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報文 教材としての原生動物(3)―ゾウリムシⅡ

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Jpn. J. Protozool. Vol. 38, No. 2. (2005) 127と、 培 養 液 が 白 濁 している 状 態 から 透 明 になるので容 易 に 判 別 できるが、 接 合 可 能 な 期 間 は 透 明 になって 2 ~ 3 日 の 間 である。図 18 分 裂 回 数 と 接 合 能 力 の 関 係ば 簡 単 にできると 思 っている 方 々も 多 いのではないか。 正 直 なところ、 今 から 15 年 ほど 前 にはじめて 接合 型 の 異 なる 株 を 山 口 大 学 の 藤 島 政 博 先 生 より 分 けていただき、 接 合 実 験 に 挑 戦 しようとしたとき、 筆者 はそのように 思 っていた。 先 生 からの 親 切 なアドバイスにもかかわらず、 株 の 維 持 や 接 合 実 験 に 失 敗したのは、 接 合 条 件 を 十 分 に 理 解 していなかったためだ。「 意 外 と 難 しいものだな」とそのとき 感 じた。その 後 、 宮 城 教 育 大 学 の 見 上 一 幸 先 生 から 再 びParamecium caudatum の 接 合 型 の 異 なる 野 生 株 と 接 合実 験 に 有 用 な 変 異 株 を 譲 り 受 けることができ、 失 敗を 繰 り 返 しながらも 何 とか 計 画 的 に 実 験 を 組 めるまでになったいきさつがある。接 合 実 験 を 経 験 して 思 ったのは、この 実 験 の 成 否は 培 養 にあるということである。なぜそうなのか、まずは、 接 合 がおこる 条 件 を 整 理 しておきたい。接 合 の 起 こる 条 件接 合 を 誘 導 するためには、1 互 いに 相 補 的 な 接 合型 の 2 株 であること、2それぞれの 株 が 性 的 に 成 熟期 にあること、3 数 日 間 さかんに 分 裂 ・ 増 殖 をした後 、 飢 餓 状 態 にあることの 3 つの 条 件 をすべて 満 たす 必 要 がある。1については、P. caudatum では 16 のシンジェン( 同 質 遺 伝 子 個 体 群 )が 知 られており、そのうち 研 究者 の 間 で 保 存 されているのはシンジェン 1、3、12、13 のみである。それぞれのシンジェン 内 の 相 補 的 な接 合 型 は O と E の 2 つで、たとえばシンジェン 1 の場 合 は O1、E1、シンジェン 3 の 場 合 は O3、E3 のように 示 され、O1 - E1 は 接 合 するが、O1 - E3 は 接合 しない。2については、 図 18 のように、 接 合 後50 回 以 上 分 裂 しないと 成 熟 しないので、いわばヒトの 青 年 期 や 成 人 期 にあたるゾウリムシを 用 意 する 必要 があるということである。また、3については、接 合 能 力 の 発 現 は 培 養 液 中 の 餌 の 有 無 と 密 接 な 関 係があり、 餌 を 摂 取 し 分 裂 でどんどんと 増 殖 している状 態 ( 対 数 期 または 対 数 増 殖 期 という)では 接 合 能力 がなく、 餌 を 食 べ 尽 くし 分 裂 をしなくなった 状 態( 定 常 期 という)になって 初 めて 接 合 能 力 を 発 揮 するのである。バクテリアを 食 べつくして 定 常 期 に 入 る株 の 入 手 と 培 養野 外 から 接 合 する 株 を 採 取 し 分 離 することは 可 能であるが、 単 離 操 作 や 無 菌 化 など 難 しい 作 業 もある。また、 通 年 にわたる 株 の 維 持 も、 年 に 1 度 や 2度 の 実 験 のためだけとなると 大 変 な 手 間 である。したがって、 実 験 をしようとする 少 し 前 から 余 裕 のある 計 画 を 立 て、 大 学 等 の 研 究 機 関 から 株 を 少 し 分 けてもらい、 培 養 してから 実 験 にかかるのが 現 実 的 である。 株 を 分 譲 してもらえる 情 報 は、ウェッブサイト「 原 生 生 物 情 報 サーバ」や「 見 上 研 究 室 」から 得ることができる。培 養研 究 機 関 などから 入 手 した 株 は、たいてい、ただ1 種 のバクテリアを 餌 として 与 え、それ 以 外 の 雑 菌が 混 入 しないようにして 維 持 されていたものである。 外 からの 雑 菌 のために 培 養 及 び 実 験 を 失 敗 することがあるので、 培 養 操 作 はクリーンベンチや 無 菌箱 、あるいは 空 気 の 落 ち 着 いた 室 内 で 素 早 く 行 う 必要 がある。学 校 でよく 用 いられる 稲 わら 培 養 液 は、 研 究 者 の間 では 生 理 実 験 でよく 利 用 するが、 遺 伝 実 験 ではレタスジュース 培 養 液 が 一 般 的 である。レタスジュース 培 養 液 の 作 り 方 については、 研 究用 の 方 法 もあるが( 樋 渡 ・ 茗 原 1982、 山 田 ・ 山 極1980、 見 上 ・ 小 泉 1977)、ここでは 簡 便 な 方 法 を 紹介 する( 見 上 1987)。まず、 家 庭 用 のジューサーでレタスジュースを 作 り(ミキサーの 場 合 は 8 枚 重 ねのガーゼでろ 過 )、 小 型 容 器 に 小 分 けしてフリーザーに 入 れ 凍 結 して 保 存 する。 使 用 の 際 にイオン 交換 水 ( 軟 水 の 市 販 ミネラルウォーターや 煮 沸 した 水道 水 でもよい)で 20 ~ 40 倍 に 希 釈 し、オートクレーブ 滅 菌 器 で 滅 菌 (121℃、20 ~ 30 分 )し、 冷 却後 、 白 金 耳 でバクテリアを 少 量 加 えて 1 日 置 いてから 使 用 する。オートクレーブ 滅 菌 器 がない 場 合 は、家 庭 用 圧 力 釜 を 利 用 するか、 水 浴 で 煮 沸 滅 菌 する。バクテリアを 接 種 した 培 養 液 は 1 ~ 2 日 以 内 に 使 用する。なお、バクテリアは 株 と 同 時 に 分 譲 してもらうと 好 都 合 だが、バクテリアを 接 種 しなくても、 送られてきた 試 料 のなかに 混 在 するバクテリアが 増 殖するので、 実 験 は 可 能 である( 増 殖 率 や 接 合 能 はやや 劣 る)。 猪 狩 (1992)は、これに 代 わる 簡 便 な 培養 液 として、 流 動 のカロリーメイト 缶 ( 大 塚 製 薬 )による 培 養 液 (カロリーメイトを“ 六 甲 のおいしい水 ”で 0.1%に 希 釈 ―これは 水 500 ml にカロリーメ

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