12.07.2015 Views

ドナウ・ライン川水系の流域管理と自然再生 - 河川環境管理財団

ドナウ・ライン川水系の流域管理と自然再生 - 河川環境管理財団

ドナウ・ライン川水系の流域管理と自然再生 - 河川環境管理財団

SHOW MORE
SHOW LESS

You also want an ePaper? Increase the reach of your titles

YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.

ISSN 1347-751X河 川 環 境 総 合 研 究 所 資 料第 14 号ドナウ・ライン 川 水 系 の 流 域 管 理 と 自 然 再 生ミュンヘン 空 港 到 着 間 近 の 機 内 から平 成 17 年 3 月( 財 ) 河 川 環 境 管 理 財 団河 川 環 境 総 合 研 究 所


目次まえがき1 調 査 目 的 ------------------------------------------------------------------------------------------------12 調 査 団 行 程 ---------------------------------------------------------------------------------------------22.1 調 査 団 行 程 -------------------------------------------------------------------------------------22.2 調 査 団 メンバー-------------------------------------------------------------------------------53 河 川 事 業 に 関 わる 枠 組 み---------------------------------------------------------------------------63.1 ドナウ 流 域 の 国 際 的 な 枠 組 み-------------------------------------------------------------63.2 ドイツの 枠 組 み-------------------------------------------------------------------------------74 ドナウプロジェクト------------------------------------------------------------------------------- 114.1 ドナウ 川 保 全 国 際 委 員 会 (ICPDR)における 取 り 組 み-------------------------- 114.2 ウィーン 工 科 大 学 における 取 り 組 み-------------------------------------------------- 185 ドイツ 連 邦 水 理 研 究 所 の 取 り 組 み------------------------------------------------------------- 336 バイエルン 州 における 再 自 然 化 等 への 取 り 組 み------------------------------------------- 476.1 バイエルン 州 における 取 り 組 み-------------------------------------------------------- 476.2 イザープロジェクト----------------------------------------------------------------------- 586.3 MD 送 水 プロジェクト -------------------------------------------------------------------- 787 ラインラントファルツ 州 における 環 境 アクションプログラム ------------------------ 837.1 アクション・ブラウ----------------------------------------------------------------------- 837.2 アクション・ブラウの 具 体 例 ----------------------------------------------------------1018 現 地 視 察 結 果 ---------------------------------------------------------------------------------------1219 河 川 事 業 への 取 り 組 みを 調 査 して------------------------------------------------------------133あとがき< 資 料 >入 手 した 資 料 リスト


まえがき本 調 査 報 告 書 は、( 財 ) 河 川 環 境 管 理 財 団 が 平 成 16 年 10 月 14~25 日 にかけてドナウ 川 およびライン 川 水 系 における 流 域 管 理 ・および 市 の 実 践 例 について 現 地 調 査 およびヒヤリングを 行 った 成 果 を 記 述 するものです。ドナウ 川 水 系 およびライン 川 水 系 については、すでに 多 くの 調 査 団 が 訪 れ 報 告 書 の 作 成を 行 っており、われわれ 調 査 団 が 訪 問 しても、また 日 本 人 が 来 た 裕 福 な 国 ですねと 皮 肉 を言 われるのではないかと 危 惧 しました。そこで、 調 査 内 容 を 水 系 の 管 理 および 河 川 の 自 然再 生 に 関 する 思 想 的 ・ 社 会 経 済 的 背 景 とその 運 営 に 関 する 調 査 にウェイトを 置 き、 出 発 前に 河 川 管 理 組 織 に 財 団 として 知 りたいことについて 質 問 状 を 送 付 し、それに 関 する 討 議 と現 地 視 察 を 行 いました。 幸 いなことに 受 け 入 れ 機 関 が 親 切 に 熱 心 に 対 応 してくれ 私 たちの危 惧 は 調 査 中 に 消 えてなくなりました。報 告 書 は、なるべく 生 の 雰 囲 気 を 出 すため、ヒヤリングおよび 討 議 内 容 を 編 集 して 会 話体 としました。地 形 ・ 気 候 ・ 宗 教 的 背 景 の 異 なる 地 域 の 実 情 に 触 れ、 調 査 団 として 得 ることがありました。それが 伝 えられたらと 思 います。平 成 17 年 3 月調 査 団 団 長山 本 晃 一


2. 調 査 団 行 程2.1 調 査 団 行 程調 査 期 間 : 平 成 16 年 10 月 14 日 ~ 平 成 16 年 10 月 25 日訪 問 国 :オーストリア、ドイツ、フランス東 京ケルンパリウィーンミュンヘン図 2.1 全 体 調 査 行 程赤 は 空 路 、 青 は 陸 路 を 示 す。 破 線 部 は 図 2.2 を 参 照- 2 -


ケルンパリコブレンツフランクフルトバンベルクトリアーマインツロートウルムウィーンミュンヘン図 2.2 調 査 行 程 (ドイツ)赤 は 空 路 、 青 は 陸 路 を 示 す- 3 -


表 2.1 日 程 表 (1/2)月 日 発 着 地 / 滞 在 地 現 地 時 刻 交 通 機 関 訪 問 先 / 調 査 地10 月 14 日( 木 )10 月 15 日( 金 )10 月 16 日( 土 )10 月 17 日( 日 )10 月 18 日( 月 )10 月 19 日( 火 )10 月 20 日( 水 )10 月 21 日( 木 )10 月 22 日( 金 )東 京 ( 成 田 ) 発ウ ィ ー ン 着ウ ィ ー ン 泊ウ ィ ー ン 滞 在ウ ィ ー ン 市 内ウ ィ ー ン 発ミュンヘン 着ミュンヘン 泊ミュンヘン 発ウ ル ムミュンヘン 着ミュンヘン 泊ミュンヘン 滞 在ミュンヘン 発ロ ー トバ ン ベ ル クフランクフルト 着フランクフルト 泊フランクフルト 発コ ブ レ ン ツマ イ ン ツ 着マ イ ン ツ 泊マ イ ン ツ 発ト リ ア ー 着ト リ ア ー 泊ト リ ア ー 発ケ ル ン 着 発パ リ 着パ リ 泊11:3524:00午 前午 後17:1018:10飛 行 機専 用 バス地 下 鉄専 用 バス飛 行 機専 用 バスフランクフルト 経 由ウィーンへ着 後 、ホテルへ◎ICPDR◎ウィーン 工 科 大 学ミュンヘン 市 内 視 察新 ドナウ 川 分 派 点 等終 日 専 用 バス ウルムからドナウ 川 に 沿 って下 流 方 向 へ午 前午 後終 日午 前午 後専 用 バス専 用 バス専 用 バス◎バイエルン 水 管 理 庁◎ミュンヘン 水 管 理 局Isar 川 視 察◎アンスバッハ 水 管 理 局ブロムバッハ 湖 視 察マイン-ドナウ 運 河 視 察レグニッツ 川 視 察マイン 川 視 察◎ 連 邦 水 理 研 究 所ライン 川 視 察終 日 専 用 バス ◎ 水 管 理 経 済 監 督 庁ライン 川 視 察17:3018:40専 用 バス飛 行 機専 用 バス◎ 水 管 理 保 護 局 トリアー 支 部リーザー 川 視 察- 4 -


表 2.1 日 程 表 (2/2)月 日 発 着 地 / 滞 在 地 現 地 時 刻 交 通 機 関 訪 問 先 / 調 査 地10 月 23 日サン・マルタン 運 河 視 察パ リ 滞 在 終 日 地 下 鉄( 土 )セーヌ 川 視 察10 月 24 日 パ リ 市 内地 下 鉄 パリ 市 内 視 察( 日 ) パ リ 発 20:00 飛 行 機10 月 25 日東 京 ( 成 田 ) 着 14:30 飛 行 機 解 散( 月 )2.2 調 査 団 メンバー調 査 団 のメンバーは 以 下 のとおりである。団 長 ( 財 ) 河 川 環 境 管 理 財 団 河 川 総 合 研 究 所 長山 本 晃 一( 財 ) 河 川 環 境 管 理 財 団 河 川 総 合 研 究 所 研 究 第 三 部 次 長 山 田 浩 次( 財 ) 河 川 環 境 管 理 財 団 河 川 総 合 研 究 所 研 究 第 三 部 主 任 研 究 員 新 清 晃( 財 ) 河 川 環 境 管 理 財 団 河 川 総 合 研 究 所 研 究 第 四 部 研 究 員 藤 原 基 正パシフィックコンサルタンツ( 株 ) 大 阪 本 社 水 工 技 術 部 次 長 松 田 尚 郎藤 原 ( 左 から 4 人 目 )、 松 田 ( 左 から 5 人 目 )、 山 本 ( 右 から 4 人 目 )、 山 田 ( 右 から 2 人 目 )、 新 清 ( 右 端 )図 2.3 調 査 団 写 真- 5 -


3. 河 川 事 業 に 関 わる 枠 組 み3.1 ドナウ 川 流 域 の 国 際 的 な 枠 組 みドナウ 川 はドイツのシュバルツバルトに 源 を 発 し、オーストリア、スロバキア、ハンガリー、クロアチア、ユーゴスラビア、ブルガリア、ルーマニアを 経 て 黒 海 に 注 ぐ、 流 域 面積 817,000km 2 、 幹 線 流 路 延 長 2,857km のヨーロッパ 第 2 位 の 国 際 河 川 である。 上 流 部 のドイツ 及 びオーストリアでは 深 い 河 谷 を 形 成 し、ハンガリー 及 びユーゴスラビアでは 主 に 低地 を 流 れ、 河 口 のユーゴスラビアに 大 三 角 州 (ドナウデルタ)を 形 成 する。1980 年 代 以 降 ドナウ 川 下 流 域 から 黒 海 沿 岸 にかけて 急 激 に 環 境 汚 染 が 深 刻 化 してきたため、この 環 境 改 善 を 目 的 として 1998 年 にドナウ 川 保 全 国 際 委 員 会 (ICPDR:InternationalCommission for the Protection of the Danube River)が 流 域 国 と EU で 組 織 された。さらに 2000年 には EU の 取 り 組 みとして、 水 の 生 態 系 の 維 持 改 善 ・ 持 続 可 能 な 水 利 用 の 推 進 ・ 汚 染 物 質の 削 減 ・ 地 下 水 汚 染 の 削 減 ・ 洪 水 や 渇 水 の 軽 減 を 目 的 とする 水 枠 組 み 指 令 (Water FrameworkDirective)が 制 定 された。図 3.1 ドナウ 川 流 路- 6 -


3.2 ドイツにおける 河 川 事 業 の 枠 組 み(1) ドイツの 概 要ドイツ 連 邦 共 和 国 はヨーロッパの 中 央 部 に 位 置 し、 東 と 西 、そして 南 と 北 を 結 ぶ 要 となっている。 人 口 はヨーロッパで 最 も 多 く、1990 年 の 両 ドイツ 統 一 以 来 、9つの 国 に 囲 まれている。 領 土 はおよそ 35 万 7000km 2 で、日 本 の 約 95%に 相 当 する( 日 本 領 土 はおよそ 37 万 8000km 2 )。 北 から 南 までの 直 線 距 離 は 876km、 東 西 では 640kmである。ドイツの 人 口 は 現 在 約 8260 万人 となっている。気 候 は、 大 西 洋 気 候 と 東 部 の 大 陸 気候 との 間 の、 適 度 に 涼 しい 偏 西 風 帯 に属 する。 激 しい 温 度 変 動 は 稀 で、 降 水も 年 間 を 通 じてある。 年 間 降 水 量 は 北部 で 500~700mm と 日 本 に 比 べ 少 なく、中 部 地 域 は 700~1500mm、 南 部 は 高 山地 帯 であり 2000mm を 超 す。 冬 季 の 平均 気 温 は 平 野 部 で 1.5℃、 山 岳 地 帯 でマイナス 6℃である。7 月 の 平 均 気 温 は、平 野 部 で 18℃、 南 部 の 谷 間 では 20℃である。 例 外 としては、 上 部 ライン 地 溝帯 の 極 めて 温 和 な 気 候 や、 定 期 的 にフェーン 現 象 が 起 り、アルプスの 温 かい南 風 が 吹 くオーバーバイエルン 地 方 が図 3.2 ドイツ 連 邦 と 州あり、また、 風 の 強 いハルツ 山 脈 一 帯 の 気 候 は、 涼 しい 夏 と 雪 の 多 い 冬 というこの 地 方 独特 のものである。ドイツは 16 の 州 に 分 かれている。 各 州 はそれぞれ 国 家 としての 責 任 を 担 っており、 中 には 国 としての 長 い 伝 統 を 持 つ 州 もある。ドイツは 昔 から 常 に 領 邦 に 分 かれた 国 であったが、ドイツの 地 図 は、 数 百 年 に 亘 る 歴 史 の 中 で 幾 度 もその 姿 を 変 えている。 現 在 の 諸 州 は 1945年 以 後 に 設 けられたが、その 際 には、 古 くからの 地 域 的 なまとまりや、 歴 史 的 な 境 界 線 も一 部 考 慮 されている。1990 年 のドイツ 統 一 以 前 のドイツ 連 邦 共 和 国 は、 当 初 は 11 の 州 からなっていた。 一 方 、 東 ドイツにあたる 地 域 に 戦 後 誕 生 した 5 つの 州 は、1952 年 に 14 の 県 に再 編 成 された。1990 年 3 月 18 日 の 東 独 初 の 自 由 選 挙 を 経 て、 東 独 地 域 に 新 たに 5 つの 州 を設 けることが 決 まった。この 5 州 は 1952 年 以 前 の 5 州 とほぼ 同 一 である。1990 年 10 月 3日 、 東 ドイツの 5 州 がドイツ 連 邦 共 和 国 に 加 盟 した。また 東 ベルリンは 西 ベルリンと 統 合- 7 -


された。表 3.1 にはドイツにおける 主 な 河 川 、 運 河 、 湖 沼 を 示 した。表 3.1 ドイツにおける 主 な 河 川 、 運 河 、 湖 沼順延 長延 長面 積河 川 名運 河 名湖 沼 名位(km)(km)(km 2 )1 ライン 865 ミッテルラント 321 ボーデン 3052 エルベ 700 ドルトムント・エムス 269 ミューリッツ 1103 ドナウ 686 マイン・ドナウ 171 キーム 824 マイン 524 北 海 ・バルト 99 シュヴェリーナー 605 ヴェーザー 440 シュタルンベルガー 576 シュプレー 3827 モーゼル 242(2) 治 水 事 業 の 枠 組 みドイツにおける 法 体 系 は、 包 括 的 な 連 邦 法 と 実 務 的 な 州 法 で 構 成 されており、 河 川 管 理と 治 水 事 業 については 連 邦 と 州 にそれぞれ 水 管 理 法 (Water Act)が 存 在 する。ライン 川 やドナウ 川 などの 国 際 河 川 は 連 邦 水 路 と 位 置 付 けられ、 連 邦 法 はこの 連 邦 水 路 と 一 級 河 川 、州 法 は 二 級 河 川 と 三 級 河 川 が 対 象 となっている。連 邦 水 路 と 一 級 河 川 の 治 水 対 策 は 全 て 州 に 委 任 されており 連 邦 は 関 与 しない。 例 外 もあるが 原 則 として 二 級 河 川 、 三 級 河 川 は 市 町 村 が 管 理 を 行 っている。(3) 行 政 組 織 の 枠 組 みドイツにおける 行 政 制 度 の 枠 組 みは、 連 邦 、 州 、 上 級 地 方 行 政 区 、 郡 ( 特 別 市 )、 市 町 村という 5 段 階 となっている。 市 町 村 は 地 域 社 会 のほぼ 全 ての 事 務 を 担 っており、 都 市 計 画の 策 定 ・ 実 施 、 道 路 ・ 上 下 水 道 の 整 備 、 教 育 ・ 社 会 福 祉 等 を 担 当 する。 郡 は 市 町 村 連 合 体の 性 格 を 持 ち 公 選 による 郡 長 がおり、 市 町 村 事 務 を 補 完 し、 広 域 的 な 公 共 交 通 や 住 宅 建 設 、社 会 保 険 などを 担 当 する。 人 口 2 万 人 以 上 の 市 町 村 は 特 別 市 の 指 定 を 受 け、 郡 の 事 務 についても 処 理 している。 地 方 行 政 区 は 州 の 出 先 機 関 を 担 っている。(4) 連 邦 の 役 割連 邦 政 府 が 実 施 する 河 川 事 業 は、 連 邦 水 路 の 維 持 管 理 であり 連 邦 運 輸 省 が 管 轄 している。これ 以 外 の 河 川 事 業 は、 州 または 市 町 村 が 担 当 する。 治 水 については 連 邦 水 路 も 州 が 担 っている。 連 邦 政 府 が 治 水 に 果 たす 責 任 は 連 邦 環 境 省 を 中 心 として、 洪 水 被 害 に 対 する 救 援 、洪 水 被 災 者 への 経 済 支 援 、 総 合 ライン 川 計 画 (フランス 政 府 との 合 意 に 基 づく 計 画 ,1982)の 実 施 に 限 られている。- 8 -


主 な 管 理 事 項 と 連 邦 政 府 機 関 を 表 3.2 にまとめた。 今 回 訪 問 したコブレンツにある 連 邦 水理 研 究 所 (bfg)は 連 邦 交 通 省 の 下 部 組 織 になる。表 3.2 主 な 管 理 事 項 と 連 邦 政 府 機 関管 理 事 項 担 当 官 庁 備 考1 食 料 、 農 業 および 森 林 連 邦 省2 連 邦 交 通 省水 処 理 ・ 供 給水 路 交 通水 資 源 管 理3 連 邦 厚 生 省飲 料 水 の 管 理4 連 邦 調 査 技 術 省水 文 分 野 の 研 究5 連 邦 経 済 省6 連 邦 経 済 協 力 省経 済 分 野他 国 との 協 力連 邦 水 路 の 航 行 管 理 1 連 邦 交 通 省(5) 州 の 役 割州 の 河 川 管 理 に 関 する 統 括 機 関 は 州 の 環 境 省 であり、このもとで 地 方 行 政 毎 に 河 川 の 維持 管 理 と 治 水 事 業 に 関 連 する 組 織 がある。 維 持 管 理 には 環 境 分 野 の 他 に 治 水 や 利 水 、 上 下水 道 に 関 する 内 容 も 含 んでおり、 治 水 の 責 任 は 基 本 的 に 州 が 負 っている。 二 級 、 三 級 河 川は 市 町 村 が 治 水 事 業 を 実 施 する。(6) 治 水 事 業 に 関 する 法 律連 邦 における 治 水 事 業 、 河 川 管 理 に 関 する 法 律 を 表 3.3 にまとめた。連 邦 水 路 の 拡 幅 や 遊 水 地 事業 に 関 しては、 計 画 の 構 想 段表 3.3 連 邦 における 治 水 事 業 、 河 川 管 理 に 関 する 法 律階 で「 国 土 計 画 手 続 き」を 行法 律 名主 な 内 容・ 1960 年 に 施 行うことが 国 土 計 画 法 で 定 めら・ 水 資 源 に 関 する 基 本 法水 管 理 法れている。 引 き 続 き 実 施 され・ 連 邦 全 体 に 統 一 的 な 排 水 基 準 を 規定る 詳 細 計 画 段 階 では、 行 政 手・ 1968 年 に 施 行連 邦 水 路 条 例 法続 法 に 基 づく 計 画 確 定 手 続 き・ 航 行 河 川 を 連 邦 水 路 と 位 置 付 けが 実 施 される。表 2.2 に 示 す 連 邦 法 の 他 、州 においても 各 種 法 律 が 制 定国 土 計 画 法・ 国 土 全 体 に 係 る 土 地 利 用 を 規 定・ 環 境 に 及 ぼす 事 業 と 国 土 計 画 との整 合 性 を 審 査 する 手 続 きを 規 定・ 環 境 アセスメントの 具 体 的 手 法 は州 法 に 委 ねるされており、 例 えば 今 回 訪 問 行 政 手 続 法 ・ 行 政 手 続 きの 統 一 化した 州 の 一 つであるバイエル 環 境 適 合 性 に 関 ・ 1990 年 に 施 行・ 計 画 許 可 決 定 段 階 における 環 境 アン 州 では、「バイエルン 州 自 然 する 法 律セスメントに 関 する 行 政 手 続 き保 護 法 」が 存 在 し、この 中 の・ 動 植 物 の 保 護連 邦 自 然 保 護 法・ ビオトープに 関 する 規 定第 6 条 a においては、 河 川 や・ 生 態 学 的 な 要 求 に 対 する 配 慮道 路 を 問 わず 環 境 への 影 響 が連 邦 水 収 支 法・ 景 観 、 保 養 空 間 、 浄 化 能 力 の 維 持- 9 -


回 避 できない 場 合 の 代 償 ・ 代 替 措 置 の 考 え 方 が 細 かく 規 定 されている。 今 回 の 訪 問 先 においても、 当 該 法 に 基 づきより 環 境 への 影 響 を 低 減 する 対 応 を 行 った 事 例 の 紹 介 を 受 けた。(7) 財 政 制 度治 水 事 業 にかかわる 費 用 は 州 により 異 なるものの、 原 則 として 連 邦 水 路 と 一 級 河 川 は 州が 負 担 し、 二 級 、 三 級 河 川 は 市 町 村 が 負 担 するが、 財 政 能 力 に 配 慮 して 州 が 70%までの 補助 を 与 える。連 邦 政 府 の 負 担 は、 連 邦 共 和 国 基 本 法 に「 連 邦 および 州 は、・・・その 任 務 を 引 き 受 けたことによる 経 費 を 別 々に 負 担 する」と 規 定 されている。 委 託 行 政 について 連 邦 が 負 担 する経 費 は、 委 託 目 的 関 連 費 と 呼 ばれる 費 用 で、 具 体 的 には 連 邦 道 路 の 建 設 を 連 邦 が 州 に 委 託した 場 合 を 例 にとると、 道 路 建 設 費 が 委 託 目 的 関 連 費 となりこれを 連 邦 が 負 担 するが、この 道 路 建 設 に 要 した 州 組 織 の 人 件 費 、 事 務 費 は 州 の 負 担 となる。この 他 、 連 邦 による 公 共 投 資 の 財 政 援 助 があり、これは 州 や 市 町 村 が 直 接 行 う 公 共 投 資のみならず、 第 三 者 に 対 する 州 ・ 市 町 村 の 投 資 補 助 金 も 対 象 となる。 財 政 援 助 の 形 式 は 補助 金 および 貸 付 の 両 者 を 含 む。ただし、 援 助 を 行 うには、1 経 済 全 体 の 均 衡 攪 乱 の 防 止 、2 地 域 間 の 経 済 格 差 の 調 整 、3 経 済 成 長 の 促 進 、のいずれかの 条 件 を 満 たす 必 要 がある。堤 防 組 合 の 財 源 は、 洪 水 防 御 税 や 排 水 課 徴 金 、 維 持 管 理 費 税 が 当 てられ、 堤 防 によって防 御 される 区 域 の 建 物 所 有 者 は 別 途 堤 防 補 修 費 を 負 担 する。 組 合 予 算 のうちの 80%は 補 助金 が 占 めており、この 内 訳 は 州 と 連 邦 が 50%づつ 負 担 する。参 考 文 献・ドイツ 大 使 館 ホームページ・ドイツの 水 法 と 自 然 保 護 , 財 団 法 人 日 本 生 態 系 協 会 ,1996・ 欧 米 諸 国 における 治 水 事 業 実 施 システム, 財 団 法 人 国 土 開 発 技 術 研 究 センター,1997- 10 -


4.ドナウプロジェクト4.1 ドナウ 川 保 全 国 際 委 員 会 (ICPDR)における 取 り 組 み訪 問 機 関 :ICPDR【ICPDR】ドナウ 川 の 流 域 について 概 要 を 説 明 します。ドナウ 川 は、EU 地 域 で 第 2 位 の 規 模の 河 川 です。その 流 域 面 積 は、 約 80 万 km 2 、18 カ 国 の 国 に 及 びます。その 約 80 万 km 2 の 流域 の 内 、 約 29%はルーマニアであり、 一 番 大きなエリアを 占 めています。オーストリアは約 10%で 流 域 面 積 では 18 カ 国 中 、4 番 目 に大 きなエリアを 占 めています。( 図 4.1)ドナウ 川 流 域 の 降 水量 は、アルプスの 辺 りは 2,000mmくらいあ図 4.1 ドナウ 川 流 域 の 国 々ります。これは 降 雪 が 多 いということだけではありません。2002 年 の 8 月 には、 山 岳 地 帯 の 降 雨 によりドナウ 川 で 大 きな 洪 水 がありました。ドナウ 川 自 体 が 洪 水になる 確 率 を 考 えますと、アルプス 山 岳地 帯 の 降 雨 によることが 多 いかもしれません。EU の 水 枠 組 指 令プロジェクトには、黒 海 の 沿 岸 地 域 もドナウ 川 として 組 み 込まれています。図 4.2 DRPC 参 加 国ここのドナウ 川 保 全 国 際 委 員 会 (ICPDR:International Commission for the Protection of theDanube River)はドナウ 川 を 保 護 するための 国 際 機 関 です。 現 在 、ICPDR には、 流 域 の 18 カ- 11 -


国 中 13 カ 国 が 参 加 しており、 残 る 5 カ 国 は参 加 をしていませんが、ドナウ 川 流 域 に 係 わることに 関 して 協 定 を 結んで 管 理 を 行 っています。その 協 定 は、ドナウ川 保 全 協 定 (DRPC:TheDanube River ProtectionConvention)といい、1994 年 6 月 ソフィアで図 4.2 DRPC オブザーバー結 ばれ、 常 設 事 務 局 を設 置 し、7 カ 国 で 構 成 され、これに 10 個 の 専 門 機 関 がオブザーバーとして 参 加 して、ドナウ川 に 関 する 警 報 システムや 監 視 システムを 整 備 しています。( 図 4.2、 図 4.3)ドナウ 川 ・ 黒 海 では 1990 年 代 頃 、 富 栄 養 化 の 問 題 が 多 く、 黒 海 沿 岸 地 域 で 特 にひどかったものです。ドナウ 川 と 黒 海 とのジョイント 部 での 問 題 に 関 して 行 う 技 術 専 門 組 織 である 土 木図 4.4 ドナウプロジェクトの 組 織- 12 -


委 員 会 という 別 組 織 があり、それと 協 力 して 富 栄 養 化 の 問 題 や 汚 染 に 関 する 活 動 に 参 加 しています。ここで、ドナウ・プロジェクトについて 簡 単 に 説 明 します。国 際 協 力 プロジェクトは 3 つ 位 しかありません。 長 期 的 な 目 的 というのは、60 年 代 頃 の 状況 に 戻 すというものです。また、90 年 代 に 始 まった 富 栄 養 化 問 題 も 削 減 していくことです。これがだいたいの 構 想 ですが、ドナウ 川 はドナウ 川 のメンバー、 黒 海 は 黒 海 のメンバー、それから 大 きなプロジェクトについてドナウ 川 側 と 黒 海 側 が 一 緒 になっております。( 図 4.4)これらの 組 織 はドナウと 黒 海 の 共 同 の 課 題 を 実 施 していくためのプロジェクト、 政 策 や 投資 プロジェクトや 財 政 面 そういった 点 を 明 確 化 していくことを 目 的 にしています。具 体 的 には 実 際 の 排 水 処 理 状 況 、その 処 理 プロジェクト・ 政 策 を 開 発 していくことや 市 民の 参 加 意 識 を 高 めるということです。それと 監 視 強 化 プロジェクトです。( 一 例 : 図 4.5)これは 2 段 階 に 分 けて 計 画 しており、 今 ちょうど 1 段 階 で 計 画 したものを 実 施 している 状況 です。図 4.5 下 水 処 理 事 業 の 優 先 度【 財 団 】かなり 大 きな 組 織 で 行 っているようですが、フル 回 転 で 働 いている 時 期 は、 専 門 委員 の 方 はどれくらいの 人 がいましたか。また 会 議 をかなり 開 かないと 組 織 が 動 かない 感 じが- 13 -


しますが、かなりの 頻 繁 で 意 見 交 換 をしているのですか。【ICPDR】 国 を 代 表 した 機 関 やオブザーバー 機 関 などあり、それぞれの 利 益 があります。それぞれ 専 門 機 関 ごとに 年 に 2,3 回 程 度 会 議 を 開 いています。 国 際 委 員 会 などは 年 に 2,3 回 、 本会 議 ですと、12 月 中 旬 以 降 にありますがその 時 は 環 境 大 臣 などが 参 加 します。今 年 はドナウ・プロジェクト 協 定 調 印 10 周 年 にあたり、 特 別 な 年 であります。これを 機 会にドナウ 川 宣 言 みたいなのを 作 って 発 表 したり、いろいろな 活 動 を 評 価 していきたいと 検 討しています。この 協 定 の 第 9 条 にある 水 質 の 地 域 管 理 について、 監 視 モニタリングについては 国 際 協 力を 実 施 しなくてはいけないということが 各 地 域 に 伝 わり、 今 、 地 域 管 理 で 監 視 、 実 験 、 情 報管 理 等 の 専 門 委 員 会 がグループとしてやっています。監 視 にあたり 目 標 値 等 の 評 価 方 法 は、 区 画 分 けして、 黒 海 のところが 目 標 値 がプラス 評 価なっており、ドナウ 川 がその 目 標 値 に 近 づけているところです。 目 標 値 には 法 的 拘 束 力 はないが、 地 域 では EU の 指 令 と 調 整 して 決 めています。【 財 団 】それは 上 流 から 下 流 まで 同 じ 水 質 目 標 ですか。【ICPDR】ドナウ 川 本 川 については 上 流 下 流 も 同 じですが、 本 川 と 支 川 の 違 いということで、図 4.6 硝 酸 性 窒 素 の 濃 度 ランク- 14 -


妥 協 案 があり、 水 質 の 違 いよりも 水 源 地 の 違 いにより 変 えていますが、これも 法 的 拘 束 力 がありません。これが 窒 素 酸 化 物 がどれくらいあるかというサンプルです。( 図 4.6) 白 いのはデータが 提出 されていない 所 です。これは、 中 央 委 員 会 で 実 施 している 測 定 ではなくて、それぞれの 国からのデータが 提 出 されているものなので、 出 ていないところが 多 いです。 国 によっても 複雑 な 実 験 でデータを 出 せないといっています。 特 に 白 い 地 域 というのはユーゴ 戦 争 があった国 なので、 爆 撃 にあったりして 監 督 所 がなかったりなどの 問 題 があります。提 出 されたデータは、ここでコントロールしています。そのデータは、 信 頼 できるものだということで 検 査 しています。それぞれ 33 箇 所 から 貰 ったデータを 分 析 、 評 価 するので 確 かなものを 確 認 しています。これは 窒 素 の 流 出 量 です。( 図 4.7) 濃 度 ではなく 流 出 量 ですけれども、 主 な 重 金 属 について 年 に 24 回 ほど 調 査 しています。 常 にデータを 出 すようにしています。 年 間 報 告 も 毎 年 出 していますので、ホームページでもダウンロードできます。図 4.7 窒 素 流 出 量それぞれ 基 準 やデータが 違 うので、6 年 間 の 内 に 何 か 研 修 体 験 や 研 修 旅 行 みたいなものを行 い 基 準 等 を 統 一 していきたいと 考 えています。また 新 しいパラメータや 検 査 項 目 などやメ- 15 -


ニューに 入 ってないものを 検 査して、なるべく 均 一 的 なデータを 収 集 するようにしています。それぞれ 国 の 合 同 調 査 会 のようなものは 2001 年 に 行 われたあと 2007 年 にも 行 われます。 例えば 微 生 物 の 汚 染 状 況 でも、 時間 を 置 かずにすぐ 船 の 上 ですぐに 検 査 を 行 ってますので、 正 確なものが 取 れます。( 図 4.8)【 財 団 】その 船 でやっているラボラトリーというのは、どこに属 しているのですか。【ICPDR】この 研 究 所 ではラボラトリーは 持 っていませんが、それぞれの 国 のものを 使 って、プラットホームとしてまとめます。事 故 による 川 の 汚 染 地 域 ですが、これは 事 故 防 止 管 理 のグループが 行 っていますが、 警 報 システムや 事 故 による 公 害 の 状 況図 4.8 ラボの 状 況や 危 険 度 などを 評 価 しています。災 害 緊 急 警 報 システムが、 流 域 にそれぞれ 設 置 されています。PIAC(Principal International AlertCentres)という 国 際 警 報 センター 本 部 がありますが、そこが 全 部 管 理 しています。サテライトが 一 番 システムとしてはよいですが 費 用 が 高 いので、 今 は、インターネット 上 で GPS を 使ったシステムで 情 報 を 流 しています。どんな 危 険 度 か、どう 対 処 をしたらよいのかが、 大 体わかるよう 一 覧 になっています。その 情 報 管 理 だけではダメで、 防 止 をしていかなければならないです。 災 害 防 止 のために、危 険 地 点 をリストアップしており、それを 中 心 に 管 理 を 行 っています。その 危 険 地 点 の 分 類ですが、 現 在 稼 働 している 工 場 施 設 の 危 険 度 がランク 付 けされています。 後 は、 汚 染 地 域 です。 洪 水 地 域 にある 汚 染 地 域 において 稼 働 している 工 場 、そこは 直 接 排 水 を 出 す 危 険 性 があるということです。もひとつの 汚 染 地 域 は、 普 通 の 状 態 では 大 丈 夫 ですが、 工 事 のときにその 汚 染 物 が 流 れ 出- 16 -


る 危 険 があるところです。1 つの 国 の 中 で 危 険 と 思 っていても、 他 の 国 は 危 険 と 思 わないということがあるので、 同じ 基 準 を 作 ることが 必 要 です。たとえばチェックリストを 整 理 しています。これが、その 汚染 地 区 の 分 布 地 図 ですが、まだデータが 来 ていないところもあり 完 全 ではありません。国 際 協 力 の 中 でドナウ 川 が、 持 続 的 な 水 利 用 できることが 大 切 です。そのプロジェクトは2005 年 がデッドラインだったのですが、2000 年 に 大 きな 洪 水 があったため、その 機 会 に 色 々な 活 動 がスピードアップして、 今 年 の 12 月 には 承 認 される 予 定 です。こういった 行 動 計 画 では 大 きな 骨 組 みを 作 っていますが、この 洪 水 対 策 行 動 計 画 は EU 委 員会 でも 承 認 されています。その 計 画 の 中 では 災 害 防 止 とういうことからリスクマネージメント、 危 険 管 理 という 方 に 流 れが 移 っています。 上 流 の 方 が 下 流 の 方 の 洪 水 に 全 然 無 頓 着 ではなく、 流 域 全 体 が 一 体 となって 対 応 しています。【 財 団 】 工 場 のリスク 評 価 について、 評 価 基 準 は ICPDR が 作 ったとしても、 工 場 の 個 々の 負荷 は 国 で 測 定 しているのですか、それとも 工 場 が 情 報 公 開 で 出 しているデータを 使 っていますか。【ICPDR】 国 が 行 ったりその 工 場 が 行 ったりとバラバラであり 自 己 申 請 になっています。それこそ、 国 によってですから、データはその 国 の 基 準 やその 工 場 の 基 準 で 出 してくるので、それを 統 一 したデータにするための 基 準 をここで 作 っていますので、こちらから 派 遣 して 何 かをデータを 取 ってくるとかではありません。おっしゃる 通 り、 全 部 のデータが 正 しいものを 出 してくるかというとそうではなく、 危 険性 があるということが 前 提 になっていて、それぞれの 数 量 を 出 してきますので、ある 程 度 の危 険 度 までは 査 定 できます。しかし、 危 険 物 質 の 量 そのものがどれくらいあるのかというのも、まちまちであったりするので、その 国 によって 危 険 対 策 がとられていないところもいっぱいあります。 強 制 的 にデータは 取 りにくいですが、 法 律 でも EU 指 令 でも 決 められているので、 出 さざるを 得 ないのです。共 同 行 動 計 画 を 実 施 して 行 き、その 後 は 色 々 排 出 目 録 などをアップデートしていきます。地 方 自 治 体 、その 他 工 場 、 農 場 、 農 業 に 関 することなども 含 めています。その 内 容 は、 汚 染 源 に 関 する 統 一 した 調 査 方 法 など EU 規 制 に 沿 ったものですが、 最 初 は 削減 していく 内 容 にしています。 今 、 農 業 や 工 業 、 産 業 について 必 要 な 技 術 のガイドラインの開 発 をしています。今 後 の 行 動 では、 何 を 最 初 に 実 施 していくかというのを、 各 政 府 に 対 してサポートすることです。 環 境 管 理 システムなどを 推 奨 していきます。 警 報 システムや、 水 質 管 理 、 公 害 削 減など、ジョイントアクションプログラム、 行 動 管 理 計 画 には 含 まれていることです。 後 は、自 然 景 観 の 回 復 などの 基 準 事 項 の 確 認 です。- 17 -


4.2 ウィーン 工 科 大 学 における 取 り 組 み訪 問 機 関 :ウィーン 工 科 大 学(1)ドナウプロジュエクト【 工 科 大 】この 研 究 室 は 2 つの 部 署 に 分 かれています。 一 つは 水 管 理 です。もう 一 つは 廃 棄物 の 部 署 となっています。こちらの 方 の 部 署 ですが、 排 水 処 理 に 関 することと、それからもう 一 つはドナウ 川 の 流 域 に 関 する 水 質 管 理 を 中 心 にしています。3 年 前 からこの 研 究 室 で 一 番 大 きなプロジェクトとしては、ドナウプロジェクトです。 私たち 4 人 全 員 が 参 加 しています。そのプロジェクトについて、 今 からご 説 明 したいと 思 います。このプロジェクトは EU の 第 5 次 枠 組 みプロジェクトの 中 の 一 環 として 行 われています。この 第 5 次 枠 組 みプロジェクトというのは、 緊 急 プロジェクトの 推 進 などを 行 っているところです。 今 、この 研 究 プロジェクトの 推 進 ということで、 重 点 的 な 研 究 を 行 うということを 目的 としています。そのプログラム 計 画 の 中 で 特 にドナウ 川 流 域 の 水 質 管 理 、 水 源 管 理 という 事 を 中 心 に 行 っています。このドナウプロジェクトというのには、 私 たちの 研 究 室 に 加 えて、 他 に 17 個 所 の機 関 も 参 加 しています。2001 年 から 開 始 していますが、 財 政 、 資 金 援 助 というのは EU 欧 州 委 員 会 から 出 ています。今 、 参 加 している 国 は 7 ヶ 国 です。私 たちのプロジェクトの 目 的 は、 富 栄 養 化 の 原 因 となるもので、 川 への 影 響 ですとかを 状況 把 握 ( 現 状 把 握 )して、それから 改 善 策 を 立 てるなどをしていくための 研 究 活 動 です。3 ヶ 国 リストアップしていますが、ドナウ 川 の 流 域 にない 国 、 例 えば、オランダですとかギリシャですとかも 参加 しています。そういったプロジェクト 参 加によって 知 識 を 色 々 交換 したりして 自 国 でも利 用 して 行 きます。すべてのドナウ 川 流域 の 国 が 参 加 している訳 ではないですが、だからと 言 って、 参 加 していない 国 と 全 く 無 関係 な 訳 ではなく、 間 接的 にデータを 入 手 した図 4.9 ドナウ 川 流 域 図- 18 -


