GTL最新動向 - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

GTL 最 新 動 向- 再 びトラブルに 見 舞 われたOryx I プロジェクト-2007 年 6 月 20 日調 査 部鈴 木 信 市11.SasolのカタールOryx I プロジェクト(1/81/8)‐2007.5.22HPにてにてSasol社 が 公 表 したこと( 大 意 )‐)• プロセスのFTユニットで 想 定 以 上 のfine materialが 生 成 。これが、 生 産 量 を 制 約 している。• fine material 生 成 したいくつかの 推 定 原 因 は 特 定 されている。• 生 産 量 回 復 のために、 追 加 装 置 を2008 年 中 旬 までに 設 置する 予 定 。 追 加 装 置 は 発 注 済 。• fine materialの 生 成 量 が 減 少 するまで、Oryx Iプラントの 生産 量 は 限 定 されたものになる。• 今 後 、 適 時 、 状 況 は 報 告 していくが、 少 なくとも2007 年 9 月のSasol 社 の’year end results presentation’には 報 告 を 行う。• *なお、Sasol 社 の 南 ア 市 場 の 株 価 は、この 報 告 直 後 、5%強 下 落2

1.SasolのカタールOryx I プロジェクト(2/82/8)‐Sasol社 のchief のexecutive 等 が 業 界 紙 のインタビュー 等で 報 告 したこと‐• 現 在 の 生 産 量 は、 能 力 の25% 程 度 で、7,000‐10,000b/D• このトラブルは、いわゆる 初 期 トラブル 以 上 の 問 題• 追 加 装 置 の 設 置 には、 数 千 万 ドルかかる。この 対 処は、 現 象 に 対 する 対 処 であって、 原 因 に 対 する 対 処ではない。• Sasol 社 は、 根 本 原 因 を 調 査 しているが、まだ 何 かいえる 状 態 には 無 い。したがって、いつ 解 決 できるかも分 からない。• Sasol 社 としては、 触 媒 に 原 因 は 無 い、と 信 じている。• このトラブルは、Sasol 社 が 追 求 しているその 他 のGTL、CTLプロジェクトには 影 響 を 与 えない。31.SasolのカタールOryx I プロジェクト(3/83/8)-カタール 及 びラスラファン 工 業 地 区 -カタールラスラファン 工 業 地 区将 来 GTLPearl• Oryx I( 出 典 : 千 代 田 化 工 資 料 )(RLICパンフレットに 追 記 )4

1.SasolのカタールOryx I プロジェクト(5/85/8)• Oryx Iプロジェクト– 2006.6 プラント 稼 動 開 始 宣 言• コミッショニング 開 始 の 模 様• 2006.9 生 産 開 始 予 想– コミッショニング 中 種 々のトラブル 発生• スーパーヒータの 破 損• 工 業 用 水 不 足• その 他 ( 未 公 表 )– 2007.1 末 製 品 生 産 開 始• 当 初 予 定 (2005 年 末 )より13ヶ 月 遅 延– 2007.4 末 製 品 初 出 荷• First cargo 3 万 トン( 約 20 万 bbl)• 販 売 先 不 明– プラント 稼 働 状 況• FT 反 応 器 2 基 により 稼 動• 生 産 量 7,000‐10,000b/D( 能 力 の25% 程 度 )‐ 内 容 及 び 経 緯 ‐上 流GTL 事 業ガス 田North Fieldガス 田 オペレータExxonMobil(Al Khaleeg Gas Project)GTL プラントへのガス 供 給 方 プラント 渡 し式GTL プラントへのガス 供 給 量 330MMCFDその 他-プラント 場 所GTL 事 業 者生 産 規 模生 産 時 期現 在 のプロジェクトの 段 階GTL 投 資 金 額CAPEX/bbl/DファイナンスEPC コントラクター製 品製 品 市 場Ras Laffan コンビナートQP51%/Sasol49%34,000b/d2007 年 1 月 末 < 出 荷 開 始 :2007 年 4 月 末 >生 産 中898-932 百 万 ドル( 一 説 には 950 百 万 ドル)27,900 ドル /bbl/d700 百 万 ドルRoyal Bank of Scotland を 中 心 とする 15 銀 行 団Technip-Coflexip契 約 額 675 百 万 ドル(その 後 725 百 万 ドルに 変 額 )ディーゼル:24,000 b/dナフサ:9,000 b/dLPG:1,000 b/d軽 油 : 欧 州 、ナフサ:アジア51.SasolのカタールOryx I プロジェクト(7/87/8)FTスラリー 床 反 応 器触 媒 とliquid( 生 成 物 ・ 溶 媒 )との 分 離 が非 常 に 重 要 なノウハウ分 離 が 十 分 でないと、 後 段 の 水 素 化 分解 触 媒 被 毒 / 生 成 物 に 触 媒 がコンタミする 恐 れ‐ 推 定 :Oryx:Oryxで で 何 が 起 こったのか?‐鉱 油 中 に 触 媒 が 懸 濁 。合 成 ガスのバブルが液 中 を 上 昇 する 間 に 高級 炭 化 水 素 に 転 換 。 除熱 ・ 温 度 均 一 性 に 優 れた 反 応 器FT 反 応 器温 度 :250℃ 程 度圧 力 :20 気 圧 程 度• Fine materialの 候 補– カーボン(ATRからの 流 入 )– 副 生 成 物– 触 媒 砕 片• 触 媒 砕 片 生 成 理 由– 反 応 器 側 :FT 反 応 器 内 の 異 常 流による 触 媒 への 想 定 以 上 のストレス– 触 媒 側 : 触 媒 強 度 不 足• 工 業 触 媒 製 造 の 失 敗• 触 媒 設 計 ミス• 追 加 装 置 とは:Fine materialとliquidとの 分 離 を行 う 固 液 分 離 装 置 の 追 加 か?6

