Untitled - 東京大学 大学院薬学系研究科・薬学部
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2) がん<br />
い WTP の回答が得られたことはアルツハイマー病を予防することによる便益の大きさを示唆<br />
している。<br />
i) がん医療の医療経済評価<br />
がんは我が国の主要死因であり、治療薬開発が特に期待される領域である。これまでにも<br />
様々な薬が開発されているが、経済性の評価については必ずしもまとまった研究がない。そ<br />
こで、英国の医療経済文献データベースである NHS-EED (National Health Service - Economic<br />
Evaluation Database)を用いて、がんにおける医療経済評価研究のレビューを行った。2001 年を<br />
みると、NHS-EED に約 2,700 件の study が収集され、そのうち control をもち、outcome と cost<br />
の双方を記述している full economic evaluation (FEE)は約 700 件、全体の約 1/4、がんの領域の<br />
FEE は約 40 件で、FEE の約 6%である。そのうち、治療が 1/2、診断が 1/4、検診が 1/4、その<br />
他が若干である。評価手法としては、cost-effectiveness analysis (CEA)がほとんどで、QOL を考<br />
慮した cost-utility analysis (QUA)や、outcome も貨幣価値で表わす cost-benefit analysis (CBA)は<br />
少ない。国別では米国が 1/2 をしめ、他は少ない。単位(unit)あたりのコストは、Medicare の<br />
償還価格が主で、他に卸価格、病院記録など、単位の使用量としては、過去の文献と病院の<br />
記録が主である。Modeling は少ない。<br />
NHS-EED をモデルとしかつ NHS-EED と協力して本講座で開発中の JEED (Japan Economic<br />
Evaluation Database)を用いた同様の検索からは、日本での FEE は少なく、ランダム化比較試<br />
験(randomized controlled trial: RCT)を用いたものはほとんどないことも明らかになった。この<br />
理由としてまず、日本におけるこれまでのがんの領域の臨床試験のあり方がある。また他の<br />
領域についてもいえることであるが、臨床経済評価を行い効率(efficiency)にもとづき保険償還<br />
など意思決定を行うことは合理的であり、ニーズは潜在的には高いと考えられる。ただし日<br />
本のこうした意思決定の領域をとりまく社会政治的要因に関する研究が今後、必要である。<br />
ii) 抗がん剤適用のための検査法の経済評価<br />
近年、ゲノム情報を用いて薬剤の選択を行い、有効性や安全性を向上させる試みが期待さ<br />
れている。これはテーラーメイド医療などと称される。しかしこのような薬剤の適用には、<br />
薬剤使用に適した患者かどうかを診断する必要があり、その診断にはコストがかかる。<br />
トラスツズマブは HER2(human epidermal growth factor receptor-2)の過剰発現を伴う転移性<br />
乳がん患者に対して有効な治療薬である。ただしこの薬剤の適用の前に HER2 検査が必要で<br />
ある。従来は IHC(immunohistochemistry)法を用いた検査が行われてきた。これに対して 2003<br />
年 4 月から保険適用された FISH (Fluorescence in situ Hybridization)法は精度が高いものの従来<br />
の IHC 法と比較して高額である。そこで、 IHC 法、 FISH 法、およびその組み合わせを用い<br />
た検査について効率性を検討した。アウトカム指標をがんの進行までの時間(time to<br />
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