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(Longquan Celadon: The Sichuan Museum Collection, Macau, 1998, pp. 134-<br />

5, no.38 参 照 )。また、 元 の 時 代 に 作 られた 装 飾 がない 酒 会 壺 が、1975 年 に 浙<br />

江 省 義 烏 市 で 発 掘 さ れて い る( Zhu Boqian ed., Celadons from Longquan Kilns,<br />

Taipei, 1998, p.196, no.171 参 照 )。それから、 曲 線 的 な 花 の 装 飾 が 施 され、 同<br />

じ 形 をしたもう 少 し 小 さな 明 時 代 の 酒 会 壺 が、 四 川 省 巴 中 県 玉 井 郷 で 1955 年 に<br />

発 掘 されてい る( Longquan Celadon: The Sichuan Museum Collection, op. cit.,<br />

pp.162-3, no.55 参 照 )。さらに、 清 香 美 酒 の 四 文 字 と 曲 線 的 な 装 飾 が 施 された<br />

明 時 代 の 壺 が 、 北 京 の 故 宮 博 物 院 に 所 蔵 されてい る(Celadons from Longquan<br />

Kilns, op. cit., p.262, no.247 参 照 )。 南 宋 時 代 の 壺 が 固 定 式 の 平 らな 底 をしてい<br />

るのに 対 し、 元 や 明 代 につくられたこれらの 壺 は、 藤 田 美 術 館 の 所 蔵 作 品 と 同 様 、<br />

独 立 したソーサーのような 形 の 底 がはめ 込 まれている。<br />

明 代 初 頭 になっても 龍 泉 窯 の 青 磁 は、 中 国 国 内 においても、アジアの 他 の 地 域 へ<br />

の 輸 出 品 としても、 高 い 人 気 を 誇 っていた。 龍 泉 窯 で 作 られた 陶 磁 器 の 中 には、<br />

都 から 派 遣 された 官 吏 の 監 督 の 下 、 宮 廷 のために 作 られたものがあった。『 大 明 会<br />

典 』 巻 194 には、 洪 武 26 年 (1393 年 )に、 皇 帝 のためのいくつかの 器 が、 饒<br />

と 処 の 窯 、すなわち 江 西 省 景 徳 鎮 窯 と 浙 江 省 龍 泉 窯 で 焼 成 されたと 述 べられて<br />

いる。<br />

洪 武 二 十 六 年 定 、 凡 燒 造 供 用 器 皿 等 物 、 須 要 定 奪 樣 制 、 計 算 人 工 物 料 。 如 果 數 多 、<br />

起 取 人 匠 赴 京 置 窯 興 工 、 或 數 少 、 行 移 饒 、 處 等 府 燒 造 。<br />

『 明 宣 宗 實 録 』1 巻 によると、 天 順 8 年 (1464)に 憲 宗 が 即 位 し、その 翌 年 に 成<br />

化 年 間 が 始 まると、 恩 赦 が 発 令 されたと 記 されている。また、 江 西 省 の 饒 州 景 徳<br />

鎮 と 浙 江 省 の 処 州 龍 泉 窯 で 陶 磁 器 の 製 造 を 監 督 するために 政 府 から 派 遣 された<br />

官 吏 は、 皇 帝 の 勅 命 が 下 るとすぐ 都 へ 帰 還 しなければならなかったと 述 べられて<br />

いる。このとき、 製 造 されている 陶 磁 器 のうちの 完 成 品 は 記 録 され、 未 完 成 のも<br />

のは 製 造 を 中 止 しなければならなかった。 勅 命 に 従 わなければ 犯 罪 とみなされた。<br />

このことから、 遅 くとも1465 年 すなわち 成 化 元 年 には、 龍 泉 窯 で 官 用 陶 磁 器 の<br />

製 造 が 行 われていたことがはっきりわかる。<br />

藤 田 美 術 館 所 蔵 の 明 代 に 作 られた 龍 泉 青 磁 の 背 の 高 い 花 瓶 は、15 世 紀 の “ 鳳 尾<br />

尊 ” の 稀 少 な 作 例 である。 肩 と 胴 の 上 部 の 周 囲 には 精 緻 な 牡 丹 の 装 飾 が 施 され、<br />

細 長 い 蓮 弁 鎬 文 が 胴 の 下 部 を 帯 状 に 取 り 囲 んでいる。 同 じく 藤 田 美 術 館 が 所 蔵 す<br />

る 元 代 の 花 瓶 よりもわずかに 黄 色 みの 強 い 釉 薬 をまとっているが、これは 明 代 初<br />

