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抗菌薬 適 使 感 策 抗菌薬の適正使用と感染対策

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抗 菌 薬 の 適 正 使 用 と 感 染 対 策聖 路 加 国 際 病 院 内 科 感 染 症 科古 川 恵 一(1) 抗 菌 薬 適 正 使 用 の 重 要 性(1) 感 染 症 は 重 症 例 ほど 抗 菌 薬 治 療 が 適 切 であるかどうかによって 生 命 の 予 後 が 左 右 される。医 療 従 事 者 にとってやりがいが 非 常 に 大 きい。(2) 広 域 抗 菌 薬 の 不 適 切 な 多 用 、 乱 用 で多 剤 耐 性 菌 出 現 のリスクが 上 がる。(3) 抗 菌 薬 の 適 正 使 用 は 院 内 感 染 管 理 で必 須 の 課 題 である。複 数 の 薬 剤 でも 効 果 なし「 多 剤 耐 性 緑 膿 菌 」増 える横 須 賀 市 A 病 院 に 入 院 していた20 歳 代 半 ばの 男 性 が 死 亡 した。死 因 は 緑 膿 菌 による 敗 血 症 。この 男 性 は 白 血 病 で1 年 前 から抗 がん 剤 による 治 療 を 受 けていた。この 患 者 の 緑 膿 菌 は多 剤 耐 性 菌 でどの 抗 菌 薬 でも殺 菌 できなかった。院 内 感 染 症 例 の 報 道•S 医 大 病 院 2006 年 6 月 多 剤 耐 性 緑 膿 菌2004 年 1 月 から2 年 間 に170 人 から 検 出 、感 染 者 で 死 亡 者 11 人 (7 人 が 直 接 死因 )• 都 立 R 病 院 2006 年 6 月 多 剤 耐 性 緑 膿 菌2005 年 7 月 ー12 月 に感 染 者 15 人 、 死 亡 者 2 人日 本 におけるカルバペネムの 総 使 用 量 (vial 数 )Standard Units(000)220002000018000160001400012000・ 日 本 の 多 くの 医 療 機 関 では、グラム 陰 性 桿 菌 感 染 症 治 療の 切 り 札 として 開 発 されたカルバペネムを 多 用 している。10000・ 日 本 では 米 国 より 多 く8000使 用 されている。60004000200002000 2001 2002 2003 2004 2005・ 日 本 でのカルバペネム 使 用量 は 世 界 の 使 用 量 の33%。多 剤 耐 性 緑 膿 菌 出 現 の 危 険 因 子• Caoらによると多 剤 耐 性 緑 膿 菌 検 出 者 は薬 剤 感 受 性 緑 膿 菌 検 出 者 と 比 較 して、カルバペネム 前 投 与 歴 が:オッズ 比 44.8で 最 も 高 い 危 険 因 子 であった。・カルバペネムの 多 用 は 多 剤 耐 性 緑 膿 菌 の 出 現 を 助 長する!アメリカ 日 本Source:IMS(2). 抗 菌 薬 の 適 正 使 用 の 意 義抗 菌 薬 の 適 正 使 用 の 目 的 は、1 各 種 感 染 症 の 患 者 をできる 限 り 速 やかに 治 癒 に 導 く。1) 適 切 な 抗 菌 薬 を 選 択 して、2) 適 切 な 量 を、3) 適 切 な 期 間 投 与 する。4)できる 限 り 副 作 用 ( 副 反 応 )を 起 こさないようにする。2 薬 剤 耐 性 菌 をできる 限 り 作 らないような 使 い 方 をする。1) 特 に 広 域 の 第 3、 第 4 世 代 セフェムやカルバペネムなどの 不適 切 な 多 用 、 長 期 使 用 , 低 用 量 使 用 を 戒 める。2) 起 因 菌 が 判 明 して、 可 能 であればより 狭 域 スペクトラムの 抗菌 薬 を 用 いる。3できる 限 り 合 理 的 な 医 療 経 費 で 最 善 の 治 療 を 行 う。1) 不 要 な 薬 剤 投 与 や 不 要 な 長 期 投 与 を 戒 める。(3). 聖 路 加 国 際 病 院 における(3). 聖 路 加 国 際 病 院 における抗 菌 薬 適 正 使 用 のためのシステム


感 染 症 科 の 役 割 11. 各 種 の 感 染 症 を 早 期 に、 的 確 に 治 療 するために 指 導 する。2. 適 切 な 抗 生 物 質 をA. 適 切 な 量 をB. 適 切 な 期 間 、 投 与 するC.できる 限 り 副 反 応 を 少 なくする。3. 抗 生 物 質 の 適 切 な 使 用 により、 耐 性 菌 の 出 現 をできる 限り、 少 なくする。4. 各 種 院 内 感 染 や 問 題 のある 菌 の 出 現 を 早 めに 把 握 して、早 期 に 適 切 な 治 療 や 対 策 を 行 う。St.Luke’s International HospitalK.F細 菌 検 査 プレートカンファランス1. 細 菌 検 査 技 師 、 感 染 症 科 スタッフ、レジデント 合 同 で• .月 2 回 開 催 。2. 最 近 の 教 育 的 な 症 例 を 提 示 。3. 症 例 の 細 菌 学 的 な 培 地 上 の 所 見 や顕 微 鏡 像 の 提 示 。4. 医 師 は 細 菌 学 的 な 検 査 所 見 について 学 ぶ。5. 検 査 技 師 は 検 査 した 患 者 の 臨 床 的 な 状 況 について学 ぶ。細 菌 検 査 室 でのレジデント 教 育21. 抗 菌 薬 の 採 用 薬 のコントロール聖 路 加 国 際 病 院 採 用 抗 菌 薬 ( 静 注 用 ) 2005 年 12 月 現 在1)ペニシリン 系penicillin G(ペニシリンG)第 3 世 代 cefotaxime(セフォタックス)ampicillin(ビクシリン)ceftriaxone(ロセフィン)ampicillin/sulbactam(ユナシン)ceftazidime(モダシン)piperacillin(ペントシリン) 第 4 世 代 cefepime(マキシピーム)piperacillin/tazobactam(タゾシン)3)カルバペネム 系2)セファロスポリン 系meropenem(メロペン)第 1 世 代 cefazolin(セファメジン) ジ第 2 世 代 cefotiam(パンスポリン) 4)モノバクタム 系cefmetazole(セフメタゾン)aztreonam(アザクタム)