1.SasolのカタールOryx I プロジェクト(8/88/8)‐トラブルの 程 度 と 影 響 ‐• トラブルの 程 度– ケミカルプラントにおいては、 運 転 初 期 におけるトラブルはつきもの– 但 し、Sasolが 今 回 の 異 例 の 発 表 をしたことは、 事 態 の 深 刻 さを 示 している 可 能 性 あり• トラブルの 影 響– Oryx 向 けガス• 原 料 ガスのTake or Pay 等 の 契 約 条 件 は、 不 明• Dolphin PLプロジェクトへの 供 給 で 対 応– カタール 政 府 ・QP• 本 件 については、 沈 黙• 同 国 のGTL 戦 略 、ノースフィールドの 他 のGTLプロジェクトへの 影 響 は 不 可 避– Sasolの 他 のGTL・CTLビジネス• 影 響 なし、と 主 張– ShellのPearl GTLプロジェクト• FT 反 応 器 が 固 定 床 であること、 触 媒 は100%in-houseで 開 発 製 造 するとして、Sasolとの 違 いを 強 調• オンスケジュールで 進 んでいる 旨 、 言 及– GTLへのファイナンサー• GTLのファイナンスに 際 して、 完 工 保 証 の 重 要 性 を 認 識– GTLプロジェクト• 最 も 経 験 があるSasolの 度 重 なるトラブルは、 現 時 点 でのガスマネタイゼーションツールとしてのGTLの 評 価 に 悪 影 響72.ConocoPhillips社 の 方 針 転 換• 同 社 は、オクラホマ 州 Ponca cityにて、 以 下 のプロセスの 技 術 開 発– 合 成 ガス:CPOX、FT:Co 系 触 媒 を 使 用– 400b/Dデモプラント 実 験 を 実 施• 2003.12. カタールでのGTLプロジェクト(16 万 b/D)の 意 向 表 明• 2006.12. カタールでのGTLプロジェクトからの 撤 退 表 明• 同 月 Manager of business development GTL,Colin McHattie 氏 談– 現 時 点 では、GTLに 関 しては、クリアーなビジネスが 見 えない。 他 社 のGTLビジネスを 見 守 る。LNGにより 軸 足 を 移 す• GTLは、ガスマネタイズの 手 段 として、LNG、PLに 次 いで3 番 目• 現 在 は 経 済 性 確 保 が 困 難• また、 経 済 性 を 確 保 しようとしてスケールメリットを 追 求 すると、 投 資 額 があまりに莫 大• 2007.3 Chairman and Chief Executive Jim Mulva 氏 談– GTLプロジェクトの 推 進 を 中 止 。コスト 上 昇 が 理 由– 同 社 は、その 代 わり、coal, bitumen, pet coke 等 を 原 料 とするガス 化 +FTベー 8スのプロセスに 専 念 。

