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パルスマグネットを 用 いたイオン 液 体 中 での 化 学 反 応 の 磁 場 効 果 測 定<br />
Magnetic field effects on the photochemical reaction in ionic liquids as studied by pulsed magnet<br />
埼 玉 大 学 大 学 院 理 工 学 研 究 科 浜 崎 亜 富 、 若 狭 雅 信<br />
Atom Hamasaki, Masanobu Wakasa<br />
Graduate School of Science and Engineering, Saitama University<br />
物 質 ・ 材 料 研 究 機 構 高 増 正 、 木 戸 義 勇<br />
Tadashi Takamasu, Giyuu Kido<br />
National Institute for Materials Science<br />
Abstract:<br />
Ionic liquids, which are considered as one of the most promising new solvents in the green chemistry, have gained much<br />
attention, because of their unusual chemical properties: non-volatile, non-corrosive, non-flammable, air and moisture-stable,<br />
and designable. To the best of our knowledge, however, there is no report on the magnetic field effects (MFEs) in ionic<br />
liquids We recently studied the MFEs in ionic liquids by means of a nanosecond laser flash photolysis technique. Large and<br />
anomalous MFEs were observed under high magnetic fields.<br />
Keywords: Ionic liquids, Isotropic g-factor, Anisotropic g-factor, Magnetic field effect, Laser flash photolysis, Pulsed magnet<br />
E-mail: a.hamasaki@chem.saitama-u.ac.jp, mwakasa@chem.saitama-u.ac.jp<br />
1. はじめに<br />
化 学 反 応 の 磁 場 効 果 (MFE) は 約 30 年 以 上 に 渡 り 研<br />
究 が 行 われ, 実 験 的 , 及 び 理 論 的 な 解 析 が 進 められてき<br />
た. 我 々が 注 目 するラジカル 対 機 構 においては, 超 微 細<br />
相 互 作 用 機 構 (HFCM) やΔg 機 構 (ΔgM), 及 び 緩 和 機<br />
構 (RM) による MFE が 知 られ,これらについても 多 く<br />
の 研 究 が 行 われてきた.<br />
一 方 でイオン 液 体 は, 従 来 の 分 子 性 液 体 とは 全 く 異 な<br />
る 特 徴 を 持 ち, 近 年 注 目 されている. 塩 の 水 溶 液 などと<br />
は 異 なり, 塩 のみで 構 成 されるが, 融 点 が 室 温 付 近 にあ<br />
り, 常 温 において 液 体 状 態 で 存 在 している.イオン 間 の<br />
強 い 静 電 相 互 作 用 により 高 い 熱 的 安 定 性 を 示 すほか, 高<br />
粘 性 (10 1 -10 3 cP), 高 極 性 (アルコール 程 度 の 誘 電 率 )<br />
といった 特 徴 を 持 つ.イオン 液 体 は, 既 に 一 般 的 な 有 機<br />
化 学 反 応 , 分 離 や 抽 出 に 対 する 試 みがなされ, 反 応 場 と<br />
して 概 して 安 定 であると 言 われている.<br />
イオン 液 体 はカチオン 部 とアニオン 部 で 構 成 され, 液<br />
体 状 態 でもナノクラスターのようなドメイン 構 造 を 持<br />
つことが 示 唆 されている.しかしその 詳 細 は 未 だ 明 らか<br />
ではない.そこで,イオン 液 体 中 と 従 来 実 験 が 行 われて<br />
きた 分 子 性 溶 媒 中 (アルコール 系 溶 媒 中 )で,ラジカル<br />
