ジャガーマガジン – 第8号
最新号では、ブラジルの優美なマーシャルアーツ「カポエイラ」を深く掘り下げました。さらに、新旧カルチャーの融合に挑むアイルランドのアーティストや、ビクトリアン様式の壁紙からiPhoneへとつながるデザインストーリーにも興味をお持ちいただけるでしょう。その他、俳優兼パフォーマーとして活躍する、リズ・アーメッドの素顔に迫ります。
最新号では、ブラジルの優美なマーシャルアーツ「カポエイラ」を深く掘り下げました。さらに、新旧カルチャーの融合に挑むアイルランドのアーティストや、ビクトリアン様式の壁紙からiPhoneへとつながるデザインストーリーにも興味をお持ちいただけるでしょう。その他、俳優兼パフォーマーとして活躍する、リズ・アーメッドの素顔に迫ります。
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JAGUAR MAGAZINE<br />
ファイティングアート<br />
ブラジルのマーシャルアーツ、<br />
カポエイラの 精 神 を 探 る 旅<br />
第 8 号<br />
Issue<br />
N o 8<br />
注 目 のスター<br />
俳 優 、ラッパー、ファッションアイコン。<br />
多 彩 な 才 能 を 発 揮 する、リズ・アー メッド。<br />
そのスター 性 と 素 顔 、<br />
飽 くなき 挑 戦 心 に 迫 ります<br />
音 楽 と 文 化 の 街<br />
ジャガーF-PACE SVR<br />
で 、 アイル ランド<br />
沿 岸 の 人 気 スポットを<br />
訪 ねました
目 次<br />
第 8 号<br />
22<br />
16<br />
今 号 の 内 容 を<br />
ご 紹 介 します。<br />
62<br />
問 題 を 解 決 するために 創 造 的 に 考<br />
え 、 行 動 で きる の は 、 人 間 だ け で す。<br />
規 模 の 大 きさにかかわらず、 個 人 の<br />
内 面 に 訴 えることや 何 百 万 人 もの<br />
人 に 影 響 を 与 えること が で きます。<br />
今 号 のJaguar Magazineで は 、 創<br />
造 性 にあふれる 人 物 たちを 取 り 上<br />
げています。 何 世 紀 も 前 にカポエイ<br />
ラの 優 雅 な 技 を 考 案 したブラジル<br />
の 名 人 たち、エメラルドの 島 の 野 生<br />
の 海 岸 で 新 旧 の 文 化 を 融 合 させる<br />
アイル ランド の ア ー ティスト。そして 、<br />
英 国 の 今 を 代 表 するスター、 俳 優 で<br />
ありミュージ シャン のリズ・アーメッ<br />
ド。 彼 の 才 能 に 限 界 は 存 在 しない<br />
ようです。<br />
他 には、ビクトリアン 様 式 の 壁 紙<br />
からiPhoneに 至 るまでの 創 作 の<br />
変 遷 、 世 界 のグルメがいま 注 目 する<br />
「 酸 味 」についてご 紹 介 していま<br />
す。 新 型 F-TYPEと 選 りすぐりの 最 新<br />
デザイングッズによるコラボレーシ<br />
ョン も 、ぜ ひご 覧 い た だ きた い コ ン<br />
テンツです。では、 最 新 号 をごゆっく<br />
りお 楽 しみください。<br />
デレク・ハ ービンソン<br />
エディター<br />
06 セレクター<br />
当 社 の 専 門 スタッフが 独 自 の 視 点 で、<br />
アート、ファッション、デザインからアイ<br />
テムをピックアップ<br />
16 穏 やかなカメレオン<br />
俳 優 、ミュージシャン、ファッションアイ<br />
コン: 多 彩 な 才 能 を 放 つリズ・アーメッド<br />
に 話 を 聞 く<br />
22 生 気 に 満 ちて<br />
ジャガーXEでブラジルのアート、カポエ<br />
イラの 起 源 を 求 めて 歴 史 をたどる 旅<br />
32 最 高 の 美 味<br />
農 業 生 産 者 、シェフ、ライターのマーク・<br />
ディア コ ーノが 、 食 の 最 新 トレ ンド、 酸<br />
味 について 語 る<br />
42 手 足 の 先 にあるもの<br />
アート 感 覚 と 創 造 性 にあふれた 人 工<br />
装 具 の ク イー ン 、ソフィー・デ・オリベ イ<br />
ラ・バラータに 聞 く<br />
44 最 先 端 を 走 るクラシック<br />
新 型 ジャガーF-TYPEが、あこがれの<br />
最 新 グッズとコラボレーション<br />
52 創 造 の 連 鎖<br />
ウィル・ゴンパーツが、ウィリアム・モリス<br />
からiPhoneまで、 創 造 性 の 歴 史 をたどる<br />
52<br />
画 像 :DAVID ELLIS; ÉDOUARD MANET, OLYMPIA,<br />
1863, MUSÉE D’ORSAY, PARIS; WILSON HENNESSY;<br />
RAMA KNIGHT; JAMES DAY; MARK DIACONO<br />
56 お 金 儲 け で は なく、 楽 しむ た め<br />
エシカル 投 資 を 楽 しむために。 自 分 の 価 値 観 に<br />
従 いながら、お 金 を 稼 ぐ 方 法 をご 紹 介<br />
62 荒 涼 たる 西 部<br />
小 説 家 のティモシー・オグレイディが、ジャガー<br />
F-PACE SVRに 乗 って、2020 年 欧 州 文 化 首 都<br />
に 指 定 されたゴールウェイを 走 る<br />
70 名 前 の 背 後 にあるもの<br />
製 品 名 はどのように 決 まるのか。 専 門 家 にその<br />
真 実 を 聞 く<br />
32<br />
44<br />
72 素 材 のリサイクル ジャガー<br />
に 使 われる 素 材 は 再 利 用 され、 持 続<br />
可 能 な 社 会 に 貢 献<br />
74 地 平 線 のかなたへ スター<br />
リング 銀 行 CEOアン・ボーデンが 語 る、<br />
お 金 の 未 来 に 関 する 考 察<br />
2 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 3
THE ALL-ELECTRIC I-PACE<br />
ティモシー・オグラディ<br />
ティムはシカゴで 生 まれ 育 ちましたが、その 後 はアイ<br />
ルランド、UK、スペイン、ポーランドなど、ヨーロッパを<br />
拠 点 としています。3 冊 の 小 説 と4 冊 のノンフィクショ<br />
ン 作 品 を 執 筆 しています。「Motherland」は、1989<br />
年 の 最 優 秀 処 女 作 としてDavid Higham 賞 を 受 賞<br />
しています。 直 近 の 作 品 は「Children of Las<br />
Vegas」で す。<br />
シビれる<br />
ジャガー。<br />
ウィル・ゴンペ ルツ<br />
ウィルはBBCのアートディレクターです。10 年 以 上 にわたり、 芸 術 家 、 俳 優 、 作<br />
家 、 音 楽 家 、 監 督 へのインタビュー、ドキュメンタリーの 執 筆 ・ 司 会 、ラジオ 番 組<br />
のホストなどを 担 当 しています。BBC 以 前 は、テートギャラリーのディレクターを<br />
務 めていました。<br />
今 号 の<br />
執 筆 陣<br />
ジェームズ・デイ<br />
ロンドンとニューヨークを 拠 点 に、<br />
人 物 写 真 と 静 物 写 真 を 専 門 とす<br />
る ジ ェ ー ム ズ は 、「 The New<br />
York Times」、「 The New<br />
Yorker」、「 GQ」、「 Vanity<br />
Fair」、「 Wired」 各 誌 の 写 真 を 定<br />
期 的 に 担 当 しています。また、 広<br />
告 クライアントには,British<br />
Airways,Sony,Heinekenが<br />
名 を 連 ね ます。<br />
マーク・ディアコノ<br />
ヒュー・フィアンリー=ホイッティングストールの<br />
リバーコテージ 料 理 学 校 にあるガーデンチーム<br />
の 元 責 任 者 。 現 在 は、 食 事 、 食 材 の 栽 培 、 食 品<br />
に 関 する 執 筆 や 講 演 を 行 っています。 最 新 の<br />
著 作 「 Sour」は 、Sunday Times 両 紙 から<br />
Food Book of the Year 2019に 選 ばれ<br />
ました。<br />
編 集 長 デレク・ハ ービンソン<br />
副 編 集 長 サチン・ラオ<br />
編 集 次 長 マリサ・キャノン<br />
コピー 編 集 ブライオニー・コールマン<br />
クリエイティブディレクター クリス・ショート<br />
画 像 編 集 レベッカ・ネイラー<br />
アカウントマネージャー アドリアナ・ユーラシェ<br />
ク、ハ ナ・マ クドナルド<br />
4 / Jaguar Magazine<br />
ジェ ニィ・ド ゲット<br />
アートディレクター、プロデューサー、ジャーナリストのジェニィは、<br />
「The Sunday Times Travel」 誌 、「 Boat International」、<br />
「 Red Bull’s Red Bulletin」や、 季 刊 の 女 性 誌 「Libertine」など<br />
各 誌 に 記 事 を 寄 稿 。また、L’Oréal、Kering、VCCP、Songlines<br />
などのブランド、 企 業 、 代 理 店 、タイトル 向 けのコンテンツをプロデ<br />
ュースしています。<br />
事 業 戦 略 ディレクター<br />
アン・ハ ートランド<br />
制 作 管 理 ジョン・モアクラフト<br />
制 作 ディレクター ヴァネッサ・ソルター<br />
コンサルタントディレクター ケリー・スミス<br />
広 告 ディレクター<br />
アリサ・スタメンコビッチ<br />
Cedar Communications Ltd<br />
CEO クレア・ブロードベント<br />
事 業 開 発 ディレクター<br />
クリスティーナ・ダシルバ<br />
チーフクリエイティブオフィサー スチュアート・<br />
パーセル<br />
コンテンツディレクター ジーナ・ローワン<br />
イノベーションディレクター レベッカ・ビリン<br />
グズリー<br />
アンドリュー・ディケンズ<br />
フリーランスジャーナリストのアンドリューは、<br />
「Empire」、「 The Guardian」、「 The Telegraph」<br />
などの 各 誌 で 文 化 、 旅 行 、 健 康 、 社 会 関 連 の 記 事 を<br />
執 筆 しています。アル・パチーノ、ポー ル・マッカートニ<br />
ー、デヴィッド・ベッカムなど、エンターテインメント 界<br />
の 数 百 人 のビッグネームにインタビュ ーしています。<br />
趣 味 はランニングや 犬 の 散 歩 、そして 自 分 に 関 する<br />
本 を 執 筆 しないことです。<br />
商 務 ディレクター ジャスティン・デイリー<br />
財 務 ディレクター ジェーン・モフェット<br />
コンプライアンスディレクター カレン・ハクスリー<br />
Jaguar:<br />
グローバルダイレクトコミュニケーション<br />
マネージャー アンソフィー・ベッチャー<br />
Cedar Communications Limited<br />
85 Strand, London WC2R 0DW<br />
Tel: +44 (0)20 7550 8000<br />
cedarcom.co.uk<br />
『Jaguar Magazine』は 、ジャガ ー (Abbey Road, Whitley, Coventry CV3 4LF)に 代 わり、Cedar Communications Limited(85 Strand, London WC2R 0DW) が 年 2 回 発 行 しています。<br />
© 2020 Cedar Communications Limited. Cedarは 最 高 水 準 のジャーナリズムを 信 条 としています。 編 集 資 料 や 表 明 意 見 は、 必 ずしも 当 社 やジャガーの 見 解 ではありません。また、 当 社 およびジャガーは、 広<br />
告 内 容 に 対 する 責 任 を 一 切 負 いません。『Jaguar Magazine』の 編 集 内 容 については 細 心 の 注 意 を 払 っていますが、 記 載 の 仕 様 、 機 能 、 機 器 などは 変 更 される 場 合 や 国 により 異 なる 場 合 があります。 入 場 規<br />
制 区 域 内 での 動 画 および 写 真 撮 影 には、 必 要 となるすべての 許 可 を 取 得 しています。 本 誌 記 載 の 情 報 は、 印 刷 時 点 のものです。 車 に 関 する 詳 細 については、ジャガー 正 規 代 理 店 までお 問 い 合 わせください。<br />
運 転 時 は 責 任 ある 行 動 をお 取 りください。 本 誌 掲 載 の 記 事 ・ 写 真 ・イラストの 無 断 転 用 を 禁 じます。また、 本 誌 掲 載 資 料 の 無 断 複 製 を 禁 じます。<br />
PHOTOS: TIM WHITBY/STRINGER; RAMA KNIGHT; WILSON HENNESSY; WILL BREMRIDGE<br />
スポーツカーブランドのプライドが 生 んだ、フル 電 動 SUV「ジャガーI-PACE」。<br />
航 続 距 離 は470km※、0-100km/h 加 速 は4.8 秒 を 誇 る。キャビンには、<br />
同 クラスのSUVに 勝 るゆとりの 空 間 が 広 がり、ボンネット 内 部 やリアシート 下<br />
にも 収 納 スペースを 確 保 した。ドライビング、 実 用 性 、 快 適 性 のすべてにおいて<br />
感 性 を 刺 激 するI-PACEが、シビれる 新 時 代 の 道 をひらく。<br />
jaguar.com<br />
※WLTP 航 続 距 離 。WLTPは、 乗 用 車 等 の 燃 料 消 費 率 とCO2 排 出 量 の<br />
計 算 に 使 用 される、 欧 州 の 新 しい 公 式 テストです。 燃 料 、エネルギー 消 費 、<br />
航 続 距 離 排 出 ガスを 測 定 します。 実 際 の 走 行 時 により 近 いデータを 得 る<br />
ために 策 定 されており、オプション 等 を 装 着 した 車 両 を 用 いて、より 厳 格<br />
な 手 順 と 走 行 条 件 のもとでテストが 行 われます。<br />
数 値 は 欧 州 仕 様 車 値 ( 自 社 データ)です。 実 際 の 数 値 とEV 車 両 の 全 般 的 な<br />
パフォーマンスは、 走 行 スタイルおよび 周 囲 の 環 境 により 変 動 します。<br />
詳 しくは、ジャガー 正 規 ディーラーにお 問 い 合 わせください。
セレクターズセレクション<br />
一 流 の 目 利 きが 選 ぶ 世 界 の 逸 品 。 各 界 のエキスパートが、アート、デザイン、スタイル、<br />
ファッションの 分 野 から 選 りすぐりのアイテムをご 紹 介 します<br />
編 集 : Bill Dunn ポートレートイラスト: Paul Ryding<br />
ファッション<br />
ターニャ・マーティン<br />
マイケル・ファスベンダー、コリン・ファース、フ<br />
ァレ ル 、キリア ン・マ ーフィー 、キット・ハリントン<br />
などの 有 名 俳 優 を 担 当 してきたスタイリスト。<br />
tanjamartin.com<br />
選 定 品 : グッチ1955ホースビット・ショルダー<br />
バッグ<br />
「クリエイティブディレクター の アレッサンドロ・ミケ ーレ が<br />
アーカイブを 掘 り 起 こし、1955 年 のデザインを 新 しい 解<br />
釈 で 表 現 。グッチの2020 年 春 のアクセサリーに 採 り 入 れ<br />
ました。このショルダーバッグは、 馬 具 をモチーフにしたク<br />
ロージャーや 調 節 可 能 なフラップが 特 徴<br />
で、2020 年 らしいスタイルで 斜 め 掛 けする<br />
こともで きます。 最 近 のトレ ンドと は 異 なり、<br />
小 さすぎず 大 きすぎず、 実 用 性 の 高 いバッ<br />
グ で す。シ エ ナ・ミラー や アレ ク サ・チャン が<br />
愛 用 しており、 今 年 のベストアイテムになる<br />
こと 間 違 いなしのラグジュアリーなバッグ<br />
で す。」<br />
gucci.com<br />
ウォッチ<br />
マイケル・クレリゾ<br />
『WSJ.Magazine』の 寄 稿 編 集 者 。 代<br />
表 作 に『 Masters of Contemporary<br />
Watchmaking』が あります。<br />
michaelclerizo.com<br />
選 定 品 : キートン・マイリック<br />
「オレゴン 州 で 活 動 しているこの38 歳 の<br />
時 計 製 作 者 は、もっと 知 られるべき 存 在<br />
で す。 彼 の デ ザ イン の 優 雅 さ は 、シ ンプル<br />
さとシンメトリーとハーモニーの 融 合 から<br />
生 み 出 されています。 無 駄 な 要 素 はいっ<br />
さ い ありま せん 。シ ンメトリー が こ の ム ーブ<br />
メントの 最 大 の 特 徴 です。 歯 車 とホイー<br />
ルによる 回 転 システムが、この 時 計 の 動<br />
力 で す。ム ーブメント は 、 円 と 弧 に よって 美<br />
し い シ ンメトリー を 描 い て い ます。 製 作 プ<br />
ロセスによって 材 料 を 変 えることで、 視 覚<br />
的 な 効 果 、 見 事 なハーモニーを 作 り 出 し<br />
ています。キートンの 腕 時 計 はナチュラル<br />
さも 体 現 して おり、ハ ンドメイドと いうより<br />
も、アートのような 印 象 が 漂 います。」<br />
keatonmyrick.com<br />
6 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 7
セレクターズセレクション<br />
ガーデン<br />
アンドリュー・ダラー<br />
ロンドン、ハムステッドにあるナショナルトラスト<br />
「フェントン・ハ ウス 」の 主 任 ガ ー デ ナ ー 。<br />
nationaltrust.org.uk<br />
選 定 品 : グレート・ディクスター( 英 国 イーストサ<br />
セックス 州 )<br />
「キュー・ガーデン( 王 立 植 物 園 )で 働 いてい<br />
た とき 、グレ ート・ディクスター に 行 って きた 実<br />
習 生 がみな、 活 力 とクリエイティビティに 溢 れ<br />
て 戻 って きた の で す。 彼 ら か ら 、 大 胆 な 色 の 組<br />
み 合 わせやルールにとらわれないアプローチ<br />
について 聞 くたびに、 大 いに 刺 激 を 受 けまし<br />
た。キュー・ガーデンでは、すべてが 科 学 的 、 体<br />
系 的 な 方 法 で 行 われていたので、とても 新 鮮<br />
に 感 じら れ た の で す。 主 任 ガ ー デ ナ ーとしてフ<br />
ェントンに 来 てからは、お 菓 子 屋 に 来 た 子 ど<br />
ものようにわくわくした 気 分 で、いろんなこと<br />
を 試 しました。 色 や 種 類 を 混 ぜ 合 わせたり、 伝<br />
統 か ら 外 れ て み たりと 、す べ て は グレ ート・ディ<br />
クスターの 話 を 参 考 にしました。その 後 、つい<br />
に グレ ート・ディクスター を 訪 れ たとき、 主 任 ガ<br />
ーデナー、ファーガス・ギャレット 氏 の 遊 び 心 と<br />
クリエイティビティ、 陽 気 さ、そしてガーデンに<br />
溢 れるロマンティックで 魅 力 的 な 雰 囲 気 の 虜<br />
に な り ま し た 。そ れ は 、『 モナ・リザ 』の 実 物 を 見<br />
たとき の ような 気 分 で した 。 憧 れ の 存 在 が 、 実<br />
際 には 想 像 よりも 少 し 小 さかったからです。<br />
以 来 、グレート・ディクスターからインスピレー<br />
ションを 受 け 続 けています。 私 はボランティア<br />
に 来 てくれる 人 たちに、まずはいろんなことを<br />
試 してみなさいとアドバイスしています。 基 本<br />
を 習 得 したら、それを 少 し 発 展 させてみる。も<br />
しうまくいかなくても、それでガーデンがつぶ<br />
れ る わ け で は な い の で す。 私 た ち は 来 年 も 挑<br />
戦 するつもりです。 重 要 なのは、 何 事 も 一 度 は<br />
試 してみるべきだということです」<br />
greatdixter.co.uk<br />
写 真 : FLO SMITH<br />
8 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 9
セレクターズセレクション<br />
ブック<br />
ティム・ムーア<br />
英 国 人 旅 行 作 家 、ユーモリストで、 著 作 に<br />
9 冊 の 旅 行 記 があります。<br />
@mrtimmoore<br />
ホテル<br />
ユナ・メグレ<br />
モ スク ワとロ サ ン ゼ ルスを 拠 点 に 、ホ スピ<br />
タリティデザインを 専 門 に 手 がけるクリエ<br />
イティブハウス、MEGRE INTERIORS<br />
の 創 設 者 。<br />
megreinteriors.com<br />
選 定 品 : ザ・ウィットビー・ホテル<br />
( 米 国 ニューヨーク)<br />
「ファームデール 系 列 のホテルはどこも<br />