聖 路 加 国 際 病 院 採 用 抗 菌 薬 ( 静 注 用 )5)アミノグリコシド 系9)その 他gentamicin(ゲンタシン)vancomycin(バンコマイシン)tobramycin(トブラシン)clindamycin(ダラシンS)amikacin(アミカシン)TMP/SMX(バクトラミン)6)マクロライド 系10) 抗 真 菌 薬erythromycin(エリスロシン) micafungin(ファンガード)fluconazole(ジフルカン) ジ7)テトラサイクリン 系voriconazole(ブイフェンド)liposomalpAmphotericinB(アンビゾーム)minocycline(ミノマイシン)11) 抗 結 核 薬8)ニューキノロン 系isoniazid(イスコチン)ciprofloxacin(シプロキサン) streptomycin(ストレプトマイシン)• Linezolid (ザイボックス)などは 現 在 、 当 院 採 用 薬 でないが、感 染 症 科 が 必 要 とみなせば、その 患 者 に限 定 して 使 用 可 能 である。2. 特 定 の 抗 菌 薬 について 処 方 理 由 を 明 記 する 義 務各 科 の 医 師 、レジデントが 特 定 の 静 注 用 抗 菌 薬(meropenem、cefepime、ceftazidime、aztreonam、ampicillin/sulbactum、ciprofloxacin、、 、 p 、amikacin、piperacillin/tazobactam)を 処 方 するためにコンピューターでオーダー 入 力 する 際 には処 方 理 由 として 各 薬 剤 ごとに 画 面 に 示 された 適 応 症のいずれかを 満 たす 必 要 がある。抗 菌 薬 採 用 薬 を 選 択 し 削 減 することの 意 義1. 抗 菌 薬 を 熟 知 して 適 切 に 使 用 することを実 施 しやすい。2. 抗 菌 薬 適 正 使 用 の 教 育 を 行 いやすい。3. 使 用 しない 薬 品 の 在 庫 を 少 なくしうる。4. 医 療 経 費 の 削 減 につながる。5. 実 際 の 抗 菌 薬 治 療 において 支 障 になることはない。3. 抗 菌 薬 の 使 い 方 についてのガイドラインの 作 成( 主 にレジデントを 対 象 )a. 各 種 抗 菌 薬 の 特 徴 と 使 い 方 についてb. 各 種 感 染 症 へのアプローチと 抗 菌 薬 治 療 法の 要 点 について( 総 論 的 な 解 説 )c. 各 種 感 染 症 の 起 因 菌 不 明 時 の 初 期 治 療(empiric therapy)についてd. 各 種 起 因 菌 判 明 時 に 選 択 すべき 抗 菌 薬 についてRMeropenem(メロペン )特 徴 : グラム 陰 性 桿 菌 のβラクタマーゼに 高 度 の 抵 抗 、 非 常 に 広 域 な 抗 菌 活 性抗 菌 スペクトラム:大 部 分 のグラム 陰 性 桿 菌 (P.aeruginosaを 含 む)(Fravobacterium、Stenotrophomonas maltophilia、B.cepaciaを 除 く)大 部 分 のグラム 陽 性 球 菌 、 大 部 分 のEnterococciを 含 む(Enterococcus faecium、MRSAを 除 く)大 部 分 の 嫌 気 性 菌 (C.difficileを 除 く)適 応 症 :1. 重 症 の( 院 内 感 染 )グラム 陰 性 桿 菌 感 染 症 または 複 数 菌 感 染 症2.( ( 院 内 感 染 ) 重 症 グラム 陰 性 桿 菌 肺 炎( 重 症 、 第 3、4セフェム 耐 性 グラム 陰 性 桿 菌 の 可 能 性 のある 時 )3. 他 剤 耐 性 のP.aeruginosaや 他 のグラム 陰 性 桿 菌 感 染 症4. 好 中 球 減 少 者 の 発 熱 時 :アミノグリコシドを 使 いにくい 場 合 ( 腎 機 能 障 害 )重 症 、 第 3,4セフェム 耐 性 菌 の 可 能 性* P.aeruginosa 感 染 症 ( 重 症 )に 対 してはアミノグリコシド(TOBなど)と 併 用多 くの 院 外 肺 炎 、 外 科 手 術 感 染 予 防 のための 使 用 は 不 適 切副 作 用 : 発 疹 、 重 感 染 ;C.difficile 結 腸 炎 、投 与 量 : 0.5g 静 注 6 時 間 毎 (2g/ 日 ) ( 最 大 1.0g 静 注 6 時 間 毎 : 髄 膜 炎 など)急 性 腎 盂 腎 炎 の 初 期 治 療 のガイドライン院 外 感 染 (community acquired)E.coli Proteus mirabilisKlebsiella Enterococcus など・ 尿 沈 渣 の ・ 敗 血 症 性 ショック、 重 症 の 場 合グラム 染 色 でグラム 陰 性 桿 菌 (+)の 場 合 →cefotaxime (ceftriaxone)cefotiam(1g 8 時 間 ごと、3g/ 日 )+gentamicinグラム 染 色 でグラム 陽 性 レンサ 球 菌 (+)の 場 合 ・ 感 受 性 のよいE.coliと 判 明 し、ampicillin+gentamicin全 身 状 態 が 落 ち 着 いた 場 合→cefazolin, f i cefotiam・ 敗 血 症 的 であれば、→cefotaxime, ceftriaxone起 因 菌 判 明 時 (Pseudomonas aeruginosaの 場 合 )に 選 択 すべき 抗 菌 薬【 第 1 選 択 薬 】ceftazidimepiperacillincefepime【その 他 の 選 択 薬 】 【 重 症 感 染 】meropenemceftazidime+tobramycinaztreonampiperacillin+tobramycintobramycin cefepeme+ tobramycinAmikacin meropenem+tobramycinCiprofloxacin ( 併 用 にて 相 乗 効 果 と 耐 性 獲 得 を 抑 える 効 果 )4. 感 染 症 の 患 者 の 診 療 とコンサルテーションンを 通 しての 教 育 指 導感 染 症 科 は1) 各 種 感 染 症 の 患 者 を 主 治 医 として診 療 する。2) 院 内 のすべての 科 から 各 種 の 感 染 症 の 患 者 や不 明 熱 の 患 者 などについてコンサルテーションを 受けて、 患 者 の 診 療 に 協 力 し、 各 科 の 医 師 を 指 導 教 育する。


感 染 症 の 患 者 の 診 療 とコンサルテーションンを 通 しての 教 育 指 導1. 各 科 から 連 絡 を 受 けると、 感 染 症 科 フェロー、臨 床 研 究 員 、シニアレジデントがまず 診 察 して把 握 し、 自 分 の 考 えをまとめる。2. 感 染 症 指 導 医 が 診 察 し、ディスカッションして方 針 を 決 定 する。3. 各 科 の 医 師 、レジデントに 連 絡 し 指 導 する。4. 患 者 を 毎 日 回 診 し、 感 染 の 問 題 が 軽 快 するまでフォローする。聖 路 加 国 際 病 院 感 染 症 科 診 療 実 績平 成 19 年 度 1 年 間 (2007 年 4 月 1 日 ー2008年3 月 31 日 )の 診 療 実 績• 感 染 症 科 入 院 担 当 症 例感 染 症 科 入 院:219 例357 例576 例• 感 染 症 科 入 院 コンサルト 症 例 :357 例合 計 :576 例• 感 染 症 科 外 来 コンサルト 症 例 :135 例依 頼 元 診 療 科消 化 器 外 科脳 外 科血 液 内 科消 化 器 内 科泌 尿 器 科呼 吸 器 内 科整 形 外 科2%2%2%2%1%1%1% 2%2%2%1%1%1%13%神 経 内 科10%3% 3%2%2%2%内 分 泌 内 科循 環 器 内 科3%心 臓 血 管 外 科3%4%4%4%5%腎 臓 内 科3% 緩 和 ケア 科6%6%6%6%9%女 性 総 合 診 療 部救 急 部乳 腺 外 科5% 皮 膚 科全 ての 診 療 科 からコンサルテーションあり胸 部 外 科口 腔 外 科膠 原 病 内 科小 児 科形 成 外 科眼 科耳 鼻 咽 喉 科0%0%0% 0%0%0%0%1%1%1%1%1%1%1%1%1%1%0%2% 2%2%2%1%2%2%2%2%2%3%3%感 染 部 位19%肺皮 膚腸 管髄 膜骨心 臓咽 頭 扁 桃前 立 腺入 院 連 絡子 宮 脳3% 胃 腫 瘍 熱4%6%8%全 ての 科 の 全 ての 臓 器 感 染 症 を 対 象 とする 唾 液 腺 縦 隔全 ての 科 の 全 ての 臓 器 感 染 症 を 対 象 とする .8%17%肝 臓関 節眼 内胸 膜HIV骨 髄なし尿 路カテーテル創 部腹 腔副 鼻 腔薬 剤 性歯胆 道血 管筋 肉肛 門眼 窩 内胸 腔陰 嚢梅 毒感 染 症 科 入 院 症 例 およびコンサルト 症 例 の 転 帰• 全 入 院 症 例 576 人( 転 帰 )• 感 染 症 による 死 亡 18 例 (3%)• 感 染 症 の 軽 快 率 97%


1 23456789感 染 症 科 の 役 割 25. 重 要 な 感 染 、 問 題 のある 菌 の 出 現 に 対 する早 期 対 応 と 院 内 感 染 管 理1) 菌 血 症 ( 血 液 培 養 陽 性 例 )2) 血 管 内 カテーテル 培 養 陽 性 例3) 髄 液 培 養 陽 性 例4) 抗 酸 菌 ・ 結 核 菌 陽 性 例5) 薬 剤 耐 性 菌1MRSA2VRE3カルバペネム 耐 性 グラム 陰 性 桿 菌4ESBL 産 性 耐 性 グラム 陰 性 桿 菌5クロストリジウムディフィシル6. 当 院 の 分 離 菌 の 件 数 と 薬 剤 感 受 性パターンを6ヵ 月 に1 回 調 査 してまとめる特 に 各 種 薬 剤 耐 性 菌 の 分 離 状 況 を 把 握 する。当 院 における 抗 菌 薬 の 使 用 法 を 検 討 する 上で 貴 重 なデータとなる。結 果 は 各 科 の 医 師 やレジデントにも 配 布 。7.カルバペネム 処 方 例 のサーベーランスと 指 導(カルバペネムの 適 正 使 用 のため)カルバペネム(メロペネム)が 新 たにオーダーされた 場 合 、 薬 剤 部 から 連 絡 を 受 けて、感 染 症 科 で 適 正 使 用 が 行 われているかどうか 調 べて、 主 治 医 に 指 導 を 行 う。St.Luke’s International HospitalK.F(%)25201510カルバペネム(IPM) 耐 性 緑 膿 菌 分 離 率 の 動 向:AUD入 院 患 者 からの 分 離 率 (In)病 院 全 体 の 分 離 率 (In+Out)11.010.518.714.0 15.910.2ー 聖 路 加 国際 病 院ー17.416.021.221.126.018.11In+OutIn14.8(AUD)25201510.9 1019.6 7.65 503.0’99 ’00 ’01 ’020’06 ( 年 )1~6 7~12 1~6 7~12 1~6 7~12 1~6 1~6( 月 )MMJ 2(7),656-658,200611 月 カルバペネム 使 用 規 制 プログラム1.201.000.800.60040 0.400.200.00IMP 耐 性 グラム 陰 性 桿 菌 検 出 率 ( 件 数 /1000patient•days)5 67891011121234567891011 1212345678910IPM 耐 性 グラム 陰 性 桿 菌 検 出 率11 1212345678910111212345678910111212345678910111212345678910他 発 生 率P.aeruginosa 検 出 率B.cepacia 検 出 率11 121234567891011 121234562001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008聖 路 加 国 際 病 院 で 分 離 した 緑 膿 菌 の 各 薬 剤 の 感 受 性 率(2008 年 4 月 ~2008 年 9 月 )~NCCLSブレイクポイントによる~ (N=143)PseudomonasaeruginosaMEPM CAZ CFPMS:96%S:82%S:85%I: 1% I: 8% I: 10%R:3% R:10% R: 5%聖 路 加 国 際 病 院 で 分 離 した 緑 膿 菌 の 各 薬 剤 の 感 受 性 率(2008 年 4 月 ~2008 年 9 月 )~NCCLSブレイクポイントによる~ (N=143)ESBL 産 生 耐 性 グラム 陰 性 桿 菌 検 出 率( 件 数 /1000patient•days)聖 路 加 国 際 病 院 におけるMRSAの 新 規 検 出 率新 規 件 数 /1000patientdaysPIPCTOBAMKLVFX0.70ESBL 産 生 菌 検 出 率4.50全 病 院 (M) 新 規 件 数 / 延 べ 患 者 数 ×10000.604.000.50350 3.503.00PseudomonasaeruginosaS:89%R:13%S:99%R:1%S:99%R:1%S:94%I: 1%R5% R:5%0.40030 0.300.200.100.002.502.001.501.000.500.00年 平 均162 1.62 265 2.65 261 2.61 224 2.24 213 2.13 207 2.07 170 1.70 132 1.32 115 1.15 098 0.98101112 123456789101112 123456789101112 123456789101112 123456789101112 123456789101112 123456789101112 123456789101112 123456789101112 1234568 9101112 123456789101112 123456789101112 123456789101112 1234567892002 2003 2004 2005 2006 2007 2008101112 123456789101112 123456789101112 1234561999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008


