ。<br />

東 部 沿 海 地 域 などでは、 急 速 な 産 業 発 展 に 伴 い、 電 力 ・ 水 不 足 が 顕 在 化 、 工 場 運 営 にも 支<br />

障 をきたす 状 況 になっているが、 内 モンゴルは、もともと 資 源 が 豊 富 なほか、 乾 燥 地 域 と<br />

はいえ、 黄 河 の 流 域 で 比 較 的 水 資 源 にも 恵 まれている。<br />

また、 西 部 大 開 発 計 画 に 関 連 した 優 遇 条 件 が 享 受 できるほか、 自 治 区 東 部 地 域 では 西 部<br />

大 開 発 計 画 に 加 え、 東 北 振 興 政 策 の 適 用 も 受 けられるなどの 点 が 挙 げられる。<br />

さらに、 地 理 的 にみても、ロシア、モンゴルとの 通 商 窓 口 としての 機 能 が 年 々 強 化 され<br />

ているほか、これらの 国 の 資 源 を 活 用 した 経 済 発 展 も 可 能 だ。また、 内 モンゴル 中 部 ・ 東<br />

部 地 域 は、 北 京 、 天 津 などの 大 都 市 や 東 北 3 省 に 比 較 的 近 接 していることもあり、これら<br />

の 地 域 との 連 携 強 化 を 通 じた 発 展 の 可 能 性 を 模 索 する 向 きもある。<br />

労 務 面 でも、ほかの 地 域 からの 出 稼 ぎは 比 較 的 少 なく、 地 元 での 採 用 が 中 心 のため、 定<br />

着 率 が 比 較 的 高 いというメリットもある。<br />

< 課 題 は 労 働 力 、 市 場 としての 広 がり><br />

一 方 、 課 題 としては、 人 口 がそれほど 多 くなく、 労 働 力 が 豊 富 とはいえないことや、 資<br />

源 関 連 を 中 心 とする 大 手 製 造 業 の 賃 金 水 準 が 高 いこともあり、それに 影 響 されて 人 件 費 が<br />

比 較 的 高 い 水 準 にあることが 挙 げられる。<br />

また 物 流 面 でも、 高 速 道 路 の 拡 幅 工 事 などが 行 われているものの 沿 海 地 域 には 遠 く、 沿<br />

海 の 港 まで 輸 送 する 時 間 が 相 当 程 度 かかるほか、 道 路 事 情 によっては、 所 要 時 間 に 大 きな<br />

遅 れが 生 じることもある。 加 えて 日 本 食 レストランも 少 ないなど、 日 本 人 が 居 住 する 上 で<br />

の 環 境 が 厳 しいことも 挙 げられる。<br />

市 場 という 面 でみると、フフホト、 包 頭 など 大 都 市 部 では、 大 型 ショッピングセンター、<br />

百 貨 店 などが 次 々に 建 設 されており、 街 中 の 自 動 車 の 台 数 も 急 速 に 増 加 する 傾 向 にあるな<br />

ど、 一 部 市 民 の 消 費 行 動 は 一 層 活 発 化 している。 他 方 、 自 治 区 内 の 所 得 格 差 が 大 きな 問 題<br />

になっているなど、 市 場 としての 面 としての 広 がりが 限 定 的 な 状 況 になっている。<br />

日 本 企 業 としては、 自 治 区 の 発 展 戦 略 を 踏 まえつつ、こうしたメリットや 課 題 を 見 極 め<br />

ながら、 今 後 の 自 治 区 でのビジネス 展 開 を 検 討 していくことが 必 要 になってこよう。<br />

( 中 井 邦 尚 )<br />

87<br />

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地<br />

域<br />

東<br />

部<br />

東<br />

北<br />

中<br />

部<br />

西<br />

部<br />

参 考 資 料 : 中 国 の 31 省 ・ 直 轄 市 ・ 自 治 区 の 最 新 マクロ 経 済 指 標 (2011 年 )<br />

省 ・ 自 治 区 ・<br />

直 轄 市 名<br />

面 積 ( 平 方<br />

キロ)<br />

常 住 人<br />

口 ( 万<br />

人 )<br />

( 注 2)<br />

工 業 生 産 増<br />

実 質<br />

全 社 会 固<br />

GRP 総 一 人 当 加 額 ( 付 加<br />

GRP 成<br />

定 資 産 投<br />

額 ( 億 たり GRP 価 値 ベー<br />

長 率<br />

資 額 ( 億<br />

元 ) ( 元 ) ス、 億 元 )<br />

(%)<br />

元 )<br />

( 注 3)<br />

社 会 消 費<br />

品 小 売 総<br />

額 ( 億 元 )<br />

広 東 省 179,813 10,505 10.0 52,674 50,500 24,408 16,933 20,247<br />

江 蘇 省 102,600 7,899 11.0 48,604 61,649 25,035 26,299 15,842<br />

山 東 省 157,161 9,637 10.9 45,429 47,260 n.a. 26,771 16,676<br />

浙 江 省 101,800 5,463 9.0 32,000 58,665 10,878 14,290 11,931<br />

