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鏡川汽水域における魚類・底生動物の成育場として ... - 河川環境管理財団

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鏡 川 汽 水 域 における 魚 類 ・ 底 生 動 物 の 成 育 場 として重 要 なコアマモ 群 落 の 保 全 に 関 する 研 究


鏡 川 汽 水 域 における 魚 類 ・ 底 生 動 物 の 成 育 場 として 重 要 なコアマモ 群 落 の 保 全 に 関 する 研 究要 旨1.はじめに2. 調 査 概 要2.1 調 査 の 目 的2.2 調 査 期 間2.3 調 査 組 織2.4 調 査 項 目3. 調 査 内 容3.1 アマモ 場 の 水 質 および 物 理 環 境3.1.1 コアマモ 生 育 範 囲 の 環 境 条 件3.1.2 アマモ 場 の 環 境 特 性3.2 コアマモ 生 態 調 査3.3 アマモ 場 を 成 育 場 とする 仔 稚 魚 、 底 生 動 物 の 成 育 状 況 調 査3.3.1 調 査 時 期3.3.2 調 査 地 点3.3.4 調 査 方 法3・3・5 調 査 結 果4.おわりに引 用 文 献高 知 県 水 産 試 験 場 田 井 野 清 也高 知 大 学 海 洋 生 物 教 育 研 究 センター 木 下 泉有 限 会 社 エコシステム 細 木 光 夫1


鏡 川 汽 水 域 における 魚 類 ・ 底 生 動 物 の 成 育 場 として 重 要 なコアマモ 群 落 の 保 全 に 関 する 研 究田 井 野 清 也 *・ 木 下 泉 **・ 細 木 光 夫 ***【 目 的 】アマモ 場 は 海 洋 生 物 の 成 育 場 としてまた 沿 岸 水 域 の 浄 化 機 能 として 沿 岸 環 境 にとって 極 めて 重 要 であり、 古 くから 研 究 の 対 象 とされて 来 た。 本 邦 においては 1950~60 年代 にかけて 多 くの 研 究 がなされたが、アマモ 場 の 全 国 的 な 減 退 と 共 に 最 近 では 余 り 研 究 例を 見 ないのが 現 状 である。 河 口 域 などの 汽 水 域 に 繁 殖 するコアマモ 群 落 は、その 立 地 条 件が 人 間 活 動 の 影 響 を 強 く 受 ける 場 所 であるが 故 、ほとんどの 地 域 で 消 滅 してしまっている。ところが、 高 知 市 の 中 心 を 流 れる 鏡 川 下 流 部 には 極 めて 濃 密 で 広 大 なコアマモ 群 落 が 見 られる。これは、 都 市 河 川 では 極 めて 希 有 な 例 であり、 人 口 30 万 の 県 庁 所 在 地 の 中 心 部 を流 れる 河 川 にとって 限 りなく 貴 重 であると 考 えられる。 本 研 究 は,コアマモ 群 落 の 保 全 に向 けた 基 礎 資 料 を 得 るために、コアマモの 生 態 的 知 見 および 成 育 場 としている 海 洋 生 物 の群 集 動 態 を 明 らかにすることを 目 的 とした。【 方 法 】2002 年 1-12 月 にかけて 毎 月 1 回 , 鏡 川 汽 水 域 の 2 地 点 において 方 形 枠 (25×25cm)内 のコアマモを 採 取 し, 株 数 の 計 数 , 草 丈 の 計 測 , 地 上 部 と 地 下 部 の 乾 燥 重 量 の 測 定 を 行った。 環 境 条 件 としてコアマモ 群 落 の 上 流 端 から 下 流 端 の 間 に 設 けた7 地 点 で, 最 深 部 の水 温 , 塩 分 を 表 層 から 底 層 まで 1m 間 隔 で 測 定 した。さらに,2002 年 1,4,6,9,11 月 に鏡 川 汽 水 域 全 域 を 踏 査 し,コアマモの 分 布 範 囲 と 生 育 状 態 ( 被 度 )を 調 査 した。さらに、魚 類 および 底 生 動 物 の 成 育 場 としてのコアマモ 群 落 の 役 割 を 検 討 するため,コアマモ 採 取地 点 付 近 のコアマモ 域 (2 地 点 )と 非 コアマモ 域 (2 地 点 )で 仔 稚 魚 と 底 生 動 物 の 採 集 を行 った. 採 集 には, 浮 遊 および 葉 上 個 体 用 にサーフネット(1×4 m, 網 目 1 mm), 着 底 個 体用 にプッシュネット(0.3×1.5 m, 網 目 2 mm)を 用 いた.【 結 果 】コアマモ 分 布 範 囲 の 水 温 は 8.0(2 月 )-28.5(9 月 )℃, 塩 分 は 0-33.8psu の 範 囲にあった。 分 布 域 は,1-4 月 にかけて 縮 小 し,その 後 拡 大 し,11 月 に 再 び 縮 小 した. 株 数は 60 (10 月 )-394(8 月 ), 草 丈 は 15.4 (10 月 )-73.1 cm(6 月 ), 乾 燥 重 量 は 2.4 (12 月 )-15.6g(9 月 )の 間 でそれぞれ 変 動 した.いずれも 春 季 から 夏 季 にかけて 増 加 し,その 後 減 少 する 傾 向 にあった.しかし, 株 数 を 栄 養 株 と 繁 殖 株 とに 分 けてみると, 前 者 は 8 月 , 後 者 は 9月 にピークを 迎 えた.このことから,8 月 から 9 月 にかけて, 栄 養 株 が 地 下 茎 から 茎 を 伸 長させ, 花 穂 を 成 熟 させる 繁 殖 株 になったと 考 えられた. 本 汽 水 域 に 生 育 するコアマモは 既存 の 内 湾 等 に 生 育 するものと 比 べ, 草 丈 が 高 く,かつ 濃 密 な 群 落 を 形 成 することが 明 らかになった。仔 稚 魚 調 査 では 1 年 間 を 通 して 23 科 54 種 以 上 5,174 尾 の 仔 稚 魚 が 出 現 した. 最 も 出 現量 が 多 かったのはアベハゼ(17.8%)で, 以 下 ,ボラ(9.8%),ヒナハゼ(8.4%),ウロハゼ(7.6%),ヒイラギ(5.7%)と 続 いた.その 他 希 少 種 のアカメや 水 産 業 上 有 用 種 のヒラスズキ,クロダイ,ヘダイなども 比 較 的 多 く 出 現 した. 出 現 種 数 は 2 月 の 14 種 以 上 から 8 月の 24 種 以 上 まで 変 動 し,CPUE( 尾 数 /2 分 間 曳 網 )は 11 月 の 2.5 尾 から 4 月 の 33.7 尾まで 変 動 した.ほとんどの 種 で 体 長 の 季 節 的 増 加 がみられ, 河 口 域 に 数 ヵ 月 間 滞 在 する 傾向 がみられた. 出 現 様 式 を 鉛 直 的 にみると, 浮 遊 種 , 着 底 種 , 浮 遊 後 着 底 する 種 ,および分 散 する 種 に 分 けられた. 生 息 域 でみると,コアマモ 域 に 集 積 する 種 , 各 地 点 に 分 散 する種 ,ある 塩 分 帯 に 多 く 出 現 する 種 に 分 けることができた.この 中 で, 特 にアカメ,ヒイラギ,アベハゼ,ギマ,ヒガンフグはコアマモ 域 を 成 育 場 として 依 存 していることが 考 えられた.(* 高 知 県 水 産 試 験 場 ,** 高 知 大 学 海 洋 生 物 教 育 研 究 センター,*** 有 限 会 社 エコシステム)2