病 院 全 体 で 抗 菌 薬 の 使 用 を、 適 正使 用 のためにコントロールすることにより、 薬 剤 耐 性 菌 を 減 らすことができる。多 剤 耐 性 緑 膿 菌 を 出 さないために1.カルバペネムの 適 正 使 用 を 行 う。1 適 応 症 を 見 直 して、 適 応 症 に 限 定 して 使 用 する。2 起 因 菌 検 出 に 努 めて、 可 能 であればより 狭 域 スペクトラムの 抗 菌 薬 に 変 更 する。3 重 症 例 に 使 用 し、 最 大 限 の 投 与 量 :0.5g6 05 6 時 間 毎静 注 (2g/ 日 )を 投 与 する。( 効 果 は 最 大 で、 耐 性獲 得 を 減 らす)4 重 症 緑 膿 菌 感 染 などに 投 与 する 場 合 、TOBなどアミノグリコシドと 併 用 する。( 相 乗 効 果 と 耐 性 獲 得 を 減 らす)多 剤 耐 性 緑 膿 菌 を 出 さないために2.カルバペネムの 代 替 薬 として、Piperacillin/tazobactam, Cefepemeなどを 使 用 する。3.カルバペネム 耐 性 緑 膿 菌 、 多 剤 耐 性 緑 膿 菌 の 院 内分 離 状 況 のサーベーランスを 行 う。4.カルバペネム 耐 性 緑 膿 菌 、 多 剤 耐 性 緑 膿 菌 が 出 現したら、 院 内 感 染 対 策 を 実 行 する。( 接 触 隔 離 策 ):患 者 、 患 者 周 囲 の 室 内 環 境 器 具 と 接 触 後 に 手 洗 いを 厳 重 に 行 うこと。必 要 により、 手 袋 の 使 用 、 患 者 環 境 器 具 の 消 毒など。抗 菌 薬 治 療 における 問 題 点 と抗 菌 薬 適 正 使 用 のあり 方重 症 感 染 症 に 対 する 適 切 な治 療 法 のポイント1).できる 限 り 早 期 に 起 因 菌 を 検 出 するように努 める。1 血 液 培 養 ( 異 なる 部 位 からの 静 脈 血2セット 採 取 )2 各 種 検 体 ( 痰 、 尿 、 髄 液 、 膿 など)の塗 抹 染 色 (グラム 染 色 、 抗 酸 菌 染 色 ),培 養 検 査1 中 等 症 、 重 症 の 感 染 症 の 患 者 に、 血 液 培 養 、各 種 塗 抹 培 養 検 査 など 起 因 菌 検 出 のための検 査 を 行 わずに 抗 菌 薬 投 与 を 行 うという 問 題 。• 起 因 菌 が 判 明 すれば 抗 菌 薬 治 療 は75% 以 上成 功 。• 不 適 切 な 抗 菌 薬 治 療 を 行 うリスクが 上 がる。• 治 療 のターゲットを 絞 れないと 広 域 スペクトラムの 抗 菌 薬 を 使 い 続 けて、 菌 交 代 現 象 、耐 性 菌 出 現 のリスクが 上 がる。重 症 感 染 症 に 対 する 適 切 な治 療 法 のポイント2) 感 染 症 の 起 因 菌 を 推 定 し、 抗 菌 薬 (empiric therapy)を30 分 以 内 に 開 始 する。3) 殺 菌 的 抗 菌 薬 を 必 要 により 併 用 して、 大 量 投 与 する。( 例 1)グラム 陰 性 桿 菌 による 敗 血 症 性 ショックに 対 してβラクタム 剤 とアミノグリコシド 併 用 で相 乗 的 殺 菌 効 果 あり。例 :Cefepeme+Gentamicinを 併 用( 例 2) 大 腸 穿 孔 による 腹 膜 炎 に 対 してグラム 陰 性 桿 菌 と 嫌 気 性 菌 をカバーするため、Cefotaxime+Clindamycinを 併 用2 重 症 感 染 に 対 して 投 与 量 が 少 ない、投 与 間 隔 が 長 すぎるという 誤 り。• 本 邦 には1 日 2 回 の 静 注 投 与 しか 行 わない 病 院 が 多い。• 大 部 分 の 静 注 抗 菌 薬 の 添 付 文 書 も1 日 2 回 投 与 を 勧めているという 問 題 。• 不 十 分 な 投 与 量 では 重 症 感 染 症 が 治 療 できない。• 投 与 量 が 少 ないことや 投 与 間 隔 が 長 すぎることにより、耐 性 菌 出 現 のリスクが 上 がる。• 重 症 感 染 症 に 対 しては、 特 に 安 全 域 の 広 いβラクタム 剤 は 初 期 に 大 量 を 短 い 間 隔 で 投 与 することが 救 命 のために 必 要 である。重 症 感 染 症 に 対 する 適 切 な治 療 法 のポイント3) 殺 菌 的 抗 菌 薬 を 必 要 により 併 用 して、 大 量 に 投 与 する。1 抗 菌 薬 の 感 染 組 織 の 濃 度 がMICの4-5 倍 、髄 膜 炎 では 髄 液 濃 度 がMICの10 倍 に 達 するようにする。2βラクタム 剤 (ペニシリン、セフェム、カルバペネムなど)はMIC 以 上 の 時 間 を 長 く 保 つほど 抗 菌 効 果 が 高く、 耐 性 獲 得 が 少 ないので重 症 では 血 中 濃 度 半 減 期 の 約 4 倍 の 間 隔 で 投 与 する。.