河 北 省 187,693 7,241 11.3 24,228 n.a. 11,742 16,404 8,036<br />

上 海 市 6,341 2,347 8.2 19,196 82,560 7,231 5,067 6,777<br />

福 建 省 124,000 3,720 12.2 17,410 46,972 7,775 10,119 6,169<br />

北 京 市 16,411 2,019 8.1 16,000 80,394 3,039 5,911 6,900<br />

天 津 市 11,760 1,355 16.4 11,191 n.a. 5,381 7,511 3,395<br />

海 南 省 35,354 877 12.0 2,515 28,797 475 1,611 741<br />

遼 寧 省 148,000 4,383 12.1 22,026 50,299 10,697 17,726 8,004<br />

黒 龍 江 省 454,817 3,834 12.2 12,504 n.a. 5,583 7,524 4,705<br />

吉 林 省 189,072 2,749 13.7 10,531 38,321 4,908 7,442 4,116<br />

河 南 省 167,000 9,388 11.6 27,232 n.a. 14,402 17,767 9,323<br />

湖 南 省 211,829 6,596 12.8 19,635 29,828 8,083 11,431 6,809<br />

湖 北 省 185,986 5,758 13.8 19,594 34,132 8,566 12,932 7,928<br />

安 徽 省 139,427 5,968 13.5 15,110 25,340 7,062 12,126 4,901<br />

江 西 省 166,933 4,488 12.5 11,584 25,884 5,612 11,020 3,458<br />

山 西 省 156,711 3,593 13.0 11,100 30,974 5,945 7,373 3,774<br />

四 川 省 484,056 8,050 15.0 21,027 26,133 9,491 15,142 7,837<br />

内 モンゴル 1,183,000 2,482 14.3 14,246 57,515 7,159 10,900 3,937<br />

陝 西 省 205,795 3,743 13.9 12,391 33,142 5,728 10,033 3,790<br />

広 西 236,661 4,645 12.3 11,714 25,315 4,914 10,143 3,861<br />

重 慶 市 82,403 2,919 16.4 10,011 34,500 4,690 7,632 3,488<br />

雲 南 省 394,000 4,631 13.7 8,751 18,957 3,206 7,110 3,000<br />

新 疆 1,637,829 2,209 12.0 6,575 29,924 2,764 4,713 1,557<br />

貴 州 省 176,171 3,469 15.0 5,702 n.a. 1,639 5,102 1,752<br />

甘 粛 省 454,774 2,564 12.5 5,020 n.a. 2,071 4,180 1,618<br />

寧 夏 51,954 639 12.0 2,061 32,392 724 1,648 478<br />

青 海 省 717,481 568 13.5 1,635 n.a. 781 1,434 405<br />

チベット 1,202,369 300 12.7 606 20,077 49 549 219<br />

88<br />

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地<br />

域<br />

東<br />

部<br />

東<br />

北<br />

中<br />

部<br />

西<br />

部<br />

消 費 者<br />

財 政<br />

地 方 財<br />

省 ・ 自 治 区 ・ 物 価 指<br />

支 出<br />

政 収 入<br />

直 轄 市 名 数 上 昇<br />

( 億<br />

( 億 元 )<br />

率 (%)<br />

元 )<br />

対 内 直 都 市 部 住 民<br />

貿 易 総<br />

輸 出 額 輸 入 額 接 投 資 1 人 あたり<br />

額 ( 億<br />

( 億 ドル) ( 億 ドル) 額 ( 億 可 処 分 所 得<br />

ドル)<br />

ドル) 額 ( 元 )<br />

農 村 住 民<br />

1 人 あたり<br />

純 収 入 額<br />

( 元 )<br />

広 東 省 5.3 5,514 6,716 9,135 5,319 3,815 218 26,897 9,372<br />

江 蘇 省 5.3 5,148 6,115 5,398 3,126 2,271 321 26,341 10,805<br />

山 東 省 5.0 3,456 5,001 2,360 1,258 1,102 112 22,792 8,342<br />

浙 江 省 5.4 3,151 3,843 3,094 2,164 930 117 30,971 13,071<br />