素 晴 らしいサービス 品 質 と 雰 囲 気 を 備 え<br />
て い ま す。クリエ イティブ ディレ クター の キ<br />
ット・ケ ンプ は 、ホ スピタリティとデ ザ イン 、<br />
顧 客 サービスに 精 通 した 人 物 です。 昨 今<br />
は、 見 た 目 の 新 鮮 さを 重 視 し 過 ぎて、ベッ<br />
ドの 寝 心 地 などの 基 本 をおろそかにして<br />
いるホテルも 少 なくありません。 私 は 使 い<br />
やすく、 居 心 地 のいい 部 屋 に 泊 まりたい<br />
と 考 えて い ます。 凝 った ギミックよりも 、 快<br />
適 性 に 重 きを 置 いたホテルが 好 みです。<br />
そんな 私 の 新 しいお 気 に 入 りが、ザ・ウィ<br />
ットビ ー・ホ テル で す。サ ー ビスも 申 し 分 あ<br />
りません 。」firmdalehotels.com<br />
選 定 品 : エリック・ニュービー 著 『A Short<br />
Walk in the Hindu Kush』<br />
「1950 年 代 にこれほど 面 白 い 人 がいた<br />
と は 、こ の 本 を 読 む ま で 想 像 も つ き ま せ ん<br />
でした。 非 常 にユーモアがあるだけでな<br />
く、ニ ュー ビ ー が や ろうとして い た こと は ひ<br />
どく 馬 鹿 げ て い ました 。 彼 は ウェー ルズ に<br />
出 かけて、ホテルの 客 室 係 から 山 登 りの<br />
テクニックを 学 びました。 白 状 しますが、<br />
私 は 初 の 自 著 『 Frost on My<br />
Moustache』の 執 筆 中 、この 本 をいろい<br />
ろと 参 考 にさせてもらいました。 例 えば、<br />
私 は 今 でも 副 詞 の 使 い 方 が 下 手 ですが、<br />
ニュービーはそれが 非 常 に 上 手 い 作 家<br />
で 、 大 い に 助 け ら れ ました 。た だ 、 彼 の『 A<br />
Short Walk』との 出 会 いが 私 の 著 作 を<br />
運 命 づ け た ことに 、 今 となって は 少 々 恨 め<br />
しさも 感 じています。なぜなら、その 本 は<br />
著 者 自 身 が 経 験 した 不 愉 快 な 出 来 事 を<br />
題 材 にし た コ メディで 、ひど い シ チュ エ ー<br />
ションで 読 者 の 笑 いを 誘 っているからで<br />
す。どうして 彼 は 、プ ー ル サ イド で ゆ っ た り<br />
と 寝 そべっているような 状 況 を 題 材 に 本 を<br />
書 いてくれなかったのでしょうか……。」<br />
カバー 写 真 : HARPERCOLLINS PUBLISHERS LTSの 許 可 を 得 て 複 製 © 1958 ERIC NEWBY<br />
クルマの 新 しい 乗 り 方<br />
転 勤 や 家 族 が 増 えるなど、 人 生 にはさまざまな 節 目 があり<br />
ます。ですから、 経 済 状 況 に 合 わせて 月 々の 支 払 いを 柔 軟<br />
に 見 直 したいというニーズもあります。Pivotalのジャガー<br />
サブスクリプ シ ョン は 、 最 新 モ デル に 自 由 に 乗 ること<br />
ができるサービス。ご 都 合 に 合 わせて、いつでも 自 由 に<br />
休 止 ・ 再 開 いただけます。<br />
クルマは6か 月 ごとにアップデートされ、お 好 きなタイミング<br />
でピュアEVモデルに 切 り 替 えることができます。<br />
Pivotalは 現 時 点 では 英 国 内 のお 客 様 にのみ 提 供 して<br />
いるサービスです。<br />
10 / Jaguar Magazine<br />
WWW.DRIVEPIVOTAL.COM<br />
ジャガーのサブスクリプション
セレクターズセレクション<br />
ガジェット<br />
アレスター・ケルズ<br />
写 真 : ANGEL FERNANDEZ NUNEZ<br />
デザイン<br />
ロス・ラブグローブ<br />
ソニー、Apple、エ アバ ス 、ISSEY MIYAKE、<br />
タグ・ホ イヤ ーなどのビッグネ ーム に 大 きな 影<br />
響 を 与 えてきたインダストリアルデザイナー、<br />
アー ティスト。 彼 の 作 品 は ニューヨ ー ク の<br />
MoMAや 、ロ ンドン の デ ザ インミュー ジ アム な<br />
どにも 展 示 されています。<br />
rosslovegrove.com<br />
選 定 品 : ノブ チェア、b y マヌエ ル・ヒメネス・ガ<br />
ル シ ア、ナ ガミ<br />
「マヌ エ ル は 、スペ イン の スタートアップ 企<br />
業 ナガミの 共 同 創 業 者 で、 家 具 や 他 のオブ<br />
ジェクトの 製 作 に、 産 業 用 ロボットと3D プ<br />
リンターを 導 入 して 革 命 を 起 こしました。<br />
変 化 を 求 める 彼 のエネルギーは、 大 胆 な<br />
発 想 と、 先 進 のコンピューターデザインへ<br />
の 深 い 造 詣 に 裏 打 ちされています。ロンド<br />
ンのUCLバートレット・スクール・オブ・アー<br />
キ テ ク チ ャ ー の 教 授 も 務 め る 彼 は 、デ ジ タ<br />
ルの 世 界 を 作 り 出 して 認 識 する 方 法 に 関<br />
し、 構 造 、 最 適 設 計 、 独 自 のコンポーネント<br />
化 されたアーキテクチャーなどの 面 から 新<br />
しいアプローチで 研 究 に 取 り 組 んでいま<br />
す。 常 に 未 来 指 向 で、チャレンジ 精 神 にあ<br />
ふれた、 新 しい21 世 紀 のマインドセットを<br />
体 現 している 人 物 です。3Dプリンターで 製<br />
作 されたノブチェアは、そんなマヌエルの<br />
仕 事 を 代 表 する 作 品 の1つで、 実 に 見 事 な<br />
デザインです。」<br />
nagami.design<br />
写 真 © BOHUMIL KOSTOHRYZ/KINNEKSBOND<br />
ダンス<br />
フィン・ウォーカー<br />
ナショナル・シアター、ロイヤル・シェイクス<br />
ピア・カンパニー、ウェスト・エンド、ブロー<br />
ドウェイで 経 歴 を 重 ねてきたディレクター、<br />
振 付 師 。<br />
finwalker.co.uk<br />
選 定 品 : ご 覧 のとおり…… 私 たちが 誇 る<br />
青 い 空 と 永 遠 の 太 陽 は……ほんの 少 し<br />
ずつしか 消 費 できないのです……<br />
「ずいぶん 長 いタイトルですが、このダン<br />
スを 選 んだ 理 由 を 聞 いてください。 南 アフ<br />
リカ 人 振 付 師 のロビン・オーリンが 手 が<br />
けたこのダンスは、 資 本 主 義 が 引 き 出 す<br />
人 間 の 最 も 悪 い 面 を 表 現 しています。 心<br />
の 底 か ら 感 情 に 訴 え か け る 踊 りで 、ソ ロ<br />
アーティスト の アル バ ート・イボ クェイ・コ ー<br />
ザ にし か で きな い パフォーマ ンスで す。 彼<br />
は 素 晴 らしいパフォーマーで、 俳 優 、 歌<br />
手 、ダンサーとして 類 稀 な 才 能 の 持 ち 主<br />
で あ ると 同 時 に 、ヒ ー ラ ー 、シャ ー マ ン 、ゲ<br />
イ、 黒 人 という 複 数 のアイデンティティを<br />
持 ち、 男 性 としての 逞 しさと 女 性 的 な 優<br />
しさの 両 方 を 兼 ね 備 えています。 概 念 、ス<br />
トーリー 、エ モ ー シ ョン を 超 越 し た 彼 の 踊<br />
り は 、 私 の 心 に 火 を 付 け まし た 。こ れ ほ ど<br />
感 銘 を 受 けたダンスは 数 えるほどしかあ<br />
りません 。 必 見 の ダンスで す。」<br />
高 性 能 オーディオ 家 具 メーカー、<br />
Quadraspire 社 の 音 響 研 究 開 発 部 門<br />
の 責 任 者 を 務 めるプロダクトデザイナー。<br />
@KellsAwkells<br />
選 定 品 : Helius Designs 製 Viridiaター<br />
ンテーブル、Phaedraトーンアーム 搭 載<br />
「 初 めてViridiaを 見 たとき、 私 はしばら<br />
くレ コ ード を 載 せ な い で 、ター ン テ ーブ ル<br />
そのものに 見 とれていました。それほどま<br />
でにインパクトのある 製 品 です。 普 通 のタ<br />
ーンテーブルとは 異 なり、ビジュアルな 個<br />
性 を 強 く 主 張 して い ます。ル ックスと 同<br />
様 、サウンドも 素 晴 らしいです。お 気 に 入<br />
りのレコードの 魅 力 を 改 めて 感 じながら、<br />
じっくりと 音 楽 に 浸 ることができます。<br />
heliusdesigns.co.uk<br />
12 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 13
セレクターズセレクション<br />
挑 戦 に、ブレーキをかけない。<br />
テキスタイル<br />
ティモラス・ビースティーズ<br />
アリステア・マコーリーとポール・シモンズは、<br />
1990 年 から 大 胆 な 柄 の 壁 紙 やファブリック、<br />
ホームアクセサリーを 製 作 しています。<br />
timorousbeasties.com<br />
選 定 品 : 廃 墟 の 中 のクジャク<br />
「テキスタイルとパターンの 世 界 には、 常<br />
に 素 晴 らしいデザインが 登 場 しています<br />
が、それを 手 がけたアーティストの 名 前 知<br />
ら れ て い ま せ ん 。こ の『 廃 墟 の 中 のクジャ<br />
ク』に も そ れ が 当 て は まりま す。こ のト ワル<br />
( 銅 板 印 刷 された 布 地 の 一 種 )は1770 年<br />
頃 のものであることがわかっていますが、<br />
作 者 は 不 明 です。 私 たちはスコットランド<br />
のダンディー・コンテンポラリー・アーツで、<br />
この 作 品 にちなんだタイトルの 展 示 会 を 開<br />
きました。アーティストは 銅 板 に 直 接 絵 を 彫<br />
り 込 んでいたと 思 われますが、おそらく 線<br />
を3 本 ほど 彫 るたびに、 工 具 の 刃 先 を 研 ぐ<br />
必 要 があったと 推 測 されます。 完 成 までに<br />
1 年 はかかったでしょう。デジタル 印 刷 技<br />
術 がどれだけ 進 歩 したとしても、これほど<br />
の 緻 密 な 表 現 は 不 可 能 です。まるで 布 地 そ<br />
のものに 彫 り 込 まれたかのように、 立 体 的<br />
に 見 え ま す。こ れ は 驚 くべ き 人 間 の 力 で あ<br />
り、 私 たちが 製 作 する 現 代 のトワルにも 大<br />
きな 影 響 を 与 えています。そのスケールとク<br />
ラフトマンシップは 他 に 類 を 見 ない 素 晴 ら<br />
しさで あり、 印 刷 され たファブリックとして<br />
は 最 高 傑 作 のひとつと 思 います。」<br />
14 / Jaguar Magazine<br />
写 真 : R. JONES & CO, OLD FORD, 1761<br />
サーキットで 培 った 伝 統 を 未 来 へつなげる 場 所 がある。ジャガー<br />
クラシックワークスだ。 伝 説 のレーシングカー D-TYPEの 再 生 産 も、<br />
大 きなチャレンジのひとつといえる。<br />
このモデルの 生 産 予 定 台 数 は100 台 。しかし、 実 際 に 生 産 できたのは<br />
75 台 だった。かつてル・マンを 制 覇 し、サーキットを 席 巻 した<br />
D-TYPEのレガシーを 完 結 させるために、 熟 練 の 技 術 者 が 動 いた。 当 時<br />
の 仕 様 に 従 い、 直 列 6 気 筒 XKエンジンを 積 んだ25 台 のD-TYPEを 見<br />
事 につくりあげる。その 車 体 番 号 は、1955 年 モデルにつづく 連 番 と<br />
なった。ジャガーの1 台 1 台 は、 強 い 情 熱 を 表 現 した 作 品 でもある。<br />
詳 しくは、jaguar.com/classic をご 覧 ください。<br />
@jaguar.classic<br />
t : +44 (0)203 601 1255 e : classic@jaguarlandrover.com<br />
所 在 地 : Classic Works, Imperial Road, Ryton-on-Dunsmore, CV8 3LF.
インタビュー<br />
千 の 顔 を<br />
持 つ 男<br />
映 画 俳 優 、 舞 台 俳 優 からラッパー、パフォーマーまで、マルチな 才 能 に<br />
隠 されたリズ・アーメッドの 素 顔 。アンドルー・ディケンズ に 本 当 の 自 分 を<br />
語 ります<br />
撮 影 デビッド・エリス<br />
リズ・アーメッドは 多 忙 な 日 々から 一 時 的 に 解 放 されています。<br />
インタビューの 時 点 で、 新 型 コロナウイルスが 世 界 中 に 拡 大<br />
し、 彼 の 最 新 アルバムのツアーも 中 止 になりました。<br />
アーメッドの 日 常 で、「 何 もしない」という 状 況 はありません。<br />
彼 のクリエイティブな 才 能 は、 音 楽 、 映 画 、テレビと 超 人 的 で<br />
す。3 枚 のアルバムをリリースし、 映 画 で10 以 上 の 役 柄 を 熱 演<br />
し、プライムタイムエミー 賞 を1 回 獲 得 しています。 相 当 な 作<br />
品 量 ですが、 彼 は 自 分 が 直 感 的 で 野 心 的 な 人 間 であると 認<br />
めています。<br />
「 言 いたいこと、 世 に 送 り 出 したいことがあるといつも 感<br />
じている」と 彼 は 言 います。「たぶんアーティストは、 観 客 やフ<br />
ァンがいなければアーティストとは 呼 べないかもしれない。パ<br />
フォーマーは 特 にそうだね。 人 は 純 粋 に 自 分 自 身 のために 絵<br />
を 描 くことができるかもしれないけど、 演 奏 や 演 技 は 自 分 の<br />
た め だ け に で きると は 思 え な い 」。<br />
現 在 37 歳 の 彼 はロンドン 郊 外 のウェンブリーに 生 まれまし<br />
た。クリエイティブな 才 能 は 若 い 頃 から 突 出 していました。<br />
「 何 でもやってみたよ」と 彼 は 言 います。「 兄 のラップのカセ<br />
16 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 17
インタビュー<br />
「 人 は 僕 自 身 に 対<br />
して 興 奮 している<br />
わ けじゃ な い 。 僕<br />
はエキサイティン<br />
グなことの 一 部<br />
にすぎない」<br />
ットを 借 りて、 歌 詞 を 暗 記 したのを 覚 えている。 兄 と 映<br />
画 に 出 演 したり、タイトルやストーリーや 役 柄 を 考 え 出<br />
したり、メモ 帳 にU( 全 年 齢 対 象 )から、PG( 保 護 者 同<br />
伴 )、18(18 歳 未 満 非 推 奨 )までレーティングを 付 けた<br />
り。 超 バイオレンスのバイクカンフー3 部 作 を 撮 ったこと<br />
もある。いろいろな 世 界 を 創 作 することにずっと 興 味 が<br />
あったんだ。 演 技 や 音 楽 を 通 じて、 人 が 体 験 できる 世<br />
界 を 創 って い るん だ 」。<br />
ロンドン 郊 外 にある 私 立 のマーチャントテイラーズスク<br />
ールの 奨 学 金 を 獲 得 した 後 、アーメッドはオックスフォ<br />
ード 大 学 で 政 治 学 、 哲 学 、 経 済 学 を 学 びました( 彼 は 本<br />
当 に 理 由 がわからないと 認 めています。それ 以 外 にも、<br />
「 議 論 に 関 心 」があったということです)。いつも 演 技<br />
や 音 楽 に 熱 中 していましたが、 現 在 のような 生 き 方 は<br />
まったく 想 像 していませんでした。<br />
「 あ え て や って み ようと は 思 わ な か っ た 。クリエ イティ<br />
ブ 業 界 で 成 功 する 可 能 性 はとても 低 いからね」。「きっ<br />
か け は 、 大 学 の 誰 か か ら 送 ら れて きた「 こ ん にち は 、 演<br />
劇 学 校 に 応 募 してみる 気 はないかな」というメールか<br />
な 。そ の 気 に さ せ ら れ た ん だ 。よく 知 りもし な い 人 か ら<br />
人 生 を 変 えるメッセージをもらったということだよ。だ<br />
から、 誰 かを 励 ます 機 会 があったら、ぜひそうしてほし<br />
いと 言 いたいね。 人 生 を 変 えるチャンスはいつ 訪 れる<br />
かわからないから」。<br />
その 適 切 なアドバイスを 受 け 入 れて、セントラル・スクール・オ<br />
ブ・スピーチ・アンド・ドラマに 入 学 してから、アーメッドの 俳 優 と<br />
してのキャリアは、ゆっくりと 着 実 に 花 開 いていきました。 最 初<br />
に 出 演 した 映 画 はマイケル・ウィンターボトムの「グアンタナモ、<br />
僕 たちが 見 た 真 実 」でした。さらにクリスモリスの 辛 辣 な 風 刺<br />
映 画 「 Four Lions」、ドラッグの 売 人 の 役 で 英 国 インディペンデン<br />
ト 映 画 賞 (BIFA)に 初 めてノミネートされた「Shifty」、 小 説 か ら<br />
映 画 化 され 絶 賛 された「ミッシングポイント」など の さまざ まな<br />
注 目 作 に 出 演 します。 陰 惨 で 暗 い「ナイトクローラー」で は ジェ<br />
イク・ジレンホール 演 じる 反 社 会 的 フォトジャーナリストの 不 運<br />
な ア シ ス タ ント 、リッ ク を 演 じ まし た 。<br />
中 でも、「ナイトクローラー」では、いわゆるハリウッドタイプの<br />
人 が「ヒート」と 呼 びたがる 雰 囲 気 を 表 現 し、2016 年 には 数 本<br />
の 映 画 に 出 演 しました。HBOのテレビドラマ「ザ・ナイト・オブ 」<br />
で、 俳 優 なら 一 度 は 取 りたい 賞 、プライムタイムエミー 賞 を 獲<br />
得 し 、「 ローグワン」の パ イロット 、ボ ー ディー・ル ック の 役 で「ス<br />
ターウォーズ」シリーズにも 進 出 しました。そしてもちろん、 彼 が<br />
演 じた 役 のアクションフィギュアをもらいました。(「そのフィギ<br />
ュアは 甥 が 持 っていると 思 う」と 彼 は 言 っています。<br />
アーメッドは、キャリアが 急 速 に 大 きく 変 化 していると 感 じて<br />
いました。「どんな 場 所 にいるかはあまり 問 題 じゃない。「ちょっ<br />
とち ょっと 、こ こ で は 何 が 起 こって い る の 」。そ れ が お もしろ い<br />
画 像 :AMAZON STUDIOS<br />
リズ・アーメッドの 最 新 映 画 「Sound of Metal」で は 、 彼 の 演 じる 聴 力 を 失 っ たドラ マ ー が オリジ ナル な ビートを 叩 き 出 します。<br />
18 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine / 19
インタビュー<br />
し、ちょっと 不 思 議 なんだよね。そういうときは、 人 々は 僕 自<br />
身 に 対 して 興 奮 しているわけじゃない。 僕 はエキサイティン<br />
グなことの 一 部 にすぎない。 誰 かが 僕 の 音 楽 を 本 当 に 愛 し<br />
て い て も 、そ の 愛 は 僕 に 対 して の も の で は な い 。そ れ は 人<br />
が 見 ている 僕 の 一 部 分 、つまり 僕 のホログラムバージョン<br />
なん だ 」。<br />
「スターウォーズ」に 出 た ことで 、ホ ロ グラム に つ い て 少 し<br />
わかったよ。 人 はホログラムの 君 を 愛 するかもしれない、ホ<br />
ログラムの 君 を 憎 むかもしれない、でもそれは 本 当 の 君 で<br />
はないんだ。それはすごく 役 に 立 つアナロジーだから、いつ<br />
も 頭 に 入 れ て おくべ きだ よ 。ホ ロ グラム は 君 を 混 乱 さ せ る<br />
か もし れ な い か ら 」。<br />
アーメッドによると、 本 当 の 自 分 を 保 つために、 家 族 が 大<br />
きな 役 割 を 果 たしているということです。「 母 が 心 配 するの<br />
は 僕 がちゃんと 食 べているかどうかということだけ<br />
で、Twitterのフォロワーが 何 人 いるかなんて 気 にもかけ<br />
ない」。 家 族 は 仕 事 でも 大 きな 役 割 を 果 たしています。 彼 の<br />
両 親 は1970 年 代 にパキスタンから 英 国 に 移 住 してきまし<br />
た。2つの 文 化 の 間 で 育 ったアーメッドが 奨 学 金 を 獲 得 し、<br />
オックスフォードへ 通 ったことは、 彼 が 異 なる 階 級 に 適 応 し<br />
た ことも 意 味 して い ます。<br />
自 分 のバックグラウンドは、クリエイティブな 世 界 でとて<br />