りしながら 協 力 関 係 にあります。今 、この 地 図 ( 図 4.9)をご 覧 になればわかると 思 うのですが、ドナウ 川 は、ヨーロッパで 2 つ 目 に 大 きな 川 で、 地 理 的 にはこんな 位 置 づけにあります。この 流 域 の 面 積 は 約 8100万 km 2 、 人 口 は 8,500 万 人 位 です。ドナウ 川 は 黒 海 に 流 れ 出 ているので、 一 番 影 響 が 出 やすいところは、 黒 海 の 沿 岸 、 西 部 の 方 に 影 響 が 出 やすいということです。これは 黒 海 のデータですが、 流 域 の 面 積 、 人 口 、 表 面 の 面 積 、それと 平 均 の 水 深 です。このちょうどドナウ 川 の 影 響 を 一 番 受 けやすい 西 部 の 地 域 、この 辺 りは 他 の 黒 海 全 体 と 比較 するとだいぶ 特 徴 が 違 います。 北 黒 海 というのは 非 常 に 深 い 海 ですが、 西 部 のあたりは140m 程 度 で、ブルガリアの 辺 りは 70m 位 しかないです。その 黒 海 西 部 の 辺 り、 生 物 が 繁 殖 するのに 非 常 に 色 々な 条 件 が揃 っています。流 域 には 13 ヶ 国 の 国 が含 まれており、 約 2,000 キロ 平 方 メートルの 面 積 になります。 北 黒 海 を 中 心 に、ドナウ 川 の 他 に、ドニープル 川 やドン 川 流 域 を 一 緒 に表 現 した 地 図 です。( 図4.10)この 黒 海 の 西 部 の 辺 りですが、 黒 海 全 体 の 内 の 70%ほどの 富 栄 養 化 物 質 が 溜 ま図 4.10 黒 海 周 辺 の 河 川 流 域り 込 んでいる 辺 りです。 共同 で 水 質 保 護 をして 行 く 上 で 一 番 難 しいのは、 各 国 の 経 済 力 の 違 いということです。それが障 害 になっていて 運 営 に 差 し 支 え、 問 題 になっているとこであります。こちらのプロジェクトでは、 栄 養 物 の 管 理 ・ 監 視 マネージメント、 黒 海 の 流 れる 対 策 ( 流出 削 減 対 策 )を 行 っています。なぜその 研 究 というのが 大 切 なのかというと、この 栄 養 物 が長 距 離 で、 国 を 越 えてどんどん 運 ばれて 行 ってしまう 点 などです。この 栄 養 物 による 水 への影 響 は、 地 域 的 な 問 題 ではなくて、 川 によって 広 範 囲 に 広 がっている 問 題 ですので、 取 り 組む 必 要 があります。 沿 岸 諸 国 は、 栄 養 物 の 影 響 を 受 けやすいところです。 特 に 70 年 代 から 始まって、70 年 ,80 年 ,90 年 代 にかけて、 西 部 の 辺 りでの 富 栄 養 化 による 影 響 が 非 常 に 深 刻 になってきました。特 に 藻 の 繁 殖 が 問 題 になったことがあります。 毒 素 を 含 んだものが 繁 殖 したというのが 多くありました。- 19 -


黒 海 沿 岸 地 域 での 富 栄 養 化 の 問 題 は、いくらドナウ 川 の 辺 りで 色 んな 対 策 を 講 じても、 削減 しきれないことが 多 いものです。ドナウ 川 の 交 通 で、 船 によって 何 か 付 着 したまま 海 に 流れ 込 んだりして、そういった 影 響 があると 思 います。地 下 水 や 地 質 に 含 まれる 蓄 積 状 況 も、 非 常 に 影 響 して 行 きます。 市 民 生 活 、 経 済 活 動 でも栄 養 化 に 何 かの 形 で 影 響 している 訳 です。すべてこうした 現 状 を 目 に 見 える 形 で 表 現 して 行 く 為 に、 規 範 を 作 っていっています。まず、3 つの 柱 を 作 りましたが、 排 出 という 観 点 から 見 て、 農 業 によるもの、 栄 養 や 生 活 様 式によるもの、 経 済 状 況 によるものなどの 排 出 関 係 があります。人 による 排 出 が 廃 棄 物 の 排 出 形 になり、それが 公 害 物 質 になって、 貯 蔵 したり 変 化 して 運ばれて 黒 海 に 流 れて 行 く。その 際 、 富 栄 養 化 率 が 問 題 になるのが、 窒 素 ・リン・シリカでしょうか。 富 栄 養 化 によって 経 済 的 にも 打 撃 を 与 えますし、 人 の 生 活 にも 悪 影 響 を 与 えかねない 問 題 にもなります。これは 私 達 のプロジェクトのコンセプトをチャートに 表 わしたものになります。 研 究 分 野 として 3つに 分 けています。( 図 4.11)まず、 栄 養 分 の 収 集 とか、 流 出状 況 ですとか、 変 化 によるその 地域 に 与 える 影 響 などの 調 査 です。これらの 過 程 状 況 を 把 握 した 上 で、数 学 的 な 方 法 を 用 いて、 影 響 を 数量 化 するということです。これら色 々な 問 題 に 対 応 して 行 くために、図 4.11 研 究 分 野色 々な 方 法 (モデル)を 組 み 合 わせて 対 処 して 行 くということです。次 のモデルは、ドナウ 川 の 水 質 モデルです。その 貯 蔵 状 況 などやドナウ 川 や 支 川 との 流 出状 況 把 握 です。 特 別 にドナウ、 三 角 地 帯 の 状 況 を 1 つだけピックアップして、その 辺 りの 影響 を 調 べます。最 後 のモデルというのは、ドナウから 黒 海 西 部 に 流 れ 出 るその 辺 りの 数 量 化 ということです。最 終 的 にいくつかのシナリオを 作 り 上 げていく 訳 ですけれども、どのような 影 響 、 可 能 性などを 描 き 出 し、 解 決 策 を 作 り 出 す 一 つの 根 拠 となるようにして、その 解 決 策 によって 経 済に 与 える 影 響 を 削 減 するということです。このプロジェクトはだいぶ 最 終 段 階 にさしかかっていますが、いくつかの 結 果 も 出 ていま- 20 -


す。あと 半 年 間 あるので、これからまだいくつかやることも 残 っていますけれども、だいたいの 結 果 を 発 表 いたします。(2)ドナウプロジェクトの 成 果【 工 科 大 】ドナウ 川 は、 黒 海 沿 岸 の 富 栄 養 化 が 最 大 の 原 因 であるということは 間 違 いないとわかっていますが、それでも 90 年 代 頃 の 非 常 に 悪 い 状 況 からかなり 改 善 されたということがわかりました。 栄 養 物 質 が 多 いということは、 富 栄 養 化 が 進 むということなんですが、 海 底のほうで 酸 素 不 足 が 起こるという 状 況 が 改 善されたということです。あと、 底 生 生 物 も 黒 海の 方 でまた 繁 殖 し 始 めました。( 図 4.12)ここ 数 年 、グラフでもわかりますが、 動 物の 生 態 系 の 復 活 や 種 の多 様 性 というのがまた復 活 してきているということです。先 ほども 言 ったよう図 4.12 底 生 生 物 の 種 類 数 の 経 年 変 化に、 生 命 の 方 での 嫌 気性 状 態 が 減 って、60 年代 の 状 況 に 戻 りつつあるということです。 黒海 海 底 の 低 酸 素 状 態 の移 り 変 わりを 図 にしてみました。( 図 4.13)96 年 ではまだ 酸 素 がどんどん 消 費 されている 状 況 であったが、それがだいぶ 減 って 低 酸素 状 態 が 改 善 されて、2002 年 ,2003 年 の 状 況も 改 善 されているって図 4.13 黒 海 西 部 海 底 の DO 変 化- 21 -


いうのがわかっています。魚 の 数 が 変 わっていないのは、 漁 業 活 動 が活 発 になって、 魚 を 取る 方 が 多 いということです。どうしてこれ 程 までに 改 善 が 進 んだかという 理 由 ですが、それはいくつかあります。90 年 代 の 辺 りからのリン 流 出 がだいぶ 減図 4.14 全 リンの 流 出 量 の 推 移りました。( 図 4.14)窒 素 の 場 合 は 20% 減 りました。ルーマニアの 地 域 は、 特 にリンの 流 出 が 多 かった 訳 ですが、それが 減 ったということがわかりました。今 、リンの 排 出 が 減 ったということが、まず 一 つ 改 善 の 理 由 となっています。 特 に 黒 海 西部 では、リンと 窒 素 の 割 合 がちょうど 藻 の 繁 殖 がしすぎないよい 状 況 にあるということです。窒 素 の 流 出 量 は、80 年 代 をピークに 下 がり 始 めています。リンについても 同 じような 状 況です。なぜその 栄 養 物 質 の 流 出 が 減 ったかということですが、 最 大 の 理 由 は 経 済 危 機 です。90 年 代 初 頭 の 経 済 危 機 があったということです。その 経 済 危 機 に 伴 って、 肥 料 の 生 産 工 場 や 肥 料 の 使 用 率 、それから 家 畜 、 農 場 の 閉 鎖 などが 影 響 されています。 東 欧圏 のブロックの 経 済 崩 壊 が大 きな 原 因 です。まず、 肥 料 の 使 用 が 減 ったことで 栄 養 物 質 の 流 出 が減 りました。それから 肥 料の 生 産 が 減 ったというのは工 場 廃 棄 物 ( 排 出 物 される物 質 )が 減 ったということです。それから 農 場 の 閉 鎖では、 家 畜 のし 尿 が 減 ったということです。図 4.15 国 別 肥 料 排 出 量- 22 -


その 内 のリンの 流 出 が 減 ったというのは、リンを 含 まない 洗 剤 の 使 用 がオーストリア,ドイツで 始 まったということです。 他 の 国 でもだんだん 使 用 が 勧 められてきています。その 他 にも、 浄 水 場 や 下 水 処 理 場 でのリン・ 窒 素 の 除 去 が、オーストリア,ドイツ,チェコでも 進 められています。 国 ごとに、 肥 料 の 使 用 量 を 表 現 していますが、60 年 代 は 非 常 に 多 いですが、91 年 に 急 に 減 っています。( 図 4.15)この 91 年 に 減 ったのは、わざとこういった 政 策 を 取 った 訳 ではなくて、 経 済 危 機 により 自然 におこった 訳 です。今 、これからどのような 対 策 を取 って 行 くか、それから、 今 の 良い 状 況 をどのように 保 って 行 くか、それからどこを 改 善 すべきか、すべて 排 出 源 をつきとめることにかかっています。これは 各 国 の 人 口比 率 で 示 したものですが、 下 水 システム 整 備 状 況 、あるいは 浄 化 設備 の 整 備 状 況 です。( 図 4.16)オーストリアやドイツは、90%,80%の 高 い 比 率 で、 各 世 帯 が 下 水 施 設 、図 4.16 各 国 の 下 水 処 理 状 況システムに 整 備 されていたり、 浄水 管 理 施 設 があるかということです。 特 にドイツとオーストリアでは、リンと 窒 素 を 排 水 から 除 去 するというシステムが 浄 水 システム( 浄 水 施 設 )にちゃんと 組 み 込 まれています。その 他 ドイツ,オーストリア 以 外 の 国 では、まだこのようなシステムの 普 及 率 が 低 い 所 が多 いです。それと、 浄 水 場 という施 設 がなく、 水 が 浄 化 されずに 川図 4.17 窒 素 排 出 量に 流 されているケースが 多 い 地 域があります。そういった 国 々での 浄 化 施 設 は、 炭 素 を 浄 化 する 技 術 はあっても、リンや 窒 素 を 除 去 する技 術 までには 至 っていません。だいたい 年 間 700kt(70 万 ton)の 窒 素 の 排 出 量 の 内 の 22%が 下 水 排 出 の 中 に 含 まれています。( 図 4.17)- 23 -


農 業 が 一 番 の 排 出 源 になっている 訳 ですが、その 他 1/4 は 農 業 を 行 っていなくても 排 出 する 量 です。 一 番 効 果 があると 思 われるのは、 農 業 活 動 による 削 減 手 段 をとる 事 です。 残 りの10% 弱 ですが、 交 通 ・ 自 動 車 廃 棄 ガスや 焼 却 による 窒 素 排 出 です。ダイオキシンなども 含 まれていますが、そういったものが 10% 弱 を 占 めています。これは、リンの 状 況 ですが 下 水 排 水 によって 流 れていく 量 が 45%と、 窒 素 に 比 べて 非 常 に割 合 が 大 きいです。( 図 4.18)これは、 窒 素 の 発 生 率 をチャートで 表 わしたものですが、この 赤 い 所 が 非 常 に 排 出 率 が 多 いという 所 です。 一 つには 農 業 が盛 んな 所 、もう 一 つは、 降 水 量 ・降 雪 量 の 多 い 所 、というファクターが 重 なって 高 くなっているということです。 現 存 量 だけ 測るのではなく、 影 響 力 を 査 定 してどこを 削 減 していくべきかを図 4.18 全 リン 排 出 量見 極 めていく 必 要 がある 訳 です。( 図 4.19)もしも、 黒 海 西 部 の 富 栄 養 化の 対 策 を 講 じなかった 場 合 、 何が 起 こるか、どんな 影 響 が 出 るかというと 経 済 力 の 向 上 ・ 発 展度 に 影 響 してくる 訳 です。これからも 持 続 的 な 発 展 を 続 けていく 為 にも、 農 業 を 再 び 回 復 させて 行 くことが 必 要 になってきます。 将 来 的 には、 持 続 的 な 農 業図 4.19 窒 素 の 発 生 量 分 布活 動 を 進 めていく 事 で、 富 栄 養化 にもあまり 影 響 しないような 形 に 変 えて、 改 革 していくことが 必 要 ではないかと 考 えています。 特 に、 経 済 発 展 ばかりに 目 を 向 ける 訳 ではなく、 流 出 自 体 どのように 減 らして 行 くべきかというのを 中 心 に 考 えていくことも 必 要 です。ドナウ 川 流 域 への 窒 素 の 流 出 状 況 と 貯 蔵 状 況 は、 先 ほども 言 いましたが 700kt/ 年 の 流 水 ・流 量 があります。ドナウ 川 から 黒 海 に 流 れて 運 ばれて 行 く 量 は 422kt/ 年 です。34%は 小 さな支 流 なんかで 地 表 面 水 として 流 れて 行 きますので、 大 きな 流 れには 組 み 込 まれていません。- 24 -


あとは 三 角 州 に 溜 め 込 む 量 は 2%位 でしかありません。( 図 4.20)リンの 場 合 は 70kt/ 年 ほど 流 れて 行 く 訳 なんですけれども、 最 終的 に 黒 海 に 流 れて 行 くのは 35%程 です。50% 近 くが 小 さな 川 ですとか、 川 岸 なんかに 流 れて 行 きます。 三 角 州 の 方 には 1%と 少 ないですが、ダム 貯 水 地 などには 11%程 になります。( 図 4.21)このプロジェクトの 目 標 は、 人図 4.20 窒 素 の 流 れ間 の 営 みから 排 出 された 物 質 が、どのような 影 響 を 与 えるかを 描 き出 して 行 くことです。その 直 接 のきっかけになったことは、 富 栄 養化 が 90 年 代 から 黒 海 のあたりで始 まり、それが 顕 著 であったということ、それがまた 拡 大 して 行 くということから 始 まりました。もちろん、 私 達 の 現 在 の 活 動 というのは、 研 究 活 動 が 主 なんですけれども、その 他 にドナウ 川 保 全図 4.21 リンの 流 れ国 際 委 員 会 への 影 響 力 を 強 めていくということです。それから、 協 力 機 関 17 機 関 あるのですが、 一 緒 になって 欧 州 委 員 会 のプロジェクトに 参 加しているということです。 財 政 支 援 は EU から 受 けています。EU の 第 5 次 計 画 プログラムというものの 一 貫 です。もちろん、 参 加 している 17 機 関 も 自 分 達 で 自 己 的 に 費 用 負 担 しなければいけません。EU が 拠 出 しているのは 50% 位 です。その 他 に、 先 ほどのドナウ 川 保 全 国 際 委 員 会 から 色 々な 情 報 を 提 供 してもらっています。このプロジェクトで 一 番 主 な 役 割 を 果 たしているのは、 大 学 、それから 国 立 の 研 究 機 関 、それからもちろん 個 人 企 業 ・ 民 間 企 業 もあります。コスト 負 担 額 ですとか、 課 題 の 分 担 とかは、それぞれプロジェクト 毎 に 機 関 がお 互 いに 話 し 合 って 決 めています。今 後 の 課 題 ですが、 今 まで 作 り 上 げたシナリオをもうちょっと 細 かく 見 て 行 って、それで黒 海 の 富 栄 養 物 質 の 流 出 量 をきちんと 把 握 すること、それから、それによる 経 済 的 な 影 響 を- 25 -


きちんと 分 析 して 行 くことです。この 写 真 ですけれども、プロジェクトに 参 加 している 方 の 集 合 写真 です。( 図 4.22)これで 私 の 説明 を 終 わりにしたいかと 思 います。ありがとうございました。【 財 団 】とてもわかりやすい 説 明でありがとうございました。 教 えていただきたいのですが、プロジェクトの 目 的 が 黒 海 の 富 栄 養 化 の図 4.22 プロジェクト 参 加 チーム改 善 ということが 目 標 になっているようですが、それが 最 終 目 標 でしょうか?【 工 科 大 】そうとも 言 い 切 れない 訳 です。 富 栄 養 化 の 問 題 が 全 部 解 決 されたからもう 終 わりだというのではなくて、ドナウ 流 域 や 黒 海 地 域 などの 経 済 発 展 です。 経 済 発 展 をさせながらも 排 出 を 減 らす、 排 出 の 少 ない 形 態 に 持 って 行 く、それが 長 期 の 目 的 です。ここは 大 学 の 研 究 所 ですので、 人 間 生 活 から 生 まれてくる 色 々な 問 題 、それを 理 解 した 上で 対 策 を 講 じていくための 土 台 を 作 るということであって、 様 々な 知 識 を 蓄 積 させていくということが、 目 的 といえば 目 的 です。もう 一 つ 付 け 加 えたいのですが、EU レベルで、 例 えばまだ 利 水 の 普 及 率 の 少 ない 国 々が、すべて 100% 近 くまで 達 した 場 合 、その 時 に 起 こる 問 題 というのもまたある 訳 で、 水 質 管 理 、浄 水 、 農 業 活 動 それらの 改 善 をされた 後 の 課 題 、 問 題 というのはまだまだある 訳 です。また、60~80 年 代 みたいな 農 業 が 活 発 になって、それがまた 問 題 を 起 こしかねない 気 がいつもあります。これまでに 成 果 としては、 一 つの 手 段 を 開 発 した、その 手 段 というのは、その 物 質 が、 発生 源 から 黒 海 まで 流 れ 出 て 行 く、 到 達 するまでの 数 量 化 に 成 功 しているということです。【 財 団 】 的 確 なモデルを 作 り 上 げたことが 成 果 と 考 えているのでしょうか。【 工 科 大 】 基 礎 的 にはできている 訳 ですけれども、それにまたどんどん 新 しい 情 報 が 加 わってきます。ですからこのモデルをどんどん 改 善 させて 行 く 必 要 があります。【 財 団 】これだけの 人 数 で 行 うには、それぞれモジュール 化 して 実 施 し、 最 後 に 寄 せ 集 めて組 み 上 げる 必 要 がありますが、その 作 業 をこのグループが 行 っているのですか?【 工 科 大 】グループは 4 分 野 に 大 きく 分 けられ、まず 一 つは 物 質 の 発 生 から 黒 海 までの 流 れというものをウォッチするモデルを 作 るところ。それから 黒 海 での 現 場 でのモデル。それから 大 変 小 さいのですが、 農 業 の 影 響 に 関 するそれを 調 べるグループ。それから 四 つめに 経 済専 門 分 野 で 色 々な 情 報 をまとめる 形 をとっています。- 26 -


こういった 色 々な 分 野 から 集 まっている 研 究 ですから、それぞれの 分 野 ですね、 生 物 学 、経 済 学 、 物 理 学 、 科 学 それぞれの 専 門 用 語 があります。ですから、 言 葉 の 問 題 というのが 一番 大 きくなります。その 問 題 を 解 決 するために、1 年 に 1 回 大 きなワークショップを 開 いていまして、 後 は 小 さなグループでワークショップを 開 いて、 情 報 交 換 、それからお 互 いの 分野 の 理 解 を 深 め 合 っています。だから 非 常 に 難 しく 簡 単 なプロジェクトではありませんでした。ちょっと 一 つ 提 案 というか、こんなこともあるという 事 をお 話 ししたいんですが、 次 に EUに 第 6 次 計 画 があります。そこでは、 東 アジアの 方 、 東 南 アジアの 方 とのプロジェクトを 作って、 川 を 2 つとって 比 べたりして 協 力 して 研 究 していこうというプロジェクトがあります。そういたことで 私 達 の 経 験 を 日 本 でも 生 かして 行 っていただけるような、そんなものにも 参加 されてはどうかなと 思 っています。できたらいいなと 考 えています。【 財 団 】そういう 話 しが 具 体 的 にあるのでしょうか?【 工 科 大 】だいたいの 事 は 決 まっているんですけれども、ちゃんとした 決 定 は 来 年 の 春 になります。 色 々な 課 題 について、 国 際 レベルでプロジェクトを 進 めて 行 くというのは 決 まっていて、アジア、 特 に 東 アジアで、それが 東 南 アジアになるかは 分 かりませんが、アジア 地 域とやるということは 決 まってはいます。この 第 5 次 計 画 の 中 では、このプロジェクトは 成 功 した 部 類 に 分 けられますが、 全 部 が 全部 ヨーロッパで、こういうプロジェクトが 成 功 しているかというとそうではありません。 特に 経 済 分 野 ですが、こういった 研 究 による 理 論 、 成 果 を、 実 践 していくためのツールも 今 後必 要 になって 行 きます。【 財 団 】 国 際 的 な 取 り 組 みとなると 関 係 各 国 が 参 加 してくれるかどうかが 問 題 となりますが、今 回 はどのように 進 めたのでしょうか。【 工 科 大 】なぜこういった 国 際 プロジェクトが 成 り 立 つかということですね。 東 ブロック 圏の 崩 壊 ということで、 一 つの 壁 が 落 ちたということがありました。あと、そこで 共 産 圏 だった 国 が 国 際 的 なドナウのプロジェクトに 参 加 しようという 動 きがあったという 事 です。ドナウ 川 は 歴 史 的 にも 古 く、 東 西 を 結 ぶ 非 常 に 重 要 な 川 だったため、 伝 統 的 に 自 然 に 参 加 してきたという 事 です。あと、このプロジェクトが 始 まる 前 に、 色 々なプロジェクトがあって、その 中 でも 例 えばハンガリーにコネクションがあったため、 積 極 的 に 参 加 を 呼 びかけたら 反 響があったという 事 。あと 海 の 関 するプロジェクトですね、ドイツとかルーマニアとか 海 を 持つ 国 々は、もちろん 興 味 を 持 っておりその 時 の 接 触 があったので、ネットワークは 元 々 作 りやすい 背 景 がありました。もちろん 後 は、ドナウ 川 保 全 国 際 委 員 会 の 後 押 しがあり、EU の 統制 があった 事 ですね。【 財 団 】このプロジェクトは、 色 んなネットワークの 中 でできたという 事 なので、たぶんこのウィーン 工 科 大 学 以 外 のですね、 色 んな 大 学 が 参 加 されていると 思 うんですけれども、 他- 27 -


の 大 学 との 役 割 分 担 というのはどうなってるんですか。【 工 科 大 】 何 かをしようという 課 題 があって、それを 分 担 していったのではなく、 逆 のように 考 えていただくと 良 いと 思 うんですが、 最 初 はすごく 小 さなグループから 始 まった 活 動 で、5~6 人 位 のパートナーですね、それでやろうとしていた 訳 です。 農 業 の 分 野 , 海 洋 の 分 野 , 水の 分 野 の 3 分 野 が 集 まって 色 々 考 えている 内 に、この 分 野 で 専 門 家 が 必 要 だ、この 分 野 で 必要 だと、 逆 にこっちから 出 て 行 って、 必 要 な 所 に 必 要 な 人 を 頼 んでいきました。もちろん、元 々 昔 からのプロジェクトとかの 関 係 ですぐ 人 が 捕 まりやすい 環 境 にありました。 本 当 は 小さなグループのままでいようとしたのですが、どんどん 広 がっていって、 自 然 とその 役 割 分担 も 決 まっていったという 事 です。最 初 から 何 チームも 集 まって 始 まりそれで 役 割 分 担 をしたのではなく、 小 さなグループから 始 めて、 必 要 に 応 じて 枝 を 広 げて 行 ったという 事 です。もちろん、うまく 行 かない 機 関 もあって、 最 終 的 にこの 17 機 関 というのが 揃 って 一 緒 にやって 行 くことができました。【 財 団 】ウィーン 工 科 大 学 は 最 初 のころから、 小 さなグループの 段 階 で ICPDR と 一 緒 になって 関 わってきたのですかね。【 工 科 大 】そうです、このドナウプロジェクトに 関 してはここが 中 心 となって、もちろん 外から、 委 員 会 からの 後 押 しなんかがあったんですけれども、システムにとって 中 心 的 な 役 割をまた 担 ってきました。元 々ここの 研 究 所 は 非 常 に 恵 まれていて、 各 学 術 分 野 からのブレーンが 集 まってた 訳 ですね。 下 水 の 浄 化 に 関 する 分 野 ですとか、 生 物 学 ですとか、 文 化 技 術 、 環 境 、 農 業 に 関 するそれぞれの 専 門 家 が 集 まりやすい 環 境 にあって、その 知 識 を 持 っていた 人 が 集 まっていました。あと、その 他 にも、その 前 にやっていたプロジェクトで 栄 養 物 質 の 収 集 に 関 する 研 究 をしていました。そうしたいい 条 件 が 揃 っていたという 事 です。何 が 一 番 助 けになったかというと、このゼスナさんが 博 士 論 文 でこういったテーマを 取 り上 げてキチンと 調 べて、 土 台 を 踏 まえて 進 めていくことができました。ランパートさんも 博士 論 文 で 方 法 論 を 確 立 しました。ですから、そういった 物 も 非 常 に 役 に 立 っていた 訳 です。【 財 団 】 先 ほど 発 表 の 中 でですね、 東 欧 からのリンの 流 域 からの 発 生 源 について、 約 50%が“small surface water”で 出 て 行 かないという 数 字 が 出 ていますね。ということは、 黒 海 周辺 に 50%が 集 中 、 集 まっていくんですね。【 工 科 大 】この 小 さな 川 に 流 れていくということですけれども、その 先 ですね、それが 川 の木 に 留 まっているのか、 川 岸 に 留 まっているのか、それか、どんどんさらに 先 に 流 れて 行 ってしまうのか、その 場 所 によってもまた 違 うので、 長 期 的 な 影 響 がまだわかりにくい、どこにあるのかがつきとめられていません。 特 にこの 53%なんですが、これも 洪 水 がおきた 場 合 、また 移 動 していく 訳 ですね。どれだけが 流 れどれだけが 溜 まって 行 くのかが 把 握 しにくいのです。- 28 -


【 財 団 】こういった 組 織 が 動 くにあたり、 地 域 の 住 民 意 識 が 高 くそれがかなりの 影 響 を 及 ぼしたかどうか、そのへんをお 伺 いしたい。【 工 科 大 】 最 終 的 には、こういったプロジェクトを 市 民 に 理 解 してもらうというのは 大 切 ですが、 実 際 のところこれは 専 門 家 ばかりの 集 まりで 動 いて、すべて 専 門 家 達 がやった 訳 であって、 地 域 との 関 わりはほとんどないと 考 えていいと 思 います。これはあと、ドナウ 川 保 全国 際 委 員 会 と 話 し 合 っているところなんですが、こうしてプロジェクトで 得 られた 知 識 を 一般 市 民 にも 広 めていく、 政 治 的 成 果 も 必 要 になってきますので、 色 々なイベントで 知 識 を 広めて 深 めていく、そういう 動 きは 行 いました。【 財 団 】 経 済 と 水 質 の 改 善 は 反 比 例 するような 関 係 があると 思 いますが、 水 質 は 改 善 されたんですけれども、 農 業 を 改 善 して 行 くということについて、 具 体 的 な 提 案 とかは 今 の 段 階 で何 かありますか。【 工 科 大 】 一 番 のキーポイントが、EU の 農 業 政 策 があります。その 農 業 政 策 を 利 用 して、 分担 支 援 金 という 支 援 金 の 流 れがあり、それが 環 境 保 全 を 重 視 した 農 業 技 術 の 開 発 などに 資 金が 流 れていくような 政 治 的 な 構 造 でしょうか、そういったものが 農 業 状 況 の 改 善 に 影 響 力 があると 見 ています。もちろん、 個 々にも 小 さな 対 策 を 講 じていくこともできるんですけれども、まず 生 産 活 動についてですね。 生 産 率 最 大 100%の 生 産 率 を 目 指 すのではなくて、90%で 満 足 しようじゃないかということで、 飼 料 の 使 用 量 を 減 らしたりすることによって、 栄 養 物 質 の 流 出 量 を 減らすということですね。それから、 肉 類 の 生 産 、アルプスの 農 場 では、 牛 肉 の 生 産 が 非 常 に盛 んなんですけれども、100% 生 産 のところをこれからは 70% 位 に 減 らしていこうと、 特 に降 水 量 ・ 降 雪 量 の 多 いアルプス 地 域 で 積 極 的 に 減 らしていければ 良 いと 考 えています。 栄 養物 質 が 流 れやすい 地 域 で、 肉 や 動 物 の 生 産 を 減 らしていくのが 一 番 効 果 がある 対 策 だと 思 います。もう 一 つアイデアとしてあるのは、 動 物 性 タンパク 質 に 代 わって、 植 物 性 タンパク 質 を 利用 して 人 間 に 必 要 な 栄 養 を 取 っていくということで、 肉 の 生 産 を 半 減 させる。それによって窒 素 の 流 出 量 を 農 業 の 営 みの 中 から 減 らしていこう、そんなことをして 行 けばいいんではないかという 構 想 があります。後 は、 地 中 のリンの 量 をこれ 以 上 増 やさない、なるべく 保 つか 削 減 させていく、これが 必要 だと 思 います。農 業 生 産 で 発 生 した 窒 素 を 川 に 流 すのではなく、 川 から 遠 い 所 に 持 っていって 行 く、つまり 地 上 に 放 出 させるような 農 業 拠 点 の 移 動 も 考 えていくべきと 思 います。たとえば、 東 欧 ブロックの 方 ですね、 旧 東 欧 諸 国 のハンガリーでは 窒 素 の 排 出 量 が 10% 減 っています。【 財 団 】 先 ほど、 降 水 量 、 降 雪 量 が 多 い 所 が、 窒 素 の 発 生 量 が 多 いと 聞 いたんですね。しかし 雨 が 多 いと 濃 度 が 薄 まると 思 うんですけど。- 29 -


【 工 科 大 】おっしゃる 通 り、 薄 められるということはわかるのですが、 水 には 薄 めるという効 果 と、あと 流 していく 効 果 があります。アルプスとかの 降 水 量 ・ 降 雪 量 の 多 い 所 は、 流 す力 が 大 きいものですから、 例 えばあの 辺 りから、 黒 海 に 流 していく 影 響 力 っていうのが 一 番確 率 が 高 い 訳 で、 濃 度 は 少 ないんですけれども 流 れる 量 が 多 い 訳 です。 逆 に 非 常 に 乾 燥 した地 域 、 雨 量 の 少 ない 地 域 は、 濃 度 が 高 くても 流 れ 出 ていく 量 が 少 ないということですね、ですから、アルプスの 方 は 濃 度 は 低 くても 非 常 に 問 題 はなるということです。(3)シリカこのプロジェクトの 中 心 テーマではないんですけれども、このシリカが 川 に 流 れていく 状況 その 現 状 把 握 なんか、それをちょっと 調 べたのでそれをご 紹 介 します。シリカの 発 生 源 ですけれども、 洗 剤 ですとか 腐 食 防 止 剤 なんかにも 入 っています。 洗 剤 とかそういった 物 質 的 なものから 発 生 が 5%で、 後 の 95% 近 くは 生 物 学 上 の 原 因 がある 訳 です。ここで 話 題 にするのは、 溶 出 した 溶 解 シリカですけれども、1980 年 ~2000 年 のまで 間 に 統計 をとりました、その 時 にわかったのが、 冬 はだいたい 2mmg 位 があるのが、 夏 はそれが 半 減し 低 い 濃 度 になっているということがわかりました。これで 濃 度 と 排 出 量 の 関 係 を 整 理 すると 1 月 と 2 月 では、2 月 が 濃 度 と 排 出 量 との 関 連 性はかなり 緩 やかになっている 訳 です。 夏 は 濃 度 が 低 いんですけれども、 夏 の 場 合 、 濃 度 と 流れの 関 係 が 非 常 に 密 接 になっている 訳 で、 夏 に 洪 水 が 起 きた 場 合 、 濃 度 が 少 ないために 影 響は 少 ないかというとそうではなく、 洪 水 などで 流 れが 多 くなった 分 、シリカ 量 が 増 える 状 況になり、 洪 水 が 多 ければ 多 い 程 、 量 が 増 えていく 結 果 になりました。洪 水 の 時 、なぜシリカの 量 が 高 くなるかというと、 洪 水 だと 水 が 濁 るので 光 の 透 過 率 が 低くなります。それでシリカの 濃 度 が 高 まってくるという 結 果 になるんです。 物 質 に 溜 まってそれで 分 解 されたりすることもあるんですけれども。 洪 水 の 時 に、 河 床 に 砂 なんかが 溜 まり、そこにシリカが 蓄 積 、 堆 積 し、 濃 度 が 高 くなっていきます。1920 年 ~2000 年 の 文 献 には 色 々 黒 海 のシリカの 量 が 増 えているということが 書 かれているんですけれども、1920 年 ~2000 年 の 間 の 調 査 で、グラフで 表 わしたブルーの 方 は、 水 の 1ヶ 月 当 りの 流 出 量 です。 降 水 量 に 反 応 しシリカ 量 も 増 減 しています。シリカ 量 があんまり 変わっていない 所 は、 流 水 量 も 変 わっていません。これは、ルーマニアの 黒 海 の 状 況 ですけれども。ここは、だいたいドナウの 入 り 江 の 所 から 100 キロほど 南 部 に 下 がったルーマニアの 町 の 近 く、 海 岸 腺 なんですけれども。そこで 1950年 ~2000 年 まで 計 りました。75 年 位 に 急 激 に 減 って、それで 80 年 代 はだいぶ 安 定 して 減 ったままだったんですけれども、90 年 代 末 にまた 上 がっています。60 年 代 になぜ、 値 が 上 下 したかというと、 発 電 所 の 建 設 というのがあって、 鉄 の 門 なんかが 造 られたことが 理 由 に 上 げられるのではないかと。 発 電 所 の 建 設 、 鉄 の 門 の 建 設 を 開 始 した 頃 からシリカの 量 が 増 え 始- 30 -


めて、71 年 に 完 成 したんですけれども、その 後 もその 影 響 がしばらく 続 きます。 発 電 所 の 鉄の 門 、ダムの 建 設 なんかが 量 の 変 化 に 影 響 したと 思 います。ブルーで 示 したところは 流 入 量 で、 赤 い 方 はシリカの 濃 度 です。70 年 代 までは 上 下 したり、非 常 に 大 きなうねりがあったりするんですけれども、それは、 洪 水 とか 季 節 によって 色 々 変わってくる 事 もあります。 同 じ 時 期 にいくつかの 洪 水 があったりした 時 、 季 節 によっても 違うということです。70 年 代 に 入 ると、 今 度 は 流 量 とシリカ 濃 度 の 関 係 が 強 くなってくるという 事 です。 水 の 流れる 量 が 多 いと、 濃 度 も 高 い。70 年 代 特 に 多 かったのは、ちょうど 1970 年 ですね、この 頃に 50%もドナウ 川 から 黒 海 への 流 入 量 が 高 まり、それと 同 じように、シリカの 量 も 増 えていったという 事 がわかりました。10 月 ~12 月 まで、 川 から 海 に 流 れる 量 は 少 ないですけれども、そのために、 黒 海 に 溜 まったシリカが 循 環 しない、 川 から 流 れて 来 るものがないので 溜 まるという 事 です。ですから、必 ずしも 流 量 と 濃 度 の 関 係 がそこで 成 り 立 つかというと、そうではなく 例 外 的 な 時 もあるという 事 です。これも 年 代 順 によって 表 示 してあるんですけれども、リンの 量 もシリカ 濃 度 に 影 響 してくるのがわかると 思 います。70 年 代 ですね。ちょうどその 頃 にリンの 量 が 多 くなって、 窒 素 も似 たような 動 きをしているんですけれども、 栄 養 分 が 高 くなった 時 期 があります。リンと 窒素 が 急 激 に 増 えたところで、シリカの 消 費 量 が 多 くなった。年 代 年 代 によって、 藻 の 繁 殖 に 応 じて 窒 素 かリンかシリカのどれかが 消 費 される。60 年 代は 生 物 によるリンの 摂 取 量 が 多 かったのでリンが 少 なかったのですが、70 年 代 はシリカの 方がよく 摂 取 された。そのためにリンなどは 多 かった。すべての 要 素 がいっぺんに 消 費 されるのではなく、 一 つ 一 つの 生 態 系 の 関 連 で 変 化 しています。 特 に、シリカが 多 かったのは 70年 代 あたり、 洗 剤 が 多 く 含 まれていたという 事 ですね。【 財 団 】このグラフは 黒 海 に 溶 出 した 量 ですか?【 工 科 大 】 黒 海 の 水 中 に 溶 出 、 溶 解 された 分 です。ちょうど 71 年 ぐらいに、 黒 海 から 15kmくらい 離 れた 所 に 肥 料 の 工 場 が 建 設 されて、そこでまた 肥 料 工 場 からの 排 出 物 が 増 えました。リンの 量 ですけれども、これは 一 部 の 観 測 地 点 の 話 です。70 年 代 にその 肥 料 工 場 が 建 設 されて、それからリンの 量 が 増 えて、90 年 代 に 閉 鎖 されたんです。その 間 には、 増 加 が 観 測 されたんですけれども、それ 以 降 はまた 減 る 傾 向 になっています。シリカは 鉄 の 門 の 建 設 、リンの 方 は 肥 料 工 場 の 建 設 が 大 きな 問 題 だと 考 えています。【 財 団 】 植 物 プランクトンの 種 類 が 変 わってしまうと 思 うんですが、そういう 調 査 は 行 われていますか。【 工 科 大 】おっしゃる 通 り、 藻 の 種 類 なんかも 変 わる 問 題 はあります。ただ、これは 地 域 的な 問 題 であって、その 工 場 の 建 設 のある 近 くで 観 測 されたことなので、 海 全 般 のことには 言- 31 -