1.はじめにアマモ 場 は 海 洋 生 物 の 成 育 場 としてまた 沿 岸 水 域 の 浄 化 機 能 として 沿 岸 環 境 にとって 極めて 重 要 であり、 古 くから 研 究 の 対 象 とされて 来 た。 本 邦 においては 1950~60 年 代 にかけて 多 くの 研 究 がなされたが、アマモ 場 の 全 国 的 な 減 退 と 共 に 最 近 では 余 り 研 究 例 を 見 ないのが 現 状 である。そのような 中 で 四 万 十 川 河 口 域 には 汽 水 に 適 応 したコアマモのアマモ 場が 形 成 されており、そこでの 仔 稚 魚 調 査 からコアマモが 生 態 系 のカギを 握 っていることが明 らかになりつつある。 他 方 、 河 口 域 などの 汽 水 域 に 繁 殖 するコアマモ 群 落 は、その 立 地条 件 が 人 間 活 動 の 影 響 を 強 く 受 ける 場 所 であるが 故 、ほとんどの 地 域 で 消 滅 してしまっている。 高 知 県 レッドデータブックによると 本 種 は 絶 滅 危 惧 ⅠB 類 に 指 定 されている 1) 。ところが、 高 知 市 の 中 心 を 流 れる 鏡 川 下 流 部 には 極 めて 濃 密 で 広 大 なコアマモ 群 落 が 見 られる。これは、 都 市 河 川 では 極 めて 希 有 な 例 であり、 人 口 30 万 の 県 庁 所 在 地 の 中 心 部 を 流 れる 河川 にとって 限 りなく 貴 重 であると 考 えられる。3


2. 調 査 概 要2.1 調 査 の 目 的コアマモ 群 落 の 保 全 に 向 けた 基 礎 資 料 を 得 るために、コアマモの 生 態 的 知 見 および 成 育場 としている 海 洋 生 物 の 群 集 動 態 を 明 らかにする。2.2 調 査 期 間平 成 14 年 1 月 から 12 月 までの 1 カ 年2.3 調 査 組 織1 高 知 県 水 産 試 験 場 技 師 田 井 野 清 也〒785-0167 須 崎 市 浦 ノ 内 灰 方 1153-23TEL:088-856-1175FAX:088-856-11772 高 知 大 学 海 洋 生 物 教 育 研 究 センター 教 授 木 下 泉〒781‐1164 土 佐 市 宇 佐 町 井 尻 194TEL/FAX:088-856-06333 有 限 会 社 エコシステム 主 任 研 究 員 細 木 光 夫〒781-0270 高 知 市 長 浜 1646-1TEL:088-841-6767FAX:088-841-73332.4 調 査 項 目1)アマモ 場 の 水 質 および 物 理 環 境(1)コアマモ 生 育 範 囲 の 環 境 条 件(2)アマモ 場 の 環 境 特 性2)コアマモ 生 態 調 査3)アマモ 場 を 成 育 場 とする 仔 稚 魚 、 底 生 動 物 の 成 育 状 況 調 査4


