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TOF-SIMS ワーキンググループ活動報告 - 表面分析研究会

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Journal of Surface Analysis Vol.17, No. 2 (2010) pp.127-128<br />

大 友 晋 哉 他 <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> ワーキンググループ 活 動 報 告<br />

掲 示 板<br />

<strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> ワーキンググループ 活 動 報 告<br />

大 友 晋 哉 , * <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> ワーキンググループ<br />

*<br />

古 河 電 気 工 業 ( 株 ) 横 浜 研 究 所 , 〒220-0073, 横 浜 市 西 区 岡 野 2-4-3<br />

*ootomo.shinya@furukawa.co.jp<br />

(2010 年 9 月 1 日 受 理 )<br />

産 業 界 では, 実 用 表 面 分 析 のツールとして 飛 行<br />

時 間 型 2 次 イオン 質 量 分 析 法 (<strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong>) の 利 用<br />

が 急 速 に 拡 がっていることから,2007 年 6 月 に 軽<br />

井 沢 で 開 催 された 第 30 回 表 面 分 析 研 究 会 におい<br />

て「<strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong>ワーキンググループ (WG)」が 発 足<br />

した.その 活 動 は,「 表 面 化 学 種 の 同 定 解 析 」に<br />

重 要 となる400-600 amu 付 近 に 観 測 されるピーク<br />

の 質 量 値 に 焦 点 をあてている[1]. 質 量 確 度 と 精 度<br />

が 低 ければ, 正 確 なイオン 構 造 にたどりつく 確 率<br />

は 低 くなり, 表 面 化 学 種 の 同 定 は 成 功 しないため<br />

である.<br />

RRT-07 まず,1 回 目 のラウンドロビンテスト<br />

(RRT-07) では,CD-R の 色 素 と 光 安 定 剤 のTinuvin<br />

770を 参 加 10 機 関 独 自 の 測 定 条 件 と 質 量 較 正 で 計<br />

測 された 質 量 の 報 告 値 を 比 較 した 結 果 , 質 量 値 の<br />

ばらつきが200 ppm を 超 える 場 合 があり, 現 状 よ<br />

り 向 上 させるための 工 夫 が 必 要 であることが 確<br />

認 された[2].<br />

RRT-08 さらに,2008 年 にPET ボトルとインク<br />

ジェットプリンター 用 シアンインクを 試 料 とし<br />

て, 参 加 8 機 関 で2 回 目 のラウンドロビンテスト<br />

(RRT-08) を 実 施 した 結 果 , 報 告 値 のばらつきは,<br />

RRT-07の 約 半 分 となった[3].これは,WGでの 議<br />

論 を 通 じナレッジが 共 有 できた 成 果 と 考 えられ<br />

た[4].<br />

RRT-09 3 回 目 のラウンドロビンテスト(RRT-09)<br />

は,2 回 のラウンドロビンテストによって 獲 得 し<br />

たナレッジの 評 価 をすることとした.RRT-09では,<br />

試 料 として 薬 剤 (アスタキサンチン) を 選 定 し,こ<br />

れまでのラウンドロビンテストで 報 告 値 の 精 度<br />

が 継 続 的 に 高 い2 機 関 の 条 件 にできる 限 り 揃 えて<br />

実 施 した. 具 体 的 には 質 量 較 正 に 用 いるピークの<br />

組 み 合 わせを 統 一 するおよびラスター 面 積 と 積<br />

算 時 間 を 固 定 することにした. 第 34 回 表 面 分 析 研<br />

究 会 ( 京 都 ) では, 参 加 11 機 関 から 提 出 された 質 量<br />

値 のばらつきについて 報 告 した. 今 回 初 めて 質 量<br />

較 正 に 用 いるピークの 組 み 合 わせを 機 関 間 で 統<br />

一 したが,RRT-08 と 同 程 度 であり 改 善 されなか<br />

った.このことから, 質 量 較 正 ピークの 選 定 以 外<br />

にも,ばらつきを 発 生 させる 要 因 はあると 考 えら<br />

れた[5].<br />

以 上 の 状 況 を 踏 まえて, 第 35 回 表 面 分 析 研 究 会<br />

( 軽 井 沢 ) のナイトセッションでは, 質 量 較 正 ピー<br />

クの 選 定 以 外 の 要 因 について 洗 い 出 しを 行 い, 質<br />

量 確 度 と 精 度 向 上 へ 向 けての 議 論 を 行 った. 議 論<br />

された 主 な 内 容 は,<br />

・サンプルを 溶 媒 で 溶 かす 作 業 方 法 の 機 関 差<br />

・ 質 量 値 の 読 み 取 りの 個 人 差 と 解 析 ソフトによ<br />

る 依 存 性<br />

・ 各 機 関 での 繰 り 返 し 精 度 の 評 価<br />

・ 各 機 関 で 使 用 した 機 種 や 1 次 イオン 種 の 違 い<br />

の 影 響<br />

・ 積 算 時 間 を 固 定 したことによる 影 響<br />

・ 低 質 量 側 の 質 量 校 正 ピークや 高 質 量 側 の 分 子<br />

イオン 種 ピークの 強 度<br />

など 多 岐 にわたった.さらに, 次 回 のラウンドロ<br />

ビンテスト (RRT-10) の 実 施 内 容 についても 議 論<br />