い 難 いんです。80 年 代 のシリカ 量 が 少 ない 時 に 夏 に 藻 の 繁 殖 が 多 かったりとか、そういった問 題 が 教 訓 にはなりました。緑 の 方 は 合 流 地 点 、ドナウ 川 と 黒 海 の 流 入 地 点 の 観 測 したもの。もう 一 つ、 赤 い 方 は 黒 海の 水 の 調 査 ですけれども、90 年 代 ドナウの 方 が 濃 度 が 少 ないところがあるんです。ドナウの濃 度 が 少 ない 時 は、 共 産 圏 の 崩 壊 で 肥 料 の 利 用 が 少 なった 時 期 と 一 致 し、97 年 以 降 は、ドナウ 川 の 濃 度 が 高 くなっている 状 態 になっている。70 年 代 、これは 観 測 所 の 統 計 の 話 ですけれども、 栄 養 物 質 が 流 れてくるのはドナウ 川 からだけではなくて、 工 場 からの 排 出 が 多 かった。たぶん、ご 興 味 がおありなのは、シリカが 栄 養 物 質 としてのシリカという 側 面 だと 思 いますけれども、シリカと 栄 養 物 質 との 関 連 ですね。いつどの 季 節 にどんな 種 類 が 発 生 するか。芽 を 出 したとか、そういったこと。 黒 海 での 問 題 は、 一 つの 種 類 の 藻 が 繁 殖 しすぎて、 他 の種 類 の 藻 が 夏 に 育 たなくなるほど 栄 養 が 取 られてしまったという 状 況 があります。リンや 窒素 が 十 分 に 増 えてくると、 今 度 は、それまで 他 の 藻 に 吸 収 されていた 栄 養 分 が、その 次 の 夏まで 残 っているというサイクルが 残 されて、 他 の 藻 も 繁 殖 するという 形 になっていく 訳 です。【 財 団 】 黒 海 のシリカの 量 が 多 い 方 が 良 いと 考 えているんです、 少 ない 方 が 良 いと 考 えている、どっちなんでしょうか。 日 本 ではシリカの 量 が 減 ってきて、 減 らないようにするにはどうしたらいいかというような 事 を 考 えるんですが、いかがでしょうか。【 工 科 大 】シリカ 自 体 の 量 だけではなくて、リンと 窒 素 との 割 合 で 見 るわけで、どっちが 良いかということは 言 えません。シリカ 量 は 人 間 生 活 に 直 接 には 関 係 しない、どちらかといえば 生 物 系 に 重 要 な 物 なので、シリカ 量 をコントロールできないのであれば、 栄 養 物 質 量 のコントロールによって 間 接 的 にコントロールしていくしかないと 思 います。【 財 団 】 全 然 関 係 ないんですけれど。 左 上 の 黄 色 い「5」と 書 いてあるそのマークはどういう意 味 なんですか。【 工 科 大 】EU の 第 5 次 計 画 という 事 です。これに 参 加 しているところは、こういう 刊 行 物 ですとか、なんか 発 表 する 時 には、 必 ずこのロゴを 入 れることとなっています。さっき、どうしてヨーロッパでこういう 国 際 プロジェクトが 成 り 立 つかといった 時 に、それぞれ 国 の 言 葉 が 違 う 訳 で、それぞれが 難 しい 事 をそれらしく 話 せば、これは 冗 談 ですけれども、 難 しい 事 をやりあっているように 見 える。もっといい 方 法 っていうのは、もう 専 門 用語 、 自 分 達 の 言 葉 だったら、 専 門 用 語 ばっかり 使 いますけれども、 外 国 人 同 士 だと、 英 語 で簡 単 に 表 現 する 練 習 ができるんです。皆 さん、 今 日 一 日 、いかがだったでしょうか。 日 本 でとってもいい 滞 在 したことがあるので、 今 度 いつかまた 近 い 内 にこういう 形 でお 目 にかかれる 場 合 があればいいなと 考 えています。 日 本 でもオーストリアでもどちらでもいいです。【 財 団 】 私 たちも 理 解 が 深 まりました。 本 当 にありがとうございました。- 32 -


5.ドイツ 連 邦 水 理 研 究 所 の 取 り 組 み(1) 流 域 概 要【 研 究 所 】ドイツについて、2,3お 話 しします。( 図 5.1)ドイツは 16 の 州 に 分 かれております。 環 境 や 水 に 関 しますと、この 16 に 分 かれているという 事が 問 題 になっています。 連 邦 主 義とは、 環 境 問 題 を 改 善 していこうという 方 法 においても 難 しい 問 題があります。ここの 連 邦 水 理 研 究 所 では、 管轄 は 連 邦 水 路 だけになります。ここがヨーロッパの 中 心 、 中 央 ヨー図 5.1 ヨーロッパの 河 川ロッパになります。 北 海 、バルティック 海 、フランス、ポーランド、このあたりにドイツがあります。ここがライン 川 です。ベーセル 川 、エルベ 川 、オーデル 川 です。この 部 分 がドイツ 領 となります。ここがドナウ 川で、この 大 きな 川 を 運 河 で 繋 ぎました。これが、マインドナウ 運 河 です。これがベルリンまで 行 っているミットランス 運 河 です。 北 海 、 東 北 海 運 河 です。あと、 色 々 小 さな 運 河 がたくさんあります。【 財 団 】 運 河 の 管 理 は 連 邦 が 行 っているのですか。【 研 究 所 】それは 航 海 局 が 管 理 しています。この 航 海 できる 水 路 、 運 河 は 全 て 航 海 局 の 管 理です。 小 規 模 の 河 川 並 びに 小 さい 運 河 については、それぞれの 州 が 管 理 しています。(2) 組 織 の 概 要 等【 研 究 所 】 組 織 と 課 題 について 説 明 します。ここの 研 究 所 は 連 邦 交 通 省 に 所 属 している 機 関です。水 文 学 、 水 道 経 済 、 生 態 ・ 河 川 保 護 に 関 わるアドバイスを 行 っている 研 究 所 であります。です。それと 連 邦 環 境 省 です。そちらの 方 に 関 してもアドバイスを 行 っております。 連 邦 水路 については、 連 邦 航 海 局 の 方 にアドバイスを 行 っております。現 在 290 人 の 所 員 が 常 勤 しています。あと 60 人 がパートタイムです。こちらの 財 政 ですが、 予 算 全 体 で 2,500 万 ユーロ、その 内 の 85%は 連 邦 交 通 省 からで、 約10%が 連 邦 環 境 省 からです。 残 りの 5%が 色 々 研 究 所 によって 得 たお 金 や EU からです。今 、 改 革 が 行 われている 状 態 で、これからは、 私 達 が 行 った 仕 事 の 成 果 に 対 しての 予 算 が- 33 -


つくことになります。【 財 団 】そうすると、 研 究 内 容 は 具 体 的 にはプロジェクトに 関 する 調 査 研 究 であり、 基 礎 的な 研 究 よりも、ダイレクトな 研 究 、 調 査 を 行 ったという 事 が 事 業 費 の 大 部 分 ですか。【 研 究 所 】 今 おっしゃった 事 がこれからの 目 的 になる 訳 です。 実 践 に 則 したプロジェクトです。その 基 礎 研 究 というのが、 誰 がやるべきかが 大 きな 議 論 になっている 事 もあります。 連邦 レベルで40 箇 所 の 研 究 所 があります。その40 箇 所 の 研 究 所 からその 研 究 費 を 取 り 除 いて、大 きなプロジェクト 並 びに 大 学 の 方 にその 予 算 を 廻 そうという 風 にしようとしているのです。応 用 研 究 と 言 われている 10% 位 のものですが、それを 行 っていくというのは、 私 達 のこの専 門 分 野 における 専 門 性 を 保 つために 必 要 なことです。この 議 論 はまだ 煮 詰 まっておりませんので、これが 決 定 するまでにまだ 何 年 もかかると 思 います。主 な 課 題 ですが、 連 邦 水 路 というのは、 色 々その 使 用 者 によって、 活 動 がある 訳 です。 航海 をする 人 、 水 の 供 給 者 、 環 境 、または 娯 楽 という 事 です。これらの 活 動 をする 場 合 に、こちらの 方 でその 解 決 方 法 を 見 つけようと 援 助 する 訳 です。こちらでは、 輸 送 、 水 理 経 済 、また 生 態 という 面 で 色 んなところで 活 動 があります。あと 高 水 と 低 水 における 調 査 です。予 想 に 関 して、 水 道 学 的 な 予 想 や 水 文 学 的 予 想 です。 生 態 的 発 展 についての 予 想 も 行 っています。この 生 態 分 野 に 関 しましては、モデルを 作 り 始 めたばかりです。観 測 などにより 水 収 支 計 算 で 水 深 を 測 り、 環 境 に 適 合 しているかというような 基 礎 についての 方 法 を 開 発 するということです。 連 邦 水 路 における 水 、 懸 濁 物 、あと 土 砂 についての 調査 です。それが 構 造 学 的 に 見 たものであります。それと 化 学 的 、 生 物 学 的 な 調 査 です。これが 組 織 になります。( 図 5.2)こちらが、 研 究 所 長 で、3 つの 課 に 分 かれております。量 的 水 文 学河 川 形 態 等質 的 水 文 学水 質 等生 態 学 ・ 環 境保 全 等事 務 関 係報 道 等図 5.2 研 究 所 組 織 図- 34 -


量 的 水 理 ・ 水 文 学 ・ 河 川 形 態 等 と 質 的 水 文 学 ・ 水 質 等 、それと 生 態 学 ・ 環 境 保 全 等 です。3つ 目 の 生 態 学 が 一 番 新 しい 課 になります。こちらの 研 究 所 では、 約 10 年 毎 に 1 回 、 課 の 見 直しを 図 っており、その 時 に 要 求 されている 事 に 従 って、 課 の 方 も 再 編 成 しています。あとからそれぞれの 課 についてはまたお 話 しします。国 際 的 対 応 部 署 として 秘 書 課 があります。これは 国 際 水 文 学 計 画 のユネスコの 関 係 です。これは 各 国 にあると 思 いますが、 世 界 気 象 機 関 の 運 営 水 文 計 画 といいます。それに 対 してドイツで 行 うことをこちらの 方 で 調 整 いたします。もう 一 度 、よくわかるように 説 明 致 しますが、ここに、データセンターがあります。こちらの 方 で、 世 界 各 国 の 全 ての 川 の 流 れなどを 集 めましてデータバンクに 入 れます。 例 えば、世 界 の 気 象 データが 必 要 な 人 はそのデータバンクから 利 用 する 事 ができます。 日 本 では 文 部科 学 省 の 防 災 研 究 所 というところでデータを 取 っています。防 災 研 究 所 の 方 もこちらに 来 たことがあります。ヨーロッパの 組 合 というものがあり、ここの 参 加 メンバーは 今 春 新 しく 加 わった EU の 加 盟 国 を 除 く 16 カ 国 の 加 盟 国 にここと 同 じような 研 究 所 があります。これも 拡 大 する 必 要 があると 考 えています。(3) 調 査 研 究 事 例【 研 究 所 】 量 的 な 高 水 ・ 低 水 分 析 です。 洪 水 につきましても、 洪 水 予 想 を 行 うことで 航 海 をいつまで 可 能 であるか 検 討 しています。【 財 団 】 実 際 の 運 用 河 川 で 船 が 動 いたりしますが、そのための 情 報 を 予 測 して、 予 測 データ等 を 各 利 用 者 に 渡 しているのですか。【 研 究 所 】データを 収 集 し 測 定 を 行 います。それに 測 定 に 必 要 な 器 械 もこちらで 開 発 します。模 型 を 作 りますので、そういう 模 型 を 作 ったりする 事 は 研 究 になります。この 分 析 は、 全 ての 分 野 に 関 わる 事 であり、 植 生 や 地 下 水 など 全 て 含 まれています。 先 ほど 申 しました 水 位 の予 想 や 水 収 支 の 調 査 です。水 中 の 玉 石 など 自 然 の 移 動 で、その 河 床 が 変 わってきますので、航 海 に 影 響 がある 訳 です。 懸 濁物 というものが、 溜 まりますと、環 境 に 対 する 問 題 が 起 こり、そういう 懸 濁 物 は、 汚 染 されてきます。そこでドイツでは 土 砂 を年 間 4,500 万 m3をパワーショベルで 掘 り 出 しています。沿 岸 部 での 生 態 的 な 河 床 調 査では、 底 に 水 がない 状 態 にして図 5.3 音 響 測 深 システム- 35 -


調 査 をする 事 になっております。 河 床 についての 検 査 、 調 査 時 は、 水 がない 状 態 で 必 要 な 調査 が 行 われています。その 他 、 化 学 的 な 地 下 水 の 調 査 や 測 定 方 法 につきましても、ほぼ 独 自 で 開 発 しております。ここはライン 川 のひとつの 区 間 です。ここはローレライの 岩 です。ここは、 水 面 から 15m 深さがある 所 です。エコーサウンディングシステムといいます。( 図 5.3)【 財 団 】 音 響 測 深 ですか。【 研 究 所 】 音 響 測 深 システムです。この 方 法 ですが、 航 海 をする 場 所 を 探 るのに 必 要 であり、新 しいナビゲーションシステムを 作 っております。その 船 の 航 海 士 が 器 械 を 持 っており、 河床 の 状 態 を 見 ることができるようになっています。 流 速 と 水 位 を 測 り、 船 が 通 れる 箇 所 か 通れない 箇 所 かなどが、ここでわかるようになっております。ですから、 荷 物 の 積 載 量 を 増 やす 事 ができる 訳 です。質 的 、 水 理 量 学 、 水 防 学 、 化 学 的 、 反 射 、 放 射 性 学 的 調 査 です。それについては、ケラーさんの 方 から 説 明 させて 頂 きます。重 金 属 など、そういうような 汚 染 物 質 に 関 する 土 砂 の 調 査 です。これが、 土 砂 中 のカドミウム 量 です。1970 年 から 今 日 までの 量 です。カドミウムが 非 常 にたくさん 減 ったというのがわかります。その 汚 染 物 質 量 が 70%~90% 減 っております。生 態 属 性 学 分 析 です。 例 を 用 いて 後 ほどお 話 し 致 します。他 の 課 で 得 た 水 質 や 量 、 質 等 の 情 報 で 計 測 すると、 水 質 を 決 めるのは 入 っている 物 質 だけではなく 色 んな 作 用 も 関 係 します。ビオテスト 方 法 という 方 法 ( 魚 や 貝 による 相 関 関 係 の 模型 )を 作 りまして、 植 生 など 色 んな 付 加 的 要 素 を 扱 って 作 用 を 計 測 します。この 作 用 が 影 響して 魚 など 生 態 学 に 影 響 します。その 他 、プロジェクトグループとしまして、エルベ 川 の 生 態 学 を 研 究 しています。90 年 にドイツが 統 一 されまして、それ 以 来 エルベ 川 が 比 較 的 自 然 だという 事 で 研 究 を 行 っています。エルベの 川 の 水 は、 水 質 が 悪 いのですが、 構 造 的 に 見 ると、 非 常 にいいので、 新 しい 認 識 を得 る 事 ができました。当 研 究 所 は、その 川 毎 に 仕 事 をしているのではなく、 専 門 領 域 にまたがった 計 画 を 行 っております。そのひとつが 北 海 、 東 海 の 空 気 のモニタリングです。そこでは 当 研 究 所 はこの 飛行 機 に 特 別 な 計 測 装 置 を 装 備 するという 事 をお 手 伝 いしました。これは、レーザーですが、そのレーザーを 使 って 水 面 を 探 知 しました。その 水 面 上 の 油 とか、 科 学 的 汚 染 物 を 探 知 します。これは、 環 境 汚 染 者 を 見 つけるために、ナビ 上 で 効 果 的 な 方 法 です。もうひとつ、 専 門 分 野 にまたがった 領 域 の 研 究 というのが、 港 に 入 る 所 です。 非 常 にたくさん 土 砂 を 掘 り 出 さないといけないので、これを 外 海 の 方 に 持 って 行 きます。これはホッパーと 呼 んでいます。 土 砂 が 広 がり、その 近 くにあるものに 全 てに 影 響 を 及 ぼす 訳 です。ドイツは 悪 化 禁 止 法 というのがありまして、 例 えば、ここにあるものよりも 良 い 物 しかそ- 36 -


こに 持 ってきて 入 れてはいけないという 法 律 です。ですから、 最 低 条 件 それよりも 少 しでも良 い 物 をもっていきます。これが 決 定 をサポートするモデル(システム)です。 何 かを 変 えようという 場 合 、 量 的 、質 的 、 河 川 学 と 生 態 学 の 方 から 全 部 合 わせてモデルを 作 って 決 断 を 助 ける 役 割 です。これは、オランダのベンツ 大 学 と 一 緒 に 研 究 をしています。オランダの 航 海 専 門 の 所 (ライトファーザーシュタット)と 密 接 に 研 究 をしています。これまでの 一 般 の 組 織 についての 話 しは、まだいっぱいお 話 しをする 要 素 がありますが、これで 終 わらせて 頂 きます。【 財 団 】この 研 究 所 の 業 務 内 容 と 合 致 しているか 分 かりませんが、 私 なりに 考 えてきたことをお 伺 いしたい。日 本 では 河 川 法 があり、その 大 きな 柱 として 治 水 、 洪 水 対 策 、 二 番 目 に 利 水 、 飲 み 水 とか農 業 用 水 、 三 番 目 に 各 河 川 の 水 質 保 全 、 改 善 、 生 態 系 の 保 全 などの 環 境 という 項 目 があります。その 中 でも 今 まで 洪 水 対 策 に 結 構 優 先 して 取 り 組 んでおります。 今 までの 話 を 聞 きますとこちらでは 環 境 に 力 を 入 れているように 思 われますが、ここでは、どういうことを 優 先 して 研 究 しているのかお 伺 いしたい。 環 境 に 取 り 組 む 割 合 とかあったらお 願 いします。【 研 究 所 】まずは、ここは 交 通 省 の 直 属 という 事 で、 一 番 の 課 題 は、 航 海 を 確 実 にするという 事 です。それは、 連 邦 水 理 法 というのがあり、そこが 元 になっている 訳 です。あと 水 路 です。 必 ず 河 川 が 流 れるようになっていることが 必 要 です。 生 態 学 を 考 慮 した 上 で、 全 ての 問題 を 解 決 しなければいけないと 考 えています。どういう 対 策 をとると 言 われても、 環 境 を 傷つけない、 環 境 を 汚 染 しない 方 法 で 行 わなければいけない 訳 です。これがドイツの 連 邦 法 です。 今 まではドイツですが、 今 度 EU の 方 で、 水 枠 組 指 令 というのがあります。補 足 でドイツについて 言 いますと、 先 ほど 治 水 、 利 水 、 環 境 の 3 つの 分 野 を 上 げていただきましたが、 治 水 というものは、ドイツの 場 合 は 州 の 管 轄 です。ただ 航 海 に 関 わる 治 水 があればこちらの 方 で 研 究 を 行 いますが、 治 水 だけを 扱 っているところは 連 邦 ではない 訳 です。ただ、 連 邦 環 境 省 が 州 に 対 してある 一 定 の 指 導 を 行 う 事 はできます。しかし、ライン 川 のようないくつもの 州 にまたがっている 河川 については 非 常 に 難 しいです。 例 えば、バーデン・ヴュルテンベルク 州 やヘッセン 州 など、 治 水 のための 遊 水 地等 を 作 ることが 困 難 な 訳 です。しかし、いくつもの 州 共 同 で 水 作 業委 員 会 というのを 作 っています。これは 州 の 地 方 組 織 みたいなもので、 州 毎で 何 とか 問 題 を 解 決 しようという 事 で 図 5.4 航 路 水 深 確 保 のため 川 幅 を 狭 くしている- 37 -


討 論 を 行 われるようになっています。【 財 団 】 航 海 に 関 するものだけですか。 内 と 外 で 水 位 差【 研 究 所 】 航 海 に 関 係 するものだけで が 生 じているす。 船 は 大 きな 河 川 も 通 りますし、 運河 も 通 ります。ですから、それらの 管理 も 行 わなければなりません。ただ、私 達 の 方 はアドバイスをすることはできますが、 実 際 に 何 かを 行 う 権 利 はありません。( 参 考 : 図 5.4,5.5)図 5.5 内 と 外 で 水 位 差 が 生 じているドイツの 連 邦 研 究 所 の 場 合 は、 全 てそういう 風 になっておりまして、アドバイスはできるが、 実 際 には、 専 門 官 庁 にアドバイスを 行 うことです。(4) 構 造 の 欠 陥【 研 究 所 】これからお 話 しするのは、ひとつの 研 究 です。それは 構 造 の 欠 陥 という 事 です。水 路 を 拡 幅 している 間 に 河 床 の 形 が 非 常 に 変 わります。 今 からモーゼル 川 のいくつかの 例 をとってご 覧 頂 きます。そのあと、 生 態 状 況 を 改 善 する 対 策 をご 紹 介 します。ドイツの 水 路 を 示 した 地 図 です。これがモーゼル 川 で、これがフランスの 山 岳 地 方 をさしています。コブレンツでライン 川 に 合 流 します。モーゼル 川 のデータですが、ドイツ 内 を 流れている 部 分 が 270km です。その 270km 中 の 高 低 差 が 85m あります。この 勾 配 は、0.3‰です。河 床 の 幅 が、100m~200m で、この 渓 谷 自 体 が 非 常 に 狭 く、 狭 い 所 では 300m となります。この 写 真 を 見 て 頂 いてもわかると 思 いますが、 水 位 が 上 がる 所 はすぐに 山 が 始 まっています。これはコッヘムという 場 所 の 近 くでの 水 位 ですが、 平 均 で 310m 3 /s 流 れています。 平 均的 な 洪 水 のほぼ 3 倍 になります。 平 均 的 低 水 位 になりますと、60m 3 /s 以 下 です。これが、モーゼルを 縦 断 的 に 見 た 図 です。60 年 代 初 めのモーゼル 川 では、 堰 、 水 門 などを作 りました。270km の 間 に 13 の 水 門 並 びに 堰 があります。 堰 などの 落 差 が 3m90cm~9m ありますが、 航 海 できるには 落 差 は 2m80cm 以 下 でなければいけない。また 航 海 する 川 幅 ですが、40m 以 上 となっています。この、ふたつともモーゼル 川 の 写 真 ですが、 両 方 ともここからそう 遠 くない 所 です。 右 が1958 年 の 拡 張 する 前 の 写 真 です。これが、1976 年 で 拡 張 後 の 写 真 です。【 財 団 】 拡 張 というのはどういうことですか。【 研 究 所 】 拡 張 というのは、 水 門 、 堰 などを 作 ったという 事 です。それを 拡 張 と 言 っています。ここはまだ、 堰 、 水 門 がない 所 ですが、それでも 突 堤 などは 人 間 によってつくられているというのが 分 かっていただけると 思 います。この 時 点 でもう 自 然 河 川 ではなく、 航 海 路 になっていた 訳 です。 右 の 方 が 河 床 が 多 様 にできています。 左 の 方 は、かなり 真 っ 直 ぐ 河 床 が- 38 -


広 くなり、 護 岸 が 真 っ 直 ぐになっています。これは、 堰 を 作 る 事 によって、 右 の 遊 水 地 と 言えるような 部 分 が 取 り 除 かれてしまった 訳 です。これによって、 色 んな 河 川 の 生 物 の 生 活 圏が 失 われてしまった 訳 です。これは、ふたつ 目 の 例 です。これが 19 世 紀 の 地 図 です。これは 20 世 紀 の 地 図 です。この地 図 の 時 代 差 ですが、 約 150 年 位 になります。このモーゼルが 急 にカーブしていますが、 元 々、約 10 の 中 州 がありました。 現 在 、これが 唯 一 残 っている 中 州 です。あとは 全 てなくなりました。その 中 州 は、 一 部 、 陸 と 繋 がっている 箇 所 もあり、そのため 水 が 流 れずに 堰 き 止 められてしまうようになっています。これが、こういう 風 に 変 わる 例 を 見 ていただきましたが、こういうことが、 堰 、 水 門 を 作る 事 によって、 河 床 で 起 こり 得 るという 事 です。ここでは、2,3 しか 説 明 しませんが、この水 門 、 堰 の 建 設 よって 中 州 などがなくなります。植 物 が 生 えていない 小 さい 中 洲 は、 短 い 期 間 しか 存 在 しなく、なくなってしまうようです。その 中 州 がなくなると、 河 床 の 形 が 大 きく 変 わってきます。 例 えば、 横 断 工 作 物 である 堰 をつくる 事 によって、 生 態 や 河 床 の 形 が 変 わってきます。航 海 路 を 作 るために、シャベルで 河 床 を 掘 ります。 掘 ると 土 質 の 組 成 が 変 わってきますし、配 分 も 変 わってきます。ここは 沿 岸 で 起 こる 可 能 性 がある 構 造 の 変 化 を 示 したものです。あるものを 作 る 事 によって、 沿 岸 が 直 線 化 され 沿 岸 の 距 離 が 短 くなり、 生 き 物 の 生 活 圏 も 短 くなってしまう 訳 です。 堰 などを 作 る 事 によって、 元 の 沿 岸 にあった 植 生 、 樹 木 などが 取 り 残され、 樹 木 等 が 繁 茂 してしまう 訳 です。例 えば、 草 地 におきましては、その 草 地 に 堤 防 などを 作 る 事 によって、 洪 水 の 場 合 の 遊 水地 が 狭 くなってしまいます。これは 洪 水 対 策 のための 構 造 改 善 方 法 ですが、 河 川 の 生 態 学 を促 進 させるために 行 われる 事 があります。 例 えば、 魚 道 などをあわせてつくることです。先 ほど、 島 と 陸 地 との 間 に 水 が 流 れていたのを、 水 が 流 れすぎないようにしていましたが、それをまた 河 川 として 流 れるようにして、 再 度 活 性 化 させます。あともうひとつは、 河 川 の沿 岸 の 建 設 物 を 自 然 に 近 いような 形 に 作 り 直 すということです。また、 植 物 並 びに 樹 木 を 植えていくという 事 も 重 要 です。しかし、 航 海 局 が 行 なわれる 内 容 は、 河 床 と 沿 岸 に 限 られてしまう 訳 です。 遊 水 地 というのは、 土 地 の 所 有 者 がいますので、その 一 部 を 管 轄 にしてしまうという 訳 です。モーゼル 川で 行 った 対 策 について、いくつかご 紹 介 します。これからのお 話 しは、 堰 、 水 門 を 作 ったために 起 こった 損 害 をなるべく 最 小 限 にするための 対 策 です。この 絵 は 水 深 が 非 常 に 浅 い 所 です。このような 地 区 は、モーゼルではどこにもありません。こういう 所 は 微 生 物 や 生 物 の 生 活 圏 を 与 えるというために 非 常 に 重 要 です。ここは、ドイツ 語 でライフベルと 言 いますが、そこの 前 に 堤 防 のような 形 で 土 を 被 せてあります。この 堤 防 を 作 った 事 によって、 船 が 通 った 時 に 起 こる 波 によって 水 が 堤 防 を 超 えないよ- 39 -


うになっています。この 岸 に 生 息 している 生 物 にとって、 船 による 波 というのは、 大 きな 支障 になります。これがまた 別 の 対 策 で、モーゼル 川 の 中 洲 に 溝 を 掘 りましたが、そこにモーゼル 川 の 水 が常 に 流 れ 込 んでいまして、 常 にモーゼルの 水 が、 入 ったり 出 たりするという 事 ができるようになっています。もちろん、 洪 水 の 場 合 は、 満 水 になって 水 が 被 います。これはまた 別 の 対 策 で、 新 しい 突 堤 を 作 りまして、 鍵 型 突 堤 というのですが、これによって、この 沿 岸 部 を 保 護 すると、 水 生 植 物 が 生 えているのが 見 えると 思 います。この 植 物 は、船 が 通 ることによってでる 波 の 影 響 が 少 ない 所 に 生 えています。( 図 5.5)【 財 団 】 水 制 工 が 河 岸 にくっついていない(オープン)ですが、それは 意 図 的 にそうしているのですか。【 研 究 所 】そうです。ここは、 水隙 間 があるが 流 れるようにするために 突 堤 を繋 げていません。これはひとつの実 験 です。 色 んな 流 れをここで 作り 出 すことができる 訳 です。洪 水 の 時 には、 水 は 多 く 何 もないが、 普 通 の 状 態 の 時 に 色 んな 速さの 流 れを 作 ってやって、 実 験 しています。これは、 突 堤 といってますが、 水 を 調 整 するためのものではなく、 生 態 学 的 な 目 的 で 作 っ図 5.5 水 制 工 の 実 験ています。 山 本 さんは 沿 岸 と 突 堤 の 間 で 壊 れてしまうのではと 心 配 されていると 思 いますが、水 文 学 的 な 視 点 からすれば、そういう 風 に 考 えられると 思 いますけれども、これは 生 態 的 な意 味 で 作 っています。【 財 団 】これを 決 める 時 には、 実 験 や 水 理 計 算 などをこの 研 究 所 で 行 って、こうした 方 がいいなどのアドバイスをしているのですか。【 研 究 所 】これは、 私 達 の 研 究 所 が 担 当 官 庁 と 一 緒 に 計 画 をしたものです。 工 学 士 、 河 川 工事 エンジニアとも 一 緒 になって 計 画 を 立 てて 作 っています。これは 10 年 前 に 作 った 実 験 装 置で、その 間 ずっと 実 験 結 果 を 分 析 しており、もうすぐ 取 り 外 す 予 定 です。【 財 団 】 取 り 外 したらどうするのですか。【 研 究 所 】この 装 置 はいいので、これを 取 り 外 す 事 はしませんが、 実 験 は 終 わったという 事です。その 報 告 ですが、 洪 水 の 危 険 を 高 めるかという 事 についても 調 査 を 行 っています。こういう 河 川 工 事 は、 全 て 作 る 前 に 洪 水 の 危 険 が 高 くないと 確 認 されたものしか 作 ってはいけない 事 になっています。こういうような 実 験 装 置 おきまして、 例 えば、 魚 が 増 えるか、 魚 が- 40 -


卵 をたくさん 産 むか、また、それによって 小 さな 稚 魚 がたくさん 増 えるかというような 調 査も 行 われています。このような 実 験 は、10 年 前 から 始 まりまして、ずっと 調 査 が 行 われておりました。そこで、 魚 など 小 さな 生 物 、 脊 髄 や 脊 椎 動 物 の 調 査 です。そういうような 生 活 圏ゾーンがあるとかなど、すべて 調 査 しております。 来 年 、 最 終 報 告 書 を 作 る 予 定 です。【 財 団 】この 実 験 の 結 果 は、 成 果 が 上 がったものと 評 価 されるのですか。【 研 究 所 】 今 こちらでお 見 せした 分 は、 対 策 の 一 部 です。お 見 せしたものは、 良 いと 評 価 できるものです。ここでお 見 せしなかった 対 策 で、あんまり 良 くないと 思 われるものがあります。これで 私 の 話 しは 終 わりにさせて 頂 きます。どうもありがとうございました。【 財 団 】 今 日 の 発 表 とは 違 いますが、ドイツでは、たぶん 19 世 紀 にナビゲーション 用 に 水 制をたくさん 作 ったという 話 しを 聞 いています。 今 回 、 閘 門 とドックをここの 中 13 箇 所 作 りましたが、1970 年 まで 作 っている 訳 ですから、こういう 閘 門 を 作 る 事 によって、ナビゲーションの 改 善 を 行 うのは、いつ 頃 が 盛 んであったのか 教 えていただけますか。【 研 究 所 】1960 年 代 ころです。 一 番 最 初 に 作 ったのは 1920 年 代 でした。20 年 代 に 最 初 にこういうようなものを 作 りまして、 小 さい 船 が 航 海 できるようになり、60 年 代 に、 大 きな 船 も航 海 できるようになりました。 詳 しく 言 えば 3 段 階 で 良 くなっていますが、それは、 一 番 最初 は、1800 年 代 に 行 われました。それは 本 当 に 小 さな 船 しか 通 れなかったのです。【 財 団 】 高 低 差 ( 落 差 )2m80cm ありますが、 非 常 に 大 きな 船 が 通 る 時 に 問 題 にあったということですか。【 研 究 所 】1960 年 代 に 大 きな 船 が 通 るようにしました。【 財 団 】1960 年 代 にたくさん 作 った 時 には、エコロジーとか 生 態 というような 事 について、あまり 配 慮 されてなかったと 思 いますが、そのとおりですか。【 研 究 所 】70 年 代 の 中 頃 から、ようやく 生 態 学 というものに 対 して 法 律 などもだんだんそれに 添 ってくるようになった 訳 です。【 財 団 】もうひとつ 聞 きますが、 洪 水 の 時 はゲートをたぶん 全 部 開 けると 思 いますが、 洪 水調 節 時 は、 水 位 を 上 がるのですか、 下 げるのですか。【 研 究 所 】その 水 位 によって 違 いますが、それ 以 下 でモーゼル 川 が、 自 由 に 流 れるような 状態 なっております。 面 白 い 事 にここの 水 門 、 閘 門 は、 後 ろの 水 位 がまず 下 がります。この 閘門 が、こういう 施 設 ドックは、 洪 水 が 起 きても 水 位 が 変 わらないようにしています。洪 水 の 場 合 は、 堰 、 水 門 などは 全 て 水 に 隠 れてしまい、 建 物 がひとつ 見 えるような 状 態 になります。 先 ほど 保 護 された、 沿 岸 の 地 域 ですが、 航 海 局 は、60 年 代 以 降 に、 例 えば、 何 か工 事 をして 損 傷 を 起 こした 場 合 には、その 代 わりとして、 沿 岸 に 何 かを 作 っても 良 いというようなことが 許 されるようになりました。それが 60 年 代 になってからです。先 ず、 堰 など 交 通 可 能 のものを 作 ります。 後 から 河 床 をもっと 深 くしました。 今 、モーゼルの、 航 海 路 が 非 常 に 多 くなりましたので、 閘 門 の 航 路 をもうひとつつくろうとしています。- 41 -


(5)ライン 川 の 魚【 研 究 所 】これからは、ラインの 魚 を 増 やすための 対 策 についてお 話 します。これが、 人 がライン 川 に 対 してどういうような 事 を 行 ってきたかというものです。どういういような 事 によって、 魚 の 資 源 が 減 ってきたかという 事 についてお 話 します。( 図 5.6)たくさんの 方 が、ライン 川 の 絵 を 描 いており、 昔 のライン 川 がどのような 姿 をしていたかというのが 分 かります。 現 在 のライン 川は、 昔 はもっと 支 流 に 分 かれていました。これはオーバーラインと 言 うマイン 川 の上 流 です。この 辺 りは 川 幅 が 広 かったので、 支 流 に 分 かれる 可 能 性 があった 訳 です。1817 年 、この 真 中 のグレーで 示 した所 に、 運 河 のようなものを 作 りまして、その 両 側 に 堤 防 を 作 るということをしました。 昔 は 水 深 が 色 んなものがありましたので、 色 んな 種 類 の 魚 が 住 んでいまし図 5.6 漁 獲 量 の 推 移た。現 在 では、 水 流 も 水 深 も 平 均 的 になってしまったので、 水 の 資 源 や 魚 の 資 源 もそれに 伴 ってきております。次 に、 魚 に 大 きな 影 響 を 与 えるのは、この 堰 の 建 設 です。 魚 の 通 り 道 が、ここで 中 断 され、こういう 堰 が 出 来 ましたので、 上 に 登 るときは、 階 段 を 上 って 行 っていますが、 降 りる 時 は、そこのタービンがありますので、そのタービンに 入 らないようにする 必 要 がありました。こういう 堰 の 建 設 ですが、 初めは 小 さな 河 川 からはじまり、だんだん 大 きなものになって、ライン 川 にも図 5.7 堰 の 魚 道作 られてしまいました。( 図 5.7)特 に 移 動 する 魚 の 現 象 に 加 わりました。ライン 川 は、100 年 前 まではヨーロッパで 最 も 鮭の 多 い 川 でした。1000 件 も 漁 業 を 行 っている 方 がいて、 戦 後 の 漁 業 を 行 っている 人 達 が、 主に、 鮭 を 漁 獲 する 事 によって 生 計 を 立 てていました。 昔 は、このように 13 万 匹 、10 万 匹 の鮭 が 捕 獲 できましたが、 最 後 にそういう 大 きな 鮭 が 捕 獲 できたのは、1950 年 代 です。同 じような 事 が 他 の 魚 でも 起 こっていまして、チョウザメがそうです。 北 海 に 生 まれまし- 42 -