も 役 立 つそうです。「2つの 異 なる 自 分 を 切 り 換 えられるこ<br />
と が 、す ごく 役 に 立 って きた と 思 う。2つの 別 の 顔 を 使 い 分<br />
けることによって、 役 者 として 成 功 できたんだから。すごく<br />
若 い 頃 か らそうして きた 。 毎 日 、 異 なる 文 化 と 階 級 を 乗 り 越<br />
えること は 、 一 日 中 異 なるキャラクター を 演 じて い るような<br />
も の だ よ 」。<br />
「 自 分 のどちらかのバージョンを 選 ばなければならな<br />
い、という 不 都 合 なケースもあるけどね。 今 のポジションで<br />
はそのことをあまり 考 えなくていいけど、『 自 分 が 何 かする<br />
ときに、どうしたら 自 分 自 身 を 最 大 限 に 表 現 できるか』に つ<br />
い て は 考 えるよ 」。<br />
実 際 、リズ・アーメッドはいまもっとも 勢 いのある 俳 優 のひ<br />
とりです。 最 近 の 作 品 を 見 れば 明 らかです。 彼 の 最 新 映 画 、<br />
「Sound of Metal」では、 聴 力 を 失 うドラマーを 演 じています。<br />
絶 望 に 打 ちひしがれ、 酒 やドラッグにおぼれ、 聴 覚 障 害 の<br />
ある 薬 物 依 存 者 のためのホームに 入 所 します。「なんてこ<br />
と、まるでリズ・アーメッドのようじゃないか」と 思 う 人 はあま<br />
りいないかもしれません。でも 本 人 はその 意 見 に 同 意 でき<br />
ないようです。<br />
「 自 分 自 身 と 役 柄 の 接 点 を 見 つけるんだよ」と 彼 は 言 い<br />
ます。「 自 分 にとっての 重 要 な 接 点 は、「 自 分 にはどんな 価<br />
値 があるんだろう。 仕 事 以 外 の 僕 の 価 値 は 何 だろう」という<br />
ことだった。それは、 僕 が 演 じたルーベンが 直 面 しているこ<br />
とそのものだ。「 自 分 自 身 に 直 面 せざるをえない 自 分 は 何<br />
者 だろう」。 僕 は、じっと 座 っていることが 苦 手 な 人 間 で、だ<br />
からこそこのロックダウンは 苦 痛 以 外 の 何 物 でもない。 自<br />
分 の 行 動 は 自 分 で 決 めてきたからね。でもルーベンは 静<br />
寂 の 中 で じっと 座 って い るし か な い 。 自 分 自 身 と 共 に 、 自<br />
分 の 内 面 と 向 き 合 って。それは 恐 ろしいことかもしれない。<br />
写 真 :STUART CLARKE/SHUTTERSTOCK(16ページ)、TOM VAN SCHELVEN(17~18ページ)、BBC(19ページ)<br />
僕 は そ れ に 共 感 すること が で きる 」。<br />
「だから、『ドラマーらしく 演 じよう』と 外 側 から 見 るので<br />
はなく、 内 面 から 表 現 するよう 努 力 すべきだと 思 う。カメレ<br />
オンとして 育 った 人 に 対 しては、カメレオンとして 作 品 にア<br />
プローチする。つまり、カメレオンになるのは 一 度 で 十 分 と<br />
いうことなん だ よ 」。<br />
これと 同 じことが 彼 の 音 楽 にもあてはまります。20 代 の<br />
前 半 は、DJ、MC、ライター、バトルラッパーとして 輝 かしい<br />
成 功 を 収 めることに 夢 中 でした。しかし、お 金 を 稼 ぐことに<br />
は 関 心 はなかったそうです。 最 新 アルバム「The Long<br />
Goodbye」は、 彼 自 身 を 材 料 にした 料 理 のようなものです。「リ<br />
ゾット(Riz-otto)」と 呼 ぶことにしましょう。<br />
その 音 楽 は 東 洋 と 西 洋 から 影 響 を 受 けたカクテルであり、<br />
イギリスとアーメッドの 複 雑 な 関 係 をうかがわせます。 歌 詞<br />
とも 詩 ともつかない 言 葉 が 並 びます。ショートフィルムもつ<br />
いています(YouTubeで 視 聴 可 能 )。21 世 紀 の 政 治 にう<br />
んざりしている 人 は 必 見 です。また、ソロの 場 合 も、スウェッ<br />
トショップボーイズ(ラッパーのヒームズとプロデューサーの<br />
レ ディン ホ と の コ ラボ レ ー シ ョン )の メン バ ーとして も「リズ<br />
MC」の 名 前 でリリースされていたのに 対 し、このアルバム<br />
はリズ・アーメッド の 名 前 でリリースされて い ます。<br />
「このショートフィルムでは、 僕 のいろいろな 面 がひとつ<br />
に 集 約 されて い る 」。「 演 技 、 音 楽 、 言 葉 。 社 会 で 起 こってい<br />
ることの 一 部 について 語 っているんだけど、すごく 個 人 的<br />
な 場 所 か ら も 語 って い るん だ 。お もち ゃ は ひとつ の 箱 に 全<br />
部 入 れてしまいたい。 自 分 のどの 面 を 見 せるかを 選 ぶ 必 要<br />
は な い ん だ よ 」。<br />
「Sound of Metal」がリリースされ るまで 、 俳 優 を 辞 め ること<br />
さえ 考 えていたとも 言 っています。 想 像 したくありませんが、<br />
少 なくともしばらくの 間 は 俳 優 を 続 けてくれるでしょう。 彼<br />
はオーディエンスとのコミュニケーションを 必 要 としている<br />
ということです。でも、 他 にどのような 方 法 があるでしょうか。<br />
彼 はファッションコンシャス(ファッションに 敏 感 )なタイ<br />
プ で 、 彼 が 言 うに は「 コ ン シャスファッ シ ョン 」、つ まり 自 分<br />
自 身 を 表 現 するサステイナブルな 方 法 に 関 心 があるという<br />
ことです。 映 画 製 作 に 数 年 携 わった 後 、ある 人 からそれは<br />
「プロデューサー」の 仕 事 だと 指 摘 されました。 今 のところ、<br />
プロデュース 業 は 彼 の 最 優 先 事 項 ではありませんが、レフト<br />
ハンデッドフィルムズを 設 立 し、2020 年 のベルリン 国 際 映<br />
画 祭 で「 Mogul Mowgli」が 初 上 映 されました。<br />
世 界 は 常 に 変 化 します。 私 たちも 同 じように 変 化 しなけ<br />
ればなりません。し か し 、 新 し い ことを 始 め る に あ たり、 突 飛<br />
なアイデアは 必 要 ない、とアーメッドは 教 えてくれます。<br />
何 かを 選 択 するときに 必 ず 新 しい 方 法 が 見 つかる、と 彼<br />
は 言 います。「 僕 にとって、それは 必 ずしも 俳 優 を 辞 めるこ<br />
とを 意 味 しているわけではないんだ。それは、 演 じる 役 柄<br />
に つ い て 、 準 備 する 方 法 に つ い て 考 えると いうことだ よ 。 同<br />
じアートの 分 野 で 自 分 自 身 を 表 現 する 別 の 方 法 、 同 じフィ<br />
ールドで 成 長 する 別 の 方 法 を 見 つけることは 可 能 だと 思<br />
う」。<br />
「カメレオンに<br />
なるのは<br />
一 度 で 十 分 」<br />
20 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine / 21
旅<br />
ファイティングスピリッ ト<br />
ダンスと 武 術 が 融 合 したカポエイラは、<br />
ブラジル 文 化 の 象 徴 のひとつです。<br />
サル ヴ ァドー ル か ら ウニ ア ン・ドス・<br />
パウマレスまで、ジャガーXEに<br />
乗 ってそのルーツを 探 ります。<br />
ストーリー ジェニファー・ ドゲット 撮 影 ウィルソン ・ヘネシー<br />
動 く 的 をとらえるのは 難 しいことです。カポエイラの 基 本 動 作 のひと<br />
つに、ジンガがあります。ジンガとは、 流 れるようなゆったりした 動<br />
きが、 揺 れるように 繰 り 返 される 動 作 です。まさにカポエイラの 動 き<br />
そのものです。スポーツ、 武 術 、 芸 術 、 競 技 の 要 素 をもつカポエイラ<br />
は、ひとつのカテゴリーで 語 ることが 難 しいのです。<br />
カポエイラの 正 確 な 起 源 には 諸 説 ありますが、 最 も 有 力 なの<br />
が、16 世 紀 にポルトガル 人 によってアフリカからブラジルに 連 れてこ<br />
ら れ た 奴 隷 が 、 自 ら の 身 を 守 り、 自 由 に なるた め に 秘 密 の 武 術 を つ<br />
くりあげたというものです。 現 在 では、 多 様 なルーツを 持 つ 技 術 に<br />
発 展 しました。 私 たちは、そのルーツをたどり、どのように 発 展 した<br />
かを 理 解 するためにブラジルに 来 ました。<br />
ブラジルの 東 北 部 に 位 置 するバイーア 州 は、カポエイラ 発 祥 の 地<br />
と 考 えられています。ガイドのルイスによると、サルヴァドールはバ<br />
イーア 州 の 州 都 であり、この 国 の 文 化 の 中 心 地 ということです。「サ<br />
ルヴァドールでは、 人 が 生 まれたとは 言 わない。デビューするって 言<br />
うんだ 」と 彼 は 笑 います。ル イスはサンパウロ 出 身 で、 南 米 各 地 で 働<br />
いていますが、できるかぎりサルヴァドールで 過 ごしているそうです。<br />
「 僕 たちサンパウロっ 子 は 金 のためだけに 働 くと 言 われているから、<br />
サルヴァドールに 来 るのかもしれない」。<br />
ジェズス 広 場 にいます。1 組 のカポエイリスタが 信 じられないスピ<br />
ードで 身 を 翻 し、 回 転 するのを 眺 めています。 驚 くべき 精 度 で 回 転<br />
し 、ミリ 単 位 で 相 手 の 顔 を か す め ま す。 若 者 がしなやかな 身 体 で 鮮<br />
や か に 倒 立 し 、 観 光 客 に 満 面 の 笑 み を 見 せます。グループで 一 番 若<br />
いメンバーのひとり、ジェイソンに、カポエイラは 彼 にとってどんな<br />
意 味 があるのか 尋 ねると、 彼 は 真 剣 な 眼 差 しで、カポエイラは 命 の<br />
恩 人 だと 言 いました。「 友 達 が 何 人 も 死 んだり、 警 察 の 厄 介 になっ<br />
ているんだ。でも、カポエイラを 始 めたことで、 新 しい 人 生 を 歩 むこ<br />
とができた。 今 僕 がここにいるのは、すべてカポエイラのおかげだ<br />
よ」。<br />
カポエイラの 華 麗 な 一 面 が、ジェイソンと 友 人 たちに 生 命 力 のは<br />
け 口 と 収 入 源 をもたらしているのです。 彼 は 、カポ エイラが オリンピ<br />
ックの 種 目 になることを 望 んでいます。そうなればさらにチャンスが<br />
広 がるからです。ボクシングやサッカーと 同 様 に、カポエイラは 教 育<br />
と 支 援 の 機 会 を 奪 われている 子 供 たちにとって、その 境 遇 から 抜 け<br />
出 す 手 段 なのです。ストリートカポエイリスタたちは、プロのアスリー<br />
トにも 劣 らないほどハードなトレーニングを 積 んでいます。 違 うの<br />
は、 焼 けつくようなコンクリートの 上 で、 観 光 客 からのチップの 額 に<br />
関 係 なく 打 ち 込 んでいることです。<br />
ジャガーXEでこの 広 場 を 後 にしたのは、 午 後 も 遅 くなってからで<br />
した。 太 陽 の 光 をさえぎる 白 い 雲 は 分 厚 く、まるで 落 ちてくるのでは<br />
とさえ 思 われました。サルヴァドールはとても 美 しい 町 です。 石 畳 の<br />
急 坂 の 両 側 には 陽 の 光 で 色 あせたパステルカラーの 建 物 が 並 んで<br />
います。XEのボディに、ひしめくように 建 ち 並 ぶ 家 々が 鮮 やかに 映<br />
し 出 されます。 青 と 白 のタイルが 貼 られた、 今 にも 崩 れ 落 ちそうなコ<br />
ロニアルスタイルの 建 物 の 間 をゆっくり 進 みます。ドアには 色 あせた<br />
ポスターが 何 枚 も 層 になり、あちこちに 独 創 的 な 落 書 きが 書 かれて<br />
います。<br />
ペドロ・アビ ブ に 会 ったときにも 、オリンピックの 話 題 に なりまし<br />
た。カポエイラと 文 化 的 アイデンティティに 関 する 多 くの 著 書 があ<br />
り、 学 者 、ミュージ シャン、 映 像 作 家 、カポ エイリスタである 彼 は 、カ<br />
ポエイラの 商 業 化 を 嘆 き、 競 技 スポーツ 化 に 断 固 反 対 しています。<br />
彼 は、カポエイラはスポーツより 文 化 としての 意 義 があると 信 じて<br />
22 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine / 23
旅<br />
テクニカラー サルヴァドールのラルゴ・ド・ペロウリーニョ 地 区 の 熱 気 と 喧 噪 とコントラストを 描 く、ジャガーXEの 洗 練 されたキャビン<br />
います。「 勝 ち 負 けを 競 うものではありません。 競 技 ではな<br />
く、 人 と 人 のつながりであって、 哲 学 的 な 対 話 なのです」。<br />
ペドロは、スポーツのひとつのジャンルとなって 消 費 者 され<br />
るカポエイラは 見 たくないのです。 彼 にとってカポエイラは<br />
ヒーリングであり、 分 断 された 社 会 で 平 等 を 実 現 するもの<br />
です。<br />
ペドロによると、カポエイラはユネスコの 無 形 文 化 遺 産 に<br />
登 録 されてはいるものの、その 本 質 はまだ 一 般 に 理 解 され<br />
ていないどころか、 誤 解 されているそうです。19 世 紀 末 に 奴<br />
隷 制 度 が 終 わり、 都 市 化 が 進 むと、カポエイラは 犯 罪 組 織<br />
と 同 一 視 され、20 世 紀 初 めには 禁 止 されました。カポエイ<br />
ラをするだけで 逮 捕 され、 時 には 拷 問 を 受 けることもありま<br />
した。<br />
サルヴァドールを 訪 れる 前 に、ノキアの 公 告 とBBCの 局 名<br />
告 知 映 像 で、2 人 の 男 性 が 屋 根 の 上 でスパーリングをする 映<br />
像 を 見 て、カポエイラについては 漠 然 と 知 っていました。コ<br />
ンピューターゲームの「 鉄 拳 」にはカポエイラのファイター<br />
が 出 て き ま す。「 オーシャンズ12」でヴァンサン・カッセルが<br />
演 じる 役 は、カポエイラを 駆 使 して 無 数 のレーザーがランダ<br />
ム に 動 く 警 備 システムを か いくぐります。しかし 、この ような<br />
シーンはカポエイラを 断 片 的 にアクロバティックに 表 現 した<br />
に 過 ぎません。 音 楽 、 詩 、 精 神 性 、 演 技 の 要 素 こそ、カポエ<br />
イラが 人 を 引 き 付 ける 芸 術 である 所 以 なのです。 私 は、 現 地<br />
で 説 明 を 聞 いたことで、あらためてカポエイラに 流 れる 精 神<br />
が 垣 間 見 えるようになりました。<br />
メストレ・ビンバ 財 団 の 狭 い 階 段 を 降 りると、メストレ・ネ<br />
ネウの 父 親 の 名 前 をつけたカポエイラの 学 校 があります。<br />
湧 き 上 がるエネルギーが 感 じながら、 半 地 下 の 狭 い 部 屋 に<br />
入 ると、 白 い 綿 の 道 着 を 着 た 生 徒 で 埋 まっていました。 小 さ<br />
なホダ(カポエイラを 行 う 円 形 )の 周 囲 には、あらゆる 体 格<br />
と 年 齢 の 生 徒 が 密 集 しています。 中 央 では2 人 の 演 者 がゆっ<br />
たりと 動 き、 互 いから 目 を 離 さず、 互 い の 動 きを 繰 り 返 し、<br />
呼 応 します。 催 眠 術 を 思 わせるダンスで、なめらかにフェイ<br />
ントを か け、 足 を 払 い 、 相 手 の 身 体 の 上 をころがります。 遊<br />
び 心 と 協 力 し 合 う 雰 囲 気 が 感 じられます 新 しいペアがホダ<br />
に 入 り、 身 体 を 前 後 に 揺 らし 始 めました。 善 意 、 尊 敬 、コミ<br />
ュニティの 感 覚 が 明 確 に 感 じ 取 れます。ビリンバウをたたく<br />
音 に 合 わ せ て、 誰 も が ほ ほ 笑 み 、 手 を 打 ち 、 歌 って います。1<br />
本 の 弦 でできている 打 楽 器 、ビリンバウはカポエイラには 欠<br />
か せません 。メストレを 名 乗 るためには 、 生 徒 はビリンバウ<br />
の 製 作 と 演 奏 の 両 方 をマスターしなければなりません。メス<br />
トレは 英 語 の「master」、つまり 指 導 者 という 意 味 ですが、<br />
実 際 にはもっと 深 い 意 味 をもっています。 段 位 、 年 齢 、 経<br />
験 、 練 習 した 時 間 、 習 得 した 歌 で 評 価 する 人 もいます。さら<br />
に、メストレはコミュニティの 尊 敬 の 的 であり、メストレの<br />
24 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 25
旅<br />
メストレの 務 めは 神 聖 なもの<br />
であり、メストレは 親 、 師 、リー<br />
ダーであるとも 言 われます。<br />
海 の 風 景 穏 やかな 大 西 洋 に 夕 日 が 沈 むサルヴァドール、かつてのキンタ・ド・ウニャオンの 館 と 礼 拝 堂 からの 眺 め<br />
ファイトクラブ( 上 )ヘジョナウスタイルの 創 始 者 の 息 子 メストレ・ネネウと<br />
妻 メストラ・プレギーサ。( 下 )ビリンバウと 呼 ばれる 弦 楽 器 を 手 にするメスト<br />
ラ・ナーニ<br />
務 めは 神 聖 なものであり、メストレは 親 であり、 学 者 であり、<br />
リーダーであるとも 言 われています。 階 級 で もあり、 人 々の<br />
心 が 決 めるものでもあるようです。 確 かなことは、 単 純 な 技<br />
術 ではないということです。<br />
しばらくして、ホダに 密 集 していた 生 徒 が 散 らばっていき<br />
ました。 私 も 含 めて 全 員 が、メストレ・ネネウに 話 したいと 思<br />
っています。 彼 は、カポエイラヘジョナウの 創 設 者 、メスト<br />
レ・ビンバ の 息 子 で す。カポ エイラには 2 つ の 大 きな 流 派 が<br />
ありますが、 無 数 に 細 分 化 されています。 一 般 にヘジョナウ<br />
は、 運 動 面 が 強 調 され、 段 位 によって 色 が 異 なる 帯 を 付 け<br />
るなど、 習 熟 段 階 が 簡 単 に わ か るとされています。 帯 や 色 は<br />
スクールによってさまざまです。アンゴーラは、より 伝 統 的<br />
なスタイルを 指 示 したメストレ・パスティーニャの 教 えを 受<br />
け 継 いで います。カポ エイラコンテンポラーニャの2 つ の 流<br />
派 を 統 合 させる 動 きもありました。<br />
メストレ・ビンバはカポエイラに 教 育 面 の 可 能 性 を 見 出<br />
し、 息 子 のメストレ・ネ ネウによると、 芸 術 として 認 められ た<br />
いという 意 図 がありました。 彼 と 妻 のメストラ・プレギーサ<br />
は 、 社 会 から 取 り 残 されてい る 若 者 の た め に 、 社 会 的 プロジ<br />
ェクトを 数 多 く 実 施 しています。メストレ・ビンバ の 理 念 を<br />
守 り 推 進 すること、 相 互 の 信 頼 と 自 立 を 支 援 することが 自 分<br />
たちの 使 命 であると、 熱 心 に 伝 えています。メストラ・プレギ<br />
ーサは、カポエイラの 魅 力 について 次 のように 語 っています。<br />
「カポエイラにはすべてが 含 まれています。そして、すべての<br />
人 が 楽 しめるものなのです」。 彼 女 は、カポエイラが 行 き 場<br />
を 失 ったスラムの 子 供 を 変 え、ドイツの 刑 務 所 ではカポエ<br />
イラが 女 性 に 癒 しを 与 えるのを 見 てきました。<br />
彼 女 は、 自 分 たちが 本 名 を 名 乗 らず、 修 了 したときに 授 け<br />
られた 名 前 で 活 動 していることも 教 えてくれました。メスト<br />
ラ・プレギーサ(「 怠 惰 な」という 意 味 )は、 初 心 者 の 頃 シャ<br />
イで 演 技 ができなかったため、 彼 女 の 師 が 冗 談 で 付 けた 名<br />
前 です。<br />
ペロウリーニョ 地 区 の 喧 噪 に 満 ちた 通 りに 入 っても、 胸 の<br />
中 でまだドラムの 音 がこだましているように 感 じました。リ<br />
ズムはサルヴァドールのいたるところに 存 在 します。カース<br />
ピーカーから 流 れてくるサンバの 曲 や、ブロコスアフロ( 太<br />
鼓 隊 )が 打 ち 鳴 らす 太 鼓 など。ポール・サイモンの 有 名 なラ<br />
イブ 映 像 「The Obvious Child」はこちらから 視 聴 できます。 彼<br />
は 、アル バ ム「リズム・オブ・ザ・セインツ」に 地 元 のオロドゥ<br />
ンのドラマーの 複 雑 なポリリズムを 採 り 入 れました。サル<br />
26 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 27
旅<br />
ウ ニ ア ン・ドス・<br />
パルマレス<br />
ブラジル<br />