)抗菌 a薬の血中濃度1/2aC maxC max /MICβ 相フルオロキノロン・アミノグリコシド・アジスロマイシン・クラリスロマイシン・テトラサイクリン・バンコマイシンTime above MICカルバペネム・AUCフルオロキノロン・アミノグリコシドAUC/MICMIC抗菌薬濃度C maxAUC/MPCAUC/MICC max/MPCC max/MICTime above MICTime above MPC耐 性 化 に 関 与 すると 考 えられるパラメータ満 山 順 一 ほか: 化 学 療 法 の 領 域 20(12) 1815-1821, 1821, 2004より 一 部 改 変Mutant prevention concentration (MPC)Mutant selection windowMinimum inhibitory concentration (MIC)重 症 グラム 陰 性 桿 菌 感 染 症 に 対 して( 抗 菌 薬 組 織 濃 度 がMIC 以 上 である 時 間 )• ペニシリン 系 、セフェム 系 : 投 与 間 隔 の70% 以 上• カルバペネム 系 : 投 与 間 隔 の40-50% 以 上であることが 望 ましい。セフェム・ペニシリンモノバクタム.T1/2投 与 時 間Time inside mutant selection window (TMSW)時 間(μg/mL)35メロペネムの 投 与 量 ・ 投 与 回 数 の 違 いによる%T>MICの 変 化1.0g x 230 (%T>MIC=28%)252015105小 松 方 ほか: 臨 床 と 微 生 物 31( 増 ) 623-630, 630, 2004より 一 部 改 変0.5g x 4(%T>MIC=44%)MIC 2μg/mL00 12 24(hr)Conc.(µg/mL)CCo onc.(µg/mL)Con nc.(µg/mL)TAZ/PIPCの 血 中 濃 度 シミュレーションとTime above MIC100010010101 0.10.010 6 12 18 24Time(hr)100010010101 0.11 日 2 回 投 与投 与 回 数 の 影 響1 日 3 回 投 与0.010 6 12 18 24Time(hr)10001001010.11 日 4 回 投 与0.010 6 12 18 24Time(hr)MIC(TAZ/PIPC:1 回 4.5g 投 与 0.5 時 間 点 滴 )投 与 回 数2 回 3 回 4 回64 µg/mL 20.8% 31.4% 42.5%32 µg/mL 30.2% 45.3% 61.2%16 µg/mL 39.3% 3% 59.0% 79.4%8 µg/mL 48.2% 72.4% 97.3%4 µg/mL 57.2% 85.9% 99.8%1 µg/mL 74.9% 99.9% 99.8%承 認 時 資 料重 症 感 染 症 に 対 する 適 切 な治 療 法 のポイントペニシリン 系 ( 半 減 期 約 1 時 間 )は4-6 6 時 間 毎( 例 ) 腹 腔 内 膿 瘍 + 敗 血 症 に 対 してPiperacillin/tazobactam 2.5g 6 時 間 毎⇒4.5g 8 時 間 毎セフェム 系 は6-8 8 時 間 毎( 例 ) 緑 膿 菌 敗 血 症 に 対 してCefepeme 1g 8 時 間 毎( 例 外 :Ceftriaxone 1-2g 24 時 間 毎 )カルバペネム 系 はMeropenemは0.5g12 時 間 毎 (1g/ 日 )よりも05g6 0.5g6 時 間 毎 (2g/ 日 )の 方 が 有 効 性 が 高 い。耐 性 菌 も 出 現 しにくい。重 症 感 染 症 に 対 する 適 切 な治 療 法 のポイント3) 殺 菌 的 抗 菌 薬 を 必 要 により 併 用 して、 大 量 に 投与 する。アミノグリコシド、ニューキノロンは 濃 度 依 存 性 殺菌 効 果 があるので、1 1 回 投 与 量 を 多 くして12-24時 間 に1 回 投 与 する。( 例 1)Gentamicin,Tobramycinは120-180mgを24 時 間 に1 回 30 分 で 点 滴 静 注 する。( 例 2)Levofloxacinは400-500mgを24 i 時 間 に1 回 投 与 する。重 症 感 染 症 に 対 する 適 切 な治 療 法 のポイント4) 起 因 菌 検 出 後 はその 菌 による 感 染 に 対 して 適 切 な 抗 菌薬 を 投 与 する。可 能 であればより 境 域 スペクトラムの 抗 菌 薬 に 変 更する。( 例 1)β 溶 連 菌 にはPenicillinGまたはAmpicillinをilli i illi 投 与 する。( 例 2) 緑 膿 菌 による 重 症 感 染 症 ( 敗 血 症 )にはCeftazidime(1g8 時 間 毎 )+TobramycinCefepime(1g8 時 間 毎 )+TobramycinPiperacillin(2g6 時 間 毎 )+Tobramyciny( 併 用 により 相 乗 的 殺 菌 効 果 と 耐 性 獲 得 を 抑 える 効 果 )抗 菌 薬 の 不 適 切 な 投 与 の 実 例( 症 例 )50 歳 男 性糖 尿 病 あり。3 日 前 からの 腰 背 部 痛 と 発 熱 を 主 訴 に 某 病 院 に 入 院 した。診 断 不 明 のままABPCの 投 与 が 開 始 された。 症 状 は 悪 化 し入 院 4 日 目 に 悪 寒 を 伴 う 発 熱 があり、さらに 呼 吸 困 難 と血 圧 低 下 が 出 現 し、ICUに 収 容 された。この 時 初 めて 血 液 培 養 検 査 が 行 われて、Staphylococcus aureus(MSSA)が 陽 性 であった。MSSAによる 第 4 腰 椎 の 骨 髄 炎 、 左 腸 腰 筋 膿 瘍 、および 敗血 症 性 ショック、ARDSと 診 断 された、Imipenem 投 与 などが 行 われたが 回 復 せず 死 亡 した。


化 膿 性 脊 椎 骨 骨 髄 炎 の 起 因 菌・ 黄 色 ブドウ 球 菌 60%・ 腸 内 細 菌 科 28%・ 連 鎖 球 菌8%・ 表 皮 ブドウ 球 菌 3%・ 緑 膿 菌


( 症 例 )55 歳 女 性 カナダ 人( 既 往 歴 ) 特 記 事 項 なし( 現 病 歴 )97 年 10 月 22 日 旅 行 者 として 来 日 。 感 冒 症状 あり。10 月 27 日 右 耳 の 痛 みと 耳 漏 が 出 現 し近 医 で 中 耳 炎 といわれ、 抗 菌 薬 が 処 方 された。10 月 28 日 朝 ホテルの 自 室 でうずくまって 意 識 障 害の 状 態 で 夫 に 発 見 され 当 院 に 緊 急 入 院 した。来 院 時 、 意 識 :JCSⅢ-200、 体 温 38.7℃、 、 脈 拍 120/ 分呼 吸 数 30/ 分 、 血 圧 80/, 四 肢 末 梢 : 紫 色 に 色 調 変 化項 部 硬 直 あり、 髄 液 : 細 胞 数 6848/cmm(PMN6048,Lym672,Mo128) Glucose 28mg/dl,protein141mg/dl髄 液 グラム 染 色 :グラム 陽 性 双 球 菌 多 数 あり。( 症 例 )55 歳 女 性 カナダ 人( 入 院 後 経 過 )肺 炎 球 菌 による 急 性 細 菌 性 髄 膜 炎 、 中 耳 炎 、重 症 敗 血 症 と 診 断 し、Empiric therapyとしてABPC12g/ 日 分 6、Ceftriaxone4g/ 日 分 2、Vancomycin2g/ 日 分 2、RFP600mg/ 日 分 2の 投 与を 開 始 した。E-testの 結 果 、 肺 炎 球 菌 のPCGのMIC 値 :0.03μg/dlで 感 受 性 良 好 であった。第 4 病 日 からABPC12g/ 日 分 6 単 独 投 与 に 変 更 し、計 14 日 間 の 抗 菌 薬 治 療 を 行 い、 髄 膜 炎 、 中 耳 炎 、敗 血 症 は 治 癒 した。( 症 例 )74 歳 女 性( 現 病 歴 )98 年 6 月 8 日 より 悪 心 、 嘔 吐 あり6 月 10 日 発 熱 、 意 識 障 害 あり、 当 院 に 入 院 。髄 液 よりグラム 陽 性 双 球 菌 が 認 められ、肺 炎 球 菌 による 細 菌 性 髄 膜 炎 と 診 断 して、Ceftriaxone 4g/ 日 分 2+ABPC 12g/ 日 分 6の 投 与 を 開 始 した。( 入 院 後 経 過 )髄 液 および 血 液 培 養 で 肺 炎 球 菌 が 検 出 され、Eテストを 用 いて 測 定 。PCGのMICは1.0μg/ml、CTXのMICは1.0μg/mlでいずれも 中 等 度 耐 性 であった。IPMのMICは0.125μg/mlで 境 界 域 感 受 性 、VCMのMICは0.25μg/mlで 感 受 性 であった。第 4 病 日 よりABPCを 中 止 し、Ceftriaxoneに Cfti加 えてVancomycin 1.5g/ 日 分 3およびRFP600mg/ 日 分 2の 併 用 投 与 を 開 始 した。計 約 2 週 間 の 抗 菌 剤 治 療 にて 治 癒 した。( 症 例 ) 29 歳 女 性 ( 日 本 在 住 マレーシア 人 )( 主 訴 ) 呼 吸 困 難 、 発 熱( 既 往 歴 )26 歳 時 心 雑 音 より 心 臓 弁 膜 症 を 指 摘 されるも 放 置( 家 族 歴 ) 特 記 事 項 なし( 嗜 好 ) 特 記 事 項 なし( 現 病 歴 ) 平 成 12 年 7 月 に 歯 科 治 療 を 受 けた( 抗 菌 薬 使 用 なし)。10 月 上 旬 から37℃ 台 の 発 熱 と 全 身 倦 怠 感 が 出 現 。11 月 上 旬 より38℃ 台 の 発 熱 と 乾 性 咳 噭 が 出 現 。近 医 にて 抗 菌 薬 をされるも 軽 快 せず、労 作 時 呼 吸 困 難 も 出 現 したために11 月 15 日当 院 内 科 外 科 受 診 。11 月 24 日 に 入 院 。( 入 院 時 現 症 )身 長 169cm 体 重 52.8kg 血 圧 94/56mmHg体 温 38.0℃ 脈 拍 112/ 分 呼 吸 数 30/ 分意 識 清 明 。結 膜 に 貧 血 ・ 黄 染 なし。 眼 底 : 異 常 なし。咽 頭 発 赤 なし。 表 在 リンパ 節 触 知 せず。呼 吸 音 : 正 常 。心 音 :Ⅲ 音 (+)、 心 尖 部 に 汎 収 縮 期 雑 音(LevineⅣ/Ⅵ)あり。腹 部 : 異 常 なし。皮 膚 : 出 血 斑 、 結 節 等 なし。神 経 学 的 に 異 常 なし。入 院 時 血 液 培 養 ・ 感 受 性 結 果(4セット 中 4セットで 陽 性 )❑ Peptostreptococcus asaccharolyticus❑ 感 受 性PCG: S ABPC: SCMZ: S CLDM: SIPM/CS : S* S:Sensitive