河 北 省 5.7 1,737 3,510 536 286 250 47 18,292 7,120<br />

上 海 市 5.2 3,430 3,915 4,374 2,098 2,276 126 36,230 15,644<br />

福 建 省 5.3 1,501 2,197 1,436 928 507 110 24,907 8,779<br />

北 京 市 5.6 3,006 3,247 3,895 590 3,305 71 32,903 14,736<br />

天 津 市 4.9 1,455 1,756 1,034 445 589 131 26,921 n.a.<br />

海 南 省 6.1 340 779 130 25 105 15 18,369 6,446<br />

遼 寧 省 5.2 2,641 3,902 960 510 449 243 20,467 8,297<br />

黒 龍 江 省 5.8 1,620 3,398 385 177 208 33 15,696 7,591<br />

吉 林 省 5.2 850 2,202 220 50 170 15 17,797 7,510<br />

河 南 省 5.6 1,722 4,246 326 192 134 101 18,195 6,604<br />

湖 南 省 5.5 1,456 3,466 190 99 91 62 18,844 6,567<br />

湖 北 省 5.8 1,470 3,160 335 195 140 47 18,374 6,898<br />

安 徽 省 5.6 1,463 3,306 313 171 143 66 18,606 6,232<br />

江 西 省 5.2 1,053 2,530 316 219 97 61 17,495 6,892<br />

山 西 省 5.2 1,213 2,369 148 54 93 21 18,124 5,601<br />

四 川 省 5.3 2,044 4,674 478 290 187 110 17,899 6,129<br />

内 モンゴル 5.6 1,357 2,989 119 47 73 38 20,408 6,642<br />

陝 西 省 5.7 1,499 2,929 146 70 76 24 18,245 5,028<br />

広 西 5.9 948 2,545 233 125 109 10 18,854 5,231<br />

重 慶 市 5.3 1,488 2,574 292 198 94 95 20,250 6,480<br />

雲 南 省 4.9 1,111 2,930 161 95 66 17 18,576 4,722<br />

新 疆 5.9 721 2,283 228 168 60 3 15,514 5,442<br />

貴 州 省 5.1 773 2,244 49 30 19 7 16,495 4,145<br />

甘 粛 省 5.9 450 1,790 88 22 66 1 14,989 3,909<br />

寧 夏 6.3 220 711 23 16 7 2 17,579 5,410<br />

青 海 省 6.1 152 967 9 7 3 2 15,603 4,608<br />

チベット 5.0 55 758 14 12 2 1 16,196 4,904<br />

( 出 所 ) 中 国 区 域 経 済 統 計 年 鑑 2011、 各 地 域 の 2011 年 統 計 公 報 等 を 基 にジェトロ 作 成<br />

( 注 1)2012 年 5 月 31 日 時 点 で 入 手 できないデータについては「n.a.」とした<br />

( 注 2) 吉 林 省 は 総 人 口 、チベットの 常 住 人 口 は 2010 年 11 月 時 点<br />

( 注 3) 江 蘇 省 、 浙 江 省 、 安 徽 省 、 貴 州 省 、 青 海 省 は 一 定 規 模 以 上 の 工 業 生 産 増 加 額<br />

89<br />

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執 筆 者 一 覧<br />

真 家 陽 一 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 長 )<br />

中 井 邦 尚 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 課 長 代 理 )<br />

日 向 裕 弥 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 課 長 代 理 )<br />

宗 金 建 志 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 )<br />

米 川 拓 也 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 )<br />

河 野 円 洋 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 )<br />

小 林 伶 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 )<br />

鷲 北 弥 那 子 (ジェトロ 海 外 調 査 部 中 国 北 アジア 課 )<br />

( 肩 書 きは 執 筆 時 )<br />

90<br />

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