05.01.2021 Views

ジャガーマガジン – 第8号

最新号では、ブラジルの優美なマーシャルアーツ「カポエイラ」を深く掘り下げました。さらに、新旧カルチャーの融合に挑むアイルランドのアーティストや、ビクトリアン様式の壁紙からiPhoneへとつながるデザインストーリーにも興味をお持ちいただけるでしょう。その他、俳優兼パフォーマーとして活躍する、リズ・アーメッドの素顔に迫ります。

最新号では、ブラジルの優美なマーシャルアーツ「カポエイラ」を深く掘り下げました。さらに、新旧カルチャーの融合に挑むアイルランドのアーティストや、ビクトリアン様式の壁紙からiPhoneへとつながるデザインストーリーにも興味をお持ちいただけるでしょう。その他、俳優兼パフォーマーとして活躍する、リズ・アーメッドの素顔に迫ります。

SHOW MORE
SHOW LESS

You also want an ePaper? Increase the reach of your titles

YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.

JAGUAR MAGAZINE<br />

ファイティングアート<br />

ブラジルのマーシャルアーツ、<br />

カポエイラの 精 神 を 探 る 旅<br />

第 8 号<br />

Issue<br />

N o 8<br />

注 目 のスター<br />

俳 優 、ラッパー、ファッションアイコン。<br />

多 彩 な 才 能 を 発 揮 する、リズ・アー メッド。<br />

そのスター 性 と 素 顔 、<br />

飽 くなき 挑 戦 心 に 迫 ります<br />

音 楽 と 文 化 の 街<br />

ジャガーF-PACE SVR<br />

で 、 アイル ランド<br />

沿 岸 の 人 気 スポットを<br />

訪 ねました


目 次<br />

第 8 号<br />

22<br />

16<br />

今 号 の 内 容 を<br />

ご 紹 介 します。<br />

62<br />

問 題 を 解 決 するために 創 造 的 に 考<br />

え 、 行 動 で きる の は 、 人 間 だ け で す。<br />

規 模 の 大 きさにかかわらず、 個 人 の<br />

内 面 に 訴 えることや 何 百 万 人 もの<br />

人 に 影 響 を 与 えること が で きます。<br />

今 号 のJaguar Magazineで は 、 創<br />

造 性 にあふれる 人 物 たちを 取 り 上<br />

げています。 何 世 紀 も 前 にカポエイ<br />

ラの 優 雅 な 技 を 考 案 したブラジル<br />

の 名 人 たち、エメラルドの 島 の 野 生<br />

の 海 岸 で 新 旧 の 文 化 を 融 合 させる<br />

アイル ランド の ア ー ティスト。そして 、<br />

英 国 の 今 を 代 表 するスター、 俳 優 で<br />

ありミュージ シャン のリズ・アーメッ<br />

ド。 彼 の 才 能 に 限 界 は 存 在 しない<br />

ようです。<br />

他 には、ビクトリアン 様 式 の 壁 紙<br />

からiPhoneに 至 るまでの 創 作 の<br />

変 遷 、 世 界 のグルメがいま 注 目 する<br />

「 酸 味 」についてご 紹 介 していま<br />

す。 新 型 F-TYPEと 選 りすぐりの 最 新<br />

デザイングッズによるコラボレーシ<br />

ョン も 、ぜ ひご 覧 い た だ きた い コ ン<br />

テンツです。では、 最 新 号 をごゆっく<br />

りお 楽 しみください。<br />

デレク・ハ ービンソン<br />

エディター<br />

06 セレクター<br />

当 社 の 専 門 スタッフが 独 自 の 視 点 で、<br />

アート、ファッション、デザインからアイ<br />

テムをピックアップ<br />

16 穏 やかなカメレオン<br />

俳 優 、ミュージシャン、ファッションアイ<br />

コン: 多 彩 な 才 能 を 放 つリズ・アーメッド<br />

に 話 を 聞 く<br />

22 生 気 に 満 ちて<br />

ジャガーXEでブラジルのアート、カポエ<br />

イラの 起 源 を 求 めて 歴 史 をたどる 旅<br />

32 最 高 の 美 味<br />

農 業 生 産 者 、シェフ、ライターのマーク・<br />

ディア コ ーノが 、 食 の 最 新 トレ ンド、 酸<br />

味 について 語 る<br />

42 手 足 の 先 にあるもの<br />

アート 感 覚 と 創 造 性 にあふれた 人 工<br />

装 具 の ク イー ン 、ソフィー・デ・オリベ イ<br />

ラ・バラータに 聞 く<br />

44 最 先 端 を 走 るクラシック<br />

新 型 ジャガーF-TYPEが、あこがれの<br />

最 新 グッズとコラボレーション<br />

52 創 造 の 連 鎖<br />

ウィル・ゴンパーツが、ウィリアム・モリス<br />

からiPhoneまで、 創 造 性 の 歴 史 をたどる<br />

52<br />

画 像 :DAVID ELLIS; ÉDOUARD MANET, OLYMPIA,<br />

1863, MUSÉE D’ORSAY, PARIS; WILSON HENNESSY;<br />

RAMA KNIGHT; JAMES DAY; MARK DIACONO<br />

56 お 金 儲 け で は なく、 楽 しむ た め<br />

エシカル 投 資 を 楽 しむために。 自 分 の 価 値 観 に<br />

従 いながら、お 金 を 稼 ぐ 方 法 をご 紹 介<br />

62 荒 涼 たる 西 部<br />

小 説 家 のティモシー・オグレイディが、ジャガー<br />

F-PACE SVRに 乗 って、2020 年 欧 州 文 化 首 都<br />

に 指 定 されたゴールウェイを 走 る<br />

70 名 前 の 背 後 にあるもの<br />

製 品 名 はどのように 決 まるのか。 専 門 家 にその<br />

真 実 を 聞 く<br />

32<br />

44<br />

72 素 材 のリサイクル ジャガー<br />

に 使 われる 素 材 は 再 利 用 され、 持 続<br />

可 能 な 社 会 に 貢 献<br />

74 地 平 線 のかなたへ スター<br />

リング 銀 行 CEOアン・ボーデンが 語 る、<br />

お 金 の 未 来 に 関 する 考 察<br />

2 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 3


THE ALL-ELECTRIC I-PACE<br />

ティモシー・オグラディ<br />

ティムはシカゴで 生 まれ 育 ちましたが、その 後 はアイ<br />

ルランド、UK、スペイン、ポーランドなど、ヨーロッパを<br />

拠 点 としています。3 冊 の 小 説 と4 冊 のノンフィクショ<br />

ン 作 品 を 執 筆 しています。「Motherland」は、1989<br />

年 の 最 優 秀 処 女 作 としてDavid Higham 賞 を 受 賞<br />

しています。 直 近 の 作 品 は「Children of Las<br />

Vegas」で す。<br />

シビれる<br />

ジャガー。<br />

ウィル・ゴンペ ルツ<br />

ウィルはBBCのアートディレクターです。10 年 以 上 にわたり、 芸 術 家 、 俳 優 、 作<br />

家 、 音 楽 家 、 監 督 へのインタビュー、ドキュメンタリーの 執 筆 ・ 司 会 、ラジオ 番 組<br />

のホストなどを 担 当 しています。BBC 以 前 は、テートギャラリーのディレクターを<br />

務 めていました。<br />

今 号 の<br />

執 筆 陣<br />

ジェームズ・デイ<br />

ロンドンとニューヨークを 拠 点 に、<br />

人 物 写 真 と 静 物 写 真 を 専 門 とす<br />

る ジ ェ ー ム ズ は 、「 The New<br />

York Times」、「 The New<br />

Yorker」、「 GQ」、「 Vanity<br />

Fair」、「 Wired」 各 誌 の 写 真 を 定<br />

期 的 に 担 当 しています。また、 広<br />

告 クライアントには,British<br />

Airways,Sony,Heinekenが<br />

名 を 連 ね ます。<br />

マーク・ディアコノ<br />

ヒュー・フィアンリー=ホイッティングストールの<br />

リバーコテージ 料 理 学 校 にあるガーデンチーム<br />

の 元 責 任 者 。 現 在 は、 食 事 、 食 材 の 栽 培 、 食 品<br />

に 関 する 執 筆 や 講 演 を 行 っています。 最 新 の<br />

著 作 「 Sour」は 、Sunday Times 両 紙 から<br />

Food Book of the Year 2019に 選 ばれ<br />

ました。<br />

編 集 長 デレク・ハ ービンソン<br />

副 編 集 長 サチン・ラオ<br />

編 集 次 長 マリサ・キャノン<br />

コピー 編 集 ブライオニー・コールマン<br />

クリエイティブディレクター クリス・ショート<br />

画 像 編 集 レベッカ・ネイラー<br />

アカウントマネージャー アドリアナ・ユーラシェ<br />

ク、ハ ナ・マ クドナルド<br />

4 / Jaguar Magazine<br />

ジェ ニィ・ド ゲット<br />

アートディレクター、プロデューサー、ジャーナリストのジェニィは、<br />

「The Sunday Times Travel」 誌 、「 Boat International」、<br />

「 Red Bull’s Red Bulletin」や、 季 刊 の 女 性 誌 「Libertine」など<br />

各 誌 に 記 事 を 寄 稿 。また、L’Oréal、Kering、VCCP、Songlines<br />

などのブランド、 企 業 、 代 理 店 、タイトル 向 けのコンテンツをプロデ<br />

ュースしています。<br />

事 業 戦 略 ディレクター<br />

アン・ハ ートランド<br />

制 作 管 理 ジョン・モアクラフト<br />

制 作 ディレクター ヴァネッサ・ソルター<br />

コンサルタントディレクター ケリー・スミス<br />

広 告 ディレクター<br />

アリサ・スタメンコビッチ<br />

Cedar Communications Ltd<br />

CEO クレア・ブロードベント<br />

事 業 開 発 ディレクター<br />

クリスティーナ・ダシルバ<br />

チーフクリエイティブオフィサー スチュアート・<br />

パーセル<br />

コンテンツディレクター ジーナ・ローワン<br />

イノベーションディレクター レベッカ・ビリン<br />

グズリー<br />

アンドリュー・ディケンズ<br />

フリーランスジャーナリストのアンドリューは、<br />

「Empire」、「 The Guardian」、「 The Telegraph」<br />

などの 各 誌 で 文 化 、 旅 行 、 健 康 、 社 会 関 連 の 記 事 を<br />

執 筆 しています。アル・パチーノ、ポー ル・マッカートニ<br />

ー、デヴィッド・ベッカムなど、エンターテインメント 界<br />

の 数 百 人 のビッグネームにインタビュ ーしています。<br />

趣 味 はランニングや 犬 の 散 歩 、そして 自 分 に 関 する<br />

本 を 執 筆 しないことです。<br />

商 務 ディレクター ジャスティン・デイリー<br />

財 務 ディレクター ジェーン・モフェット<br />

コンプライアンスディレクター カレン・ハクスリー<br />

Jaguar:<br />

グローバルダイレクトコミュニケーション<br />

マネージャー アンソフィー・ベッチャー<br />

Cedar Communications Limited<br />

85 Strand, London WC2R 0DW<br />

Tel: +44 (0)20 7550 8000<br />

cedarcom.co.uk<br />

『Jaguar Magazine』は 、ジャガ ー (Abbey Road, Whitley, Coventry CV3 4LF)に 代 わり、Cedar Communications Limited(85 Strand, London WC2R 0DW) が 年 2 回 発 行 しています。<br />

© 2020 Cedar Communications Limited. Cedarは 最 高 水 準 のジャーナリズムを 信 条 としています。 編 集 資 料 や 表 明 意 見 は、 必 ずしも 当 社 やジャガーの 見 解 ではありません。また、 当 社 およびジャガーは、 広<br />

告 内 容 に 対 する 責 任 を 一 切 負 いません。『Jaguar Magazine』の 編 集 内 容 については 細 心 の 注 意 を 払 っていますが、 記 載 の 仕 様 、 機 能 、 機 器 などは 変 更 される 場 合 や 国 により 異 なる 場 合 があります。 入 場 規<br />

制 区 域 内 での 動 画 および 写 真 撮 影 には、 必 要 となるすべての 許 可 を 取 得 しています。 本 誌 記 載 の 情 報 は、 印 刷 時 点 のものです。 車 に 関 する 詳 細 については、ジャガー 正 規 代 理 店 までお 問 い 合 わせください。<br />

運 転 時 は 責 任 ある 行 動 をお 取 りください。 本 誌 掲 載 の 記 事 ・ 写 真 ・イラストの 無 断 転 用 を 禁 じます。また、 本 誌 掲 載 資 料 の 無 断 複 製 を 禁 じます。<br />