( 症 例 ) 81 歳 女 性( 主 訴 ) 発 熱 、 両 上 肢 疼 痛( 既 往 歴 ) 胆 石 、1996 年 :TIA( 常 用 薬 ) 小 児 用 バファリン(81)1T 1×、ニバジール(2)1T 1×( 現 病 歴 ) 2000 年 10 月 12 日 より、 感 冒 様 症 状 出 現 。10 月 27 日 から38℃ 台 の 発 熱 、 食 欲 低 下 あり、 夜 には 少 量 の 嘔 吐 を 認 めた。その 後 両 上 肢 、 特 に 右 手 背の 疼 痛 が 出 現 、また 歩 行 困 難 となったため、10 月 30日 、 救 急 車 にて 来 院 し、 精 査 加 療 のために 当 科 入 院となった。( 入 院 時 身 体 所 見 )意 識 : 清 明 、 体 温 :38.3 度血 圧 :78/50mmHg、 脈 拍 :119/ 分 、 呼 吸 数 :28/ 分眼 瞼 結 膜 : 貧 血 ・ 黄 疸 なし咽 頭 : 発 赤 あり、 口 唇 : 紫 斑 あり、 頚 部 リンパ 節 : 腫 張 なし肺 : 呼 吸 音 左 右 差 なし、Cracklesなし、 喘 鳴 なし心 音 : 整 、Ⅰ→Ⅱ→Ⅲ(-)Ⅳ(-)、 心 雑 音 なし腹 部 : 平 坦 ・ 軟 、 腸 蠕 動 亢 進 なし、 圧 痛 なし四 肢 : 右 手 背 から 前 腕 、 右 上 腕 に 発 赤 ・ 腫 張 ・ 圧 痛 あり右 前 脛 骨 部 ・ 左 膝 蓋 部 に 紫 斑 あり、左 膝 関 節 腫 張 ・ 圧 痛 あり、 足 背 動 脈 触 知 不 良入 院 時 検 査 所 見CBC Coagulation Chemistry Ui UrineWBC 44100/μl PT 15.3 sec BUN 43.8mg/dl SG 1.023Stab 13.2% PT-INR 1.58 Cre 2.1mg/dl Pro (3+)Seg 75.6% APTT 29.9 sec Alb 3.2g/dl Glu (2+)Ly 2.8% Fib 873.8mg/dl AST 262 IU/l OB (3+)Mo 2.0% FDP 78.1μg/ml ALT 98 IU/l WBC (-)AL 0.4% LDH 19041 IU/l U-SedimentsHb 14.9g/dl CPK 9195 IU/l RBC 1-4/ 視 野Hct 43.8% T-Bil 1.1mg/dl WBC 5-9/ 視 野Plt 212×10 4 /μl Na 124mEq/dl CAST (+)K 4.8mEq/l Bacteria (±)CRP 52.7mg/dl本 症 例 のまとめ先 行 する 上 気 道 炎 症 状 、 腎 機 能 障 害 、 肝 機 能 障 害 、また 両 上 肢 の 疼 痛 伴 った 敗 血 症 性 ショックから、劇 症 A 群 連 鎖 球 菌 感 染 症 と 考 え、 早 期 よりABPC大 量 (2g4 時 間 毎 )とCLDM(600mg8 時 間 毎 )の 併 用 投 与 を行 った。第 2 病 日 には 血 液 培 養 で 連 鎖 球 菌 を 認 め、 両 上 肢の 壊 死 性 筋 膜 炎 を 疑 い、 緊 急 外 科 的 治 療 を 施 行 した。第 3 病 日 には 培 養 はSt.pyogenesと 同 定 され、定 義 を 満 たす 劇 症 A 群 連 鎖 球 菌 感 染 症 と 確 定 診 断 した。6 週 間 の 静 注 抗 菌 薬 投 与 を 行 い、 治 癒 した。本 症 例 は 早 期 診 断 、 早 期 外 科 的 治 療 により 良 好 な 経過 を 得 ることができた。( 症 例 )76 歳 男 性( 主 訴 ) 発 熱 、 咳 、 全 身 倦 怠 感( 既 往 歴 ) 特 記 事 項 なし( 既 往 歴 ) 特 記 事 項 なし( 現 病 歴 )4 日 前 からの 発 熱 38℃ 台 、 全 身 倦 怠 感 、右 背 部 違 和 感 咳 あり 当 院 受 診右 背 部 違 和 感 、 咳 あり、 当 院 受 診 。右 背 部 に 軽 度 crepitant ralesを 聴 取 。SaO2 93%, 胸 部 XPで 右 上 葉 全 体 に 浸 潤 影 あり。肺 炎 の 診 断 で 入 院 した。肺 炎 の 診 断 で 入 院 した。WBC11000, CRP30.1mg/dl


( 症 例 )76 歳 男 性( 経 過 )初 期 治 療 としてユナシン1.5g 静 注 6 時 間 毎 を 投与 した。 外 来 での 血 液 培 養 で 肺 炎 球 菌 (PCN 感受 性 )が 陽 性 であった。 入 院 2 日 目 からABPC2g静 注 6 時 間 毎 の 投 与 に 変 更 した。その 後 順 調に 経 過 し、8 日 目 からABPC1g6 時 間 毎 に 減 量 し、 計 10 日間 静 注 抗 菌 薬 を 投 与 した。その 後 アモキシシリン1.5g/ 日 分 3 経 口 投 与 に 変更 して 退 院 した。2 週 間 の 抗 菌 薬 内 服 投 与 を 続けて 肺 炎 は 治 癒 した。肺 炎 の 症 例( 症 例 ) 61 歳 男 性 IS I.S.( 主 訴 ) 呼 吸 困 難 、 咳 、 発 熱( 既 往 歴 )アルコール 性 肝 障 害( 現 病 歴 ) 入 院 の3 日 前 から 咽 頭 痛 、 乾 性 咳 、発 熱 あり。 入 院 前 日 夜 から 進 行 性 の 呼 吸 困難 あり。1998 年 3 月 25 日 当 院 へ 救 急 車 で 搬 送 された。( 入 院 時 現 症 )意 識 明 瞭 、 血 圧 60/ 、 心 拍 数 120/ 分 、呼 吸 数 32/ 分 、 咽 頭 発 赤 あり、肺 野 : 両 側 肺 野 下 部 にcrepitant ralesあり(Rt>Lt)腹 部 : 異 常 なし四 肢 : 異 常 なし重 症 院 外 肺 炎 には、 第 3 世 代 セフェムにマクロライドを 併 用 せよ!重 症 院 外 肺 炎 の 初 期 治 療CefotaximeまたはCeftriaxone(またはAmpicllin/sulbactam)+Erythromycin(またはErythromycinの 代 わりにMinocyclineCiprofloxacin)・Clindamycinを 加 える 場 合 もある(Ampicllin/sulbactamを 使 う 場合 は 不 要 )Pseudomonas aeruginosaもカバーする 場 合 、 上 記 のCefotaximeの 代 わりにCefepime( 細 菌 学 的 検 査 所 見 )血 液 培 養 : Streptococcus pneumoniae感 受 性 PCG:S (MIC 0.016) 016)痰 培 養 : Streptococcus pneumoniae 2+H. influenzae 2+( 感 受 性 R:ABPC,CTM, CTM SCTX) S:CTX)S. aureus +( 入 院 後 経 過 )入 院 時 、 両 側 性 肺 炎 、 敗 血 症 性 ショックと 診断 し、 初 期 治 療 としてCefotaxime 1g 6 時 間 毎 (4g/ 日 )+Erythromycin 0.5g 6 時 間 毎 (2g/ 日 )+Rifampicin0.45g/ 日 を 併 用 した。起 因 菌 判 明 が 肺 炎 球 菌 と 判 明 後 、Cefotaximeのみを継 続 し、 計 3 週 間 投 与 した。その 後 さらに 経 口 Cefotiam600mg/ 日 分 3を1 週 間 投 与 して、 軽 快 退 院 した。( 症 例 )59 歳 男 性肺 炎 の 症 例( 主 訴 ) 呼 吸 困 難(プロフィール) 沖 縄 出 身 、 出 稼 ぎで5 年 前 単 身 上 京 、清 掃 業( 嗜 好 )タバコ20-30 本 / 日 、 飲 酒 なし( 既 往 歴 )53 歳 : 胆 石 で 胆 嚢 摘 出( 現 病 歴 ) 入 院 4 日 前 の1999 年 4 月 4 日 朝 から 全 身 倦怠 感 、 食 欲 低 下 、 発 熱 あり。 仕 事 を 休 み 自 宅 療 養 していた。4 月 8 日 朝 トイレに 立 った 際 に 強 い 呼 吸 困 難 と悪 寒 があった。 当 院 に 救 急 車 で 搬 送 された。 救 急 車内 で 酸 素 リザーバー 下 でSaO2:93%であった。


( 入 院 時 現 症 )意 識 清 明 、 血 圧 116/72,体 温 39.6℃、 脈 拍 100/ 分 、 呼 吸 数 30/ 分 、眼 球 結 膜 充 血 あり、 黄 疸 なし、 咽 頭 発 赤 あり肺 野 : 右 肺 野 全 体 に 湿 性 ラ 音 あり、心 音 ;Ⅱ/Ⅵ 収 縮 期 駆 出 性 雑 音 あり、腹 部 : 右 肋 弓 下 で 肝 を2 横 指 触 知 、四 肢 浮 腫 なし( 入 院 時 検 査 所 見 )WBC16600/μl(Meta1.5、St15.5、Seg65、Ly14.5、Mo3.5)、Hb13.8g/dl,Ht39.2%、 Plat192000、CRP26.4mg/dl, Fib742.2mg/dl, FDP21μ/dlCreat1.7mg/dl, BUN34.7mg/dl, T.P.7.7g/dl,Alb3.6g/dl, AST919IU/L, ALT305IU/L,CPK 63280IU/L, CPKMB 378mg/dl,Na125mEq/dl, K4.1mEq/dl, Cl90mEq/dl,Ca8.9mEq/L P5.3mEq/L, BS120mg/dl,HbA1c 5.9mg/dl, HBsAg-、 HCV-、HTLVーⅠ+、 VDRL-尿 : 蛋 白 1+、 糖 -、 沈 査 :RBC: 多 数 、WBC-血 液 ガス PH7.356,PaCO2:27.5,PaO2:84.1、B.E.-7.9、HCO3:15.4 ( 酸 素 リザーバマスク10L)( 入 院 後 検 査 所 見 )• 血 液 培 養 : 陰 性• 痰 培 養 : 陰 性• Legionella pneumophila 血 清 抗 体(4 月 9 日 )×64、 (4 月 21 日 ) ×256Chlamydia pneumoniae 血 清 抗 体(4 月 9 日 ) IgA: 0.891 (4 月 21 日 )IgA :1.726IgG: 1.408 IgG: 2.681( 入 院 後 経 過 )入 院 後 、 重 症 肺 炎 に 対 する 初 期 治 療 としてCeftriaxone2g/ 日 分 Ⅰ、Erythromycin2g/ 日 分 4、Rifampicin450mg/ 日 ( 初 期 3 日 間 )の 併 用 投 与 を開 始 した。上 記 の 結 果 からレジオネラ 肺 炎 と 診 断 して、(Chlamydia pneumoniaeは は 混 合 感 染 の 疑 い)Erythromycinのみ2 週 間 継 続 した。その 後Clarithromycin800mg/ 日 分 2 内 服 としたが、 薬剤 アレルギーのためMinocycliney0.2g/ 日 分 2 内服 に 変 更 して 計 4 週 間 の 抗 菌 薬 治 療 にて 軽 快 、退 院 。