路 上 の 緑 サルヴァドールからウニアン・ドス・パウマレスまで 車 で 丸 一 日 かかるドライブでは、 野 生<br />
生 物 が 数 多 く 生 息 する 森 林 と 黄 金 に 輝 く 海 岸 の 間 を 走 り 抜 けます。<br />
ジャガーXEに 乗 って 軽 快 に 走 る、ライターのジェンニ<br />
ヴァドールで 唯 一 音 楽 を 聴 けなかったのは、 耳 をつんざくよ<br />
うな 教 会 の 鐘 の 音 が 町 中 に 響 き 渡 ったときだけでした。サ<br />
ルヴァドールには1 年 の 日 数 だけ 教 会 があると 言 われていま<br />
すが、 実 際 には365 以 上 の 教 会 があります。この 地 域 では、<br />
カトリックとカンドンブレが 主 要 な 宗 教 として 共 存 している<br />
のです。カンドンブレは、アフリカの 宗 教 とカトリックの 信<br />
仰 が 融 合 したものです。ノッソ・セニョール・ド・ボンフィム<br />
教 会 では、 建 物 内 に 大 勢 の 人 が 集 まり、 外 では 多 くの 人 々<br />
が 願 いごとをフィタス(リボン)に 託 して 門 に 結 び 付 けてい<br />
ました。10 人 以 上 の 女 性 が 糸 に 通 したビーズを 引 きずり、 踊<br />
りながら 通 り 過 ぎて 行 きます。たっぷりとドレープをとったド<br />
レスの 裾 がそよ 風 に 吹 かれてふくらんでいます。 海 の 女 神 イ<br />
エマンジャに 捧 げる 花 、 降 水 、 鏡 を 運 んでいるのです。<br />
X E で サル ヴァドール の 迷 路 を 走 り 抜 けると 、きら めく 大 西<br />
洋 を 背 に、すべてのシルエットがくっきりと 浮 き 上 がっていま<br />
した。 海 岸 に 沿 って 走 ると、 水 につかっておしゃべりに 夢 中<br />
ILLUSTRATION: TIM BOELAARS<br />
サルヴァドール<br />
大 西 洋 沿 岸 の 森 林 を 走 り<br />
抜 けるドラマチックな<br />
ル ート 、グリーン ライン<br />
の 人 、 宙 返 りで 入 り 江 に 飛 び 込 む 子 供 たち、ボートでのんび<br />
り 釣 りをする 人 がいました。マチェーテを 携 えて、30フィート<br />
もの 高 さのココヤシの 木 に 登 っている 男 性 も 見 かけました。<br />
日 も 陰 り、 最 後 に 立 ち 寄 った の が 、カポ エイラ 要 塞 で す。<br />
オランダ 人 侵 入 者 対 する 防 御 施 設 の 後 は、 監 獄 として 利 用<br />
された17 世 紀 の 優 雅 な 要 塞 には、いくつかの 名 門 カポエイ<br />
ラアカデミーが 入 居 しています。うれしいことに、 尊 敬 を 集 め<br />
たメストレ・パスティーニャの 教 え 子 のメストレ・ボカヒカに<br />
会 うことができました。8 3 歳 の 彼 は 信 じられ ないほど 身 体<br />
が 柔 軟 で、 茶 目 っ 気 が あり、 魅 力 的 な 人 物 でした 。 彼 はじっ<br />
としていることがありません。カポエイラへの 並 々ならぬ 情<br />
熱 を、 音 楽 の 創 作 と 保 存 に 注 いでいます。 彼 は 教 えを 広 める<br />
ために 何 枚 ものアルバムをレコーディングし、 世 界 中 を 旅 し<br />
てきました。 同 じくメストレ・パスティーニャの 弟 子 であり、<br />
すぐ れ た 研 究 者 、 作 曲 家 で も あ るメストレ・モラエ ス<br />
は、2003 年 にカポエイラの 歌 のアルバム「Capoeira Angola 2:<br />
Brincando Na Roda」でグラミー 賞 にノミネートされました 。<br />
ボカリカの 仲 間 のメストラ・ナーニは、やはりパスティーニ<br />
ャの 弟 子 であるメストレ・ペケーノの 孫 娘 です。 彼 女 は 若 い<br />
世 代 の 指 導 者 の 象 徴 的 な 存 在 ですが、 祖 父 から 受 け 継 いだ<br />
教 えと、 彼 が ホダの 女 性 を 差 別 しなかったことを 誇 りにして<br />
います。 十 代 で 母 親 になり 苦 労 した 彼 女 は、カポエイラに<br />
28 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 29
旅<br />
ルの 大 群 が 占 拠 するスラロームです。 太 陽 に 誘 われていった<br />
ん 道 を 占 拠 すると、なかなか 去 ってくれません。<br />
さとうきび 畑 や 牧 場 を 通 り 過 ぎてサルヴァドールから12 時<br />
間 ほ ど 走 り、ウニ ア ン・ド ス・パ ウ マレス に 到 着 し まし た 。 雑<br />
然 としていますが、 明 るい 感 じの 町 です。 道 路 の 主 役 は 馬 車<br />
です。くすんだミントグリーンや 黄 色 の 家 々の 窓 から、 物 珍<br />
しそうに 私 たちを 見 ています。 何 とかパウマレスの 最 後 の 戦<br />
いを 記 念 する 行 列 に 参 加 することができました。リーダーの<br />
ズンビの 下 、キロンボの 入 植 者 は 抵 抗 しましたが、1694 年<br />
の 最 終 攻 撃 で、この 共 同 体 は 破 壊 されました。 毎 年 、 生 き 残<br />
りの 子 孫 がここに 集 まり、 闘 った 人 々の 栄 誉 を 称 えていま<br />
す。 彼 ら は 、セ ー ハ・ダ・バ ヒーガ の 4 キ ロ メートル の 山 道 を<br />
ゆっくり 登 っていきます。 途 中 数 か 所 のポイントで 止 まって<br />
は、ダンスをし、 酒 を 飲 み、 詩 やスピーチを 披 露 し、もちろん<br />
カポエイラの 演 技 もします。お 祭 りでありながら、 厳 かな 雰<br />
囲 気 もあります。 私 たちは 夜 を 徹 して 歩 きました。 全 員 が 白<br />
装 束 なので、 漆 黒 の 空 を 背 景 に 幽 霊 のように 見 えます。 闇<br />
が 私 たちの 結 束 を 強 めているように 思 えました。<br />
明 け 方 に 頂 上 のメモリアルキロンボに 到 着 しました。 当 時<br />
の 状 況 を 今 に 伝 える 一 種 の 博 物 館 です。 感 動 的 です が、 厳<br />
しい 現 実 を 突 きつけられる 感 じがします。しばらくの 間 座 っ<br />
てさまざまなことを 考 えました。 頭 が 銅 色 のハチドリ、ポル<br />
トガル 語 でベイジャフロール、つまり 花 にキスする 鳥 が 私 に<br />
夜 を 徹 して 白 装 束 で 歩 く 私 たち<br />
は、 漆 黒 の 空 を 背 にした 幽 霊 のよ<br />
うだった<br />
馬 力 ( 上 )ウニアン・ドス・パルマレスの 生 活 のペースに 合 わせるXE。( 一 番 上 ) 歴 史 あるメモリアルキロ<br />
ンボでカポエイラの 伝 統 を 今 に 伝 える<br />
よって 自 信 を 持 ち、 自 分 の 場 所 を 見 つけることができまし<br />
た。 彼 女 の 話 を 聞 いて 私 は 胸 が 熱 くなりました。 最 近 彼 女<br />
は、 平 等 の 実 現 、 女 性 への 暴 力 と 闘 うための 心 の 支 えとし<br />
て、カポ エイラを 教 えています。<br />
次 の 朝 サルヴァドールを 去 る 頃 は、 交 通 量 は 大 幅 に 減 っ<br />
ていました。さらに 時 をさかのぼって、ウニアン・ドス・パウ<br />
マレスに 向 か います。ここはアメリカ 大 陸 最 大 の 奴 隷 の 共 同<br />
体 として 知 られていました。かの 有 名 なキロンボ・ドス・パウ<br />
マレスです。キロンボは 逃 亡 した 奴 隷 の 共 同 体 で、ここには<br />
約 30,000 人 が 住 んでいました。ここでカポエイラの 起 源 に<br />
迫 れることを 願 っています。<br />
停 止 信 号 になると、 露 天 商 が 押 し 寄 せフロントガラスのク<br />
リーニングや、ジャックフルーツのスナックを 勧 めてきます。<br />
無 数 のガソリンスタンドを 通 り 過 ぎ、 警 察 の 検 問 を 頻 繁 に<br />
受 けました。 間 もなくホドヴィア・エストラーダ・ド・ココとリ<br />
ーニャ・ヴェルデ、つまりココナッツハイウェイとグリーンラ<br />
インに 到 着 しました。BA-099という 味 気 ない 名 前 で 呼 ば<br />
れることのほうが 多 いですが。グリーンラインは 、 大 西 洋 岸<br />
の 森 林 、きらめく 白 い 砂 の 砂 丘 、ピンク 色 の 岩 が 織 りなす 複<br />
雑 な 地 層 を 通 り 抜 ける、ドラマチックなルートです。ロバと<br />
ナマケモノへの 注 意 を 促 す 道 路 標 識 がありました。でも 私<br />
にとっての 最 大 の 難 所 は、タールマック 舗 装 の 道 路 をカエ<br />
付 き 合 ってくれました。 仲 間 の 鳥 たちの 木 々からのさえずり<br />
を 除 けば、ここはとても 安 らかな 場 所 です。 奴 隷 として 働 か<br />
されたアフリカ 系 ブラジル 人 の 先 祖 の 想 像 を 絶 する 苦 難 だ<br />
けでなく、 途 方 もない 忍 耐 と 勇 気 を 記 念 する 場 所 です。<br />
奴 隷 の 所 有 者 は 家 族 や 部 族 を 分 断 し、 親 密 な 付 き 合 いを<br />
妨 げようとしたと 読 んだことがあります。さまざまな 場 所 か<br />
ら 連 れてこられた 人 々が 言 葉 なしで 意 思 疎 通 を 図 り、 団 結<br />
する 方 法 がカポエイラだったことは 容 易 に 想 像 がつきます。<br />
ここの 人 々は、 自 分 たちの 歴 史 を 感 じ、カポエイラを 先 祖 と<br />
の 絆 と 考 えています。カポエイラは 多 くの 人 にとっていまだ<br />
に 抵 抗 のシンボルであり、 社 会 の 不 平 等 に 対 するメッセー<br />
ジとなっています。<br />
かつて 違 法 とされた 芸 術 が、 現 在 は 若 者 の 更 生 に 大 きな<br />
役 割 を 果 たして い ることを 知 り、 社 会 との つ な がりが あ ると<br />
感 じました。カポエイラを 変 革 したい 人 、カポエイラでお 金<br />
を 儲 けたい 人 、カポエイラの 伝 統 を 守 りたい 人 、さまざまで<br />
す。しかし 、カポ エイラの 未 来 に つ いて 確 か なことが ひとつ<br />
だけあります。カポエイラは 進 化 し 続 けるということです。<br />
30 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 31
ダイニング<br />
酸 味 に<br />
夢 中<br />
人 気 上 昇 中 のキムチから、お 手 軽 なピクルスまで、 世 界 の 味 覚 の 最 新 トレ<br />
ンドは 酸 味 です。 多 彩 な 酸 味 を 解 説 してくれるのは、フードライターの<br />
マーク・ディア コノ。 彼 の 最 新 刊 は、その 名 もシンプルに Sour で す。<br />
スマックダック、チコリ、 根 用<br />
セ ロリ、ザ ク ロ の 実<br />
このレシピは4 月 末 の 初 夏 、 冬 の 足 跡 がまだ 残<br />
るころに 考 えたものです。 無 造 作 に 何 層 も 重 ね<br />
た サ ラダ を 作 ろうと 思 い まし た 。ダック の 甘 さ<br />
に、チコリと 根 用 パセリで 苦 味 のエッジを 効 か<br />
せて、シトラススマックスパイスとザクロの 実 の<br />
酸 味 を 二 重 に 加 えました。この 酸 味 を 重 ねるこ<br />
とで 、 複 雑 な 一 品 に なって い ます。<br />
ルバーブとラディッシュのサラダ<br />
とてもかわいいサラダです。このサラダはずっ<br />
と 頭 の 中 にあったもので、アイデアはほとんど<br />
完 成 していました。クローディア・ローデンのオ<br />
レンジを 使 ったレシピからヒントを 得 たのです<br />
が、 私 は 大 好 きなルバーブを 使 いたいと 考 えま<br />
した。ディル、ビネガー、ローズウォーターはとて<br />
も 重 要 です。フルーツの 甘 みと 新 鮮 なラディッシ<br />
ュが 絶 妙 にマッチします。 上 質 なビネガーは 良<br />
質 なワインと 同 じ 効 果 を 発 揮 します。<br />
32 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine / 33
ダイニング<br />
オ イスターミニョネット、4 つ の アレン ジ<br />
これは、まさに「 目 が 覚 める」 一 品 です。 酸 味 で 私 が 一 番 好 きなのは、 他 の 味 覚 にはないスリルです。<br />
私 はイギリス 沿 岸 部 のホイットスタブルに 長 年 住 んでいましたが、そこで 本 当 に 美 味 しいオイスターの<br />
味 を 覚 えました。とてもシンプルなレシピなので、パッションフルーツやライム 果 汁 のようなシャープな<br />
味 わ い が 少 し 欲 し い と 考 え ました 。 少 量 の エ シャロットで 落 ち 着 か せ て 、 塩 と 胡 椒 で まとめます。<br />
マルファッティ<br />
マルファッティは、ニョッキの 親 戚 のように 見 えますが、より 洗 練 された 食<br />
材 と 感 じています。ニョッキにはない 歯 ごたえがあります。セージ、バター、<br />
リコッタ。どれも 大 好 きな 食 材 です。セージバターにレモン 果 汁 を 入 れるこ<br />
とで、リコッタの 優 しい 酸 味 がさらに 軽 くなります。<br />
ホワイトガスパチョ<br />
懐 かしい 場 所 を 思 い 出 させてくれるスープ。アンダルシアに 行 ったことは<br />
ありません が 、 私 にとって の アホブランコのようなスープです。 一 瞬 、その 場<br />
所 にいるような 感 覚 になります。 食 材 の 組 み 合 わせは 独 特 です。ガーリック<br />
とアーモンドをふんだんに 入 れますが、ここではシェリービネガーが 女 王<br />
です。 材 料 だけを 見 ると、「 本 当 に 美 味 しいの?」と 思 うかもしれませんが、<br />
本 当 に 美 味 しくなるんです。<br />
34 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine / 35
ダイニング<br />
ドーサパ ン ケ ー キ とロ ーストカリフラ ワ ー 、ラ イタ を 使 い ま す。<br />
私 の 父 はいろいろ 組 み 合 わせるのが 好 きでした。スリランカ 時 代 に 覚 えたやり 方 ですね。このレシ<br />
ピには、さまざまなルーツ、 多 くの 文 化 が 結 集 しています。 愛 情 を 感 じるとともに、フレッシュで 夏 らし<br />
いフレーバーも 加 わっています。 酸 味 はレモンと 発 酵 バターによるものです。このパンケーキを 使 用<br />
し、すべての 材 料 を 混 ぜ 合 わせます。 次 の 日 まで 余 韻 が 残 る 素 晴 らしい 一 品 ですが、 味 わいはスト<br />
レートです。<br />
キムチ 韓 国 風 タコス<br />
キムチは 美 味 しくて 健 康 に 良 い 食 材 です。 文 化 も 反 映 した 素 晴 らしい 食<br />
材 です。キムチはどんな 料 理 にも 合 います。 私 は 調 味 料 として 使 用 し、 料<br />
理 に 愛 らしさを 加 えるのが 好 きです。このレシピでは、 西 海 岸 の「ジャンク<br />
フード」と 組 み 合 わ せ ましょう。 文 化 の 融 合 を 恐 れ ること は ありません 。 韓<br />
国 料 理 であり、カリフォルニア 料 理 でもあります。あらゆる 要 素 が 少 しずつ<br />
入 っています。<br />
コンブチャマヨネーズ<br />
自 分 だけのマヨネーズを 作 る 習 慣 ができると、 生 活 が 豊 かになります。お<br />
店 で 買 うものより、はるかに 美 味 しくなります。コンブチャを 作 っているとき<br />
に 、 街 か ら 離 れて い たり、 手 早 く 作 りた い とき は 、「 自 前 」で 作 れ れ ば 何 か<br />
と 便 利 でしょう。 一 番 美 味 しいマヨネーズになります。ノックアウトされるく<br />
らいの 美 味 しさです。<br />
36 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine / 37
ダイニング<br />
グーズベリーサルサ<br />
酸 っぱい 初 物 の 生 グーズベリーを 試 したいと 考<br />
えていました。ヒュー・フィアンリー=ホイッティン<br />
グストールのリバーコ テ ー ジ に い た とき に 、グー<br />
ズベリーサル サ をよく 作 って い ました が 、 数 年 か<br />
け てこ のレ シ ピを 考 案 しました 。 何 に で も 合 い<br />
ます。サバ、チーズ、ハムも 美 味 しいですが、アイ<br />
スクリームにかけても 絶 品 です。 鮮 やかな 色<br />
で、 元 気 が 出 て、どんな 料 理 にも 応 用 できます。<br />
ミントの 代 わりにコリアンダーでも 大 丈 夫 です。<br />
ラ ベ ー ジ を 除 くと 、さら に 鮮 や か に なりま す。 元<br />
気 の 源 の 一 皿 です。<br />
マルメロのピクルス<br />
1 年 の 終 わりには、 毎 年 大 量 のマルメロを 仕 入 れて、ウォッカに 入 れたり、 焼 いたりして 楽 しみます。あるとき、「ピクルスにすれ<br />
ば、もっと 美 味 しくなるかもしれない」と 思 いつきました。2、3 年 試 しましたが、いろいろ 入 れすぎてうまくいきませんでした。シ<br />
ンプルに 作 ってみたら、これが 正 解 だったんです。ハッカクで 温 かみを、 胡 椒 の 実 で 軽 いキックを 加 えて、クローブでクリスマス<br />
らしさをプラス。 完 全 な 秋 の 雰 囲 気 を 感 じられます。<br />
38 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 39
ダイニング<br />
JAGUAR F-TYPE<br />
誰 よりも 速 く、<br />
新 しい 世 界 へ。<br />
ロ ーストアプリコットとクレームフレッシュ、ザクロ 糖 蜜 、ウイキョウ<br />
クランブル<br />
私 が 自 慢 できる 数 少 ないうちの 一 つが、クランブルです。 新 鮮 なアプリコットが 手 に 入 ったときに、こ<br />
れに「ビネガーを 数 滴 入 れてみよう」と 試 してみたら、 劇 的 に 変 わりました。わずかな 酸 味 がすべての<br />
甘 味 を 引 き 出 し、 上 質 なアプリコットの 香 りを 引 き 出 したんです。カルダモン、アプリコット、ウイキョ<br />
ウ 、シ ョウ ガ 、ロ ーズ マリー 。そ れ ぞ れ の 味 わ い が あり、 美 しくまとまりま す。<br />
40 / Jaguar Magazine<br />
マーク・ディアコノは、カメラマン、 栽 培 家<br />
であり、7 冊 の 書 籍 で 受 賞 歴 のある 作 家<br />
で も ありま す。イン グランド・デ ボ ン 州 の オ<br />
ッターファ ー ム に 住 み 、あ まり 見 な い 食 材<br />
や 忘 れられた 食 材 の 栽 培 を 支 援 してい<br />
ます。<br />
2.0リッター 直 列 4 気 筒 エンジン、 最 高 出 力 300 馬 力 。 軽 量 で<br />
強 靭 な アルミニウムボディから、レーシングカーを 彷 彿 とさせる<br />
アクティブエキゾーストノートが 轟 く。 走 りのために 美 しく 研 ぎ 澄 ました<br />
フォルムと、 息 をのむ 圧 倒 的 なパフォーマンスを 誇 るF-TYPE。<br />
スポーツカーのニューノーマルへようこそ。<br />
jaguar.com<br />
詳 しくは、ジャガー 正 規 ディーラーにお 問 い 合 わせください。
信 じる 道 を 行 く<br />
どんな 旅 にも 回 り 道 は 大 切<br />
ソフィー・デ・オリベ イラ・バラータ<br />
義 肢 にも 美 しさを 追 求 したい。オルタナティブリム( 義 肢 )プロジェクト<br />
の 創 立 者 兼 アーティストが 語 ります。<br />
ストーリー ティム・ハ ルス<br />
ポールダンスのワールドチャンピオンが<br />
義 足 を 利 用 していると 聞 いて 驚 く 人 は 多<br />
いでしょう。しかし、 独 創 的 な 人 工 装 具 デ<br />
ザ イナ ー 、ソフィー・デ・オリベ イラ・バ ラ ー タ<br />
にとっては、 義 肢 はアートの 新 たな 可 能<br />
性 のひとつです。「この 義 足 は 砂 時 計 の 形<br />
に 作 りました。 中 央 がくびれています。そ<br />
こからひづめが 思 い 浮 かび、ポールダン<br />
スに 適 した 構 造 を 考 案 できました。 後 ろ<br />
にあるのは 交 換 可 能 なクローム 製 の 彫<br />
刻 です。これは 人 の 動 きに 合 わせて 回 転<br />
します 」。 彼 女 は ア ンドル ー・グレ ゴリー の<br />
ために 製 作 中 の 義 足 についてこのように<br />
説 明 してくれました。 彼 はバイクの 事 故 で<br />
脚 を 切 断 した 後 、ポールダンサーとして 輝<br />
か し い 成 功 を 収 めました 。<br />
デ・オリベ イラ・バラータの 最 近 のプロジ<br />
ェクトには、ダーリントン 鉄 道 博 物 館 の 展<br />
示 用 に 依 頼 された 列 車 乗 降 用 の 義 足 、キ<br />
ャンドゥコダンスカンパニーのパフォーマ<br />
ーのために 作 成 した 鳩 時 計 付 きの 木 彫<br />