PHOTOS: TIM WHITBY/STRINGER; RAMA KNIGHT; WILSON HENNESSY; WILL BREMRIDGE<br />

スポーツカーブランドのプライドが 生 んだ、フル 電 動 SUV「ジャガーI-PACE」。<br />

航 続 距 離 は470km※、0-100km/h 加 速 は4.8 秒 を 誇 る。キャビンには、<br />

同 クラスのSUVに 勝 るゆとりの 空 間 が 広 がり、ボンネット 内 部 やリアシート 下<br />

にも 収 納 スペースを 確 保 した。ドライビング、 実 用 性 、 快 適 性 のすべてにおいて<br />

感 性 を 刺 激 するI-PACEが、シビれる 新 時 代 の 道 をひらく。<br />

jaguar.com<br />

※WLTP 航 続 距 離 。WLTPは、 乗 用 車 等 の 燃 料 消 費 率 とCO2 排 出 量 の<br />

計 算 に 使 用 される、 欧 州 の 新 しい 公 式 テストです。 燃 料 、エネルギー 消 費 、<br />

航 続 距 離 排 出 ガスを 測 定 します。 実 際 の 走 行 時 により 近 いデータを 得 る<br />

ために 策 定 されており、オプション 等 を 装 着 した 車 両 を 用 いて、より 厳 格<br />

な 手 順 と 走 行 条 件 のもとでテストが 行 われます。<br />

数 値 は 欧 州 仕 様 車 値 ( 自 社 データ)です。 実 際 の 数 値 とEV 車 両 の 全 般 的 な<br />

パフォーマンスは、 走 行 スタイルおよび 周 囲 の 環 境 により 変 動 します。<br />

詳 しくは、ジャガー 正 規 ディーラーにお 問 い 合 わせください。


セレクターズセレクション<br />

一 流 の 目 利 きが 選 ぶ 世 界 の 逸 品 。 各 界 のエキスパートが、アート、デザイン、スタイル、<br />

ファッションの 分 野 から 選 りすぐりのアイテムをご 紹 介 します<br />

編 集 : Bill Dunn ポートレートイラスト: Paul Ryding<br />

ファッション<br />

ターニャ・マーティン<br />

マイケル・ファスベンダー、コリン・ファース、フ<br />

ァレ ル 、キリア ン・マ ーフィー 、キット・ハリントン<br />

などの 有 名 俳 優 を 担 当 してきたスタイリスト。<br />

tanjamartin.com<br />

選 定 品 : グッチ1955ホースビット・ショルダー<br />

バッグ<br />

「クリエイティブディレクター の アレッサンドロ・ミケ ーレ が<br />

アーカイブを 掘 り 起 こし、1955 年 のデザインを 新 しい 解<br />

釈 で 表 現 。グッチの2020 年 春 のアクセサリーに 採 り 入 れ<br />

ました。このショルダーバッグは、 馬 具 をモチーフにしたク<br />

ロージャーや 調 節 可 能 なフラップが 特 徴<br />

で、2020 年 らしいスタイルで 斜 め 掛 けする<br />

こともで きます。 最 近 のトレ ンドと は 異 なり、<br />

小 さすぎず 大 きすぎず、 実 用 性 の 高 いバッ<br />

グ で す。シ エ ナ・ミラー や アレ ク サ・チャン が<br />

愛 用 しており、 今 年 のベストアイテムになる<br />

こと 間 違 いなしのラグジュアリーなバッグ<br />

で す。」<br />

gucci.com<br />

ウォッチ<br />

マイケル・クレリゾ<br />

『WSJ.Magazine』の 寄 稿 編 集 者 。 代<br />

表 作 に『 Masters of Contemporary<br />

Watchmaking』が あります。<br />

michaelclerizo.com<br />

選 定 品 : キートン・マイリック<br />

「オレゴン 州 で 活 動 しているこの38 歳 の<br />

時 計 製 作 者 は、もっと 知 られるべき 存 在<br />

で す。 彼 の デ ザ イン の 優 雅 さ は 、シ ンプル<br />

さとシンメトリーとハーモニーの 融 合 から<br />

生 み 出 されています。 無 駄 な 要 素 はいっ<br />

さ い ありま せん 。シ ンメトリー が こ の ム ーブ<br />

メントの 最 大 の 特 徴 です。 歯 車 とホイー<br />

ルによる 回 転 システムが、この 時 計 の 動<br />

力 で す。ム ーブメント は 、 円 と 弧 に よって 美<br />

し い シ ンメトリー を 描 い て い ます。 製 作 プ<br />

ロセスによって 材 料 を 変 えることで、 視 覚<br />

的 な 効 果 、 見 事 なハーモニーを 作 り 出 し<br />

ています。キートンの 腕 時 計 はナチュラル<br />

さも 体 現 して おり、ハ ンドメイドと いうより<br />

も、アートのような 印 象 が 漂 います。」<br />

keatonmyrick.com<br />

6 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 7


セレクターズセレクション<br />

ガーデン<br />

アンドリュー・ダラー<br />

ロンドン、ハムステッドにあるナショナルトラスト<br />

「フェントン・ハ ウス 」の 主 任 ガ ー デ ナ ー 。<br />

nationaltrust.org.uk<br />

選 定 品 : グレート・ディクスター( 英 国 イーストサ<br />

セックス 州 )<br />

「キュー・ガーデン( 王 立 植 物 園 )で 働 いてい<br />

た とき 、グレ ート・ディクスター に 行 って きた 実<br />

習 生 がみな、 活 力 とクリエイティビティに 溢 れ<br />

て 戻 って きた の で す。 彼 ら か ら 、 大 胆 な 色 の 組<br />

み 合 わせやルールにとらわれないアプローチ<br />

について 聞 くたびに、 大 いに 刺 激 を 受 けまし<br />

た。キュー・ガーデンでは、すべてが 科 学 的 、 体<br />

系 的 な 方 法 で 行 われていたので、とても 新 鮮<br />

に 感 じら れ た の で す。 主 任 ガ ー デ ナ ーとしてフ<br />

ェントンに 来 てからは、お 菓 子 屋 に 来 た 子 ど<br />

ものようにわくわくした 気 分 で、いろんなこと<br />

を 試 しました。 色 や 種 類 を 混 ぜ 合 わせたり、 伝<br />

統 か ら 外 れ て み たりと 、す べ て は グレ ート・ディ<br />

クスターの 話 を 参 考 にしました。その 後 、つい<br />

に グレ ート・ディクスター を 訪 れ たとき、 主 任 ガ<br />

ーデナー、ファーガス・ギャレット 氏 の 遊 び 心 と<br />

クリエイティビティ、 陽 気 さ、そしてガーデンに<br />

溢 れるロマンティックで 魅 力 的 な 雰 囲 気 の 虜<br />

に な り ま し た 。そ れ は 、『 モナ・リザ 』の 実 物 を 見<br />

たとき の ような 気 分 で した 。 憧 れ の 存 在 が 、 実<br />

際 には 想 像 よりも 少 し 小 さかったからです。<br />

以 来 、グレート・ディクスターからインスピレー<br />

ションを 受 け 続 けています。 私 はボランティア<br />

に 来 てくれる 人 たちに、まずはいろんなことを<br />

試 してみなさいとアドバイスしています。 基 本<br />

を 習 得 したら、それを 少 し 発 展 させてみる。も<br />

しうまくいかなくても、それでガーデンがつぶ<br />

れ る わ け で は な い の で す。 私 た ち は 来 年 も 挑<br />

戦 するつもりです。 重 要 なのは、 何 事 も 一 度 は<br />

試 してみるべきだということです」<br />

greatdixter.co.uk<br />

写 真 : FLO SMITH<br />

8 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 9


セレクターズセレクション<br />

ブック<br />

ティム・ムーア<br />

英 国 人 旅 行 作 家 、ユーモリストで、 著 作 に<br />

9 冊 の 旅 行 記 があります。<br />

@mrtimmoore<br />

ホテル<br />

ユナ・メグレ<br />

モ スク ワとロ サ ン ゼ ルスを 拠 点 に 、ホ スピ<br />

タリティデザインを 専 門 に 手 がけるクリエ<br />

イティブハウス、MEGRE INTERIORS<br />

の 創 設 者 。<br />

megreinteriors.com<br />

選 定 品 : ザ・ウィットビー・ホテル<br />

( 米 国 ニューヨーク)<br />

「ファームデール 系 列 のホテルはどこも<br />

素 晴 らしいサービス 品 質 と 雰 囲 気 を 備 え<br />

て い ま す。クリエ イティブ ディレ クター の キ<br />

ット・ケ ンプ は 、ホ スピタリティとデ ザ イン 、<br />

顧 客 サービスに 精 通 した 人 物 です。 昨 今<br />

は、 見 た 目 の 新 鮮 さを 重 視 し 過 ぎて、ベッ<br />

ドの 寝 心 地 などの 基 本 をおろそかにして<br />

いるホテルも 少 なくありません。 私 は 使 い<br />

やすく、 居 心 地 のいい 部 屋 に 泊 まりたい<br />

と 考 えて い ます。 凝 った ギミックよりも 、 快<br />

適 性 に 重 きを 置 いたホテルが 好 みです。<br />

そんな 私 の 新 しいお 気 に 入 りが、ザ・ウィ<br />

ットビ ー・ホ テル で す。サ ー ビスも 申 し 分 あ<br />

りません 。」firmdalehotels.com<br />

選 定 品 : エリック・ニュービー 著 『A Short<br />

Walk in the Hindu Kush』<br />

「1950 年 代 にこれほど 面 白 い 人 がいた<br />

と は 、こ の 本 を 読 む ま で 想 像 も つ き ま せ ん<br />

でした。 非 常 にユーモアがあるだけでな<br />

く、ニ ュー ビ ー が や ろうとして い た こと は ひ<br />

どく 馬 鹿 げ て い ました 。 彼 は ウェー ルズ に<br />

出 かけて、ホテルの 客 室 係 から 山 登 りの<br />

テクニックを 学 びました。 白 状 しますが、<br />

私 は 初 の 自 著 『 Frost on My<br />

Moustache』の 執 筆 中 、この 本 をいろい<br />

ろと 参 考 にさせてもらいました。 例 えば、<br />

私 は 今 でも 副 詞 の 使 い 方 が 下 手 ですが、<br />

ニュービーはそれが 非 常 に 上 手 い 作 家<br />

で 、 大 い に 助 け ら れ ました 。た だ 、 彼 の『 A<br />

Short Walk』との 出 会 いが 私 の 著 作 を<br />

運 命 づ け た ことに 、 今 となって は 少 々 恨 め<br />

しさも 感 じています。なぜなら、その 本 は<br />

著 者 自 身 が 経 験 した 不 愉 快 な 出 来 事 を<br />

題 材 にし た コ メディで 、ひど い シ チュ エ ー<br />

ションで 読 者 の 笑 いを 誘 っているからで<br />

す。どうして 彼 は 、プ ー ル サ イド で ゆ っ た り<br />

と 寝 そべっているような 状 況 を 題 材 に 本 を<br />

書 いてくれなかったのでしょうか……。」<br />

カバー 写 真 : HARPERCOLLINS PUBLISHERS LTSの 許 可 を 得 て 複 製 © 1958 ERIC NEWBY<br />

クルマの 新 しい 乗 り 方<br />

転 勤 や 家 族 が 増 えるなど、 人 生 にはさまざまな 節 目 があり<br />

ます。ですから、 経 済 状 況 に 合 わせて 月 々の 支 払 いを 柔 軟<br />

に 見 直 したいというニーズもあります。Pivotalのジャガー<br />

サブスクリプ シ ョン は 、 最 新 モ デル に 自 由 に 乗 ること<br />

ができるサービス。ご 都 合 に 合 わせて、いつでも 自 由 に<br />

休 止 ・ 再 開 いただけます。<br />

クルマは6か 月 ごとにアップデートされ、お 好 きなタイミング<br />

でピュアEVモデルに 切 り 替 えることができます。<br />

Pivotalは 現 時 点 では 英 国 内 のお 客 様 にのみ 提 供 して<br />

いるサービスです。<br />

10 / Jaguar Magazine<br />

WWW.DRIVEPIVOTAL.COM<br />

ジャガーのサブスクリプション


セレクターズセレクション<br />

ガジェット<br />

アレスター・ケルズ<br />

写 真 : ANGEL FERNANDEZ NUNEZ<br />

デザイン<br />

ロス・ラブグローブ<br />

ソニー、Apple、エ アバ ス 、ISSEY MIYAKE、<br />

タグ・ホ イヤ ーなどのビッグネ ーム に 大 きな 影<br />

響 を 与 えてきたインダストリアルデザイナー、<br />

アー ティスト。 彼 の 作 品 は ニューヨ ー ク の<br />

MoMAや 、ロ ンドン の デ ザ インミュー ジ アム な<br />

どにも 展 示 されています。<br />

rosslovegrove.com<br />

選 定 品 : ノブ チェア、b y マヌエ ル・ヒメネス・ガ<br />

ル シ ア、ナ ガミ<br />

「マヌ エ ル は 、スペ イン の スタートアップ 企<br />

業 ナガミの 共 同 創 業 者 で、 家 具 や 他 のオブ<br />

ジェクトの 製 作 に、 産 業 用 ロボットと3D プ<br />

リンターを 導 入 して 革 命 を 起 こしました。<br />

変 化 を 求 める 彼 のエネルギーは、 大 胆 な<br />

発 想 と、 先 進 のコンピューターデザインへ<br />

の 深 い 造 詣 に 裏 打 ちされています。ロンド<br />

ンのUCLバートレット・スクール・オブ・アー<br />

キ テ ク チ ャ ー の 教 授 も 務 め る 彼 は 、デ ジ タ<br />

ルの 世 界 を 作 り 出 して 認 識 する 方 法 に 関<br />

し、 構 造 、 最 適 設 計 、 独 自 のコンポーネント<br />

化 されたアーキテクチャーなどの 面 から 新<br />

しいアプローチで 研 究 に 取 り 組 んでいま<br />

す。 常 に 未 来 指 向 で、チャレンジ 精 神 にあ<br />

ふれた、 新 しい21 世 紀 のマインドセットを<br />

体 現 している 人 物 です。3Dプリンターで 製<br />

作 されたノブチェアは、そんなマヌエルの<br />

仕 事 を 代 表 する 作 品 の1つで、 実 に 見 事 な<br />

デザインです。」<br />

nagami.design<br />

写 真 © BOHUMIL KOSTOHRYZ/KINNEKSBOND<br />

ダンス<br />

フィン・ウォーカー<br />

ナショナル・シアター、ロイヤル・シェイクス<br />

ピア・カンパニー、ウェスト・エンド、ブロー<br />

ドウェイで 経 歴 を 重 ねてきたディレクター、<br />

振 付 師 。<br />

finwalker.co.uk<br />

選 定 品 : ご 覧 のとおり…… 私 たちが 誇 る<br />

青 い 空 と 永 遠 の 太 陽 は……ほんの 少 し<br />

ずつしか 消 費 できないのです……<br />

「ずいぶん 長 いタイトルですが、このダン<br />

スを 選 んだ 理 由 を 聞 いてください。 南 アフ<br />

リカ 人 振 付 師 のロビン・オーリンが 手 が<br />

けたこのダンスは、 資 本 主 義 が 引 き 出 す<br />

人 間 の 最 も 悪 い 面 を 表 現 しています。 心<br />

の 底 か ら 感 情 に 訴 え か け る 踊 りで 、ソ ロ<br />

アーティスト の アル バ ート・イボ クェイ・コ ー<br />

ザ にし か で きな い パフォーマ ンスで す。 彼<br />

は 素 晴 らしいパフォーマーで、 俳 優 、 歌<br />

手 、ダンサーとして 類 稀 な 才 能 の 持 ち 主<br />

で あ ると 同 時 に 、ヒ ー ラ ー 、シャ ー マ ン 、ゲ<br />

イ、 黒 人 という 複 数 のアイデンティティを<br />

持 ち、 男 性 としての 逞 しさと 女 性 的 な 優<br />

しさの 両 方 を 兼 ね 備 えています。 概 念 、ス<br />

トーリー 、エ モ ー シ ョン を 超 越 し た 彼 の 踊<br />

り は 、 私 の 心 に 火 を 付 け まし た 。こ れ ほ ど<br />

感 銘 を 受 けたダンスは 数 えるほどしかあ<br />

りません 。 必 見 の ダンスで す。」<br />

高 性 能 オーディオ 家 具 メーカー、<br />

Quadraspire 社 の 音 響 研 究 開 発 部 門<br />

の 責 任 者 を 務 めるプロダクトデザイナー。<br />

@KellsAwkells<br />

選 定 品 : Helius Designs 製 Viridiaター<br />

ンテーブル、Phaedraトーンアーム 搭 載<br />

「 初 めてViridiaを 見 たとき、 私 はしばら<br />

くレ コ ード を 載 せ な い で 、ター ン テ ーブ ル<br />

そのものに 見 とれていました。それほどま<br />

でにインパクトのある 製 品 です。 普 通 のタ<br />

ーンテーブルとは 異 なり、ビジュアルな 個<br />

性 を 強 く 主 張 して い ます。ル ックスと 同<br />

様 、サウンドも 素 晴 らしいです。お 気 に 入<br />

りのレコードの 魅 力 を 改 めて 感 じながら、<br />

じっくりと 音 楽 に 浸 ることができます。<br />

heliusdesigns.co.uk<br />

12 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 13


セレクターズセレクション<br />

挑 戦 に、ブレーキをかけない。<br />

テキスタイル<br />

ティモラス・ビースティーズ<br />

アリステア・マコーリーとポール・シモンズは、<br />

1990 年 から 大 胆 な 柄 の 壁 紙 やファブリック、<br />

ホームアクセサリーを 製 作 しています。<br />

timorousbeasties.com<br />

選 定 品 : 廃 墟 の 中 のクジャク<br />

「テキスタイルとパターンの 世 界 には、 常<br />

に 素 晴 らしいデザインが 登 場 しています<br />

が、それを 手 がけたアーティストの 名 前 知<br />

ら れ て い ま せ ん 。こ の『 廃 墟 の 中 のクジャ<br />

ク』に も そ れ が 当 て は まりま す。こ のト ワル<br />

( 銅 板 印 刷 された 布 地 の 一 種 )は1770 年<br />

頃 のものであることがわかっていますが、<br />

作 者 は 不 明 です。 私 たちはスコットランド<br />

のダンディー・コンテンポラリー・アーツで、<br />

この 作 品 にちなんだタイトルの 展 示 会 を 開<br />

きました。アーティストは 銅 板 に 直 接 絵 を 彫<br />

り 込 んでいたと 思 われますが、おそらく 線<br />

を3 本 ほど 彫 るたびに、 工 具 の 刃 先 を 研 ぐ<br />

必 要 があったと 推 測 されます。 完 成 までに<br />

1 年 はかかったでしょう。デジタル 印 刷 技<br />

術 がどれだけ 進 歩 したとしても、これほど<br />

の 緻 密 な 表 現 は 不 可 能 です。まるで 布 地 そ<br />

のものに 彫 り 込 まれたかのように、 立 体 的<br />

に 見 え ま す。こ れ は 驚 くべ き 人 間 の 力 で あ<br />

り、 私 たちが 製 作 する 現 代 のトワルにも 大<br />

きな 影 響 を 与 えています。そのスケールとク<br />

ラフトマンシップは 他 に 類 を 見 ない 素 晴 ら<br />

しさで あり、 印 刷 され たファブリックとして<br />

は 最 高 傑 作 のひとつと 思 います。」<br />

14 / Jaguar Magazine<br />

写 真 : R. JONES & CO, OLD FORD, 1761<br />

サーキットで 培 った 伝 統 を 未 来 へつなげる 場 所 がある。ジャガー<br />

クラシックワークスだ。 伝 説 のレーシングカー D-TYPEの 再 生 産 も、<br />

大 きなチャレンジのひとつといえる。<br />

このモデルの 生 産 予 定 台 数 は100 台 。しかし、 実 際 に 生 産 できたのは<br />

75 台 だった。かつてル・マンを 制 覇 し、サーキットを 席 巻 した<br />

D-TYPEのレガシーを 完 結 させるために、 熟 練 の 技 術 者 が 動 いた。 当 時<br />

の 仕 様 に 従 い、 直 列 6 気 筒 XKエンジンを 積 んだ25 台 のD-TYPEを 見<br />

事 につくりあげる。その 車 体 番 号 は、1955 年 モデルにつづく 連 番 と<br />

なった。ジャガーの1 台 1 台 は、 強 い 情 熱 を 表 現 した 作 品 でもある。<br />

詳 しくは、jaguar.com/classic をご 覧 ください。<br />

@jaguar.classic<br />

t : +44 (0)203 601 1255 e : classic@jaguarlandrover.com<br />

所 在 地 : Classic Works, Imperial Road, Ryton-on-Dunsmore, CV8 3LF.


インタビュー<br />

千 の 顔 を<br />

持 つ 男<br />

映 画 俳 優 、 舞 台 俳 優 からラッパー、パフォーマーまで、マルチな 才 能 に<br />

隠 されたリズ・アーメッドの 素 顔 。アンドルー・ディケンズ に 本 当 の 自 分 を<br />

語 ります<br />

撮 影 デビッド・エリス<br />

リズ・アーメッドは 多 忙 な 日 々から 一 時 的 に 解 放 されています。<br />

インタビューの 時 点 で、 新 型 コロナウイルスが 世 界 中 に 拡 大<br />

し、 彼 の 最 新 アルバムのツアーも 中 止 になりました。<br />

アーメッドの 日 常 で、「 何 もしない」という 状 況 はありません。<br />

彼 のクリエイティブな 才 能 は、 音 楽 、 映 画 、テレビと 超 人 的 で<br />

す。3 枚 のアルバムをリリースし、 映 画 で10 以 上 の 役 柄 を 熱 演<br />

し、プライムタイムエミー 賞 を1 回 獲 得 しています。 相 当 な 作<br />

品 量 ですが、 彼 は 自 分 が 直 感 的 で 野 心 的 な 人 間 であると 認<br />

めています。<br />

「 言 いたいこと、 世 に 送 り 出 したいことがあるといつも 感<br />

じている」と 彼 は 言 います。「たぶんアーティストは、 観 客 やフ<br />

ァンがいなければアーティストとは 呼 べないかもしれない。パ<br />

フォーマーは 特 にそうだね。 人 は 純 粋 に 自 分 自 身 のために 絵<br />

を 描 くことができるかもしれないけど、 演 奏 や 演 技 は 自 分 の<br />

た め だ け に で きると は 思 え な い 」。<br />

現 在 37 歳 の 彼 はロンドン 郊 外 のウェンブリーに 生 まれまし<br />

た。クリエイティブな 才 能 は 若 い 頃 から 突 出 していました。<br />

「 何 でもやってみたよ」と 彼 は 言 います。「 兄 のラップのカセ<br />

16 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 17


インタビュー<br />

「 人 は 僕 自 身 に 対<br />

して 興 奮 している<br />

わ けじゃ な い 。 僕<br />

はエキサイティン<br />

グなことの 一 部<br />

にすぎない」<br />

ットを 借 りて、 歌 詞 を 暗 記 したのを 覚 えている。 兄 と 映<br />

画 に 出 演 したり、タイトルやストーリーや 役 柄 を 考 え 出<br />

したり、メモ 帳 にU( 全 年 齢 対 象 )から、PG( 保 護 者 同<br />

伴 )、18(18 歳 未 満 非 推 奨 )までレーティングを 付 けた<br />

り。 超 バイオレンスのバイクカンフー3 部 作 を 撮 ったこと<br />

もある。いろいろな 世 界 を 創 作 することにずっと 興 味 が<br />

あったんだ。 演 技 や 音 楽 を 通 じて、 人 が 体 験 できる 世<br />

界 を 創 って い るん だ 」。<br />

ロンドン 郊 外 にある 私 立 のマーチャントテイラーズスク<br />

ールの 奨 学 金 を 獲 得 した 後 、アーメッドはオックスフォ<br />

ード 大 学 で 政 治 学 、 哲 学 、 経 済 学 を 学 びました( 彼 は 本<br />

当 に 理 由 がわからないと 認 めています。それ 以 外 にも、<br />

「 議 論 に 関 心 」があったということです)。いつも 演 技<br />

や 音 楽 に 熱 中 していましたが、 現 在 のような 生 き 方 は<br />

まったく 想 像 していませんでした。<br />

「 あ え て や って み ようと は 思 わ な か っ た 。クリエ イティ<br />

ブ 業 界 で 成 功 する 可 能 性 はとても 低 いからね」。「きっ<br />

か け は 、 大 学 の 誰 か か ら 送 ら れて きた「 こ ん にち は 、 演<br />

劇 学 校 に 応 募 してみる 気 はないかな」というメールか<br />

な 。そ の 気 に さ せ ら れ た ん だ 。よく 知 りもし な い 人 か ら<br />

人 生 を 変 えるメッセージをもらったということだよ。だ<br />

から、 誰 かを 励 ます 機 会 があったら、ぜひそうしてほし<br />

いと 言 いたいね。 人 生 を 変 えるチャンスはいつ 訪 れる<br />

かわからないから」。<br />

その 適 切 なアドバイスを 受 け 入 れて、セントラル・スクール・オ<br />

ブ・スピーチ・アンド・ドラマに 入 学 してから、アーメッドの 俳 優 と<br />

してのキャリアは、ゆっくりと 着 実 に 花 開 いていきました。 最 初<br />

に 出 演 した 映 画 はマイケル・ウィンターボトムの「グアンタナモ、<br />

僕 たちが 見 た 真 実 」でした。さらにクリスモリスの 辛 辣 な 風 刺<br />

映 画 「 Four Lions」、ドラッグの 売 人 の 役 で 英 国 インディペンデン<br />

ト 映 画 賞 (BIFA)に 初 めてノミネートされた「Shifty」、 小 説 か ら<br />

映 画 化 され 絶 賛 された「ミッシングポイント」など の さまざ まな<br />

注 目 作 に 出 演 します。 陰 惨 で 暗 い「ナイトクローラー」で は ジェ<br />

イク・ジレンホール 演 じる 反 社 会 的 フォトジャーナリストの 不 運<br />

な ア シ ス タ ント 、リッ ク を 演 じ まし た 。<br />

中 でも、「ナイトクローラー」では、いわゆるハリウッドタイプの<br />

人 が「ヒート」と 呼 びたがる 雰 囲 気 を 表 現 し、2016 年 には 数 本<br />

の 映 画 に 出 演 しました。HBOのテレビドラマ「ザ・ナイト・オブ 」<br />

で、 俳 優 なら 一 度 は 取 りたい 賞 、プライムタイムエミー 賞 を 獲<br />

得 し 、「 ローグワン」の パ イロット 、ボ ー ディー・ル ック の 役 で「ス<br />

ターウォーズ」シリーズにも 進 出 しました。そしてもちろん、 彼 が<br />

演 じた 役 のアクションフィギュアをもらいました。(「そのフィギ<br />

ュアは 甥 が 持 っていると 思 う」と 彼 は 言 っています。<br />

アーメッドは、キャリアが 急 速 に 大 きく 変 化 していると 感 じて<br />

いました。「どんな 場 所 にいるかはあまり 問 題 じゃない。「ちょっ<br />

とち ょっと 、こ こ で は 何 が 起 こって い る の 」。そ れ が お もしろ い<br />

画 像 :AMAZON STUDIOS<br />

リズ・アーメッドの 最 新 映 画 「Sound of Metal」で は 、 彼 の 演 じる 聴 力 を 失 っ たドラ マ ー が オリジ ナル な ビートを 叩 き 出 します。<br />

18 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine / 19


インタビュー<br />

し、ちょっと 不 思 議 なんだよね。そういうときは、 人 々は 僕 自<br />

身 に 対 して 興 奮 しているわけじゃない。 僕 はエキサイティン<br />

グなことの 一 部 にすぎない。 誰 かが 僕 の 音 楽 を 本 当 に 愛 し<br />

て い て も 、そ の 愛 は 僕 に 対 して の も の で は な い 。そ れ は 人<br />

が 見 ている 僕 の 一 部 分 、つまり 僕 のホログラムバージョン<br />

なん だ 」。<br />

「スターウォーズ」に 出 た ことで 、ホ ロ グラム に つ い て 少 し<br />

わかったよ。 人 はホログラムの 君 を 愛 するかもしれない、ホ<br />

ログラムの 君 を 憎 むかもしれない、でもそれは 本 当 の 君 で<br />

はないんだ。それはすごく 役 に 立 つアナロジーだから、いつ<br />

も 頭 に 入 れ て おくべ きだ よ 。ホ ロ グラム は 君 を 混 乱 さ せ る<br />

か もし れ な い か ら 」。<br />

アーメッドによると、 本 当 の 自 分 を 保 つために、 家 族 が 大<br />

きな 役 割 を 果 たしているということです。「 母 が 心 配 するの<br />

は 僕 がちゃんと 食 べているかどうかということだけ<br />

で、Twitterのフォロワーが 何 人 いるかなんて 気 にもかけ<br />

ない」。 家 族 は 仕 事 でも 大 きな 役 割 を 果 たしています。 彼 の<br />

両 親 は1970 年 代 にパキスタンから 英 国 に 移 住 してきまし<br />

た。2つの 文 化 の 間 で 育 ったアーメッドが 奨 学 金 を 獲 得 し、<br />

オックスフォードへ 通 ったことは、 彼 が 異 なる 階 級 に 適 応 し<br />

た ことも 意 味 して い ます。<br />

自 分 のバックグラウンドは、クリエイティブな 世 界 でとて<br />

も 役 立 つそうです。「2つの 異 なる 自 分 を 切 り 換 えられるこ<br />

と が 、す ごく 役 に 立 って きた と 思 う。2つの 別 の 顔 を 使 い 分<br />

けることによって、 役 者 として 成 功 できたんだから。すごく<br />

若 い 頃 か らそうして きた 。 毎 日 、 異 なる 文 化 と 階 級 を 乗 り 越<br />

えること は 、 一 日 中 異 なるキャラクター を 演 じて い るような<br />

も の だ よ 」。<br />

「 自 分 のどちらかのバージョンを 選 ばなければならな<br />

い、という 不 都 合 なケースもあるけどね。 今 のポジションで<br />

はそのことをあまり 考 えなくていいけど、『 自 分 が 何 かする<br />

ときに、どうしたら 自 分 自 身 を 最 大 限 に 表 現 できるか』に つ<br />

い て は 考 えるよ 」。<br />

実 際 、リズ・アーメッドはいまもっとも 勢 いのある 俳 優 のひ<br />

とりです。 最 近 の 作 品 を 見 れば 明 らかです。 彼 の 最 新 映 画 、<br />

「Sound of Metal」では、 聴 力 を 失 うドラマーを 演 じています。<br />

絶 望 に 打 ちひしがれ、 酒 やドラッグにおぼれ、 聴 覚 障 害 の<br />

ある 薬 物 依 存 者 のためのホームに 入 所 します。「なんてこ<br />

と、まるでリズ・アーメッドのようじゃないか」と 思 う 人 はあま<br />

りいないかもしれません。でも 本 人 はその 意 見 に 同 意 でき<br />

ないようです。<br />

「 自 分 自 身 と 役 柄 の 接 点 を 見 つけるんだよ」と 彼 は 言 い<br />

ます。「 自 分 にとっての 重 要 な 接 点 は、「 自 分 にはどんな 価<br />

値 があるんだろう。 仕 事 以 外 の 僕 の 価 値 は 何 だろう」という<br />

ことだった。それは、 僕 が 演 じたルーベンが 直 面 しているこ<br />

とそのものだ。「 自 分 自 身 に 直 面 せざるをえない 自 分 は 何<br />

者 だろう」。 僕 は、じっと 座 っていることが 苦 手 な 人 間 で、だ<br />

からこそこのロックダウンは 苦 痛 以 外 の 何 物 でもない。 自<br />

分 の 行 動 は 自 分 で 決 めてきたからね。でもルーベンは 静<br />

寂 の 中 で じっと 座 って い るし か な い 。 自 分 自 身 と 共 に 、 自<br />

分 の 内 面 と 向 き 合 って。それは 恐 ろしいことかもしれない。<br />

写 真 :STUART CLARKE/SHUTTERSTOCK(16ページ)、TOM VAN SCHELVEN(17~18ページ)、BBC(19ページ)<br />