3. 調 査 内 容3.1 アマモ 場 の 水 質 および 物 理 環 境3.1.1 コアマモ 生 育 範 囲 の 環 境 条 件コアマモの 生 育 範 囲 の 水 質 、 物 理 環 境 を 把 握 し、アマモ 場 の 形 成 に 必 要 な 環 境 条 件 を 検討 した。1) 調 査 時 期平 成 14 年 1-12 月 の 間 に 毎 月 1 回 行 った。 調 査 日 は 以 下 のとおりである。・ 平 成 14 年 1 月 12 日・ 平 成 14 年 2 月 9 日・ 平 成 14 年 3 月 16 日・ 平 成 14 年 4 月 13 日・ 平 成 14 年 5 月 11 日・ 平 成 14 年 6 月 8 日・ 平 成 14 年 7 月 13 日・ 平 成 14 年 8 月 10 日・ 平 成 14 年 9 月 23 日・ 平 成 14 年 10 月 19 日・ 平 成 14 年 11 月 2 日・ 平 成 14 年 12 月 21 日2) 調 査 地 点浦 戸 湾 、 国 分 川 、 鏡 川 に 設 けた 14 地 点 で 行 った( 図 3・1・1)。3) 調 査 方 法調 査 は 大 潮 の 干 潮 および 満 潮 時 に 行 った。 水 質 チェッカー(WQC-22A; 東 亜 電 波 工 業 株式 会 社 製 )を 用 いて、 各 地 点 の 橋 上 からセンサーを 降 ろし、 表 層 から 底 層 まで 1m 間 隔 で 水温 、 塩 分 を 測 定 した。5


●St.13●St.12●St.11●St.10●St.9●St.8●St.7●St.14●St.6●St.5●St.4●St.3●St.2●St.1図 3・1・1 調 査 地 点6


3) 結 果 と 考 察(1) 水 温鏡 川 と 国 分 川 の 各 調 査 日 における 水 温 の 平 均 値 、 最 大 値 、 最 小 値 の 経 月 変 化 を 図 3・1・2に 示 した。水 温 は 明 瞭 な 季 節 変 動 が 見 られた。 鏡 川 の 水 温 は 8.0(2 月 の 最 小 値 )- 28.5(9 月 の 最 大値 )℃の 範 囲 にあった。 国 分 川 では 9.6(2 月 の 最 小 値 )- 28.4(8 月 の 最 大 値 )℃の 間 を 変動 した。 両 河 川 の 水 温 に 大 きな 差 はなかった。3025Kagami R.20Temperature(℃)15105302520Kokubu R.15105NDJFMAMJ JMonthsASOND図 3・1・2 鏡 川 と 国 分 川 における 水 温 の 経 月 変 化横 棒 は 平 均 値 、 縦 棒 で 範 囲 ( 最 大 - 最 小 )を 示 した。ND は 調 査 を 行 わなかった。7


(2) 塩 分鏡 川 と 国 分 川 の 各 調 査 日 における 塩 分 の 平 均 値 、 最 大 値 、 最 小 値 の 経 月 変 化 を 図 3・1・3に 示 した。鏡 川 の 塩 分 は 0 – 33.9 psu の 範 囲 にあった。 両 河 川 の 塩 分 に 大 差 はなく、 同 様 の 変 動 傾向 を 示 した。35 Kagami R.30252015105Salinity(psu)03530Kokubu R.2520151050NDJFMAMJJASONDMonths図 3・1・3 鏡 川 と 国 分 川 における 塩 分横 棒 は 平 均 値 、 縦 棒 で 範 囲 ( 最 大 - 最 小 )を 示 した。ND は 調 査 を 行 わなかった。次 に、 鏡 川 河 口 域 に 最 も 海 水 が 進 入 していた 調 査 日 の 塩 分 の 分 布 を 図 3・1・4、 図 3・1・5に 示 した。満 潮 時 には( 図 3・1・4)、St.2 付 近 の 底 層 まで 20 psu 以 上 の 海 水 が 遡 上 していた。コアマモの 繁 茂 域 である St.3 から St.4 の 間 は 25 psu 以 上 となっていた。8


0Depth(m)-1-2-3-4-5Kagami RiverNov. 2nd 2002High tide


0Depth(m)-1-2-3-4-5Kagami RiverAug. 10th 2002High tide


因 であると 考 えられたが、 今 後 も 注 意 する 必 要 があるといえる。30 Kagami R.25201510Turbidity(NTU)50400300Kokubu R.2001000NDJFMNDAMJ JMonthsASOND図 3・1・8 鏡 川 と 国 分 川 における 濁 度横 棒 は 平 均 値 、 縦 棒 で 範 囲 ( 最 大 - 最 小 )を 示 した。ND は 調 査 を 行 わなかった。11


3.1.2 アマモ 場 の 環 境 特 性アマモ 場 と 非 アマモ 場 において 水 質 、 物 理 環 境 を 観 測 し、アマモ 場 の 環 境 特 性 を 把 握 しようとした。1) 調 査 時 期平 成 14 年 1-12 月 にかけて、 毎 月 1 回 行 った。 調 査 日 は 以 下 の 通 りである。2) 調 査 地 点鏡 川 の 5 地 点 (St.2、3、4、5、6)で 行 った( 図 3・1・1)。3) 調 査 方 法調 査 は 干 潮 時 に 行 った。アマモ 場 および 非 アマモ 場 において 水 質 チェッカー(WQC-22A; 東 亜 電 波 工 業 株 式 会 社 製 )を 用 いて、 表 層 と 底 層 の 水 温 、 塩 分 、 濁 度 、pH、溶 存 酸 素 量 を 測 定 した。3) 結 果 と 考 察(1) 水 温水 温 の 地 点 間 比 較 を 図 3・1・9に 示 した。水 温 は 10.3 - 28.8℃の 間 にあり、 地 点 間 に 大 きな 差 はなかった。 最 も 上 流 に 位 置 するSt.2 では 相 対 に 低 い 値 で 推 移 する 傾 向 にあったが、アマモ 場 と 非 アマモ 場 を 特 徴 付 けるような 違 いは 認 められなかった。3025St.2St.3St.4St.5St.6水 温 (℃)20151051 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12月図 3・1・9 アマモ 場 と 非 アマモ 場 における 干 潮 時 の 水 温St.3 – 5 はアマモ 場 、St.2 と St.6 は 非 アマモ 場 の 観 測 点12