て、ライン 川 でもオランダの 部 分 で 卵 を 産 み、ここの 支 流 が 干 拓 により 農 地 に 変 えられましたので、オランダのチョウザメの 捕 獲 が 1920 年 頃 にはもうゼロになりました。鮭 のデータがあり、それはオランダにおけるライン 川 での 捕 獲 だったという 事 です。ただ、ドイツ,フランス,スイスでも 鮭 は 取 れました。ジロードという 川 にまだこのチョウザメがいますが、それは 水 の 多 いところです。1970 年 代 に 水 が 汚 染 された 事 によって、 魚 が 非 常 に 減りました。 第 一 次 世 界 大 戦 後 に、 産 業 を 促 進 するという 事 で、 非 常 に 工 業 が 発 展 して 水 が 汚れました。これが 1972 年 の 河 川 の 地 域 を示 したものです。( 図 5.8) 赤 が 汚染 されているところです。 緑 が 汚染 されていないところです。 昔 から 知 られていた 魚 の 種 類 の 半 分 の種 類 がいなくなりました。そこで、ライン 川 が 通 っている 州 が 一 緒 に討 議 を 始 めました。それは 飲 料 水をライン 川 から 取 っている 所 が 非常 にたくさんあるからです。その図 5.8 ライン 川 流 域 の 汚 染 状 況共 同 の 組 織 が IKSR と 言 うところです。その IKSR というところは、 浄 水 場 の 建 設 を 促 進 しまして、それによって 飲 料 水 の 質 を 良 くするという 目 的 がありました。 元 々いた 種 類 の 全 種 の 魚 がまた 生 息 してきました。 水 質 が 良くないと 住 まない 魚 も 戻 ってきました。これが、マスです。こういう 事 によりまして、IKSRというのは、このライン 川 の 通 っている 州 だけでなく、 国 も 含 めた 組 織 になりました。そこで 浄 水 場 の 建 設 を 促 進 しましたが、こういう 事 によって 魚 が 戻 って 来 たのですから、また、死 に 絶 えてしまった 種 類 、つまり 鮭 を 放 流 しました。88 年 に 近 くの 支 流 から 稚 魚 をライン 川に 放 してやりました。それから 同 時 に 鮭 が 遡 上 できるように 魚 道 も 作 るようになりました。1990 年 以 来 、 海 から戻 ってきた 何 千 トンもの 鮭 がライン 川 の 方 に 戻 って 来 ています。その 鮭 の 一 部 が、ライン 川の 支 流 でも 産 卵 しているという 事 がわかっています。しかしまだ、 稚 魚 を 放 流 することをやめる 事 はできません。というのは、 鮭 が 堰 を 上 りきったりすることがまだ 難 しいという 事 で、自 然 の 鮭 の 土 台 が 見 込 めないからです。現 在 、 魚 道 を 作 っているのは、 鮭 が 多 い 上 流 にある 堰 です。これが、2000 年 に 作 られた 初めての 堰 に 作 られた 魚 道 です。これが、 海 から 見 てひとつ 目 のものですが、それはカウスローウェという 南 の 方 です。この 辺 りにあります。これは、 池 を 繋 げているような 形 になり、その 深 さは 最 大 で、1m50cm あります。これが 何- 43 -


千 の 魚 がここを 通 る 訳 ですが、そのうち 鮭 もよく 通 るのがわかります。 先 ほど、 魚 が 降 りていく 場 合 、タービン 通 って 行 くと 言 いましたが、それは、そこで 魚 をまだ 保 護 する 方 法 や 予防 などの 方 法 はありません。ですから、 魚 道 を 作 る 時 は、なるべく 海 に 近 い 所 にして、 魚 が 泳 いで 帰 って 来 る 時 にたくさんのタービンを 通 って 帰 って 来 なくてもいいようにしています。うなぎの 場 合 は、タービンを 通 った 時 に、その 致 死 量 が 非 常 に 多 いです。うなぎは 長 いので、タービンとぶつかる 可 能 性 が 非 常 に 高 いからです。ある 場 所 では、うなぎの 漁 獲 量 、 種類 が 非 常 に 減 ったので、タービンの 前 でうなぎを 捕 まえて、それをトラックに 乗 せて 海 の 方に 運 んで 海 に 放 すという 事 を 考 えました。 他 の 方 法 も、とってもよいかも 知 れません。 例 えば、 日 本 で 皆 さんが 行 っているようなうなぎの 養 殖 などです。もうひとつは、 魚 を 増 やすための 方 法 として、 航 路 を 完 成 するという 事 です。 魚 が、その沿 岸 部 でたくさん 産 卵 致 しますので、そこを 船 の 波 から 守 ってやる 事 が 重 要 です。ここに 堤防 を 作 ってやって、 船 の 波 から 守 っています。そして、 植 生 が、その 上 に 生 えまして 植 生 が水 の 中 まで 入 って 来 れないようになっています。 船 の 波 が 来 ない 所 には、たくさんの 植 生 物が 生 えています。そこで 産 卵 が 行 われています。ここはモーゼル 川 に 繋 がっています。ただその 繋 がる 場 所 はなるべく 狭 くしているという事 が 重 要 です。この 入 り 口 の 繋 口 が 大 きいと、 船 で 来 た 時 に 水 が 寄 さられて、それがまた 水が 戻 るというときに 大 きなうねりがありますので、それがないようにということです。こういうような 方 法 は、 治 水 対 策 と 組 み 合 わせて、 行 う 事 も 可 能 です。オランダではこういう 事 を 行 っていまして、これを 治 水 対 策 との 両 方 の 目 的 を 兼 ねたもので 作 るという 事 です。それは、ライン 川 とアプラーで 行 われています。こういう 川 がありますが、 遊 水 地 を 大 きく取 りまして、それを 洪 水 の 時 には 水 を 溜 めます。 洪 水 がなくなれば、たくさんの 生 物 の 生 活圏 としてそこを 使 います。ドイツのデビアンでは、 治 水 対 策 として、 遊 水 地 のようなもので、 池 を 沿 川 につくり、 洪水 が 出 たときに 水 を 入 るようにするという 方 法 です。この 溜 池 は 洪 水 用 の 溜 池 です。こういうものをライン 川 と 繋 いで、そこに 魚 の 生 活 圏 ・ 保 有 します。 私 の 話 は、これで 終 わりにさせて 頂 きます。どうも、ご 静 聴 ありがとうございました。【 財 団 】 小 さな 池 についてですが、 洪 水 の 時 にため 池 に 流 砂 がかなり 堆 積 すると 思 いますが、そういう 事 はまだ 起 きていないですか。【 研 究 所 】それは、 今 のところはないです。モーゼルの 場 合 は 水 位 が 10m まで 上 がりますし、流 れが 非 常 に 速 いので。この 対 策 は、もう 60 年 代 から 始 まっていますので、もう 40 年 間 行っているという 事 です。 今 までのところは、その 流 砂 はないです。大 きな 石 が 今 でも 昔 と 同 じようにありますし、 汚 泥 はないです。- 44 -


【 財 団 】 研 究 機 関 に 対 して、 質 問 はちょっとはずれてしまうかもしれませんが、 先 ほどの 方もそうですが、こういったことは 対 象 物 が 人 工 的 になってしまいます。どこまで、 自 然 に 戻そうとされているのか。どのように 戻 そうとしているのかをお 聞 きします。【 研 究 所 】これは、 政 治 的 にしかお 答 えできないようなお 話 です。お 金 があれば、たくさん投 資 される 事 になるでしょうが、ドイツの 経 済 的 状 態 が 非 常 に 悪 い 状 態 では、そういう 生 態学 的 な、つまり 自 然 体 制 というのはあまり 進 みません。 国 というのは、 社 会 がそれを 負 担 できるだけのお 金 しか 投 資 できないのです。 簡 単 に 自 然 保 護 というものには 投 資 できないのです。 自 然 の 保 護 とか、 自 然 再 生 というのが、これからの 将 来 に 対 する 重 要 な 問 題 だという 事は 認 められてきております。昔 は、 工 業 化 して 利 益 だけを 見 て、 色 んな 事 をして 来 た 訳 ですが、そういう 事 をすると、その 後 もっとたくさんのお 金 がかかるという 事 がわかりましたので、 今 は 環 境 に 対 しまして、何 かをしなければいけないというのを 法 律 で 決 められています。しかし、 法 律 というのは、変 える 事 ができますので、 具 体 的 なお 答 えは、ちょっとできません。ライン 川 とモーゼル 川 の 場 合 は、その 使 用 目 的 が 航 海 という、 非 常 に 重 要 な 訳 です。ですから、 河 床 については、 掘 ったところをまた 埋 め 戻 すという 事 はないと 思 います。 人 工 的 な対 策 というのは、 海 岸 、 沿 岸 部 分 だけに 限 られております。水 力 発 電 所 などを 取 り 外 すという 事 は、ありえないでしょう。しかし、 小 さな 河 川 で 堰 を爆 破 したという 事 はあります。【 財 団 】 護 岸 改 修 もありますが、 改 修 目 標 が 高 いと 費 用 も 大 きくなりますので、 結 果 的 には事 業 費 が 上 がってしまうという 恐 れがあります。それがどうかと 思 うのですが。【 研 究 所 】 環 境 を 完 全 にするという 事 は、 個 人 にとってもすごく 良 い 事 であるという 事 が 言えると 思 います。 例 えば、 本 当 に 自 然 に 近 い 景 観 に 人 々が 行 って 感 じる 事 と、 本 当 にこういうところしかないような 所 に 行 って 感 じるのと、やっぱり 違 うと 思 います。ビオトープがここに 少 しずつあるのではなく、いくつものビオトープを 作 ってそれを 繋 いでカウナとかトゥローラなど、そういうものが 見 られるような 場 所 を 連 鎖 して 作 っていく 必要 があります。こういう 事 は 政 治 の 方 から 要 求 された 事 ではなく、 国 民 の 方 から 要 求 された事 であります。(6) 河 川 化 学【 研 究 所 】 排 水 料 金 法 というのは、 徴 収 という 方 法 でまかなっていますが、これは、 汚 水 排水 に 汚 染 物 質 が 紛 れ 込 んでいて、それが 川 に 流 れ 込 んだ 場 合 は、それについての 料 金 徴 収 を行 うという 法 律 です。それによってもこのカドミウムの 量 が 減 ったという 事 です。この 法 律 によりまして、 河 川 の 汚 染 物 質 が 減 り、アンモニゥムは 1984 年 から 2000 年 で、3万 7,000t から、6,800t に 減 りました。 全 リンも 3 万 2,000t から 減 りました。この 銅 ・ニッ- 45 -


ケル・ 鉛 ・ 砒 素 の 全 部 が 減 っていますが、ただ、 銅 は、まだ 多 い 状 況 でありあます。まだ、全 ての 問 題 が 解 決 した 訳 ではありません。図 でお 見 せしますが、これは 両 方 とも 農 薬 ですが、モーゼル、 特 にワイン 場 の 葡 萄 の 栽 培がありますので、 地 形 状 態 によって、こういうような 農 薬 が 川 の 中 に 流 れ 込 みやすくなります。 最 後 に 現 在 の 図 をお 見 せします。昨 年 は、 低 水 位 の 時 期 が 長 くあり、 水 温 が 非 常 に 高 くなりました。このブルーのラインが、コブレンツのライン 川 で、 測 定した 温 度 の 平 均 温 度 であります。最 高 で、 夏 で 22 度 まで 上 がります。2003 年 のコブレンツ 市 の 平均 が、 一 時 は 28.1 度 まで 上 がりました。それの 赤 の 部 分 が、この 上 と下 のこのあたりですが、これは25 年 間 の 最 大 の 幅 を 示 してい図 5.9 水 温 の 推 移ます。1978 年 ~2002 年 までです。この 2003 年 の 最 高 温 度 が、この 2002 年 までの 平 均 温 度 の幅 を 超 えてしまっています。それは、 水 温 が 問 題 だというのではなく、どのくらいこの 水 温が 続 いたかっていうのが 問 題 になります。ここにライン 川 とモーゼル 川 がありますけど、2003年 には、 水 温 が 25 度 を 超 えた 日 が 41 日 間 ありました。この 計 画 を 行 ったこの 期 間 中 、わずか 9 年 間 しかこの 25 度 を 超 えた 日 があった 年 はないのです。( 図 5.9)モーゼル 川 では、94 年 に 水 温 が 25 度 を 超 えた 日 がたくさんありました。 特 に、こういうような 温 度 が 高 い 期 間 は、 特 に 集 中 降 雨 時 に 魚 に 対 して 影 響 を 及 ぼします。このような 状 況 になりますと、 魚 にストレスがかかり、 魚 が 病 気 にかかります。またよく魚 が 死 んでしまうという 事 も 観 測 されております。これで 終 わりです。ひとつだけ 言 わせて 頂 きますと、 現 在 行 っている 研 究 領 域 は、 河 川 における 医 薬 品 です。非 常 に 少 ない 量 でも 影 響 を 及 ぼすことがあります。ですから、こういうものを、 分 析 することも 非 常 に 手 がかかります。どうも、ありがとうございました。【 財 団 】 今 日 は 本 当 にありがとうございました。- 46 -


6.バイエルン 州 における 再 自 然 化 等 への 取 り 組 み6.1 バイエルン 州 における 取 り 組 み訪 問 機 関 :バイエルン 州 水 管 理 庁今 回 おいで 頂 いて 非 常 に 光 栄 に 思 っております。 私 はハルツモッツ・カウンツェンガー(Hartmut Kunzinger)と 申 しまして、 当 バイエルン 州 水 管 理 庁 の 教 育 係 として、 国 際 関 係 を 担当 しております。 本 日 の 議 論 以 外 で 後 日 質 問 がありましたら、どうぞ E-Mail で 質 問 を 出 して 頂 きましたらお 答 え 致 します。(1)バイエルン 州 の 紹 介それでは、バイエルン 州 と 当 庁 について 簡 単 にご 説 明 します。バイエルン 州 の 面 積 は 7 万 km 2 でドイツの 中 では 一 番 広 い 州 です。 人 口 は 1,240 万 人 で、ノルトライン・ヴェストファーレン 州 に 次 いで 2 番 目 に 多 い 人 口 となります。 州 内 の 人 口分 布 は、ミュンヘンが 140万 人 、アウグスブルクが 40万 人 、ニュルンベルクエアランゲンが 60 万 人 と 続 きます。第 一 級 , 第 二 級 河 川 が 約9,000km あり、 小 さい、 第 三級 河 川 が 約 50,000km 以 上 あります。 遊 水 地 が 約 100 箇所 あり、 水 力 発 電 所 が 4,700箇 所 あります。降 雨 量 ですが、こちら、アルプスの 辺 りですね、この 辺 りで 年 間 2,000mm の 降雨 量 があります。( 図 6.1)ドナウ 川 は 黒 海 に 注 ぎ 込んでいます。 北 部 にはマイン 川 があり、 東 西 に 流 れる川 としてはヨーロッパで 最大 です。このマイン 川 とドナウ 川図 6.1 バイエルン 州 の 年 間 降 雨 量 分 布 図は 運 河 にて 繋 がれておりまして、 航 海 が 可 能 になっております。これは、 北 部 の 降 雨 量 が 少 ないので、ドナウ 川 の 水- 47 -


を 北 部 に 運 ぶためにこの 運 河 を 使 っています。これは、 川 の 生 態 系 を 安 定 化 させるための対 応 策 です。 年 間 1 億 2,500 万 m 3 を 送 水 しています。【 財 団 】 地 形 勾 配 に 逆 らって 逆 方 向 に 流 しているんですか。【 水 管 理 庁 】ドナウ 川 の 取 水 地 点 は 標 高 338m です。そこから 標 高 406m まで 揚 水 しています。 下 流 のバンベルクは 200m 位 の 高 さになります。( 図 6.2)図 6.2 マイン-ドナウ 運 河 縦 断 図(2) 水 管 理 庁 の 課 題当 水 管 理 庁 には 大 きく 3 つの 課 題 があります。1 番 目 は 洪 水 防 護 です。2 番 目 は 飲 料 水 の 供 給 です。この 2 番 目 の 課 題 は、99%の 方 々が 水 道 網 にアクセスされておりますのでほぼ 完 了 しました。 水 は 地 下 水 で 95%をまかなっております。 残 りはダムです。3 番 目 の 課 題 は、 河 川 保 護 になります。 今 日 の 午 後 に、 視 察 して 頂 きます 場 所 では、 夏 に泳 ぐ 方 がたくさんいます。ここでは 下 水 施 設 で、 紫 外 線 放 射 による 殺 菌 を 行 い、 川 で 泳 いでも 問 題 ないようにしています。このようにして、 私 達 は 河 川 を 清 潔 に 保 っております。(3) 行 政 改 革 ( 民 営 化 )今 この 州 では、 今 まで 州 で 行 っていた 事 業 を 30% 減 らす 事 を 目 指 しています。 州 は 基 本的 な 課 題 だけに 制 限 し、 他 は 民 間 で 行 うというような 事 になってきました。 今 、 大 きな 改革 の 途 中 にある 訳 です。この 改 革 方 針 は 4 週 間 後 に 決 定 が 下 されまして、1 年 後 か 2 年 後 かにまた 当 庁 にいらっしゃいましたら、 当 庁 はミュンヘンではなく、フォーフェンというあちらの「HOF」と 書 いてある 所 がわかりますでしょうか、あそこに 当 庁 が 移 転 する 事 になります。ここから 約 300km 位 離 れた 所 になります。行 政 は 縮 小 するという 事 と 同 時 に、 経 済 構 造 の 弱 い 地 方 を 促 進 するというという 事 も 移- 48 -


転 目 的 のひとつです。フォーフェンの 辺 りでは 過 去 何 年 かの 間 に 25,000 人 が 職 場 を 失 いました。そこには 繊 維 業 界 があったのですが、それが 衰 退 し 経 済 状 態 が 非 常 に 弱 くなってきました。【 財 団 】 日 本 でも 民 営 化 の 話 が 出 ていまして、 政 府 の 構 造 がだんだん 変 わるかもしれないという 段 階 にあるんですけれども、 民 営 化 する 領 域 というのは、バイエルン 州 のこの 場 合には、どういう 領 域 を 民 営 化 するんですか。【 水 管 理 庁 】それを 今 からお 話 しします。ここは 州 と 市 町 村 で 役 割 が 分 かれていまして、浄 水 、 飲 料 水 とそれの 排 水 については、 市 町 村 が 自 分 の 地 域 について 全 部 責 任 を 持 ってやっています。 私 達 はそれに 関 して、アドバイスを 行 う 機 能 を 持 っておりまして、 例 えば、どういう 浄 水 装 置 を 使 ったらいいかとか、どういう 品 質 を 水 が 必 要 であるかとか。こちらから 規 制 することはできません。ただアドバイスを 行 うだけです。これまでは、 例 えば 浄 水 装 置 などを 作 る 場 合 は、 市 町 村 の 予 算 が 少 ないような 場 合 には、州 から 補 助 金 が 出 ていました。こちらの 方 で、そういう 建 設 計 画 が 正 しいか、 正 確 に 行 われているかなどを 検 査 し、たくさんの 人 員 を 必 要 とする 仕 事 でした。しかし、 現 在 では 飲料 水 は 99% 整 備 され、92%は 既 に、 浄 水 装 置 にも 繋 がれているということで、これから 当庁 の 人 員 が 整 備 されている 事 になります。(4) 整 備 予 算1992 年 、2002 年 に 大 きな 洪 水 が 発 生 しまして、 州 議 会 により 20 年 計 画 が 立 てられ、 毎年 1 億 2,000 万 ユーロ 洪 水 防 護 のために 使 っています。この 1 億 2,000 万 ユーロの 洪 水 防 護予 算 は、 主 に 約 9,000km の 第 一 級 , 第 二 級 の 河 川 に 使 われています。50,000km の 小 さい 第 三級 河 川 については 市 町 村 が 負 担 します。(5) 農 地 転 用20 年 来 バイエルンでは、 農 地 を 他 の 例 えば 草 地 とかに 変 えてきております。というのも、農 業 生 産 が 過 剰 になっているからです。1953 年 には 50%の 食 品 を 輸 入 しなければならず、このため 農 業 を 促 進 してきました。 耕 地 を 灌 漑 したり、 色 んな 方 法 で 農 業 が 行 われるようにしてきました。もちろん、 馬 からトラクターに 代 わり、 肥 料 や 農 薬 を 使 い 出 すとか、 新しい 種 を 使 うという 事 によりまして、 農 業 生 産 量 が 増 えてきた 訳 です。しかしその 後 、EU との 関 係 で 2,000 万 トンのバターが 全 然 出 荷 できなくて、 農 家 に 放 置してあったというような 状 況 が 起 こりました。それで 1975 年 には 農 業 生 産 量 を 減 らすため農 地 転 用 を 進 めました。その 頃 から 河 川 沿 岸 付 近 の 土 地 を 州 が 買 い 取 って、 再 自 然 化 することができるようになってきた 訳 です。 私 達 の 目 的 の 一 つは 大 きな 河 川 の 沿 岸 一 帯 を 州 の 所 有 物 にする 事 です。州 がその 所 有 者 であれば、 例 えばその 一 部 を 農 家 が 持 っている 場 合 とは 違 った 維 持 または整 備 ができます。- 49 -


【 財 団 】 川 の 沿 岸 域 を 州 政 府 が 買 い 取 る 用 地 について、それはどれくらいの 距 離 でしょうか?【 水 管 理 庁 】 州 政 府 が 今 までに 買 った 沿 岸 帯 ですけども、8,000km の 沿 岸 帯 を 買 っています。川 からの 幅 は、バラバラですが、 大 きなドナウ 川 ですと 40~50m という 事 もありますし、小 さな 河 川 ですと 3~4m という 事 もあります。しかし、そこは、 元 々 農 家 が 所 有 した 土 地 ですが、もう 農 業 用 に 使 っていないので、 農家 は 非 常 に 安 価 に 州 に 売 ります。これは、 農 家 の 財 政 状 況 によるところが 大 きく、 州 民 の1.5%が 農 業 をおこなっている 訳 ですけれども、 財 政 状 態 が 非 常 に 悪 い 訳 です。ですから、その 地 面 をよろこんで 売 ってくれます。(6) 土 地 所 有 者 と 管 理法 律 で 所 有 者 がそこの 河 川 の 維 持 をしなければいけないと 決 まっております。この 沿 岸 は、 農 家 などの 個 人 所 有 地 となっていることもあります。しかし、 河 川 自 体 は公 共 所 有 になりますので 放 置 できません。このため 大 きな 河 川 は、 州 がその 維 持 ・ 整 備 をすることが 決 められています。 小 さい 河 川 の 場 合 は 市 町 村 が 担 当 します。これは、 歴 史 的 にこういう 風 になってきました。1850 年 頃 では 河 川 の 整 備 ・ 維 持 をするという 事 は、 非 常 に 大 変 な 事 だったので、その 時 代 から、 国 が 整 備 ・ 維 持 はしなければいけない 事 になってきた 訳 です。ただ、ヨーロッパでも 違 う 国 もありまして、 例 えばスイスではライン 川 などの 大 きな 河川 は 市 町 村 の 所 有 物 になっています。スイスの 市 町 村 は、その 部 分 の 所 有 権 を 州 や 国 に 渡すのを 拒 否 しております。というのも、こちらの 方 の 河 川 で 作 られた 発 電 などのエネルギー 収 入 が、その 市 町 村 に 入 るためです。先 ほど、 洪 水 防 護 というお 話 ししましたが、 維 持 をするのもこちらの 義 務 になっております。 例 えば、 堤 防 が 壊 れたりした 場 合 には、こちらの 方 で、 修 理 しなければいけません。堤 防 組 合 は、 北 の 方 にはありますが、こちらの 方 はありません。ですから、 北 の 方 では、その 堤 防 組 合 が 行 っている 様 な 事 も、こちらでは 当 庁 課 が 行 います。レーベンスブルグとかヴュルツブルグとか、そういう 所 では 州 が 堤 防 を 造 り、 市 町 村 は予 算 という 形 で 参 加 します。 負 担 額 は 市 町 村 の 財 政 状 況 に 応 じて 30%か 40%を 市 町 村 が 負担 するという 事 になっております。これらの 計 画 というのは、かなり 短 い 期 間 などで 出 来 上 がる 訳 ですが、その 後 、その 堤防 の 高 さを 何 m にしようかという 事 になりますと、 市 民 が 出 てきまして、ああだこうだという 事 になりまして、いつまで 経 っても 決 まりません。また、 歴 史 的 都 市 の 場 合 は、 国 の文 化 財 保 護 などを 受 けている 事 などがありますので、 堤 防 によって、その 町 を 河 川 から 遮断 してしまわないようにする 必 要 があります。このため 歴 史 を 持 つ 都 市 で、 堤 防 を 造 るというのは 非 常 に 複 雑 で 時 間 のかかる 仕 事 です。- 50 -


(7) 治 水 安 全 度【 財 団 】 堤 防 の 余 裕 高 はどのくらいですか?【 水 管 理 庁 】100 年 確 率 水 位 で 1m とってあります。それに、あと 1m 見 ると 1000 年 に 1 度来 るような 大 きな 洪 水 からも 守 ることができます。(8) 災 害 保 険 について洪 水 など 何 か 被 害 が 起 きた 場 合 、 被 害 者 は 例 えば 堤 防 整 備 に 反 対 した 人 に 対 して、どういうことをしたら 自 分 の 損 害 費 用 が 貰 えるかという 事 で、いつも 裁 判 が 起 こります。バイエルン 州 では 各 家 庭 において、 洪 水 に 対 する 保 険 は 義 務 になっていませんが、 火 災 保 険 には 入 らなければいけないとなっています。 隣 の 州 のバーデン・ヴュルテンベルク 州 では、各 家 庭 は、 洪 水 に 対 する 保 険 に 入 らなければいけないとなっています。【 財 団 】 義 務 なんですか。【 水 管 理 庁 】はい、そうです。バーデン・ヴュルテンベルク 州 では、 谷 に 住 んでいようと、山 に 住 んでいようと、どこに 住 んでいようとも、みんな 洪 水 に 対 する 保 険 に 入 らなければならないと 義 務 付 けられています。ですから、 多 くの 人 が 払 うので 一 人 あたりの 掛 け 金 が非 常 に 低 く 抑 えられます。 洪 水 が 起 きた 場 合 は、 洪 水 の 災 害 被 災 者 に 保 険 金 が 支 払 われる訳 です。このような 保 険 は 8 年 前 からできました。それは、 暴 風 雨 やあられとか 洪 水 をまとめた 保 険 になります。【 財 団 】 保 険 を 義 務 化 しているということは、 法 律 でそういうものを 決 めないとなかなか義 務 化 にはならないと 思 います。 日 本 では、 任 意 保 険 のため 義 務 化 していないです。 義 務化 しようとすると、かなり 反 対 にあって、なかなかできない 事 です。バーデン・ヴュルテンベルク 州 ではどういう 事 情 があったんですか?【 水 管 理 庁 】バーデン・ヴュルテンベルク 州 でどのようにして 決 まったのかという 事 について、 詳 しくは 知 らないですが、 法 的 に 決 まっているという 事 です。ドイツにおいては 火災 保 険 は 義 務 化 されていますが、 洪 水 保 険 に 関 しましては、 原 則 として 日 本 と 同 じように任 意 になっています。(9) 災 害 危 険 地 域 への 対 応これはドイツ 災 害 対 策 委 員 会 (DKKV)が 出 版 した 物 ですが、これは 2002 年 のエルベ 川 の洪 水 を 教 訓 に、どのようにしたら 洪 水 から 守 れるか、あるいはマネージメントすべきかというような 事 が 書 いてあります。どうぞ、お 持 ちください。(Hochwasservorsorge in Deutschland“Lernen aus der Katastrophe 2002 im Elbegebiet”,Januar2004)昔 は、 河 川 近 くの 建 物 の 場 合 は 地 下 室 を 作 らず、1 階 は 例 えばガレージですとか、 住 居 として 重 要 じゃない 部 分 として 利 用 していました。しかし、 今 では、 利 用 目 的 が 多 様 化 してきて、 地 下 室 に 娯 楽 室 なんかを 作 りまして、コンピューターを 地 下 室 に 置 いたりしていますので、 洪 水 が 起 こりますと 大 きな 損 害 が 起 こる 訳 です。- 51 -


このため、 建 築 指 導 計 画 書 で 洪 水 が 起 こる 地 域 には 建 築 を 許 可 しないとなっています。これまでは、 洪 水 の 危 険 のある 地 域 は 時 価 が 安 かったため、そこに 建 築 した 方 々が 非 常 に多 かったのです。洪 水 災 害 について 予 測 をする 事 で、 住 民 が 早 めに 避 難 できるようになっています。 災 害予 報 はインターネットで 見 られるようになっております。 今 年 の 夏 から、 河 川 水 位 の 予 測を 始 めまして、この 予 測 結 果 をインターネットで 公 開 し、 住 民 が 避 難 しなければいけないとか、まだ 大 丈 夫 だとかの 判 断 材 料 としています。なお、レーベン・ブルクとかヴュルツブルクでは、 水 が 上 がって 来 るまで 3 日 とか 4 日 はかかります。また、バイエルン 州 では、ハザードマップをインターネットで 公 表 し、 市 民 はそれを 見れば、 自 分 が 危 険 地 域 にいるかどうかという 事 がわかるようになっています。(10) 再 自 然 化 後 のモニタリング再 自 然 化 について、モニターシステムがあるかという 質 問 を 皆 様 から 事 前 に 受 けています。モニターはもちろん 行 っておりまして、 今 日 の 午 後 見 て 頂 く 場 所 でも 何 年 間 もモニタリングしまして、その 結 果 を 見 て、 今 後 のどのようにすべきかを 正 確 に 見 て 行 きます。【 財 団 】モニタリング 結 果 ですが、 成 功 した 事 例 はよく 情 報 公 開 するんですが、 失 敗 した事 例 なんかもどこかで 集 約 して、 公 表 するシステムはあるんでしょうか?【 水 管 理 庁 】そのような 公 開 システムはないですね。(11)ミティゲーションについて河 川 沿 岸 に 発 電 所 や 道 路 、 橋 などを 建 設 する 場 合 には、 環 境 条 件 というものを 満 たさなければいけない 事 になっています。 環 境 費 用 が 建 設 費 用 の 最 大 20%まで 必 要 になる 可 能 性があります。【 財 団 】バイエルン 州 の 自 然 保 護 法 の 第 6-A ですね。【 水 管 理 庁 】はい、そうです。 国 が 河 川 工 事 を 行 う 場 合 も 同 様 で、 個 人 がやる 場 合 と 同 じ条 件 を 満 たさなければいけません。1999 年 、2002 年 にこの 州 でも 堤 防 がかなり 壊 れました。その 後 、 堤 防 などの 建 設 をする 場 合 も、 法 律 的 には、 民 間 の 人 と 同 じような 法 律 手 続 きをしなければいけませんでした。 建 設 計 画 は 早 くでき 資 金 も 準 備 できていましたが、 法 的 手続 きに 非 常 に 長 い 期 間 がかかりました。例 えば、 堤 防 を 作 るという 場 合 にも、ビオトープがあった 場 合 には、ビオトープの 代 わりにどういうのを 作 るか。あるいは、ビオトープを 避 けるような 曲 がりくねった 堤 防 を 作るかなど 考 えますが、そういう 避 けてきた 堤 防 を 作 ることができない 場 合 が 多 いので、 更に 難 しくなってくる 訳 です。(12) 環 境 教 育ここに、 学 校 の 先 生 用 に 作 った 資 料 があります。 先 生 はそのまま 学 校 で 生 徒 に 見 せて 使- 52 -


えるようになっています。あと、 市 町 村 が 河 川 に 対 する 市 民 のイメージを 聞 くためにも 使います。【 財 団 】 先 生 は、この 環 境 教 育 が 学 校 教 育 の 中 で、 週 に 1 回 とか、そういう 時 間 が 必 ずもうあるんでしょうか。【 水 管 理 庁 】 特 に 決 まったものはありません。 例 えば、 彼 の 奥 様 は 小 学 校 の 先 生 なんですけども、だいたい 10 時 間 位 河 川 に 関 する 授 業 を 行 います。もうちょっと 上 級 学 校 になりますと、 例 えば 1 年 に 2 回 位 ですね、 山 歩 きというのを 行 いまして、その 時 に 例 えば 河 川 についての 情 報 を 先 生 が 教 えたりします。【 財 団 】 学 校 教 育 というのは、 日 本 の 場 合 、 文 部 省 と 別 の 省 庁 であって、 別 の 省 庁 の 色 んな 政 策 の 事 を 簡 単 には 受 け 入 れてくれなくて、なかなか 非 常 に 難 しいんですが、どうなってるんですかね。【 水 管 理 庁 】それの 先 駆 者 はスイスでした。20 年 位 前 に 自 然 保 護 団 体 が、 電 力 会 社 をスポンサーにして、 今 回 のようなファイルを 作 りました。これは 1 部 あたり 25 ユーロ 位 のお 金がかかりました。それを 私 達 もいいと 思 いまして、 文 部 省 と 一 緒 になってこういうファイルを 作 りました。これは 当 庁 が 売 っているものではなく、 無 料 で 差 し 上 げています。それではグルーブマイヤー(Wolfgang Grobmaier)さんから 次 のお 話 しを 致 します。(13) 再 自 然 化私 はグルーブマイヤーです。30 年 来 、 当 水 管 理 庁 に 勤 務 しております。 河 川 の 開 発 、 再自 然 化 、 拡 張 の 計 画 を 担 当 しています。その 拡 張 などをする 場 合 に、どういった 事 が 行 われ、どういう 影 響 があって、それの 代 わりに 何 を 行 ったらいいかを 見 ております。 拡 張 というのは 昔 でしたが、ここ 10 年 は 河 川 の 再 自 然 化 に 取 り 組 んできております。昔 は 発 電 所 とか 洪 水 対 策 施 設 など、そういう 物 を 多 く 作 っていた 訳 です。30 年 前 は、 生態 系 を 促 進 する 方 法 があまりありませんでした。 私 達 が 行 っていたことは、どこに 木 を 植えるかとかその 程 度 だった 訳 です。 現 在 では、 河 川 が 将 来 どのような 形 になるかという 事を、 他 の 方 と 一 緒 に 決 める 事 ができるような 権 利 もできてきております。それでは、どういう 方 法 でやるかという 事 を 皆 さんにお 話 しします。バイエルン 州 の 河 川 は、 全 長 60,000km ありまして、 先 ほどカウンツェンガーさんからお話 しがありましたけれども、 当 水 管 理 庁 は、そのうちの 9,000km を 整 備 担 当 しております。私 達 が 担 当 するのはドイツ 南 部 の 大 きな 河 川 です。この 降 雨 量 多 い 南 部 からから 北 の 方 の乾 燥 した 地 域 ですけども、それぞれの 自 然 に 合 わせた 河 川 の 状 況 、 河 川 のあり 方 というのが 大 きく 異 なっております。ドイツでは 河 川 の 状 態 を 評 価 しています。こちらの 方 に 一 例 があります。( 図 6.3) 黄 色と 赤 で 着 色 した 部 分 が 悪 い 所 です。 私 達 の 計 画 は、 今 までの 良 い 状 態 の 河 川 を 維 持 し、 悪い 状 態 の 河 川 を 改 善 ・ 改 修 して 行 くという 事 です。ただ、 都 市 部 においては 改 修 方 法 が 限られ、なかなか 進 みません。- 53 -


(14) 再 自 然 化 の 考 え方今 日 の 午 後 、イザー川 にいらっしゃいますが、イザー 川 について、 少 しだけ 説 明 します。これは、ミュンヘンの 古 い 地 図 になります。イザー 川 は 原 始の 川 でした。 今 日 のイザー 川 はこういう 風に 整 備 されています。こちらは 都 市 部 ですので、イザー 川 を 再自 然 化 する 方 法 はあまり 残 ってはおりません。 当 時 のような 原図 6.3 河 川 評 価 図 (バイエルン 州 ,1973)始 のイザー 川 に 戻 すことは 不 可 能 です。しかし、 都 市 部 でも 河 川 の 再 自 然 化 が 全 くできないという 訳 ではないので、その 例 を 今 日 の 午 後 見 ていただきたいと 思 います。 都 市 部 では、自 然 という 事 がひとつの 大 きな 役 割 を 果 たし、 人 にとってリラックスできるというのは 非常 に 重 要 です。まず、 何 か 改 修 などをする 場 合 、 昔 この 川 はどのような 形 をしていたかとか、 今 後 どのようになっていたら 良 いのだろうかとかいう 風 に 考 えます。バイエルン 州 では、どうなっていたら 河 川 が 自 然 なのかというのを 見 る 事 ができる 場 所 がいくつもあります。アルプスでは 自 然 な 河 川 の 名 残 りを 見 る 事 ができます。これもイザー 川 ですが、200 年 前ではミュンヘンでもこのような 形 をしていた 訳 です。イザー 川 からドナウ 川 に 合 流 する 地点 も 比 較 的 自 然 が 残 っています。河 川 の 移 動 に 対 しても、 今 日 では 注 目 しています。 自 然 な 河 川 は 移 動 しなければいけないと 考 えています。この 200 年 の 間 、 河 川 を 運 河 化 し 固 定 してしまいました。ですから、その 川 は 移 行 する 事 ができませんでした。それは、 小 さな 河 川 でも 同 じで、 河 川 というのはすべて 移 動 できることが 必 要 です。 都 市 部 以 外 は、このような 形 の 河 川 に 戻 したいと 考えています。私 達 がそれを 実 際 どうやって 行 っていくかをお 話 しします。最 初 にその 河 川 が 本 来 どういうタイプだったかを 知 ることです。これは 非 常 に 重 要 な 事で、その 河 川 のタイプに 合 った 自 然 に 戻 していくという 事 が 私 の 作 業 になります。これは、- 54 -