僕 は そ れ に 共 感 すること が で きる 」。<br />

「だから、『ドラマーらしく 演 じよう』と 外 側 から 見 るので<br />

はなく、 内 面 から 表 現 するよう 努 力 すべきだと 思 う。カメレ<br />

オンとして 育 った 人 に 対 しては、カメレオンとして 作 品 にア<br />

プローチする。つまり、カメレオンになるのは 一 度 で 十 分 と<br />

いうことなん だ よ 」。<br />

これと 同 じことが 彼 の 音 楽 にもあてはまります。20 代 の<br />

前 半 は、DJ、MC、ライター、バトルラッパーとして 輝 かしい<br />

成 功 を 収 めることに 夢 中 でした。しかし、お 金 を 稼 ぐことに<br />

は 関 心 はなかったそうです。 最 新 アルバム「The Long<br />

Goodbye」は、 彼 自 身 を 材 料 にした 料 理 のようなものです。「リ<br />

ゾット(Riz-otto)」と 呼 ぶことにしましょう。<br />

その 音 楽 は 東 洋 と 西 洋 から 影 響 を 受 けたカクテルであり、<br />

イギリスとアーメッドの 複 雑 な 関 係 をうかがわせます。 歌 詞<br />

とも 詩 ともつかない 言 葉 が 並 びます。ショートフィルムもつ<br />

いています(YouTubeで 視 聴 可 能 )。21 世 紀 の 政 治 にう<br />

んざりしている 人 は 必 見 です。また、ソロの 場 合 も、スウェッ<br />

トショップボーイズ(ラッパーのヒームズとプロデューサーの<br />

レ ディン ホ と の コ ラボ レ ー シ ョン )の メン バ ーとして も「リズ<br />

MC」の 名 前 でリリースされていたのに 対 し、このアルバム<br />

はリズ・アーメッド の 名 前 でリリースされて い ます。<br />

「このショートフィルムでは、 僕 のいろいろな 面 がひとつ<br />

に 集 約 されて い る 」。「 演 技 、 音 楽 、 言 葉 。 社 会 で 起 こってい<br />

ることの 一 部 について 語 っているんだけど、すごく 個 人 的<br />

な 場 所 か ら も 語 って い るん だ 。お もち ゃ は ひとつ の 箱 に 全<br />

部 入 れてしまいたい。 自 分 のどの 面 を 見 せるかを 選 ぶ 必 要<br />

は な い ん だ よ 」。<br />

「Sound of Metal」がリリースされ るまで 、 俳 優 を 辞 め ること<br />

さえ 考 えていたとも 言 っています。 想 像 したくありませんが、<br />

少 なくともしばらくの 間 は 俳 優 を 続 けてくれるでしょう。 彼<br />

はオーディエンスとのコミュニケーションを 必 要 としている<br />

ということです。でも、 他 にどのような 方 法 があるでしょうか。<br />

彼 はファッションコンシャス(ファッションに 敏 感 )なタイ<br />

プ で 、 彼 が 言 うに は「 コ ン シャスファッ シ ョン 」、つ まり 自 分<br />

自 身 を 表 現 するサステイナブルな 方 法 に 関 心 があるという<br />

ことです。 映 画 製 作 に 数 年 携 わった 後 、ある 人 からそれは<br />

「プロデューサー」の 仕 事 だと 指 摘 されました。 今 のところ、<br />

プロデュース 業 は 彼 の 最 優 先 事 項 ではありませんが、レフト<br />

ハンデッドフィルムズを 設 立 し、2020 年 のベルリン 国 際 映<br />

画 祭 で「 Mogul Mowgli」が 初 上 映 されました。<br />

世 界 は 常 に 変 化 します。 私 たちも 同 じように 変 化 しなけ<br />

ればなりません。し か し 、 新 し い ことを 始 め る に あ たり、 突 飛<br />

なアイデアは 必 要 ない、とアーメッドは 教 えてくれます。<br />

何 かを 選 択 するときに 必 ず 新 しい 方 法 が 見 つかる、と 彼<br />

は 言 います。「 僕 にとって、それは 必 ずしも 俳 優 を 辞 めるこ<br />

とを 意 味 しているわけではないんだ。それは、 演 じる 役 柄<br />

に つ い て 、 準 備 する 方 法 に つ い て 考 えると いうことだ よ 。 同<br />

じアートの 分 野 で 自 分 自 身 を 表 現 する 別 の 方 法 、 同 じフィ<br />

ールドで 成 長 する 別 の 方 法 を 見 つけることは 可 能 だと 思<br />

う」。<br />

「カメレオンに<br />

なるのは<br />

一 度 で 十 分 」<br />

20 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine / 21


旅<br />

ファイティングスピリッ ト<br />

ダンスと 武 術 が 融 合 したカポエイラは、<br />

ブラジル 文 化 の 象 徴 のひとつです。<br />

サル ヴ ァドー ル か ら ウニ ア ン・ドス・<br />

パウマレスまで、ジャガーXEに<br />

乗 ってそのルーツを 探 ります。<br />

ストーリー ジェニファー・ ドゲット 撮 影 ウィルソン ・ヘネシー<br />

動 く 的 をとらえるのは 難 しいことです。カポエイラの 基 本 動 作 のひと<br />

つに、ジンガがあります。ジンガとは、 流 れるようなゆったりした 動<br />

きが、 揺 れるように 繰 り 返 される 動 作 です。まさにカポエイラの 動 き<br />

そのものです。スポーツ、 武 術 、 芸 術 、 競 技 の 要 素 をもつカポエイラ<br />

は、ひとつのカテゴリーで 語 ることが 難 しいのです。<br />

カポエイラの 正 確 な 起 源 には 諸 説 ありますが、 最 も 有 力 なの<br />

が、16 世 紀 にポルトガル 人 によってアフリカからブラジルに 連 れてこ<br />

ら れ た 奴 隷 が 、 自 ら の 身 を 守 り、 自 由 に なるた め に 秘 密 の 武 術 を つ<br />

くりあげたというものです。 現 在 では、 多 様 なルーツを 持 つ 技 術 に<br />

発 展 しました。 私 たちは、そのルーツをたどり、どのように 発 展 した<br />

かを 理 解 するためにブラジルに 来 ました。<br />

ブラジルの 東 北 部 に 位 置 するバイーア 州 は、カポエイラ 発 祥 の 地<br />

と 考 えられています。ガイドのルイスによると、サルヴァドールはバ<br />

イーア 州 の 州 都 であり、この 国 の 文 化 の 中 心 地 ということです。「サ<br />

ルヴァドールでは、 人 が 生 まれたとは 言 わない。デビューするって 言<br />

うんだ 」と 彼 は 笑 います。ル イスはサンパウロ 出 身 で、 南 米 各 地 で 働<br />

いていますが、できるかぎりサルヴァドールで 過 ごしているそうです。<br />

「 僕 たちサンパウロっ 子 は 金 のためだけに 働 くと 言 われているから、<br />

サルヴァドールに 来 るのかもしれない」。<br />

ジェズス 広 場 にいます。1 組 のカポエイリスタが 信 じられないスピ<br />

ードで 身 を 翻 し、 回 転 するのを 眺 めています。 驚 くべき 精 度 で 回 転<br />

し 、ミリ 単 位 で 相 手 の 顔 を か す め ま す。 若 者 がしなやかな 身 体 で 鮮<br />

や か に 倒 立 し 、 観 光 客 に 満 面 の 笑 み を 見 せます。グループで 一 番 若<br />

いメンバーのひとり、ジェイソンに、カポエイラは 彼 にとってどんな<br />

意 味 があるのか 尋 ねると、 彼 は 真 剣 な 眼 差 しで、カポエイラは 命 の<br />

恩 人 だと 言 いました。「 友 達 が 何 人 も 死 んだり、 警 察 の 厄 介 になっ<br />

ているんだ。でも、カポエイラを 始 めたことで、 新 しい 人 生 を 歩 むこ<br />

とができた。 今 僕 がここにいるのは、すべてカポエイラのおかげだ<br />

よ」。<br />

カポエイラの 華 麗 な 一 面 が、ジェイソンと 友 人 たちに 生 命 力 のは<br />

け 口 と 収 入 源 をもたらしているのです。 彼 は 、カポ エイラが オリンピ<br />

ックの 種 目 になることを 望 んでいます。そうなればさらにチャンスが<br />

広 がるからです。ボクシングやサッカーと 同 様 に、カポエイラは 教 育<br />

と 支 援 の 機 会 を 奪 われている 子 供 たちにとって、その 境 遇 から 抜 け<br />

出 す 手 段 なのです。ストリートカポエイリスタたちは、プロのアスリー<br />

トにも 劣 らないほどハードなトレーニングを 積 んでいます。 違 うの<br />

は、 焼 けつくようなコンクリートの 上 で、 観 光 客 からのチップの 額 に<br />

関 係 なく 打 ち 込 んでいることです。<br />

ジャガーXEでこの 広 場 を 後 にしたのは、 午 後 も 遅 くなってからで<br />

した。 太 陽 の 光 をさえぎる 白 い 雲 は 分 厚 く、まるで 落 ちてくるのでは<br />

とさえ 思 われました。サルヴァドールはとても 美 しい 町 です。 石 畳 の<br />

急 坂 の 両 側 には 陽 の 光 で 色 あせたパステルカラーの 建 物 が 並 んで<br />

います。XEのボディに、ひしめくように 建 ち 並 ぶ 家 々が 鮮 やかに 映<br />

し 出 されます。 青 と 白 のタイルが 貼 られた、 今 にも 崩 れ 落 ちそうなコ<br />

ロニアルスタイルの 建 物 の 間 をゆっくり 進 みます。ドアには 色 あせた<br />

ポスターが 何 枚 も 層 になり、あちこちに 独 創 的 な 落 書 きが 書 かれて<br />

います。<br />

ペドロ・アビ ブ に 会 ったときにも 、オリンピックの 話 題 に なりまし<br />

た。カポエイラと 文 化 的 アイデンティティに 関 する 多 くの 著 書 があ<br />

り、 学 者 、ミュージ シャン、 映 像 作 家 、カポ エイリスタである 彼 は 、カ<br />

ポエイラの 商 業 化 を 嘆 き、 競 技 スポーツ 化 に 断 固 反 対 しています。<br />

彼 は、カポエイラはスポーツより 文 化 としての 意 義 があると 信 じて<br />

22 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine / 23


旅<br />

テクニカラー サルヴァドールのラルゴ・ド・ペロウリーニョ 地 区 の 熱 気 と 喧 噪 とコントラストを 描 く、ジャガーXEの 洗 練 されたキャビン<br />