(2) 塩 分塩 分 の 地 点 間 比 較 を 図 3・1・10に 示 した。周 年 コアマモの 生 育 が 見 られない St.2 では、 塩 分 は 0.1 – 9.1 psu の 範 囲 にあった。 一方 、 繁 茂 域 に 当 たる St.3 – 5 の 塩 分 は、0 – 24 psu の 間 にあった。このことから、 少 なくとも 10 psu 以 上 の 塩 分 が 頻 繁 に 認 められるような 場 所 がコアマモの 生 育 には 不 可 欠 であることが 示 唆 された。また、 繁 茂 域 よりも 下 流 側 に 位 置 する St.6 では、 塩 分 は 1.0 – 21.8 psu の 範 囲 にあった。 今 回 の 調 査 からは、 汽 水 域 に 生 育 するコアマモの 好 適 塩 分 の 上 限 を 明 らかにすることはできなかった。 今 後 も 調 査 を 継 続 する 必 要 がある。2520St.2St.3St.4St.5St.6塩 分 (psu)1510501 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12月図 3・1・10 アマモ 場 と 非 アマモ 場 における 干 潮 時 の 塩 分St.3 – 5 はアマモ 場 、St.2 と St.6 は 非 アマモ 場 の 観 測 点(3) 濁 度濁 度 の 地 点 間 比 較 を 図 3・1・11に 示 した。濁 度 は 0.5 – 30 NTU の 範 囲 にあり、St.5 と St.6 で 5、8、9 月 に 高 い 値 が 観 測 された 以外 には、 地 点 間 に 大 きな 差 は 見 られなかった。353025St.2St.3St.4St.5St.6濁 度 (NTU)201510501 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12月図 3・1・11 アマモ 場 と 非 アマモ 場 における 干 潮 時 の 濁 度St.3 – 5 はアマモ 場 、St.2 と St.6 は 非 アマモ 場 の 観 測 点13


(4)pHpH の 地 点 間 比 較 を 図 3・1・12に 示 した。周 年 コアマモの 生 育 が 見 られない St.2 では、pH は 6.8 – 7.4 の 範 囲 にあった。 一 方 、 繁茂 域 に 当 たる St.3 – 5 では、7.5 – 8.5 の 間 にあった。 繁 茂 域 よりも 下 流 側 に 位 置 する St.6では、7.2 – 8.0 の 範 囲 にあった。アマモ 場 は 非 アマモ 場 と 比 べて pH が 高 い 値 で 推 移 し、 特 に 春 季 から 夏 季 にかけてその 傾向 が 強 くなることが 分 かった。9.08.5St.2St.3St.4St.5St.68.0pH7.57.06.56.01 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12月図 3・1・12 アマモ 場 と 非 アマモ 場 における 干 潮 時 の pHSt.3 – 5 はアマモ 場 、St.2 と St.6 は 非 アマモ 場 の 観 測 点14


(5) 溶 存 酸 素 量溶 存 酸 素 量 の 地 点 間 比 較 を 図 3・1・13に 示 した。周 年 コアマモの 生 育 が 見 られない St.2 では、 溶 存 酸 素 量 は 4.3 – 8.1 mg/l の 範 囲 にあった。 一 方 、 繁 茂 域 に 当 たる St.3 – 5 では、4.6 – 10.7 mg/l の 間 を 推 移 した。 繁 茂 域 よりも 下 流 側 に 位 置 する St.6 では、4.7 – 8.8 mg/l の 範 囲 にあった。先 に 述 べた pH と 同 様 に、アマモ 場 では 非 アマモ 場 と 比 べて 溶 存 酸 素 量 が 高 い 値 で 推 移 し、特 に 春 季 から 夏 季 にかけてその 傾 向 が 顕 著 となることが 分 かった。 春 季 から 夏 季 はコアマモの 繁 茂 期 に 相 当 することから、この 期 間 はコアマモの 光 合 成 量 が 大 きくなっていることがうかがえる。溶 存 酸 素 量 (mg/l)121086St.2St.3St.4St.5St.641 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12月図 3・1・13 アマモ 場 と 非 アマモ 場 における 干 潮 時 の 溶 存 酸 素 量St.3 – 5 はアマモ 場 、St.2 と St.6 は 非 アマモ 場 の 観 測 点15


3.2 コアマモ 生 態 調 査1) 調 査 時 期 と 地 点平 成 14 年 1-12 月 にかけて 毎 月 1 回 、 鏡 川 に 設 けた 2 地 点 (St.3、4)で 行 った( 図 3・1・1)。2) 調 査 方 法各 地 点 のコアマモ 群 落 内 で 25×25cm のコドラートを 用 いて 枠 内 の 植 物 体 を 底 泥 ごと 全て 採 取 した。 採 取 した 植 物 体 を 目 合 い 5mm の 網 袋 内 で 洗 浄 し、 底 泥 を 取 り 除 いた 後 に 実 験室 に 持 ち 帰 った。 持 ち 帰 った 試 料 は、 地 上 部 と 地 下 部 に 分 け、 株 数 の 計 数 、 各 地 点 30 株 の草 丈 の 計 測 、 地 上 部 と 地 下 部 の 現 存 量 の 測 定 を 行 った。 現 存 量 の 測 定 は、 試 料 を 風 乾 後 、80℃に 設 定 した 対 流 式 乾 燥 機 ( 三 洋 電 機 株 式 会 社 製 )で 24 時 間 乾 燥 し、デシケーターで 冷却 後 に 計 量 した。3) 結 果 と 考 察(1) 草 丈St.3 と St.4 における 草 丈 の 季 節 変 化 を 図 3・2・1に 示 した。St.3 では 草 丈 の 平 均 値 は、7.4(11 月 )- 29.9(6 月 )cm の 間 を 変 動 した。St.4 では 草丈 の 平 均 値 は、7.7(3 月 )- 22.3(8 月 )cm の 範 囲 にあった。 最 も 伸 長 したものは、74.2cm(St.3 で 6 月 に 得 られた)にまで 達 した。両 地 点 で 季 節 的 消 長 はやや 異 なったが、 概 ね 夏 季 に 大 きく 伸 長 し、 冬 季 に 衰 退 することが 分 かった。80St. 36040Height(cm)2008060St. 440200JFMAMJ JMonthsASOND図 3・2・1 草 丈 の 季 節 変 化横 棒 は 平 均 値 、 縦 棒 で 範 囲 ( 最 大 - 最 小 )を 示 した。16