◎ 重 症 感 染 症 では 迅 速 な 塗 抹 培 養 検 査 と 感 受 性検 査 の 実 施 と 臨 床 医 への 結 果 報 告 が 重 要院 内 発 症 重 症 感 染 の 症 例( 症 例 )69 歳 男 性( 現 病 歴 )1 月 1 日 に 交 通 事 故 で 左 上 下 肢 多発 骨 折 で 近 医 入 院 。1 月 9 日 当 院 に 転 入 院 し、1 月 11 日 、 上 、 下 肢 の手 術 を 受 けた。1 月 12 日 に 高 熱 が 出 現 し、さらに 血 圧 低 下 し、腎 盂 腎 炎 による 敗 血 症 性 ショックと 診 断 した。尿 のグラム 染 色 でグラム 陰 性 桿 菌 が 認 められた。腎 盂 腎 炎 は、 院 外 発 症 では 大 腸 菌 、 院 内 発 症ではクレブシェラ、 緑 膿 菌 、 腸 球 菌 を 疑 え!腎 盂 腎 炎 (Pyelonephritis)・ 腎 膿 瘍 (renalabscess)1、 院 外 感 染 (Community acquired)E.coliKlebsiellaProteus mirabillisEnterococcus 等2、 院 内 感 染 (Hospital acquired)E.coliKlebsiellaProteus vulgarisEnterobacterSerratiaPseudomonas aeruginosaEnterococcusMRSA・Pseudomonous aeruginosaの 疑 われる 場 合→Plperacillin+Tobramycin→Ceftazidime+ Tobramycin→Cefepime±Tobramycin・MRSAの 疑 われる 場 合→ 上 記 +Vancomycin・Enterococcusの 疑 われる 場 合→Ampicillin+Gentamicin( 治 療 経 過 )Empiric therapyとしてCefepemeとTobramycinp yを 併 用 投 与 した。血 液 および 尿 培 養 の 結 果1 月 15 日 にPseudomonas aeruginosaが 陽 性 と判 明 した。S: Ceftazidime,Cefepeme,TobramycinPiperacillin、Levofloxacinilli iCefepemeを2 週 間 (Tobramycinを7 日 間 ) 投 与 し、さらにLevofloxacinを1 週 間 投 与 して 治 癒 した。症 例 71 歳 男 性病 歴 : HCVによる 原 発 性 肝 癌 に 対 してTAEを 施 行 し 退 院 した。施 行 後 8 日 目 から 発 熱 があり、 再 入 院 。膿 培 養 と 血 液 培 養 よりEnterobacter aerogenes およびE.coli が 検 出 された(いずれもPIPC 感 受 性 )。 肝 膿 瘍 および敗 血 症 と 診 断 した。治 療 : 上 記 分 離 菌 および 嫌 気 性 菌 などを 含 む 複 数 菌 混 合 感 染 と 考えた。 PIPC/TAZ 2.5gを6 時 間 ごと(10g/ 日 )を 投 与 した。エコーガイド 下 で 膿 瘍 にカテーテルを 挿 入 し、 膿 瘍 ドレナージを施 行 した。その 後 解 熱 し、 順 調 に 経 過 した。症 例 75 歳 男 性( 現 病 歴 ): 骨 髄 異 型 症 候 群 から 急 性 骨 髄 性 白 血 病 となり、 化 学 療 法を 施 行 。 好 中 球 減 少 WBC400( 好 中 球 数 0)となり、 発 熱 。Cefepime3g/ 日 を 投 与 し、その 後 Vancomycin、さらにMicafunginを 追 加 投 与 。 発 熱 は 継 続 し、 下 痢 と 左 下 腹 部 に自 発 痛 、 圧 痛 が 見 られ、 CTにて 大 腸 憩 室 炎 と 診 断 。CefepimeとVancomycinを 中 止 し、PIPC/TAZ 2.5g 6 時 間 ごと(10g/ 日 )に 変 更 。 変 更 後 、 良 好 な 反 応 が 見 られ、PIPC/TAZのみ14 日 間 投 与 した。WBCも 回 復 し 大 腸 憩 室 炎 は 軽 快 して、 退 院 。多 剤 耐 性 グラム 陰 性 桿 菌 感 染の 症 例( 症 例 ) 67 歳 男 性( 既 往 歴 )2000 年 悪 性 リンパ 腫 (NHL,StageⅡB)CHOP6コース+ 放 射 線 治 療 で 寛 解( 現 病 歴 )2004 年 MDSと 診 断 。2007 年 4 月 overtLeukemia:AML 発 症 . 化 学 療 法 で 寛 解 したが、6 月 11 日 AML 再 発 で 入 院 。 化 学 療 法 2コース 施行 。 経 過 中 に 肺 炎 、 尿 路 感 染 、 敗 血 症 、 直 腸 潰 瘍心 不 全 、 腎 不 全 を 合 併 したが 軽 快 。8 月 20 日 末 梢 血 WBC56300, 芽 球 15.5%、 好 中 球39.5%。 排 便 困 難 あり、 摘 便 施 行 し、3 時 間 後 に血 圧 低 下 (60/), 体 温 36℃、 意 識 レベル 低 下 あり。


( 症 例 ) 67 歳 男 性敗 血 症 性 ショックと 診 断 し、 血 液 培 養 採 血 後 、直 ちにMeropenem0.5g6 時 間 毎 とVancomycin0.5g12 時 間 毎 を 開 始 した。 血 液 培 養 でKlebsiellapneumoniae(ESBL、 感 受 性 :MEPM,AMK,CFPM, 耐 性 :CAZ,CPFX)が 陽 性 であった。直 腸 周 囲 炎 由 来 と 考 えた。Meropenemのみを2 週 間 継 続 し、 治 癒 した。( 症 例 )9 歳 男 子( 現 病 歴 )96 年 3 月 に 発 症 して 入 院 した 悪 性 リンパ 腫 の患 者 。化 学 療 法 施 行 された。 肛 門 周 囲 感 染 あり、96 年 10 月5 日 、10 月 16 日 、10 月 22 日 の 血 液 培 養 でKlebsiellapneumoniaeが が 繰 り 返 し 検 出 された。今 回 3 週 間 前 から 発 熱 あり、CeftazidimeとGentamicinが 投 与 されていた。10 月 28 日 高 熱 と 頭 痛 、 意 識 障 害が 出 現 し、 髄 液 検 査 で 髄 膜 炎 と 診 断 され、グラム 染 色でグラム 陰 性 桿 菌 が 検 出 された。( 培 養 および 薬 剤 感 受 性 検 査 結 果 )96.10/5 血 液 Klebsiella pneumoniaeS: CTM CTX CAZ IPM GM TOB AMK OFLXI: PIPCR: ST10/16、10/22 、 / 血 液 Klebsiella pneumoniaeS: GM AMK OFLXI: IPMR: CTZ CAZ TOB PIPC ST10/28 血 液 、 髄 液 Klebsiella pneumoniaeS: GM AMK OFLXR: CAZ IPM TOB ST PIPC( 治 療 経 過 )多 剤 耐 性 Klebsiella pneumoniaeによる 髄 膜 炎 、および 敗 血 症 と 診 断 し、10 月 28 日 よりImipenemとAmikacinとLevofloxacinを 投 与 した。感 受 性 検 査 結 果 よりImipenemは i 中 止 し、Amikacinと Levofloxacin( 途 中 よりCiprofloxacin)を 約 3 週 間 投 与 し、治 癒 した。( 症 例 ) 44 歳 女 性( 現 病 歴 )慢 性 腎 不 全 で 血 液 透 析 を 受 けていた 患 者 が腎 移 植 手 術 を 受 けた。その 後 に 腹 部 手 術 創 部 に 壊 死性 筋 膜 炎 を 合 併 し、Cefotamime,Clindamycin,Tobramycinその 後 Ticarcillin/clavulanateなど illi l l 多 剤 抗 菌 剤 投 与 をうけていた。 重 症 の 壊 死 性 肺 炎 、ARDSを 合 併 してICUで 人 工 呼 吸 器 管 理 を 受 けた。( 現 病 歴 続 き)痰 からPseudomonas aeruginosaが 検 出 され、感 受 性 はすべてのβラクタム 剤 とアミノグリコシドに 耐 性 となった。唯 一 感 受 性 があったのはCiprofloxacinであり、Ciprofloxacinの 静 注 投 与 により 重 症 肺 炎 は軽 快 した。感 染 症 を 繰 り 返 す 患 者 に 対 する治 療 のポイント1. 全 ての 系 統 の 抗 菌 薬 を 安 易 に 使 用 すると、全 てに 耐 性 獲 得 するグラム 陰 性 桿 菌 などが出 現 しうる。2. 重 要 な 起 因 菌 に 対 して 有 効 な 抗 菌 薬 を 温 存 しておく。そして 重 症 となった 場 合 に 切 り 札 的 な、救 命 的 な 抗 菌 薬 として 使 用 する。3.そのような 救 命 的 に 使 用 すべき 抗 菌 薬 としてカルバペネム、Cefepeme、 Ciprofloxacin、Piperacillin/tazobactamなどがあげられる。( 症 例 )23 歳 女 性 、K.A. KA( 主 訴 ) 腹 痛 、 発 熱( 既 往 歴 )2004 年 7 月 虫 垂 炎 穿 孔 性 腹 膜 炎 で 手 術 。2007 年 1 月 腹 膜 炎 でA 医 大 病 院 入 院 治 療 。( 現 病 歴 )2007 年 9 月 23 日 右 下 腹 部 痛 あり、B 大 学病 院 婦 人 科 に 入 院 。10 月 17 日 腹 膜 炎 の 診 断 で同 病 院 外 科 で 盲 腸 周 囲 膿 瘍 、 右 卵 巣 膿 瘍 で 手術 。10 月 19 日 再 手 術 。 回 腸 末 端 部 穿 孔 性 腹 膜 炎あり、 回 盲 部 切 除 、 人 工 肛 門 増 設 した。 発 熱 , 腹痛 が 持 続 するため10 月 25 日 当 院 外 科 に 転 入 院 した。