います。「 勝 ち 負 けを 競 うものではありません。 競 技 ではな<br />

く、 人 と 人 のつながりであって、 哲 学 的 な 対 話 なのです」。<br />

ペドロは、スポーツのひとつのジャンルとなって 消 費 者 され<br />

るカポエイラは 見 たくないのです。 彼 にとってカポエイラは<br />

ヒーリングであり、 分 断 された 社 会 で 平 等 を 実 現 するもの<br />

です。<br />

ペドロによると、カポエイラはユネスコの 無 形 文 化 遺 産 に<br />

登 録 されてはいるものの、その 本 質 はまだ 一 般 に 理 解 され<br />

ていないどころか、 誤 解 されているそうです。19 世 紀 末 に 奴<br />

隷 制 度 が 終 わり、 都 市 化 が 進 むと、カポエイラは 犯 罪 組 織<br />

と 同 一 視 され、20 世 紀 初 めには 禁 止 されました。カポエイ<br />

ラをするだけで 逮 捕 され、 時 には 拷 問 を 受 けることもありま<br />

した。<br />

サルヴァドールを 訪 れる 前 に、ノキアの 公 告 とBBCの 局 名<br />

告 知 映 像 で、2 人 の 男 性 が 屋 根 の 上 でスパーリングをする 映<br />

像 を 見 て、カポエイラについては 漠 然 と 知 っていました。コ<br />

ンピューターゲームの「 鉄 拳 」にはカポエイラのファイター<br />

が 出 て き ま す。「 オーシャンズ12」でヴァンサン・カッセルが<br />

演 じる 役 は、カポエイラを 駆 使 して 無 数 のレーザーがランダ<br />

ム に 動 く 警 備 システムを か いくぐります。しかし 、この ような<br />

シーンはカポエイラを 断 片 的 にアクロバティックに 表 現 した<br />

に 過 ぎません。 音 楽 、 詩 、 精 神 性 、 演 技 の 要 素 こそ、カポエ<br />

イラが 人 を 引 き 付 ける 芸 術 である 所 以 なのです。 私 は、 現 地<br />

で 説 明 を 聞 いたことで、あらためてカポエイラに 流 れる 精 神<br />

が 垣 間 見 えるようになりました。<br />

メストレ・ビンバ 財 団 の 狭 い 階 段 を 降 りると、メストレ・ネ<br />

ネウの 父 親 の 名 前 をつけたカポエイラの 学 校 があります。<br />

湧 き 上 がるエネルギーが 感 じながら、 半 地 下 の 狭 い 部 屋 に<br />

入 ると、 白 い 綿 の 道 着 を 着 た 生 徒 で 埋 まっていました。 小 さ<br />

なホダ(カポエイラを 行 う 円 形 )の 周 囲 には、あらゆる 体 格<br />

と 年 齢 の 生 徒 が 密 集 しています。 中 央 では2 人 の 演 者 がゆっ<br />

たりと 動 き、 互 いから 目 を 離 さず、 互 い の 動 きを 繰 り 返 し、<br />

呼 応 します。 催 眠 術 を 思 わせるダンスで、なめらかにフェイ<br />

ントを か け、 足 を 払 い 、 相 手 の 身 体 の 上 をころがります。 遊<br />

び 心 と 協 力 し 合 う 雰 囲 気 が 感 じられます 新 しいペアがホダ<br />

に 入 り、 身 体 を 前 後 に 揺 らし 始 めました。 善 意 、 尊 敬 、コミ<br />

ュニティの 感 覚 が 明 確 に 感 じ 取 れます。ビリンバウをたたく<br />

音 に 合 わ せ て、 誰 も が ほ ほ 笑 み 、 手 を 打 ち 、 歌 って います。1<br />

本 の 弦 でできている 打 楽 器 、ビリンバウはカポエイラには 欠<br />

か せません 。メストレを 名 乗 るためには 、 生 徒 はビリンバウ<br />

の 製 作 と 演 奏 の 両 方 をマスターしなければなりません。メス<br />

トレは 英 語 の「master」、つまり 指 導 者 という 意 味 ですが、<br />

実 際 にはもっと 深 い 意 味 をもっています。 段 位 、 年 齢 、 経<br />

験 、 練 習 した 時 間 、 習 得 した 歌 で 評 価 する 人 もいます。さら<br />

に、メストレはコミュニティの 尊 敬 の 的 であり、メストレの<br />

24 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 25


旅<br />

メストレの 務 めは 神 聖 なもの<br />

であり、メストレは 親 、 師 、リー<br />

ダーであるとも 言 われます。<br />

海 の 風 景 穏 やかな 大 西 洋 に 夕 日 が 沈 むサルヴァドール、かつてのキンタ・ド・ウニャオンの 館 と 礼 拝 堂 からの 眺 め<br />

ファイトクラブ( 上 )ヘジョナウスタイルの 創 始 者 の 息 子 メストレ・ネネウと<br />

妻 メストラ・プレギーサ。( 下 )ビリンバウと 呼 ばれる 弦 楽 器 を 手 にするメスト<br />

ラ・ナーニ<br />

務 めは 神 聖 なものであり、メストレは 親 であり、 学 者 であり、<br />

リーダーであるとも 言 われています。 階 級 で もあり、 人 々の<br />

心 が 決 めるものでもあるようです。 確 かなことは、 単 純 な 技<br />

術 ではないということです。<br />

しばらくして、ホダに 密 集 していた 生 徒 が 散 らばっていき<br />

ました。 私 も 含 めて 全 員 が、メストレ・ネネウに 話 したいと 思<br />

っています。 彼 は、カポエイラヘジョナウの 創 設 者 、メスト<br />

レ・ビンバ の 息 子 で す。カポ エイラには 2 つ の 大 きな 流 派 が<br />

ありますが、 無 数 に 細 分 化 されています。 一 般 にヘジョナウ<br />

は、 運 動 面 が 強 調 され、 段 位 によって 色 が 異 なる 帯 を 付 け<br />

るなど、 習 熟 段 階 が 簡 単 に わ か るとされています。 帯 や 色 は<br />

スクールによってさまざまです。アンゴーラは、より 伝 統 的<br />

なスタイルを 指 示 したメストレ・パスティーニャの 教 えを 受<br />

け 継 いで います。カポ エイラコンテンポラーニャの2 つ の 流<br />

派 を 統 合 させる 動 きもありました。<br />

メストレ・ビンバはカポエイラに 教 育 面 の 可 能 性 を 見 出<br />

し、 息 子 のメストレ・ネ ネウによると、 芸 術 として 認 められ た<br />

いという 意 図 がありました。 彼 と 妻 のメストラ・プレギーサ<br />

は 、 社 会 から 取 り 残 されてい る 若 者 の た め に 、 社 会 的 プロジ<br />

ェクトを 数 多 く 実 施 しています。メストレ・ビンバ の 理 念 を<br />

守 り 推 進 すること、 相 互 の 信 頼 と 自 立 を 支 援 することが 自 分<br />

たちの 使 命 であると、 熱 心 に 伝 えています。メストラ・プレギ<br />

ーサは、カポエイラの 魅 力 について 次 のように 語 っています。<br />

「カポエイラにはすべてが 含 まれています。そして、すべての<br />

人 が 楽 しめるものなのです」。 彼 女 は、カポエイラが 行 き 場<br />

を 失 ったスラムの 子 供 を 変 え、ドイツの 刑 務 所 ではカポエ<br />

イラが 女 性 に 癒 しを 与 えるのを 見 てきました。<br />

彼 女 は、 自 分 たちが 本 名 を 名 乗 らず、 修 了 したときに 授 け<br />

られた 名 前 で 活 動 していることも 教 えてくれました。メスト<br />

ラ・プレギーサ(「 怠 惰 な」という 意 味 )は、 初 心 者 の 頃 シャ<br />

イで 演 技 ができなかったため、 彼 女 の 師 が 冗 談 で 付 けた 名<br />

前 です。<br />

ペロウリーニョ 地 区 の 喧 噪 に 満 ちた 通 りに 入 っても、 胸 の<br />

中 でまだドラムの 音 がこだましているように 感 じました。リ<br />

ズムはサルヴァドールのいたるところに 存 在 します。カース<br />

ピーカーから 流 れてくるサンバの 曲 や、ブロコスアフロ( 太<br />

鼓 隊 )が 打 ち 鳴 らす 太 鼓 など。ポール・サイモンの 有 名 なラ<br />

イブ 映 像 「The Obvious Child」はこちらから 視 聴 できます。 彼<br />

は 、アル バ ム「リズム・オブ・ザ・セインツ」に 地 元 のオロドゥ<br />

ンのドラマーの 複 雑 なポリリズムを 採 り 入 れました。サル<br />

26 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 27


旅<br />

ウ ニ ア ン・ドス・<br />

パルマレス<br />

ブラジル<br />

路 上 の 緑 サルヴァドールからウニアン・ドス・パウマレスまで 車 で 丸 一 日 かかるドライブでは、 野 生<br />

生 物 が 数 多 く 生 息 する 森 林 と 黄 金 に 輝 く 海 岸 の 間 を 走 り 抜 けます。<br />

ジャガーXEに 乗 って 軽 快 に 走 る、ライターのジェンニ<br />

ヴァドールで 唯 一 音 楽 を 聴 けなかったのは、 耳 をつんざくよ<br />

うな 教 会 の 鐘 の 音 が 町 中 に 響 き 渡 ったときだけでした。サ<br />

ルヴァドールには1 年 の 日 数 だけ 教 会 があると 言 われていま<br />

すが、 実 際 には365 以 上 の 教 会 があります。この 地 域 では、<br />

カトリックとカンドンブレが 主 要 な 宗 教 として 共 存 している<br />

のです。カンドンブレは、アフリカの 宗 教 とカトリックの 信<br />

仰 が 融 合 したものです。ノッソ・セニョール・ド・ボンフィム<br />

教 会 では、 建 物 内 に 大 勢 の 人 が 集 まり、 外 では 多 くの 人 々<br />

が 願 いごとをフィタス(リボン)に 託 して 門 に 結 び 付 けてい<br />

ました。10 人 以 上 の 女 性 が 糸 に 通 したビーズを 引 きずり、 踊<br />

りながら 通 り 過 ぎて 行 きます。たっぷりとドレープをとったド<br />

レスの 裾 がそよ 風 に 吹 かれてふくらんでいます。 海 の 女 神 イ<br />

エマンジャに 捧 げる 花 、 降 水 、 鏡 を 運 んでいるのです。<br />

X E で サル ヴァドール の 迷 路 を 走 り 抜 けると 、きら めく 大 西<br />

洋 を 背 に、すべてのシルエットがくっきりと 浮 き 上 がっていま<br />

した。 海 岸 に 沿 って 走 ると、 水 につかっておしゃべりに 夢 中<br />

ILLUSTRATION: TIM BOELAARS<br />

サルヴァドール<br />

大 西 洋 沿 岸 の 森 林 を 走 り<br />

抜 けるドラマチックな<br />

ル ート 、グリーン ライン<br />

の 人 、 宙 返 りで 入 り 江 に 飛 び 込 む 子 供 たち、ボートでのんび<br />

り 釣 りをする 人 がいました。マチェーテを 携 えて、30フィート<br />

もの 高 さのココヤシの 木 に 登 っている 男 性 も 見 かけました。<br />

日 も 陰 り、 最 後 に 立 ち 寄 った の が 、カポ エイラ 要 塞 で す。<br />

オランダ 人 侵 入 者 対 する 防 御 施 設 の 後 は、 監 獄 として 利 用<br />

された17 世 紀 の 優 雅 な 要 塞 には、いくつかの 名 門 カポエイ<br />

ラアカデミーが 入 居 しています。うれしいことに、 尊 敬 を 集 め<br />

たメストレ・パスティーニャの 教 え 子 のメストレ・ボカヒカに<br />

会 うことができました。8 3 歳 の 彼 は 信 じられ ないほど 身 体<br />

が 柔 軟 で、 茶 目 っ 気 が あり、 魅 力 的 な 人 物 でした 。 彼 はじっ<br />

としていることがありません。カポエイラへの 並 々ならぬ 情<br />

熱 を、 音 楽 の 創 作 と 保 存 に 注 いでいます。 彼 は 教 えを 広 める<br />

ために 何 枚 ものアルバムをレコーディングし、 世 界 中 を 旅 し<br />

てきました。 同 じくメストレ・パスティーニャの 弟 子 であり、<br />

すぐ れ た 研 究 者 、 作 曲 家 で も あ るメストレ・モラエ ス<br />

は、2003 年 にカポエイラの 歌 のアルバム「Capoeira Angola 2:<br />

Brincando Na Roda」でグラミー 賞 にノミネートされました 。<br />

ボカリカの 仲 間 のメストラ・ナーニは、やはりパスティーニ<br />

ャの 弟 子 であるメストレ・ペケーノの 孫 娘 です。 彼 女 は 若 い<br />

世 代 の 指 導 者 の 象 徴 的 な 存 在 ですが、 祖 父 から 受 け 継 いだ<br />

教 えと、 彼 が ホダの 女 性 を 差 別 しなかったことを 誇 りにして<br />

います。 十 代 で 母 親 になり 苦 労 した 彼 女 は、カポエイラに<br />

28 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 29


旅<br />

ルの 大 群 が 占 拠 するスラロームです。 太 陽 に 誘 われていった<br />

ん 道 を 占 拠 すると、なかなか 去 ってくれません。<br />

さとうきび 畑 や 牧 場 を 通 り 過 ぎてサルヴァドールから12 時<br />

間 ほ ど 走 り、ウニ ア ン・ド ス・パ ウ マレス に 到 着 し まし た 。 雑<br />

然 としていますが、 明 るい 感 じの 町 です。 道 路 の 主 役 は 馬 車<br />

です。くすんだミントグリーンや 黄 色 の 家 々の 窓 から、 物 珍<br />

しそうに 私 たちを 見 ています。 何 とかパウマレスの 最 後 の 戦<br />

いを 記 念 する 行 列 に 参 加 することができました。リーダーの<br />

ズンビの 下 、キロンボの 入 植 者 は 抵 抗 しましたが、1694 年<br />

の 最 終 攻 撃 で、この 共 同 体 は 破 壊 されました。 毎 年 、 生 き 残<br />

りの 子 孫 がここに 集 まり、 闘 った 人 々の 栄 誉 を 称 えていま<br />

す。 彼 ら は 、セ ー ハ・ダ・バ ヒーガ の 4 キ ロ メートル の 山 道 を<br />

ゆっくり 登 っていきます。 途 中 数 か 所 のポイントで 止 まって<br />

は、ダンスをし、 酒 を 飲 み、 詩 やスピーチを 披 露 し、もちろん<br />

カポエイラの 演 技 もします。お 祭 りでありながら、 厳 かな 雰<br />

囲 気 もあります。 私 たちは 夜 を 徹 して 歩 きました。 全 員 が 白<br />

装 束 なので、 漆 黒 の 空 を 背 景 に 幽 霊 のように 見 えます。 闇<br />

が 私 たちの 結 束 を 強 めているように 思 えました。<br />

明 け 方 に 頂 上 のメモリアルキロンボに 到 着 しました。 当 時<br />

の 状 況 を 今 に 伝 える 一 種 の 博 物 館 です。 感 動 的 です が、 厳<br />

しい 現 実 を 突 きつけられる 感 じがします。しばらくの 間 座 っ<br />

てさまざまなことを 考 えました。 頭 が 銅 色 のハチドリ、ポル<br />

トガル 語 でベイジャフロール、つまり 花 にキスする 鳥 が 私 に<br />

夜 を 徹 して 白 装 束 で 歩 く 私 たち<br />

は、 漆 黒 の 空 を 背 にした 幽 霊 のよ<br />

うだった<br />

馬 力 ( 上 )ウニアン・ドス・パルマレスの 生 活 のペースに 合 わせるXE。( 一 番 上 ) 歴 史 あるメモリアルキロ<br />

ンボでカポエイラの 伝 統 を 今 に 伝 える<br />

よって 自 信 を 持 ち、 自 分 の 場 所 を 見 つけることができまし<br />

た。 彼 女 の 話 を 聞 いて 私 は 胸 が 熱 くなりました。 最 近 彼 女<br />

は、 平 等 の 実 現 、 女 性 への 暴 力 と 闘 うための 心 の 支 えとし<br />

て、カポ エイラを 教 えています。<br />

次 の 朝 サルヴァドールを 去 る 頃 は、 交 通 量 は 大 幅 に 減 っ<br />

ていました。さらに 時 をさかのぼって、ウニアン・ドス・パウ<br />

マレスに 向 か います。ここはアメリカ 大 陸 最 大 の 奴 隷 の 共 同<br />

体 として 知 られていました。かの 有 名 なキロンボ・ドス・パウ<br />

マレスです。キロンボは 逃 亡 した 奴 隷 の 共 同 体 で、ここには<br />

約 30,000 人 が 住 んでいました。ここでカポエイラの 起 源 に<br />

迫 れることを 願 っています。<br />

停 止 信 号 になると、 露 天 商 が 押 し 寄 せフロントガラスのク<br />

リーニングや、ジャックフルーツのスナックを 勧 めてきます。<br />

無 数 のガソリンスタンドを 通 り 過 ぎ、 警 察 の 検 問 を 頻 繁 に<br />

受 けました。 間 もなくホドヴィア・エストラーダ・ド・ココとリ<br />

ーニャ・ヴェルデ、つまりココナッツハイウェイとグリーンラ<br />

インに 到 着 しました。BA-099という 味 気 ない 名 前 で 呼 ば<br />

れることのほうが 多 いですが。グリーンラインは 、 大 西 洋 岸<br />

の 森 林 、きらめく 白 い 砂 の 砂 丘 、ピンク 色 の 岩 が 織 りなす 複<br />

雑 な 地 層 を 通 り 抜 ける、ドラマチックなルートです。ロバと<br />

ナマケモノへの 注 意 を 促 す 道 路 標 識 がありました。でも 私<br />

にとっての 最 大 の 難 所 は、タールマック 舗 装 の 道 路 をカエ<br />

付 き 合 ってくれました。 仲 間 の 鳥 たちの 木 々からのさえずり<br />

を 除 けば、ここはとても 安 らかな 場 所 です。 奴 隷 として 働 か<br />

されたアフリカ 系 ブラジル 人 の 先 祖 の 想 像 を 絶 する 苦 難 だ<br />

けでなく、 途 方 もない 忍 耐 と 勇 気 を 記 念 する 場 所 です。<br />

奴 隷 の 所 有 者 は 家 族 や 部 族 を 分 断 し、 親 密 な 付 き 合 いを<br />

妨 げようとしたと 読 んだことがあります。さまざまな 場 所 か<br />

ら 連 れてこられた 人 々が 言 葉 なしで 意 思 疎 通 を 図 り、 団 結<br />

する 方 法 がカポエイラだったことは 容 易 に 想 像 がつきます。<br />

ここの 人 々は、 自 分 たちの 歴 史 を 感 じ、カポエイラを 先 祖 と<br />

の 絆 と 考 えています。カポエイラは 多 くの 人 にとっていまだ<br />

に 抵 抗 のシンボルであり、 社 会 の 不 平 等 に 対 するメッセー<br />

ジとなっています。<br />

かつて 違 法 とされた 芸 術 が、 現 在 は 若 者 の 更 生 に 大 きな<br />

役 割 を 果 たして い ることを 知 り、 社 会 との つ な がりが あ ると<br />

感 じました。カポエイラを 変 革 したい 人 、カポエイラでお 金<br />

を 儲 けたい 人 、カポエイラの 伝 統 を 守 りたい 人 、さまざまで<br />

す。しかし 、カポ エイラの 未 来 に つ いて 確 か なことが ひとつ<br />

だけあります。カポエイラは 進 化 し 続 けるということです。<br />

30 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 31


ダイニング<br />

酸 味 に<br />

夢 中<br />

人 気 上 昇 中 のキムチから、お 手 軽 なピクルスまで、 世 界 の 味 覚 の 最 新 トレ<br />

ンドは 酸 味 です。 多 彩 な 酸 味 を 解 説 してくれるのは、フードライターの<br />

マーク・ディア コノ。 彼 の 最 新 刊 は、その 名 もシンプルに Sour で す。<br />

スマックダック、チコリ、 根 用<br />

セ ロリ、ザ ク ロ の 実<br />

このレシピは4 月 末 の 初 夏 、 冬 の 足 跡 がまだ 残<br />

るころに 考 えたものです。 無 造 作 に 何 層 も 重 ね<br />

た サ ラダ を 作 ろうと 思 い まし た 。ダック の 甘 さ<br />

に、チコリと 根 用 パセリで 苦 味 のエッジを 効 か<br />

せて、シトラススマックスパイスとザクロの 実 の<br />

酸 味 を 二 重 に 加 えました。この 酸 味 を 重 ねるこ<br />

とで 、 複 雑 な 一 品 に なって い ます。<br />

ルバーブとラディッシュのサラダ<br />

とてもかわいいサラダです。このサラダはずっ<br />

と 頭 の 中 にあったもので、アイデアはほとんど<br />

完 成 していました。クローディア・ローデンのオ<br />

レンジを 使 ったレシピからヒントを 得 たのです<br />

が、 私 は 大 好 きなルバーブを 使 いたいと 考 えま<br />

した。ディル、ビネガー、ローズウォーターはとて<br />

も 重 要 です。フルーツの 甘 みと 新 鮮 なラディッシ<br />

ュが 絶 妙 にマッチします。 上 質 なビネガーは 良<br />

質 なワインと 同 じ 効 果 を 発 揮 します。<br />

32 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine / 33


ダイニング<br />

オ イスターミニョネット、4 つ の アレン ジ<br />

これは、まさに「 目 が 覚 める」 一 品 です。 酸 味 で 私 が 一 番 好 きなのは、 他 の 味 覚 にはないスリルです。<br />

私 はイギリス 沿 岸 部 のホイットスタブルに 長 年 住 んでいましたが、そこで 本 当 に 美 味 しいオイスターの<br />

味 を 覚 えました。とてもシンプルなレシピなので、パッションフルーツやライム 果 汁 のようなシャープな<br />

味 わ い が 少 し 欲 し い と 考 え ました 。 少 量 の エ シャロットで 落 ち 着 か せ て 、 塩 と 胡 椒 で まとめます。<br />

マルファッティ<br />

マルファッティは、ニョッキの 親 戚 のように 見 えますが、より 洗 練 された 食<br />

材 と 感 じています。ニョッキにはない 歯 ごたえがあります。セージ、バター、<br />

リコッタ。どれも 大 好 きな 食 材 です。セージバターにレモン 果 汁 を 入 れるこ<br />

とで、リコッタの 優 しい 酸 味 がさらに 軽 くなります。<br />

ホワイトガスパチョ<br />

懐 かしい 場 所 を 思 い 出 させてくれるスープ。アンダルシアに 行 ったことは<br />

ありません が 、 私 にとって の アホブランコのようなスープです。 一 瞬 、その 場<br />

所 にいるような 感 覚 になります。 食 材 の 組 み 合 わせは 独 特 です。ガーリック<br />

とアーモンドをふんだんに 入 れますが、ここではシェリービネガーが 女 王<br />

です。 材 料 だけを 見 ると、「 本 当 に 美 味 しいの?」と 思 うかもしれませんが、<br />

本 当 に 美 味 しくなるんです。<br />

34 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine / 35


ダイニング<br />

ドーサパ ン ケ ー キ とロ ーストカリフラ ワ ー 、ラ イタ を 使 い ま す。<br />

私 の 父 はいろいろ 組 み 合 わせるのが 好 きでした。スリランカ 時 代 に 覚 えたやり 方 ですね。このレシ<br />

ピには、さまざまなルーツ、 多 くの 文 化 が 結 集 しています。 愛 情 を 感 じるとともに、フレッシュで 夏 らし<br />

いフレーバーも 加 わっています。 酸 味 はレモンと 発 酵 バターによるものです。このパンケーキを 使 用<br />

し、すべての 材 料 を 混 ぜ 合 わせます。 次 の 日 まで 余 韻 が 残 る 素 晴 らしい 一 品 ですが、 味 わいはスト<br />

レートです。<br />

キムチ 韓 国 風 タコス<br />

キムチは 美 味 しくて 健 康 に 良 い 食 材 です。 文 化 も 反 映 した 素 晴 らしい 食<br />

材 です。キムチはどんな 料 理 にも 合 います。 私 は 調 味 料 として 使 用 し、 料<br />

理 に 愛 らしさを 加 えるのが 好 きです。このレシピでは、 西 海 岸 の「ジャンク<br />

フード」と 組 み 合 わ せ ましょう。 文 化 の 融 合 を 恐 れ ること は ありません 。 韓<br />

国 料 理 であり、カリフォルニア 料 理 でもあります。あらゆる 要 素 が 少 しずつ<br />

入 っています。<br />

コンブチャマヨネーズ<br />

自 分 だけのマヨネーズを 作 る 習 慣 ができると、 生 活 が 豊 かになります。お<br />

店 で 買 うものより、はるかに 美 味 しくなります。コンブチャを 作 っているとき<br />

に 、 街 か ら 離 れて い たり、 手 早 く 作 りた い とき は 、「 自 前 」で 作 れ れ ば 何 か<br />

と 便 利 でしょう。 一 番 美 味 しいマヨネーズになります。ノックアウトされるく<br />

らいの 美 味 しさです。<br />

36 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine / 37


ダイニング<br />

グーズベリーサルサ<br />

酸 っぱい 初 物 の 生 グーズベリーを 試 したいと 考<br />

えていました。ヒュー・フィアンリー=ホイッティン<br />

グストールのリバーコ テ ー ジ に い た とき に 、グー<br />

ズベリーサル サ をよく 作 って い ました が 、 数 年 か<br />

け てこ のレ シ ピを 考 案 しました 。 何 に で も 合 い<br />

ます。サバ、チーズ、ハムも 美 味 しいですが、アイ<br />

スクリームにかけても 絶 品 です。 鮮 やかな 色<br />

で、 元 気 が 出 て、どんな 料 理 にも 応 用 できます。<br />

ミントの 代 わりにコリアンダーでも 大 丈 夫 です。<br />

ラ ベ ー ジ を 除 くと 、さら に 鮮 や か に なりま す。 元<br />

気 の 源 の 一 皿 です。<br />

マルメロのピクルス<br />

1 年 の 終 わりには、 毎 年 大 量 のマルメロを 仕 入 れて、ウォッカに 入 れたり、 焼 いたりして 楽 しみます。あるとき、「ピクルスにすれ<br />

ば、もっと 美 味 しくなるかもしれない」と 思 いつきました。2、3 年 試 しましたが、いろいろ 入 れすぎてうまくいきませんでした。シ<br />

ンプルに 作 ってみたら、これが 正 解 だったんです。ハッカクで 温 かみを、 胡 椒 の 実 で 軽 いキックを 加 えて、クローブでクリスマス<br />

らしさをプラス。 完 全 な 秋 の 雰 囲 気 を 感 じられます。<br />

38 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 39


ダイニング<br />

JAGUAR F-TYPE<br />

誰 よりも 速 く、<br />

新 しい 世 界 へ。<br />

ロ ーストアプリコットとクレームフレッシュ、ザクロ 糖 蜜 、ウイキョウ<br />

クランブル<br />

私 が 自 慢 できる 数 少 ないうちの 一 つが、クランブルです。 新 鮮 なアプリコットが 手 に 入 ったときに、こ<br />

れに「ビネガーを 数 滴 入 れてみよう」と 試 してみたら、 劇 的 に 変 わりました。わずかな 酸 味 がすべての<br />

甘 味 を 引 き 出 し、 上 質 なアプリコットの 香 りを 引 き 出 したんです。カルダモン、アプリコット、ウイキョ<br />

ウ 、シ ョウ ガ 、ロ ーズ マリー 。そ れ ぞ れ の 味 わ い が あり、 美 しくまとまりま す。<br />

40 / Jaguar Magazine<br />

マーク・ディアコノは、カメラマン、 栽 培 家<br />

であり、7 冊 の 書 籍 で 受 賞 歴 のある 作 家<br />

で も ありま す。イン グランド・デ ボ ン 州 の オ<br />

ッターファ ー ム に 住 み 、あ まり 見 な い 食 材<br />

や 忘 れられた 食 材 の 栽 培 を 支 援 してい<br />

ます。<br />

2.0リッター 直 列 4 気 筒 エンジン、 最 高 出 力 300 馬 力 。 軽 量 で<br />

強 靭 な アルミニウムボディから、レーシングカーを 彷 彿 とさせる<br />

アクティブエキゾーストノートが 轟 く。 走 りのために 美 しく 研 ぎ 澄 ました<br />

フォルムと、 息 をのむ 圧 倒 的 なパフォーマンスを 誇 るF-TYPE。<br />

スポーツカーのニューノーマルへようこそ。<br />

jaguar.com<br />

詳 しくは、ジャガー 正 規 ディーラーにお 問 い 合 わせください。


信 じる 道 を 行 く<br />

どんな 旅 にも 回 り 道 は 大 切<br />

ソフィー・デ・オリベ イラ・バラータ<br />

義 肢 にも 美 しさを 追 求 したい。オルタナティブリム( 義 肢 )プロジェクト<br />

の 創 立 者 兼 アーティストが 語 ります。<br />

ストーリー ティム・ハ ルス<br />

ポールダンスのワールドチャンピオンが<br />

義 足 を 利 用 していると 聞 いて 驚 く 人 は 多<br />

いでしょう。しかし、 独 創 的 な 人 工 装 具 デ<br />

ザ イナ ー 、ソフィー・デ・オリベ イラ・バ ラ ー タ<br />

にとっては、 義 肢 はアートの 新 たな 可 能<br />

性 のひとつです。「この 義 足 は 砂 時 計 の 形<br />

に 作 りました。 中 央 がくびれています。そ<br />

こからひづめが 思 い 浮 かび、ポールダン<br />

スに 適 した 構 造 を 考 案 できました。 後 ろ<br />

にあるのは 交 換 可 能 なクローム 製 の 彫<br />

刻 です。これは 人 の 動 きに 合 わせて 回 転<br />

します 」。 彼 女 は ア ンドル ー・グレ ゴリー の<br />

ために 製 作 中 の 義 足 についてこのように<br />

説 明 してくれました。 彼 はバイクの 事 故 で<br />

脚 を 切 断 した 後 、ポールダンサーとして 輝<br />

か し い 成 功 を 収 めました 。<br />

デ・オリベ イラ・バラータの 最 近 のプロジ<br />

ェクトには、ダーリントン 鉄 道 博 物 館 の 展<br />

示 用 に 依 頼 された 列 車 乗 降 用 の 義 足 、キ<br />

ャンドゥコダンスカンパニーのパフォーマ<br />

ーのために 作 成 した 鳩 時 計 付 きの 木 彫<br />

の 義 足 などがあります。「 小 さな 鳥 が 飛 び<br />

出 す 仕 掛 けになっています」と 彼 女 は 言<br />

います。「 軸 に 取 り 付 けた 振 り 子 によって、<br />

どの 方 向 にも 脚 を 動 かすことができます。<br />

振 り 子 は 止 まることなく 動 き 続 けます」。<br />

彼 女 の 人 工 装 具 に 対 する 関 心 は、アー<br />

トファウンデーションの 講 習 の 一 環 で 病<br />

院 で 働 いた 経 験 から 生 まれました。 彼 女<br />

は 英 国 トップクラスの 人 工 装 具 メーカー<br />

で 働 くようになり、 本 物 の 義 肢 を 作 りまし<br />

た 。そ こ で 、こ れ ま で に な い 義 肢 を 作 りた<br />

い と 考 え る ように なりまし た 。き っ か け は 、<br />

新 しい 義 足 を 作 るために 毎 年 やってくる<br />

少 女 との 出 会 いでした。「 彼 女 は 毎 回 ち<br />

ょっと 違 ったものを 希 望 しました。 義 足 の<br />

一 番 上 に 漫 画 のキャラクターを 入 れると<br />

か 」。<br />

その 後 アレキサンダー・マックイーンの<br />

ファッションショーで、 両 脚 が 義 足 のアス<br />

リート、エミー・マランスが 装 着 していた 美<br />

しい 木 製 の 義 足 を 見 て、 彼 女 のキャリア<br />

は 決 まりました。 数 年 後 オルタナティブリ<br />

ムプロジェクトを 立 ち 上 げ、 先 鋭 的 な 新 し<br />

い 人 工 装 具 を 作 り 続 けています。 身 体 が<br />

不 自 由 な 人 への 固 定 観 念 を 破 り、 身 体 改<br />

造 の 限 界 に 挑 戦 するためです。<br />

「 義 肢 作 りを 楽 しんでいます。 人 間 の<br />

肉 体 への 固 定 観 念 を 覆 したいと 考 えてい<br />

ます」と 彼 女 は 言 います。「 想 像 力 を 解 き<br />

放 ち 、 可 能 性 を 広 げ て い きた い で す 」。<br />

アート を 生 む 手 、ア ート に よる 手 :イングランド 南 部 の 工 房 で 作 業 中 のソフィー・デ・オリベイラ・バラータ( 上 )。 彼 女 の 個 性 的 なオーダー<br />

