n?u=RePEc:eti:rpdpjp:15018&r=int

る.このため,オンライン 上 で 流 通 ・ 取 引 されるデジタル 文 化 的 財 にかかる「 文 化 と 貿 易 」
および 文 化 多 様 性 の 問 題 は 国 境 を 越 えるデータの 流 通 ・ 取 引 に 対 する 規 制 のあり 方 という
問 題 と 重 複 していることを 指 摘 する.
文 化 遺 産 を 保 護 する 政 府 の 権 限 が, 国 際 投 資 保 護 システムによって 侵 食 されることはな
いだろうか. 伊 藤 (2013)は,これまで 投 資 保 護 ルールが 文 化 面 での 政 府 規 制 に 関 してど
のように 適 用 され,いかなる 結 論 が 出 されているのかを 検 討 し, 投 資 保 護 条 約 が 定 める 投
資 保 護 ルールは,あくまでも, 政 府 規 制 が 不 合 理 ないし 恣 意 的 な 形 で 実 施 された 場 合 に,
不 当 な 損 害 を 被 った 企 業 等 を 救 済 するためのものであり, 文 化 財 を 保 護 する 政 府 の 規 制 が
正 当 な 公 益 の 実 現 を 目 的 としており, 合 理 的 な 手 段 を 用 いて 実 施 されている 以 上 は,たと
えそれが 外 国 投 資 に 損 失 を 与 えたとしても, 条 約 違 反 にはならないことを 指 摘 する.
文 化 メディアは, 途 上 国 のみならず 先 進 国 にとってもセンシティブな 分 野 であるため,
貿 易 ・ 投 資 の 自 由 化 が 進 展 していない.このため,WTO や FTA のサービス 自 由 化 交 渉 に
おいて, 特 定 の 産 業 分 野 に 関 連 するサービス 分 野 を 一 括 りの「クラスター」と 位 置 付 け,
その 自 由 化 を 目 指 す「クラスター・アプローチ」という 手 法 が WTO においても 提 案 されて
いる. 国 松 (2013)は,このクラスター・アプローチを 取 り 上 げ,クラスター・アプロー
チには, 既 存 の 国 際 約 束 を 損 なわずに 関 連 するサービスを 自 由 化 できること, 特 定 のビジ
ネス・モデルに 関 連 する 規 制 が 明 らかになり 政 策 立 案 が 容 易 になること, 技 術 革 新 や 民 営
化 , 規 制 緩 和 等 による 産 業 活 動 の 実 態 的 な 変 化 を 折 り 込 むことができることなどの 利 点 が
あることから, 文 化 メディア 分 野 の 貿 易 協 定 交 渉 や, 二 国 間 FTA・ 複 数 国 との FTA(AJCEP,
TPP 等 )におけるサービス 交 渉 や 見 直 し 等 の 作 業 において, 一 括 して 関 連 セクターの 自 由
化 を 目 指 すクラスター・アプローチの 利 用 が 検 討 に 値 することを 指 摘 する.
ユネスコが 2005 年 に 採 択 した「 文 化 多 様 性 条 約 」が 実 際 に 文 化 的 財 の 貿 易 にとって 障 害
となっているか 否 かはエビデンスによって 明 らかにされるべきであろう. 神 事 ・ 田 中 (2013)
は, 文 化 多 様 性 条 約 の 批 准 状 況 と 各 国 の 文 化 的 財 の 輸 出 および 輸 入 との 関 係 を 実 証 分 析 し,
研 究 文 化 多 様 性 条 約 を 批 准 すると「 文 化 コア 財 」の 輸 出 額 が 増 加 する 傾 向 がみられ, 文 化
コア 財 の 輸 入 に 関 しても 文 化 多 様 性 条 約 の 批 准 との 間 に 統 計 的 に 有 意 な 正 の 相 関 がみられ
ることを 明 らかにした.この 分 析 結 果 は, 文 化 多 様 性 条 約 が 文 化 的 財 の 貿 易 を 阻 害 すると
いう 懸 念 は 必 ずしも 現 実 のものではないことを 示 している.
31