(2) 株 数St.3 と St.4 における 株 数 の 季 節 変 化 を 図 3・2・2に 示 した。St.3 の 株 数 の 平 均 値 は、 栄 養 株 が 49.5(10 月 )- 311(8 月 )cm、 繁 殖 株 が 0(4、12 月 )- 208(9 月 )cm の 間 を 変 動 した。 同 じく St.4 では、 栄 養 株 が 65(11 月 )- 174(8 月 )cm、繁 殖 株 が 0(4 月 )- 52(10 月 )cm の 範 囲 にあった。St.3 では 6 月 以 降 に 繁 殖 株 が 増 加 し 始 め、9 月 には 群 落 の 約 60%を 占 めた。しかし、10月 にはほとんどの 繁 殖 株 が 流 出 し、それに 伴 って 株 数 は 著 しく 減 少 した。 他 方 、St.4 では8 月 から 10 月 にかけて 繁 殖 株 が 増 加 したが、 群 落 の 約 30% 程 度 を 占 める 程 度 であった。 周年 を 通 して St.4 では、St.3 と 比 べて 緩 やかな 変 動 パターンを 示 すことが 特 徴 的 であった。400300Reproductive shootVegetative shootSt.3Shoots(N/625cm2)2001004000300200St.41000J F M A M J J A S O N DMonths図 3・2・2 株 数 の 季 節 変 化17


(3) 現 存 量St.3 と St.4 における 現 存 量 の 季 節 変 化 を 図 3・2・3に 示 した。St.3 の 現 存 量 は、 地 上 部 ( 葉 )が 0.4(11 月 )- 11.8(9 月 )g、 地 下 部 ( 地 下 茎 と 根 )が 1.3(11 月 )- 5.3(1 月 )g の 間 を 変 動 した。 同 じく St.4 では、 地 上 部 ( 葉 )が 0.3(3月 )- 8.8(9 月 )g、 地 下 部 ( 地 下 茎 と 根 )が 1.2(11 月 )- 6.2(10 月 )g の 範 囲 にあった。St.3 では 3 月 から 9 月 まで 概 ね 増 加 し、10 月 に 急 減 した。 一 方 、St.4 では 3 月 から 10月 まで 緩 やかな 増 加 が 見 られ、11 月 に 急 減 した。 春 から 秋 にかけて 増 加 し、その 後 急 減 するという 変 動 パターンは 両 地 点 において 認 められたが、 時 期 的 に 異 なったことが 特 徴 的 であった。さらに、 先 に 述 べた 栄 養 株 と 繁 殖 株 の 組 成 も 地 点 によって 大 きく 異 なった。3・1 章 で 述 べたとおり、 両 地 点 の 環 境 条 件 には 大 きな 差 は 認 められないことから、その 原 因 はよく 分 からない。 今 後 も 調 査 を 継 続 し、コアマモ 群 落 の 季 節 的 消 長 と 環 境 条 件 との 関 わりを 明 らかにしていく 必 要 がある。Biomass(g/625cm 2 )16141210864201614121086420Aboveground (Reef)Underground (Root and Rhizome)St.3St.4J F M A M J J A S O N DMonths図 3・2・3 株 数 の 季 節 変 化18


3.3 アマモ 場 を 成 育 場 とする 仔 稚 魚 、 底 生 動 物 の 成 育 状 況 調 査3.3.1 調 査 時 期平 成 13 年 12 月 から 平 成 14 年 11 月 までの 1 年 間 に、 月 1 回 の 頻 度 で 行 った。3.3.2 調 査 地 点調 査 箇 所 を 図 3・3・1に 示 すとともに 各 調 査 箇 所 の 状 況 を 表 3・3・1 に 示 した。表 3・3・1 各 調 査 箇 所 の 状 況調 査 箇 所St.2- 下St.3- 下St.4- 上St.4- 下St.6- 下調 査 箇 所 の 状 況塩 分 の 遡 上 上 限 。アマモは 周 年 生 育 しなかった。 底 質 は 泥 ~ 小 礫 で、 空 き 缶 の 滞 留 する 場 所 が 存在 する。アマモは 周 年 生 育 していた。 底 質 は 岸 部 では 大 礫 間 に 泥 が 堆 積 し、 沖 に 向 かって 砂 泥 から 小 礫 へと 順 次 粒 径 が 大 きくなった。アマモは 泥 ~ 砂 泥 域 にかけて 生 育 していた。アマモは 周 年 生 育 していた。 底 質 は 岸 部 では 大 礫 間 に 泥 が 堆 積 し、 沖 に 向 かって 砂 泥 から 小 礫 へと 順 次 粒 径 が 大 きくなった。アマモは 泥 ~ 砂 泥 域 にかけて 生 育 していた。アマモは 周 年 生 育 していた。 底 質 は 岸 部 では 大 礫 間 に 泥 が 堆 積 し、 沖 に 向 かって 砂 泥 から 小 礫 へと 順 次 粒 径 が 大 きくなった。アマモは 泥 ~ 砂 泥 域 にかけて 生 育 していた。アマモは6 月 ~8 月 にかけて 生 育 していた。 底 質 は 泥 ~ 小 礫 で、アマモは 泥 域 に 生 育 していた。図 3・3・1 調 査 地 点19