市 町 村 が 担 当 する 第 三 級 河 川 ですが、 私 達 は 市 町 村 にこういう 小 さな 河 川 でどのような 事をするべきかという 事 をアドバイスします。ミュンヘンなどの 都 市 部 では、 人 が 大 きな 谷のある 所 に 行 って、リラックスするのを 好 みます。 私 達 は、 人 が 都 市 部 の 自 然 地 域 で 保 養してもらうという 事 を 促 進 する 訳 です。今 、 良 い 河 川 の 例 を 見 て 頂 きましたが、ここは、 水 力 発 電 所 が 造 られている 所 です。ここの 区 域 においては、 再 自 然 化 する 方 法 はありません。ここは 木 を 植 える 等 なるべく 自 然に 作 るようにしました。これはアウトバーンの 様 にまっすぐにしてしまった 場 所 ですが、ここにはまだ 河 川 を 再 自 然 化 する 方 法 があります。これは 小 さい 川 ですが、こちらの 近 所に 住 んでいる 住 民 の 目 的 は、 洪 水 をできるだけ 早 く 流 すという 事 で、 河 床 を 掘 下 げました。今 では、こういう 川 の 下 流 部 の 流 れを 早 くすると、 都 市 部 の 上 流 に 住 んでいる 人 達 にとって 大 きな 問 題 をもたらすという 事 がわかっています。これは 別 の 例 ですが、この 川 はまだ 自 然 です。ここは 洪 水 危 険 地 区 ですが、 農 地 として利 用 されています。 洪 水 が 起 きますと、 肥 料 とか 木 が 川 に 流 れて 行 き 河 川 に 悪 い 影 響 を 与えます。この 場 合 の 対 策 は 簡 単 で、 計 画 としてはこの 土 地 を 買 い 取 るという 事 です。ここ 最 近 ですけど、 何 ヶ 月 前 から 連 邦 法 で 新 しい 法 律 ができまして、こういう 地 域 を 農地 として 使 う 事 が 禁 止 されています。しかし、これをどこまで 適 用 できるのかは、まだわからない 状 態 です。(15) 計 画 段 階 における 考 え 方今 まで 良 い 河 川 、 悪 い 河 川 を 紹 介 しましたが、これから 水 管 理 庁 が 計 画 段 階 で 何 をするかという 事 についてお 話 しします。これが 良 い 例 です。どうしたら 自 然 に 見 えるかという 事 を 考 えます。 現 存 する 河 川 の 中でそういうものがない 時 は、 古 い 昔 の 地 図 を 見 ます。 次 に、 今 日 の 河 川 の 形 がどうなっているのかを 見 ます。 先 ほどお 話 ししたように、どういう 形 になったら 良 いのかを、タイプ毎 に 見 る 訳 です。悪 い 例 は、 例 えば、 発 電 所 や 道 路 があったりしますと、 一 部 にしか 対 策 が 適 用 できない訳 です。 対 策 が 適 用 できるか 否 かが、 私 達 とって 課 題 となります。これらを 計 画 段 階 で 考えて、 実 際 に 実 行 するという 事 です。これは、 既 設 堤 防 の 堤 内 側 に 新 たに 堤 防 を 作 る 図 ですが、 遊 水 機 能 を 持 たせるために、堤 防 の 位 置 をこちらに 変 えて 行 きます。ここは、 洪 水 時 に 水 が 流 れ 込 むので 新 しいビオトープが 生 まれます。【 財 団 】 古 い 堤 防 は 取 り 払 うんですか。【 水 管 理 庁 】 低 い 所 は 取 り 外 します。こちらの 堤 防 は 古 いもので、 状 態 もよくありませんので、どちらにしても 改 修 しないといけませんので、その 両 方 を 兼 ねて 作 業 をする 事 ができます。堤 防 の 一 部 には、100 年 も 昔 に 作 られたものもあります。これから 20 年 の 間 に、このよ- 55 -


うな 古 い 堤 防 を 改 修 して 行 くという 事 がひとつの 課 題 です。 改 修 する 場 合 は、その 古 い 堤防 を 補 修 するだけではなく、 新 しく 作 るかどうかという 事 も 考 えなければいけません。ここはドナウの 無 堤 区 間 になります。この 区 間 では、まだ 川 が 自 然 に 流 れる 事 ができる場 所 です。どこに 堤 防 を 作 れるか、あるいは、どこを 再 自 然 化 できるか。 川 に 任 せて 作 る事 もでき、 人 工 的 に 助 けてやる 事 もできます。この 対 策 を 行 うのに、 私 達 は、15 年 ~20 年の 期 間 を 見 込 んでいます。 費 用 は 3,500 万 ユーロを 考 えています。 土 地 も 必 要 です。500ha位 になりますが、この 500ha で、 洪 水 を 抑 える 事 ができる 訳 です。(16) 水 利 権 と 整 備 費 用イザー 川 で 行 った 工 事 は、 費 用 もそれ 程 かかりませんでした。7.5km の 区 間 で 405 万 マルク(207 万 ユーロ)で 済 みました。これは、ここの 土 地 がバイエルン 州 の 所 有 だったので、このように 費 用 が 少 なくて 済 みました。もっとも、このお 金 も 州 は 払 う 必 要 がありませんでした。というのも、ここに 水 力 発 電 所 があり、 水 力 発 電 所 との 契 約 がありました。その契 約 は 1925 年 に 作 られ、 新 しい 許 可 を 水 力 発 電 業 者 に 与 える 時 期 だったので、 更 新 契 約 費用 によって、ここの 費 用 が 賄 えました。【 財 団 】 日 本 では 水 利 権 の 契 約 期 間 がだいたい 30 年 、バイエルン 州 では 今 の 話 しだと 1925年 からなので 随 分 長 いですね。【 水 管 理 庁 】 今 はドイツの 方 も 水 利 権 が 30 年 ~40 年 なってきました。 昔 は 100 年 位 水 利 権がありました。ここの 堰 堤 ですが、 魚 が 登 れませんので 魚 道 を 作 ります。こういう 物 を 作 らないといけないので、 水 力 発 電 業 者 がその 費 用 を 賄 うという 事 も 契 約 書 の 中 に 盛 り 込 んでいます。 営業 権 がなくなった 場 合 には、こういった 事 ができますけれども。 営 業 権 が 残 っている 場 合には、 裁 判 沙 汰 になります。こちらのドナウ 川 の 場 合 には、そういう 発 電 所 がないので、州 が 費 用 を 負 担 しなければいけません。河 川 については、 法 によって、 後 からでも 条 件 追 加 する 事 ができると 決 まっています。私 達 は 先 ほど 申 しました 様 に、 大 きな 河 川 の 維 持 ・ 整 備 等 を 行 っていますが、 小 さな 河川 の 再 生 化 も 行 うことがあります。これは 市 町 村 にこういう 風 にできるよという 例 をお 見せするためです。(17)ドイツにおける 環 境 意 識【 財 団 】バイエルン 州 では、 環 境 とか 自 然 の 保 護 という 事 が 第 一 の 目 的 になっているような 気 がするんですね。たぶん 10 年 、20 年 前 は、そうじゃなくて、まだ 土 地 開 発 とか 水 開 発の 方 が 強 かったのだと 思 います。1980 年 代 以 降 だと 思 うんですが、バイエルン 州 の 住 民 が、なぜその 新 しい 方 法 を 受 け 入 れたのか。 日 本 国 は、まだ 土 地 開 発 とか、 開 発 意 欲 が 強 い 人が 多 くて、なかなか 環 境 の 方 が 進 まないのですが。【 水 管 理 庁 】バイエルンでは 世 界 で 初 めて 環 境 省 ができました。それで、1980 年 には 州 民- 56 -


投 票 で 環 境 保 護 という 事 が、 州 の 憲 章 に 盛 り 込 まれるという 事 が 決 まりました。1980 年 というのは、ドイツ 自 体 、またバイエルン 州 が 非 常 に 裕 福 な 時 代 で、その 当 時 の 10 の 重 要 な問 題 があったのですが、1 位 が 安 全 、2 位 がこの 環 境 問 題 だった 訳 です。 今 日 は、それが 残念 ながら、12 位 とか 13 位 まで 後 退 しています。 今 は 自 分 の 職 場 の 維 持 、 確 保 が 一 番 重 要 になっています。【 財 団 】 河 川 の 安 全 度 を 下 げてまで、 環 境 に 対 する 工 事 はたぶんやってないと 思 ってるんですけど。どうですか?【 水 管 理 庁 】こちらでは、 居 住 地 区 と 非 居 住 地 区 に 分 けています。 人 が 住 んでない 所 は、そこで 水 が 溜 まるようにして、 都 市 部 の 居 住 地 区 が 脅 かされずにすむ 訳 です。50 年 前 までは、 農 業 地 区 でも 堤 防 を 作 って 保 護 していた 訳 ですが、5 年 程 前 に 洪 水 が 来 てから、 現 在 ではそれはもう 行 いません。ハンガリーは、 今 年 EU に 加 入 しました。100 万 ha の 農 地 を 他 に 転 用 します。それを、これから 5 年 の 間 にそれを 実 行 しなければいけません。ハンガリーでも、バイエルン 州 と同 様 の 治 水 対 策 を 進 めています。【 財 団 】 日 本 とバイエルン 州 を 比 較 すると、 河 川 の 環 境 改 善 化 という 事 に 対 するポテンシャルが 日 本 に 比 べて 非 常 に 高 いと 思 うんですが、ポテンシャルが 高 いという 事 はやりやすいという 事 なんですよね。 日 本 もあと 10 年 で 人 口 が 減 り 始 めます。それから、 農 業 用 地 、日 本 は 殆 ど 水 田 ですが、お 米 が 余 ってきまして 使 わない 田 んぼが 増 えてきています。そういう 意 味 で、バイエルン 州 の 経 験 が 日 本 でも 段 々 適 応 され、できるポテンシャルがこれから 増 えると 思 います。【 水 管 理 庁 】こういう 戦 略 的 方 法 というのはすぐに 考 えるのではなく、20 年 、30 年 ものスパンを 持 って 考 えて 行 かないといけないです。 私 が 学 校 を 卒 業 しこちらで 仕 事 を 始 めた1972 年 ですが、その 頃 、 私 のやった 仕 事 というのは、 蛇 行 した 河 川 をまっすぐにしてきました。 今 、 私 の 後 継 者 がまっすぐの 河 川 をまた 蛇 行 させています。しかし、 前 の 人 がやった 事 は 間 違 っているという 風 に 文 句 を 付 ける 事 は 違 うと 思 います。それでは、これで 終 わりにしたいと 思 います。ありがとうございました。- 57 -


6.2 イザープロジェクト訪 問 機 関 :ミュンヘン 水 管 理 局皆 さまようこそおいで 頂 きました。こちらはミュンヘン 水 管 理 局 です。バイエルンには、 全 部 で 24 箇 所 の 水 理 庁 がございます。 今 日 、 午 前 中 に 行 かれたのは、バイエルン 州 の 水 管 理 庁 で、うちの 直 接 上 にある 官 庁 と 理 解 して 下 さい。ここはミュンヘンの 水 管 理 局 で、そういう 局 が 24 箇 所 あります。ミュンヘン 及 びその 周 辺 を 含 めまして、200 万 人 の 人 口 がおりまして、こちらは、 飲 料 水 ・ 排 水 設 備 などの 管 理 を 担 当 しております。私 がクラウス・アルツェットで、こちらがルドルフ・タッカーさんです。 私 が、この 水管 理 局 のマネージャーで、タッカーさんがイザープロジェクト(Isar 川 の 再 自 然 化 事 業 )の担 当 者 です。タッカーさんから、イザープロジェクトについてご 紹 介 します。その 後 、 一緒 に、イザー 川 の 方 に 参 ります。今 回 は、 皆 さん 多 人 数 ではないので、ご 質 問 があれば 何 時 でも 質 問 を 出 して 頂 きたいと思 います。それと、このプロジェクト 以 外 、これからお 話 しをすること 意 外 についても、何 かご 質 問 がありましたらいつでもどうぞ。これから、ルドルフ・タッカーさんの 方 から、イザープロジェクトについてお 話 しします。(1)イザープロジェクトについてようこそおいで 頂 きました。 私 は、 建 設 工 学 を 学 んだ 者 です。これがイザー 川 で、 後 ろがアルプスです。 後 ろ(アルプス)の 方 は 自 然 が 残 っているのがご 覧 頂 けるかと 思 います。( 図 6.4)これはミュンヘン 市 内 のイザー 川 です。( 図 6.5) 上 が 運 河 でして、ここに 水 力 発 電所 がありまして、 運 河 の 流 量 は 5m 3 /s です。この 5 m 3 /s を 12m 3 /s とする 計 画 です。これが、 工 事 を 行 う 前 の 状 況 をよく 表 わしております。【 財 団 】 白 く 見 えるのは 何 ですか?【 水 管 理 局 】これは 200m 毎 に 約 50cm の 高さの 床 止 めです。これはイザー 川 が 浸 食 するのを 防 ぐために 必 要 でした。 昔 は 砂 利 が 多 く流 れてきていたのですが、 最 近 では 流 れて 来なくなったので、 床 止 めが 必 要 になりました。平 均 の 水 量 は 40 m 3 /s、 年 間 の 最 大 流 量 が360m 3 /s、 計 画 洪 水 1,100m 3 /s に 対 しての 整 備を 考 えています。図 6.4 イザー 川- 58 -


1940 年 には 1,440m 3 /s の 洪 水 が 発 生 し、これまでの 中 で 最 大 の 洪 水 です。この 時 はアルプスにまだダムがありませんでした。1999 年 には 854m 3 /s でこれも 大 きな 洪 水 でした。図 6.5 ミュンヘン 市 内 のイザー 川(2)イザー 川 における 課 題イザーの 欠 陥 は、1 番 目 として 洪 水 安 全 性 の 欠 陥 。2 番 目 は 自 然 保 護 の 欠 陥 。3 番 目 は 大都 市 であるミュンヘン 市 内 を 流 れる 川 に、 人 々の 保 養 地 としての 機 能 の 欠 如 という 欠 陥 です。これが、1 番 目 の 洪 水 安 全 性 ですが、この 余 裕 高 f が 少 ない 問 題 があります。( 図 6.6)fMQHQ Bf図 6.6 余 裕 高 不 足樹 木 がたくさん 生 え 洪 水 時 に 阻 害 されるため、 堤 防 を 補 強 するか、また 堤 防 の 高 さを 高くする 事 が 必 要 になりました。ここは 当 事 務 所 から 400m 位 上 流 にある 所 ですが、ドイツ 博 物 館 の 近 くです。( 図 6.7) 右側 がメインの 水 流 で、 左 側 の 草 地 の 所 が 遊 水 地 です。ここの 土 地 は 再 自 然 化 に 利 用 する 事ができます。これは 先 ほど 申 しました、1999 年 の 洪 水 時 の 状 況 ですが、これは 5 月 です。ドイツでは雪 解 け 水 により 春 に 洪 水 が 起 こります。ここの 橋 の 上 ですね、ずっと 水 が 入 っているのが見 えております。( 図 6.8)- 59 -


図 6.7 平 常 時 の 状 況図 6.8 洪 水 時 の 状 況 (1999)次 に、 自 然 保 護 的 な 欠 陥 です。・ 川 と 草 地 の 横 の 繋 がりが 欠 けていた・ 河 川 自 体 が 自 分 で 発 展 して 行 けない・ 河 床 の 構 造 がモノトーン( 単 一 )になってしまったために、 川 または 川 の 沿 岸 において 生 命 の 多 様 性 がなくなってしまった・ それによって、 植 生 が 減 っていった次 は 市 民 の 保 養 に 対 する 欠 陥 。・ 斜 面 が 急 勾 配 なので 人 がなかなか 行 きにくい・ 泳 ぐには 水 質 が 良 くない・ 市 街 地 との 交 通 の 繋 がりが 良 くない・ 運 河 の 形 をしていたために、その 川 全 体 の 形 が 良 くなかった- 60 -


(3)イザープロジェクトの 具 体 内 容イザープロジェクトについてですが、これは 80 年 代 の 半 ばから、 色 々なところで 議 論 されてきました。1986 年 ~1994 年 までミュンヘン 市 とバイエルン 水 管 理 庁 、ミュンヘン 水 管理 局 の 方 で 準 備 をし、1995 年 に 作 業 分 担 を 決 めました。 市 の 代 表 者 と 水 管 理 局 の 代 表 者 によって 作 業 グループを 作 りました。1999 年 に Marienklausensteg( 地 名 )という 場 所 の 約 1km区 間 の 工 事 を 始 めました。イザープロジェクトは 全 長 8km に 及 ぶ 治 水 の 改 善 と 再 自 然 化 の 計 画 です。これは、バイエルン 州 と、ミュンヘン 市 との 共 同 のプロジェクトです。2 つの 組 織 が 関 わっているため、作 業 部 会 を 作 る 必 要 がありました。全 費 用 は 2,800 万 ユーロです。 今 までのところ、6km 弱 の 工 事 区 間 を 4 つの 工 区 に 分 けて完 了 し、1,700 万 ユーロの 費 用 を 使 っております。2003 年 から EU から 50%の 財 政 援 助 を 受けています。イザープロジェクトの 主 な 目 的 は、 一 番 目 として 治 水 の 安 全 度 を 改 善 する 事 。この 治 水という 事 からこのプロジェクトが 生 まれました。 二 番 目 が 保 養 機 能 を 改 善 する。 三 番 目 が再 自 然 化 です。( 図 6.9)図 6.9 保 養 機 能 と 再 自 然 化 のイメージこれが 約 1 年 前 の 事 ですが、イザー 川 を 自 然 に 近 い 形 で 作 り 直 すという 事 で、この 法 面に 適 した 種 を 蒔 きましたので、 短 期 間 の 内 にこのような 植 生 ができました。( 図 6.10)ここでは 広 い 草 地 があり、こういうものを、 川 幅 を 広 くするという 事 に 使 う 事 ができました。【 財 団 】その 場 所 に 適 した 種 を 蒔 いたということですが、 植 生 の 改 変 とかで 問 題 になりませんか?【 水 管 理 局 】 他 の 所 で 乾 燥 した 斜 面 に 同 じような 場 所 があり、そこから 採 れた 種 を 堤 防 に蒔 きました。ドイツでは、 同 じような 位 置 、 同 じ 状 態 の 地 面 を 選 んで、そこに 植 物 を 作 って 種 を 採 る。またそれを 移 した 場 合 も、たいした 意 図 はなく、 早 く 成 長 すると 言 う 事 です。- 61 -


図 6.10 再 自 然 化 の 一 環 で 創 出 した 植 生 区 域これが、フラウファー 地 区 に 残 るイザー 川 の 昔 からの 流 れが 残 っていた 所 です。( 図 6.11)イザー 川 は、19 世 紀 に 入 るまで 全 長 がこのような 形 にあったと 考 えています。ここにある古 い 絵 があります。これが、 北 からミュンヘンを 見 たところです。イザー 川 が 一 番 広 い 所で 1km の 幅 がありました。もちろん、 昔 の 状 態 に 戻 す 事 はできませんが、できる 範 囲 で 昔の 状 態 に 戻 したいと 考 えています。フラウファー 地 区 の 川 のイメージから 開 発 の 目 的 を 作りまして、 計 画 しそれを 実 行 しました。図 6.11 昔 の 姿 が 残 るフラウファー 地 区工 程 はまず 前 準 備 をし、あと 水 理 法 手 続 きに 入 るための 実 行 計 画 書 を 作 り、そして 入 札を 行 いました。最 初 にミュンヘン 市 内 にある 連 邦 国 防 省 大 学 で 河 川 モデルを 作 り、それぞれのエレメントについて 実 験 を 行 いました。 床 止 めなしとした 場 合 や 樹 木 による 影 響 をシミュレートするために 作 りました。( 図 6.12)- 62 -


図 6.12 模 型 実 験 状 況模 型 実 験 を 行 った 結 果 、 沿 岸 が 浸 食 されるだろうと 予 測 されました。このため 川 幅 を 広げても、 沿 岸 部 には 防 護 施 設 を 作 らなければいけないと 判 断 しました。また、 河 床 を 平 らにする 事 によって 砂 利 が 動 くことが 確 認 され、すなわち 将 来 蛇 行 をする 事 ができるだろうと 判 断 しました。左 は 元 の 状 態 です。 非 常 に 真 っ 直 ぐでした。これが 古 い 道 路 です。これが 運 河 で、これが 水 力 発 電 所 です。 右 が 改 修 後 です。 川 幅 がどれだけ 広 がったかがかはっきりわかっていただけると 思 います。( 図 6.13)【 財 団 】2 倍 位 ありますね。【 水 管 理 局 】 最 高 で 2 倍 位 ですね。- 63 -


図 6.13 改 修 前 ( 左 )と 改 修 後 ( 右 )個 々の 対 策 ですがこちらが 遊 水 地 です。こちらは 遊 水 地 を 深 くするか、 川 幅 を 広 げるかは、その 川 の 状 態 によって 決 定 しました。ここのケースでは 堤 防 を 高 くしました。その 結果 、1,100m 3 /s の 時 に 余 裕 高 さ 1m を 得 る 事 ができました。( 図 6.14)図 6.14 改 修 メニューこれが 工 事 状 況 です。ここは 川 幅 を 広 げた 所 です。( 図 6.15)図 6.15 工 事 状 況- 64 -


(4) 護 岸 のタイプイザープロジェクトの 特 徴 として 護 岸 のタイプがあげられます。1 番 目 が 見 えないタイプ。二 番 目 が 見 えるタイプ。 三 番 目 が 通 常 は 見 えないですが、 洪 水 時 には 見 えるタイプです。これが 1 番 目 です。これが 隠 し 護 岸 です。( 図 6.16)これが 2 番 目 の 護 岸 が 外 側 に 露 出 するタイプです。( 図 6.17)図 6.16 隠 し 護 岸図 6.17 露 出 する 護 岸これが 三 番 目 ですけれども。ここの 台 形 状 の 部 分 は 掘 削 して 石 を 入 れます。 洪 水 時 にこの 部 分 ( 高 水 敷 )が 浸 食 しましたら、 石 がこういう 風 に 落 ちてきて、そこでバリケードになります。( 図 6.18)図 6.18 浸 食 時 に 露 出 する 護 岸【 財 団 】その 2m はどのように 決 めたのですか?- 65 -


【 水 管 理 局 】イザープロジェクトでは、 最 深 河 床 高 との 関 係 でほとんど 2m の 高 さにしています。左 が 1 番 目 の 隠 し 護 岸 の 工 事 状 況 です。 右 が 洪 水 後 の 被 害 状 況 です。これが 浸 食 された範 囲 です。これが 隠 した 護 岸 で、 右 上 が 堤 防 です。ここの 隠 し 護 岸 まで 川 幅 は 広 がり、 今現 在 は 自 然 で 美 しい 状 態 となっています。( 図 6.19)【 財 団 】 川 は 広 がったのですか。【 水 管 理 局 】 最 高 で 10m 広 がっています。図 6.19 工 事 状 況 ( 左 )と 洪 水 後 の 状 況 ( 右 )(5) 床 止 め 工 の 改 修これから 床 止 めの 改 修 です。 高 さは 0.5m で、 魚 とかが 行 き 来 できませんでした。 左 ような 形 で 床 止 めがあった 訳 です。200m 毎 に 床 止 めがありました。右 が 改 修 後 です。0.5m あった 段 差 を 小 さくしました。( 図 6.20)図 6.20 床 止 めの 改 修 前 ( 左 )と 改 修 後 ( 右 )ここの 工 事 は、セメントとかコンクリートを 全 く 使 わないで、まず 大 きめの 砂 利 を 敷 い- 66 -


て、その 上 に 大 きな 石 を 置 きました。( 図 6.21)図 6.21 床 止 めの 改 修 イメージ図 6.22 床 止 めの 改 修 平 面 図【 財 団 】 古 い 床 止 めを 全 部 取 り 払 わないで、上 だけ 削 ったのですか?【 水 管 理 局 】 高 さが 1m のもありましたが、全 部 取 り 除 き 全 く 新 たに 作 り 直 しました。大 き 目 の 砂 利 を 上 下 流 にそれぞれ 5m ずつ敷 き 詰 めました。( 図 6.22)【 財 団 】この 黄 色 い 部 分 は 何 ですか?【 水 管 理 局 】この 黄 色 いところが、イザー川 に 元 々ある 砂 利 です。図 6.23 施 工 状 況 ( 補 助 用 堤 防 あり)この 床 止 め 改 修 工 事 では、 川 の 流 れを 止 めることなく 工 事 を 実 施 できました。- 67 -


当 初 は 問 題 があり 補 助 用 の 堤 防 を 作 りましたが( 図 6.23)、これ 以 降 は 補 助 堤 防 を 作 らないで 工 事 をする 事 にしました。これが 工 事 後 の 状 況 です。( 図 6.24)図 6.24 改 修 後 の 床 止 め(6) 堤 防 と 樹 木次 に 堤 防 ですが、 堤 防 にたくさん 樹 木 が 生 えていますので、 堤 防 が 崩 れるという 危 険 があります。これがドナウの 堤 防 です。( 図 6.25、6.26)図 6.25 樹 木 による 堤 体 への 変 状- 68 -


図 6.26 被 災 状 況基 本 的 には 木 を 抜 きます。これが 1 番 目 の 方 法 です。 木 を 抜 いて 堤 防 の 川 表 側 に 拡 幅 し 高 くする 方 法 です。実 際 にはこのようになります。これはミュンヘンの 南 の 方 にある 田 舎 で、 冬 の 状 況 です。( 図 6.27)【 財 団 】 堤 防 に 盛 った 土 は 周 辺 にあった 土 ですか?【 水 管 理 局 】 川 幅 を 広 げていますので、 現 地 発 生 土 を 堤 防 に 使 いました。図 6.27 施 工 状 況これが 2 番 目 の 方 法 で、 既 設 堤 防 の 前 面 に 築 堤 します。 川 幅 が 広 い 場 所 ではこういうような 事 も 可 能 です。( 図 6.28)図 6.28 施 工 イメージ実 際 の 施 工 状 況 はこういう 風 になります。 時 期 が 来 ますと、 右 のように 草 地 、 緑 地 がで- 69 -


きます。( 図 6.29)図 6.29 施 工 状 況最 後 にこれが 一 番 、 時 間 とお 金 がかかる 方 法 です。この 方 法 で 行 うと 木 はそのままで、堤 防 の 上 からこのセメントを 注 入 します。( 図 6.30)【 財 団 】コンクリートの 壁 厚 はどの 位 ですか?【 水 管 理 局 】40cm です。図 6.30 施 工 イメージここの T 鋼 (H 鋼 )ですが、これは 堤 体 が 浸 食 された 場 合 にも、コンクリート 壁 の 強 度を 保 つために 挿 入 しています。コンクリートは、 長 いところと 短 いところがありますので、地 下 水 もこの 間 を 通 り 抜 ける 事 ができるというのが 利 点 です。( 図 6.31)この 方 法 は 非 常 にお 金 がかかるため、 今 までのところ 2.5km の 区 間 だけ 適 用 しました。図 6.31 施 工 イメージおよび 心 材これだけ 木 が 繁 っていますが、 木 の 上 をちょっと 切 ってやれば、このような 大 きな 重 機- 70 -


も 堤 防 の 上 を 走 る 事 ができます。これがまだ 柔 らかい 状 態 のセメントです。( 図 6.32)【 財 団 】この 方 法 はどのような 場 所 に 適 用 したのでしょうか?【 水 管 理 局 】 樹 林 公 園 がある 所 とか、あと 地 下 鉄 の 駅 の 近 くとかです。こういう 方 法 は、ドイツでは 主 に 都 市 部 でだけ 使 います。図 6.32 施 工 重 機 およびコンクリート 打 設 状 況(7) 生 態 系 に 配 慮 した 護 岸 整 備今 度 は 環 境 ・ 生 態 系 ですが、 左 が 古 いタイプの 護 岸 です。 右 が 浸 食 された 堤 防 で、その後 ろに 見 えている 部 分 が、 先 ほど 説 明 した 3 番 目 のタイプの 護 岸 です。( 図 6.33)図 6.33 生 態 系 に 配 慮 されていない 古 い 護 岸 ( 左 )と 被 災 した 護 岸 状 況 ( 右 )左 が 工 事 前 で、 右 が 工 事 後 の 状 況 です。( 図 6.34)図 6.34 改 修 前 ( 左 )と 改 修 後 ( 右 ) 状 況- 71 -


(8) 保 養 所 としての 機 能 の 確 保保 養 所 としての 機 能 を 保 つ 上 で 重 要 な 事 は 水 質 を 良 くする 事 です。ミュンヘン 市 の 上 流に、 紫 外 線 の 放 射 装 置 を 作 りまして 殺 菌 しています。 大 腸 菌 などがそれによって 大 幅 に 減ります。( 図 6.35)図 6.35 紫 外 線 による 排 水 の 殺 菌 状 況【 財 団 】これは 何 の 水 を 殺 菌 しているんですか?【 水 管 理 局 】 浄 水 装 置 を 通 ってきた 後 の 排 水 です。このイザー 川 に 入 ってくる 排 水 にまだ菌 がありますので、それをここで 殺 菌 しています。これは、 普 段 はこれでいい 結 果 を 今 まで 出 していますが、 雨 が 多 くなりますと 浄 化 装 置 に 入 りきらず、あふれた 水 が 直 接 川 に 流れてしまいます。先 ほど、 水 量 を 5m 3 /s から 12m 3 /s にするという 事 をお 話 しましたが、12m 3 /s にするという 事 は 水 質 を 管 理 する 上 で 非 常 に 重 要 です。ミュンヘン 市 民 は、 改 善 された 川 を 受 け 入 れてくれました。5 月 に 完 成 したのですが、7月 にはこういう 風 に 水 遊 びに 来 る 人 がたくさんいました。( 図 6.36)図 6.36 水 泳 や 日 光 浴 を 楽 しむ 市 民昔 のように 休 暇 は 遠 くに 外 に 出 かけて 過 ごすというのではなく、 近 所 で 休 暇 を 過 ごす 人- 72 -


が 多 くなってきています。(9) 合 意 形 成 についてイザープロジェクトで 重 要 な 部 分 は、 市 民 も 一 緒 に 参 加 してもらう 点 です。それには 色 々な 方 法 がありますが、・ 工 事 現 場 に 看 板 を 作 って 情 報 を 知 らせる・ 川 の 近 くに 住 んでいる 居 住 者 を 集 めて 集 会 を 開 く・ それぞれの 工 事 が 始 まる 前 に、 環 境 団 体 等 色 々ありますので、 話 し 合 いをするという 事 を 必 ず 行 っています。それとガイドツアーです。 基 本 的 に 現 場 を 案 内 するという 事 は、ほぼ 毎 日 のように 行 っています。(10) 改 修 デザイン今 までの 4 つの 工 事 区 間 というのは、ひとつのエンジニアオフィスに 頼 んでいましたが、今 は 新 しいアイデアを 入 れるという 事 で、 公 募 入 札 することにしました。ヨーロッパ 全 体で 入 札 をしました。 落 札 者 は 7 人 に 絞 って、その 方 々が 3 ヶ 月 間 自 分 のプランを 練 って、最 終 的 に 2003 年 4 月 3 日 に 案 が 決 まりました。1 等 は、こういう 真 っ 直 ぐな 河 道 ラインを 取 り 入 れ、イザー 川 を 2 つの 流 れに 分 けるという 案 です。こういう 風 に 分 けた 方 が、 都 市 の 中 心 にあるイザー 川 が、より 都 市 部 に 適 応 していると 考 えました。( 図 6.37)図 6.37 選 定 された 改 修 計 画 案しかし 問 題 が 起 こりました。 市 民 にこの 計 画 案 が 受 け 入 れてもらえなかったのです。 市民 はどちらかと 言 うと、こちらの 方 の 計 画 案 を 希 望 しました。( 図 6.38)このような 争 いがあったため、この 作 業 部 会 と 委 員 会 で、 両 方 とも 案 をもう 一 度 練 り 直し、それを 市 民 に 再 提 示 するという 事 で 決 まりました。うまく 行 けば、 今 年 のクリスマス前 には、 決 定 が 下 る 事 になります。 今 の 考 えとしては、 工 事 区 間 を 3 つの 工 区 に 分 けて。1- 73 -


工 区 は 1 等 を 取 った 人 の 案 、2 工 区 は 2 等 を 取 った 人 の 案 、そしてまた 3 工 区 は、また 1 等をとった 人 の 案 、という 風 になるんじゃないかと 思 っています。図 6.38 市 民 が 望 んだ 改 修 計 画 案【 財 団 】 市 民 がこの 案 を 希 望 するのに、プランを 練 り 直 す 理 由 はなんですか?【 水 管 理 局 】 本 当 は 1 等 を 取 った 人 の 計 画 案 が 採 用 するはずでした。 契 約 条 件 に 1 等 がここの 河 川 工 事 の 案 として 採 用 されますというのがあったので、それを 履 行 しないと 州 が 損害 賠 償 をしなければなりません。そういう 事 はしたくないためです。こういう 争 いのために 1 年 間 遅 れています。 今 、 一 方 ではその 損 害 賠 償 を 払 わないようにする。 一 方 では、 市民 の 声 も 聞 く 事 で、お 互 い 納 得 の 上 の 解 決 方 法 を 探 しているという 事 です。左 が 建 設 工 事 の 前 、 右 が 建 設 工 事 中 の 写 真 です。( 図 6.39)図 6.39 工 事 前 ( 左 )と 工 事 中 ( 右 )の 状 況左 が 工 事 後 最 初 の 冬 の 状 況 で、 右 が 春 の 状 況 です。( 図 6.40)- 74 -


図 6.40 工 事 後 の 最 初 の 冬 ( 左 )と 春 ( 右 )の 状 況左 が 第 3 工 区 の 工 事 区 域 です。 右 が 完 成 イメージになります。( 図 6.41)図 6.42 第 3 工 区 の 工 事 区 域 ( 左 )と 完 成 イメージ( 右 )最 後 になりますが、これが 19 世 紀 のイザー 川 の 状 況 です。 川 幅 は 最 小 で 1km ありました。また、 土 砂 供 給 は 1 年 間 に 150 万 m 3 ほどの 玉 石 が 運 ばれていたと 考 えられます。図 6.43 19 世 紀 のイザー 川 の 状 況以 上 で 終 わりです。どうもありがとうございました。ご 質 問 がありましたら、どうぞ。【 財 団 】 冒 頭 の 説 明 でもありましたが、イザー 川 への 土 砂 供 給 がなくなった 理 由 はなんで- 75 -


すか。【 水 管 理 局 】 土 砂 が 元 々の 20% 位 になってしまっています。その 理 由 は 大 きなダムに 土 砂を 堰 き 止 めてしまうために 20% 程 になりました。【 財 団 】 工 事 完 成 から 時 間 が 経 ってないですが、 川 の 形 が 少 しずつ 変 わってくると 思 うんですが、その 辺 のモニタリングを 行 って、 川 が 予 定 通 りになった、ならないというプロセス 管 理 は 行 われているんですか?【 水 管 理 局 】 今 までのものはですね、 予 定 した 通 りに 川 が 発 展 しているので 問 題 ありませんが、もしもの 場 合 は 何 かしないといけないだろうと 考 えています。(11) 再 自 然 化 の 背 景【 財 団 】このような 再 自 然 化 を 始 めたのは、やはり 市 民 の 声 ・ 要 望 が 一 番 大 きかったのでしょうか?【 水 管 理 局 】 予 防 対 策 としての 治 水 対 策 という 事 と、それと 生 態 系 を 良 くする 事 が、このイザープロジェクトを 始 めるきっかけでした。 歴 史 的 に 見 ますと、ドイツの 河 川 は、19 世紀 には 日 本 にある 川 と 同 じように 真 っ 直 ぐにしてきました。 大 きな 河 川 の 場 合 は 堤 防 があって、その 周 りには 建 物 が 建 っていて、という 様 な 川 になりました。1990 年 代 の 初 めから、河 川 にはもっと 場 所 が 必 要 であるという 事 がわかりました。 魚 とか、その 魚 のエサとなる微 生 物 が、たくさん 場 所 がある 事 によって 川 が 発 展 しやすいという 事 です。あと、もひとつ、 河 川 に 場 所 がたくさんあれば、 河 川 の 整 備 費 が 長 期 的 に 見 て 少 なくてすむという 事 がわかった 訳 です。これまで、 河 川 は 何 百 年 もかかって、 真 っ 直 ぐにされてきたので、 私 達 がやっている 事も 今 すぐどうのこうのという 事 ではなく、 長 期 的 な 仕 事 と 理 解 しています。これによって、河 川 の 品 質 が 良 くなるという 事 と、 再 自 然 化 という 事 と、あと、 人 間 のための 保 養 というものも 良 くなると。バイエルン 州 は、 非 常 に 人 口 が 多 い 所 ですので、 普 通 の 人 が 仕 事 によるストレスをたくさん 抱 えています。そのような 時 に 川 に 行 って、ストレスをなくすという 事 ができるべきです。【 財 団 】 日 本 では、あまり 川 に 出 て 日 光 浴 をしたり、 泳 いだりというような 事 は 行 わないのですが、こちらの 方 は 川 に 対 する 一 般 の 方 の 関 心 が 高 い 事 と 関 係 があるのでしょうか?【 水 管 理 局 】そうだと 思 います。 日 本 の 場 合 は、きっと 沿 岸 帯 が 整 備 され、 川 というのは水 を 海 に 運 ぶという 技 術 的 な 手 段 として 見 られているのではないでしょうか。ただし、このイザー 川 で 泳 ぐというのは、ドイツでもバイエルン 州 でも 特 別 な 事 で、この 辺 りは、 浄化 装 置 により 水 質 が 保 てるという 事 で 泳 げる 訳 です。ドイツの 他 の 大 河 川 では 泳 ぐというのはあまりありません。【 財 団 】 川 を 拝 見 すると、こちらもそうですが、ゴミが 全 く 見 られず、 非 常 に 気 持 ちいい空 間 になっています。 元 々ゴミを 流 すという 事 をされないのでしょうか。【 水 管 理 局 】 川 にゴミを 捨 てるという 方 もいない 事 はないですけども、 一 般 的 にはゴミを- 76 -


捨 てるようなことはないです。【 財 団 】 捨 てたら 罰 則 があるとか、そんな 事 はない 訳 ですね。【 水 管 理 局 】あります。バイエルン 州 の 水 収 支 法 とか、 連 邦 の 水 収 支 法 ですね。そちらの方 で 河 川 にゴミを 捨 てたら 罰 則 があります。これで 終 わりたいと 思 います。【 財 団 】ありがとうございました。- 77 -