の 義 足 などがあります。「 小 さな 鳥 が 飛 び<br />
出 す 仕 掛 けになっています」と 彼 女 は 言<br />
います。「 軸 に 取 り 付 けた 振 り 子 によって、<br />
どの 方 向 にも 脚 を 動 かすことができます。<br />
振 り 子 は 止 まることなく 動 き 続 けます」。<br />
彼 女 の 人 工 装 具 に 対 する 関 心 は、アー<br />
トファウンデーションの 講 習 の 一 環 で 病<br />
院 で 働 いた 経 験 から 生 まれました。 彼 女<br />
は 英 国 トップクラスの 人 工 装 具 メーカー<br />
で 働 くようになり、 本 物 の 義 肢 を 作 りまし<br />
た 。そ こ で 、こ れ ま で に な い 義 肢 を 作 りた<br />
い と 考 え る ように なりまし た 。き っ か け は 、<br />
新 しい 義 足 を 作 るために 毎 年 やってくる<br />
少 女 との 出 会 いでした。「 彼 女 は 毎 回 ち<br />
ょっと 違 ったものを 希 望 しました。 義 足 の<br />
一 番 上 に 漫 画 のキャラクターを 入 れると<br />
か 」。<br />
その 後 アレキサンダー・マックイーンの<br />
ファッションショーで、 両 脚 が 義 足 のアス<br />
リート、エミー・マランスが 装 着 していた 美<br />
しい 木 製 の 義 足 を 見 て、 彼 女 のキャリア<br />
は 決 まりました。 数 年 後 オルタナティブリ<br />
ムプロジェクトを 立 ち 上 げ、 先 鋭 的 な 新 し<br />
い 人 工 装 具 を 作 り 続 けています。 身 体 が<br />
不 自 由 な 人 への 固 定 観 念 を 破 り、 身 体 改<br />
造 の 限 界 に 挑 戦 するためです。<br />
「 義 肢 作 りを 楽 しんでいます。 人 間 の<br />
肉 体 への 固 定 観 念 を 覆 したいと 考 えてい<br />
ます」と 彼 女 は 言 います。「 想 像 力 を 解 き<br />
放 ち 、 可 能 性 を 広 げ て い きた い で す 」。<br />
アート を 生 む 手 、ア ート に よる 手 :イングランド 南 部 の 工 房 で 作 業 中 のソフィー・デ・オリベイラ・バラータ( 上 )。 彼 女 の 個 性 的 なオーダー<br />
メイドの 一 部 を 紹 介 します。ミュージシャンのビクトリア・モデスタが 使 用 したスパイクレッグ( 左 )、モデルのケリー・ノックスのための「 植<br />
物 の 触 手 」であるヴァイン(つる)( 左 下 )、 鉄 人 ジェームズ・ヤングのための 超 人 的 能 力 を 持 つ 腕 、ファントムリム( 右 端 )。<br />
画 像 :PORTRAIT BY OPHELIA WYNNE; PROJECTS BY OMKAAR KOTEDIA & LUKASZ SUCHORAB<br />
42 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 43
アート<br />
新 しい 視 点<br />
永 遠 の 美 を、 永 遠 に 楽 しむ。 新 型 Jaguar F-TYPEとデザインクラシックとの 出 会 い。<br />
美 の 殿 堂 入 りした 作 品 たちが、 新 しい 解 釈 で 生 まれ 変 わりました。<br />
写 真 :ジェームズ・デイ<br />
生 まれ 変 わった 逸 品 たち: F-TYPEは、ジャガーのDNAをそのままに、 最 先 端 の 性 能 とルックスを 追 求 した、 究 極 のジャガースポーツカーです。このページに<br />
掲 載 のアイテム: Gibson Les Paul Modernギ ター( フェ ード ペ ラムブ ル ー ):gibson.com、Globe Trotter St Moritz 20"キャリーオンスーツケース:<br />
globe-trotter.com、William & Sonスネ ーク・ラダーボ ード、Gerrit Thomas Rietveld for Cassina Limited Edition 635チ ェア( ブラック、グリー ン 、<br />
ホ ワイト ):conranshop.com、Jules Pansu Picasso「Seated Woman in a Blue Dress」クッ シ ョン : conranshop.com、Volta Le Grand Etourdi<br />
モビール: conranshop.com、Poul Henningsen for Louis Poulsen PH 5ミニペンダントライト: conranshop.com、Burberry Kensington<br />
Heritage Trench Coat: uk.burberry.com、Launer London Traviataマルチカラーハンドバッグ: launer.com、Nike Air Max 270 Reactトレーナー:<br />
nike.com、Levi’s 501 Original Fitジーンズ: levi.com、Polaroid OneStep 2: polaroid.com、Anglepoise Original 1227ジャイアントフロア<br />
ランプ: anglepoise.com、Ligne Roset Togoソファ( ゴ ヤレ ッド ア ル カ ン タ ー ラ ): ligne-roset.com、Christian Louboutin Clare 80パンプス:<br />
eu.christianlouboutin.com<br />
44 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 45
アート<br />
未 来 指 向 への 回 帰 : ホイールアーチまで 回 り 込 ん<br />
だ 新 しいLEDテールライト。F-TYPEの 力 強 いスタ<br />
ンスをさらに 際 立 たせます。Poul Henningsen<br />
for Louis Poulsen PH 5ミニペンダントライト:<br />
conranshop.com、Launer London Traviata<br />
マルチカラーハンドバッグ: launer.com、Leica<br />
TL2: leicastore-uk.co.uk、Paul Smith for<br />
Anglepoise Type 75: conranshop.co.uk<br />
インテリアのライン: 贅 沢 な 素 材 、こだわりのクラフトマンシップ、 美 しい<br />
ディテール - F-TYPEは、インテリアも 心 躍 る 空 間 です。<br />
Gibson Les Paul Modern(フェードペラムブル ー ):gibson.com、<br />
Paul Smith for Anglepoise Type 75: conranshop.co.uk、<br />
Volta L’Eruditモビール: conranshop.co.uk<br />
46/ Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 47
アート<br />
バッグスタイル: 大 容 量 のトランクルームに<br />
荷 物 を 収 納 。 週 末 が 待 ち 遠 しくなります。<br />
Bao Bao Issey Miyake LucentマットPVC<br />
トートバッグ、Trackロゴプリント PVCトート<br />
バッグ、Geometricマークアップバッグ:<br />
isseymiyake.com<br />
視 線 を 奪 うデザインたち: 細 く 後 方 に 伸 びる 新 型 ヘッ<br />
ドライト。F-TYPEのエアロダイナミックな<br />
ボディラインと 調 和 します。<br />
Gibson Les Paul Modern(フェードペラム<br />
ブル ー ):gibson.com、Charles and Ray Eames<br />
for Vitra DAXプ ラスチック ア ー ムチ ェア( ダー ク<br />
ベース、Hopsakシート 素 材 ): conranshop.<br />
co.uk、Comme des Garçons x Converse<br />
トレーナー: converse.com、Mulberry<br />
Heritage Bayswater( ポ ー セリンブル ー、 大 判<br />
ター タン チェック ):mulberry.com、Polaroid<br />
OneStep 2: polaroid.com、Christian<br />
Louboutin Clare 80パンプス:<br />
eu.christianlouboutin.com、Anglepoise<br />
Original 1227ジャイアントフロアランプ:<br />
anglepoise.com、Ligne Roset Togoソファ<br />
(ゴヤレッドアルカンターラ): ligne-roset.com<br />
大 胆 なライン: 彫 刻 のようなボディが、 最 新 の<br />
シャシーを 包 み 込 みます。<br />
Christian Louboutin Clare 80パンプス:<br />
eu.christianlouboutin.com<br />
48 / Jaguar Magazine
アート<br />
パンツのお 尻 の 部 分 : 新 しいフロントバ<br />
ンパーと 少 し 広 くなったグリルの 下 には、<br />
オプションの575PSスーパーチャージド<br />
V8エンジンが 搭 載 されています。<br />
Ligne Roset Togoソファ( ゴ ヤレ ッド<br />
アルカンターラ): ligne-roset.com<br />
随 所 に 光 る 熟 練 の 技 : ドライバー 視 点 で 設 計 さ<br />
れたインテリアには、12ウェイアジャスタブルパ<br />
フォーマンスシート、12.3インチHD TFTインス<br />
トルメントクラスター、Meridianサウンドシステ<br />
ムを 装 備 しています。<br />
Mulberry Heritage Bayswater(ポーセリン<br />
ブル ー、 大 判 ター タン チェック ):mulberry.<br />
com、Jaeger LeCoultre Polaris Date<br />
ウォッチ: jaeger-lecoultre.com<br />
50 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 51
アート<br />
クリエイティビティ<br />
コネクション<br />
ビクトリア 調 の 壁 紙 はiPhoneにどんな 影 響 をもたらしたのか?<br />
そして、モネはトレーシー・エミンの 作 品 である 散 乱 したベッドルームとどんな 関 連 性 があるのか?<br />
BBCアートエディターのウィル・ゴンペ ルツ がお 届 けします<br />
MARCEL DUCHAMP, FOUNTAIN (1917), GALLERY SCHWARZ EDITION, 1964 © ASSOCIATION MARCEL DUCHAMP / ADAGP, PARIS AND DACS, LONDON 2020<br />
パンクアート<br />
1917 年 に 物 議 をかもしたデュシャンの 泉<br />
は、とてもパワフルな 作 品 です<br />
歳 を 重 ねると、 歴 史 とは 当 てにならない 証 人 であるこ<br />
とが 次 第 にわかってきます。たとえば、 私 の 妻 は、1993<br />
年 の 結 婚 式 で 私 のスピーチがつまらなかったことをは<br />
っきり 覚 えていると 言 います。 一 方 、 私 は、 笑 い 話 を 次<br />
から 次 へと 話 して 爆 笑 の 渦 を 巻 き 起 こしていたことし<br />
か 覚 えていません。ぜんぜん 違 う、と 妻 は 反 論 します。そ<br />
れは 花 婿 の 介 添 人 のスピーチよ。<br />
... 過 去 をさかのぼっていくほど、「 事 実 」は 混 迷 してい<br />
くようです。たとえば、モダニズムとその 従 兄 弟 であるモ<br />
ダンアートの 歴 史 は、1917 年 のニューヨークで、 哲 学 的<br />
なフランス 人 芸 術 家 のマルセル・デュシャンが、 男 性 用<br />
小 便 器 をコンテンポラリーアート 展 覧 会 に 持 ち 込 んだ<br />
ことから 始 まったと 言 えるかもしれません。この 出 来 事<br />
が、ダダイズム、シュールレアリズム、 抽 象 表 現 主 義 、パ<br />
ンク、サミュエル・ベケットやオルタナティブコメディに 直<br />
接 影 響 を 与 えたのでしょうか?<br />
デュシャンは 概 念 論 の 父 であり、 何 でも 芸 術 になりう<br />
るという 思 想 を 生 み 出 しましたが、その 思 想 があるから<br />
こ そ 、トレ ー シ ー・エ ミ ン の「 Unmade Bed( 整 えられてい<br />
ないベッド)」に200 万 ポンドの 値 が 付 き、 他 のベッドに<br />
は そん な 価 値 が な い の か も し れ ま せ ん 。し か し 、モ ダ ン<br />
ムーブメントの 号 砲 を 鳴 らしたのは 本 当 に 彼 だったの<br />
でしょうか?あるいは、その2 年 前 の1915 年 、ロ シ ア 人<br />
芸 術 家 のカジミール・マレーヴィチが 白 いキャンバスに<br />
黒 い 正 方 形 を 描 き、 芸 術 は「ゼロ」に 回 帰 して 極 めて 抽<br />
象 的 な 表 現 に 収 束 すると 宣 言 したときが 発 端 なのでし<br />
ょうか?<br />
それとも、1874 年 、ク ロ ード・モ ネ 、ポ ー ル・セ ザ ンヌ 、<br />
ベルト・モリゾなどがフランスの 芸 術 協 会 に 反 旗 をひる<br />
がえし、 毎 年 開 催 されるパリサロンの 大 展 覧 会 と 直 接<br />
競 合 する、 急 進 的 な 新 進 作 品 の 展 覧 会 を 開 催 したとき<br />
が 始 まりなのでしょうか? 美 術 批 評 家 のルイス・レロイ<br />
は、 彼 らをレオナルド・ダ・ビンチのように 描 けなかった<br />
単 なる「 印 象 派 」と 片 付 けています。これは 成 り 上 がり<br />
の 新 人 をこき 下 ろす 批 評 でしたが、 結 果 的 に 彼 らは 世<br />
界 で 最 も 有 名 な 近 代 芸 術 の 旗 手 になりました。<br />
また、 詩 人 で 批 評 家 のシャルル・ボードレールが 有 名<br />
な エッ セ イ「 現 代 生 活 の 画 家 」を 記 した1863 年 が 起 点<br />
なのかもしれません。この 本 で、 彼 はパリの 草 分 け 的 な<br />
芸 術 家 に 対 して、 古 代 神 話 や 聖 人 を 題 材 として 選 ぶの<br />
を 止 め、 国 際 都 市 の 都 会 生 活 におけるリアルでエキサ<br />
イティングな 現 実 を 描 くことを 提 唱 しています。<br />
彼 のエッセイのインクがまだ 乾 ききらないころ、エドゥ<br />
ア ー ル・マ ネ は 、 寝 そ べ る 裸 婦 を 描 い た「 オランピア」で<br />
物 議 をかもしました。ギリシャ 神 話 の 女 神 ではなくパリ<br />
の 娼 婦 が 主 題 だったため、アカデミーの 重 鎮 たちから<br />
批 判 を 浴 びましたが、スケッチのような 大 胆 さと 平 面 的<br />
なカラーブロックが 前 衛 的 な 芸 術 家 集 団 を 鼓 舞 するこ<br />
とになりました。 優 れた 作 品 ですが、モダニズムの 到 来<br />
を 告 げる 作 品 とは 言 えないでしょう。さらに2 年 さかの<br />
ぼり、 運 河 を 渡 りましょう。<br />
ロンドンのウェストエンドとシティの 間 の 中 間 地 帯 に<br />
あるホルボーンのひっそりとしたレッドライオン 広 場<br />
で、1861 年 4 月 、モリス・マーシャル・フォークナー 商 会 が<br />
設 立 されました。ここでクリエイティブな 才 能 を 発 揮 し<br />
たのが、 顎 ひげを 生 やした 中 世 美 術 家 のウィリアム・モ<br />
リスでした(モーリス・モータースのウィリアム・モーリスと<br />
は 別 人 です)。<br />
彼 は 産 業 化 の 時 代 を 生 涯 毛 嫌 いし、 美 術 批 評 家 の<br />
ジョン・ラスキンを 崇 拝 していました。ラスキンは 著 書<br />
「ヴェネツィアの 石 」で、 機 械 による 大 量 生 産 が「 職 人 の<br />
地 位 の 低 下 」を 招 き、 職 人 が 機 械 の 歯 車 に 成 り 下 がっ<br />
ていると 主 張 しました。モリスはこの 考 えに 賛 同 しまし<br />
た。 彼 は、 労 働 は 高 尚 な 活 動 であるべきだと 考 えて、<br />
52 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine /
アート<br />
テキスタイルデザイン/モリス/1862 年<br />
オランピア/マネ/1863 年<br />
理 想 主 義 的 な 視 点 でアーサー 王 の 伝 説 や 中 世 のギル<br />
ドを 振 り 返 りました。そこでは 見 習 いから 職 人 そして 大<br />
御 所 にまでなれる 進 歩 的 な 職 場 教 育 システムを 備 えて<br />
い た の で す。<br />
伝 統 的 な 職 人 技 術 と 自 然 回 帰 という 美 学 がモリス・<br />
マーシャル・フォークナー 商 会 の 気 質 であり、モリスはス<br />
テンドグラスの 窓 や 彫 刻 を 施 したオーク 家 具 のデザイ<br />
ンに 精 力 的 に 取 り 組 みました。モリスは、 装 飾 的 な 壁 紙<br />
のパターン 作 成 から、 精 巧 なタペストリー 織 りの 作 業 ま<br />
で、 芸 術 とハンドクラフトを 融 合 することに 専 念 しまし<br />
た。 彼 は 一 般 大 衆 も 購 入 できる 製 品 を 作 ることを 望 ん<br />
でいましたが、それは 現 実 的 にかなわず、 結 局 、 富 裕 層<br />
が 顧 客 の 中 心 となりました。 彼 らは 初 期 の 社 会 主 義 者<br />
であり、 不 本 意 な 顧 客 でした。しかし、 彼 は 取 りつかれ<br />
バウハウス 運 動 /グロピウス/1919 年<br />
たように 作 業 に 打 ち 込 みました。<br />
モリスの 死 から 数 か 月 後 の1896 年 、ドイツの 外 交 官<br />
ヘルマン・ムテジウスは、 穏 当 なスパイ 活 動 のためにロ<br />
ンドンに 赴 任 しました。 彼 の 公 式 な 役 職 は「 文 化 的 アタ<br />
ッシェ( 大 使 館 員 )」でしたが、 真 の 目 的 はイギリスの 商<br />
業 的 成 功 や 生 産 性 向 上 の 秘 密 を 探 ることでした。ムテ<br />
ジウスにとって、イギリスはおもしろい 国 だと 映 ったよう<br />
です。 厳 格 な 階 級 制 度 や、 紅 茶 を 入 れる 前 にミルクをカ<br />
ップに 入 れておく( 熱 湯 で 陶 器 が 割 れるのを 防 ぐため)<br />
黒 の 正 方 形 /マレーヴィチ/1915 年<br />
WILLIAM MORRIS, DESIGN FOR TRELLIS WALLPAPER, 1862/ÉDOUARD MANET, OLYMPIA, 1863, MUSÉE D’ORSAY, PARIS/KAZIMIR MALEVICH, BLACK SQUARE, 1915, TRETYAKOV<br />
GALLERY, MOSCOW/JOHN AINSWORTH, WALTER GROPIUS’ OFFICE, 2018, HERITAGE IMAGES/TRACEY EMIN, MY BED, 1998 © TRACEY EMIN.<br />
ALL RIGHTS RESERVED, DACS /ARTIMAGE 2020. IMAGE COURTESY SAATCHI GALLERY, LONDON. PHOTO: PRUDENCE CUMING ASSOCIATES LTD<br />
マイベッド/エミン/1998 年<br />
iPhone/Apple/2007 年<br />
といった 風 変 わりな 習 慣 も 含 めて。まもなく、ウィリアム・<br />
モリスの 作 品 を 目 にした 彼 は、その 作 品 に 心 を 奪 われ<br />
ました 。<br />
1904 年 に 帰 国 す ると 、 彼 は「 イギリスの 住 宅 」と い う<br />
三 巻 組 の 本 を 執 筆 し、アーツアンドクラフツ 運 動 につい<br />
て 熱 く 語 りました。 彼 は 部 局 の 上 司 に 対 して、イギリス<br />
は 商 業 的 に 素 晴 らしい 発 見 をしたが、その 価 値 に 気 づ<br />
いていないと 報 告 し、コスト 効 果 に 優 れた 大 量 生 産 と<br />
モリスを 始 めとする 芸 術 家 による 繊 細 なデザインを 融<br />
合 させるべきだと 指 摘 しました。そうすることで、 工 業 製<br />
品 に 思 いや 魂 が 宿 り、 消 費 者 にとって 大 いに 歓 迎 すべ<br />
き 製 品 になると 訴 えたのです。<br />
数 か 月 以 内 に、ドイツ 政 府 は 国 内 全 土 での 工 業 デザ<br />
インの 教 育 を 認 可 しました。1907 年 、ムテ ジ ウス はドイ<br />
ツ 工 作 連 盟 を 設 立 し、 建 築 家 、 芸 術 家 、 職 人 たちがドイ<br />
ツ 産 業 界 と 連 携 して 魅 力 的 な 製 品 を 生 み 出 せるように<br />
支 援 しました。ペーター・ベーレンスもその1 人 です。 自 由<br />
クリエイティブな 精 神 は、<br />
工 業 製 品 に 思 いや 魂 を<br />
与 える<br />
奔 放 な 画 家 として 活 躍 した 後 、 電 気 メーカーのAEGの<br />
クリエイティブディレクターに 就 任 し、インダストリアルデ<br />