3.3.4 調 査 方 法試 料 の 採 集 には 中 央 に 袋 網 を 設 けた 縦 1m、 幅 4m、 網 目 1mm の 小 型 曳 き 網 ( 図 3・3・2)と、 高 さ 0.3m、 幅 1.5m の 開 口 部 を 持 ち、 網 目 2mm の 小 型 けた 網 ( 図 3・3・3)を 用 いた。小 型 曳 き 網 は 2 名 で 曳 くことによって、また 小 型 けた 網 は 2 名 で 押 すことによって 曳 網した。 両 採 集 とも 河 岸 に 沿 って 行 い、 速 度 0.81 ノット、2 分 ( 約 50m)を 1 曳 網 とした。これを 1 回 の 調 査 で 各 々4~14 曳 網 行 った。採 集 した 仔 稚 魚 および 十 脚 甲 殻 類 は、ただちに 10%ホルマリン 溶 液 で 固 定 した 後 、 研 究室 に 持 ち 帰 り 種 査 定 と 計 数 を 行 った。なお、 十 脚 甲 殻 類 の 標 準 和 名 、 学 名 およびそれらの配 列 は 河 川 水 辺 の 国 勢 調 査 のための 生 物 リスト、 平 成 11 年 度 版 (( 財 )リバーフロント 整備 センター,2000)に 従 った。試 料 の 採 集 はアマモ 域 、 非 アマモ 域 に 分 けて 行 った。 各 月 の 調 査 箇 所 を 表 3・3・2に示 した。表 3・3・2 各 月 の 調 査 箇 所アマモ 20022003調 査 箇 所の 有 無 12 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月St.2- 下 無 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○St.3- 下St.4- 上St.4- 下St.6- 下有有有有○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○無無無無 ○ ○ ○ ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○20


図 3・3・2 小 型 曳 き 網図 3・3・3 小 型 けた 網21


3・3・5 調 査 結 果1) 底 生 動 物 ( 十 脚 甲 殻 類 )(1) 種 組 成1 年 間 の 採 集 の 結 果 、20 種 以 上 、24,002 個 体 の 十 脚 甲 殻 類 を 得 た。 表 3・3・3に 全 種の 出 現 率 を 示 した。 最 も 出 現 率 の 高 い 種 はミゾレヌマエビで、 全 体 の 78.68%を 占 めた。 以下 スジエビモドキ(10.11%)、キシユメエビ(8.07%)と 続 き、これら 上 位 3 種 で 全 出 現 個体 の 約 95%を 占 めた。 高 知 県 の 河 川 で 確 認 されている 十 脚 甲 殻 類 は 89 種 であるが 2) 、その多 くは 回 遊 種 ( 生 活 史 の 中 で 一 度 は 海 に 下 らなくては 繁 殖 ができない 種 )もしくは 汽 水 ・海 水 性 種 ( 汽 水 域 ・ 海 域 を 主 な 生 息 地 とする 種 )であり、 陸 封 種 ( 一 生 を 淡 水 域 で 生 活 する 種 )はスジエビ、ミナミヌマエビ、アメリカザリガニおよびサワガニの 4 種 である。 本調 査 では 陸 封 型 のスジエビが 僅 かながら 出 現 した。また、 高 知 県 レッドデータブックで「 絶 滅 危 惧 ⅠA 類 」に 指 定 されているムツハアリアケガニ、 同 「 情 報 不 足 」に 指 定 されているトウヨウヤワラガニも 少 数 出 現 した。表 3・3・3 採 集 した 十 脚 甲 殻 類 のリストおよび 出 現 率( 平 成 13 年 12 月 ~ 平 成 14 年 11 月 )科 名種 名出 現 率和 名 学 名 (%)クルマエビ ヨシエビ Metapenaeus ensis 0.02ヨシエビ 属 の 数 種 Metapenaeus spp. 0.96クマエビ Penaeus semisulcatus 0.00クルマエビ 属 の 数 種 Penaeus spp. 0.41ユメエビ キシユメエビ Lucifer kanseni 8.07テナガエビ ミナミテナガエビ Macrobranchium formosense 0.09テナガエビ Macrobranchium formosense 0.65スジエビ Palaemon paucidens 0.00スジエビモドキ Palaemon serrifer 10.11テナガエビ 科 の 一 種 Palaemonidae sp. 1.47テッポウエビ セジロムラサキエビ Athanas japonicus 0.01エビジャコ エビジャコ Crangon affinis 0.14ヌマエビ ヤマトヌマエビ Caridina japonica 0.11ミゾレヌマエビ Caridina leucosticta 78.68ヌマエビ Paratya compressa compressa 0.20ヌマエビ 科 の 一 種 Atyidae sp. 0.02イワガニ モクズガニ Eriocheir japonicus 0.02ケフサイソガニ Hemigrapsus penicillatus 0.00Ptychognathus sp. Ptychognathus sp. 0.02オオヒライソガニ Varuna litterata 0.01イワガニ 科 の 数 種 Grapsidae spp. 0.01ヤワラガニ トウヨウヤワラガニ Halicarcinus orientalis 0.00スナガニ ムツハアリアケガニ Camptandrium sexdentatum 0.01アリアケモドキ Deiratonotus cristatus 0.01ワタリガニ ノコギリガザミ 属 の 数 種 Scylla spp. 0.02合 計100.0022