6.3 MD 送 水 プロジェクト訪 問 機 関 :アンスバッハ 水 管 理 局(1)ドナウ 川 流 域 からマイン 川 流 域 への 送 水 プロジェクト(MD プロジェクト)ようこそ、アンスバッハ 水 管 理 局 へいらっしゃいました。当 プロジェクトにつきまして 少 しお 話 しします。ご 質 問 などがありましたらいつでもどうぞ。これまでの 30 年 間 に、ここのブロムバッハ 湖 、アルトミュール 湖 、ロート 湖 の 3 つの 人 工 湖 を 造 りました。これは、バイエルン 州 が 造 った 人工 湖 です。( 図 6.44)(2)プロジェクトの 目 的このプロジェクトの 目 的は 3 つあります。1 番 目 は、バイエルン 州 では 北 部 の 水 が 少 なく、 雨 が 少ない 時 に 川 を 通 して 水 を 南部 のドナウ 川 流 域 から 北 部図 6.44 ドナウ 川 流 域 からマイン 川 流 域 へののマイン 川 流 域 に 送 ってい送 水 プロジェクトの 概 要ます。2 番 目 は 治 水 で、これがアルトミュール 川で、ここでドナウ 川 と 合 流 します。ここは 大きな 洪 水 が 起 こりやすい 所 です。 都 市 部 、 農村 部 に 大 きな 被 害 をもたらしていました。アルトミュール 川 からの 水 を 取 り、アルトミュール 湖 に 入 れ、ここからブロムバッハ 湖 に 送っています。( 図 6.45)【 財 団 】ポンプアップですか?【 水 管 理 局 】ここにはポンプ 装 置 はなく、アルトミュール 湖 とブロムバッハ 湖 との 間 に4m の 比 高 差 がありますので 自 然 流 下 で 流 れ込 むようになっております。こちらがマイン川 です。ここのドナウ 川 とマイン 川 の 分 水 嶺図 6.45 プロジェクトの 概 要の 下 をトンネルで 通 って、ブロムバッハ 湖 に- 78 -


水 が 流 れます。( 図 6.46)図 6.46 アルトミュール 湖 からブロムバッハ 湖 への 送 水 トンネル3 番 目 は、この 辺 りには 産 業 が 少 なく 職 場 も 少 ない。この 3 つの 人 工 湖 付 近 に 観 光 地 を 作りました。その 結 果 たくさん 方 が 休 暇 を 過 ごしに 来 てくれるようになりました。ニュールンベルクからだと 約 1 時 間 で 到 着 する 事 ができます。ですから 日 曜 日 などに、 泳 ぎに 来 たり、あと、ボートに 乗 りに 来 たりされています。 子 供 のいる 家 族 などは、1 週 間 とか 2 週 間 、この 辺 りで 休 暇 を 過 ごしてくれるようになりました。【 財 団 】そういうものを 目 的 にしたものは、 日 本 ではあまりないです。【 水 管 理 局 】 今 日 、 一 番 重 要 な 理 由 は 観 光 になります。この 3 つの 湖 を 造 る 事 によって 3,000人 もの 職 場 ができました。ここは 航 海 可 能 なマインドナウ 運河 です。この 運 河 をパイプラインとして 使 います。ドナウ 川 から 汲 み 上 げた水 は、ここのロート 湖 に 溜 め、 雨 が 少ない 時 に、このロート 湖 から 水 を 北 部に 流 します。 約 1 年 の 半 分 は、ロート湖 から 水 を 流 しています。( 図 6.47)こちらは 全 く 別 で、アルトミュール川 からの 水 をアルトミュール 湖 で 貯えまして、さらに、ブロムバッハ 湖 に貯 水 します。ここも、 雨 量 が 少 ない 時図 6.47 ロート 湖 と 運 河 の 接 続 部- 79 -


には、 川 に 流 しています。【 財 団 】 給 水 すると 水 が 増 える 訳 ですけど、その 分 マイン 川 沿 いの 発 電 量 が 増 えますね。そういう 事 もプロジェクトの 目 的 に 入 っているのですか?【 水 管 理 局 】はい。 入 れています。まず、 揚 水 のために 電 気 をひいています。マイン 川 流域 では、たくさんの 発 電 所 を 通 り 抜 けて 行 きます。ここで 揚 水 に 必 要 な 電 気 量 よりも、あちらの 発 電 量 の 方 が 多 いです。これは、 取 水 点 からロート 湖 までの 揚 程 よりも、ローと 湖からバンベルクまでの 落 差 の 方 が 大 きいためです。つまり、 私 達 は、オーストリアまたはハンガリーから 水 を 盗 んでいることになります。ただし、ドナウ 川 からの 取 水 量 は、わずか 1% 位 ですから、オーストリアとかハンガリーの国 は 気 付 かないと 思 います。もちろん、オーストリアと 契 約 をきちんと 結 んでいます。この 運 河 は 1993 年 に 完 成 しました。まだ、できて 11 年 の 新 しい 運 河 です。 運 河 で 運 ばれているのは、 鉄 、 砂 、 材 木 、セメントとかです。(3)ブロムバッハ 湖こちらをご 覧 ください。ここがブロムバッハ 湖 です。ここはダム 堤 体 で 約 2km あります。ダム 内 の 水 位 は 7m 上 下 します。このために、ダム 湖 内 にもう 2 つダムを 造 りました。イーゲルバッハ 湖 とクライナーブロムバッハ 湖 です。こちらの 水 位 は 常 に 一 定 です。 水 位 が 上下 するのは、このメインのダムだけです。( 図 6.48)【 財 団 】このダムは、 下 流 に 対 して 洪 水 コントロールの 目 的 はありますか?【 水 管 理 局 】アルトミュール 川 に 対 する 洪 水 対 策 はありますが、 下 流 にはないです。図 6.48 ブロムバッハ 湖ここは、バイエルン 州 が 沿 岸 を 含 むこの 土 地 を 買 い 取 りました。このため、この 湖 の 沿岸 には、 個 人 の 所 有 地 はありません。ここの 湖 の 周 りに 道 を 作 り、それを 私 達 が 使 っております。そして、 歩 行 者 並 びに 自 転 車 も 利 用 しています。 夏 に 天 気 が 良 いと、 非 常 にたくさんの 人 が、 散 歩 やサイクリングをしにきます。- 80 -


何 箇 所 かに 駐 車 場 、レストラン、シャワー 室 、 更 衣 室 を 備 えた 観 光 センターを 建 設 しました。ホテルもあります。【 財 団 】 誰 が 経 営 しているのですか。【 水 管 理 局 】ここにはレストランとキャンプ 場 、あとヨットハーバー 等 がありますが、この 辺 りの 市 町 村 で 組 織 した 目 的 組 合 がありまして、そこが 営 業 しています。これが 先 ほどお 話 した 3,000 人 分 という 事 です。この 湖 はバイエルン 州 が 作 り、 観 光 施 設 、 娯 楽 施 設 は 目的 組 合 によって 営 業 されています。(4) 合 意 形 成【 財 団 】このプロジェクトですね、 計 画 、 工 事 段 階 で、 地 元 の 人 達 が、ほとんどポジティブだったと 思 うんですけども、 反 対 の 人 もたぶんいると 思 うんですが、どうでしょうか?【 水 管 理 局 】 反 対 の 方 、 特 にこの 辺 りに 住 んでいらした 方 が、ここを 去 らなきゃという 事で 反 対 がありました。このプロジェクトではありませんが、そういう 方 達 にすぐに 考 えろと 言 うのではなく、 何 年 もかけてそのプロジェクトや 環 境 に 慣 れて 頂 きます。 最 終 的 には土 地 の 代 金 の 他 、 水 利 権 などの 莫 大 なお 金 を払 っています。【 財 団 】エコロジストとかそういう 人 達 がプロジェクトに 対 して、 理 解 されているんですか。【 水 管 理 局 】 初 めはすごく 懐 疑 的 でした。 自然 保 護 団 体 とも 30 年 ~35 年 前 に、 話 し 合 いをしようと 試 みていた 訳 です。その 彼 らと、このプロジェクト 計 画 を 一 緒 に 立 てました。自 然 保 護 という 観 点 において、 私 達 が 立 てた計 画 を 変 える 用 意 がありました。ひとつの 例 ですけども、アルトミュール 湖は 1970 年 の 計 画 では、 技 術 的 な 湖 という 形で 計 画 されました。ここの 農 家 が、 苦 情 を 言いましたので、ここに 予 定 していた 運 河 をこちらの 方 に 移 動 させました。 自 然 保 護 団 体 からも 批 判 を 受 けました。これらの 話 し 合 いによって 計 画 を 変 え、 良 いプロジェクトになるようにしました。ですから、このプロジェクトに 対 する 抵 抗 は、 最 終 段 階 では 少 ししかあ 図 6.49 アルトミュール 湖 の 計 画 の 変 遷上 が 当 初 、 下 が 採 用 案りませんでした。( 図 6.49)全 体 で 30km 2 の 土 地 が 必 要 になりました。この 内 の 1/4 は 自 然 保 護 に 使 われます。ここが- 81 -


自 然 保 護 地 域 です。 観 光 と 自 然 保 護 を 分 けたという 事 です。 自 然 保 護 地 域 というのは、 立ち 入 り 禁 止 になっている 所 です。それは 人 々からも 受 け 入 れられました。と 言 うのも、 観光 客 が 娯 楽 する 場 所 が 十 分 に 開 拓 されているからです。(5) 水 質アルトミュール 湖 の 水 質 を 良 くするために、この 地 域 の 市 町 村 の 排 水 装 置 を 全 部 繋 ぎ、湖 の 下 流 に 新 しい 浄 水 装 置 を 作 りました。 費 用 は 土 地 、 浄 水 設 備 、ポンプ 施 設 なども 含 めて 全 てで 10 億 ユーロでした。昔 はそれぞれの 市 町 村 に、 小 さな 浄 水 装 置 がありました。その 浄 水 した 水 を、 湖 に 排 水されていました。 新 設 した 浄 水 装 置 で 浄 水 された 水 は、 湖 ではなく 下 流 の 川 に 戻 る 訳 です。【 財 団 】パネルを 見 ると、アルトミュール 川 からブロムバッハ 湖 に 年 間 2500 万 m 3 の 水 が送 られる 事 になっていますが、 洪 水 の 状 況 によって 毎 年 送 水 量 が 変 わると 思 うんですけどいかがでしょうか。そうであれば、 水 泳 とかで 利 用 されている 湖 の 水 質 とか 水 位 は、 年 によってはあまり 環 境 が 良 くない 時 期 もあるという 事 ですね。【 水 管 理 局 】アルトミュール 湖 から 水 を 取 っていいのは 洪 水 の 時 だけです。このため 送 水量 は 毎 年 違 ってきます。アルトミュール 湖 では、 泳 ぐための 水 質 が 確 保 されないという 問題 は 発 生 しますが、こちらのブロムバッハ 湖 とロート 湖 ではその 問 題 はありません。アルトミュール 湖 はこちらの 方 から 流 れて 来 ますが、 住 宅 地 があってその 辺 りには 農 家が 多 いです。このため 飼 料 に 含 まれるリンとか 窒 素 が、 洪 水 時 にこの 湖 に 流 れ 込 みます。その 結 果 、 藻 が 増 え 過 ぎることになります。というのも、このアルトミュール 湖 というのは、 深 さが 2m~2.5m しかないので、 特 にそういう 状 況 が 発 生 します。3 年 前 には 3 日 間 、水 泳 禁 止 にした 事 もあります。【 財 団 】そのあまり 綺 麗 じゃない 水 がブロムバッハ 湖 に 来 るんですよね。【 水 管 理 局 】ブロムバッハ 湖 の 水 は 滞 在 時 間 が 約 5 年 です。 深 さも 30m~32m と 比 較 的 深いため、 自 浄 作 用 が 働 きます。ひょっとしたら 10 年 、20 年 後 、また 100 年 後 に 問 題 が 起 こる 可 能 性 がない 訳 ではないです。(6)アルトミュール 湖 における 生 態 環 境 への 取 り 組 みこれがアルトミュール 湖です。( 図 6.50)ここが 先 ほど 計 画 を 変 えたという 島 です。この 写 真 はもう 15 年 も前 のものです。 今 、 現 在 では、 非 常 にたくさんの 木 が生 えまして、 水 鳥 の 主 要 な図 6.50 アルトミュール 湖 に 創 出 された 湿 地 環 境- 82 -


生 息 場 となりました。( 図 6.51)ここは、 立 ち 入 り 禁 止 になっています。ただ、のぞき 見 したいという 興 味がある 方 がいらっしゃいますので、ここに 小 さい 小 道 を 作 りまして、この 道は 通 ってもいい 事 になっています。この 他 は 立 ち 入 り 禁 止 となります。 年 間15 万 人 の 人 がここを 見 に 来 ます。ここで、 自 然 に 対 する 色 々な 貢 献 しようという 事 で、 木 を 植 えたりしています。ここの 草 地 で、 蘭 を 植 えたのですが、それはうまくいきませんでした。 残 念ながらその 蘭 は、 何 年 後 かに 消 えてしまいました。図 6.51 水 鳥 の 生 息 場(7) 堤 体 形 状 について【 財 団 】ブロムバッハ 湖 の 堤 体 が 下 流 部 側 に 少 しアーチ 状 になっていますが、 日 本 では 逆に 設 計 するんですけど、 何 か 理 由 があるんですか。( 図 6.52)【 水 管 理 局 】これは、 景 観 上 の 理 由 で、 真 っ 直 ぐだとあまり 美 しくないという 事 でアーチ状 にしています。 別 に 技 術 的 な 意 味 合いありません。コンクリートですと、こういう 風 なアーチ 状 にしますが、ここは、 土 のダムですので、アーチ 状 にする 必 要 はないです。【 財 団 】 日 本 では、こういう 土 のダムでも、アーチアクションを 多 少 期 待 して、2% 位 上 流 側 にアーチを 付 けるんです。【 水 管 理 局 】ここではそれは 見 込 んで図 6.52 ブロムバッハ 湖いません。- 83 -


7 ラインラントファルツ 州 における 環 境 アクションプログラム7.1 アクション・ブラウ(1) アクション・ブラウの 概 要1) ヒアリング 及 び 現 地 視 察 内 容日 2004 年 10 月 21 日 ~22 日ヒアリング 対 象 : 水 利 経 済 監 督 庁 (マインツ)、 同 支 所 (トリアー)現 場 視 察 :ライン 川 での 沿 岸 帯 の 自 然 再 生 、 農 地 内 の 小 河 川 の 自 然 再 生 箇 所 (マインツ)落 差 工 の 改 善 、 遊 水 地 での 自 然 再 生 (モーゼル 川 支 川 )2) アクション・ブラウの 概 要アクション・ブラウとは、ラインラント・ファルツ 州 の 環 境 アクションプログラムである。このプログラムの 目 的 は、 州 全 体 で 河 川 の 状 態 を 自 然 に 近 い 状 態 に 回 復 させることである。ラインラント・ファルツ 州 では、アクション・ブラウは、 良 質 で 十 分 な 量 の 飲 料 水 を供 給 すること、 地 方 自 治 体 が 実 施 する 下 水 処 理 に 次 いで、 重 要 な 課 題 であると 位 置 づけられている。ブラウ( 青 )は 河 川 の 自 然 度 をランク 分 けした 図 で、 自 然 に 近 く、 生 態 系 が 損 なわれていない 状 態 にある 箇 所 を 示 す 色 として 用 いられており、この 施 策 の 特 徴 的 な 色 として「アクション・ブラウ」と 呼 ばれている。(2) アクション・ブラウの 概 要 説 明皆 さまが、 今 回 のヨーロッパ 視 察 の 中 で、 当 庁 へのご 視 察 をご 計 画 頂 いた 事 を、 非 常に 光 栄 に 思 います。 私 は 関 係 官 庁 のご 招 待 で、1994 年 と 1998 年 に 日 本 に 参 りました。その 時 に、 非 常 に 親 切 におもてなし 頂 きました。 今 回 、その 一 部 でも 皆 さんにお 返 しできればと 思 っております。1994 年 には 東 京 で、1995 年 のラインの 洪 水 についてレクチャーをさせて 頂 きました。1998 年 は、ヨーロッパの 自 然 再 生 について 講 演 をさせて 頂 きました。【 財 団 】2002 年 の 洪 水 後 には 日 本 の 土 木 学 会 が 中 心 になって 調 査 団 を 派 遣 しましたが、 河川 環 境 管 理 財 団 もスポンサーになりまして、 財 団 のメンバーもその 調 査 に 加 わりました。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 今 日 の 説 明 でも、2002 年 のエルベ 川 の 洪 水 についてもお 話 しできると思 います。 私 の 同 僚 をご 紹 介 致 します。リネンヴェーバーです。 河 川 の 自 然 再 生 の 管 理 をしています。シュナイダーは、リネンヴェーバーの 補 助 をしています。アクション・ブラウについて、かなり 情 報 を 得 られているような 思 いますので、 皆 さまが 知 らない 事 をこちらでお 話 しできるように、 多 大 な 努 力 を 払 払 わなければいけないと 思います。- 83 -


1) ラインラント・ファルツ 州 についてマインツは、このラインラント・ファルツ 州 の 州 都 になります。ドイツは 連 邦 制 となっておりまして、 水 利 経 済 に 関 しては 自 治 権 があります。つまり、 国 は 法 律 的 な 枠 組 みを 規 制 しており、その 枠 組 みの 中 で、 州 が 独 自 に 施 策 を 進 めることができます。もちろんその 中 で 責 任 も 伴 ってきますけれど。また 州 には 水 利 経 済 を 促 進 するという 権 利 と 責任 があります。ラインラント・ファルツ 州 は、 比 較 的 小 さな 州 でして、 人 口 が 400 万 人 、 面 積 は20,000km 2 です。 水 利 経 済 につきましては、ライン 川 とモーゼル 川 のふたつの 大 きな 川が、 中 心 となっております。この 二 つの 川 は、 昨 日 いらっしゃったコブレンツで 合 流 しています。ラインラント・ファルツ 州 は、ドイツの 州 の 中 で、 最 も 森 の 多 い 州 で、 森 林 が 州 の 面積 の 40%~43%を 占 めています。また、この 州 では、ワイン 用 の 葡 萄 栽 培 が 盛 んで、これは 私 達 の 誇 りとしているところです。 葡 萄 の 生 産 が 盛 んなのは 森 が 多 いという 特 性 にだけよるではなく、2000 年 前 に 古 代 ローマ 人 が、 葡 萄 ・ワインの 製 法 を 探 したという 事によるものです。マインツ、コブレンツ、トリアー。これはらの 都 市 は 全 部 この 州 にありますが、これらは 全 て 2000 年 の 歴 史 を 持 つ 街 です。 新 しい 建 物 を 建 てる 時 や 改 築 する時 など、 地 下 を 掘 る 度 に、 昔 の 遺 跡 物 が 出 てきます。 今 日 いらっしゃると 伺 っていますトリアーは、ローマ 時 代 の 4 つの 内 の 1 つの 首 都 でした。その 当 時 、イギリス、スペイン、フランスを、トリアーから 統 制 していました。トリアーにいらっしゃいましたら、非 常 に 古 い 古 代 ローマ 人 が 作 った 建 築 物 を 見 て 頂 けると 思 います。2) 川 づくりの 変 化 について歴 史 的 なお 話 ししましたけれども、これから 水 利 経 済 の 説 明 をいたします。水 利 経 済 は 最 も 古 い 文 化 的 技 術 の 一 つでして、その 基 礎 と 言 えば、エジプトのナイル川 、バビロニア、ユーフラテス 川 などに 見 る 事 ができます。 水 利 経 済 というのが、 今 から 見 れば 一 番 長 い 歴 史 を 持 つ、 文 化 的 事 実 と 言 えます。 技 術 的 な 可 能 性 の 中 で、この 技術 は、どんどん 進 歩 してきました。20 世 紀 の 後 半 には、 技 術 的 に 河 川 や 景 観 を 形 成 するという 事 が 可 能 になってきました。これにより、 川 の 本 当 の 縁 まで、 都 市 を 拡 張 して 行くというような 事 が 起 こってきました。 逆 に 河 川 の 領 域 が、 非 常 に 狭 い 範 囲 まで 狭 まってきたという 事 になる 訳 です。 日 本 でも 私 が 伺 った 時 に 見 せて 頂 きましたが、ドイツと同 じように、このような 状 況 になっていると 思 います。ドイツ、 特 にラインラント・ファルツ 州 では、80 年 代 後 半 ~90 年 代 初 めにパラダイムが 変 わってきました。 河 川 を 技 術 的 に 征 服 するというのは、まわり 道 であったと。これ- 84 -


は、 治 水 からの 観 点 においても、 生 態 系 においても、または、 生 物 学 的 な 視 点 においてもそうであったといえます。 工 事 をして 治 水 対 策 を 行 うのではなく、 予 備 対 策 をとる 事が 重 要 だと 考 えられています。 例 えば 洪 水 が 起 きても 堤 防 は 崩 れないだろうというのではなく、 洪 水 が 来 ても 堤 防 を 流 れるような、その 利 用 方 法 を 考 えるという 事 です。3) 連 邦 州 水 利 研 究 委 員 会 について1993 年 ,1995 年 に 大 きな 洪 水 がラインで 起 こりました。この 時 に、 他 の 州 と 一 緒 に、将 来 の 治 水 対 策 をガイドラインとしてまとめました。1995 年 に 発 行 されましたが、 英 語とフランス 語 版 、 日 本 語 版 があります。このガイドラインは、ラインラント・ファルツ州 の 洪 水 の 経 験 をもとにして、 書 かれたものですけれども。 他 の 州 も、これを 了 承 しており、 共 同 責 任 でこのガイドラインが 完 成 しました。LAWA は 全 州 の 専 門 委 員 会 になります。2002 年 のエルベ 川 の 大 きな 洪 水 の 後 に、この委 員 会 にその 調 査 、 調 査 、 調 査 が 委 託 されました。その 結 果 、このガイドラインの 通 りにやれば、よかったのだが、できていなかった。つまり、このガイドラインどおりにすすめていくことが 重 要 であるということが 確 認 されました。このガイドラインでは、 河川 を 技 術 的 に 形 成 する 事 から、 予 備 対 策 をするという 方 法 での 方 向 転 換 が 述 べられています。4) アクション・ブラウの 概 要これからお 話 しするのが、 河 川 の 自 然 再 生 についてです。これも、 過 去 に 方 向 転 換 が行 われました、 基 本 は 河 川 にもっとたくさんの 範 囲 ( 土 地 )を 与 えるというものです。河 川 の 草 地 がたくさんあれば、 河 川 が 自 然 に 川 をかたちづくっていきます。 場 所 があれば 植 物 が 自 然 に 大 きくなったり 伸 びたりする 事 ができるということもあります。という 事 は、そこを 利 用 している 人 達 との 葛 藤 が 起 きます。その 葛 藤 をどうやって、 無 くして 行 くというのが 課 題 なります。これも 皆 さまが 興 味 を 持 って 頂 いている 事 だと 思 います。1994 年 に、アクション・ブラウという 河 川 の 再 自 然 化 というイニシアティブを 作 りました。 市 民 に 対 して、 今 言 ったような 事 に 対 する 意 識 を 持 ってもらうためのものです。ちょうどその 時 期 が、 市 民 にもちょうど 届 くような 良 い 時 期 でした。バルザックの 言 葉に、「ちょうど 良 い 時 にきた 時 ほど、 力 のあるものはない」という 言 葉 がありますが、アクション・ブラウについては、 私 達 は、その 良 い 時 にその 物 を 持 ち 出 したと 言 えます。政 治 的 、 政 治 家 からも、 共 同 連 盟 からも、 非 常 に 共 鳴 を 得 られました。このアクション・ブラウによって、ラインラント・ファルツ 州 が、 非 常 に 良 い 評 価 を- 85 -


得 られました。しかし、どこからも 抵 抗 がなかったかということではなく、 小 さな 街 や小 さな 河 川 などでは、やはり 抵 抗 がありまして、それをなくして 行 くような 努 力 が 必 要でした。しかし、 全 体 的 にコンセンサスを 得 られましたので、 強 く 進 めていく 事 ができました。 結 果 としてアクション・ブラウは 成 功 を 収 めているものと 言 えます。【 財 団 】ラインラント・ファルツ 州 では、 河 川 の 管 理 や 計 画 の 仕 方 が、1990 年 代 に 転 換 したとお 話 し 伺 いました。その 転 換 は、 州 や 政 府 の 河 川 管 理 をする 人 達 の 先 導 的 な 役 割 が 非常 に 大 きかったと 思 います。 立 法 府 がそれに 対 して、 何 かそれに 意 思 決 定 とか、 決 議 するとかそういう 行 為 はあったでしょうか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 法 律 的 には 変 化 はありませんでした。 先 ほど 水 利 経 済 について 歴 史 的なお 話 しをしましたけれども、その 水 利 経 済 に 関 する 法 律 というものが、 河 川 は 自 然 のままで 保 つべきであるという 事 が 書 いてあります。ですから、このアクション・ブラウは、そういう 観 点 から 見 ればルーツに 戻 るという 事 でした。アクション・ブラウでは、 計 画 を実 行 に 移 すための 手 段 を 作 り 考 えました。欧 州 水 枠 組 み 指 令 (2000 年 )の 中 では、 法 律 内 で 河 川 の 自 然 再 生 を 促 進 、または 要 求 しています。この 指 令 では、 船 の 航 海 または 発 電 などの、 特 別 な 理 由 がない 限 り、 河 川 の 自 然を 再 生 することを 要 求 しています。 私 達 が、 欧 州 水 枠 組 み 指 令 の 先 を 行 ったという 訳 ではないですけれども、アクション・ブラウにより、まず 一 番 にやったということはできます。(3) アクション・ブラウの 詳 細 説 明1) ドイツの 河 川 の 概 要ドイツでは、 河 川 を 一 級 から 三 級 まで 分 けています。ドイツの 主 要 な 河 川 にはライン川 、ドナウ 川 などがあり、 大 きなライン 川 の 支 流 マイン 川 が、ライン 川 に 合 流 しています。ドナウ 川 は 黒 海 に 流 れ、ライン 川 は 北 海 の 方 に 流 れ 出 ます。 私 達 は、ライン・マイン・ドナウ 運 河 を 作 りました。この 運 河 により、 航 海 ができるようになりましたが、それだけではなく、 動 物 も 移 動 する 事 ができるようになりました。これにより、 生 態 系 にも 変 化 がでてきました。モーゼル 川 はライン 川 の 支 川 で、 小 さな 支 流 を 含 めて 約 13,000km の 河 川 があります。流 域 面 積 は 20,000km 2 です。ライン 川 、モーゼル、ラーン 川 は 航 海 可 能 な 河 川 です。2) アクション・ブラウに 至 る 経 緯第 二 次 世 界 大 戦 後 一 番 大 きな 水 利 経 済 の 課 題 は、 飲 料 水 の 確 保 でした。 施 設 が 戦 争 で破 壊 されましたので、 飲 料 水 のため 施 設 を 再 び 整 備 することが 課 題 でした。 戦 後 、ドイツでは 経 済 が 発 展 しましたが、 過 大 な 発 展 により 河 川 が 汚 染 されました。この 汚 染 が 認識 されましたので、70 年 代 ~90 年 代 にかけて、 河 川 を 綺 麗 に 保 つ 事 をという 事 が 課 題 となりました。これを 解 決 するために、 河 川 品 質 地 図 を 作 りました。これが、 二 番 目 の 課題 です。- 86 -


図 7.1 ライン 川 の 水 質 の 変 化左 側 が 1972 年 。 右 側 が 1992 年 の 地 図 です。 河 川 の 汚 染 度 がわかります。 赤 が 非 常 に過 大 な 汚 染 。 青 が 全 く 汚 染 されていない 箇 所 です。 左 側 の 地 図 で、 一 番 下 に 赤 の 所 がありますけども、これが、ルートヴィクサーヴェンで、BASF がある 所 です。 右 側 の 1992年 の 地 図 を 見 て 頂 きますと、 赤 はもうなくなっています。 主 に、 緑 の 地 、 緑 の 品 質 の 箇所 が 増 えましたし、 青 箇 所 も 増 えています。3 つ 目 の 課 題 がですね、 先 ほどローターから 説 明 しました「 方 向 転 換 = 自 然 の 再 生 」です。ただ 単 に 綺 麗 な 水 を、 河 川 に 流 すだけではなく、 河 川 を 自 然 に 戻 すという 事 が 重 要 だという 事 を 認 識 しました。図 7.2 ライン 川 の 河 川 の 自 然 度- 87 -


このために 自 然 再 生 地 図 を 作 る 方 法 を 開 発 しました。この 地 図 を 見 れば、 自 然 再 生 を行 われたか、または 自 然 再 生 を 行 われなければいけないかという 事 がわかるようになっています。 赤 は 河 川 工 事 が 行 われた 箇 所 です。 青 が 近 自 然 ということです。11,000km の延 長 を 100m の 区 間 毎 に 表 わしています。3) アクション・ブラウの 詳 細図 7.3 アクション・ブラウの 広 報 用 パンフレットこれは、 自 然 の 再 生 状 態 を、 市 民 ・ 州 民 に 良 くわかってもらうために、つくったパンフレットです。これは 無 料 で 州 民 に 配 布 しています。アクション・ブラウの 重 要 な 事 は、州 民 に 理 解 してもらうように 様 々な 方 法 を 行 う。また、 施 策 は 常 に 変 化 していくという事 も 理 解 してもらう 事 です。1 アクション・ブラウの 目 的可 能 な 場 所 では、 人 の 手 を 加 えた 自 然 ではない 河 川 を 再 生 するということが 目 的2 アクション・ブラウの 4 つの 柱アクション・ブラウにより、 河 川 の 維 持 に、 責 任 を 持 っている 市 町 村 に 援 助 をする。アクション・ブラウには 4 つの 柱 があります。- 88 -


図 7.4 アクション・ブラウの 4 つの 柱1 つ 目 は 手 法 の 開 発 。例 えば 河 川 構 造 の 地 図 化 などの 新 しい 手 法 を 開 発 する。それまでは、その 河 川 の 構 造に 対 する 知 識 がありませんでしたが、これを 開 発 しました。2 つ 目 がデータの 集 積3 つ 目 が 色 々なプロジェクトがあります。ここで、 新 しい 手 法 を 実 験 します。 例 えば、草 地 の 中 の 新 しい 河 床 の 流 れについて 検 証 します。4 つ 目 が 一 番 重 要 で、 実 行 です。 小 河 川 では 市 町 村 が 実 行 し、 大 河 川 では、 州 が 実 行 します。我 々は、 自 然 再 生 が 素 晴 らしく、どういうような 利 点 があるかという 事 を、 知 ってもらうために 広 報 活 動 をしています。また、 事 業 に 対 しては 最 高 で 80%までの 補 助 金 も 出すこともできます。この 中 で 非 常 に 重 要 な 視 点 としては、 土 地 の 買 収 があります。 適 切 な 土 地 面 積 がないと、 河 川 が 自 然 に 発 展 する 事 ができません。 土 地 が 手 に 入 れば、 対 策 を 行 って、 河 川 を自 然 に 戻 すことができます。この 場 合 、パワーシャベルでの 掘 削 や 詳 細 設 計 どおりの 施工 をするのではなく、 洪 水 の 力 を 借 りて 行 います。洪 水 時 には 侵 食 や 堆 積 など 河 道 が 変 動 しますが、 事 業 費 を 節 約 するためにこの 河 道 の- 89 -


変 動 を 利 用 します。お 金 を 投 資 するのは、 土 地 の 買 収 ですが、この 前 提 としては、 河 道の 変 動 によって 壊 滅 的 な 事 態 になることなく、どのように 変 動 するかを 予 測 できることがあります。これは、アクション・ブラウの 重 要 な 部 分 です。ですから、この 州 、 都 市 、この 官 庁 においても、そういう 知 識 を 得 るためにプロジェクトを 行 います。1994 年 に 始 めまして。これが 2000 年 のプロジェジェクトの 数 です。これによりアクション・ブラウが 人 々に受 け 入 れられているという 区 間 がわかります。また、 多 くの 市 町 村 が、プロジェクトを 実 行 しているというのがわかります。小 川 の 里 親 制 度 を 作 り、 個 人 や 学 校 などが、ある 一 定 の、 川 や 自 分 の 区 間 について 面 倒を 見 るということになっています。生 態 系 的 に 言 いますと、 河 川 の 自 然 再 生を 行 うと、 色 々な 生 物 が 共 同 で 住 む 生 活 圏がそこにいるべき 魚 がまた 帰 ってきたりします。 沿 岸 の 植 生 も 様 々なものになります。 河 川 の 状 態 が 変 われば 変 わる 程 、 動 物が 戻 ってきて、 植 生 も 良 くなってきます。図 7.5 アクション・ブラウのプロジェクトの 状 況先 ほどローターからもお 話 ししましたけれど、EU の 水 枠 組 指 令 というものがあります。これは 2000 年 からありますが、これも 生 態 学 的 に 良 い 状 態 を 促 進 しています。その 中 で 合 意 されている 事 は、EU の 各 国 が2015 年 までに、 河 川 の 生 態 系 を 良 い 状 態 にするということです。その 生 態 系 的 に 良 い 状態 というのは、 動 物 の 状 態 で 計 ります。という 事 は、 私 達 にとっても 構 想 を 完 成 しなければいけないという 事 になります。 生 態 系 を 良 くすると、 同 時 に 治 水 対 策 としても 効 果が 発 現 します。まとめて、 最 後 に 要 約 致 しますと、アクション・ブラウ( 河 川 の 自 然 再 生 )には 3 つのアドバンテージがあります。1つ 目 が 洪 水 に 対 する 対 策 です。 遊 水 効 果 が 高 まると 同 時 に、 保 水 力 が 高 まります。2 つ 目 が 生 態 系 の 状 態 が 良 くなることです。 生 態 系 にとっても 非 常 に 重 要 な 事 です。3 つ 目 は、レジャーと 保 養 、それと 自 然 保 護 です。- 90 -


【 財 団 】アクション・ブラウなどの 仕 組 みで、やっている 事 は 良 くわかります。 今 のお 話しを 伺 うと、どちらかと 言 うと 市 町 村 などの 河 川 の 上 流 部 では、やりやすい 対 策 ですが、それが 流 れ 込 んで 来 る 州 が 管 理 している 大 きな 河 川 では、なかなか 難 しいと 思 います。それと、 都 市 を 流 れている 河 川 については、どんな 事 されているのかを 教 えて 頂 きたい。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 小 河 川 で、 生 態 系 を 良 くするという 目 的 を 果 たさなければいけませんが、それは、 洪 水 の 保 水 効 果 ももちます。 洪 水 を 小 河 川 の 被 害 が 起 きないようなところで、貯 留 すれば 大 河 川 の 洪 水 を 防 ぐことができるということなります。大 河 川 でも、 自 然 再 生 対 策 は 行 われています。たとえば、 引 堤 などをして、 川 に( 自 然の 営 力 にまかせる) 場 所 を 与 える 工 事 をしています。 確 かに、 小 河 川 での 工 事 に 比 べて、都 市 でやる 場 合 は、お 金 がたくさんかかります。 対 策 の 効 果 は 全 体 として 見 ていかないといけません。 取 った 対 策 は 全 体 としてみると 何 かの 成 果 をもたらします。ライン 川 の 場 合 は 航 海 、 航 路 ですので、 様 々な 規 制 があります。 護 岸 がある 所 もありますし。 今 日 、ライン 川 で、 一 部 を 自 然 再 生 した 所 を 見 て 頂 きますけれども、 大 河 川 では、全 ての 区 域 の 自 然 を 再 生 するという 事 は 不 可 能 です。それでも 都 市 部 におきましても、 自 然 再 生 は 進 められています。ただ、 自 然 の 再 生 というよりは、 皆 さんの 気 に 入 った 形 に 川 を 形 成 してもらうということです。 河 道 は 自 然 のままであるようにし、それによって 動 物 が 移 動 できるように、 河 道 は 自 然 のままであるべきです。ただし、 十 分 に 場 所 が 河 川 にあるように、 洪 水 には 気 をつけます。この 10 年 アクション・ブラウをやって 来 ていますが、 非 常 にたくさんの 人 がこのアクション・ブラウに 参 加 してくれましたが、 一 方 で、 全 く 参 加 しない 人 もいます。 広 報 はやっていますが、やはり 広 報 には 限 度 があります。欧 州 水 枠 組 み 指 令 により、 私 達 州 の 官 庁 並 びに 市 町 村 には 圧 力 がかかって 来 ると 思 います。これをどう 促 進 して 行 くというのかが 課 題 です。 例 えば、 利 水 計 画 を 作 らなければいけない 事 が 決 まっています。 市 町 村 のうち、これまでそういうものをやっていなかった 所は、これからやらなければいけなくなります。【 財 団 】 再 自 然 化 をする 時 は、 特 に 工 事 をするのではなくて、 洪 水 の 力 に 任 せるというお話 しがあったかと 思 いますが、その 予 測 をこちらの 組 織 でやられて、 実 際 の 現 地 での 作 業は 市 町 村 がやるという 事 でよろしいですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 予 測 も 作 業 も 市 町 村 がエンジニアを 雇 い、 計 画 を 立 て、 作 業 もしています。【 財 団 】そうすると、この 組 織 と 市 町 村 とはどういう 関 係 になりますか。- 91 -


【 水 利 経 済 監 督 庁 】 私 達 は 基 礎 的 な 研 究 をもとに、アドバイスをします。 例 えば、どこでこの 対 策 が 特 に 有 効 かというようなアドバイスをします。【 財 団 】 再 自 然 化 を 示 した 地 図 では、 現 地 調 査 はどういた 専 門 家 の 方 がやられたか。またどういう 基 準 で 作 成 されているのか 教 えてほしい。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 多 くの 基 準 があります。このようなアンケート 用 紙 がありまして、26のパラメーターがあります。この 地 図 を 担 当 した 人 達 は 生 物 学 者 、 地 理 形 学 者 などが、 用紙 を 持 ってチェックしていきます。 基 準 は 技 術 屋 さんにもできるような 簡 単 なものにしています。ですから、 特 に 専 属 の 人 でなければできないというような 仕 事 ではないです。【 財 団 】 事 業 が 終 わった 所 のモニタリングも 同 様 の 方 法 でやっておられるのですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】はい。モニタリングもこの 基 準 に 従 ってやっております。【 財 団 】11,000km の 地 図 を 見 せて 頂 きましたけども、それをどれぐらいの 頻 度 で 書 き 換 えられておられるのか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 一 番 最 初 は 96 年 に 作 りました。5 年 後 に 新 しく 作 りましたが、その 時は 自 然 再 生 の 対 策 が 取 られた 所 だけ 対 象 としました。さきほどの 地 図 を 担 当 した 人 達 は、特 別 な 研 修 を 受 けました。 欧 州 水 枠 組 み 指 令 によると、6 年 毎 に 地 図 を 新 しく 作 らなければなりません。【 財 団 】 再 自 然 化 する 時 は、 洪 水 力 を 使 うという 事 ですが。そのためにどのような 情 報 を、どのように 蓄 積 されているのか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】この 予 測 は 何 かのデータに 基 づいて 行 うという 事 ではありません。 川のタイプ、こういう 川 はどういう 風 に 変 化 するかというのを 大 まかに 見 て 予 測 しています。洪 水 についての 知 識 が 必 要 ですし、 全 体 についてのフィーリングが 必 要 です。これは 小 さい 河 川 に 関 しての 事 です。大 河 川 ですと、 危 険 になる 事 もありますので、もっと 注 意 深 くしないといけません。 例えば、 河 道 内 樹 木 によって、 川 の 流 れが 変 わるような 河 川 であれば、それにより 自 然 再 生をすることもできるでしょうが、ライン 川 でしたら 非 常 に 危 険 でしょう。ライン 川 もですね、 昔 はその 集 落 全 体 に 水 を 被 ったという 事 もあります。それはですね、ライン 川 の 流 れが 変 わったという 事 ですけれども。 小 さい 河 川 でしたら、こういう 対 策 をとって 良 いとなっています。- 92 -