ザインの 先 駆 けとして 名 作 を 残 しました。 彼 の 後 進 に<br />
は、のちに20 世 紀 の 巨 匠 となるルートヴィヒ・ミース・フ<br />
ァン・デル・ローエ 、ル・コルビュジエ 、ヴァルター・グロピ<br />
ウスが 名 を 連 ねています。グロピウスは1919 年 に 伝 説<br />
的 なバウハウスの 創 立 者 の1 人 になり、モリスが 記 した<br />
クリエイティブ 宣 言 を 実 践 することになりました。<br />
つまり、モダニズム 史 の 序 章 を 執 筆 したのは、 顎 ひげ<br />
姿 の 巨 漢 のイギリス 人 であり、アールデコやアールヌー<br />
ボーを 経 て、 彼 が 主 導 したアーツアンドクラフツ 運 動 が<br />
刺 激 を 与 えたと 言 えるでしょう。モリスの 精 神 は、<br />
Jaguar E-typeからApple iPhoneま で 、あ ら ゆ<br />
るデザインに 息 づいています。その 精 神 は 今 なお 多 く<br />
の 場 面 でモダニストの 美 学 を 放 ち、その 勢 いが 衰 える<br />
気 配 は 微 塵 もありません。<br />
54 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 55
マネー<br />
エシカルファンド<br />
見 た 目 も 美 しく、 地 球 に 害 をもたらさず、スプレッドシートで 数 字 を<br />
比 較 するよりほんの 少 しエキサイティングな 投 資 対 象 とは?<br />
文 : ビル・ダン<br />
56 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 57
マネー<br />
ほとんどの 人 は、 人 や 環 境 に 役 立 つもの、あるいは 少 なくと<br />
も 地 球 に 害 を 及 ぼさないものに 投 資 することを 望 みます。フィ<br />
ナ ン シャル アドバ イザ ーと 話 すと 、そうし た エ シ カ ル な 投 資 の た<br />
めのファンドが 数 多 くあることに 気 付 きます。さらにうれしいこ<br />
とに、 多 くの 場 合 、こうしたファンドは 成 果 を 上 げています。<br />
Interactive Investorサイトが6つのエシカルファンドと 通 常 の<br />
ファンドを 分 析 したところ、5つのケースでエシカルファンドが<br />
首 位 という 結 果 が 出 ています。Interactive Investorのパーソナル<br />
ファイナンス 責 任 者 、モイラ・オニール 氏 は 語 ります。「 多 くのケ<br />
ースで、エシカルファンドは 同 じ 投 資 会 社 が 運 営 する 同 様 のフ<br />
ァンドより 高 い 成 果 を 上 げています。<br />
しかし、エシカルな 投 資 が 退 屈 だと 感 じているのはあなた<br />
一 人 ではありません。 将 来 の 備 えがきちんとあって、 自 分 の 楽<br />
しみのためにわずかばかりの 現 金 を 投 資 する 場 合 、エシカル<br />
に 投 資 しながら 所 有 する 楽 しみも 得 られる 投 資 対 象 とは 何 で<br />
しょうか?<br />
ハイエンドなデザインの 世 界 は、スタート 地 点 としてふさわし<br />
いでしょう。それは、 素 材 の 原 産 地 や 持 続 可 能 な 製 品 を 気 に<br />
する 顧 客 たちの 間 で 急 速 に 浸 透 してきました。 未 来 への 投 資<br />
を 考 えている 方 は、 将 来 的 にクラシックとなるコレクターアイテ<br />
ムを 検 討 しましょう。<br />
ウェールズのアーティストであり 工 業 デザイナーのロス・ラブグ<br />
ローブ 氏 は、イタリアの 家 具 会 社 Natuzzi 社 と 提 携 し、 責 任 あ<br />
る 調 達 を 実 践 し 再 生 可 能 な 原 材 料 を 使 用 した、Ergoコレクシ<br />
ョンを 生 み 出 しました。ラブグローブ 氏 は 次 のように 語 っていま<br />
す。「 私 は 家 具 のデザインをすることはめったにありません。むし<br />
ろデザインの 意 識 そのものを 変 えたいと 思 っていました」Ergo<br />
は、FSC 認 証 の 植 林 地 で 伐 採 した 木 材 を 使 用 し、 部 材 は 金 属<br />
を 使 わず 互 いにはめ 込 んで 固 定 できるように 入 念 に 開 発 して<br />
います。 使 用 する 接 着 剤 は 水 性 で、ホルムアルデヒトを 含 んで<br />
いません。<br />
未 来 のクラシックとなるエシカルなデザインのもう1つの 例 と<br />
して、オーストラリアのデザイナー、ブロディ・ネイル 氏 のCapsule<br />
があります。これは 海 辺 のマイクロプラスチック・ペレットを 詰 め<br />
た 砂 時 計 です。 実 はこのマイクロプラスチック 粒 子 の 大 部 分 は、<br />
彼 の 生 まれ 故 郷 タスマニアの 多 くの 砂 浜 で 見 かけるものです。<br />
彼 はこの 事 実 を 伝 えるためにCapsuleを 制 作 し まし た 。ブ ロ ディ<br />
氏 は、NGOのグローバルネットワーク、 環 境 当 局 、さらに 漂 着<br />
物 を 拾 う 人 々の 協 力 を 得 ています。そのため、コレクターは<br />
Capsuleに 入 っているプラスチックがどこで 採 取 されたものか<br />
明 確 に 把 握 できます。パーソナライズされた 希 少 な 受 注 生 産 品<br />
「 未 来 に 対 する 投 資 であるのは<br />
もちろん、さらに 自 宅 を 美 しく<br />
彩 るオブジェにもなります」<br />
写 真 ( : 前 のページ)MIKE LAWRIE( こ の ペ ー ジ )デ ザ イン :<br />
CAPSULE OCEAN PLASTIC HOURGLASS、デ ザ イナ ー :BRODIE NEILL、<br />
写 真 : BRODIE NEILL STUDIO、GUY BELL<br />
ブ ロディ・ネ イル の 作 品 とデ ヴィッド・ギ<br />
ル モ ア の ギ ター は 、 地 球 に 害 をも た ら<br />
すことなく 銀 行 口 座 の 残 高 を 増 やすこ<br />
とができます<br />
として、 未 来 に 対 する 確 かな 投 資 であることはもちろん、さらに<br />
自 宅 を 美 しく 彩 るオブジェにもなります。<br />
ファッション 業 界 は、ファッショナブルに 遅 れて 持 続 可 能 な<br />
パーティに 到 着 しました。2019 年 には、ステラ・マッカートニー<br />
が#whomademyclothesというハッシュタグで 知 られる 国 連 の<br />
「ファッション 産 業 の 気 候 アクション 憲 章 」を 創 設 し、バーバリ<br />
ーは 持 続 可 能 なラグジュアリーパートナーのElvis & Kresseと<br />
提 携 し、 皮 革 の 廃 棄 物 を 新 たなアクセサリーとしてリサイクルし<br />
ています。ラグジュアリー 製 品 大 手 のLVMHはユネスコとの 契<br />
約 に 署 名 し、プラダは 世 界 最 大 の 共 同 金 融 機 関 であるクレデ<br />
ィ・アグリコル 銀 行 グループから4,290 万 ユーロの 融 資 を 取 り<br />
付 けました。このファッション 史 に 残 るプラダの 融 資 は、 製 品 と<br />
企 業 運 営 における 持 続 可 能 性 の 目 標 達 成 が 条 件 となってい<br />
ます。エシカル 投 資 家 であれば、プラダのバッグを 購 入 するの<br />
も1つの 方 法 です。バッグという 製 品 は、 服 のように 劣 化 したり<br />
破 れたりしないため、10 年 経 っても 価 値 が 目 減 りせず、むしろ<br />
値 が 上 がることもあります。こうしたプラダ 製 品 はますます 増 加<br />
して い ます。た とえ ば 、Re-Nylonバッグコレクション<br />
は、ECONYL®というプラスチック 廃 棄 物 を 再 生 した 無 限 にリ<br />
サイクル 可 能 な 糸 を 使 って 製 造 されています。<br />
エシカルな 意 識 を 持 つファッショニスタは、 投 資 額 の 増 加 に<br />
合 わせて、 賢 く 買 い 物 しなければなりません。 投 資 家 はイノベー<br />
ションと 初 物 に 投 資 するべきです。 時 間 とともに 価 値 が 上 がる<br />
可 能 性 が 高 いからです。クレージュは、 新 しい 藻 類 バイオマス<br />
ビニールを 採 用 し、プラスチック 使 用 量 が 従 来 の 素 材 の「10 分<br />
の1」になったことを 明 らかにしています。しかし、さらに 優 れた<br />
投 資 対 象 があります。ニューヨークのデザイナー、シャーロット・<br />
マ カ ー ディー 氏 は 、プ ラスチ ッ ク を まっ た く 使 用 して い ま せ ん 。 彼<br />
女 がデザインした 耐 水 性 のあるAfter Ancient Sunlightジャケッ<br />
トは、 炭 素 を 吸 着 する 藻 類 バイオマスプラスチック 素 材 で 作 ら<br />
れています。 防 水 ワックスについても、 従 来 品 は 石 油 由 来 (パラ<br />
フィンを 使 用 )や 蜜 ろう 由 来 (つまり、 非 ヴィーガン 製 品 )だった<br />
ため、 植 物 由 来 製 品 の 独 自 開 発 に 踏 み 切 っています。<br />
中 古 (ただし 未 使 用 )のスニーカーも 投 資 候 補 になります。<br />
Yeezyという 会 社 は、ラップ 界 の 大 御 所 カニエ・ウエストが<br />
設 立 しました。Yeezyのスニーカーは4 万 足 未 満 という 限 定 生<br />
産 だったため、 中 古 品 (ただし 未 使 用 )の 価 値 が 瞬 時 に 上 がり<br />
ました。Sole Collectorのブログでは、 多 くのYeezy 製 のスニー<br />
カーには 元 値 の5 倍 以 上 の 価 値 があると 評 価 しています。カニ<br />
エのNike Air Yeezy 2 Red Octoberシューズは、2014 年 に250<br />
ドルで 販 売 されましたが、 現 在 では5,000ドル 以 上 の 価 が 付<br />
い て い ま す。さら に 、2008 Nike Air Yeezy 1 Black Glow(サン<br />
58 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 59
マネー<br />
プル 制 作 品 )は、Rare Pair New Yorkにて25 万 ドルで 売 却 され<br />
て い ます。<br />
Yeezyは、 収 益 を 持 続 可 能 な 取 り 組 みに 投 じています。 本 社<br />
のあるワイオミング 州 コーディの4,000エーカーの 大 農 場 では、<br />
綿 の 水 耕 栽 培 の 実 験 を 行 っています。 水 耕 栽 培 が 実 現 すれ<br />
ば、 収 穫 までに 必 要 な 水 の 量 を 大 幅 に 削 減 できます。( 綿 は 環<br />
境 に 最 も 優 しくない 原 料 の1つです。 生 産 する 原 料 1キロあた<br />
り1 万 リットルの 水 を 必 要 とします)。<br />
快 楽 主 義 的 な 若 き 投 資 家 たちは、かつては 一 般 的 なワイン、<br />
腕 時 計 、ウィスキーが 投 資 対 象 でしたが、 今 ではエシカルな 選<br />
択 肢 として 中 古 品 に 積 極 的 に 投 資 しています。Classic Art<br />
GroupのChristie’s Auction Houseグローバルマネージングディ<br />
レクターのカール・ヘルマンス 氏 は 次 のように 考 察 しています。<br />
「ミレニアル 世 代 は 急 速 に 顧 客 の 中 心 層 になりつつあり、 彼<br />
らは 持 続 可 能 性 をより 意 識 的 に 捉 えています。 彼 らの 中 古 品<br />
に 対 する 関 心 の 高 さを 実 感 しています」<br />
ヘルマンス 氏 は、この 傾 向 はアンティーク 家 具 、 彫 刻 、 磁 器<br />
などの 装 飾 美 術 品 に 対 して 顕 著 だと 述 べています。「ここ 数 十<br />
年 、アンティーク 家 具 や 巨 匠 による 絵 画 作 品 は、 自 宅 を 彩 る 投<br />
資 対 象 としてファッショナブルとは 言 えませんでした。しかし 今<br />
「 私 たちは 第 2の 顧 客 革 命 の 瀬 戸 際 にいます」<br />
リチャード・カーティス<br />
Natuzzi Ergoシリーズはスタイリッシ<br />
ュで 快 適 なのはもちろん、 持 続 可 能 性<br />
にも 配 慮 しています<br />
では、クライアントはこうした 美 術 品 の 価 値 を 見 直 し、 現 代 的<br />
なアートやデザインと 比 較 して、より 高 い 投 資 的 価 値 を 見 い 出<br />
しています。こうしたオブジェには、 限 りある 地 球 の 資 源 をこれ<br />
以 上 浪 費 することなく 数 百 年 の 時 を 経 てきたというアドバンテ<br />
ー ジ が あります。さら に 、 数 世 紀 に わ た って 築 き 上 げら れ た 、 個<br />
性 とも 言 うべき 風 格 があります」<br />
チャップマン 兄 弟 やダミアン・ハーストなどのBrit School 出 身<br />
者 の 作 品 は、 魅 力 的 な 投 資 対 象 に 見 えますが、 市 場 がピーク<br />
のときに 購 入 してようとしています。さらに、 作 品 の 寿 命 も 忘 れ<br />
てはなりません。 油 絵 作 品 は 耐 久 性 に 優 れていますが、コンセ<br />
プト 作 品 、たとえばハーストの「 生 者 の 心 における 死 の 物 理 的<br />
不 可 能 性 」のタイガーシャークは、 時 の 洗 礼 (この 場 合 は 腐 食 )<br />
をすでに 受 けています。ヘルマンス 氏 が 簡 潔 にまとめています。<br />
「どれほどのコンテンポラリー 作 品 が 時 の 試 練 に 耐 えられる<br />
のでしょうか?」<br />
環 境 への 意 識 が 高 い 投 資 家 が、オークションで 中 古 作 品 を<br />
購 入 する 際 に 考 慮 すべきもう1つの 要 素 は、 投 資 した 資 金 が<br />
実 際 に 何 に 使 われるのかということです。2019 年 、Christie’s<br />
New Yorkは、オークション 史 上 最 大 で 最 も 多 岐 にわたるギ<br />
ターコレクション「デヴィッド・ギルモア ギターコレクション」の<br />
オークションを 開 催 しました。ピンク・フロイドのフロントマンが<br />
出 品 した126ロットの 落 札 金 額 は2150 万 ドルに 上 り、 収 益 金<br />
は 草 分 け 的 な 環 境 法 令 慈 善 団 体 のClientEarthに 全 額 寄 付 さ<br />
れました。<br />
約 400 万 ドルの 値 が 付 いた 伝 説 的 なBlack Stratocasterとい<br />
うギター(ピンク・フロイドのアルバム「The Dark Side of the Moon」<br />
で 使 用 )は 若 干 高 すぎると 感 じるかもしれませんが、 中 古 のギ<br />
ターがエシカルな 投 資 対 象 として 優 れていることは 明 らかで<br />
しょう。 結 局 のところ、こうしたエシカルな 投 資 は、 装 飾 美 術 に<br />
投 資 する 場 合 と 同 様 に、リソースを 食 いつぶす 生 産 プロセスを<br />
効 果 的 に 回 避 し、すでにある 美 しいものを 手 に 入 れることに<br />
他 ならないのです。MoneyUnder30.comの ルー・カルローゾ 氏<br />
は 次 のように 述 べています。「どんな 株 式 や 証 券 や 作 品 より<br />
も、Marshallのアンプにつないで11までレベルを 上 げられる<br />
も の に 投 資 した 方 が クー ル で しょう」<br />
しかし、ギター 投 資 を 検 討 する 際 は 注 意 が 必 要 です。 乱 高<br />
下 が 予 想 されるからです。たとえば、1956 年 製 のGibson Les<br />
Paul Gold Topの 当 時 の 価 格 は 約 400ドルでした。2002 年 に<br />
は、5,500ドルで 購 入 できました。そのわずか4 年 後 に<br />
は、80,000ドルまで 高 騰 しました。その 後 、 金 融 危 機 を 経<br />
て、Les Paulの 値 は30,000ドルまで 急 落 しました。 現 在 は、 良<br />
品 ならば 約 35,000ドルの 値 が 付 き、 今 なお 高 い 価 値 を 保 って<br />
いますが、 勇 敢 な 決 断 力 、 忍 耐 、さらに 乱 高 下 を 受 け 入 れる 度<br />
量 が 求 め ら れ ま す。カ ル ロ ーゾ 氏 は 次 の ように コ メントして い<br />
ます。「 最 悪 なシナリオは、 地 下 室 をクールなギターで 埋 め 尽 く<br />
すことです。 相 場 が10 年 前 のように 持 ち 直 せば、30%から<br />
300%の 利 益 は 取 り 戻 せます」<br />
とは 言 え、エシカルな 投 資 家 がまず 投 資 すべきものは、 将 来<br />
に 備 えた 最 も 重 要 な 投 資 の1つ、つまり 年 金 でしょう。 脚 本 家 ・<br />
映 画 監 督 のリチャード・カーティス 氏 は、『ノッティング・ヒル の 恋<br />
人 』や『 フォー・ウェディング』など 、ほ の ぼ の とし た ハ ートウォー<br />
ミングな 映 画 で 知 られています。しかし 近 年 は、 年 金 基 金 の 持<br />
続 可 能 性 に 疑 いを 投 げかけています。2020 年 には、「Make My<br />
Money Matter」というキャンペーンを 立 ち 上 げました。これは、 自<br />
己 資 金 の 投 資 先 について 疑 問 を 呈 し、 環 境 にプラスとなる 投<br />
資 を 選 択 できるように 働 きかける 取 り 組 みです。 彼 は 次 のよう<br />
に 述 べています。「 私 たちは 第 2の 顧 客 革 命 の 瀬 戸 際 にいま<br />
す。 一 般 市 民 は 自 分 の 資 金 がいかにパワフルなのか 気 付 いて<br />
います」 共 同 設 立 者 のジョー・コーレット 氏 も 次 のように 補 足 し<br />
ています。「 私 たちは、 生 態 系 を 破 壊 し、 社 会 を 分 裂 させ、 経 済<br />
的 に 持 続 性 のない 投 資 対 象 から、グローバルゴールと2015<br />
年 パリ 協 定 の 達 成 を 促 す 投 資 対 象 へと、 数 兆 ポンドの 投 資 資<br />
金 を 切 り 替 える 取 り 組 みを 支 援 しています」<br />
賢 く、そして 楽 しく 投 資 しましょう。<br />
60 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 61
旅 行<br />
海 沿 いの 長 い 景 勝 道 路 ワイルド・アトランティック・ウェイでク<br />
レ ア 州 に 入 り、 南 西 端 の ル ープ・ヘッド へ と 向 かうと 、 長 く 伸 び<br />
た 半 島 の 先 端 に 古 い 灯 台 があり、その 先 が 切 り 立 った 断 崖 に<br />
な って い ま す。こ こ は ケ ルト 神 話 で 、ディル ム ッドと グ ラ ー ニ アと<br />
いう 駆 け 落 ちした 男 女 が 追 手 から 逃 れるために 飛 び 降 りた 場<br />
所 としても 知 られています。 私 たちがこの 荒 涼 とした 人 気 のな<br />
いスリリングな 地 を 訪 れたのは、 肌 寒 い 朝 でした。 大 西 洋 の 荒<br />
れ 狂 う 波 が 断 崖 絶 壁 に 打 ち 付 けるたびに、 大 砲 のような 音 が<br />
轟 きわ たります。 海 か ら 高 くそび え た こ の 場 所 か ら 、 南 を 見 下 ろ<br />
すとシャノン 入 り 江 にバンドウイルカが 跳 ねる 姿 が 目 に 入 り、 北<br />
には 遠 くにブルースタック 山 脈 、 東 には 川 沿 いのリムリックの<br />
街 を 望 むことができます。そして 西 には、 大 海 原 がはるか 彼 方<br />
のニューヨークまで 続 いています。<br />
ループ・ヘッドは 不 思 議 な 横 縞 模 様 の 断 崖 と、 珍 しい 海 鳥 、<br />
荒 涼 とした 美 しさが 魅 力 を 放 つ 場 所 です。 私 たちはジャガーの<br />
究 極 のパフォーマンスSUV、F-PACE SVRを 走 らせてここまで<br />
来 ました。 馬 蹄 湾 に 面 した 町 、キルキーまでの 道 程 には、 岩 山<br />
を 背 景 に 原 野 や 湿 地 が 広 がっています。くすんだ 冬 景 色 の 中<br />
で、F-PACEが 青 い 宝 石 のように 際 立 ちます。<br />
海 に 近 づくにつれて、 大 地 に 明 るさが 感 じられるようになり<br />
ます。そして 海 はこの 地 の 音 楽 にも 強 い 影 響 を 与 えています。<br />
クレアは、 音 楽 の 国 とも 言 われるアイルランドでも 特 に 音 楽 が<br />
溢 れ て い る 場 所 で す。アイル ランド の フォー ク シ ン ガ ーソン グラ<br />
イター 、クリスティ・ム ー ア は『 リスドゥーンバーナ』と い う 曲 の 中<br />
で 次 のように 歌 っています。「あちこちから 聴 こえる フルートや<br />
フィドルの 音 色 音 楽 好 きなら クレアへおいでよ」フィドル 奏 者<br />