(2) 季 節 変 化鏡 川 河 口 域 における 種 類 数 および 1 曳 網 当 たりの 採 集 個 体 数 を 図 3・3・4に 示 した。種 類 数 は 6 月 が 最 も 多 く、 次 いで 10 月 が 多 かった。 個 体 数 は 9 月 が 突 出 して 多 く、 以 下12 月 、1 月 、8 月 、6 月 と 続 いた。以 上 のように 鏡 川 河 口 域 では 種 類 数 と 個 体 数 の 多 い 月 は 一 致 しないが、6 月 は 種 類 数 、 個体 数 とも 多 い 傾 向 がうかがえ、 十 脚 甲 殻 類 相 が 豊 富 といえる。12500108種類6数42個体数/曳網400300200100012 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月012 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月図 3・3・4 鏡 川 河 口 域 における 十 脚 甲 殻 類 の 種 類 数 および 1 曳 網 当 たりの 個 体 数次 に 出 現 率 が 高 いミゾレヌマエビ、スジエビモドキ、キシユメエビおよび 水 産 的 価 値 の高 いヨシエビ 属 、クルマエビ 属 の 1 曳 網 当 たりの 個 体 数 について 季 節 変 化 を 図 5 に 示 した。なお、ヨシエビ 属 とクルマエビ 属 には 種 名 の 判 別 できた 種 も 含 めた。これによると、 上 位 3 種 のピークは、ミゾレヌマエビでは 9 月 、スジエビモドキでは 6月 、キシユメエビでは 12 月 であった。 水 産 的 価 値 の 高 いヨシエビ 属 は 2 回 のピークを 持 ち3、4 月 と 9~11 月 に 多 かった。この 2 つが 同 種 であるかは 不 明 であり、 今 後 の 検 討 が 必 要である。 一 方 、ヨシエビ 属 と 同 様 に 水 産 的 な 価 値 の 高 いクルマエビ 属 は 8 月 から 11 月 にかけて 順 次 増 加 した。23


500400ミゾレヌマエビ3002001000806012 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月スジエビモドキ4020個体数/曳網08060402003212 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月キシユメエビ12 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月ヨシエビ 属103212 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月クルマエビ 属1012 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月図 3・3・5 出 現 率 の 高 い 種 および 水 産 的 価 値 の 高 い 種 の 季 節 変 化24


(3)アマモ 域 と 非 アマモ 域 における 出 現 状 況アマモ 域 、 非 アマモ 域 の 種 類 数 および 1 曳 網 当 たりの 個 体 数 を 図 3・3・6に 示 した。これをみると、 両 項 目 ともアマモ 域 が 多 く、 特 に 1 曳 網 当 たりの 個 体 数 は 非 アマモ 域 を 圧倒 した。10800種類数864個体数/曳網6004002200012 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月012 月 2 月 4 月 6 月 8 月 10 月アマモ 域非 アマモ 域図 3・3・6 鏡 川 河 口 域 におけるアマモ 域 、 非 アマモ 域 の 種 類 数 および 個 体 数次 いで 出 現 個 体 数 の 上 位 10 位 までの 種 についてアマモ 域 と 非 アマモ 域 におけるそれぞれの 出 現 率 を 求 め 図 3・3・7に 示 した。 出 現 個 体 数 の 上 位 10 までの 種 では、エビジャコを除 く 9 種 がアマモ 域 での 出 現 割 合 が 高 かった。さらにこのうちヨシエビ 属 の 数 種 、キシユメエビを 除 く 7 種 はアマモ 域 での 出 現 割 合 が 90% 以 上 を 占 め、アマモ 域 に 集 中 する 傾 向 を示 した。ヨシエビ 属 の 数 種クルマエビ 属 の 数 種キシユメエビテナガエビスジエビモドキテナガエビ 科 の 一 種エビジャコヤマトヌマエビミゾレヌマエビヌマエビ0 20 40 60 80 100組 成 (%)アマモ 域 非 アマモ 域図 3・3・7 アマモ 域 と 非 アマモ 域 における 出 現 率( 出 現 個 体 数 の 上 位 10 位 までの 種 )25


2) 仔 稚 魚1 年 間 を 通 して 23 科 54 種 以 上 5,174 尾 の 仔 稚 魚 が 出 現 した。 最 も 出 現 量 が 多 かったのはアベハゼ(17.8%)で、 以 下 、ボラ(9.8%)、ヒナハゼ(8.4%)、ウロハゼ(7.6%)、ヒイラギ(5.7%)と 続 いた。その 他 希 少 種 のアカメや 水 産 業 上 有 用 種 のヒラスズキ、クロダイ、ヘダイなども 比 較 的 多 く 出 現 した。 出 現 種 数 は 2 月 の 14 種 以 上 から 8 月 の 24 種 以 上 まで 変 動 し、CPUE( 尾 数 /2 分 間 曳 網 )は 11 月 の 2.5 尾 から 4 月 の 33.7 尾 まで 変 動 した。ほとんどの 種 で 体 長 の 季 節 的 増 加 がみられ、 河 口 域 に 数 ヵ 月 間 滞 在 する 傾 向 がみられた。出 現 様 式 を 鉛 直 的 にみると、 浮 遊 種 、 着 底 種 、 浮 遊 後 着 底 する 種 、および 分 散 する 種 に 分けられた。 生 息 域 でみると、コアマモ 域 に 集 積 する 種 、 各 地 点 に 分 散 する 種 、ある 塩 分 帯に 多 く 出 現 する 種 に 分 けることができた。この 中 で、 特 にアカメ、ヒイラギ、アベハゼ、ギマ、ヒガンフグはコアマモ 域 に 成 育 場 として 依 存 していることが 考 えられた。26