期 の 龍 泉 青 磁 に 典 型 的 なものである。 藤 田 美 術 館 が 所 蔵 する 元 代 の 龍 泉 窯 の 花<br />

瓶 の 場 合 と 同 様 、 明 代 の 花 瓶 も 器 が 焼 成 中 にひび 割 れたり 歪 んだりすることなく<br />

収 縮 できるように、 釉 薬 をかける 前 に 底 に 穴 が 開 けられ、 釉 薬 がかけられたソー<br />

サー 状 の 容 器 が 穴 に 入 れられた。 焼 成 中 ソーサーは 液 状 になった 釉 薬 の 上 に 浮 か<br />

ぶことができ、 焼 成 が 完 了 すると 固 まった 釉 薬 によってあるべき 場 所 に 固 定 され<br />

た。この 際 に 用 いられたソーサーは 独 特 なもので、 十 分 に 釉 薬 が 施 されていない<br />

にもかかわらず 完 璧 に 穴 を 塞 いでいる。<br />

ロンドンのサー・パーシヴァル・デイヴィッド・コレクションには、これと 非 常 に<br />

よく 似 た 同 じ 高 さの 花 瓶 が ある( Illustrated Catalogue of Celadon Wares in the<br />

Percival David Foundation of Chinese Art, London, 1997, p. 35, no. 238 を 参<br />

照 )。パーシヴァル・デイヴィッドの 花 瓶 には、 胴 と 肩 の 接 合 部 に 見 られる 隆 起 し<br />

た 線 や 胴 の 下 部 にある 2 本 の 浮 彫 の 線 を 含 め、 藤 田 美 術 館 の 花 瓶 と 同 様 の 装 飾<br />

が 施 されている。デイヴィッド・コレクションの 花 瓶 の 首 には、 下 辺 が 開 花 した 蓮<br />

の 花 で 上 辺 が 蓮 の 葉 で 装 飾 された 矩 形 が 見 られ、その 中 には 釉 薬 の 下 に 次 のよう<br />

な 銘 文 が 刻 まれている。<br />

景 泰 伍 年 福 里 鎮 安 社 信 人 楊 宗 信 喜 捨 恭 入 本 寺 供 養 □ 自 身 延 壽 者<br />

「 景 泰 5 年 (1454)、 福 里 地 方 の 鎮 安 村 在 住 の 檀 家 で あ る 楊 宗 信 は 、 長 寿 を 祈 念 し 、<br />

仏 前 に 供 えるため、 謹 んでこれ(この 花 瓶 )を 地 元 の 寺 院 に 奉 納 する」<br />

台 北 の 故 宮 博 物 院 も 藤 田 美 術 館 とデイヴィッド・コレクションの 花 瓶 と 非 常 によく<br />

似 た 作 品 を 所 蔵 している。この 作 品 も、 肩 下 部 の 接 合 部 分 に 見 られる 盛 り 上 がっ<br />

た 線 や 裾 の 部 分 に 見 られる 二 重 の 線 が 共 通 している(Tsai Meifen ed., Green:<br />

Longquan Celadon of the Ming Dynasty, Taipei, 2009, pp.158-9, no.81 および<br />

表 紙 を 参 照 )。 台 北 の 花 瓶 は 藤 田 美 術 館 の 作 品 よりわずかにサイズが 小 さいのだ<br />

が、 故 宮 博 物 院 はその 制 作 年 代 を 1435 〜 1460 年 と 定 めている。 藤 田 美 術 館 が<br />

所 蔵 する 明 代 の 龍 泉 青 磁 の 花 瓶 も15 世 紀 半 ばの 作 と 考 えるのが 妥 当 だろう。<br />

『 龍 泉 縣 志 』( 龍 泉 風 土 記 )には 次 のように 記 されている。「 成 化 ・ 弘 治 年 間 (1465<br />

〜 1506 年 ) 以 降 、( 龍 泉 窯 の 陶 磁 器 の)フォルムは 荒 々しく、 色 彩 は 魅 力 のない<br />

ものとなり、もはや 洗 練 された 優 美 な 趣 味 とは 相 容 れないものとなってしまった。」<br />

成 治 以 後 、 質 粗 色 惡 、 難 充 雅 玩 矣<br />

したがって、 藤 田 美 術 館 が 所 蔵 する 明 代 の 花 瓶 は、 印 象 的 なフォルムと 釉 薬 を 特<br />

徴 とする 陶 磁 器 が 宮 廷 や 特 権 階 級 の 使 用 に 供 するため 名 高 い 窯 でまだ 作 られてい<br />

た 時 代 、すなわち 龍 泉 青 磁 の 最 後 の 黄 金 期 を 代 表 する 作 例 なのである。<br />

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