のマーティン・ヘイズは、クレアでは 東 西 で 音 楽 に 違 いがあり、<br />
森 林 と 霧 、なだらかな 緑 の 丘 陵 といった 要 素 が 東 部 の 音 楽 に<br />
優 しさを 添 え、 岩 の 多 い 地 形 が 西 部 の 音 楽 の 飾 り 気 のないス<br />
タイルを 生 み 出 していると 考 えています。<br />
私 たちはサーフスポットとしても 有 名 なスパニッシュ・ポイント<br />
を 通 り(あいにくこの 日 はひどい 強 風 でしたが)、ミルタウン・マ<br />
ルベイという 小 さな 町 を 訪 れ、「クレリーズ」というパブへと 足 を<br />
運 びました。 建 物 の 半 分 が 女 主 人 のラウンジになっているこの<br />
小 さなパブでは、 人 々がビール 片 手 に 世 間 話 に 興 じたり、ダン<br />
スを 踊 ったり、 詩 を 朗 読 したり、 冗 談 を 言 い 合 ったり、 泉 の 水 の<br />
ように 澄 ん だ 声 で『 ブライトブルーローズ 』を 歌 っ たりして い ま す。<br />
地 元 民 にとっては 日 常 の 光 景 であっても、 私 のような 旅 行 者<br />
アイルランドの<br />
パワー<br />
野 性 味 あふれるアイルランド 西 海 岸 に 位 置 するクリエイティブなエ<br />
ネルギーの 最 前 線 の 街 、ゴールウェイは、2020 年 の「 欧 州 文 化 首<br />
都 」に 選 ばれました。ティモシー・オグレディが 、ジャガ ー F-PACE<br />
SVRでこのカルチャーのホットスポットを 訪 れました<br />
写 真 : Rama Knight<br />
/ Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 63
旅 行<br />
独 特 の 景 観 : F-PACE SVRのスポーティな 室 内 は 見 晴 らしが 利 き、 景 色<br />
を 楽 しむにはもってこいの 場 所 となります。クレア 州 の 壮 大 な 自 然 が 私 た<br />
ちを 誘 います。<br />
には 特 別 な 場 所 を 偶 然 見 つけたような 感 動 があります。<br />
クレア 州 の 海 沿 いをさらに 北 上 すると、 景 色 はいっそう 別 世<br />
界 の 様 相 を 呈 してきます。 海 面 から 垂 直 にそびえ 立 つ、 高 さ200<br />
メートルの「モハーの 断 崖 」から 眺 めるアラン 諸 島 と 大 西 洋 はま<br />
さ に 圧 巻 で す。また 、 東 に 見 える バレン 高 原 は 、 渦 の ような 形 の<br />
断 崖 と、まばらな 森 林 地 帯 、 季 節 によって 現 れたり 消 えたりす<br />
る 湖 など、 大 自 然 が 作 り 出 した 不 思 議 な 景 観 の 宝 庫 です。 遠 く<br />
から 眺 めると、その 地 表 は 荒 れ 果 てた 月 面 のように 見 えます。<br />
けれども 近 くで 見 ると、 無 数 の 薄 い 灰 色 の 石 灰 岩 が 緻 密 に 並<br />
び、その 隙 間 から 可 愛 らしい 花 や 草 木 が 顔 を 覗 かせています。<br />
F-PACEに 乗 っていると、 目 線 が 少 し 高 くなり、 視 界 が 広 がり<br />
ます。 身 体 は シ ート にしっ かりとホ ー ルドされ 、 車 は 洗 練 され た<br />
ハンドリングで 田 舎 道 を 進 んでいきます。550PSのV8エンジ<br />
ンのおかげで、 私 たちは 空 気 のクッションに 乗 っているような<br />
滑 らかな 走 りで、トラクターや 自 転 車 、 牛 の 群 れを 悠 々と 追 い<br />
越 しながらゴールウェイに 到 着 しました。 私 は 数 十 年 も 昔 のこ<br />
の 街 を 知 って い ます。か つ て の ゴ ー ル ウェイは 半 ば 見 捨 て ら れ<br />
た 街 でありながらも 魅 惑 的 な 場 所 で、 人 々、 特 に 芸 術 を 志 す 人<br />
々を 流 砂 のように 引 き 込 むことから、「 大 志 の 墓 場 」と 呼 ばれて<br />
いました。 多 くの 若 者 がコンサーティーナ(アコーディオンの 一<br />
種 )や 絵 筆 、タイプライターを 抱 え、 目 を 輝 かせてこの 街 にやっ<br />
てきては、その 後 二 度 と 街 の 境 界 の 外 に 出 ることがなかった<br />
り、お 気 に 入 りのパブにさえ 顔 を 出 さなくなるのが 常 でした。<br />
けれども、アイルランド 全 体 の 経 済 が 発 展 し、 人 々が 豊 かにな<br />
り、 自 信 を 持 つようになって、ゴールウェイは 変 わりました。 現 在 、<br />
全 世 界 の 医 療 テクノロジー 企 業 のトップ10のうち9 社 がここに<br />
拠 点 を 構 えています。そして 住 民 の 約 4 分 の1がアイルランド 以<br />
外 で 生 まれた 人 で 占 められ、 学 校 では39ヵ 国 の 言 葉 が 話 され<br />
ています。かつての 芸 術 家 たちのように、 人 々がこの 街 にやって<br />
きて、ここに 留 まります。 苔 に 覆 われた 空 き 家 だらけだったエリ<br />
アが、 今 は 明 るい 色 に 塗 られた 建 物 が 並 ぶカルチェラタンにな<br />
って い ます。 以 前 こ の あ たりで は 、 外 食 のメニューと 言 え ばトー<br />
ストサンドウィッチと 焼 き 過 ぎのステーキくらいしかありませんで<br />
したが、 今 やあらゆる 種 類 のレストランが 店 を 構 え、そのうちの<br />
2 軒 はミシュランの 星 付 きという 変 貌 ぶりです。かつて 蒔 かれた<br />
芸 術 の 種 が 今 花 開 いています。ドルイド・シアター・カンパニー、<br />
劇 団 マクナスの 野 外 歴 史 劇 、Cúirt 国 際 文 学 祭 、ゴールウェイ<br />
国 際 芸 術 祭 、フラー 映 画 祭 など、 年 間 を 通 じてイベントが 目 白<br />
押 しで、ストリートとパブでは 昔 と 変 わらず 音 楽 が 奏 でられてい<br />
ます。さまざまなイベントのたびに 賑 わいに 溢 れるゴールウェイ<br />
『さまざまなイベントのたびに<br />
賑 わいに 溢 れるゴールウェイの<br />
街 が、これまで 以 上 に 活 気 づき<br />
つつあります』<br />
の 街 が、 今 これまで 以 上 に 活 気 づきつつあります。<br />
アイルランドに「 欧 州 文 化 首 都 」を 開 催 する 順 番 が 回 ってき<br />
た とき 、ゴ ー ル ウェイは「 Making Waves」というタイトルで 市 と 州<br />
を 挙 げて 招 致 に 乗 り 出 しました。このタイトルは 海 沿 いのロケ<br />
ーションと、 既 存 の 概 念 を 打 ち 破 り、 新 しい 才 能 を 生 み 出 す 突<br />
破 口 を 切 り 拓 くという 意 図 を 示 唆 しています。 人 々は 徹 底 的 か<br />
つオープンな 方 法 でこのコンセプトを 練 り 上 げ、コミュニティミ<br />
ーティングを80 回 以 上 も 開 き、テーマを「 言 語 、 景 観 、 移 民 」の<br />
3つに 絞 り 込 みました。<br />
「2016 年 に 欧 州 連 合 の 審 査 員 が 視 察 に 訪 れたときのこと<br />
です」。ゴールウェイ 市 議 会 の 事 務 総 長 、ブレンダン・マグラス<br />
が 誘 致 の 経 過 を 説 明 します。「1,500 人 ほどの 人 々が 自 発 的 に<br />
集 まって、 審 査 員 を 見 送 り、 拍 手 と 歌 で 謝 意 を 表 しました。ダブ<br />
リンで 開 催 地 が 発 表 されたときは、その 模 様 を 中 継 するパブリ<br />
ックビューイングがエア 広 場 で 開 かれ、4,000 人 の 観 衆 が 見<br />
守 りました。たくさんの 人 々がこのプログラムを 一 生 懸 命 支<br />
64 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 65
旅 行<br />
忘 れ 得 ぬ 年<br />
荘 厳 な 体 験 から 幻 想 的 な 光 景 まで、2020 年 、ゴールウェイではさまざまなプログラムが 開 催 されます<br />
が「 文 化 の 首 都 」として 選 定 されてい<br />
ます。これは 欧 州 連 合 が 実 施 する 文<br />
化 事 業 で、ヨーロッパの 特 定 の 地 域 を<br />
文 化 活 動 の 中 心 地 に 指 定 し、 芸 術 表<br />
現 とツーリズムを 通 じてその 注 目 度 を<br />
高 め、 地 域 の 開 発 を 促 進 する 狙 いが<br />
あります。 今 年 はゴールウェイが、クロ<br />
アチアのリエカとともに 選 ばれました。<br />
2020 年 2 月 から1 年 間 、 芸 術 と 文<br />
化 に 関 わるさまざまなイベントがクレ<br />
ア 州 全 域 とオンラインで 開 催 されま<br />
す。ケルト 人 が 使 用 していたケルト 暦<br />
の 季 節 に 従 って 開 催 される 数 百 にの<br />
ぼるイベントは、その 多 くが 無 料 です。<br />
新 型 コロナウイルス 感 染 症 の 世 界 的<br />
大 流 行 という 逆 境 の 中 で、この 街 のク<br />
リエイティブな 才 能 とスピリットを 世 界<br />
に 向 けて 発 信 し 続 けます。 数 多 くのイ<br />
ベントから、ここでは3つのみご 紹 介<br />
します。プログラム 全 体 の 詳 細 につい<br />
ては、galway2020.ieをご 覧 くださ<br />
い。<br />
アーティストの 街 : この 街 のクリエイティブなスピリットと 情 熱 を 象 徴 する 存 在 の 一 人 、 音 楽 家 のアンナ・マラーキー<br />
援 してくれています。」<br />
「ゴールウェイ2020」のプログラム 責 任 者 を 務 めるマリリン・<br />
ゴーハン・レダンは 次 のように 語 ります。「このプログラムはゴー<br />
ルウェイの 人 々の 願 いによって 始 まり、 彼 らによって 継 続 されて<br />
います。この 土 地 の 景 観 がギャラリーを 提 供 し、ストリートが 劇<br />
場 になります。 私 たちは 記 念 として 意 義 深 いアートプロジェクト<br />
を いくつ か 計 画 して い ます。 例 え ば「 City of Light, City of<br />
Sanctuary」は、ここで 生 まれた 人 たちと 移 民 の 人 たちの 思 い 出<br />
に まつ わ るランタン を 制 作 して 、 市 中 をパレ ードするも の で す。」<br />
「ゴールウェイ2020」が 何 を 表 現 し、 推 し 進 めたいと 願 って<br />
い る か 、そ の コ ン セプトを 象 徴 す る ような 存 在 が 、ア ン ナ・マ ラー<br />
キーです。 彼 女 は 若 く 才 能 のある 作 曲 家 兼 パフォーマーで、アイ<br />
ルランド 語 と 英 語 の 両 方 で 歌 い、 地 域 に 根 差 していると 同 時 に、<br />
チャイコフスキーからレゲエに 至 るさまざまな 国 際 的 な 音 楽 の<br />
影 響 も 積 極 的 に 受 け 入 れています。 子 どもの 頃 、 近 所 に 住 んで<br />
いたアコーディオン 奏 者 、マーティン・オコナーに 影 響 を 受 けたと<br />
彼 女 は 言 います。「 彼 のような 天 才 がリビングで 演 奏 しているこ<br />
とを、ごく 当 たり 前 のことに 感 じていました」と、 彼 女 は 言 います。<br />
そしてアンナはこう 続 けます。「ゴールウェイには 強 い 共 同 体<br />
意 識 があります。クリエイティブな 人 々がここで 居 心 地 の 良 さを<br />
感 じるのは、この 街 が 彼 らを 理 解 し、 支 援 しているからです。 私<br />
たちは 海 を 見 て 癒 しを 感 じるとともに、 世 界 の 広 大 さについて<br />
も 気 づかされます。 何 ものにもとらわれない 自 由 を 感 じるので<br />
す。」 彼 女 は「ゴールウェイ2020」のオープニングイベントを 彩 る<br />
音 楽 の 作 曲 と 演 奏 の 依 頼 を 受 けました。このイベントはエア 広<br />
場 で 開 催 され、 数 千 人 の 観 客 を 集 めました。<br />
イルミネーション、 仮 面 、 野 外 歴 史 劇 、ドラム、 朗 読 、ストリー<br />
トで 演 じられる 劇 ……さまざまな 催 し 物 で 構 成 される「ゴール<br />
ウェイ2020」。その 中 でも 一 番 の 目 玉 は、おそらくゴールウェ<br />
イを 拠 点 に 活 動 する 世 界 的 に 有 名 なパフォーマンスグループ<br />
「マクナス」のパフォーマンスでしょう。このグループ 名 はアイルラ<br />
ンド 語 で「 楽 しい 自 暴 自 棄 」という 意 味 の 言 葉 に 由 来 してい<br />
ゴ ー ル ウェイ・リイマ ジ ンド( 上 ): 「 シ ョ<br />
ー・マスト・ゴー・オン」の 精 神 で、「ゴー<br />
ルウェイ2020リイマジンド」プログラ<br />
ムは 困 難 な 状 況 下 をものともせず、こ<br />
の 街 の 記 念 イベントを 継 続 します。 本<br />
来 のテーマに 忠 実 に、ライブとデジタ<br />
ルマルチメディアを 融 合 した 体 験 によ<br />
り、 数 百 のパフォーマンスアクトを 皆 様<br />
のご 自 宅 のリビングルームにお 届 けし<br />
ます(2021 年 3 月 まで)。<br />
ゴ ー ル ウェイ・サ ウンド・ハ ー ベ スト( 下 ):<br />
この 街 の 多 様 な 言 語 、 文 化 的 多 様 性 、エ<br />
キセントリックな 音 楽 シーンに 対 する 賛<br />
辞 として、グループ「アトモス・コレクティ<br />
ブ」がゴールウェイに 住 む 人 々と 協 力 し<br />
て 、ミュ ー ジ ック ア ル バ ム を 制 作 して い ま<br />
す。その 曲 は、 若 者 とコミュニティのワーク<br />
シ ョップ、ア ー ティスト 同 士 の コ ラボ レ ー シ<br />
ョン、ゴールウェイの 街 中 のヒップポップ<br />
系 ポップアップショップの 協 力 によ<br />
り、2021 年 3 月 に 開 催 されるスペシャル<br />
コンサートで 披 露 されます。<br />
1985 年 以 降 、 毎 年 1つまたは2つの 都 市<br />
ミラー・パビリオン( 上 ):<br />
アイルランド 人 アーティストのジョン・<br />
ジェラードが 手 がけた2つのアートワー<br />
クが、ゴールウェイの 市 街 地 とコネマ<br />
ラ 山 地 に 展 示 されます。AIによって 生<br />
成 された 神 話 上 の 人 物 が 巨 大 なLED<br />
画 面 の 壁 で 動 き 回 るパフォーマンスを<br />
演 じ、ミラー 張 りの 構 造 体 が 周 囲 の 環<br />
境 を 映 し 出 します( 再 生 可 能 エネルギ<br />
ー 源 を 使 用 して い ます )。<br />
66 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 67
ます。「ゴールウェイ2020」に 向 けて、 彼 らはこれまでで 最 も 野<br />
心 的 なプロジェクトに 取 り 組 み、1 年 間 を 費 やして、 世 界 最 古<br />
の 物 語 とさ れ る シュメー ル 人 の『 ギルガメシュ 叙 事 詩 』の 解 釈<br />
に 取 り 組 んでいます。<br />
山 々を 照 らす 光 のインスタレーションや、ストリートでの 野 外<br />
歴 史 劇 の 上 演 も 行 われます。また、かつて 貧 しいアイルランド<br />
の 人 々が 長 く 暗 い 冬 を 火 のそばで 過 ごす 際 の 楽 しみとして、<br />
代 々 受 け 継 がれてきた 物 語 やメロディ、 歌 も 披 露 されます。 物<br />
語 を 語 るのが 上 手 い 人 や 音 楽 演 奏 が 巧 みな 人 は、 富 や 権 力<br />
では 手 に 入 れることのできない 敬 意 を 受 けることができます。<br />
ゴールウェイは、これまでの 歴 史 においてそうした 人 々を 育 ん<br />
できたとともに、これからもその 伝 統 を 受 け 継 いでいくことで<br />
しょう。 私 はフランシス・ストリートに 設 けられたパフォーマンス<br />
スペース「ブラック・ゲート」で、ゴールウェイから 生 まれる 新 しい<br />
文 学 の 波 をいくつか 体 験 してきました。そこでは、 押 し 寄 せる<br />
波 のように 雄 弁 な 語 り 口 を 聞 くことができました。<br />
旅 行<br />
アート 活 動 の 中 心 地 ( 上 ) 有 名 な 劇 団 「マクナス」のマーク・オドネル。( 下 ) 小 説 家 のエレーヌ・フィーニ<br />
ー。ゴールウェイの 文 芸 の 中 心 地 Charlie Byrne’s Bookshopにて。( 下 )ゴールウェイ 大 学 。 有 名<br />
な 政 治 家 、 詩 人 、 俳 優 を 輩 出 しています<br />
詩 人 や 小 説 家 、 出 版 社 の 人 たちが 大 勢 集 まっていましたが、<br />
その 中 の 一 人 にエレーヌ・フィーニーがいました。フィクション<br />
分 野 で2020 年 最 も 注 目 すべきデビュー 作 の1つと 見 なされて<br />
い る『 As You Were』を 著 した 新 進 の 作 家 です。 彼 女 はゴールウェ<br />
イ 東 部 の 出 身 で、 生 家 の 農 場 が 人 里 から 遠 く 離 れた、ひどく 急<br />
な 坂 道 の 先 にあったため、 子 どもの 頃 はポニーと 荷 馬 車 を 使<br />
って 移 動 していたと 言 います。 型 破 りなフェミニストで、 受 賞 歴<br />
を 持 つパフォーマンス 詩 人 でもある 彼 女 は、そうした 特 質 を 小<br />
説 に 持 ち 込 み、ゴールウェイの 話 し 言 葉 も 使 ってデビュー 作 を<br />
執 筆 しました。 彼 女 はプロデューサーでもあり、 若 い 作 家 の 面<br />
倒 を 見 たり、 作 家 の 訪 問 インタビューや 選 集 の 編 集 にも 携 わっ<br />
ており、「ゴールウェイ2020」の 開 催 期 間 中 、こうした 仕 事 を 積<br />
極 的 に 進 める 予 定 でいます。<br />
「 私 はこのような 貧 しい 田 舎 で 生 まれ 育 つことの 大 変 さを<br />
よく 知 っています」と、フィーニーは 言 います。「 苦 労 の 絶 えない<br />
土 地 で、 工 業 化 は 進 んでおらず、 保 守 的 な 考 えが 強 く、いろん<br />
な 制 約 もあります。 都 市 部 と 田 舎 との 間 には 断 絶 があります。<br />
私 は 週 に2、3 回 はゴールウェイに 来 て、 心 身 をリフレッシュして<br />
います。 私 は「ゴールウェイ2020」の 開 催 によってアートが 田<br />
舎 に 持 ち 込 まれることで、こうした 断 絶 がいくらか 修 復 される<br />
ことを 願 っています。 芸 術 に 飢 える 気 持 ちは 私 自 身 がよく 知 っ<br />
ていますので……。このプログラムの 成 功 を 確 信 しています。」<br />
ここ 西 部 には、アイルランドのどの 地 域 とも 異 なる 独 特 の 雰<br />
囲 気 があります。これは、アメリカの 砂 漠 を 車 で 旅 しているとき<br />
に 感 じるものと、どことなく 似 ています。 途 方 もなく 広 い 土 地 を<br />
目 にすると、 自 分 が 自 由 な 存 在 であり、 誰 からも 束 縛 されるこ<br />
となく、どんなことでも 可 能 だと 思 えます。 未 知 なる 可 能 性 が 身<br />
近 に 存 在 している……。 砂 漠 よりも 海 の 方 が、そのことをはっ<br />
きりと 気 づかせてくれるように 思 えます。ここはかつてクロムウ<br />
ェルの 軍 隊 が、 耕 作 に 適 した 中 央 部 の 平 原 を 自 分 たちのもの<br />
にするために、ゲール 人 を 追 いやった 不 毛 の 地 でした。その 後 、<br />
人 々はここで 生 きるすべを 学 びました。 台 所 で 足 を 踏 むステッ<br />
プからダンスが 生 まれ、 話 し 言 葉 から 詩 が 発 展 し、 隣 人 たちの<br />
語 りから 伝 説 が 誕 生 しました。 今 やこの 街 にもチェーンストア<br />
ができ、Instagramのインフルエンサーもいる 時 代 となりました。<br />
けれども 人 々は、 今 もなお 存 在 する 時 間 を 超 越 した 美 しさと<br />
歴 史 と 伝 統 に 触 れるためにこの 地 を 訪 れるのです。<br />
ゴールウェイの 港 : 活 気 あふれるこの 街 では 海 が 身 近 な 存 在 で、アーティストにインスピレーションを 与 えてくれます<br />
68 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 69
トレンド<br />
ザ・ゲーム・<br />
オブ・ザ・<br />
ネーム<br />
さまざ ま な 製 品 に 、ど の ように して<br />
名 前 が 付 けられたか 不 思 議 に 思<br />
ったことはありませんか? 命 名 法<br />
の 理 論 と 実 践 について 探 ります<br />
文 : Luke Ponsford イラスト: Ulla Puggaard<br />
「シンプルな 単 語<br />
ひとつの 名 前 を<br />
見 つけるのは 今 や<br />
至 難 の 業 です」<br />
世 の 中 にはブランド 名 や 製 品<br />