した. 以 下 に 議 論 の 内 容 の 一 部 を 簡 単 に 紹 介 する.<br />

今 回 の RRT-09 のポイントは, 質 量 較 正 に 用 い<br />

るピークの 組 み 合 わせを 統 一 したこととラスタ<br />

ー 面 積 と 積 算 時 間 を 固 定 したことである. 前 者 に<br />

関 して, 正 極 性 の 場 合 では,(i)CH 3 , C 2 H 3 , C 3 H 5 と<br />

(ii)C, CH, CH 2 , C 4 H 3 , C 4 H 5 の 2 種 類 の 組 み 合 わせを<br />

Copyright (c) 2010 by The Surface Analysis Society of Japan<br />

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Journal of Surface Analysis Vol.17, No. 2 (2010) pp.127-128<br />

大 友 晋 哉 他 <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> ワーキンググループ 活 動 報 告<br />

比 較 した.Au + ユーザーとしては,(i)の 組 み 合 わ<br />

せは 十 分 な 強 度 のピークが 揃 っているが,(ii)の 組<br />

み 合 わせには 低 強 度 のピークが 含 まれており, 質<br />

量 較 正 の 精 度 が 悪 くなる 可 能 性 がある.これに 対<br />

して Bi ++ 3 ユーザーからは,(i)の 組 み 合 わせでは 強<br />

度 が 強 すぎ 飽 和 してしまい,(ii)の 組 み 合 わせの 方<br />

が 適 度 な 強 度 であるとの 意 見 が 出 された.よって,<br />

使 用 している 機 種 や 1 次 イオン 種 に 適 した 質 量 較<br />

正 ピークを 選 定 する 必 要 があり,その 基 準 として<br />

ピーク 強 度 という 視 点 も 重 要 であることが 伺 え<br />

る.<br />

後 者 のラスター 面 積 と 積 算 時 間 を 固 定 したこ<br />

とに 関 しては, 高 質 量 側 でのピーク 強 度 に 影 響 が<br />

あった.まず,RRT-07 と RRT-08 で 報 告 された 結<br />

果 を 分 子 イオン 種 のピーク 強 度 という 視 点 で,あ<br />

らためてデータ 整 理 しなおしてみると, 単 原 子<br />

(Ga, In, Au) イオンユーザーの 低 強 度 グループと 3<br />

量 体 (Au 3 , Bi 3 ) イオンユーザーの 高 強 度 グループ<br />

に,はっきりと 分 類 されることがわかった. 一 方 ,<br />

RRT-09 で 積 算 時 間 を 200 s に 固 定 したところ,Au3<br />

量 体 ユーザーが 積 算 時 間 の 短 縮 に 伴 い, 低 強 度 グ<br />

ループへ 移 動 してしまった. 以 上 のことから, 積<br />

算 時 間 を 固 定 することはあまり 好 ましくなく,イ<br />

オンドーズ 量 あるいは 目 安 の 一 定 強 度 を 超 えた<br />

ところまで 積 算 するなど,それぞれの 機 種 や 1 次<br />

イオン 種 に 適 した 積 算 時 間 を 設 定 することが 重<br />

要 であることが 示 唆 される.<br />

今 回 のナイトセッションでは,ピーク 強 度 と 質<br />

量 較 正 の 精 度 や 質 量 値 の 読 み 取 りのばらつきな<br />

どとの 直 接 の 因 果 関 係 を 掴 むところまでは 至 ら<br />

なかったが, 幾 つかの 要 因 を 洗 い 出 すことはでき<br />

たのではないかと 思 っている. 引 き 続 き,RRT-09<br />

のデータ 解 析 を 行 ない,RRT-10 へ 向 けての 準 備 を<br />

進 めていく 予 定 である.<br />

2010 年 6 月 21 日 ナイトセッション 参 加 者 ( 敬 称 略 )<br />

阿 部 芳 巳 ( 三 菱 化 学 科 学 技 術 研 究 センター), 石<br />

田 洋 一 (TDK), 伊 藤 博 人 (コニカミノルタテクノ<br />

ロジーセンター), 猪 又 宏 之 ( 日 本 板 硝 子 テクノ<br />

リサーチ), 井 原 理 恵 (TDK), 大 友 晋 哉 ( 古 河 電 気<br />

工 業 ), 小 林 拓 ( 住 ベリサーチ), 菅 井 健 二 ( 帝 人 ),<br />

徳 高 平 蔵 (SOM ジャパン), 安 福 秀 幸 (リコー), 山<br />

内 康 生 ( 矢 崎 総 業 ).<br />

参 考 文 献<br />

[1] 阿 部 芳 巳 , <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> WG, J. Surf. Anal. 15, 91<br />

(2008).<br />

[2] 阿 部 芳 巳 , <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> WG, J. Surf. Anal. 16, A-43<br />

(2009).<br />

[3] 伊 藤 博 人 , <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> WG, J. Surf. Anal. 16, A-106<br />

(2010).<br />

[4] 阿 部 芳 巳 , <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> WG, J. Surf. Anal. 16, A-107<br />

(2010).<br />

[5] 阿 部 芳 巳 , <strong>TOF</strong>-<strong>SIMS</strong> WG, J. Surf. Anal. 17, A-43<br />

(2010).<br />

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