メイドの 一 部 を 紹 介 します。ミュージシャンのビクトリア・モデスタが 使 用 したスパイクレッグ( 左 )、モデルのケリー・ノックスのための「 植<br />

物 の 触 手 」であるヴァイン(つる)( 左 下 )、 鉄 人 ジェームズ・ヤングのための 超 人 的 能 力 を 持 つ 腕 、ファントムリム( 右 端 )。<br />

画 像 :PORTRAIT BY OPHELIA WYNNE; PROJECTS BY OMKAAR KOTEDIA & LUKASZ SUCHORAB<br />

42 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 43


アート<br />

新 しい 視 点<br />

永 遠 の 美 を、 永 遠 に 楽 しむ。 新 型 Jaguar F-TYPEとデザインクラシックとの 出 会 い。<br />

美 の 殿 堂 入 りした 作 品 たちが、 新 しい 解 釈 で 生 まれ 変 わりました。<br />

写 真 :ジェームズ・デイ<br />

生 まれ 変 わった 逸 品 たち: F-TYPEは、ジャガーのDNAをそのままに、 最 先 端 の 性 能 とルックスを 追 求 した、 究 極 のジャガースポーツカーです。このページに<br />

掲 載 のアイテム: Gibson Les Paul Modernギ ター( フェ ード ペ ラムブ ル ー ):gibson.com、Globe Trotter St Moritz 20"キャリーオンスーツケース:<br />

globe-trotter.com、William & Sonスネ ーク・ラダーボ ード、Gerrit Thomas Rietveld for Cassina Limited Edition 635チ ェア( ブラック、グリー ン 、<br />

ホ ワイト ):conranshop.com、Jules Pansu Picasso「Seated Woman in a Blue Dress」クッ シ ョン : conranshop.com、Volta Le Grand Etourdi<br />

モビール: conranshop.com、Poul Henningsen for Louis Poulsen PH 5ミニペンダントライト: conranshop.com、Burberry Kensington<br />

Heritage Trench Coat: uk.burberry.com、Launer London Traviataマルチカラーハンドバッグ: launer.com、Nike Air Max 270 Reactトレーナー:<br />

nike.com、Levi’s 501 Original Fitジーンズ: levi.com、Polaroid OneStep 2: polaroid.com、Anglepoise Original 1227ジャイアントフロア<br />

ランプ: anglepoise.com、Ligne Roset Togoソファ( ゴ ヤレ ッド ア ル カ ン タ ー ラ ): ligne-roset.com、Christian Louboutin Clare 80パンプス:<br />

eu.christianlouboutin.com<br />

44 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 45


アート<br />

未 来 指 向 への 回 帰 : ホイールアーチまで 回 り 込 ん<br />

だ 新 しいLEDテールライト。F-TYPEの 力 強 いスタ<br />

ンスをさらに 際 立 たせます。Poul Henningsen<br />

for Louis Poulsen PH 5ミニペンダントライト:<br />

conranshop.com、Launer London Traviata<br />

マルチカラーハンドバッグ: launer.com、Leica<br />

TL2: leicastore-uk.co.uk、Paul Smith for<br />

Anglepoise Type 75: conranshop.co.uk<br />

インテリアのライン: 贅 沢 な 素 材 、こだわりのクラフトマンシップ、 美 しい<br />

ディテール - F-TYPEは、インテリアも 心 躍 る 空 間 です。<br />

Gibson Les Paul Modern(フェードペラムブル ー ):gibson.com、<br />

Paul Smith for Anglepoise Type 75: conranshop.co.uk、<br />

Volta L’Eruditモビール: conranshop.co.uk<br />

46/ Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 47


アート<br />

バッグスタイル: 大 容 量 のトランクルームに<br />

荷 物 を 収 納 。 週 末 が 待 ち 遠 しくなります。<br />

Bao Bao Issey Miyake LucentマットPVC<br />

トートバッグ、Trackロゴプリント PVCトート<br />

バッグ、Geometricマークアップバッグ:<br />

isseymiyake.com<br />

視 線 を 奪 うデザインたち: 細 く 後 方 に 伸 びる 新 型 ヘッ<br />

ドライト。F-TYPEのエアロダイナミックな<br />

ボディラインと 調 和 します。<br />

Gibson Les Paul Modern(フェードペラム<br />

ブル ー ):gibson.com、Charles and Ray Eames<br />

for Vitra DAXプ ラスチック ア ー ムチ ェア( ダー ク<br />

ベース、Hopsakシート 素 材 ): conranshop.<br />

co.uk、Comme des Garçons x Converse<br />

トレーナー: converse.com、Mulberry<br />

Heritage Bayswater( ポ ー セリンブル ー、 大 判<br />

ター タン チェック ):mulberry.com、Polaroid<br />

OneStep 2: polaroid.com、Christian<br />

Louboutin Clare 80パンプス:<br />

eu.christianlouboutin.com、Anglepoise<br />

Original 1227ジャイアントフロアランプ:<br />

anglepoise.com、Ligne Roset Togoソファ<br />

(ゴヤレッドアルカンターラ): ligne-roset.com<br />

大 胆 なライン: 彫 刻 のようなボディが、 最 新 の<br />

シャシーを 包 み 込 みます。<br />

Christian Louboutin Clare 80パンプス:<br />

eu.christianlouboutin.com<br />

48 / Jaguar Magazine


アート<br />

パンツのお 尻 の 部 分 : 新 しいフロントバ<br />

ンパーと 少 し 広 くなったグリルの 下 には、<br />

オプションの575PSスーパーチャージド<br />

V8エンジンが 搭 載 されています。<br />

Ligne Roset Togoソファ( ゴ ヤレ ッド<br />

アルカンターラ): ligne-roset.com<br />

随 所 に 光 る 熟 練 の 技 : ドライバー 視 点 で 設 計 さ<br />

れたインテリアには、12ウェイアジャスタブルパ<br />

フォーマンスシート、12.3インチHD TFTインス<br />

トルメントクラスター、Meridianサウンドシステ<br />

ムを 装 備 しています。<br />

Mulberry Heritage Bayswater(ポーセリン<br />

ブル ー、 大 判 ター タン チェック ):mulberry.<br />

com、Jaeger LeCoultre Polaris Date<br />

ウォッチ: jaeger-lecoultre.com<br />

50 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 51


アート<br />

クリエイティビティ<br />

コネクション<br />

ビクトリア 調 の 壁 紙 はiPhoneにどんな 影 響 をもたらしたのか?<br />

そして、モネはトレーシー・エミンの 作 品 である 散 乱 したベッドルームとどんな 関 連 性 があるのか?<br />

BBCアートエディターのウィル・ゴンペ ルツ がお 届 けします<br />

MARCEL DUCHAMP, FOUNTAIN (1917), GALLERY SCHWARZ EDITION, 1964 © ASSOCIATION MARCEL DUCHAMP / ADAGP, PARIS AND DACS, LONDON 2020<br />

パンクアート<br />

1917 年 に 物 議 をかもしたデュシャンの 泉<br />

は、とてもパワフルな 作 品 です<br />

歳 を 重 ねると、 歴 史 とは 当 てにならない 証 人 であるこ<br />

とが 次 第 にわかってきます。たとえば、 私 の 妻 は、1993<br />

年 の 結 婚 式 で 私 のスピーチがつまらなかったことをは<br />

っきり 覚 えていると 言 います。 一 方 、 私 は、 笑 い 話 を 次<br />

から 次 へと 話 して 爆 笑 の 渦 を 巻 き 起 こしていたことし<br />

か 覚 えていません。ぜんぜん 違 う、と 妻 は 反 論 します。そ<br />

れは 花 婿 の 介 添 人 のスピーチよ。<br />

... 過 去 をさかのぼっていくほど、「 事 実 」は 混 迷 してい<br />

くようです。たとえば、モダニズムとその 従 兄 弟 であるモ<br />

ダンアートの 歴 史 は、1917 年 のニューヨークで、 哲 学 的<br />

なフランス 人 芸 術 家 のマルセル・デュシャンが、 男 性 用<br />

小 便 器 をコンテンポラリーアート 展 覧 会 に 持 ち 込 んだ<br />

ことから 始 まったと 言 えるかもしれません。この 出 来 事<br />

が、ダダイズム、シュールレアリズム、 抽 象 表 現 主 義 、パ<br />

ンク、サミュエル・ベケットやオルタナティブコメディに 直<br />

接 影 響 を 与 えたのでしょうか?<br />

デュシャンは 概 念 論 の 父 であり、 何 でも 芸 術 になりう<br />

るという 思 想 を 生 み 出 しましたが、その 思 想 があるから<br />

こ そ 、トレ ー シ ー・エ ミ ン の「 Unmade Bed( 整 えられてい<br />

ないベッド)」に200 万 ポンドの 値 が 付 き、 他 のベッドに<br />

は そん な 価 値 が な い の か も し れ ま せ ん 。し か し 、モ ダ ン<br />

ムーブメントの 号 砲 を 鳴 らしたのは 本 当 に 彼 だったの<br />

でしょうか?あるいは、その2 年 前 の1915 年 、ロ シ ア 人<br />

芸 術 家 のカジミール・マレーヴィチが 白 いキャンバスに<br />

黒 い 正 方 形 を 描 き、 芸 術 は「ゼロ」に 回 帰 して 極 めて 抽<br />

象 的 な 表 現 に 収 束 すると 宣 言 したときが 発 端 なのでし<br />

ょうか?<br />

それとも、1874 年 、ク ロ ード・モ ネ 、ポ ー ル・セ ザ ンヌ 、<br />

ベルト・モリゾなどがフランスの 芸 術 協 会 に 反 旗 をひる<br />

がえし、 毎 年 開 催 されるパリサロンの 大 展 覧 会 と 直 接<br />

競 合 する、 急 進 的 な 新 進 作 品 の 展 覧 会 を 開 催 したとき<br />

が 始 まりなのでしょうか? 美 術 批 評 家 のルイス・レロイ<br />

は、 彼 らをレオナルド・ダ・ビンチのように 描 けなかった<br />

単 なる「 印 象 派 」と 片 付 けています。これは 成 り 上 がり<br />

の 新 人 をこき 下 ろす 批 評 でしたが、 結 果 的 に 彼 らは 世<br />

界 で 最 も 有 名 な 近 代 芸 術 の 旗 手 になりました。<br />

また、 詩 人 で 批 評 家 のシャルル・ボードレールが 有 名<br />

な エッ セ イ「 現 代 生 活 の 画 家 」を 記 した1863 年 が 起 点<br />

なのかもしれません。この 本 で、 彼 はパリの 草 分 け 的 な<br />

芸 術 家 に 対 して、 古 代 神 話 や 聖 人 を 題 材 として 選 ぶの<br />

を 止 め、 国 際 都 市 の 都 会 生 活 におけるリアルでエキサ<br />

イティングな 現 実 を 描 くことを 提 唱 しています。<br />

彼 のエッセイのインクがまだ 乾 ききらないころ、エドゥ<br />

ア ー ル・マ ネ は 、 寝 そ べ る 裸 婦 を 描 い た「 オランピア」で<br />

物 議 をかもしました。ギリシャ 神 話 の 女 神 ではなくパリ<br />

の 娼 婦 が 主 題 だったため、アカデミーの 重 鎮 たちから<br />

批 判 を 浴 びましたが、スケッチのような 大 胆 さと 平 面 的<br />

なカラーブロックが 前 衛 的 な 芸 術 家 集 団 を 鼓 舞 するこ<br />

とになりました。 優 れた 作 品 ですが、モダニズムの 到 来<br />

を 告 げる 作 品 とは 言 えないでしょう。さらに2 年 さかの<br />

ぼり、 運 河 を 渡 りましょう。<br />

ロンドンのウェストエンドとシティの 間 の 中 間 地 帯 に<br />

あるホルボーンのひっそりとしたレッドライオン 広 場<br />

で、1861 年 4 月 、モリス・マーシャル・フォークナー 商 会 が<br />

設 立 されました。ここでクリエイティブな 才 能 を 発 揮 し<br />

たのが、 顎 ひげを 生 やした 中 世 美 術 家 のウィリアム・モ<br />

リスでした(モーリス・モータースのウィリアム・モーリスと<br />

は 別 人 です)。<br />

彼 は 産 業 化 の 時 代 を 生 涯 毛 嫌 いし、 美 術 批 評 家 の<br />

ジョン・ラスキンを 崇 拝 していました。ラスキンは 著 書<br />

「ヴェネツィアの 石 」で、 機 械 による 大 量 生 産 が「 職 人 の<br />

地 位 の 低 下 」を 招 き、 職 人 が 機 械 の 歯 車 に 成 り 下 がっ<br />

ていると 主 張 しました。モリスはこの 考 えに 賛 同 しまし<br />

た。 彼 は、 労 働 は 高 尚 な 活 動 であるべきだと 考 えて、<br />

52 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine /


アート<br />

テキスタイルデザイン/モリス/1862 年<br />

オランピア/マネ/1863 年<br />

理 想 主 義 的 な 視 点 でアーサー 王 の 伝 説 や 中 世 のギル<br />

ドを 振 り 返 りました。そこでは 見 習 いから 職 人 そして 大<br />

御 所 にまでなれる 進 歩 的 な 職 場 教 育 システムを 備 えて<br />

い た の で す。<br />

伝 統 的 な 職 人 技 術 と 自 然 回 帰 という 美 学 がモリス・<br />

マーシャル・フォークナー 商 会 の 気 質 であり、モリスはス<br />

テンドグラスの 窓 や 彫 刻 を 施 したオーク 家 具 のデザイ<br />

ンに 精 力 的 に 取 り 組 みました。モリスは、 装 飾 的 な 壁 紙<br />

のパターン 作 成 から、 精 巧 なタペストリー 織 りの 作 業 ま<br />

で、 芸 術 とハンドクラフトを 融 合 することに 専 念 しまし<br />

た。 彼 は 一 般 大 衆 も 購 入 できる 製 品 を 作 ることを 望 ん<br />

でいましたが、それは 現 実 的 にかなわず、 結 局 、 富 裕 層<br />

が 顧 客 の 中 心 となりました。 彼 らは 初 期 の 社 会 主 義 者<br />

であり、 不 本 意 な 顧 客 でした。しかし、 彼 は 取 りつかれ<br />

バウハウス 運 動 /グロピウス/1919 年<br />

たように 作 業 に 打 ち 込 みました。<br />

モリスの 死 から 数 か 月 後 の1896 年 、ドイツの 外 交 官<br />

ヘルマン・ムテジウスは、 穏 当 なスパイ 活 動 のためにロ<br />

ンドンに 赴 任 しました。 彼 の 公 式 な 役 職 は「 文 化 的 アタ<br />

ッシェ( 大 使 館 員 )」でしたが、 真 の 目 的 はイギリスの 商<br />

業 的 成 功 や 生 産 性 向 上 の 秘 密 を 探 ることでした。ムテ<br />

ジウスにとって、イギリスはおもしろい 国 だと 映 ったよう<br />

です。 厳 格 な 階 級 制 度 や、 紅 茶 を 入 れる 前 にミルクをカ<br />

ップに 入 れておく( 熱 湯 で 陶 器 が 割 れるのを 防 ぐため)<br />

黒 の 正 方 形 /マレーヴィチ/1915 年<br />

WILLIAM MORRIS, DESIGN FOR TRELLIS WALLPAPER, 1862/ÉDOUARD MANET, OLYMPIA, 1863, MUSÉE D’ORSAY, PARIS/KAZIMIR MALEVICH, BLACK SQUARE, 1915, TRETYAKOV<br />

GALLERY, MOSCOW/JOHN AINSWORTH, WALTER GROPIUS’ OFFICE, 2018, HERITAGE IMAGES/TRACEY EMIN, MY BED, 1998 © TRACEY EMIN.<br />

ALL RIGHTS RESERVED, DACS /ARTIMAGE 2020. IMAGE COURTESY SAATCHI GALLERY, LONDON. PHOTO: PRUDENCE CUMING ASSOCIATES LTD<br />

