木村剛『竹中プランのすべて』 このＰＤＦは FinePrint pdfFactory 試用版 ...

書 評 : 木 村 「 竹 中 プランのすべて」( 最 終 )
ことではないだろう。そのことは、 外 務 省 や 旧 厚 生 省 などの 不 祥 事 を 思 い 出
せばよい 11 。
木 村 は、 最 終 の 第 5 章 で「 竹 中 新 3 原 則 」(3つのS)にも 触 れて、「 日 本
はラストチャンスをものにできるか」を 問 う 12 。そこでも、 同 じくこの「 信
頼 」 問 題 の 重 要 性 が 強 調 される。すなわち、「 ポ イントとなるのは、 銀 行 や 銀
......
行 経 営 者 以 上 に 重 要 であり、 今 回 の『 金 融 再 生 プログラム』の 真 のターゲッ
ト . になっている 方 々です。… 一 番 重 要 なことは、 彼 らが( 金 融 庁 官 僚 - 引 用
者 )『 信 頼 』を 回 復 できるか 否 か-これに 尽 きるのです。そのためには、『 不
作 為 という 名 の 作 為 』を 即 刻 やめなければなりません」( 342 頁 、 傍 点 は 引 用
者 )と。
こうして、まさに「 金 融 庁 の 掟 を 打 ち 破 れるか」、 これが 竹 中 プランの 行
方 を 左 右 する 重 要 なカギといえる。
5 ディスクロージャー50 年 史 と 竹 中 プラン-「 会 計 の 精 神 」-
米 国 では、すでに 述 べたように 昨 年 7 月 、エンロン 事 件 やワールドコムの
破 綻 を 契 機 に 大 恐 慌 以 来 、およそ 70 年 ぶりの 市 場 改 革 と 言 われる「 企 業 改
革 法 」(サーベンス・オクスレー 法 )が 成 立 した。 米 国 の 会 計 ・ 監 査 のあり 方
も、この 企 業 改 革 法 の 規 制 強 化 で 大 きく 変 わろうとしている 13 。
一 方 、わが 国 の 会 計 ディスクロージャーは 米 国 の 占 領 下 、その 米 国 証 券 法 、
証 券 取 引 法 をいわば 強 制 的 に 押 しつけられる 形 で 導 入 された( 昭 和 23 年 )。
その 後 、 規 制 強 化 と 規 制 緩 和 の 左 右 に 揺 れながら、いくつかの 段 階 を 経 て 今
日 に 至 っているが 14 、そのディスクロージャー 史 からみれば 今 日 は「 会 計 ビ
ッグバン」に 象 徴 されるように、これまでにないきわめて 大 きな 変 革 期 に 直
面 している。その 背 後 に、 会 計 基 準 の 国 際 的 統 合 化 (convergence)の 大 波 が
押 し 寄 せている 15 。
11 この 官 僚 の「 不 作 為 という 名 の 作 為 」は、 司 馬 遼 太 郎 が 常 に 批 判 していた「 英
雄 的 自 己 肥 大 」なる 病 に 通 じる。また、これも 司 馬 がよく 持 ち 出 す 夏 目 漱 石 の 小
説 『 三 四 郎 』での、( 三 四 郎 が「 日 本 はどうなるんですか」と 聞 くと) 広 田 先 生
の「 日 本 は 滅 びるね」というくだりを 想 起 させる。
12 平 成 15 年 1 月 7 日 、 竹 中 大 臣 は 新 年 の 決 意 ( 竹 中 新 3 原 則 )を 述 べているが、
実 は、そ こ に 今 回 の「りそなショック」の 引 き 金 が 暗 示 されている。その 意 味 で、
今 回 の 銀 行 実 質 国 有 化 は 予 期 されていたともいえる。なお、「3つのS」とは 戦
略 性 (Strategic), 健 全 性 (Sound), 誠 実 性 (Sincere)の3つの 視 点 であり、その
視 点 から 銀 行 の 経 営 計 画 のより 厳 しいチェックの 方 針 が 示 されている。 詳 しくは、
前 掲 HP「 時 事 会 計 入 門 講 座 」(No.19「りそなショックと 厳 正 監 査 」) 参 照 。
13 この 企 業 改 革 法 は、 米 国 資 本 市 場 の 規 制 の 骨 格 をなす 1933 年 の 証 券 法 、SE
Cの 設 置 、1934 年 の 証 券 取 引 法 など、 大 恐 慌 時 代 に 成 立 した 資 本 市 場 の 土 台 の
大 幅 な 改 革 の 性 格 をもつ。 詳 しくは、 評 者 のHP「 時 事 会 計 入 門 講 座 」(No.20
「 企 業 改 革 法 と 会 計 ・ 監 査 」) 参 照 。
14 わが 国 の 会 計 ディスクロージャー 史 については、いくつかの 発 展 段 階 がある。
例 えば、 吉 村 光 威 『ディスクロージャーを 考 える』( 日 本 経 済 新 聞 社 、1991 年 )
では、ディスクロージャーの 日 本 史 を4つの 時 期 に 区 分 している。すなわち、○ⅰ
米 国 方 式 を 占 領 下 で 導 入 ( 昭 和 23 年 の 証 取 法 制 定 )、 ○ⅱ その 反 省 で 規 制 緩 和 ( 昭
和 28 年 証 取 法 改 正 から 昭 和 46 年 の 証 取 法 改 正 まで)、 ○ⅲ 証 券 不 況 、 粉 飾 決 算 事
件 などを 経 て 再 整 備 ・ 強 化 ( 昭 和 63 年 の 証 取 法 改 正 以 前 まで)、 ○ⅳ 国 際 化 へ 歩 み
寄 りながら 発 展 ( 昭 和 63 年 の 証 取 法 改 正 より)である。
15 会 計 基 準 に 加 えて 監 査 基 準 、コーポレート・ガバナンスの3つの 国 際 的 統 合
化 が 進 展 している。 会 計 規 制 の 国 際 化 の 意 義 と 問 題 点 については、 拙 稿 「 時 価 会
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