(4) ラインラント・ファルツ 州 の 治 水 対 策 (フィル 氏 )私 の 担 当 は、 洪 水 の 届 出 義 務 です。これは、 洪 水 の 準 備 対 策 の 一 環 です。このラインラント・ファルツの 治 水 対 策 についてご 紹 介 します。このラインラント・ファルツ 州 の 治 水 対 策 には、3 つの 柱 があります。ひとつは 自 然 の 保 水 。これについては、リネンヴェーバーからご 説 明 しました。2つ 目 は、 技 術 的 な 治 水 。 堤 防 を 作 るなどの 治 水 対 策 です。3つ 目 は、 洪 水 届 出 、 届 出 サービス、 洪 水 地 域 の 姿 勢 、 建 築 に 対 しての 指 導 、 保 険 などです。1) ライン 川 の 変 遷 についてライン 川 の 流 域 は 非 常 に 大 きく、9 つの 国 (イタリア、スイス、リヒテンシュタイン、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、ベルギー、オランダ)が 関 わります。 沿 川 の 居 住地 域 の 面 積 は、189,500km 2 ありますが、ドイツが 占 めるのは 100,000km 2 になります。この 州 は、20,000km 2 です。図 7.6 1828 年 のライン 川 上 流 部1828 年 代 です。ライン 川 上 流 はこのように 固 定 された 河 道 はありませんでした。 自 然の 遊 水 地 が 大 きく 遊 水 効 果 が 非 常 に 大 きかったと 言 えます。トゥラーという 技 術 者 によりこの 時 代 にライン 川 を 直 線 化 しました。 遊 水 地 が 小 さくなり、 本 流 から 切 り 離 されました。- 93 -


図 7.7 1872 年 のライン 川 上 流 部ここで 初 めて 本 流 が、わかるようになりました。しかし、これでもまだ、 大 きな 洪 水が 起 こっても、まだ 保 水 力 はありました。図 7.8 1963 年 のライン 川 上 流 部これが 1963 年 以 降 の 状 態 です。 従 前 よりももっと、 直 線 化 され、 遊 水 地 が 完 全 に 切 り離 されました。また、 閘 門 、 発 電 所 などが 作 られました。ライン 川 上 流 人 の 手 が 加 わった 事 による 洪 水 の 流 れに 対 する 影 響 として、 遊 水 地 がなくなり、 洪 水 到 達 時 間 が 短 くなったことがあげらます。そして、そのライン 川 と 支 川 の 洪 水 ピークがぶつかることが 起 こるようになりました。ここでその 例 をご 紹 介 します。- 94 -


図 7.9 遊 水 地 の 効 果水 位 が、 一 番 高 くなった 時 に 薄 い 青 になっている 範 囲 が、 被 害 が 起 こる 水 位 です。 現在 での 水 位 の 状 況 は 赤 で 示 されています。 同 じ 程 度 の 洪 水 でここまで 高 くなります。つまり、 大 きな 被 害 が 出 ることになります。 実 施 している 保 水 対 策 はこの 範 囲 をなくすという 事 が 目 的 になります。2) 遊 水 地 での 貯 留保 水 力 を 高 めるにはふたつの 方 法 があります。図 7.10 遊 水 地 の 整 備 の 2 つの 方 法ひとつは、 制 御 された 保 水 と 呼 んでいます。 本 堤 防 のうしろにもうひとつ 堤 防 を 作 ります。 大 きな 洪 水 が 起 きるとこの 辺 りに 水 が 被 ります。 制 御 と 言 いましたのは、 大 きな堤 防 による 水 の 出 入 りです。これを 技 術 的 な 保 水 と 呼 びます( 図 の 左 側 )。- 95 -


ふたつ 目 の 方 法 は、 自 然 な 保 水 です。 先 ほどリネンヴェーバーから、 河 川 の 上 流 の 説明 をしましたが、アクション・ブラウでは、 自 然 の 保 水 を 目 的 としております。この 場 合 も、 前 からあった 前 面 の 堤 防 の 後 方 に 新 規 の 堤 防 を 作 り、 古 い 堤 防 は 取 り 壊します。という 事 は、 新 しい 堤 防 は、こちらの 後 ろの 方 になる 訳 です。もちろん、 水 位によって、そこに 水 が 被 ったり、また、 乾 燥 、 乾 いたりすることになります。これを、自 然 の 保 水 と 呼 んでいます。図 7.11 遊 水 地 への 流 入 状 況これが、 自 然 の 保 水 の 一 例 です。 保 水 地 域 に 流 れているのが 見 えます。 左 側 から、 主 、メインに 流 れている 訳 です。図 7.12 遊 水 地 の 構 造 物 の 事 例これが、 技 術 的 な 治 水 対 策 の 例 です。 水 の 出 口 でもあり、 入 り 口 でもあるという 機 能を 持 っています。- 96 -


図 7.13 河 道 内 の 堰 による 貯 留これが、 通 常 のライン 川 ではなく、 古 い 河 道 に 作 られた 堰 で、これを 保 水 ・ 治 水 対 策として 使 われてきました。 洪 水 が 起 きると、ここに 中 間 保 水 をすることができます。これにより、この 周 りの 土 地 の 地 下 水 の 水 位 を 下 げることができます。 洪 水 の 場 合 は37,000,000m 3 まで 保 水 できます。 高 さは 6m までです。ドイツとフランスで 合 わせまして、226,000,000 m 3 の 保 水 をしなければなりません。その 内 、170,000,000m 3 がドイツで。その 中 で、44,000m 3 がラインラント・ファルツ 州です。 場 所 でいうとバーゼルから、マンハイムまでになります。このグリーンは、もうこの 対 策 が 終 了 しています。 他 の 対 策 は、 現 在 進 行 中 です。この 対 策 が 全 て 終 了 しますと、 洪 水 位 を、かつてのレベルまで 下 げる 事 ができます。図 7.14 マッサウ 地 点 での 遊 水 地 の 効 果- 97 -


これが、1999 年 2 月 の 洪 水 におけるマッサウ 地 点 の 水 位 です。 保 水 対 策 を 行 っていなければ、 高 い 方 の 水 位 になったはずです。これは 被 害 が 起 こる 高 さだった 訳 ですけれども。 現 在 進 めているライン 川 上 流 の 保 水 対 策 により、 水 位 が 下 の 線 のレベルに 留 まりました。ブルーになっている 部 分 が 保 水 力 で 60,000,000m 3 です。 水 位 に 与 える 効 果 は 33cm分 です。【 財 団 】ハイドログラフはどうやって 決 めているのか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 水 位 はその 測 定 場 所 がありますので、そこで 計 測 して、デジタルで 保存 しています。【 財 団 】 治 水 対 策 をする 時 の、 基 本 となるこういう 洪 水 ハイドロの 形 をどうやって 決 めたのですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 過 去 の 記 録 を 用 いています。それについては、 次 の 説 明 でご 紹 介 します。【 財 団 】 遊 水 地 の 部 分 というのは、たぶん 土 地 を 完 全 に 買 い 取 ってしまうと 思 いますが、普 段 畑 になっていて、 洪 水 の 時 だけ 水 が 入 るということになるのでしょうか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】これは、 州 かまたは 市 町 村 が、その 遊 水 地 は 買 いますけども、その 中の 一 部 はまだ 農 業 用 に 使 われています。 技 術 的 な、 技 術 的 な 保 水 の 場 合 は、その 遊 泳 地 は制 限 付 きで 農 業 か 可 能 になっています。 自 然 の 方 は、 主 に 草 地 ができますので、そういう所 では 自 然 が 再 生 された 草 地 になります。3) 洪 水 予 測それでは、 次 の 話 題 につい 手 説 明 します。 治 水 対 策 の 重 要 なものに 洪 水 情 報 サービスがあります。ラインラント・ファルツ 州 では 洪 水 情 報 サービスが、サービスが 1986 年 から 始 まりました。情 報 サービスセンターというものがあって、その 役 割 は 診 断 モデルの 事 業 、 診 断 の 公開 、 情 報 路 等 です。 情 報 サービスセンターはマインツ、トリアー、コブレンツの 3 箇 所にあります。この 情 報 サービスの 基 礎 は、 十 分 にデータがある 事 です。 水 位 情 報 はシステムによって、センターに 集 約 されています。もうひとつの 主 要 な 情 報 が 降 雨 量 です。 雨 の 状 況 は 降 雨 レーダーで 観 測 しており、 時間 毎 や 24 時 間 毎 などの 降 雨 量 を 予 測 しています。このようなデータに 基 づいて、 洪 水 モデルを 作 っています。 洪 水 のモデルは 河 川 毎 に 違 っています。ライン 川 では。ハイドロデュナーミックなモデルが 使 われてます。モーゼルについては 降 雨 量 モデルと、ファジィモデルと 両 方 使 われてます。ナーエ 川 では 降 雨 量 のモデルが 使 われています。- 98 -


ラーン 川 のモデルは 今 作 成 中 です。 統 計 を 基 本 としたモデルになると 予 定 です。ジーク 川 につきましては、ファジィロジックの 目 途 を 立 てています。洪 水 予 測 の 時 間 単 位 も 河 川 毎 に 異 なっており、ライン 川 では、6 時 間 、24 時 間 、36 時間 で 予 測 しています。その 支 川 の4つの 河 川 では 洪 水 到 達 時 間 が 本 川 よりも 早 いため、予 測 時 間 は 短 くなっています。4) 情 報 の 伝 達情 報 、 水 位 の 情 報 伝 達 方 法 には 4 つの 方 法 を 使 っています。ビデオテックス、ラジオ、インターネット、 携 帯 電 話 です。ビデオテックスでは 時 間 毎 の 水 位 と 水 位 の 予 測 を 示 しています。ラジオで 1 時 間 毎 に 水 位 が 放 送 されています。一 番 大 きな 利 用 方 法 が、インターネットを 利 用 したもので、 降 雨 量 の 分 布 、 予 報 降 水量 、 水 位 、 最 高 水 位 、ハイドログラフなど 様 々な 情 報 を 提 供 しています。携 帯 電 話 でも 1 時 間 毎 の 水 位 と 最 高 水 位 を 提 供 しています。【 財 団 】 日 本 にも 似 たようなシステムはありますが、 最 高 水 位 の 予 測 はありません。【 水 利 経 済 監 督 庁 】こちらも、いつでも 可 能 という 訳 ではないのですが、 最 高 水 位 の 予 測できる 事 が 多 くなってきています。 過 去 の 洪 水 を 選 んでの 水 位 や 予 測 なども 見 ることができるようになっています。【 財 団 】 情 報 を 提 供 はしていますが、 例 えば 避 難 勧 告 などは 出 さないのですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】こちらでは、こういう 状 況 であって、こういような 予 測 があるという事 をもとに 警 告 はします。 洪 水 情 報 サービスセンターからは、 常 に 州 や 市 町 村 の 災 難 対 策の 部 局 にデータを 提 供 していますので、 州 または 市 町 村 が、 避 難 命 令 を 出 すかどうかは 決めます。【 財 団 】ハザードマップ 作 られておられるのか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】はい。 作 っています。【 財 団 】 治 水 計 画 の 説 明 があったが、どれくらいの 規 模 の 洪 水 に 対 して 計 画 を 立 案 されているのか、あるいは 過 去 のある 洪 水 に 対 して 計 画 されているのかですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 例 えば、さきほどのフランスとドイツでの 洪 水 貯 留 ができれば、100 年に 1 度 起 きる 洪 水 にたいしては 安 全 になります。ただし、 堤 防 は 200 年 確 率 の 洪 水 に 対 応して 作 られています。 住 宅 、 集 落 がないような 所 では、 高 い 堤 防 を 作 る 事 ができますが、都 市 部 では、 上 流 での 貯 留 によって 洪 水 位 が 下 がっている( 先 ほどの 事 例 では 33cm)こともあって、 高 い 堤 防 をつくってはいません。すべての 治 水 対 策 が 終 したら、もっとこの 差が 大 きくなるでしょう。226,000,000m 2 の 保 水 地 域 ができれば、もっと 低 くする 事 ができる- 99 -


ようになるので。 下 流 にとっては、 状 況 がよくなる 訳 です。【 財 団 】 洪 水 の 予 測 は 特 性 曲 線 法 などを 使 っているのですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】こちらの 地 区 での 予 想 には 降 雨 量 を 基 本 データとして 使 ってまいす。【 財 団 】 降 雨 予 測 の 情 報 は、 日 本 では 気 象 庁 という 組 織 が 担 当 しますが、こちらでは、 予測 情 報 は、 他 の 組 織 から 情 報 を 洪 水 予 測 に 使 っていますか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】ドイツの 場 合 も、 国 の 機 関 である、ドイチェゲターヴィーンスト、ドイツ 天 気 予 報 サービスが、 降 雨 予 測 をしていて、そこからデータを 貰 います。ラインラント・ファルツ 州 の 降 雨 観 測 所 もあります。ここで 取 ったデータは 国 の 天 気 予 報 サービスに提 供 しています。 国 の 天 気 予 報 網 と、あとそれぞれの 州 に 予 報 センター( 降 雨 観 測 所 )があり 共 同 して 予 測 しています。 降 雨 予 測 には、それらの 全 てのデータを 使 っています。【 財 団 】 日 本 では 降 雨 の 予 想 は 気 象 庁 が 3 時 間 毎 に 行 っているのですが、 日 本 の 河 川 の 場合 は、ほとんど 洪 水 予 報 に 役 立 たない。なぜかと 言 うと、 洪 水 が 4,5 時 間 で。6 時 間 などの短 い 時 間 できてしまうからです。 利 根 川 のような 大 きな 河 川 では 予 報 ができるのですが、流 域 面 積 が 200km 2 位 の 河 川 では、 洪 水 予 報 の 精 度 が 悪 く、 精 確 な 予 報 は 難 しいとされています。【 水 利 経 済 監 督 庁 】ドイツでもライン 流 域 の 予 想 の 方 が、 小 さい 支 流 なんかの 予 想 よりもうまくいきます。- 100 -


7.2 アクション・ブラウの 具 体 例(1) ナーエ 川 における 取 り 組 み1) 計 画 の 概 要ナーエ 川 も 非 常 に 洪 水 が、 早 く 起 こる 河 川 で、 自 然 の 再 生 と 農 業 を 両 立 するためにナーエ 川 で 特 別 の 計 画 を 立 案 しました。約 10 年 前 に 洪 水 がおこり、この 洪 水 がナーエ 計 画 が 作 られる 発 端 となりました。どんなに 被 害 が 大 きかったかという 伝 える 新 聞 の 記 事 がたくさんあります。バードクロスナーとい 人 口 が 約 80,000 人 の 街 ですが、 被 害 額 が 当 時 、12,000,000 マルクでした。このように 小 さな 街 だけでそれだけの 負 担 がありました。エルベとオーダー 川 の 洪 水 では 被 害 額 は90 億 ユーロでした。この 被 害 を 少 なくしなければいけないという 事 で、アクション・ブラウの 示 す 計 画 を 立 案 しました。その 目 的 は、ナーエ 地 方 の 治 水 対 策 を 改 善 することです。その 戦 略 は 5 つの 点 から 成 り立 っています。・ 水 は 浸 透 するべき・ 河 川 の 自 然 を 再 生 する・ 保 水 をする( 堰 き 止 める。 堤 防 等 の 技 術 的 な 工 事 によって)・ 予 防 をする( 洪 水 に 対 する 予 防 対 策 として、 適 した 建 築 材 料 を 使 う、 保 険 )連 邦 では、アクションプログラム 2020 ありますが、その 中 で 1/3 は 保 水 。1/3 は 技 術 的な、 技 術 的 物 による 堰 き 止 め。1/3 は 予 防 による 洪 水 対 策 を 施 すとされています。このプログラムは、すでに 始 まっていまして、これからの 15 年 間 、2020 年 までに、この 方 法 で治 水 対 策 を 行 うとしています。ナーエ 川 の 計 画 を 立 案 ・ 実 行 をするために、 作 業 部 会 がつくられました。 参 加 者 は、 市町 村 、 農 家 、 自 然 保 護 者 、 水 理 経 済 関 係 者 の4 者 です。この 4 つの 部 分 から、 成 り 立 った作 業 部 会 ですけれども、これに 参 加 する 事 によって、 感 情 的 なことが 色 々とありますけども、そういうものをなくそうという 考 えです。州 は 対 策 のコンセプトを 準 備 しました。ナーエ 川 計 画 を 実 施 するには、 土 地 が 必 要 でしたが、 土 地 の 管 理 は 農 家 が 行 います。 市 町 村 は 財 政 危 機 で、 予 算 が 厳 しいため、 州 から 補助 金 ( 負 担 率 80%)を 出 します。先 ほどのコンセプトからみると、 現 状 での 問 題 は、 第 二 次 大 戦 後 に 農 耕 地 をできる 限 り増 やそうとした 事 でした。そのために、 湿 原 を 乾 燥 させて、 凸 凹 だった 所 を 平 坦 にしたなどの 行 為 です。 例 えば、 保 水 に 非 常 に 重 要 な 川 の 草 地 を、 農 耕 用 に 変 えてしまいました。- 101 -


その 結 果 、かなりの 速 さで 水 が 大 きな 川 に 流 れてしまうようになりました。そこで、 河 川 自 然 な 機 能 をもう 一 度 取 り 戻 すこととしました。このこの 自 然 の 重 要 な 機能 は 次 の5つがあります。・ 河 川 は、 動 物 植 物 の 生 活 圏 であるべき・ビオトープをネットワーク 化 する・ 水 を 保 水 してまた 水 を 返 してやる。・ 河 川 を 人 間 の 保 養 地 としてあるべき・よい 景 観 を 再 現 するこのように、 人 が 昔 失 った、 河 川 の 自 然 の 機 能 を 再 び 取 り 戻 すという 事 が、アクション・ブラウの 理 想 です。2) ナーエ 川 の 概 要図 7.15 ナーエ 川 流 域 図これが、ラインラント・ファルツ 州 、マインツ、ナーエ 川 の 位 置 関 係 です。ナーエ 川 の流 域 面 積 は 約 4,000km 2 です。 流 域 には 635,000 人 が 住 んでいます。洪 水 が 全 流 域 に 起 こると、 洪 水 が 非 常 に 早 い 速 度 で 流 れる 事 が 多 いです。 山 岳 地 帯 には、かなり 急 勾 配 の 小 河 川 が 流 れる 渓 谷 があります。ナーエ 渓 谷 には 保 水 のための 適 地 が 少 ないおとになります。これが。 洪 水 により 非 常 に 大 きな 災 害 がもたされた 理 由 でもあります。- 102 -


3) 保 水 の 考 え 方自 然 の 保 水 には 様 々な 要 素 があります。 地 表 面 に 植 物 が 生 えている 事 が 一 番 良 いのは 森であることです。 次 が 土 壌 の 状 態 です。 雨 の 大 きな 粒 は 土 壌 に 浸 透 します。 地 形 も 重 要 で、窪 地 になっているような 所 では 大 きなの 保 水 能 力 があります。また、 川 の 縁 の 草 地 も 大 きな 保 水 力 を 持 っています。戦 後 、このような 自 然 の 保 水 力 が、 人 間 の 手 で 壊 されました。 森 を 壊 し、 草 地 だった 所を、 耕 地 に 変 えてきました。 河 川 を 直 線 化 し、 洪 水 が 起 こりえる 地 方 に 住 宅 を 建 設 し、 集落 地 帯 としてきました。 上 流 部 の 山 林 を 伐 採 してきました。このようになる 前 の 姿 が、 私 達 が 取 り 戻 す 状 態 です。これをどのような 方 法 で 進 めていくのかについて 説 明 します。この 方 法 はアクション・ブラウでも 効 果 があるものです。農 家 が 沿 川 一 杯 まで 農 耕 地 を 使 っている 事 があります、この 対 策 として、 川 の 縁 に 衝 地帯 をつくります。 場 に 応 じた 土 地 の 利 用 をするという 事 で、 川 の 中 の 草 地 まで、 農 耕 地 として 使 用 するべきではないと 考 えています。そういう 所 は 植 物 が 生 えていて、それによって 土 壌 が 固 定 されるべきです。つまり、 農 耕 地 として 適 切 でない 所 は、 農 耕 地 を 取 りやめると。 昔 、 川 の 中 の 草 地 に、 森 林 があった 所 がありますが、そういうものがあった 所 は、森 林 を 復 活 させようとしています。 法 律 によって、このような 遊 水 地 というのは、 特 別 な保 護 が 必 要 であり、 集 落 としては 使 ってはいけないことになっています。また、 土 壌 について、どのような 対 策 を 取 れば、 治 水 への 効 果 があるかに 関 する 相 談 所があります。私 達 にとって、 農 家 、 農 業 に 関 する 監 督 官 庁 は 非 常 に 重 要 なパートナーです。これらの農 業 関 係 者 が、 昔 から 農 耕 地 をまとめたり、そういう 事 をしていたので、このナーエ 計 画におきましても、 農 業 関 係 者 が 非 常 に 大 きな 役 割 を 果 たしています。洪 水 の 危 険 を 少 なくするために、 保 水 力 を高 めるというのがこのナーエ 計 画 の 目 的 です。これは、1 世 紀 から 19 世 紀 ,20 世 紀 を 図 に表 わしたものです。 緑 が 森 、その 上 が 集 落 、農 耕 地 、 草 地 の 順 です。この 変 遷 をみると、河 川 の 長 さが 短 くなり、 森 林 の 面 積 が 減 り、図 7.16 土 地 利 用 の 変 化 と 保 水 力 の 変 遷集 落 が 大 きくなっています。 農 業 的 利 用 が、河 川 の 直 近 まできたことがわかります。これが、 洪 水 がますます 大 きくなったという 事 に 影 響 しています。- 103 -


この 土 壌 の 中 の、 空 隙 があります、この 容 量 が 重 要 な 役 割 を 致しています。図 7.17 保 水 力 の 高 い 土 壌4) プロジェクトの 状 況図 7.18 ナーエ 川 の 各 プロジェクトナーエ 地 方 では、これまでも 数 多 くのプロジェクトが 行 われました。 主 なものは 次 のとおりです。- 104 -


・27 箇 所 の 河 川 の 自 然 を 再 生・41 の 保 水 プロジェクト・ 河 川 の 90km の 区 間 に、 河 川 のおび 帯・240km の 区 域 の 遊 水 地・42 箇 所 で、 土 壌 に 優 しい 農 業 ( 補 助 金 が 出 る)・ 環 境 に 優 しい 農 家 への 補 助 金 ( 国 が 行 われたのが 33,000ha)・7,700km の 区 間 での 河 川 の 維 持 計 画ナーエ 計 画 においては、 土 壌 に 優 しい 農 業 というのが 特 に 促 進 されております。42 の 農家 が、この 方 法 を 取 り 入 れました。目 的 は。 農 耕 地 の 上 を 流 れる 水 を、 少 なくすること、そこから、 表 面 から 浸 透 力 が 良 くなるという 事 です。 年 間 をとおして、 緑 があると、 浸 食 も 少 なくなります。そしてモデルとして、 実 施 してくれた 農 家 を 広 報 用 に 使 いました。これは 農 家 にとっても 利 点 があり、 浸 食 に 対 する 保 護 ができます。 土 壌 の 構 造 が 良 くなるという 事 になります。また、 耕 運 機 で 作 業 しないので、 作 業 に 手 間 がかからなくなり、栄 養 素 を 洗 い 流 すという 仕 事 も 少 なくなります。図 7.19 遊 水 地 の 計 画図 7.20 遊 水 地 への 流 入 状 況これはナーエ 川 沿 川 の 遊 水 地 、この 遊 水 地 を 拡 大 する 事 を 決 めました。これを 法 律 で 保護 しております。30 年 前 ですと、こういう 遊 水 地 に 集 落 が 入 り 込 んできましたが、それによって 大 きな 被 害 が 起 こる 可 能 性 があります。このような 行 為 はすでに 法 律 により 禁 じられています。この 遊 水 地 の 使 用 目 的 は 指 定 されていまして、 私 達 が 推 奨 するのは、 草 地 としての 利 用 です。 農 業 用 としては 使 ってはいけないということになっています。【 財 団 】そこは、 民 間 の 土 地 のままで 規 制 されているのですか。- 105 -


【 水 利 経 済 監 督 庁 】 農 地 として 使 ってはいけないというのは、まだ 推 奨 の 段 階 で、 法 律 で決 まってはいません。なるべくなら 草 地 として 使 ってほしいと。その 土 地 は、 元 の 持 ち 主のままですが、その 時 の 市 町 村 から、「その 土 地 を 建 築 用 の 土 地 に」などと 種 々の 指 定 があります。 市 町 村 から、それが 建 築 用 の 土 地 としての 指 定 がない 限 り、もう 建 物 は 建 てる 事ができなくなる 訳 です。ナーエ 計 画 は 動 き 出 してから 10 年 間 になります。いくつのもプロジェクトを 実 行 して、多 数 の 成 功 を 治 めています。しかし 計 画 はまだ 終 わっておりません。これからも 続 けて 投資 していきます。この 数 年 、 様 々なデータが 集 積 されたので、それを GIS で 整 理 し、 様 々な 知 識 を 獲 得 しています。その 目 的 は、 市 町 村 が、その 市 町 村 担 当 の 地 域 に 対 するデータを 得 ることができるということです。また、 浸 食 の 危 険 がある 地 域 や、その 地 域 にある 保 水 の 可 能 性 のある 場 所 を知 ることができます。 表 面 から 流 れ 出 る 方 法 が 十 分 にあるか、 保 水 力 が 十 分 にあるか、 土壌 のタイプなどのデータを 100m 毎 に 評 価 しています。これらのデータをもとに、これからの 対 策 の 計 画 をたてていくことができます。ですからこのようなデータがある 事 で、 私 達官 庁 としては、 保 水 対 策 に 優 位 な 所 とか、 開 発 に 優 位 な 所 などを 推 奨 する 事 ができます。【 財 団 】ナーエ 川 計 画 は 計 画 されてから 10 年 たっていますが、これはエンドレスの 計 画 なのですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 州 の 関 係 省 庁 とですね、これまでのナーエ 計 画 の 収 支 を 見 ました。あと 10 年 間 の 予 定 です。つまり、 今 ちょうど 半 分 終 わったところです。 必 要 な 対 策 は 時 間 がかかります。また、これらは 全 て 任 意 の 対 策 ですで。あと 10 年 この 計 画 を 行 えば、 重 要 である 対 策 の 70%~80%は 実 行 されており、 今 ちょうど、 実 り 始 めています。【 財 団 】 今 後 管 理 するために、データを 何 年 毎 に 更 新 されるのか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 対 策 を 行 われた 所 は、データを 更 新 していきます。【 財 団 】モニタリングをして 行 くということですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 良 い 所 、その 対 策 を 行 われる 所 だけ 新 しくデータを 取 り 出 します。ラインラント 州 全 体 のモニタリングというような 範 囲 の 中 でのモニタリングは 行 います。 全国 そういう 対 策 を 取 って 成 果 を 修 めなければ。たとえば、1 点 とか 点 数 を 付 けて、それで 何点 かわかっても、もっとこれを 改 善 の 余 地 があるなという 事 が 確 認 取 れれば、また 改 善 対策 を 行 います。このデータは、ナーエ 川 流 域 だけのデータではなく、ラインラント・ファルツ 州 全 体 からのデータがこちらにはあります。【 財 団 】 土 壌 に 優 しい 農 業 ですが、 全 く 機 械 で 耕 やさないと 聞 こえたんですが、それでよ- 106 -


ろしいんでしょうか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 耕 運 機 は 使 いません。 農 地 の 上 から 30cm、 上 、 真 ん 中 、 下 と、それぞれの 菌 が 居 ますので、 本 来 下 に 居 るような 菌 を 上 に 反 してやると、 上 の 菌 が 下 に 行 ったりするとまずいという 事 がわかりますので。それと、あと 機 械 が、 農 耕 地 にすでにもう 走 っていると、それによって 土 壌 が 圧 縮 されて 土 壌 中 の 空 気 がなります。これも 良 くないという 事 がわかりました。しかしこれは、 全 ての 農 家 が 受 け 入 れた 訳 ではありません。これは改 革 という 事 でして、 徐 々に 進 めていかなければなりません。それはその 栽 培 者 にもよりまして、うまく 行 くものと、 行 かないものとがあります。【 財 団 】 日 本 でも 試 しにやっている 所 がありますが、 収 穫 量 が 半 分 位 になると 言 われていて、よほどのやる 気 のある 方 でないとできないと 聞 いています。【 水 利 経 済 監 督 庁 】それに 合 う 種 類 と 合 わない 種 類 のものがあります。ラインラント・ファルツの 場 合 は、 中 間 山 岳 部 で、 元 々それほど 生 産 性 の 良 くない 所 ですね。そういう 所 は、どれだけ 手 をかけるか、どれだけ 肥 料 を 使 うかという 事 で、 考 慮 しなくてはなりません。ドイツでは、 環 境 に 優 しい 農 業 を 取 り 入 れたからと 言 って 収 穫 が 半 分 になるという 事 はありません。- 107 -


(2) トリアー 支 所 での 取 り 組 み【 水 利 経 済 監 督 庁 】 名 前 をヨアヒムグーキョと 申 します。私 はここの 支 所 長 をしておりまして、これから、 私 の、この 組 織 につていご 説 明 したいと 思 います。今 回 おいで 頂 いた 理 由 としては、 私 たちがするのアクション・ブラウに 関 心 を 持 たれているという 事 で、みなさん、2 つのプロジェクトを 説 明 をさせて 頂 いた 後 に、 現 場 に 見 に 行くという 形 にしたいと 思 います。2 つのプロジェクトのうち、1 つ 目 は、アイフルの 方 の 地 方 での 少 し 大 きなプロジェクトです。ここは、 魚 が 往 来 できるようにしたという 事 です。もう 1 つのプロジェクトは 自 然再 生 事 業 です。 洪 水 対 策 において、 重 要 な 役 割 を 果 たしています。1) 組 織 の 概 要ではまず、 組 織 のご 説 明 からさせて 頂 きます。図 7.21 アクション・ブラウに 関 わる 組 織ラインラント・ファルツ 州 の 水 管 理 のシステムは 他 の 州 と 同 じように、3 段 階 に 分 かれています。 一 番 上 級 がこれが 林 業 、 環 境 及 び 林 業 省 で 政 治 的 決 断 が 下 されます。 専 門 的な 事 、 助 成 ・ 補 助 金 の 関 係 の 決 断 もこのレベルで 下 されます。その 下 に 2 つの 組 織 があります。1 つが、 水 管 理 並 びに 工 業 の 水 管 理 ができているかの 監 視 する 所 。もう 1 つが、専 門 的 な 事 項 について 助 言 アドバイスする 部 署 です図 の 左 側 の 組 織 は、 助 言 をするというだけで、 他 の 所 に 対 して 何 か 指 示 を 出 したりするという 事 はできません。 工 業 用 水 とかのチェックをするとかの 役 所 ですね。こちらは、助 言 だけをするという。図 の 右 側 の 方 の 組 織 は 構 造 に 関 する 許 可 を 与 える 役 割 をもっています。 北 と 南 の 管 轄というように、2 つに 分 かれています。- 108 -


SGSGB は 水 利 権 に 関 する 決 定 を 下 す 役 所 です。 我 々の 支 所 は SGG の 下 に 置 かれている 役 所 の 1 つになります。我 々の 事 業 について、 説 明 します。我 々の 組 織 の 下 に、その 下 の 郡 を 管 轄 する 所 がありますが、これには 上 からの 決 定 を 実行 するというだけの 組 織 です。GB の 方 はですね、 下 の 組 織 を 監 督 します。我 々の 組 織 は SGB で、その 許 可 を 与 えるという 事 が 主 であって、 実 行 は 別 の 組 織 が 担 当します。下 水 処 理 、 給 水 。これについてはそれぞれの 地 方 公 共 団 体 、あるいはその 地 方 公 共 団 体がその 水 に 関 して 一 緒 に 共 同 となって、 組 織 で 仕 事 は 行 われている 訳 です。河 川 の 維 持 管 理 では、 小 河 川 は 地 方 公 共 団 体 が 担 当 します。もう 少 し 大 きい 河 川 の 場 合はディストリクト 単 位 の 組 織 が、モーゼル 川 などの 大 河 川 は 州 が 直 接 維 持 管 理 に 改 善 をします。 州 の 行 う 河 川 の 維 持 管 理 で、ルクセンブルグであるとか、 国 境 と 接 している 所 の 河川 、 例 えば、モーゼル 川 などの 維 持 管 理 も 大 きな 役 割 の 1 つになっています。 国 境 に 接 している 川 の 所 で 特 殊 な 点 は 契 約 があります。これは、ドイツがまだ 存 在 しなかった 頃 プロイセンであった 時 に 交 わされた 契 約 がありまして、それが、その 両 国 に 接 している 川 についての 管 理 の 取 り 決 めをしています。これらに 接 する 川 に 対 して 何 らかの 措 置 をする 時 には、 全 てルクセンブルクとの 話 し 合 いの 中 で 決 めるという、 措 置 を 取 るという 事 になります。この 両 国 との 関 係 はうまく 行 っておりまして、 本 当 に 機 能 しているというその 証 拠 になると 思 います。もう 1 つの 特 殊 な、 特 記 すべき 点 は、 船 、 船 舶 の 航 行 できる 川 についてです。これは、ドイツの 連 邦 州 国 家 としての 特 徴 を 良 く 表 しているものです。 河 川 に 船 舶 が 通 れるようにするという 事 に 関 してその 責 任 を 持 つのは、それぞれの 州 ではなくて、 国 の 役 割 となります。そのために、これができるようにするために、 国 からの 出 先 機 関 というものがあり、航 海 可 能 な 川 の 拡 張 であるとか 維 持 に 関 しては、それはその 出 先 機 関 が 行 う 事 になっています。 船 舶 の 航 行 と 関 係 のない 川 の 拡 張 とか 維 持 は 州 の 方 の 管 轄 になります。空 間 的 にどういう 区 分 がされているのかという 事 について、ご 説 明 します。- 109 -


図 7.22 水 利 経 済 の 管 轄 範 囲これはドイツの 位 置 、そしてドイツの 中 でラインラント・ファルツ 州 が 位 置 している 地図 です。その 州 と 市 の 管 轄 、 水 の 管 理 は 南 と 北 とに 分 かれます。ここら 辺 を 基 点 にして、北 と 南 という 風 に 分 かれています。SGB の 北 の 方 に 我 々は 位 置 し、その 中 で 支 所 は 3 つあります。1 つ 目 はウォーターバウワー。これは 東 側 ( 図 の 左 側 )にあり、この 範 囲 は 管 轄 しています。 我 々のトリアー 州 は、これを 管 轄 しているのは、ダウエンと、ズィートリッヒ、と 言 った 西 側 を 管 轄 しています。3 つ 目 がコブレンツで、それはその 2 つのウォータバウアーとトリアーとの 間 の 地 域 を 管轄 しています。我 々がこれから 現 場 の 視 察 に 行 く 所 はトリアーの 上 、 北 側 にあるヴィットリッヒという所 で、これは 郡 としては、ベルンカステル・ヴィットリッヒに 属 します。我 々が 工 事 するズィートリッヒなんですけれど、モーゼル 川 の 横 側 にあります。 農 業 的に 見 ると 非 常 に 地 面 が 肥 えた 所 です。これが 自 然 再 生 事 業 をする 時 にはネガティブ 条 件 になるということもあります。- 110 -


2) 事 業 内 容それぞれのプロジェクトとの 説 明 をする 前 に、 我 々の 事 業 を 簡 単 に 説 明 させて 頂 きます。図 7.23 水 利 経 済 カートフ 庁 の 目 的2つ 目 は 定 量 的 な 水 管 理 で、 水 に 関 するデータ。 水 文 学 的 なデータを 把 握 しています。我 々のアクション・ブラウは 2 番 目 の、 今 説 明 している 所 の 担 当 になります。それともう 1 つのここでやっている 重 要 な 仕 事 は、 洪 水 の 方 の 警 報 を 出 すことです。これはモーゼル 川 とザール 川 、ザウアー 川 の 洪 水 の 警 報 を 出 しています。これは、 警 報 と 共 に 予 測を 出 します。これは 特 にモーゼルの 方 で 非 常 に 大 事 になってきます。と 言 うのは、もう毎 年 被 害 が 出 るような 洪 水 がモーゼル 川 で 発 生 しているからです。次 に 地 下 水 の 管 理 です。これは 地 下 水 の 質 、 量 に 関 するマネージメントを 行 います。ここで 大 事 な 事 は、 飲 料 水 の 安 全 確 保 です。ここでやっているのは、ミネラルウォーターの 方 の 管 理 です。ドイツで 作 られているミネラルウォーターの 15%はここので 管 理 がされています。 有 名 なメーカーとしては、ゲロルシュタイナーがあります。たぶん 日 本でも 聞 かれたことがあると 思 います。もう 1 つ 水 と 関 連 の 深 いのは、ビットブルガー 醸造 所 ですね。これはビールのメーカーです。ビットブルガーの 方 の 醸 造 場 について 少 し 説 明 しますと、10 年 前 までは、その 技 術 的な 問 題 から 1 ヘクトリットルのビールを 作 るのに、12 ヘクトリットルの 水 が 必 要 でした。- 111 -