( 症 例 )23 歳 女 性 、K.A.( 入 院 後 経 過 ) 広 範 な 腹 腔 内 膿 瘍 、ダグラス 窩 膿瘍 、 腹 部 創 部 感 染 と 診 断 した。 膿 の 培 養 結 果Enterococcus gallinarum(VanC: VCMのMIC:6),Enterococcus avium(ABPCの MIC:4, VCMのMIC:1 以 下 )Bacteroides sp, Anaerobic GPRが 検 出 された。( 症 例 )23 歳 女 性 、K.A. KA( 入 院 後 経 過 ) 入 院 後 腹 腔 内 膿 瘍 、ダグラス 窩 膿 瘍に 対 してCTガイド 下 ドレナージを 行 い、 抗 菌 薬Piperacillin/tazobactam2.5g6 時 間 毎 を 開 始 した。(10 月 25 日 ー12 月 26 日 )またVancomycin0.5g8 時 間毎 (10 月 27-10 月 30 日 で 中 止 )、その 後Linezolid600mg12 時 間 毎 (10 月 30 日 ー11 月 24 日 )を 併 用 し、 経 過 良 好 であった。 貧 血 Hb6.8が 見 られたので、Linezolidを 中 止 し、 代 わりにTeicoplanin400m/ 日 を11 月 29 日 から12 月 26 日 まで投 与 した。 感 染 は 軽 快 し12 月 28 日 退 院 した。血 管 内 カテーテル 感 染( 症 例 )52 歳 女 性( 既 往 歴 ) 特 記 事 項 なし( 現 病 歴 )97 年 7 月 25 日 腹 痛 あり。7 月 26 日 某 病院 に 入 院 。 腸 閉 塞 の 診 断 で 高 カロリー 輸 液 にて保 存 的 治 療 。 鼠 径 部 より 血 管 内 留 置 カテーテルを 挿 入 。8 月 11 日 開 腹 手 術 。 小 腸 虚 血 部 部 分 切除 、 端 端 吻 合 。 術 後 、 敗 血 症 と 多 臓 器 不 全 にて8 月 20 日 当 院 に 転 入 院 し、 開 腹 手 術 施 行 。 吻 合部 離 開 と 腹 膜 炎 があった。 転 入 院 時 の 血 液 培 養と 腹 水 培 養 でCandida albicansが 検 出 された。 抜管 後 、 視 力 障 害 あり。9 月 4 日 両 側 性 カンジダ 性眼 内 炎 と 診 断 。 抗 真 菌 薬 で 治 まらず、10 月 15日 、10 月 24 日 両 眼 の 硝 子 体 切 除 手 術 を 施 行 。12 月 27 日 軽 快 退 院 。前 医 での 問 題 点• 大 腿 静 脈 部 から 挿 入 し、1 週 間 以 上 留 置する 中 心 静 脈 カテーテルは 感 染 のリスクが高 いことを 認 識 しなかった!• 血 液 培 養 検 査 を 行 っていなかった!• カンジダ 血 症 で 眼 内 炎 を 起 こすリスクが 高いことを 認 識 しなかった!カンジダ 血 症 に 対 する 初 期 治 療• 血 液 培 養 でカンジダが 陽 性 の 場 合1. 血 管 内 カテーテル テル 挿 入 者 はカテーテルを テルを 抜 去 する。先 端 部 培 養 検 査2. 抗 真 菌 薬 を 全 例 に 投 与 する。1Micafungin 150-300mg/ 日2AmphotericinB i 0.5-0.7mg/kg/ 0 / 日( 血 圧 低 下 など 重 症 例 に 推 奨 : 初 日 半 量 、2 日 目 全 量 )3Fluconazole 400-800mg/ 日(Fluconazole 耐 性 菌 が 少 ない 医 療 施 設 において)3. 全 例 眼 科 医 に 眼 底 検 査 を 依 頼 する。( 症 例 )Y.M.52 歳 女 性( 主 訴 ) 悪 寒 、 発 熱 、 腰 部 痛( 既 往 歴 )1991 年 : 子 宮 筋 腫 、 尿 管 結 石( 現 病 歴 )2003 年 右 乳 腺 腫 瘤 自 覚 。2005 年 4 月 A 医 大 受 診 。 乳 癌 、 胸 膜 浸 潤 あり、5 月 から 化 学 療 法 、 放 射 線 治 療 を 施 行 。2005 年 11 月 より 当 院 乳 腺 外 科 紹 介 受 診 し、CVportを留 置 。 化 学 療 法 を 施 行 。(2007 年 10 月 29 日 まで)2007 年 9 月 頃 から38℃ 発 熱 を 自 覚 。11 月 初 旬LVFX 処 方 された。11 月 13 日 右 腰 部 痛 出 現 。10 月 22 日胸 部 CTで 多 発 結 節 陰 影 あり。11 月 14 日 の 血 液 培 養でグラム 陽 性 球 菌 が 陽 性 となり、 精 査 治 療 目 的 で11 月15 日 感 染 症 科 に 入 院 した。2007 年 11 月 14 日


2007 年 10 月 22 日( 入 院 後 経 過 ) 胸 部 CVportの 部 位 の 皮 膚 発 赤を認 め、CVport 感 染 と 診 断 し、 抜 去 した。血 液 培 養 2セットからMRSAが 検 出 された。多 発 塞 栓 性 肺 炎 、 右 傍 脊 椎 筋 感 染 と 診 断 した。経 食 道 心 エコーではvegetationは 認 めなかった。11 月 15 日 からVancomycin1g12 時 間 毎+RFP600mg/ 日 を 併 用 した。RFPは 薬 剤 熱で 中 止 。Vancomycinもアレルギーのため12月 5 日 に 中 止 し、Linezolid600mg12 時 間 毎に 変 更 し、12 月 26 日 まで 計 6 週 間 抗 菌 薬 治 療を 行 った。CTで 肺 野 陰 影 は 消 失 し、 症 状 は 軽快 して12 月 26 日 退 院 した。2007 年 12 月 24 日【 主 訴 】 発 熱症 例 2 22 歳 女 性【 現 病 歴 】 入 院 4 日 前 からの 発 熱 、 頭 痛 、 咽 頭 痛 を 主 訴 に1998 年 7 月 31 日 当 科 に 入 院 。8 月 2 日 急 に 全 身 性 痙 攣 、 意 識 障害 が 出 現 し、ICUに 入 室 した。 人 工 呼 吸 管 理 を 行 い、 右 内 頸 静脈 から 中 心 静 脈 カテーテルを 挿 入 した。 脳 炎 の 診 断 でアシクロビル、セフトリアキソン、グリセオール 等 の 投 与 を 開 始 。8 月 11 日 より3939℃ 台 の 発 熱 が 出 現 した。【 身 体 所 見 】 意 識 状 態Ⅰ‐3、 、 体 温 39.0℃、 、 血 圧 124/58mmHg、脈 拍 数 150/ 分 整 、 呼 吸 数 24/ 分 、右 側 頸 部 中 心 静 脈 カテーテル 挿 入 部 に 発 赤 と 膿 の 付 着 あり、心 音 Ⅲ 音 (+) Ⅳ 音 (+)心 尖 部 にLevineⅡ/Ⅵの 全 収 縮 期 雑 音 あり、四 肢 手 指 ・ 足 趾 に 小 紅 斑 (Janeway spots)あり、下 腿 に 浮 腫 あり。血 算WBC16,700/μlSt 1.0%Seg 87.0RBC 398×104 /μlμHb13.1g/dlPLT 43.5×104 /μl凝 固 系PT-INR 2.20APTT 43.2secFBG 885.5 mg/dlFDP 5.1 μg/ml症 例 2 検 査 所 見 (8 月 11 日 )生 化 学BUNCr 0.33.9mg/dlT-Bil0.4TP 6.4 g/dlAlb 3.7AST31 IU/lALT 45LDH 520GluCRP132 mg/dlCRP 7.9 mg/dlNaK 3.7136mEq/l検 尿蛋 白 (+) 糖 (+)RBC 20/1 視 野 WBC 30/1 視 野髄 液細 胞 数 333/mm 3蛋 白培 養血 液 培 養23mg/dl陰 性糖 82mg/dlMRSA 陽 性 (4セット 中 4セット)( 感 受 性 )VCM:S