表 3・3・4 仔 稚 魚 調 査 における 出 現 種科 種 %標 準 体 長 の 範 囲ウナギ ウナギ 0.19 15.8 - 167.0カタクチイワシ カタクチイワシ 0.25 7.5 - 35.2ニシン コノシロ 0.93 6.8 - 14.5ドロクイ 0.06 11.4 - 14.1コイ フナ 0.31 3.5 - 5.2ギンブナ 0.06 15.1 - 171.0ウグイ 4.72 6.9 - 100.8オイカワ 0.25 7.1 - 9.8ゴンズイ ゴンズイ 0.29 123.0 - 182.0アユ アユ 0.81 11.2 - 37.9ボラ ボラ 9.78 20.3 - 35.8メダカ メダカ 0.10 6.7 - 11.5サヨリ サヨリ 0.06 10.9 - 33.9ヨウジウオ ガンテンイシヨウジ 0.19 36.8 - 91.2オオウミウマ 0.12 22.8 - 41.6テングヨウジ 0.23 84.2 - 150.4アカメ アカメ 2.63 4.4 - 129.0スズキ スズキ 0.04 11.0 - 12.7ヒラスズキ 1.68 6.5 - 36.0サンフィッシュ ブルーギル 0.06 13.8 - 15.9アジ ミナミイケカツオ 0.02 25.0ヒイラギ ヒイラギ 5.72 17.5 - 48.2クロサギ セッパリサギ 2.38 10.0 - 38.4ダイミョウサギ 0.31 9.3 - 17.1クロサギ 0.21 5.9 - 14.4イサキ コショウダイ 0.02 7.1タイ キチヌ 0.37 9.8 - 21.0クロダイ 2.53 8.3 - 20.2ヘダイ 4.16 5.2 - 29.1シマイサキ シマイサキ 0.17 9.0 - 19.2ハゼ マハゼ 5.47 9.8 - 111.8スジハゼ 0.39 26.7 - 49.8ウキゴリ 属 0.17 9.8 - 25.8チチブモドキ 0.15 17.6 - 43.5オカメハゼ 0.10 12.5 - 49.2カワアナゴ 0.52 8.4 - 48.2カワアナゴ 属 3.63 8.6 - 60ヒモハゼ 0.70 5.7 - 10.7ヒメハゼ 0.54 12.3 - 53.6ウロハゼ 7.60 6.3 - 137ナガミミズハゼ 0.02 14.7アベハゼ 17.84 5.4 - 30.4ノボリハゼ 0.08 12.1 - 28.8サツキハゼ 0.02 15.9ヒナハゼ 8.41 6 - 30.2ゴクラクハゼ 2.96 11.7 - 48.6ヨシノボリ 属 3.77 6.3 - 20.7ボウズハゼ 0.04 25.9 - 26.1チチブ 属 2.92 5 - 45.6不 明 ハゼ 0.29 5.7 - 13.6ギマ ギマ 2.30 3.2 - 50.2カワハギ アミメハギ 0.08 4.2 - 5.7フグ クサフグ 2.38 4.2 - 18.5ヒガンフグ 1.01 3.1 - 10.227


4.おわりに本 研 究 ではコアマモ 群 落 の 生 育 環 境 およびその 環 境 特 性 を 明 らかにし、アマモ 場 が 成 立する 条 件 を 把 握 するとともに、コアマモの 季 節 的 消 長 を 明 らかにしようとした。さらに、アマモ 場 を 利 用 する 仔 稚 魚 および 底 生 動 物 の 動 態 を 調 査 し、 鏡 川 河 口 域 のアマモ 場 の 重 要性 を 検 証 しようとした。汽 水 域 に 生 育 するコアマモは、 既 存 の 沿 岸 域 に 生 育 するものと 比 較 して、より 大 きく 伸長 すること、 濃 密 な 群 落 を 形 成 することが 明 らかになった。さらに、コアマモ 場 の 成 立 条件 として、 干 潮 時 においても 塩 分 が 15 – 25 psu 程 度 は 残 存 していることが 必 要 であることが 分 かった。さらに、アマモ 場 の 環 境 特 性 として、 特 にコアマモの 繁 茂 期 となる 春 季 から 夏 季 にかけては、 非 アマモ 場 と 比 べてより 多 くの 溶 存 酸 素 が 存 在 することが 分 かった。これら 環 境 特性 が、 河 口 域 に 生 息 する 動 物 相 に 大 きな 影 響 を 与 えていると 考 えられる。仔 稚 魚 、 底 生 動 物 調 査 では、 多 くの 動 物 がアマモ 場 を 利 用 していることが 明 らかになった。1 年 間 の 調 査 ではあったが、アマモ 場 の 重 要 性 を 検 証 するには、 十 分 な 証 拠 を 得 られたと 思 われる。今 回 の 調 査 ではまだ 不 十 分 ではあるが、 今 後 も 調 査 を 続 けることで 河 口 域 におけるコアマモの 生 態 やアマモ 場 を 成 育 場 とする 海 洋 生 物 の 群 集 動 態 が 明 らかにされ、これまで 見 過ごされてきた 河 口 域 の 生 態 系 解 明 の 一 助 となるものと 確 信 する。私 たち 研 究 グループは 今 後 も 河 口 域 を 中 心 とした 植 物 および 動 物 の 相 互 関 係 に 関 する 調査 を 続 け、 様 々な 形 で 情 報 提 供 を 行 っていきたいと 考 えている。28


引 用 文 献1)( 財 ) 高 知 県 牧 野 記 念 財 団 (2000):コアマモ, 高 知 県 レッドデータブック[ 植 物 編 ],pp.282. 高 知 県 , 高 知 .2) 酒 井 勝 司 ・ 細 木 光 夫 (2002): 汽 水 ・ 淡 水 産 十 脚 甲 殻 類 , 高 知 県 レッドデータブック[ 動物 編 ],pp.226-235. 高 知 県 , 高 知 .29

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