マイベッド/エミン/1998 年<br />

iPhone/Apple/2007 年<br />

といった 風 変 わりな 習 慣 も 含 めて。まもなく、ウィリアム・<br />

モリスの 作 品 を 目 にした 彼 は、その 作 品 に 心 を 奪 われ<br />

ました 。<br />

1904 年 に 帰 国 す ると 、 彼 は「 イギリスの 住 宅 」と い う<br />

三 巻 組 の 本 を 執 筆 し、アーツアンドクラフツ 運 動 につい<br />

て 熱 く 語 りました。 彼 は 部 局 の 上 司 に 対 して、イギリス<br />

は 商 業 的 に 素 晴 らしい 発 見 をしたが、その 価 値 に 気 づ<br />

いていないと 報 告 し、コスト 効 果 に 優 れた 大 量 生 産 と<br />

モリスを 始 めとする 芸 術 家 による 繊 細 なデザインを 融<br />

合 させるべきだと 指 摘 しました。そうすることで、 工 業 製<br />

品 に 思 いや 魂 が 宿 り、 消 費 者 にとって 大 いに 歓 迎 すべ<br />

き 製 品 になると 訴 えたのです。<br />

数 か 月 以 内 に、ドイツ 政 府 は 国 内 全 土 での 工 業 デザ<br />

インの 教 育 を 認 可 しました。1907 年 、ムテ ジ ウス はドイ<br />

ツ 工 作 連 盟 を 設 立 し、 建 築 家 、 芸 術 家 、 職 人 たちがドイ<br />

ツ 産 業 界 と 連 携 して 魅 力 的 な 製 品 を 生 み 出 せるように<br />

支 援 しました。ペーター・ベーレンスもその1 人 です。 自 由<br />

クリエイティブな 精 神 は、<br />

工 業 製 品 に 思 いや 魂 を<br />

与 える<br />

奔 放 な 画 家 として 活 躍 した 後 、 電 気 メーカーのAEGの<br />

クリエイティブディレクターに 就 任 し、インダストリアルデ<br />

ザインの 先 駆 けとして 名 作 を 残 しました。 彼 の 後 進 に<br />

は、のちに20 世 紀 の 巨 匠 となるルートヴィヒ・ミース・フ<br />

ァン・デル・ローエ 、ル・コルビュジエ 、ヴァルター・グロピ<br />

ウスが 名 を 連 ねています。グロピウスは1919 年 に 伝 説<br />

的 なバウハウスの 創 立 者 の1 人 になり、モリスが 記 した<br />

クリエイティブ 宣 言 を 実 践 することになりました。<br />

つまり、モダニズム 史 の 序 章 を 執 筆 したのは、 顎 ひげ<br />

姿 の 巨 漢 のイギリス 人 であり、アールデコやアールヌー<br />

ボーを 経 て、 彼 が 主 導 したアーツアンドクラフツ 運 動 が<br />

刺 激 を 与 えたと 言 えるでしょう。モリスの 精 神 は、<br />

Jaguar E-typeからApple iPhoneま で 、あ ら ゆ<br />

るデザインに 息 づいています。その 精 神 は 今 なお 多 く<br />

の 場 面 でモダニストの 美 学 を 放 ち、その 勢 いが 衰 える<br />

気 配 は 微 塵 もありません。<br />

54 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 55


マネー<br />

エシカルファンド<br />

見 た 目 も 美 しく、 地 球 に 害 をもたらさず、スプレッドシートで 数 字 を<br />

比 較 するよりほんの 少 しエキサイティングな 投 資 対 象 とは?<br />

文 : ビル・ダン<br />

56 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 57


マネー<br />

ほとんどの 人 は、 人 や 環 境 に 役 立 つもの、あるいは 少 なくと<br />

も 地 球 に 害 を 及 ぼさないものに 投 資 することを 望 みます。フィ<br />

ナ ン シャル アドバ イザ ーと 話 すと 、そうし た エ シ カ ル な 投 資 の た<br />

めのファンドが 数 多 くあることに 気 付 きます。さらにうれしいこ<br />

とに、 多 くの 場 合 、こうしたファンドは 成 果 を 上 げています。<br />

Interactive Investorサイトが6つのエシカルファンドと 通 常 の<br />

ファンドを 分 析 したところ、5つのケースでエシカルファンドが<br />

首 位 という 結 果 が 出 ています。Interactive Investorのパーソナル<br />

ファイナンス 責 任 者 、モイラ・オニール 氏 は 語 ります。「 多 くのケ<br />

ースで、エシカルファンドは 同 じ 投 資 会 社 が 運 営 する 同 様 のフ<br />

ァンドより 高 い 成 果 を 上 げています。<br />

しかし、エシカルな 投 資 が 退 屈 だと 感 じているのはあなた<br />

一 人 ではありません。 将 来 の 備 えがきちんとあって、 自 分 の 楽<br />

しみのためにわずかばかりの 現 金 を 投 資 する 場 合 、エシカル<br />

に 投 資 しながら 所 有 する 楽 しみも 得 られる 投 資 対 象 とは 何 で<br />

しょうか?<br />

ハイエンドなデザインの 世 界 は、スタート 地 点 としてふさわし<br />

いでしょう。それは、 素 材 の 原 産 地 や 持 続 可 能 な 製 品 を 気 に<br />

する 顧 客 たちの 間 で 急 速 に 浸 透 してきました。 未 来 への 投 資<br />

を 考 えている 方 は、 将 来 的 にクラシックとなるコレクターアイテ<br />

ムを 検 討 しましょう。<br />

ウェールズのアーティストであり 工 業 デザイナーのロス・ラブグ<br />

ローブ 氏 は、イタリアの 家 具 会 社 Natuzzi 社 と 提 携 し、 責 任 あ<br />

る 調 達 を 実 践 し 再 生 可 能 な 原 材 料 を 使 用 した、Ergoコレクシ<br />

ョンを 生 み 出 しました。ラブグローブ 氏 は 次 のように 語 っていま<br />

す。「 私 は 家 具 のデザインをすることはめったにありません。むし<br />

ろデザインの 意 識 そのものを 変 えたいと 思 っていました」Ergo<br />

は、FSC 認 証 の 植 林 地 で 伐 採 した 木 材 を 使 用 し、 部 材 は 金 属<br />

を 使 わず 互 いにはめ 込 んで 固 定 できるように 入 念 に 開 発 して<br />

います。 使 用 する 接 着 剤 は 水 性 で、ホルムアルデヒトを 含 んで<br />

いません。<br />

未 来 のクラシックとなるエシカルなデザインのもう1つの 例 と<br />

して、オーストラリアのデザイナー、ブロディ・ネイル 氏 のCapsule<br />

があります。これは 海 辺 のマイクロプラスチック・ペレットを 詰 め<br />

た 砂 時 計 です。 実 はこのマイクロプラスチック 粒 子 の 大 部 分 は、<br />

彼 の 生 まれ 故 郷 タスマニアの 多 くの 砂 浜 で 見 かけるものです。<br />

彼 はこの 事 実 を 伝 えるためにCapsuleを 制 作 し まし た 。ブ ロ ディ<br />

氏 は、NGOのグローバルネットワーク、 環 境 当 局 、さらに 漂 着<br />

物 を 拾 う 人 々の 協 力 を 得 ています。そのため、コレクターは<br />

Capsuleに 入 っているプラスチックがどこで 採 取 されたものか<br />

明 確 に 把 握 できます。パーソナライズされた 希 少 な 受 注 生 産 品<br />

「 未 来 に 対 する 投 資 であるのは<br />

もちろん、さらに 自 宅 を 美 しく<br />

彩 るオブジェにもなります」<br />

写 真 ( : 前 のページ)MIKE LAWRIE( こ の ペ ー ジ )デ ザ イン :<br />

CAPSULE OCEAN PLASTIC HOURGLASS、デ ザ イナ ー :BRODIE NEILL、<br />

写 真 : BRODIE NEILL STUDIO、GUY BELL<br />

ブ ロディ・ネ イル の 作 品 とデ ヴィッド・ギ<br />

ル モ ア の ギ ター は 、 地 球 に 害 をも た ら<br />

すことなく 銀 行 口 座 の 残 高 を 増 やすこ<br />

とができます<br />

として、 未 来 に 対 する 確 かな 投 資 であることはもちろん、さらに<br />

自 宅 を 美 しく 彩 るオブジェにもなります。<br />

ファッション 業 界 は、ファッショナブルに 遅 れて 持 続 可 能 な<br />

パーティに 到 着 しました。2019 年 には、ステラ・マッカートニー<br />

が#whomademyclothesというハッシュタグで 知 られる 国 連 の<br />

「ファッション 産 業 の 気 候 アクション 憲 章 」を 創 設 し、バーバリ<br />

ーは 持 続 可 能 なラグジュアリーパートナーのElvis & Kresseと<br />

提 携 し、 皮 革 の 廃 棄 物 を 新 たなアクセサリーとしてリサイクルし<br />

ています。ラグジュアリー 製 品 大 手 のLVMHはユネスコとの 契<br />

約 に 署 名 し、プラダは 世 界 最 大 の 共 同 金 融 機 関 であるクレデ<br />

ィ・アグリコル 銀 行 グループから4,290 万 ユーロの 融 資 を 取 り<br />

付 けました。このファッション 史 に 残 るプラダの 融 資 は、 製 品 と<br />

企 業 運 営 における 持 続 可 能 性 の 目 標 達 成 が 条 件 となってい<br />

ます。エシカル 投 資 家 であれば、プラダのバッグを 購 入 するの<br />

も1つの 方 法 です。バッグという 製 品 は、 服 のように 劣 化 したり<br />

破 れたりしないため、10 年 経 っても 価 値 が 目 減 りせず、むしろ<br />

値 が 上 がることもあります。こうしたプラダ 製 品 はますます 増 加<br />

して い ます。た とえ ば 、Re-Nylonバッグコレクション<br />

は、ECONYL®というプラスチック 廃 棄 物 を 再 生 した 無 限 にリ<br />

サイクル 可 能 な 糸 を 使 って 製 造 されています。<br />

エシカルな 意 識 を 持 つファッショニスタは、 投 資 額 の 増 加 に<br />

合 わせて、 賢 く 買 い 物 しなければなりません。 投 資 家 はイノベー<br />

ションと 初 物 に 投 資 するべきです。 時 間 とともに 価 値 が 上 がる<br />

可 能 性 が 高 いからです。クレージュは、 新 しい 藻 類 バイオマス<br />

ビニールを 採 用 し、プラスチック 使 用 量 が 従 来 の 素 材 の「10 分<br />

の1」になったことを 明 らかにしています。しかし、さらに 優 れた<br />

投 資 対 象 があります。ニューヨークのデザイナー、シャーロット・<br />

マ カ ー ディー 氏 は 、プ ラスチ ッ ク を まっ た く 使 用 して い ま せ ん 。 彼<br />

女 がデザインした 耐 水 性 のあるAfter Ancient Sunlightジャケッ<br />

トは、 炭 素 を 吸 着 する 藻 類 バイオマスプラスチック 素 材 で 作 ら<br />

れています。 防 水 ワックスについても、 従 来 品 は 石 油 由 来 (パラ<br />

フィンを 使 用 )や 蜜 ろう 由 来 (つまり、 非 ヴィーガン 製 品 )だった<br />

ため、 植 物 由 来 製 品 の 独 自 開 発 に 踏 み 切 っています。<br />

中 古 (ただし 未 使 用 )のスニーカーも 投 資 候 補 になります。<br />

Yeezyという 会 社 は、ラップ 界 の 大 御 所 カニエ・ウエストが<br />

設 立 しました。Yeezyのスニーカーは4 万 足 未 満 という 限 定 生<br />

産 だったため、 中 古 品 (ただし 未 使 用 )の 価 値 が 瞬 時 に 上 がり<br />

ました。Sole Collectorのブログでは、 多 くのYeezy 製 のスニー<br />

カーには 元 値 の5 倍 以 上 の 価 値 があると 評 価 しています。カニ<br />

エのNike Air Yeezy 2 Red Octoberシューズは、2014 年 に250<br />

ドルで 販 売 されましたが、 現 在 では5,000ドル 以 上 の 価 が 付<br />

い て い ま す。さら に 、2008 Nike Air Yeezy 1 Black Glow(サン<br />

58 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 59


マネー<br />

プル 制 作 品 )は、Rare Pair New Yorkにて25 万 ドルで 売 却 され<br />

て い ます。<br />

Yeezyは、 収 益 を 持 続 可 能 な 取 り 組 みに 投 じています。 本 社<br />

のあるワイオミング 州 コーディの4,000エーカーの 大 農 場 では、<br />

綿 の 水 耕 栽 培 の 実 験 を 行 っています。 水 耕 栽 培 が 実 現 すれ<br />

ば、 収 穫 までに 必 要 な 水 の 量 を 大 幅 に 削 減 できます。( 綿 は 環<br />

境 に 最 も 優 しくない 原 料 の1つです。 生 産 する 原 料 1キロあた<br />

り1 万 リットルの 水 を 必 要 とします)。<br />

快 楽 主 義 的 な 若 き 投 資 家 たちは、かつては 一 般 的 なワイン、<br />

腕 時 計 、ウィスキーが 投 資 対 象 でしたが、 今 ではエシカルな 選<br />

択 肢 として 中 古 品 に 積 極 的 に 投 資 しています。Classic Art<br />

GroupのChristie’s Auction Houseグローバルマネージングディ<br />

レクターのカール・ヘルマンス 氏 は 次 のように 考 察 しています。<br />

「ミレニアル 世 代 は 急 速 に 顧 客 の 中 心 層 になりつつあり、 彼<br />

らは 持 続 可 能 性 をより 意 識 的 に 捉 えています。 彼 らの 中 古 品<br />

に 対 する 関 心 の 高 さを 実 感 しています」<br />

ヘルマンス 氏 は、この 傾 向 はアンティーク 家 具 、 彫 刻 、 磁 器<br />

などの 装 飾 美 術 品 に 対 して 顕 著 だと 述 べています。「ここ 数 十<br />

年 、アンティーク 家 具 や 巨 匠 による 絵 画 作 品 は、 自 宅 を 彩 る 投<br />

資 対 象 としてファッショナブルとは 言 えませんでした。しかし 今<br />

「 私 たちは 第 2の 顧 客 革 命 の 瀬 戸 際 にいます」<br />

リチャード・カーティス<br />

Natuzzi Ergoシリーズはスタイリッシ<br />

ュで 快 適 なのはもちろん、 持 続 可 能 性<br />

にも 配 慮 しています<br />

では、クライアントはこうした 美 術 品 の 価 値 を 見 直 し、 現 代 的<br />

なアートやデザインと 比 較 して、より 高 い 投 資 的 価 値 を 見 い 出<br />

しています。こうしたオブジェには、 限 りある 地 球 の 資 源 をこれ<br />

以 上 浪 費 することなく 数 百 年 の 時 を 経 てきたというアドバンテ<br />

ー ジ が あります。さら に 、 数 世 紀 に わ た って 築 き 上 げら れ た 、 個<br />

性 とも 言 うべき 風 格 があります」<br />

チャップマン 兄 弟 やダミアン・ハーストなどのBrit School 出 身<br />

者 の 作 品 は、 魅 力 的 な 投 資 対 象 に 見 えますが、 市 場 がピーク<br />

のときに 購 入 してようとしています。さらに、 作 品 の 寿 命 も 忘 れ<br />

てはなりません。 油 絵 作 品 は 耐 久 性 に 優 れていますが、コンセ<br />

プト 作 品 、たとえばハーストの「 生 者 の 心 における 死 の 物 理 的<br />

不 可 能 性 」のタイガーシャークは、 時 の 洗 礼 (この 場 合 は 腐 食 )<br />

をすでに 受 けています。ヘルマンス 氏 が 簡 潔 にまとめています。<br />

「どれほどのコンテンポラリー 作 品 が 時 の 試 練 に 耐 えられる<br />

のでしょうか?」<br />

環 境 への 意 識 が 高 い 投 資 家 が、オークションで 中 古 作 品 を<br />

購 入 する 際 に 考 慮 すべきもう1つの 要 素 は、 投 資 した 資 金 が<br />

実 際 に 何 に 使 われるのかということです。2019 年 、Christie’s<br />

New Yorkは、オークション 史 上 最 大 で 最 も 多 岐 にわたるギ<br />

ターコレクション「デヴィッド・ギルモア ギターコレクション」の<br />

オークションを 開 催 しました。ピンク・フロイドのフロントマンが<br />

出 品 した126ロットの 落 札 金 額 は2150 万 ドルに 上 り、 収 益 金<br />

は 草 分 け 的 な 環 境 法 令 慈 善 団 体 のClientEarthに 全 額 寄 付 さ<br />

れました。<br />

約 400 万 ドルの 値 が 付 いた 伝 説 的 なBlack Stratocasterとい<br />

うギター(ピンク・フロイドのアルバム「The Dark Side of the Moon」<br />

で 使 用 )は 若 干 高 すぎると 感 じるかもしれませんが、 中 古 のギ<br />

ターがエシカルな 投 資 対 象 として 優 れていることは 明 らかで<br />

しょう。 結 局 のところ、こうしたエシカルな 投 資 は、 装 飾 美 術 に<br />

投 資 する 場 合 と 同 様 に、リソースを 食 いつぶす 生 産 プロセスを<br />

効 果 的 に 回 避 し、すでにある 美 しいものを 手 に 入 れることに<br />

他 ならないのです。MoneyUnder30.comの ルー・カルローゾ 氏<br />

は 次 のように 述 べています。「どんな 株 式 や 証 券 や 作 品 より<br />

も、Marshallのアンプにつないで11までレベルを 上 げられる<br />

も の に 投 資 した 方 が クー ル で しょう」<br />

しかし、ギター 投 資 を 検 討 する 際 は 注 意 が 必 要 です。 乱 高<br />

下 が 予 想 されるからです。たとえば、1956 年 製 のGibson Les<br />

Paul Gold Topの 当 時 の 価 格 は 約 400ドルでした。2002 年 に<br />

は、5,500ドルで 購 入 できました。そのわずか4 年 後 に<br />

は、80,000ドルまで 高 騰 しました。その 後 、 金 融 危 機 を 経<br />

て、Les Paulの 値 は30,000ドルまで 急 落 しました。 現 在 は、 良<br />

品 ならば 約 35,000ドルの 値 が 付 き、 今 なお 高 い 価 値 を 保 って<br />

いますが、 勇 敢 な 決 断 力 、 忍 耐 、さらに 乱 高 下 を 受 け 入 れる 度<br />

量 が 求 め ら れ ま す。カ ル ロ ーゾ 氏 は 次 の ように コ メントして い<br />

ます。「 最 悪 なシナリオは、 地 下 室 をクールなギターで 埋 め 尽 く<br />

すことです。 相 場 が10 年 前 のように 持 ち 直 せば、30%から<br />

300%の 利 益 は 取 り 戻 せます」<br />

とは 言 え、エシカルな 投 資 家 がまず 投 資 すべきものは、 将 来<br />

に 備 えた 最 も 重 要 な 投 資 の1つ、つまり 年 金 でしょう。 脚 本 家 ・<br />

映 画 監 督 のリチャード・カーティス 氏 は、『ノッティング・ヒル の 恋<br />

人 』や『 フォー・ウェディング』など 、ほ の ぼ の とし た ハ ートウォー<br />

ミングな 映 画 で 知 られています。しかし 近 年 は、 年 金 基 金 の 持<br />

続 可 能 性 に 疑 いを 投 げかけています。2020 年 には、「Make My<br />

Money Matter」というキャンペーンを 立 ち 上 げました。これは、 自<br />

己 資 金 の 投 資 先 について 疑 問 を 呈 し、 環 境 にプラスとなる 投<br />

資 を 選 択 できるように 働 きかける 取 り 組 みです。 彼 は 次 のよう<br />

に 述 べています。「 私 たちは 第 2の 顧 客 革 命 の 瀬 戸 際 にいま<br />

す。 一 般 市 民 は 自 分 の 資 金 がいかにパワフルなのか 気 付 いて<br />

います」 共 同 設 立 者 のジョー・コーレット 氏 も 次 のように 補 足 し<br />

ています。「 私 たちは、 生 態 系 を 破 壊 し、 社 会 を 分 裂 させ、 経 済<br />

的 に 持 続 性 のない 投 資 対 象 から、グローバルゴールと2015<br />

年 パリ 協 定 の 達 成 を 促 す 投 資 対 象 へと、 数 兆 ポンドの 投 資 資<br />

金 を 切 り 替 える 取 り 組 みを 支 援 しています」<br />

賢 く、そして 楽 しく 投 資 しましょう。<br />

60 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 61


旅 行<br />

海 沿 いの 長 い 景 勝 道 路 ワイルド・アトランティック・ウェイでク<br />

レ ア 州 に 入 り、 南 西 端 の ル ープ・ヘッド へ と 向 かうと 、 長 く 伸 び<br />

た 半 島 の 先 端 に 古 い 灯 台 があり、その 先 が 切 り 立 った 断 崖 に<br />

な って い ま す。こ こ は ケ ルト 神 話 で 、ディル ム ッドと グ ラ ー ニ アと<br />

いう 駆 け 落 ちした 男 女 が 追 手 から 逃 れるために 飛 び 降 りた 場<br />

所 としても 知 られています。 私 たちがこの 荒 涼 とした 人 気 のな<br />

いスリリングな 地 を 訪 れたのは、 肌 寒 い 朝 でした。 大 西 洋 の 荒<br />

れ 狂 う 波 が 断 崖 絶 壁 に 打 ち 付 けるたびに、 大 砲 のような 音 が<br />

轟 きわ たります。 海 か ら 高 くそび え た こ の 場 所 か ら 、 南 を 見 下 ろ<br />

すとシャノン 入 り 江 にバンドウイルカが 跳 ねる 姿 が 目 に 入 り、 北<br />

には 遠 くにブルースタック 山 脈 、 東 には 川 沿 いのリムリックの<br />

街 を 望 むことができます。そして 西 には、 大 海 原 がはるか 彼 方<br />

のニューヨークまで 続 いています。<br />

ループ・ヘッドは 不 思 議 な 横 縞 模 様 の 断 崖 と、 珍 しい 海 鳥 、<br />