現 在 は、その 水 とビールの 関 係 が、5 対 1 になっています。これはビットブルガー 醸 造 所が 技 術 開 発 をしたというそういう 事 になります。ビール 成 分 だけではなく、 設 備 やビンを 洗 浄 する 水 が 多 かったのを 減 らしたためです。また、ビットブルガー 醸 造 場 では、トリアーの 中 で 一 番 大 きな 下 水 処 理 場 を 操 業 しています。それが 4 番 目 の 役 割 は 下 水 の 処 理 です。これは 質 的 に 良 い 下 水 処 理 をするという 事 が大 事 なポイントになってきます。これには、 生 活 用 水 の 下 水 処 理 だけではなくて、 工 業用 水 の 処 理 というものも 含 まれています。 研 究 所 があり、これがきちっと 処 理 されていたかどうか、 常 時 監 視 はされています。もう 1 つの 我 々の 仕 事 は、 廃 棄 物 の 処 理 と 土 壌 の 保 全 です。これは 土 壌 に 含 まれている 汚 染 、 昔 から 残 留 している 汚 染 が 取 り 除 かれているかどうかということなどの 監 視 も含 まれています。【 財 団 】 下 水 処 理 と 水 供 給 については、 州 ではなくて、 市 町 村 が 処 理 をしていますが、州 の 政 府 は、 下 水 処 理 と 水 防 事 業 をやっていないということでよろしいですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 我 々は 水 道 管 とかが 敷 設 される 場 合 に、その 草 案 というものを 確 認します。それで 許 可 を 与 え、その 後 それが、 計 画 どおりに 施 工 できているかの 監 視 をします。これが 我 々の、 州 の 方 の 役 割 になります。【 財 団 】 先 ほどの 維 持 管 理 について。 地 方 河 川 の 管 理 をするという 組 織 がありました。それはどういう 組 織 なんでしょうか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】それは 市 町 村 が 集 まって、 共 同 団 体 ( 水 利 組 合 )を 作 っています。【 財 団 】 地 下 水 の 水 質 を 監 督 するためには 情 報 が 必 要 です。その 情 報 は、 誰 が 取 るんですか。 水 質 については、 州 の 政 府 がチェックしてるんだと 思 います。 日 本 では 事 業 体 が水 質 データを 出 して、 上 位 の 組 織 にと 伝 えるのというやり 方 ですが、ここではどんな、どういう 風 にデータを 取 ってるんですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 研 究 所 でチェックしているのは、 下 水 道 の 水 質 データだけです。 飲料 水 は 地 方 自 治 体 の 方 で 自 己 管 理 しています。そのデータを 元 に 保 健 所 が、データを 健康 の 面 からチェックします。 我 々はそのデータを 保 健 所 と 共 有 しています。3) アクション・ブラウの 事 業 ( 堰 の 改 築 )リーザー 川 はモーゼル 川 の 重 要 な 支 流 です。リーザーの 全 長 は 60km。それからアイフェル 海 抜 550m の 所 を 水 源 とし、 海 抜 150m の 箇 所 でモーゼル 川 に 合 流 しています。リーザー 川 は 過 去 に 水 力 発 電 のために 非 常 に 利 用 されていまして、 約 20 の 堰 が 設 けられていました。このリーザープロジェクトの 中 で、この 堰 は 全 て 改 修 され、 水 田 まで 魚 が 全 て 遡 上 できるようになっています。それと 共 に、 暗 渠 の 改 修 も 行 われております。- 112 -


その 前 にですね、ちょっと 冊 子 であるこの 地 図 の 中 で 見 られる、この 地 域 の 事 をちょっと 簡 単 にご 説 明 して 行 きたいと 思 います。冊 子 についてちょっと 一 言 申 し 上 げたいと 思 います。この 冊 子 、 非 常 に 手 のかかった作 り 方 をされています。この 理 由 は、 初 めてやる 理 想 のプロジェクト 自 体 を 未 踏 の 地 という 事 で、 人 々の 関 心 。 地 方 自 治 体 を 含 めた 人 々の 関 心 を 集 めようという 事 で 作 られました。この 冊 子 はですね、 専 門 的 な 情 報 、 観 光 客 向 けの 情 報 という 一 般 に 向 けたわかりやすい 情 報 も 一 緒 にまとめられています。リーザー 川 はモーゼル 川 と、 火 山 地 帯 であるアイフェルを 結 ぶ、 非 常 に 重 要 な 役 割 を果 たしています。今 日 、これからご 覧 に 入 れるのは、このズュートリッヒの、2 つの 改 修 された 2 つの 堰です。1 つ 目 が、 北 側 にありますビュルガービアという 所 。それともう 1 つが、ロイミューレという。それ 南 側 の 方 にあります。これが 元 の 堰 の 姿 です。 発 電 所 の 堰 でこれはまだ 稼 動 していまして、パン 屋 さんに電 力 を 供 給 しています。 電 力 を 供 給 しているために、 堰 を 取 り 除 く 事 はできませんでした。しかし、 元 の 姿 を 見 てみますと、 完全 に 魚 は 全 然 上 に 遡 上 できないような 形 態になっていました。図 7.24 改 築 前 の 魚 道- 113 -


図 7.25 改 築 後 の 魚 道これが 現 在 の 姿 です。 魚 が 通 れるような 階 段 状 の 魚 道 が 作 られています。これが、 機能 しているという 事 は、 私 の 子 供 がここで 魚 を 取 る 事 ができましたので、それで 証 明 されていると 思 います。図 7.26 全 面 魚 道 タイプへの 改 築- 114 -


これはまた 別 の、 完 全 に 違 うタイプのものです。スペースとあと 航 海 の 関 係 上 ですね、ここではスロープをつくることができました。スロープの 真 ん 中 の 所 に、 水 位 が 低 くなった 場 合 でも、 魚 が 遡 上 できるような 仕 組 みになっています。図 7.27 図 7.28 の 空 中 写 真スロープが 機 能 しているという 事 。これが 上 の 方 から 見 る 事 ができます。一 つ 目 の 現 場 をご 覧 になるとですね、コンクリートが 多 様 に、 非 常 に 多 く 使 われているという 事 で、ちょっと 失 望 されるかもしれません。これは、 地 形 上 やむを 得 ませんでした。図 7.28 自 然 石 による 魚 道- 115 -


これは 最 初 の 事 例 と 同 じタイプの 物 ですが、こちらはコンクリートを 使 わず 自 然 な 形で 作 り 上 げられた 物 です。こちらの 方 をお 見 せしたかったんですけれども。ここは 少 し 離 れた 所 にあり、 長 い 距離 を 歩 いて 頂 かないと 辿 り 着 けないという 所 なので、やむを 得 ず 今 回 はお 見 せする 事 はできません。これらの 費 用 ですが、2,000,000 ドイツマルク。ユーロに 換 算 して 1,000,000 ユーロになります。その 内 、50%は EU からの 補 助 金 です。20%はその 付 近 に 点 在 している 地 方公 共 団 体 のお 金 です。その 残 りは、ラインラント・ファルツ 州 が 出 すという 形 になります。【 財 団 】 堰 の 再 自 然 化 という 事 で、 大 きな 石 を 使 って、 魚 道 をつくられています。この 石の 大 きさ、 配 置 、 形 というのは、 水 理 学 的 に、 流 体 学 的 と 言 った 方 がいいのかな。そういう 検 討 をなさってからこういう 設 計 をしたのか。 経 験 則 でこのくらいの 石 ならばうまくいくだろうなという 事 でこの 設 計 をしたのか。そこを 教 えていただきたい。【 水 利 経 済 監 督 庁 】まず 一 番 ベースとなるガイドラインというものがあります。これは 経験 則 に 基 づくものです。 次 ぎに 魚 を 遡 上 させたいのかという、 魚 種 の 選 定 ですね。 石 については 掃 流 力 によって 判 断 する 事 ができます。その 大 きさについては、どの 大 きさというんのではなく、 石 のクラスが 決 まっていて、それよより 石 を 決 めています。【 財 団 】 石 のクラス 毎 に、 例 えば 流 速 3m まで 流 されませんよとかね、5m まで 流 されませんよとか。そういう 基 準 のようなものがあるのでしょうか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 掃 流 力 と 限 界 掃 流 力 の 関 係 から 石 を 選 んでいます。この 仕 事 の 作 業 の中 で、 一 番 大 事 になるのは、ショベルカーのオペレータです。このショベルカーのオペレータが 何 がどうなされているのかという 事 を、 経 験 を 踏 まえた 上 でで、 何 故 これをやるのかというを 認 識 していなければなりません。オペレータがそのように 解 っていれば、 事 業が 成 功 したも 同 じです。- 116 -


4) アクション・ブラウの 事 業 ( 遊 水 地 )2 つ 目 のプロジェクトです。ビーバーバッハシャフテンクラウプロジェクトと 言 うのが 正 式 名 称 です。ビーバーバッハシャフテンクラウベンは、リーザー 川 の 支 流 になります。ここの 流 れている 流 域 は、 私 が 住 んでいる 所 でもあり、そのためには 今 、 非 常 に 情 熱 を 注 いでいるプロジェクトでもあります。定 年 するまでには、このプロジェクトを、 終 わっているというのが 私 の 願 いです。 今 のところ、 進 捗 状 態 は、それに 向 かっている 所 です。現 場 の 川 底 にはコンクリートが 使 われ、 生 物 は 住 んでいませんでした。その 川 の 構 造 的 に、レベルが 何 段 階 かに 分 かれていますが、そのランクは 最 低 のランクに 位 置 していました。これから 行 く 所 は、 再 自 然 化 された 所 ですが、この 以前 の 姿 とは 全 く 違 うと 驚 かれるだろうと 思 います。図 7.29 計 画 説 明 のパンフレット遊 水 地 となっていまして、この 遊 水 地 が 設 けられた 事 によって、リーザー 川 流 域 の 洪 水の 危 険 性 というものが 非 常 に 低 くなりました。 遊 水 地 ができる 前 は、3 年 に 1 回 は 冠 水 していました。 理 論 上 は、 遊 水 池 が 作 られたという 事 によって、8 年 に 1 回 位 しか 冠 水 しないと 考 えられます。 数 字 に 表 れない 効 果 、その 効 果 を 加 えると、10 何 年 に 1 回 位 の 割 合 でしかその 冠 水 しないだろうと 思 います。図 7.30 過 去 の 状 況- 117 -


図 7.31 現 在 の 状 況図 7.32 将 来 の 目 指 すべき 姿これは 昔 の 姿 ですね。 右 側 を 見 ると 解 りますが、 森 林 の 状 態 です。これでは 有 機 物 やバクテリアが 住 む 事 ができないような 構 造 ・ 土 壌 でした。真 ん 中 がですね、 今 日 の 姿 なんですけども。それは 伐 採 され。 一 番 右 は、 今 後 あるべき姿 として 我 々が 目 指 している 姿 になります。 残 念 ながら、ここはお 見 せする 事 ができません。と 言 いますのも、 重 装 備 をして 行 かないと 行 けない 所 だからです。このプロジェクトは、 一 般 に 対 しての PR のように 行 われています。その 冊 子 を 作 成 するにあたってもですね、これは 写 真 の 方 に 2 人 の 女 の 子 が 写 っています。この 2 人 がこの 冊 子 を 作 りました。この 冊 子 を 作 るというプロジェクトは、 若 者 が 調査 ・ 研 究 するという 大 会 がりまして、そこに 出 展 されました。 小 学 生 を 対 象 とした 小 川 の里 親 制 度 をやっていいますが、それを 私 の、 我 々の 方 とも 連 携 してやっています。- 118 -


子 供 を 含 めて、このプロジェクトに 対 しては、認 識 がされています。その 皆 さんから 非 常 に 多くの 理 解 、 協 力 を 得 ています。このプロジェクトについては、 論 文 が 書 かれていまして、 学 生の 論 文 ですが、 河 川 、 水 のエコロジー、 生 態 系が、これが 非 常 に 改 善 されたという 事 が、その論 文 にも 書 かれています。これは、このプロジェクトが 理 解 されているという 事 です。 昔 はそれこういったプロジェクトに 批 判 的 であった 農 業 従 事 者 からも 積 極 的 にこのプロジェクトに 関 っていて、そういうことからも 理 解 されている 事 がわかります。プロジェクトが 終 了 した 暁 には、25,000,000図 7.33 パンフレットを 作 成 した 生 徒 ユーロかかるという、 見 通 しが 立 っています。財 政 源 はビットリッヒ 市 、その 周 辺 の 市 町 村 団体 。 第 三 者 からもまた、 補 助 金 や 助 成 金 が 得 られないかという 算 段 をしています。例 えば、 自 然 保 護 の 基 金 などから、そのお 金 を 得 られないかと 考 えています。 自 然 保 護その 他 の 分 野 からもお 金 を 取 る 事 によってですね、 水 管 理 に 出 せる 最 大 60%のお 金 。それまで 行 かなくても、 他 の 所 からもお 金 を 取 るという 事 ができるだろうと 見 ています。【 財 団 】この 2 人 はどういう 経 緯 で 選 ばれたのですか。【 水 利 経 済 監 督 庁 】 私 どもは、 色 んな 学 校 で、 不 定 期 に 授 業 を 持 っています。その 関 係 で、この 2 人 の 先 生 と 知 り 合 いになりまして、その 先 生 のクラスで 何 かできないかという 話 を持 ちかけられたのです。この 2 人 の 女 の 子 は 生 物 と 化 学 の 水 質 の 検 査 などの 自 主 研 究 をやっていました。この 写 真 が 出 された 大 会 に 出 るという 事 で、 先 生 と 話 をしました。 理 科 、 化 学 、 生 物 という 観 点 だけでなく、 社 会 学 的 な 点 から 何 かできないかということになり、この 冊 子 を 作るに 至 りました。例 えば、この 女 の 子 達 が 行 ったことは、 学 校 でプロジェクトについて 展 示 をし、 展 示 をする 前 と 後 で、 一 般 の 人 がどれだけ 知 るようになったかという、 変 化 を 調 べました。それと 同 じようにこのパンフレットを 作 った、 作 る 前 と 以 後 。その 中 でのプロジェクトがどういう 風 に 浸 透 して 行 ったかという 事 。その 過 程 を 彼 女 達 は 調 べました。その 結 果 ですが、パンフレットには 何 ももたらさない、 何 の 効 果 もないという 事 がわかりました。つまりパンフレットを 作 るという 形 の PR というのは 有 効 ではないと。- 119 -


その 代 わりに、 彼 女 達 が 調 べた 結 果 では、 小 川 の 里 親 制 度 が 行 われているでは、そのプロジェクトについて 良 く 知 られており、 協 力 がされている、より 協 力 が 得 られるという 結果 が 出 ています。それから 得 た 私 達 の 結 論 は、 子 供 達 にこういった 自 然 について 何 かを 知 らしめるには、まず 大 人 がやるしかないということです。その 反 対 に、 子 供 が 驚 くことによって、 大 人 がさらに 先 に 進 めてくという 連 鎖 反 応 もあります。何 をやっているかという 事 を 知 らしめて 行 くという 事 は 大 事 ですが、 我 々が 重 点 においているのは、 小 学 校 の 子 供 達 にいかにこのプロジェクトを 伝 えて 行 くかという 事 です。 一番 伝 えてて 楽 しいのは、 子 供 達 と 一 緒 に 河 川 に 行 って、 何 かを 教 えたりするという、それが 一 番 楽 しい 時 です。- 120 -


8. 現 地 視 察 調 査我 々 調 査 団 は、 欧 州 における 河 川 の 現 状 ( 整 備 状 況 )を 把 握 するため、 主 にドイツ 内 の 河川 において 現 地 調 査 を 行 いました。調 査 地 は、 地 図 等 より 河 川 にできる 限 り 近 寄 ることができる 場 所 を 選 定 しました。( 図 8.1)以 下 に、ドナウ 川 、マイン・ドナウ 運 河 、レグニッツ 川 、マイン 川 における 河 川 の 状 況 を 紹介 します。またその 他 ドイツにおける 取 り 組 み 事 例 を 若 干 紹 介 します。マイン 川バンベルクマイン・ドナウ 運 河ドナウ 川ウルムミュンヘン図 8.1 視 察 箇 所 図(1)ドナウ 川 (ドイツ/ウルム)ウルムは、ドナウ 川 の 上 流 域 にある 小 さな 街 で、 街 の 中 心 地 には 高 さ161mの 大 聖 堂 があします。その 大聖 堂 の 上 からドナウ 川 を 眺 めると、ドナウ 川 は、エンジ 色 の 屋 根 が 多 くある 街 を 横 断 しているのが 見 えます。( 図 8.2)図 8.2- 121 -


両 岸 の 川 沿 いには、 樹 木 が 茂 り、 林のような 中 を 川 が 流 れています。( 図8.3)ドナウ 川 沿 いには 城 壁 があり、その城 壁 の 天 端 は 住 民 の 憩 いの 場 や 散 歩 の場 に 使 用 されています。( 図 8.4,8.5)痕 跡 水 位 を 記 録 したものが 城 壁 に 残されていました。( 図 8.6)図 8.3図 8.4 図 8.5洪 水 記図 8.6図 8.7高 水 敷 には、 自 転 車 道 、 散 歩 道 が 整 備 され、また 所 々に 高 木 が 植 樹 され、 公 園 が 整 備 されています。( 図 8.7,8.8)図 8.8- 122 -


ドナウ 川 の 水 際 に 近 づいて 見 ると、低 水 護 岸 ( 石 積 み)が 施 されており、中 小 洪 水 対 策 を 行 っていることが 分かります。 川 の 流 れを 目 測 したところ、 流 速 は 1.5m/s 程 度 でありました。( 図 8.9)流 速 約 1.5m/sドナウ 川 の 水 面 では、ボートや 渡せ 舟 が 行 われています。( 図8.10,8.11)図 8.9図 8.10 図 8.11ウルムの 街 中 にはドナウ 川 支 川 の 小 川 があり、 川 と 街 並 みとが 一 体 となった 街 の 景 観 が 見られます。( 図 8.12)また、 階 段 上 に 落 差 工 が 施 されています。( 図 8.13)図 8.12 図 8.13- 123 -


(2)ドナウ 川 (ドイツ/ギュンツブルク)ウルム 市 内 よりドナウ 川 に 沿 って 下 流 へと 約 20km 移 動 し、ギュンツブルクにほど 近 い 現場 を 視 察 しました。図 8.14 は 高 水 敷 であり、 天 端 には 道 が 整 備 され、 人 や 自 転 車 や 馬 が 通 行 できるようになっています。その 高 水 敷 は 樹 木 が 多 く 茂 っていますが、 道 沿 いは 雑 草 が 生 い 茂 ることもなく、適 切 に 維 持 管 理 がされているようでした。( 図 8.14,8.15)図 8.14 図 8.15河 川 敷 に 水 位 計 が 確 認 され、その 近 くに 水 位 標 が 設 置 されています。( 図 8.16,8.17)図 8.16図 8.17- 124 -


河 床 材 料 は 砂 から 比 較 的 大 きな 礫 まで 見 られます。( 図 8.18)低 水 護 岸 には 石 積 みが 施 されており、 侵 食 対 策 が 行 われています。この 護 岸 を 見 る 限 りかなり 以 前 に 施 工 されているように 見 えます。( 図 8.19)図 8.18図 8.19(3)マイン・ドナウ 運 河 (ドイツ/バンベルク)ここはバンベルクという 小 さな 街 で 世 界 文 化 遺 産 にも 指 定 されており、 旧 市 街 地 は 旧 皇 帝 、大 司 教 居 城 都 市 の 歴 史 ある 街 です。また、 旧 市 街 地 を 流 れるレグニッツ 川 にはリトル・ベニスとも 呼 ばれる 風 光 明 媚 なところであります。このマイン・ドナウ 運 河 は、その 名 通 り 黒 海 に 流 入 するドナウ 川 と 北 海 に 流 れ 出 るライン川 支 川 であるマイン 川 をつないでいる 運 河 であり、ここバンベルクは 運河 とマイン 川 が 合 流 しているところであります。マイン・ドナウ 運 河 は、 航 路 としての 役 割 をもっており、 橋 梁 の 桁 には 就 航 用 標 識 が 設 置 されています。( 図 8.20) 調 査 時 にも 比 較 的 大 きな貨 物 船 が 運 行 している 状 況 が 見 られました。( 図 8.21,8.22)( 図 8.20)- 125 -


図 8.21 図 8.22河 岸 の 根 元 部 分 には 最 近 施 工 されたと 思 われる 捨 石 護 岸 が 見 られました。( 図 8.23,8.24)この 対 策 の 主 な 目 的 は、 航 路 用 の 運 河 であるため 船 舶 が 運 行 しているときに 発 生 する 波 から河 岸 を 守 ることであります。 実 際 、 現 地 でも 波 が 発 生 していることが 確 認 できました。図 8.23 図 8.24運 河 の 高 水 敷 には、 自 転 車 道 ・ 歩 道 が 整 備 され、また 種 々の 樹 木 が 植 樹 されており 住 民 の憩 いの 空 間 として 役 割 をもっています。( 図 8.25)他 の 街 でも 見 られましたが、 高 水 敷と 同 様 に 一 般 道 においても 白 線 により歩 道 と 自 転 車 道 が 明 確 に 分 けており、自 転 車 は 車 と 同 様 に 右 側 通 行 となっています。 歩 行 者 が 自 転 車 専 用 道 を 歩 いていますと 自 転 車 利 用 者 より 警 笛 を 鳴らされることがありました。図 8.26 は、 地 元 の 児 童 が 通 学 している 状 況 の 写 真 でありますが、 白 線 の 左側 が 自 転 車 専 用 道 であり、 児 童 は 自 然図 8.25- 126 -


とその 場 所 を 避 けて 歩 いているように 見 えます。これは、 習 慣 付 いたものでしょうか。 当 然のことながら、 自 転 車 利 用 者 は 右 側 通 行 を 徹 底 していました。日 本 でもこのような 整 備 されたところが 多 くありますが、ここまで 徹 底 されて 利 用 されてはいないように 思 われます。自 転 車 道図 8.26- 127 -


(4)レグニッツ 川 (ドイツ/バンベルク)レグニッツ 川 には、リトル・ベニスと 呼 ばれる 多 くの 観 光 客 が 訪 れます。その 昔 は 漁 師 の町 で、 川 沿 いには 民 家 が 張 り 付 き 直 接 魚 を 荷 揚 げできるような 構 造 になっています。( 図8.27,8.28)( 図 8.27)以 前 、この 旧 市 街 地 は 多 くの 洪水 被 害 があったそうで、 川 沿 いの住 民 の 方 も「 以 前 は 度 々 浸 水 被 害があった」と 話 していました。その 洪 水 による 水 位 跡 が 家 屋 の 壁 に数 ヵ 年 分 記 録 されていました。( 図8.29)その 後 、 上 流 部 に 設 置 された 水 門 により 洪 水 被 害 がほとんどなくなったとのことです。図 8.28洪 水 記 録図 8.29- 128 -


リトル・ベニス旧 市 庁 舎図 8.30図 8.30 は 街 中 の 書 店 に 展 示 されていたバンベルクの 古 図 です。 現 在 の 川 の 姿 とほとんど 変 わっていないようです。 橋 の 市 庁舎 とも 呼 ばれる 旧 市 庁 舎 は 今 も 変 わらないで 状 況 です。( 図 8.31)図 8.31- 129 -


(5)マイン 川 (ドイツ/バンベルク 下 流 )バンベルク 市 近 くの 下 流 部 のマイン 川 です。 現 地 調 査 時 にちょうどバンベルク 内 で 運 行 していた 貨 物 船 が 閘 門 を 通 過 している 状 況 が 見 られました。( 図 8.32,8.33)図 8.32 図 8.33図 8.45 では 閘 門 下 流 部 の 河 岸 は 土 羽 のように 見 えますが、 草 木 で 覆 われた 中 に 石 積 みが 施工 されている 状 況 が 見 られます。( 図 8.34,8.35)図 8.34図 8.35- 130 -


図 8.36 はきれいに 整 備 された 広 い 高 水 敷 が 見 られます。また 河 川 沿 いは 河 畔 林 が 確 認 できました。( 図 8.37)図 8.36 図 8.37(6)その 他その 他 、ドイツにおける 取 り 組 み 事 例 を 紹 介 します。図 8.38 はミュンヘンを 流 れるイザール 川 に 架 かる 橋 梁 であり、その 歩 道 部 は 間 伐 材 を 使 用して 整 備 されているように 思 われます。また、バイエルン 州 のアルトミューレでは、 橋 梁 自 体 が 木 材 でできており、 周 辺 環 境 に 配慮 しています。( 図 8.39)そのブロムバッハの 展 示 施 設 棟 も 周 辺 環 境 と 一 体 化 するように、 屋 根 等 を 多 くの 緑 で 覆 っていました。( 図 8.40)図 8.38- 131 -


図 8.39展 示 施 設 棟図 8.40- 132 -


9. 河 川 事 業 への 取 り 組 みを 調 査 してまえがきで 述 べたとおり、 本 調 査 では 水 系 の 管 理 ・ 自 然 再 生 に 関 する 思 想 的 ・ 社 会 経 済的 背 景 とその 運 営 に 焦 点 を 絞 った。そこで 得 られた 知 見 としては、 大 まかに 分 けて 以 下 の5 点 に 整 理 される。(1) ドナウ 水 系 管 理 における 国 際 的 枠 組 みの 運 営 (ウィーン)ドナウと 黒 海 の 水 質 ・ 洪 水 ・ 環 境 管 理 や 水 質 事 故 対 策 を 進 めるため、 各 国 政 府 から 人 材を 集 めたICPDRが1994 年 に 発 足 して 成 果 を 上 げていることがわかったが、 驚 くのは、 国 により 経 済 力 に 大 差 がある 中 で、 国 内 の 産 業 が 規 制 されかねないにも 関 わらず、13カ 国 もが 参 加 していることである。 恐 らく、 一 方 的 な 規 制 でなく 意 見 調 整 や 技 術 的 資 金的 サポートから 徐 々に 進 めていることと、EUの 補 助 金 の 存 在 が 大 きいと 思 われる。しかし、 今 後 東 欧 経 済 が 上 向 いた 際 の 水 質 維 持 、 黒 海 へ 流 入 する 他 河 川 (ドニエプル 川 ・ドン 川 )の 水 質 対 策 、などの 課 題 もあり、とりくみの 真 価 が 試 されるのはむしろこれからであるとも 言 える。また、ICPDRと 関 連 して、 水 質 シミュレーションの 国 際 学 術 プロジェクト「ドナウプロジェクト(daNUbe Project)」にも 流 域 内 外 の17 機 関 が 協 力 している。 多 くの 協 力 が得 られていることについて、 前 述 の 東 欧 崩 壊 の 他 「EUから( 環 境 保 全 を 重 視 した 施 策 に重 点 的 に) 補 助 金 が 出 る( 資 金 の50%がEUから)」「 昔 から( 対 立 はしつつも) 東 西 を結 ぶ 川 に 沿 って 住 民 の 交 流 があり、そのつながりがあったために 自 然 に 参 加 出 来 たのでは」、「 委 員 会 では 英 語 で 議 論 するので 話 がシンプルになり、 合 意 しやすくなったのでは」との私 見 を 述 べられた。(2) ドイツでの 大 規 模 公 共 事 業 の 進 め 方 とミチゲーション(アンスバッハ)マイン-ドナウ 送 水 プロジェクトは、1 北 ドイツの 水 不 足 解 消 と 発 電 2ドナウ 川 支 川 のアルトミュール 川 の 治 水 3 雇 用 創 出 の3つを 目 的 として 約 30 年 かけてバイエルン 州 によって 実 施 された。我 々は3つある 中 継 ダムの1つ、ブロムバッハ 湖 を 視 察 したが、 雇 用 創 出 とミチゲーションを 非 常 に 重 視 していた。雇 用 創 出 については、ダム 湖 周 辺 の 土 地 も 買 収 して 道 路 や 遊 歩 道 、 観 光 センター(レストラン、 船 着 場 、 水 浴 場 、シャワー 施 設 、 遊 覧 船 )も 州 で 建 設 した。 民 間 のホテルも 建 ち、夏 には 大 勢 の 観 光 客 が 日 光 浴 と 水 浴 を 楽 しみ、 雇 用 はプロジェクト 全 体 で3000 人 に 上るという。ニーズに 合 った 活 性 化 策 を 行 えた 好 例 ではあるが、ヨーロッパは 休 暇 も 長 く 観光 の 市 場 が 大 きいことが 背 景 にあると 思 われる。ミチゲーションについては、 反 対 する 関 係 者 とプロジェクト 開 始 当 初 (30 年 前 )から長 い 間 話 し 合 いを 行 い、 信 頼 関 係 を 築 き 一 緒 にプロジェクトを 作 っていったという。 結 果- 133 -


として 指 摘 があれば 計 画 変 更 も 厭 わずに 行 うこととなり、 創 出 した 湿 地 を 水 位 変 動 から 守るために 湖 内 ダムを 作 ったり、 立 ち 入 り 禁 止 区 域 を 作 るなどの 対 策 を 行 っていた。 日 本 でも 同 様 な 取 り 組 みは 始 まっているが、ここまで 徹 底 した 例 はないのではないか。また、 周 辺 一 帯 の 再 自 然 化 が 徹 底 されアースダム 堤 体 は 自 然 なアンジュレーションがついており 植 樹 までされていたこと、 堤 体 除 草 の 替 わりに 羊 に 食 べさせていることが 興 味 深い。 後 者 は 日 本 でも 可 能 性 があるのではないか。(3) 再 自 然 化 の 動 機 と 手 法 (バイエルン 州 ・ラインランドファルツ 州 )両 州 の 担 当 者 に 話 を 聞 くと、すべての 再 自 然 化 事 業 は 実 は 治 水 事 業 と 同 時 に、 遊 水 地 造成 や 引 堤 等 で 出 来 たスペースを 利 用 して 行 われていた。そのような 事 業 が 成 り 立 つのは、ここ30 年 ほど 穀 物 が 余 り 気 味 になって 農 地 価 格 が 下 落 したため、 高 い 堤 防 を 作 るより 土地 を 買 って 引 堤 したほうが 安 上 がりになる、という 合 理 的 理 由 からであった。(もちろん、治 水 中 心 だからといってそれら 事 業 の 価 値 はいささかも 減 じることはなく、 治 水 と 環 境 をより 高 次 でバランスさせたすばらしい 事 業 である)。ともすれば「ドイツでは 環 境 のためだけに 公 共 事 業 を 行 っている」と 思 いこみがちだった 我 々にとって、その 実 情 を 明 確 に 知 ることができたのは 大 きな 収 穫 であった。 土 地 の 高 い 日 本 で 同 じことが 出 来 なくても 当 然 で、日 本 に 合 った 事 業 をしていけばよいのである。また 水 害 保 険 や 建 築 禁 止 区 域 など、 日 本 では 見 られない 治 水 対 策 の 実 情 を 知 ることができた。また、 前 項 のブロムバッハ 湖 と 同 じく、ミュンヘン 市 街 を 流 れるイザー 川 も 観 光 客 が 多く、 夏 には 河 原 に 所 狭 しと 日 光 浴 客 が 並 ぶとのことである。また、 州 としても「Guided Tour」を 頻 繁 に 行 うなど、 川 に 人 を 集 めることを 重 視 している。 結 果 として 川 に 対 する 関 心 も 日本 とは 比 べ 者 にならないほど 高 く、 治 水 事 業 への 市 民 からの 意 見 も 多 いとのことである。一 方 ラインランドファルツ 州 では 中 小 河 川 の 再 自 然 化 に 取 り 組 んでいるが、やはり 治 水が 主 目 的 であった。また、ドナウ 川 と 同 じく、 再 自 然 化 事 業 にEUの 補 助 金 が 付 くことが事 業 を 進 める 力 になっている。 中 小 河 川 の 流 域 はほとんどがブドウ 畑 などになっていて、川 沿 いの 用 地 買 収 ( 遊 水 池 兼 ビオトープの 造 成 )や 土 壌 流 出 対 策 などを 進 める 上 で 農 家 との 連 携 が 重 要 になっていた。組 織 については、 両 州 とも 河 川 管 理 、 農 業 振 興 、 地 下 水 管 理 などを 同 じ 組 織 で 行 っており、 地 価 下 落 以 後 は 連 携 がうまくいっているとのことである。 小 河 川 (3 級 河 川 と 称 する)は 市 町 村 管 理 で、 州 はアドバイスや 調 査 をするだけで 決 定 権 限 がない。すなわち 縦 割 りの弊 害 は 少 なく、 自 治 体 への 権 限 委 譲 は 伝 統 的 に 十 分 なされている。EU 補 助 金 がインセンティブになって 施 策 を 方 向 づけているようである。 一 方 、 大 河 川 の 管 理 は 連 邦 交 通 省 が 行っていて、 航 路 管 理 が 重 視 されるあまり 再 自 然 化 は 進 んでいない。- 134 -


(4) 河 川 や 運 河 の 管 理 状 況 (ドナウ 川 ・ライン 川 沿 川 )視 察 した 範 囲 ではドナウ 川 もライン 川 も 掘 り 込 み 河 道 が 多 く、 水 際 まで 古 くからの 建 物が 建 て 込 んでいる 街 が 多 く 見 られた。 古 い 煉 瓦 づくりの 壁 の 所 々に「○○○○( 年 号 )Hochwasser」と 過 去 の 洪 水 位 の 記 録 が 残 っている。 出 水 があっても 流 速 が 小 さく 街 が 破 壊されないようである。また、コンクリートの 護 岸 は 全 くなく、 捨 石 が 多 い。また 土 砂 供 給の 関 係 か、いわゆる 裸 地 はなく、 水 面 から 遊 歩 道 や 森 をはさんで 堤 内 地 へ 直 接 つながっている。 洗 掘 箇 所 もなく、 雑 草 の 極 端 な 繁 茂 もなく 管 理 状 況 は 良 好 であり、 川 沿 いに 多 くの人 がハイキングを 楽 しんでいる。マイン・ドナウ 運 河 も 状 況 は 同 様 である。 例 外 は 比 較 的上 流 にあたるイザー 川 で、 真 っ 白 な 河 原 が 特 徴 的 である。ここは 改 修 中 で、 川 幅 を 広 げて隠 し 護 岸 を 設 置 している。(5) 国 立 研 究 機 関 の 概 要 (コブレンツ)連 邦 の 機 関 なので、 連 邦 が 管 理 する 水 路 のみについて 研 究 やアドバイス・ 鑑 定 を 行 っている。 水 文 や 水 質 、 河 川 生 態 の 研 究 のほか、 航 路 維 持 が 大 きなテーマとなっていた。 重 金属 汚 染 対 策 (データ 蓄 積 と 勧 告 、 国 際 組 織 (IKSR)への 協 力 )、 堰 による 回 遊 魚 の 減 少対 策 ( 魚 道 設 置 や 水 質 改 善 )、 深 掘 れや 土 砂 堆 積 対 策 ( 測 量 、シミュレーション、 対 策 検 討( 水 制 など))が 大 きな 研 究 テーマとなっていた。また、 再 自 然 化 の 目 標 について、「 社 会 が 負 担 できる 範 囲 で 行 う」と 答 えていたのが 印 象的 であった。ライン 川 の 堰 や 発 電 所 を 取 り 除 いてまで( 航 行 やエネルギーの 利 便 性 を 失 ってまで) 再 自 然 化 を 行 う 予 定 はなく、 少 しでも 良 くなれば 良 しとする、という 明 快 な 答 えに 研 究 所 や 政 府 の 自 信 を 感 じた。- 135 -


あとがき年 度 末 の 忙 しい 中 で 調 査 団 団 員 の 努 力 で 本 報 告 書 が 作 成 されました。 報 告 のつたない 点や 説 明 不 足 のあること 重 々 承 知 していますが、お 許 し 願 いたいと 思 います。 最 後 に、われわれの 訪 問 を 快 く 受 け 入 れて 下 さった 関 係 機 関 に 深 謝 したいと 思 います。調 査 団 一 同平 成 17 年 3 月 30 日


【 入 手 した 資 料 リスト】1) ドナウプロジェクト 関 連‣ DONAUHOCHWASSERSCHUTZ WIEN‣ FLOOD CONTROL ON THE DANUBE VIENNA2) 連 邦 水 理 研 究 所‣ 4/2003 VeranstaltungenImpounded Rivers in Germany Water Management and Ecological Interactions‣ Federal Institute of Hydrology3) バイエルン 州‣ Bavaria, land of water‣ Bavaria, A piece of happiness‣ Überleitung Donau-Main‣ Stauseen in Bayern‣ Wasser für Franken „Die Überleitung“‣ TALSPERREN-NEUBAUAMT NÜRNBERG TNA Die Vogelwelt des FränkischenSeenlandes‣ TALSPERREN-NEUBAUAMT NÜRNBERG TNA Kunstwerke an den Fränkischen Seen‣ Umweltkompetenz in einer Hand‣ Hochwasserhandbuch‣ WASSERRECHT BAND30‣ SOUNDERDRUCK Wasser-und Abwasserabgabengesetzemit nachgeordneten Vorschriften‣ Flusslandschaft Isar‣ Hinweise zur Deichverteidigung und Deichsicherung‣ Lernort Gewässer‣ Gemeinsam für unsere kleinen Gewässer Arbeitshilfen Teil2‣ SpektrumWasser 1 Howasser Naturereignis und Gefahr‣ SpektrumWasser 3 Wildbäche Faszination und Gefahr‣ SpektrumWasser 4 Flüsse und Bäche Lebensadern Bayerns‣ Überleitung Donau-Main‣ WASSERWIRTSCHAFT 23‣ Hochwasservorsorge in Deutschland “Lernen aus der Katastrophe 2002 imElbegebiet”,Januar2004(ドイツ 災 害 対 策 委 員 会 )‣ バイエルン 陽 気 な 南 ドイツ‣ バイエルン- 未 来 と 伝 統 の 州 -4) アクション・ブラウ 関 連


‣ Hochwassermeldungen in Rheinland-Pfalz‣ Das neue Landesamt für Umwelt,Wasserwirtschaft und GewerbeaufsichtRheinland-Pfalz-LUWG‣ Leben am Strom‣ Hochwasserrückhalt‣ Hochwasserhandbuch‣ Gewässer Struktur Güte 2000‣ Das Naheprogramm Bilanz 1994-1999‣ Wiederherstellung der ökologischen Durchgängigkeit‣ Aktion Blau im Wittlicher Tal Bachauenkonzept Bieberbach-Schattengraben‣ Drei große Herausforderungen der Wasserwirtschaft‣ 長 期 的 視 野 による 洪 水 防 御 指 針 洪 水 - 原 因 と 結 果 ,LAWA- 作 業 部 会 ,1995 年 5 月

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!