4.SonatrachのアルジェリアTinrhertGTLプロジェクト• プロジェクト 概 要– 油 ガス 田 開 発 :ウェットガス 田 ・ 油 田 開 発 等– GTLプロジェクト:36,000b/D( 最 終 的 には 拡 大 して6.5 万 b/D )– GTLプラント 場 所 はArzewが 有 力– 予 想 合 計 コスト:30 億 ドル• 2005.4 アルジェリア 政 府 がテンダー 開 始 。次 の3 社 (チーム)が 入 札 を 表 明– Statoil/BHP/PetroSA– Shell– SasolChevron(Sonatrach HPより 転 載 )• その 後 、 以 下 の 会 社 が 経 済 性 を 理 由 に 入 札 意 向 を 撤 回– Shell– BHP• アルジェリアのエネルギー 鉱 山 大 臣 であるChakib Khelil 氏 は、 以 下 発言 (2007.4.8 @ Gas exporting Countries Forum)– アルジェリアは、Tinrhert GTLを 止 める 決 定 をするかもしれない– 理 由 は、3.6 万 BDのGTLプロジェクトがあまりに 高 すぎるからだ。115.ChevronのナイジェリアEscravosGTLプロジェクト• プロジェクト 概 要– ChevronとNNPCが 実 施 する 随 伴ガス300MMCFDを 利 用 して、OryxIと 同 等 のプロセスにて、GTLを34,000b/D 生 産 するプロジェクト(10 年 以 内 に100,000b/Dへの 拡 張計 画 あり)– 稼 動 開 始 予 定 :2009 年 12 月 か• 現 状– 建 設 中 (コントラクター:KBR)– 32% 完 成 @2006 年 末 (2007.4NNPCのgroup managing directorKunso Kupolokum 氏 談 )– 但 し、 地 元 労 働 者 の 暴 動 等 に 見 舞われ、 度 々 中 断 。( 各 種 資 料 より 作 成 )12

6. 要 旨 及 びImplicationびImplication(1/2)• Sasolが 実 施 するカタールOryx GTLプラントは、2007 年 1月 末 より 商 業 稼 動 に 入 り・4 月 末 にファーストカーゴの 出荷 を 行 ったが、トラブルに 見 舞 われ、 設 計 能 力 3.4 万 b/Dの25% 程 度 の7,000‐10,000 b/Dしか 生 産 していない。Sasolによると、この 原 因 は、FT 工 程 における 想 定 以 上のfine material 生 成 にあるというが、fine materialが 何 であるかを 同 社 は 言 及 していない。 同 社 は、 fine material生 成 の 原 因 を 追 求 中 であるという。 同 社 は、とりあえずの対 応 策 を 発 表 するとともに、 fine material 生 成 量 が 減 少しない 限 り、 設 計 能 力 生 産 はできない、としており、フル生 産 の 想 定 可 能 時 期 についても 言 及 していない。• 本 件 の 真 相 如 何 によっては、 対 応 に 時 間 がかかり、 同 プロジェクトに 深 刻 な 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 もある。• GTLに 深 い 経 験 を 持 つSasol 社 のカタールOryx GTLプラントに 関 わる 度 重 なる 不 手 際 は、 今 後 の 短 期 的 なGTLビジネスの 展 開 に、 悪 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 がある。136. 要 旨 及 びImplicationび(2/2)• プロジェクト 実 施 が 期 待 されていたアルジェリアのTinrhert GTLプロジェクトは、 同 国 のエネルギー 鉱 山 大臣 の 発 表 によれば、 中 止 の 可 能 性 が 高 くなっている。また、 独 自 のGTLプロセスを 開 発 し・カタールでGTLビジネスを 実 施 しようとしていたConocoPhillipsは、 方 針 転 換 を行 い、ガスマネタイズに 関 してはLNG 等 旧 来 方 法 を 優 先し、ガス 化 FTに 関 してはCoal・Pet coke 等 を 原 料 とするもので 行 うとして、カタールのGTLビジネスから 撤 退 することを 発 表 した。いづれも、その 理 由 は、 最 近 のCAPEXの上 昇 により、プロジェクトによる 利 益 を 見 込 むことができなくなったため、としている。 産 ガス 国 及 び 石 油 会 社 双 方からのこのような 表 明 は、GTLビジネスの 想 定 されていた 進 展 が、 短 期 的 には 困 難 になっていることを 暗 示 している。• 一 方 、GTL 技 術 ・ビジネスのリーダーの1つであるShellは、カタールのPearl GTLプロジェクトを 予 定 通 りに 進 めるとし、 順 調 に 作 業 を 進 捗 させている 模 様 である。14