荒 涼 とした 美 しさが 魅 力 を 放 つ 場 所 です。 私 たちはジャガーの<br />

究 極 のパフォーマンスSUV、F-PACE SVRを 走 らせてここまで<br />

来 ました。 馬 蹄 湾 に 面 した 町 、キルキーまでの 道 程 には、 岩 山<br />

を 背 景 に 原 野 や 湿 地 が 広 がっています。くすんだ 冬 景 色 の 中<br />

で、F-PACEが 青 い 宝 石 のように 際 立 ちます。<br />

海 に 近 づくにつれて、 大 地 に 明 るさが 感 じられるようになり<br />

ます。そして 海 はこの 地 の 音 楽 にも 強 い 影 響 を 与 えています。<br />

クレアは、 音 楽 の 国 とも 言 われるアイルランドでも 特 に 音 楽 が<br />

溢 れ て い る 場 所 で す。アイル ランド の フォー ク シ ン ガ ーソン グラ<br />

イター 、クリスティ・ム ー ア は『 リスドゥーンバーナ』と い う 曲 の 中<br />

で 次 のように 歌 っています。「あちこちから 聴 こえる フルートや<br />

フィドルの 音 色 音 楽 好 きなら クレアへおいでよ」フィドル 奏 者<br />

のマーティン・ヘイズは、クレアでは 東 西 で 音 楽 に 違 いがあり、<br />

森 林 と 霧 、なだらかな 緑 の 丘 陵 といった 要 素 が 東 部 の 音 楽 に<br />

優 しさを 添 え、 岩 の 多 い 地 形 が 西 部 の 音 楽 の 飾 り 気 のないス<br />

タイルを 生 み 出 していると 考 えています。<br />

私 たちはサーフスポットとしても 有 名 なスパニッシュ・ポイント<br />

を 通 り(あいにくこの 日 はひどい 強 風 でしたが)、ミルタウン・マ<br />

ルベイという 小 さな 町 を 訪 れ、「クレリーズ」というパブへと 足 を<br />

運 びました。 建 物 の 半 分 が 女 主 人 のラウンジになっているこの<br />

小 さなパブでは、 人 々がビール 片 手 に 世 間 話 に 興 じたり、ダン<br />

スを 踊 ったり、 詩 を 朗 読 したり、 冗 談 を 言 い 合 ったり、 泉 の 水 の<br />

ように 澄 ん だ 声 で『 ブライトブルーローズ 』を 歌 っ たりして い ま す。<br />

地 元 民 にとっては 日 常 の 光 景 であっても、 私 のような 旅 行 者<br />

アイルランドの<br />

パワー<br />

野 性 味 あふれるアイルランド 西 海 岸 に 位 置 するクリエイティブなエ<br />

ネルギーの 最 前 線 の 街 、ゴールウェイは、2020 年 の「 欧 州 文 化 首<br />

都 」に 選 ばれました。ティモシー・オグレディが 、ジャガ ー F-PACE<br />

SVRでこのカルチャーのホットスポットを 訪 れました<br />

写 真 : Rama Knight<br />

/ Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 63


旅 行<br />

独 特 の 景 観 : F-PACE SVRのスポーティな 室 内 は 見 晴 らしが 利 き、 景 色<br />

を 楽 しむにはもってこいの 場 所 となります。クレア 州 の 壮 大 な 自 然 が 私 た<br />

ちを 誘 います。<br />

には 特 別 な 場 所 を 偶 然 見 つけたような 感 動 があります。<br />

クレア 州 の 海 沿 いをさらに 北 上 すると、 景 色 はいっそう 別 世<br />

界 の 様 相 を 呈 してきます。 海 面 から 垂 直 にそびえ 立 つ、 高 さ200<br />

メートルの「モハーの 断 崖 」から 眺 めるアラン 諸 島 と 大 西 洋 はま<br />

さ に 圧 巻 で す。また 、 東 に 見 える バレン 高 原 は 、 渦 の ような 形 の<br />

断 崖 と、まばらな 森 林 地 帯 、 季 節 によって 現 れたり 消 えたりす<br />

る 湖 など、 大 自 然 が 作 り 出 した 不 思 議 な 景 観 の 宝 庫 です。 遠 く<br />

から 眺 めると、その 地 表 は 荒 れ 果 てた 月 面 のように 見 えます。<br />

けれども 近 くで 見 ると、 無 数 の 薄 い 灰 色 の 石 灰 岩 が 緻 密 に 並<br />

び、その 隙 間 から 可 愛 らしい 花 や 草 木 が 顔 を 覗 かせています。<br />

F-PACEに 乗 っていると、 目 線 が 少 し 高 くなり、 視 界 が 広 がり<br />

ます。 身 体 は シ ート にしっ かりとホ ー ルドされ 、 車 は 洗 練 され た<br />

ハンドリングで 田 舎 道 を 進 んでいきます。550PSのV8エンジ<br />

ンのおかげで、 私 たちは 空 気 のクッションに 乗 っているような<br />

滑 らかな 走 りで、トラクターや 自 転 車 、 牛 の 群 れを 悠 々と 追 い<br />

越 しながらゴールウェイに 到 着 しました。 私 は 数 十 年 も 昔 のこ<br />

の 街 を 知 って い ます。か つ て の ゴ ー ル ウェイは 半 ば 見 捨 て ら れ<br />

た 街 でありながらも 魅 惑 的 な 場 所 で、 人 々、 特 に 芸 術 を 志 す 人<br />

々を 流 砂 のように 引 き 込 むことから、「 大 志 の 墓 場 」と 呼 ばれて<br />

いました。 多 くの 若 者 がコンサーティーナ(アコーディオンの 一<br />

種 )や 絵 筆 、タイプライターを 抱 え、 目 を 輝 かせてこの 街 にやっ<br />

てきては、その 後 二 度 と 街 の 境 界 の 外 に 出 ることがなかった<br />

り、お 気 に 入 りのパブにさえ 顔 を 出 さなくなるのが 常 でした。<br />

けれども、アイルランド 全 体 の 経 済 が 発 展 し、 人 々が 豊 かにな<br />

り、 自 信 を 持 つようになって、ゴールウェイは 変 わりました。 現 在 、<br />

全 世 界 の 医 療 テクノロジー 企 業 のトップ10のうち9 社 がここに<br />

拠 点 を 構 えています。そして 住 民 の 約 4 分 の1がアイルランド 以<br />

外 で 生 まれた 人 で 占 められ、 学 校 では39ヵ 国 の 言 葉 が 話 され<br />

ています。かつての 芸 術 家 たちのように、 人 々がこの 街 にやって<br />

きて、ここに 留 まります。 苔 に 覆 われた 空 き 家 だらけだったエリ<br />

アが、 今 は 明 るい 色 に 塗 られた 建 物 が 並 ぶカルチェラタンにな<br />

って い ます。 以 前 こ の あ たりで は 、 外 食 のメニューと 言 え ばトー<br />

ストサンドウィッチと 焼 き 過 ぎのステーキくらいしかありませんで<br />

したが、 今 やあらゆる 種 類 のレストランが 店 を 構 え、そのうちの<br />

2 軒 はミシュランの 星 付 きという 変 貌 ぶりです。かつて 蒔 かれた<br />

芸 術 の 種 が 今 花 開 いています。ドルイド・シアター・カンパニー、<br />

劇 団 マクナスの 野 外 歴 史 劇 、Cúirt 国 際 文 学 祭 、ゴールウェイ<br />

国 際 芸 術 祭 、フラー 映 画 祭 など、 年 間 を 通 じてイベントが 目 白<br />

押 しで、ストリートとパブでは 昔 と 変 わらず 音 楽 が 奏 でられてい<br />

ます。さまざまなイベントのたびに 賑 わいに 溢 れるゴールウェイ<br />

『さまざまなイベントのたびに<br />

賑 わいに 溢 れるゴールウェイの<br />

街 が、これまで 以 上 に 活 気 づき<br />

つつあります』<br />

の 街 が、 今 これまで 以 上 に 活 気 づきつつあります。<br />

アイルランドに「 欧 州 文 化 首 都 」を 開 催 する 順 番 が 回 ってき<br />

た とき 、ゴ ー ル ウェイは「 Making Waves」というタイトルで 市 と 州<br />

を 挙 げて 招 致 に 乗 り 出 しました。このタイトルは 海 沿 いのロケ<br />

ーションと、 既 存 の 概 念 を 打 ち 破 り、 新 しい 才 能 を 生 み 出 す 突<br />

破 口 を 切 り 拓 くという 意 図 を 示 唆 しています。 人 々は 徹 底 的 か<br />

つオープンな 方 法 でこのコンセプトを 練 り 上 げ、コミュニティミ<br />

ーティングを80 回 以 上 も 開 き、テーマを「 言 語 、 景 観 、 移 民 」の<br />

3つに 絞 り 込 みました。<br />

「2016 年 に 欧 州 連 合 の 審 査 員 が 視 察 に 訪 れたときのこと<br />

です」。ゴールウェイ 市 議 会 の 事 務 総 長 、ブレンダン・マグラス<br />

が 誘 致 の 経 過 を 説 明 します。「1,500 人 ほどの 人 々が 自 発 的 に<br />

集 まって、 審 査 員 を 見 送 り、 拍 手 と 歌 で 謝 意 を 表 しました。ダブ<br />

リンで 開 催 地 が 発 表 されたときは、その 模 様 を 中 継 するパブリ<br />

ックビューイングがエア 広 場 で 開 かれ、4,000 人 の 観 衆 が 見<br />

守 りました。たくさんの 人 々がこのプログラムを 一 生 懸 命 支<br />

64 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 65


旅 行<br />

忘 れ 得 ぬ 年<br />

荘 厳 な 体 験 から 幻 想 的 な 光 景 まで、2020 年 、ゴールウェイではさまざまなプログラムが 開 催 されます<br />

が「 文 化 の 首 都 」として 選 定 されてい<br />

ます。これは 欧 州 連 合 が 実 施 する 文<br />

化 事 業 で、ヨーロッパの 特 定 の 地 域 を<br />

文 化 活 動 の 中 心 地 に 指 定 し、 芸 術 表<br />

現 とツーリズムを 通 じてその 注 目 度 を<br />

高 め、 地 域 の 開 発 を 促 進 する 狙 いが<br />

あります。 今 年 はゴールウェイが、クロ<br />

アチアのリエカとともに 選 ばれました。<br />

2020 年 2 月 から1 年 間 、 芸 術 と 文<br />

化 に 関 わるさまざまなイベントがクレ<br />

ア 州 全 域 とオンラインで 開 催 されま<br />

す。ケルト 人 が 使 用 していたケルト 暦<br />

の 季 節 に 従 って 開 催 される 数 百 にの<br />

ぼるイベントは、その 多 くが 無 料 です。<br />

新 型 コロナウイルス 感 染 症 の 世 界 的<br />

大 流 行 という 逆 境 の 中 で、この 街 のク<br />

リエイティブな 才 能 とスピリットを 世 界<br />

に 向 けて 発 信 し 続 けます。 数 多 くのイ<br />

ベントから、ここでは3つのみご 紹 介<br />

します。プログラム 全 体 の 詳 細 につい<br />

ては、galway2020.ieをご 覧 くださ<br />

い。<br />

アーティストの 街 : この 街 のクリエイティブなスピリットと 情 熱 を 象 徴 する 存 在 の 一 人 、 音 楽 家 のアンナ・マラーキー<br />

援 してくれています。」<br />

「ゴールウェイ2020」のプログラム 責 任 者 を 務 めるマリリン・<br />

ゴーハン・レダンは 次 のように 語 ります。「このプログラムはゴー<br />

ルウェイの 人 々の 願 いによって 始 まり、 彼 らによって 継 続 されて<br />

います。この 土 地 の 景 観 がギャラリーを 提 供 し、ストリートが 劇<br />

場 になります。 私 たちは 記 念 として 意 義 深 いアートプロジェクト<br />

を いくつ か 計 画 して い ます。 例 え ば「 City of Light, City of<br />

Sanctuary」は、ここで 生 まれた 人 たちと 移 民 の 人 たちの 思 い 出<br />

に まつ わ るランタン を 制 作 して 、 市 中 をパレ ードするも の で す。」<br />

「ゴールウェイ2020」が 何 を 表 現 し、 推 し 進 めたいと 願 って<br />

い る か 、そ の コ ン セプトを 象 徴 す る ような 存 在 が 、ア ン ナ・マ ラー<br />

キーです。 彼 女 は 若 く 才 能 のある 作 曲 家 兼 パフォーマーで、アイ<br />

ルランド 語 と 英 語 の 両 方 で 歌 い、 地 域 に 根 差 していると 同 時 に、<br />

チャイコフスキーからレゲエに 至 るさまざまな 国 際 的 な 音 楽 の<br />

影 響 も 積 極 的 に 受 け 入 れています。 子 どもの 頃 、 近 所 に 住 んで<br />

いたアコーディオン 奏 者 、マーティン・オコナーに 影 響 を 受 けたと<br />

彼 女 は 言 います。「 彼 のような 天 才 がリビングで 演 奏 しているこ<br />

とを、ごく 当 たり 前 のことに 感 じていました」と、 彼 女 は 言 います。<br />

そしてアンナはこう 続 けます。「ゴールウェイには 強 い 共 同 体<br />

意 識 があります。クリエイティブな 人 々がここで 居 心 地 の 良 さを<br />

感 じるのは、この 街 が 彼 らを 理 解 し、 支 援 しているからです。 私<br />

たちは 海 を 見 て 癒 しを 感 じるとともに、 世 界 の 広 大 さについて<br />

も 気 づかされます。 何 ものにもとらわれない 自 由 を 感 じるので<br />

す。」 彼 女 は「ゴールウェイ2020」のオープニングイベントを 彩 る<br />

音 楽 の 作 曲 と 演 奏 の 依 頼 を 受 けました。このイベントはエア 広<br />

場 で 開 催 され、 数 千 人 の 観 客 を 集 めました。<br />

イルミネーション、 仮 面 、 野 外 歴 史 劇 、ドラム、 朗 読 、ストリー<br />

トで 演 じられる 劇 ……さまざまな 催 し 物 で 構 成 される「ゴール<br />

ウェイ2020」。その 中 でも 一 番 の 目 玉 は、おそらくゴールウェ<br />

イを 拠 点 に 活 動 する 世 界 的 に 有 名 なパフォーマンスグループ<br />

「マクナス」のパフォーマンスでしょう。このグループ 名 はアイルラ<br />

ンド 語 で「 楽 しい 自 暴 自 棄 」という 意 味 の 言 葉 に 由 来 してい<br />

ゴ ー ル ウェイ・リイマ ジ ンド( 上 ): 「 シ ョ<br />

ー・マスト・ゴー・オン」の 精 神 で、「ゴー<br />

ルウェイ2020リイマジンド」プログラ<br />

ムは 困 難 な 状 況 下 をものともせず、こ<br />

の 街 の 記 念 イベントを 継 続 します。 本<br />

来 のテーマに 忠 実 に、ライブとデジタ<br />

ルマルチメディアを 融 合 した 体 験 によ<br />

り、 数 百 のパフォーマンスアクトを 皆 様<br />

のご 自 宅 のリビングルームにお 届 けし<br />

ます(2021 年 3 月 まで)。<br />

ゴ ー ル ウェイ・サ ウンド・ハ ー ベ スト( 下 ):<br />

この 街 の 多 様 な 言 語 、 文 化 的 多 様 性 、エ<br />

キセントリックな 音 楽 シーンに 対 する 賛<br />

辞 として、グループ「アトモス・コレクティ<br />

ブ」がゴールウェイに 住 む 人 々と 協 力 し<br />

て 、ミュ ー ジ ック ア ル バ ム を 制 作 して い ま<br />

す。その 曲 は、 若 者 とコミュニティのワーク<br />

シ ョップ、ア ー ティスト 同 士 の コ ラボ レ ー シ<br />

ョン、ゴールウェイの 街 中 のヒップポップ<br />

系 ポップアップショップの 協 力 によ<br />

り、2021 年 3 月 に 開 催 されるスペシャル<br />

コンサートで 披 露 されます。<br />

1985 年 以 降 、 毎 年 1つまたは2つの 都 市<br />

ミラー・パビリオン( 上 ):<br />

アイルランド 人 アーティストのジョン・<br />

ジェラードが 手 がけた2つのアートワー<br />

クが、ゴールウェイの 市 街 地 とコネマ<br />

ラ 山 地 に 展 示 されます。AIによって 生<br />

成 された 神 話 上 の 人 物 が 巨 大 なLED<br />

画 面 の 壁 で 動 き 回 るパフォーマンスを<br />

演 じ、ミラー 張 りの 構 造 体 が 周 囲 の 環<br />

境 を 映 し 出 します( 再 生 可 能 エネルギ<br />

ー 源 を 使 用 して い ます )。<br />

66 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 67


ます。「ゴールウェイ2020」に 向 けて、 彼 らはこれまでで 最 も 野<br />

心 的 なプロジェクトに 取 り 組 み、1 年 間 を 費 やして、 世 界 最 古<br />

の 物 語 とさ れ る シュメー ル 人 の『 ギルガメシュ 叙 事 詩 』の 解 釈<br />

に 取 り 組 んでいます。<br />

山 々を 照 らす 光 のインスタレーションや、ストリートでの 野 外<br />

歴 史 劇 の 上 演 も 行 われます。また、かつて 貧 しいアイルランド<br />

の 人 々が 長 く 暗 い 冬 を 火 のそばで 過 ごす 際 の 楽 しみとして、<br />

代 々 受 け 継 がれてきた 物 語 やメロディ、 歌 も 披 露 されます。 物<br />

語 を 語 るのが 上 手 い 人 や 音 楽 演 奏 が 巧 みな 人 は、 富 や 権 力<br />

では 手 に 入 れることのできない 敬 意 を 受 けることができます。<br />

ゴールウェイは、これまでの 歴 史 においてそうした 人 々を 育 ん<br />

できたとともに、これからもその 伝 統 を 受 け 継 いでいくことで<br />

しょう。 私 はフランシス・ストリートに 設 けられたパフォーマンス<br />

スペース「ブラック・ゲート」で、ゴールウェイから 生 まれる 新 しい<br />

文 学 の 波 をいくつか 体 験 してきました。そこでは、 押 し 寄 せる<br />

波 のように 雄 弁 な 語 り 口 を 聞 くことができました。<br />

旅 行<br />

アート 活 動 の 中 心 地 ( 上 ) 有 名 な 劇 団 「マクナス」のマーク・オドネル。( 下 ) 小 説 家 のエレーヌ・フィーニ<br />

ー。ゴールウェイの 文 芸 の 中 心 地 Charlie Byrne’s Bookshopにて。( 下 )ゴールウェイ 大 学 。 有 名<br />

な 政 治 家 、 詩 人 、 俳 優 を 輩 出 しています<br />

詩 人 や 小 説 家 、 出 版 社 の 人 たちが 大 勢 集 まっていましたが、<br />

その 中 の 一 人 にエレーヌ・フィーニーがいました。フィクション<br />

分 野 で2020 年 最 も 注 目 すべきデビュー 作 の1つと 見 なされて<br />

い る『 As You Were』を 著 した 新 進 の 作 家 です。 彼 女 はゴールウェ<br />

イ 東 部 の 出 身 で、 生 家 の 農 場 が 人 里 から 遠 く 離 れた、ひどく 急<br />

な 坂 道 の 先 にあったため、 子 どもの 頃 はポニーと 荷 馬 車 を 使<br />

って 移 動 していたと 言 います。 型 破 りなフェミニストで、 受 賞 歴<br />

を 持 つパフォーマンス 詩 人 でもある 彼 女 は、そうした 特 質 を 小<br />

説 に 持 ち 込 み、ゴールウェイの 話 し 言 葉 も 使 ってデビュー 作 を<br />

執 筆 しました。 彼 女 はプロデューサーでもあり、 若 い 作 家 の 面<br />

倒 を 見 たり、 作 家 の 訪 問 インタビューや 選 集 の 編 集 にも 携 わっ<br />

ており、「ゴールウェイ2020」の 開 催 期 間 中 、こうした 仕 事 を 積<br />

極 的 に 進 める 予 定 でいます。<br />

「 私 はこのような 貧 しい 田 舎 で 生 まれ 育 つことの 大 変 さを<br />

よく 知 っています」と、フィーニーは 言 います。「 苦 労 の 絶 えない<br />

土 地 で、 工 業 化 は 進 んでおらず、 保 守 的 な 考 えが 強 く、いろん<br />

な 制 約 もあります。 都 市 部 と 田 舎 との 間 には 断 絶 があります。<br />

私 は 週 に2、3 回 はゴールウェイに 来 て、 心 身 をリフレッシュして<br />

います。 私 は「ゴールウェイ2020」の 開 催 によってアートが 田<br />

舎 に 持 ち 込 まれることで、こうした 断 絶 がいくらか 修 復 される<br />

ことを 願 っています。 芸 術 に 飢 える 気 持 ちは 私 自 身 がよく 知 っ<br />

ていますので……。このプログラムの 成 功 を 確 信 しています。」<br />

ここ 西 部 には、アイルランドのどの 地 域 とも 異 なる 独 特 の 雰<br />

囲 気 があります。これは、アメリカの 砂 漠 を 車 で 旅 しているとき<br />

に 感 じるものと、どことなく 似 ています。 途 方 もなく 広 い 土 地 を<br />

目 にすると、 自 分 が 自 由 な 存 在 であり、 誰 からも 束 縛 されるこ<br />

となく、どんなことでも 可 能 だと 思 えます。 未 知 なる 可 能 性 が 身<br />

近 に 存 在 している……。 砂 漠 よりも 海 の 方 が、そのことをはっ<br />

きりと 気 づかせてくれるように 思 えます。ここはかつてクロムウ<br />

ェルの 軍 隊 が、 耕 作 に 適 した 中 央 部 の 平 原 を 自 分 たちのもの<br />

にするために、ゲール 人 を 追 いやった 不 毛 の 地 でした。その 後 、<br />

人 々はここで 生 きるすべを 学 びました。 台 所 で 足 を 踏 むステッ<br />

プからダンスが 生 まれ、 話 し 言 葉 から 詩 が 発 展 し、 隣 人 たちの<br />

語 りから 伝 説 が 誕 生 しました。 今 やこの 街 にもチェーンストア<br />

ができ、Instagramのインフルエンサーもいる 時 代 となりました。<br />

けれども 人 々は、 今 もなお 存 在 する 時 間 を 超 越 した 美 しさと<br />

歴 史 と 伝 統 に 触 れるためにこの 地 を 訪 れるのです。<br />

ゴールウェイの 港 : 活 気 あふれるこの 街 では 海 が 身 近 な 存 在 で、アーティストにインスピレーションを 与 えてくれます<br />

68 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 69


トレンド<br />

ザ・ゲーム・<br />

オブ・ザ・<br />

ネーム<br />

