Untitled - 東京大学 大学院薬学系研究科・薬学部
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progression)とし、決定樹(decision tree)モデルを用いて、アウトカムとコスト(検査費用お<br />
よび薬剤費用)について期待値を算出した。その結果、FISH 法のみを用いた方法は期待効果<br />
が最も高いものの期待費用も高額となった。IHC 法のみ用いる場合を基準として増分費用効果<br />
比でみると IHC 法で 2+と判定された患者に FISH を用いて追加の検査を行う方法が効果あた<br />
りの費用が最も低い選択肢であり、79.8 万円/月であった。FISH 法のみでは 80.8 万円/月であ<br />
った。この結果からは FISH 法のみを用いる検査方法よりも、まず IHC 法を行い、結果によっ<br />
て FISH 法を適用する方法の方が効率的であることが示唆された。しかし IHC 法を用いること<br />
によって本来 HER2 の過剰発現と判定されるべき患者が見落とされることもあり、全ての患<br />
者に FISH 法を用いる検査の増分費用を社会的に容認すべきかどうか議論が必要である。<br />
iii)トランスレーショナルスタディ<br />
特殊ながん領域の治療には画期的な新薬および治療法の開発が期待されている。これらの<br />
中には現在、研究段階として実際の患者に適用されているものもある。これを実際の診療の<br />
現場に役立てるためのトランスレーショナルスタディに関して、経済的な側面を評価する研<br />
究を<strong>東京大学</strong>医科学研究所と共同で実施している。具体的には、悪性黒色腫に対する免疫療<br />
法、サイクログロブリンを標的とした甲状腺がん免疫療法などをテーマとして取り上げ、こ<br />
れらの治療法にかかるコストと効果を分析している。<br />
3) 生活習慣病<br />
i) アスピリン<br />
アスピリンについては、2000 年 9 月に狭心症、心筋梗塞、虚血性脳血管障害の血栓・塞栓<br />
形成の抑制としての適応がとれ、使用量が増加していると考えられる。抗血小板療法として<br />
用いられている低用量アスピリンは低価格ながら効果があり、経済性の評価を行う対象とな<br />
り得る。実際に臨床の現場では多く用いられていると考えられる。そこでまず日本全体とし<br />
ての低用量アスピリンの使用状況調査(drug utilization study: DUS)を行った。データソース<br />
としては、主に製薬企業の協力を得て出荷データを用いた。利用量の測定に際しては、他疾<br />
患との比較や国際比較も視野に入れ、WHO Collaborating Centre for Drug Statistics Methodology<br />
(Oslo)が開発しヨーロッパ諸国で広く用いられている ATC-DDD(Anatomical Therapeutic<br />
Chemical Classification – Defined Daily Dose)を測定単位として用いた。2001 年で低用量アスピ<br />
リンの使用は、約 16DDD/1,000 inhabitants day である。抗血小板剤全体としては約 20 DDD/1,000<br />
inhabitants day であり低用量アスピリンは約 80%を占める。一方生産金額としては、抗血小板<br />
剤全体の 80 億円中 5 億円と 6%をしめるに過ぎないなど、その相対的価値があきらかになっ<br />
た。<br />
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