の 拡 散 やケージ 効 果 などに 注 目 して MFE の 実 験 を 行<br />
い, 化 学 反 応 の MFE をプローブとしてイオン 液 体 の 構<br />
造 に 関 する 検 討 を 行 った.<br />
2. 実 験 方 法<br />
a) 水 冷 式 パルスマグネット<br />
強 磁 場 の 発 生 には, 銅 銀 製 コイルと 125 kJ コンデン<br />
サバンクを 使 用 した. 磁 場 発 生 空 間 は 直 径 20 mm,<br />
長 さ 160 mm で,3000 V の 充 電 によりコイル 中 心<br />
部 で 28 T の 発 生 を 確 認 した.( 使 用 上 の 最 高 磁 場 ).<br />
なお, 磁 場 発 生 空 間 を 常 温 で 使 用 するため, 冷 却 は<br />
ビッター 型 による 水 冷 方 式 を 採 用 した.<br />
b) 過 渡 吸 収 測 定 装 置<br />
上 記 のパルスマグネット 中 でのナノ 秒 過 渡 吸 収 測 定<br />
が 可 能 となるよう, 装 置 を 構 築 した. 励 起 光 には<br />
Nd:YAG レーザー (355 nm) を 用 いた.モニター 光<br />
として 用 いた Xe フラッシュランプ 光 はレンズで 石<br />
英 製 光 ファイバーに 集 光 し,マグネット 中 心 部 に 設<br />
置 した 石 英 セルに 導 入 した. 透 過 光 も 石 英 製 光 ファ<br />
イバーで 分 光 器 に 導 き,PMT で 検 出 した. 測 定 精 度<br />
の 向 上 のため,モニター 光 のダブルビーム 化 , 溶 液<br />
のフローシステム 化 ,および 構 成 機 器 のプログラム<br />
(LabVIEW) による 総 括 制 御 を 行 った.<br />
c) 試 料<br />
ベンゾフェノン (BP), 及 びチオフェノール (PhSH)の<br />
濃 度 は,それぞれ,2.0×10 -2 M,1.2×10 -1 M, とした.<br />
溶 媒 のイオン 液 体 は,N,N,N-Trimethyl-N-propyl-ammonium<br />
bis(tri- fluoromethanesulfonyl) imide (TMPA TFSI, η =<br />
72.6 cP (296 K)) である。また, 比 較 の 高 粘 性 溶 媒 に<br />
は 2-メチル-1-プロパノールとシクロヘキサノールの<br />
1:50( 質 量 比 ) 混 合 溶 媒 (η = 55.3 cP) を 用 いた. 測<br />
定 は 全 て 296 K で 行 った.<br />
3. 実 験 結 果 と 考 察<br />
本 反 応 のスキームは 次 のとおりである.<br />
BP + hv (355 nm) 1 BP * + 3 BP *<br />
3 BP * + PhSH 3 (BPH・・SPh)<br />
3 (BPH・・SPh) 1 (BPH・・SPh)<br />
1 (BPH・・SPh) recombination products<br />
3,1 (BPH・・SPh) escaped radicals<br />
(eq. 1)<br />
(eq. 2)<br />
(eq. 3)<br />
(eq. 4)<br />
(eq. 5)<br />
1 BP* と 3 BP* は BP の 励 起 一 重 項 および 励 起 三 重<br />
項 状 態 を 表 す. 1 (BPH••SPh), 3 (BPH••SPh) はそれぞ<br />
れベンゾフェノンケチルラジカル(BPH•)とフェニルチ<br />
イルラジカル(•SPh)からなる 一 重 項 および 三 重 項 ラジ<br />
カル 対 である.レーザーにより BP を 励 起 すると 項 間<br />
交 差 により 3 BP* が 生 成 し (eq 1),PhSH からの 水 素<br />
引 き 抜 き 反 応 により, 3 (BPH••SPh) が 生 成 する (eq 2).<br />
ベンゾフェノンの 励 起 三 重 項 状 態 は 525 nm 付 近<br />
に 非 常 に 強 い 三 重 項 − 三 重 項 (T-T) 吸 収 を 持 つ.また,<br />
ベンゾフェノンケチルラジカルは 380, 及 び 545 nm<br />
付 近 に,フェニルチイルラジカルは 450 nm に 吸 収 極<br />
大 を 持 つ.ベンゾフェノンケチルラジカルのモル 吸 光<br />
係 数 は 比 較 的 小 さいので,これらを 考 慮 して 磁 場 効 果<br />
の 測 定 は 380 nm で 行 った.(アルコール 系 溶 媒 中 で<br />
の 測 定 では 545 nm).<br />
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