名 が 溢 れ かえり、 大 ヒットした<br />
名 前 は 私 たちが 日 常 で 使 う 語<br />
彙 の 一 部 にさえなっています。<br />
け れ ど も 、そ うし た 名 前 は ど の<br />
ようにして 生 み 出 されたのでし<br />
ょうか? 成 功 の 方 程 式 はある<br />
のでしょうか?<br />
人 気 を 呼 び、 成 功 をもたらす<br />
名 前 を 考 案 するのはそう 簡 単 な<br />
ことではありません。Googleや<br />
Nike、Starbucksのようなポピュ<br />
ラーな 名 前 を 思 いつくための、<br />
魔 法 の 方 程 式 や 確 立 された 方<br />
法 論 といったものは 存 在 しません。<br />
製 品 や 企 業 に 名 前 を 付 けるプロセスは、その 製 品 やブランド<br />
を 徹 底 的 に 研 究 し、 本 質 を 理 解 することから 始 まります。イン<br />
スピレーションは 至 るところから 湧 いてきます。「 歌 、 文 学 、 関<br />
連 する 用 語 集 、 歴 史 、 天 文 学 など、あらゆるものが 着 想 源 にな<br />
ります」。そう 教 えてくれるのは、ニューヨークに 拠 点 を 置 くブ<br />
ランドネーミングのコンサルタント 企 業 、River + Wolfの 創 業<br />
者 でクリエイティブディレクターのマーガレット・ウォルフソン<br />
です。<br />
また、クライアントがどのように 聞 こえる 名 前 を 欲 しているか<br />
も 重 要 な 要 素 となります。 親 しみやすさを 感 じさせたい? 男 性<br />
的 、あるいは 女 性 的 な 名 前 にしたい? 力 強 さや 科 学 を 想 起 させ<br />
たい?「テクノロジー 企 業 の 多 くは 科 学 的 、 未 来 的 な 名 前 を 望<br />
みます。そのためにネーミング 会 社 がよく 試 すのが「K」や「X」<br />
を 使 った 名 前 で す。 例 え ば「X 」は 、 視 覚 的 に 未 来 、 科 学 、 数 学<br />
といったものをイメージさせます」。そう 語 るのは、サンフラン<br />
シスコのブランドネーミング 企 業 、Catchwordの 共 同 創 業 者 、ロ<br />
ーレル・サットンです。ビジュアルな 要 素 と 文 字 数 の 制 限 も 考<br />
慮 しなければなりません。 覚 えやすく、 意 味 が 伝 わりやすく、 文<br />
字 として 書 くときに 綴 りやすいもので、 短 くもなく 長 くもなく、<br />
見 た 目 にも 心 地 よい 名 前 であることが 求 められます。<br />
け れ ど も 、クラ イ ア ント に よって は 、も っと 簡 単 に 決 まる 場<br />
合 も ありま す。サ ットン が 担 当 し た 、とあ るソフトウェア 関 連 の<br />
スタートアップ 企 業 からの 依 頼 がその1つでした。「クライアン<br />
ト 企 業 の 創 業 者 たちは 彼 らの 理 念 について 語 り、 彼 らがヨガ<br />
に 関 心 を 持 っており、その 考 え 方 が 製 品 開 発 の 根 底 にあると<br />
説 明 してくれました」と、サットンは 言 います。「そうした 意 味<br />
を 込 めた 企 業 名 にしたいというリクエストでした。」そこで<br />
Catchwordが 思 いついたのが「asana」という 名 前 でした。これ<br />
はサンスクリット 語 で「ヨガのポーズ」を 意 味 する 言 葉 です。<br />
「この 名 前 は 幾 重 にも 意 味 が 付 与 されています」と、サットンは<br />
説 明 します。「 第 一 に、これは 美 しい 言 葉 で<br />
す。 女 性 的 なイメージ が あり、よど み なく 発<br />
音 できます。また、 文 字 の 中 に 視 覚 的 なスム<br />
ーズさを 損 なう 要 素 となるディセンダーとア<br />
センダー( 小 文 字 の「d」や「p」)が 含 まれて<br />
いません。 第 二 に、これは 背 景 に 込 められ<br />
たストーリーを 語 る 名 前 です。ヨガでは、ポ<br />
ーズを 取 ることで 精 神 を 統 一 し、 次 のことに<br />
向 けて 準 備 を 整 えますが、Asana 社 のソフト<br />
ウェアはビジネスにおいて 同 様 なサービスを 提 供 します。そん<br />
な 製 品 にふさわしい 名 前 になっています。」<br />
け れ ど も 、パーフェクトな 名 前 を 発 見 す れ ばそ れで 終 わりと<br />
いうわけではありません。 既 存 の 商 標 に 登 録 されていないか<br />
調 べ る と い う 、 厄 介 な 仕 事 が 待 って い ま す。「 近 年 は 新 し い 企<br />
業 や 製 品 が 爆 発 的 な 勢 いで 誕 生 しており、シンプルな 単 語 ひ<br />
とつの 名 前 を 見 つけるのは 今 や 至 難 の 業 です」と、ウォルフソ<br />
ンは 言 います。<br />
それは 自 動 車 のネーミングにもあてはまります。ジャガーで<br />
は、プロダクトマーケティングディレクターで、ネーミング 委 員<br />
会 の 責 任 者 を 務 めるデイビッド・ブラウンが 同 様 な 困 難 に 直<br />
面 しています。「あらゆる 名 前 がすでに 商 標 化 されており、 新<br />
しい 名 前 を 考 案 するのは 難 しくなる 一 方 です」と、 彼 は 説 明 し<br />
ます。「また、 文 化 的 および 言 語 的 な 違 いも 考 慮 する 必 要 があ<br />
ります。 世 界 中 のあらゆる 国 で 通 用 する 名 前 にしなければなり<br />
ません。」<br />
業 界 のトレンドは 時 代 とともに 移 り 変 わります。「かつては、<br />
多 くのビジネスが 創 業 者 の 名 前 にちなんで 命 名 していました。<br />
自 動 車 、ジュエリー、 香 水 などのメーカーがその 代 表 例 です」<br />
と、サットンは 言 います。「けれども 近 頃 では、もっと 面 白 い 試<br />
みが 見 受 けられます。 例 えば、オンライン 専 用 のバンキングア<br />
プリや 予 算 管 理 アプリに、Dave、Marcus、Frankなど、 親 しみ<br />
やすい 人 間 のファーストネームを 使 っているものがあります。<br />
そうした 名 前 は、 大 企 業 との 長 期 にわたるつながりを 持 たず、<br />
大 企 業 に 不 信 感 さえ 抱 いているミレニアル 世 代 の 若 者 にアピ<br />
ールします。 彼 らは、 小 規 模 なスタートアップ 企 業 の 方 に 信 頼<br />
を 置 き、そうした 企 業 が 営 むビジネスを 好 む 傾 向 にあります。」<br />
けれどもブラウンは、 時 代 のトレンドだけにこだわる 必 要 は<br />
ないと 考 えています。「ジャガーには 長 い 歳 月 をかけて 築 いて<br />
きた、 揺 るぎない 歴 史 と 伝 統 があります」と、 彼 は 言 います。<br />
「 人 々がジャガーの 車 を 購 入 するとき、 購 入 理 由 にはブランドの<br />
歴 史 的 な 背 景 も 含 まれています。 私 たちは SUVモデルの 名 前<br />
を 決 めるときに、ジャガーの 歴 史 を 遡 りました。「Grace, Space,<br />
Pace( 優 美 さ、スペース、 速 さ)」というスローガンが1960 年<br />
代 に 使 われていましたが、これはジャガー 車 のあるべき 姿 の 定<br />
義 として 現 在 でも 当 てはまります。そして、ジャガーのSUVはこ<br />
の 言 葉 がしっくりくる 車 です。」たしかに 、E-PACE、F-PACE、<br />
I-PACEは、それぞれの 車 にふさわしい 名 前 です。<br />
とは いえ 、 結 局 のところ 、い か に 素 晴 らしい 名 前 であっても 、<br />
それは 本 当 に 素 晴 らしいブランドに 飾 りを 添 える 存 在 にしか<br />
すぎません。「 良 い 名 前 は 優 れた 製 品 や 企 業 の 価 値 を 高 める<br />
ことができますが、 優 れていないものを 良 くすることはできま<br />
せん」と、ウォルフソンは 言 います。「 同 様 に、たとえ 名 前 が 悪<br />
くても、それは 必 ずしも 良 い 製 品 や 企 業 の 価 値 を 落 とすこと<br />
につながるとは 限 りません。「 確 実 に 言 えることは、 力 強 い<br />
企 業 や 製 品 と、 力 強 い 名 前 の 組 み 合 わせは、 成 功 の 前 提 条 件<br />
にしかすぎず、そこから 先 が 正 念 場 だということです。」<br />
70 / Jaguar Magazine<br />
Jaguar Magazine / 71
サステナビリティ<br />
リサイクルの 環<br />
自 動 車 は 大 部 分 がリサイクル 可 能 で<br />
す。ジャガ ー F-PACEを 作 り 上 げてい<br />
る 素 材 と 、そ の ライフサ イクル<br />
について 調 べました<br />
インフォグラフィックデザイン:<br />
Peter Granfors<br />
22%<br />
アルミニウム<br />
44%<br />
鉄 と 鋼<br />
12%<br />
6%<br />
サーモプラスチック<br />
4%<br />
セラミック<br />
エラストマーとデュロマー<br />
2%<br />
銅<br />
2%<br />
その 他 の 化 合 物<br />
1.2%<br />
亜 鉛 、ニッケル、 鉛<br />
0.8%<br />
6%<br />
天 然 有 機 素 材<br />
0.5%<br />
その 他 の 金 属<br />
自 動 車 用 油 脂 類<br />
*パーセント 表 示 は 端 数 切 り 上 げ<br />
汚 れの 除 去<br />
こ の 段 階 に は 、タ イヤ 、バ ッ テリー 、<br />
オイルフィルター、 油 脂 類 などの 車<br />
両 コンポーネントの 取 り 外 しが 含<br />
まれます。<br />
ステアリング、ホイール、タイヤ<br />
電 装 系 統<br />
エンジンと 油 脂 類<br />
金 属 のリサイクル<br />
欧 州 で 生 産 される 鋼 材 の 半 分 以<br />
上 はリサイクル 鋼 材 です。また、ジャ<br />
ガー 独 自 開 発 のアルミニウム 合 金<br />
(RC5754)には 最 大 75%のリサ<br />
イクル 材 が 含 まれています。どちら<br />
の 素 材 も、 産 業 界 全 体 で 広 く 使 用<br />
され、リサイクルされたものが、 再 び<br />
自 動 車 サプライチェーンに 組 み 込<br />
まれて 製 造 に 使 用 されます。<br />
プラスチックのリサイクル<br />
サーモプラスチックはリサイクル 可<br />
能 率 の 高 い 素 材 です。これらは 溶<br />
かされて 新 しいコンポーネントとし<br />
て 再 び 成 型 されるか、 他 の 素 材 と<br />
ともに 複 合 素 材 の 原 料 となります。<br />
その 他 のリサイクル 処 理 ま<br />
たは 廃 棄 処 分<br />
残 りの 素 材 は 特 別 なプロセスによ<br />
りリサ イクル さ れ る か 、ま た は 安 全<br />
に 廃 棄 処 分 されます。<br />
自 動 車 用 油 脂 類 のリサイ<br />
クル<br />
オイルなどの 自 動 車 用 油 脂 類 はき<br />
れいに 処 理 されて、 新 しい 製 品 に<br />
再 利 用 されます。<br />
分 解<br />
高 価 値 のパーツや 取 り 外 しが 容 易<br />
なパーツは 車 両 から 取 り 外 されま<br />
す。<br />
リビルト<br />
エンジンやトランスミッションなど<br />
の 高 価 値 のパーツの 一 部 は、 専 門<br />
家 の 手 でリビルト( 再 製 造 )されて、<br />
スペアパーツとして 使 用 されます。<br />
スペアパーツ 市 場<br />
ボディ<br />
動 力 伝 達 装 置<br />
シャシー<br />
ドア 類<br />
内 装 部 品<br />
破 砕<br />
アクセサリー<br />
金 属 の 分 離<br />
破 砕 された 車 両 から 分 離 された 金<br />
属 は 、リ サ イク ル の た め 選 別 さ れ ま<br />
す。F-PACEの 場 合 、 金 属 は 車 両 の<br />
およそ3 分 の2を 占 め、 鉄 / 鋼 とアル<br />
ミニウムで 構 成 されて い ます。<br />
破 砕 プラスチックの 処 理<br />
近 年 開 発 された 新 技 術 により、 破<br />
砕 したプラスチックを 選 別 ・ 洗 浄 し<br />
て、リサイクルすることが 可 能 にな<br />
りました。<br />
車 両 の 大 部 分 は 破 砕 された 後 、さ<br />
まざまな 素 材 に 選 別 されて、リサイ<br />
クルや 回 収 に 回 されます。<br />
エネルギー 回 収<br />
再 使 用 市 場 が 存 在 しない、ごく 一<br />
部 の 素 材 は、エネルギーの 生 成 に<br />
利 用 されます。<br />
自 動 車 の 製 造 はきわめて 複 雑 なプロセスで 成 り 立 っていますが、<br />
ジャガーでは 設 計 から 生 産 、 納 車 までのあらゆる 段 階 にサステナ<br />
ブル 思 考 を 採 り 入 れています。2007 年 以 降 、 生 産 台 数 は3 倍 にま<br />
で 増 え まし た が 、ジャガ ーで は 生 産 に 伴 うC O 2 排 出 量 とエネルギ<br />
ー 使 用 量 を74%、 水 の 使 用 量 を37%、それぞれ 削 減 しています。<br />
そしてジャガー 車 が 製 品 寿 命 を 全 うしたときには、 車 両 の 少 なくと<br />
も85%がリサイクル 可 能 で、95%が 回 収 可 能 です( 焼 却 による<br />
エネルギー 回 収 を 含 む 率 )。ジャガーのサステナビリティの 取 り 組<br />
みについての 詳 細 は、jaguarlandrover.comをご 覧 ください。<br />
72 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 73
未 来 予 想 図<br />
毎 号 、 私 たちは 今 後 30 年 間 の 世 の 中 の 変 貌 について、 各 界 の 専 門 家 の 意 見 を 聞 いています<br />
今 回 のテーマ: マネーの 未 来<br />
イラスト: Dan Matutina<br />
JAGUAR XE<br />
並 ぶものがない、<br />
オリジナリティ。<br />
世 界 は 変 わりつつありますが、 同 様 に 私 たちのお 金 の 支 払 い<br />
方 も 変 わりつつあります。 今 後 30 年 間 に 起 こる 変 化 については、<br />
私 た ち は す で にそ の 多 くを 目 にして い ます。 例 え ば 、 現 金 払 い の<br />
衰 退 です。もちろん、 今 までどおりに 現 金 を 使 っている 人 はたくさ<br />
んいます。 現 金 は 依 然 として 人 々の 暮 らしを 支 える 重 要 な 役 割 を<br />
果 たしており、 完 全 に 廃 止 されるまでにはまだしばらくかかるで<br />
しょう。 個 人 的 には、 私 はもう 現 金 をまったく 使 いませんが、それ<br />
は 私 がきわめて 都 会 的 なライフスタイルを 送 っているからできる<br />
ことで す。<br />
IoT(Internet of Things)の 急 速 な 普 及 により、 今 後 、 米 国 では<br />
多 くのショップがAmazon Goストアに 追 随 することになるでしょ<br />
う。 人 々は 棚 から 品 物 を 取 り、 店 舗 から 出 るだけで、 自 動 的 に 支<br />
払 いを 済 ますことができます。 少 額 決 済 がますます 増 え、 必 要 な<br />
サービスには 定 期 引 き 落 としが 使 われることが 増 えるでしょう。<br />
テクノロジーの 面 では、 現 在 は 物 理 的 なカードに 依 存 しすぎて<br />
います。 将 来 的 には、 人 々は 腕 にチップを 埋 め 込 み、 出 口 で 装 置<br />
に 腕 をかざして 支 払 いを 済 ませるようになるかもしれません。 私<br />
たちは 刺 激 的 な 時 代 に 生 きており、マネーに 関 連 する 無 数 のイノ<br />
ベーションが 登 場 してきています。 私 たちは 今 まさに、 変 革 の 出<br />
発 点 に い る の で す。<br />
仮 想 通 貨 は 将 来 、 重 要 な 役 割 を 担 うことになるでしょう。そし<br />
て 普 及 が 進 むにつれて、より 厳 格 に 管 理 されるようになるはずで<br />
す。そうなれば 現 在 のような 大 騒 ぎは 収 まり、 人 々は 今 よりもはる<br />
かに 客 観 的 になり、 仮 想 通 貨 を 従 来 の 通 貨 と 同 等 のものと 見 な<br />
すようになるでしょう。 現 在 のところ、 多 くの 人 々は 仮 想 通 貨 につ<br />
いて 漠 然 としか 理 解 しておらず、 良 い 面 を 知 らないため、 積 極 的<br />
に 関 わろうとはしません。 次 世 代 の 仮 想 通 貨 はより 健 全 な 形 で<br />
発 展 し、より 広 く 受 け 入 れられることになるでしょう。<br />
機 械 学 習 とAIは 非 常 に 重 要 なテクノロジーであり、 人 々の 生 活<br />
を 大 きく 変 える 潜 在 力 を 秘 めています。 例 えば、AI 搭 載 のアプリ<br />
によって、 週 単 位 、 月 単 位 、 年 単 位 、あるいは 一 生 というスパンで<br />
資 産 を 管 理 することができます。 人 生 を 終 えるまで 資 金 が 残 るよ<br />
うに 支 出 を 最 適 化 して、リタイア 後 の 貧 しい 生 活 を 心 配 しないで<br />
済 むようにできたら 心 強 いと 思 いませんか?AIの 助 けを 借 りれ<br />
ば、 人 々がさまざまな 局 面 でより 有 利 な 取 引 を 行 い、 資 金 を 最 大<br />
限 に 活 用 できるようになるでしょう。とはいえ、すべてを 機 械 学 習<br />
に 頼 ることには 危 険 があります。アルゴリズムを 厳 密 に 監 査 しな<br />
い 限 り、 機 械 学 習 には 必 ずバイアスが 発 生 するからです。<br />
一 部 のAIで 問 題 が 指 摘 されるのは、AIに 人 間 との 接 し 方 や 話<br />
し 方 まで、 人 間 の 代 わりを 務 めさせようとしたときです。ボットが<br />
人 間 のふりをするのは 無 理 があります。けれども、 私 たちが 例 え<br />
ば 銀 行 員 や 他 の 人 に 対 して、 自 分 がいかに 浪 費 家 であるか 白 状<br />
したり、お 金 に 困 っていてローンを 申 し 込 みたいと 伝 えるのは、<br />
恥 ずかしいのも 事 実 です。スマートフォンが 相 手 の 方 が、どんなこ<br />
とでも 臆 せず 相 談 できると 思 う 人 もいるでしょう。 衝 動 買 いで 悩<br />
んでいる 人 が、テクノロジーによる 手 助 けを 得 ることができたら<br />
素 晴 らしいと 思 いませんか? 誰 だって、 衝 動 買 いのことを 他 人 に<br />
相 談 したいとは 思 わないでしょう。けれども 相 手 が 機 械 学 習 で<br />
あれば、そのアドバイスを 受 け 入 れるのも 拒 否 するのも 自 由 であ<br />
り、ハードルが 下 がるはずです。アプリは、あなたのライフスタイル<br />
と 質 問 への 返 答 に 基 づいて、あなたがどの 程 度 のアドバイスを<br />
求 めているのかを 学 習 して、 適 切 な 対 応 をしてくれるでしょう。<br />
さて、 今 後 の30 年 間 で、 従 来 の 銀 行 はその 役 割 を 維 持 し 続 け<br />
るでしょうか?むろん、ビジネスモデルの 転 換 を 図 るところも 出 て<br />
くるでしょう。 例 えば、リテール 分 野 に 特 化 したり、フィンテック 企<br />
業 にサービスを 提 供 したりという 方 向 性 があると 思 います。けれ<br />
ども、すべての 銀 行 が 現 在 のまま 存 続 するとは 私 には 思 えませ<br />
ん。マーケットのシェアは、 既 存 の 銀 行 から、 店 舗 を 持 たずスマー<br />
トフォンで 取 り 引 きするモバイル 銀 行 へと 移 ることでしょう。<br />
74 / Jaguar Magazine<br />
アン・ボーデンMBE( 大 英 帝 国 勲 章 受 勲 者 )。「 銀 行<br />
界 のAmazon」と 称 される 英 国 のモバイル 専 用 銀 行<br />
Starling Bankの 創 業 者 でCEO。Lloyds Bankか<br />
らキャリアをスタートし、そこで 英 国 初 の 即 時 決 済 シ<br />
ステムの 設 計 にも 関 与 。 前 職 はAllied Irish Banks<br />
のCOO。<br />
スポーティでスタイリッシュなフォルム。 高 い 質 感 のインテリアには<br />
最 先 端 テクノロジーを 採 用 し、 操 作 性 に 優 れたインフォテインメント<br />
システムを 備 えている。ジャガーが 誇 るドライビングダイナミクスも<br />
搭 載 した、XE。そのすべてが、スポーツサルーンの 個 性 を 強 める。<br />
jaguar.com<br />
詳 しくは、ジャガー 正 規 ディーラーにお 問 い 合 わせください。