入 院(℃)4039383736( /μl )40000tureTempratWBC症 例 2 臨 床 経 過血 液 培 養 MRSA 陽 性ST(6A/ 日 )VCM(1.5g/ 日 )ST(6A/ 日 )RFP(600mgmg/ 日 )ヘパリンCRP(mg/dl)2020000 100’98/7/27 /31 8/2 /11 /14 /17 /22 /27 9/1 /9 /14 /18 /22 10/50考 察1. 近 年 、MRSAによる 血 管 内 カテーテル 感 染 が 増 加し、それに 伴 ってMRSAによる敗 血 症 性 血 栓 性 静脈 炎 や 感 染 性 心 内 膜 炎 、 中 枢 神 経 合 併 症 が 増 加 している。2. MRSAによる 左 心 系 心 内 膜 炎 では 死 亡 率 25-4040%で、 特 に 中 枢 神 経 系 合 併 症 がある 例 では 死 亡 率 が高 い。3. VCMの の 髄 液 や 膿 瘍 などの 感 染 部 位 への 移 行 性 が不 十 分 であるためと 考 えられる。4. ST 合 剤 とRFPはMRSAに 抗 菌 力 が 良 好 で 髄 液 や膿 瘍 への 移 行 性 も 比 較 的 良 好 である。5. VCMでは 治 療 が 不 十 分 な 重 症 MRSA 感 染 症 に 対してST合 剤 とRFPRFPはVCMVCMとの併 用 により 治 療 効 果を 高 める 可 能 性 がある。結 語1. 今 回 、 我 々は 中 心 静 脈 カテーテル 感 染 に 続 発したMRSAMRSAによる 感 染 性 心 内 膜 炎 、 敗 血 症 性脳 塞 栓 を 合 併 した2 症 例 に 対 してバンコマイシンと 組 織 移 行 性 の 良 いST合 剤 静 注 とリファンピシンを 併 用 して 著 効 をみたので 報 告 した。2. 今 後 このようなMRSAによる 重 症 感 染 症 に 対してバンコマイシンに 加 えてST合 剤 静 注 およびリファンピシンを 併 用 する 方 法 の 有 効 性 をさらに 検 討 すべきである。( 症 例 )48 歳 米 国 人 男 性( 既 往 歴 )12 年 前 より 糖 尿 病 、 高 血 圧( 現 病 歴 )1998 年 2 月 8 日 腹 痛 で 長 野 の 病 院 に 入 院 。上 腸 管 膜 動 脈 血 栓 症 の 診 断 で 開 腹 術 を 施 行 。当 院 に 転 院 し、2 月 13 日 再 度 開 腹 術 を 施 行 された。術 後 より 中 心 静 脈 カテーテルを 挿 入 され、 術 後 3 日 目 より 発 熱 を 認 め、 解 熱 傾 向 を 認 めないため 中 心 静 脈 カテーテルを2 月 24 日 抜 去 。2 月 22 日 の 血 液 培 養 よりMRSAを 認 め、2 月 24 日 よりバンコマイシンの 投 与 を 開 始 。バンコマイシン 開 始 後 も 症 状 改 善 を 認 めず、1 週 後 の 血液 培 養 でもMRSAが 陽 性 。さらに3 月 7 日 の 血 液 培 養よりCandida tropicalisが 検 出 されたためフルコナゾールルの 投 与 も 開 始 された。しかし、 血 圧 低 下 、 意 識 混 濁 を 認 め、 急 性 腎 不 全 、 肝 機能 障 害 、 気 胸 、 膿 胸 の 合 併 もあり、ICU 入 室 となった。(ICU 入 室 時 身 体 所 見 )意 識 状 態 JCS1-2血 圧 100/60(DOA10γ 下 ) 体 温 39.0℃脈 拍 116 回 / 分 呼 吸 数 24 回 / 分眼 瞼 結 膜 ; 軽 度 貧 血眼 球 結 膜 ; 黄 染右 頚 部 の 中 心 静 脈 カテーテル テル 抜 去 部 に 発 赤 あり心 音 ; 整 、 雑 音 なし肺 ; 左 側 に 胸 腔 ドレナージチューブ 挿 入呼 吸 音 は 左 でやや 低 下 あり腹 部 ; 術 後 の 創 感 染 による 開 放 創 あり四 肢 ; 軽 度 の 浮 腫(ICU 入 室 時 血 液 検 査 所 見 )WBC 13500/μl CRP 28.1mg/dlHb 8.9g/dlPlt 17.5 万 /μlTP 5.7g/dl NA 138mEq/l 血 液 ガス(O₂3L 下 )Alb 2.3g/dl K 4.3mEq/l pH 7.306BUN 89.4mg/dlCl 97mEq/l PO₂ 78.7mmHg7mmHgCr 7.3mg/dl Glu 295mg/dl PCO₂ 37.2mmHgUA 12.7mg/dl HbA1c 10.3% HCO₃ 18.0mEq/lT-bil 3.2mg/dl PT 14.3sec SatO₂ 93%AST 111 IU/l APTT 39.4secALT 92 IU/l FBG 1050.9mg/dl Protein C 活 性


( 経 過 )ICU 入 室 後 、 中 心 静 脈 カテーテル テル 抜 去 後 の右 頚 部 の 発 赤 部 位 に 対 して 超 音 波 検 査 を施 行 した 結 果 、 内 頚 静 脈 に 血 栓 の 存 在 を 認 め、敗 血 症 性 血 栓 性 静 脈 炎 と 診 断 した。MRSAに 対 してバンコマイシンに 加 え、リファンピシンとST 合 剤 静 注 投 与 を 行 い、 カンジダ 感 染 に 対 してはフルコナゾールからアンホテリシンBに 変 更 した。抗 凝 固 療 法 としヘパリンの 静 注 を 施 行 した。また、 腹 腔 内 感 染 や 感 染 性 心 内 膜 炎 や 眼 内 炎 の 存 在 は否 定 的 であった。 腎 不 全 に 対 しては 血 液 透 析 を 施 行 し、全 身 管 理 を 行 った。やがて 透 析 から 離 脱 し、計 6 週 間 の 抗 菌 薬 投 与 後 、 感 染 は 治 癒 した。( 結 語 )中 心 静 脈 カテーテルの 重 大 な 合 併 症 の 一 つに 敗 血 症性 血 栓 性 静 脈 炎 がある。本 症 例 では 頚 部 超 音 波 検 査 により 診 断 を 行 い、 重 症MRSA 敗 血 症 に 対 してバンコマイシン 単 独 投 与 では 治療 抵 性 であったが、ST 合 剤 、リファンピシンを 加 えた3 剤 併 用 で 著 効 を 示 した。Candida tropicalis 敗 血 症 に 対 してはフルコナゾールには 治 療 抵 抗 性 であったが、アンホテリシンBで で 著 効を 示 した。血 栓 性 静 脈 炎 の 治 療 ではヘパリンによる 抗 凝 固 療 法の 併 用 も 重 要 である。


( 私 が 患 者 さんから 学 んだこと)1、 感 染 症 はいくら 重 症 であっても 適 切 な 抗 菌 薬 治療 により 治 りうる。 最 善 を 尽 くすべきこと。2、 院 内 感 染 を 早 期 に 診 断 し、 早 期 に 適 切 な 治 療を 行 うべきこと。3、 院 内 感 染 をできる 限 り 少 なくすべきこと。4、 抗 菌 薬 の 適 正 使 用 により、 薬 剤 耐 性 菌 をできる限 り 生 じさせないこと。5、 患 者 および 患 者 の 家 族 と 良 好 なコミュニケーションを 持 つべきこと。重 症 感 染 症 患 者 の 適 切 な 治 療のために 必 要 なこと1. 起 因 菌 検 出 ( 血 液 培 養 検 査 など)が 重 要 である。2. 起 因 菌 および 感 染 部 位 に 対 して 適 切 な 抗 菌薬 を 大 量 に 投 与 する。3.βラクタム β 剤 は 大 量 を 投 与 間 隔 を 短 くして投 与 する。4. 医 師 、 薬 剤 師 、 看 護 師 など 全 病 院 スタッフが理 解 と 協 力 をする 必 要 がある。重 症 感 染 症 患 者 の 適 切 な 治 療のために5. 保 険 診 療 、 医 療 費 、 点 滴 薬 を 用 意 し 患 者 に投 与 する 労 力 よりも、 重 症 感 染 症 患 者 の救 命 を 最 優 先 する。6. 重 症 感 染 症 患 者 が 助 かれば、 医 師 、 病 院の 評 価 は 高 まる。

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