さまざ ま な 製 品 に 、ど の ように して<br />

名 前 が 付 けられたか 不 思 議 に 思<br />

ったことはありませんか? 命 名 法<br />

の 理 論 と 実 践 について 探 ります<br />

文 : Luke Ponsford イラスト: Ulla Puggaard<br />

「シンプルな 単 語<br />

ひとつの 名 前 を<br />

見 つけるのは 今 や<br />

至 難 の 業 です」<br />

世 の 中 にはブランド 名 や 製 品<br />

名 が 溢 れ かえり、 大 ヒットした<br />

名 前 は 私 たちが 日 常 で 使 う 語<br />

彙 の 一 部 にさえなっています。<br />

け れ ど も 、そ うし た 名 前 は ど の<br />

ようにして 生 み 出 されたのでし<br />

ょうか? 成 功 の 方 程 式 はある<br />

のでしょうか?<br />

人 気 を 呼 び、 成 功 をもたらす<br />

名 前 を 考 案 するのはそう 簡 単 な<br />

ことではありません。Googleや<br />

Nike、Starbucksのようなポピュ<br />

ラーな 名 前 を 思 いつくための、<br />

魔 法 の 方 程 式 や 確 立 された 方<br />

法 論 といったものは 存 在 しません。<br />

製 品 や 企 業 に 名 前 を 付 けるプロセスは、その 製 品 やブランド<br />

を 徹 底 的 に 研 究 し、 本 質 を 理 解 することから 始 まります。イン<br />

スピレーションは 至 るところから 湧 いてきます。「 歌 、 文 学 、 関<br />

連 する 用 語 集 、 歴 史 、 天 文 学 など、あらゆるものが 着 想 源 にな<br />

ります」。そう 教 えてくれるのは、ニューヨークに 拠 点 を 置 くブ<br />

ランドネーミングのコンサルタント 企 業 、River + Wolfの 創 業<br />

者 でクリエイティブディレクターのマーガレット・ウォルフソン<br />

です。<br />

また、クライアントがどのように 聞 こえる 名 前 を 欲 しているか<br />

も 重 要 な 要 素 となります。 親 しみやすさを 感 じさせたい? 男 性<br />

的 、あるいは 女 性 的 な 名 前 にしたい? 力 強 さや 科 学 を 想 起 させ<br />

たい?「テクノロジー 企 業 の 多 くは 科 学 的 、 未 来 的 な 名 前 を 望<br />

みます。そのためにネーミング 会 社 がよく 試 すのが「K」や「X」<br />

を 使 った 名 前 で す。 例 え ば「X 」は 、 視 覚 的 に 未 来 、 科 学 、 数 学<br />

といったものをイメージさせます」。そう 語 るのは、サンフラン<br />

シスコのブランドネーミング 企 業 、Catchwordの 共 同 創 業 者 、ロ<br />

ーレル・サットンです。ビジュアルな 要 素 と 文 字 数 の 制 限 も 考<br />

慮 しなければなりません。 覚 えやすく、 意 味 が 伝 わりやすく、 文<br />

字 として 書 くときに 綴 りやすいもので、 短 くもなく 長 くもなく、<br />

見 た 目 にも 心 地 よい 名 前 であることが 求 められます。<br />

け れ ど も 、クラ イ ア ント に よって は 、も っと 簡 単 に 決 まる 場<br />

合 も ありま す。サ ットン が 担 当 し た 、とあ るソフトウェア 関 連 の<br />

スタートアップ 企 業 からの 依 頼 がその1つでした。「クライアン<br />

ト 企 業 の 創 業 者 たちは 彼 らの 理 念 について 語 り、 彼 らがヨガ<br />

に 関 心 を 持 っており、その 考 え 方 が 製 品 開 発 の 根 底 にあると<br />

説 明 してくれました」と、サットンは 言 います。「そうした 意 味<br />

を 込 めた 企 業 名 にしたいというリクエストでした。」そこで<br />

Catchwordが 思 いついたのが「asana」という 名 前 でした。これ<br />

はサンスクリット 語 で「ヨガのポーズ」を 意 味 する 言 葉 です。<br />

「この 名 前 は 幾 重 にも 意 味 が 付 与 されています」と、サットンは<br />

説 明 します。「 第 一 に、これは 美 しい 言 葉 で<br />

す。 女 性 的 なイメージ が あり、よど み なく 発<br />

音 できます。また、 文 字 の 中 に 視 覚 的 なスム<br />

ーズさを 損 なう 要 素 となるディセンダーとア<br />

センダー( 小 文 字 の「d」や「p」)が 含 まれて<br />

いません。 第 二 に、これは 背 景 に 込 められ<br />

たストーリーを 語 る 名 前 です。ヨガでは、ポ<br />

ーズを 取 ることで 精 神 を 統 一 し、 次 のことに<br />

向 けて 準 備 を 整 えますが、Asana 社 のソフト<br />

ウェアはビジネスにおいて 同 様 なサービスを 提 供 します。そん<br />

な 製 品 にふさわしい 名 前 になっています。」<br />

け れ ど も 、パーフェクトな 名 前 を 発 見 す れ ばそ れで 終 わりと<br />

いうわけではありません。 既 存 の 商 標 に 登 録 されていないか<br />

調 べ る と い う 、 厄 介 な 仕 事 が 待 って い ま す。「 近 年 は 新 し い 企<br />

業 や 製 品 が 爆 発 的 な 勢 いで 誕 生 しており、シンプルな 単 語 ひ<br />

とつの 名 前 を 見 つけるのは 今 や 至 難 の 業 です」と、ウォルフソ<br />

ンは 言 います。<br />

それは 自 動 車 のネーミングにもあてはまります。ジャガーで<br />

は、プロダクトマーケティングディレクターで、ネーミング 委 員<br />

会 の 責 任 者 を 務 めるデイビッド・ブラウンが 同 様 な 困 難 に 直<br />

面 しています。「あらゆる 名 前 がすでに 商 標 化 されており、 新<br />

しい 名 前 を 考 案 するのは 難 しくなる 一 方 です」と、 彼 は 説 明 し<br />

ます。「また、 文 化 的 および 言 語 的 な 違 いも 考 慮 する 必 要 があ<br />

ります。 世 界 中 のあらゆる 国 で 通 用 する 名 前 にしなければなり<br />

ません。」<br />

業 界 のトレンドは 時 代 とともに 移 り 変 わります。「かつては、<br />

多 くのビジネスが 創 業 者 の 名 前 にちなんで 命 名 していました。<br />

自 動 車 、ジュエリー、 香 水 などのメーカーがその 代 表 例 です」<br />

と、サットンは 言 います。「けれども 近 頃 では、もっと 面 白 い 試<br />

みが 見 受 けられます。 例 えば、オンライン 専 用 のバンキングア<br />

プリや 予 算 管 理 アプリに、Dave、Marcus、Frankなど、 親 しみ<br />

やすい 人 間 のファーストネームを 使 っているものがあります。<br />

そうした 名 前 は、 大 企 業 との 長 期 にわたるつながりを 持 たず、<br />

大 企 業 に 不 信 感 さえ 抱 いているミレニアル 世 代 の 若 者 にアピ<br />

ールします。 彼 らは、 小 規 模 なスタートアップ 企 業 の 方 に 信 頼<br />

を 置 き、そうした 企 業 が 営 むビジネスを 好 む 傾 向 にあります。」<br />

けれどもブラウンは、 時 代 のトレンドだけにこだわる 必 要 は<br />

ないと 考 えています。「ジャガーには 長 い 歳 月 をかけて 築 いて<br />

きた、 揺 るぎない 歴 史 と 伝 統 があります」と、 彼 は 言 います。<br />

「 人 々がジャガーの 車 を 購 入 するとき、 購 入 理 由 にはブランドの<br />

歴 史 的 な 背 景 も 含 まれています。 私 たちは SUVモデルの 名 前<br />

を 決 めるときに、ジャガーの 歴 史 を 遡 りました。「Grace, Space,<br />

Pace( 優 美 さ、スペース、 速 さ)」というスローガンが1960 年<br />

代 に 使 われていましたが、これはジャガー 車 のあるべき 姿 の 定<br />

義 として 現 在 でも 当 てはまります。そして、ジャガーのSUVはこ<br />

の 言 葉 がしっくりくる 車 です。」たしかに 、E-PACE、F-PACE、<br />

I-PACEは、それぞれの 車 にふさわしい 名 前 です。<br />

とは いえ 、 結 局 のところ 、い か に 素 晴 らしい 名 前 であっても 、<br />

それは 本 当 に 素 晴 らしいブランドに 飾 りを 添 える 存 在 にしか<br />

すぎません。「 良 い 名 前 は 優 れた 製 品 や 企 業 の 価 値 を 高 める<br />

ことができますが、 優 れていないものを 良 くすることはできま<br />

せん」と、ウォルフソンは 言 います。「 同 様 に、たとえ 名 前 が 悪<br />

くても、それは 必 ずしも 良 い 製 品 や 企 業 の 価 値 を 落 とすこと<br />

につながるとは 限 りません。「 確 実 に 言 えることは、 力 強 い<br />

企 業 や 製 品 と、 力 強 い 名 前 の 組 み 合 わせは、 成 功 の 前 提 条 件<br />

にしかすぎず、そこから 先 が 正 念 場 だということです。」<br />

70 / Jaguar Magazine<br />

Jaguar Magazine / 71


サステナビリティ<br />

リサイクルの 環<br />

自 動 車 は 大 部 分 がリサイクル 可 能 で<br />

す。ジャガ ー F-PACEを 作 り 上 げてい<br />

る 素 材 と 、そ の ライフサ イクル<br />

について 調 べました<br />

インフォグラフィックデザイン:<br />

Peter Granfors<br />

22%<br />

アルミニウム<br />

44%<br />

鉄 と 鋼<br />

12%<br />

6%<br />

サーモプラスチック<br />

4%<br />

セラミック<br />

エラストマーとデュロマー<br />

2%<br />

銅<br />

2%<br />

その 他 の 化 合 物<br />

1.2%<br />

亜 鉛 、ニッケル、 鉛<br />

0.8%<br />

6%<br />

天 然 有 機 素 材<br />

0.5%<br />

その 他 の 金 属<br />

自 動 車 用 油 脂 類<br />

*パーセント 表 示 は 端 数 切 り 上 げ<br />

汚 れの 除 去<br />

こ の 段 階 に は 、タ イヤ 、バ ッ テリー 、<br />

オイルフィルター、 油 脂 類 などの 車<br />

両 コンポーネントの 取 り 外 しが 含<br />

まれます。<br />

ステアリング、ホイール、タイヤ<br />

電 装 系 統<br />

エンジンと 油 脂 類<br />

金 属 のリサイクル<br />

欧 州 で 生 産 される 鋼 材 の 半 分 以<br />

上 はリサイクル 鋼 材 です。また、ジャ<br />

ガー 独 自 開 発 のアルミニウム 合 金<br />

(RC5754)には 最 大 75%のリサ<br />

イクル 材 が 含 まれています。どちら<br />

の 素 材 も、 産 業 界 全 体 で 広 く 使 用<br />

され、リサイクルされたものが、 再 び<br />

自 動 車 サプライチェーンに 組 み 込<br />

まれて 製 造 に 使 用 されます。<br />

プラスチックのリサイクル<br />

サーモプラスチックはリサイクル 可<br />

能 率 の 高 い 素 材 です。これらは 溶<br />

かされて 新 しいコンポーネントとし<br />

て 再 び 成 型 されるか、 他 の 素 材 と<br />

ともに 複 合 素 材 の 原 料 となります。<br />

その 他 のリサイクル 処 理 ま<br />

たは 廃 棄 処 分<br />

残 りの 素 材 は 特 別 なプロセスによ<br />

りリサ イクル さ れ る か 、ま た は 安 全<br />

に 廃 棄 処 分 されます。<br />

自 動 車 用 油 脂 類 のリサイ<br />

クル<br />

オイルなどの 自 動 車 用 油 脂 類 はき<br />

れいに 処 理 されて、 新 しい 製 品 に<br />

再 利 用 されます。<br />

分 解<br />

高 価 値 のパーツや 取 り 外 しが 容 易<br />

なパーツは 車 両 から 取 り 外 されま<br />

す。<br />

リビルト<br />

エンジンやトランスミッションなど<br />

の 高 価 値 のパーツの 一 部 は、 専 門<br />

家 の 手 でリビルト( 再 製 造 )されて、<br />

スペアパーツとして 使 用 されます。<br />

スペアパーツ 市 場<br />

ボディ<br />

動 力 伝 達 装 置<br />

シャシー<br />

ドア 類<br />

内 装 部 品<br />

破 砕<br />

アクセサリー<br />

金 属 の 分 離<br />

破 砕 された 車 両 から 分 離 された 金<br />

属 は 、リ サ イク ル の た め 選 別 さ れ ま<br />

す。F-PACEの 場 合 、 金 属 は 車 両 の<br />

およそ3 分 の2を 占 め、 鉄 / 鋼 とアル<br />

ミニウムで 構 成 されて い ます。<br />

破 砕 プラスチックの 処 理<br />

近 年 開 発 された 新 技 術 により、 破<br />

砕 したプラスチックを 選 別 ・ 洗 浄 し<br />

て、リサイクルすることが 可 能 にな<br />

りました。<br />

車 両 の 大 部 分 は 破 砕 された 後 、さ<br />

まざまな 素 材 に 選 別 されて、リサイ<br />

クルや 回 収 に 回 されます。<br />

エネルギー 回 収<br />

再 使 用 市 場 が 存 在 しない、ごく 一<br />

部 の 素 材 は、エネルギーの 生 成 に<br />

利 用 されます。<br />

自 動 車 の 製 造 はきわめて 複 雑 なプロセスで 成 り 立 っていますが、<br />

ジャガーでは 設 計 から 生 産 、 納 車 までのあらゆる 段 階 にサステナ<br />

ブル 思 考 を 採 り 入 れています。2007 年 以 降 、 生 産 台 数 は3 倍 にま<br />

で 増 え まし た が 、ジャガ ーで は 生 産 に 伴 うC O 2 排 出 量 とエネルギ<br />

ー 使 用 量 を74%、 水 の 使 用 量 を37%、それぞれ 削 減 しています。<br />

そしてジャガー 車 が 製 品 寿 命 を 全 うしたときには、 車 両 の 少 なくと<br />

も85%がリサイクル 可 能 で、95%が 回 収 可 能 です( 焼 却 による<br />

エネルギー 回 収 を 含 む 率 )。ジャガーのサステナビリティの 取 り 組<br />

みについての 詳 細 は、jaguarlandrover.comをご 覧 ください。<br />

72 / Jaguar Magazine Jaguar Magazine / 73


未 来 予 想 図<br />

毎 号 、 私 たちは 今 後 30 年 間 の 世 の 中 の 変 貌 について、 各 界 の 専 門 家 の 意 見 を 聞 いています<br />

今 回 のテーマ: マネーの 未 来<br />

イラスト: Dan Matutina<br />

JAGUAR XE<br />

並 ぶものがない、<br />

オリジナリティ。<br />

世 界 は 変 わりつつありますが、 同 様 に 私 たちのお 金 の 支 払 い<br />

方 も 変 わりつつあります。 今 後 30 年 間 に 起 こる 変 化 については、<br />

私 た ち は す で にそ の 多 くを 目 にして い ます。 例 え ば 、 現 金 払 い の<br />

衰 退 です。もちろん、 今 までどおりに 現 金 を 使 っている 人 はたくさ<br />

んいます。 現 金 は 依 然 として 人 々の 暮 らしを 支 える 重 要 な 役 割 を<br />

果 たしており、 完 全 に 廃 止 されるまでにはまだしばらくかかるで<br />

しょう。 個 人 的 には、 私 はもう 現 金 をまったく 使 いませんが、それ<br />

は 私 がきわめて 都 会 的 なライフスタイルを 送 っているからできる<br />

ことで す。<br />

IoT(Internet of Things)の 急 速 な 普 及 により、 今 後 、 米 国 では<br />

多 くのショップがAmazon Goストアに 追 随 することになるでしょ<br />

う。 人 々は 棚 から 品 物 を 取 り、 店 舗 から 出 るだけで、 自 動 的 に 支<br />

払 いを 済 ますことができます。 少 額 決 済 がますます 増 え、 必 要 な<br />

サービスには 定 期 引 き 落 としが 使 われることが 増 えるでしょう。<br />

テクノロジーの 面 では、 現 在 は 物 理 的 なカードに 依 存 しすぎて<br />

います。 将 来 的 には、 人 々は 腕 にチップを 埋 め 込 み、 出 口 で 装 置<br />

に 腕 をかざして 支 払 いを 済 ませるようになるかもしれません。 私<br />

たちは 刺 激 的 な 時 代 に 生 きており、マネーに 関 連 する 無 数 のイノ<br />

ベーションが 登 場 してきています。 私 たちは 今 まさに、 変 革 の 出<br />

発 点 に い る の で す。<br />

仮 想 通 貨 は 将 来 、 重 要 な 役 割 を 担 うことになるでしょう。そし<br />

て 普 及 が 進 むにつれて、より 厳 格 に 管 理 されるようになるはずで<br />

す。そうなれば 現 在 のような 大 騒 ぎは 収 まり、 人 々は 今 よりもはる<br />

かに 客 観 的 になり、 仮 想 通 貨 を 従 来 の 通 貨 と 同 等 のものと 見 な<br />

すようになるでしょう。 現 在 のところ、 多 くの 人 々は 仮 想 通 貨 につ<br />

いて 漠 然 としか 理 解 しておらず、 良 い 面 を 知 らないため、 積 極 的<br />

に 関 わろうとはしません。 次 世 代 の 仮 想 通 貨 はより 健 全 な 形 で<br />

発 展 し、より 広 く 受 け 入 れられることになるでしょう。<br />

機 械 学 習 とAIは 非 常 に 重 要 なテクノロジーであり、 人 々の 生 活<br />

を 大 きく 変 える 潜 在 力 を 秘 めています。 例 えば、AI 搭 載 のアプリ<br />

によって、 週 単 位 、 月 単 位 、 年 単 位 、あるいは 一 生 というスパンで<br />

資 産 を 管 理 することができます。 人 生 を 終 えるまで 資 金 が 残 るよ<br />

うに 支 出 を 最 適 化 して、リタイア 後 の 貧 しい 生 活 を 心 配 しないで<br />

済 むようにできたら 心 強 いと 思 いませんか?AIの 助 けを 借 りれ<br />

ば、 人 々がさまざまな 局 面 でより 有 利 な 取 引 を 行 い、 資 金 を 最 大<br />

限 に 活 用 できるようになるでしょう。とはいえ、すべてを 機 械 学 習<br />

に 頼 ることには 危 険 があります。アルゴリズムを 厳 密 に 監 査 しな<br />

い 限 り、 機 械 学 習 には 必 ずバイアスが 発 生 するからです。<br />

一 部 のAIで 問 題 が 指 摘 されるのは、AIに 人 間 との 接 し 方 や 話<br />

し 方 まで、 人 間 の 代 わりを 務 めさせようとしたときです。ボットが<br />

人 間 のふりをするのは 無 理 があります。けれども、 私 たちが 例 え<br />

ば 銀 行 員 や 他 の 人 に 対 して、 自 分 がいかに 浪 費 家 であるか 白 状<br />

したり、お 金 に 困 っていてローンを 申 し 込 みたいと 伝 えるのは、<br />

恥 ずかしいのも 事 実 です。スマートフォンが 相 手 の 方 が、どんなこ<br />

とでも 臆 せず 相 談 できると 思 う 人 もいるでしょう。 衝 動 買 いで 悩<br />

んでいる 人 が、テクノロジーによる 手 助 けを 得 ることができたら<br />

素 晴 らしいと 思 いませんか? 誰 だって、 衝 動 買 いのことを 他 人 に<br />

相 談 したいとは 思 わないでしょう。けれども 相 手 が 機 械 学 習 で<br />

あれば、そのアドバイスを 受 け 入 れるのも 拒 否 するのも 自 由 であ<br />

り、ハードルが 下 がるはずです。アプリは、あなたのライフスタイル<br />

と 質 問 への 返 答 に 基 づいて、あなたがどの 程 度 のアドバイスを<br />

求 めているのかを 学 習 して、 適 切 な 対 応 をしてくれるでしょう。<br />

さて、 今 後 の30 年 間 で、 従 来 の 銀 行 はその 役 割 を 維 持 し 続 け<br />

るでしょうか?むろん、ビジネスモデルの 転 換 を 図 るところも 出 て<br />

くるでしょう。 例 えば、リテール 分 野 に 特 化 したり、フィンテック 企<br />

業 にサービスを 提 供 したりという 方 向 性 があると 思 います。けれ<br />

ども、すべての 銀 行 が 現 在 のまま 存 続 するとは 私 には 思 えませ<br />

ん。マーケットのシェアは、 既 存 の 銀 行 から、 店 舗 を 持 たずスマー<br />

トフォンで 取 り 引 きするモバイル 銀 行 へと 移 ることでしょう。<br />

74 / Jaguar Magazine<br />

アン・ボーデンMBE( 大 英 帝 国 勲 章 受 勲 者 )。「 銀 行<br />

界 のAmazon」と 称 される 英 国 のモバイル 専 用 銀 行<br />

Starling Bankの 創 業 者 でCEO。Lloyds Bankか<br />

らキャリアをスタートし、そこで 英 国 初 の 即 時 決 済 シ<br />

ステムの 設 計 にも 関 与 。 前 職 はAllied Irish Banks<br />

のCOO。<br />

スポーティでスタイリッシュなフォルム。 高 い 質 感 のインテリアには<br />

最 先 端 テクノロジーを 採 用 し、 操 作 性 に 優 れたインフォテインメント<br />

システムを 備 えている。ジャガーが 誇 るドライビングダイナミクスも<br />

搭 載 した、XE。そのすべてが、スポーツサルーンの 個 性 を 強 める。<br />

jaguar.com<br />

詳 しくは、ジャガー 正 規 ディーラーにお 問 い 合 わせください。

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!