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「日本児童文学の流れ」 - 国際子ども図書館

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十 五 年 戦 争 期 の 絵 本 ― My Choices<br />

十 五 年 戦 争 期 の 絵 本 ―My Choices<br />

吉 田 新 一<br />

子 どもの 本 との 出 会 い<br />

こんにちは。ご 紹 介 いただきました 吉 田 です。<br />

私 はずっと 英 語 圏 の 絵 本 を 中 心 に 勉 強 してきまし<br />

た。そもそものはじまりは、もう40 年 ぐらい 前 に<br />

なるでしょうか、3 歳 になる 息 子 が、 内 田 莉 莎 子<br />

さんの 訳 された、ラチョフの『てぶくろ』( 福 音<br />

館 書 店 1965)に 夢 中 になったのがきっかけでし<br />

た。その 時 、わが 子 が 喜 ぶ 笑 顔 が 忘 れられず、そ<br />

ういう 笑 顔 をできるだけ 見 たいと 思 って、 本 屋 へ<br />

子 どもの 本 を 探 しにさかんに 行 きはじめました。<br />

それまでは、 私 は 大 人 の 英 米 文 学 を 教 室 で 講 義 し<br />

ていました。 他 方 、 改 めて 振 り 返 ってみますと、<br />

ポール・アザールの 名 著 『 本 ・ 子 ども・ 大 人 』の<br />

訳 者 で、 子 どものための 本 の 翻 訳 を 含 め、100 冊<br />

も 著 書 を 持 っておられた 矢 崎 源 九 郎 先 生 から、 私<br />

は 大 学 生 時 代 に 教 わりましたが、 先 生 には 特 に 親<br />

しくしていただき、 個 人 的 にお 話 をうかがう 機 会<br />

も 随 分 ありました。 先 生 が 子 どもの 本 の 話 をなさ<br />

るのをよく 聞 いていましたが、 当 時 は 自 分 とはあ<br />

まり 関 係 のない 話 と 思 い、 折 角 のお 話 は 右 の 耳 か<br />

ら 左 の 耳 へ 抜 けておりました。<br />

とは 言 え、 今 思 えば、その 頃 から 子 どもの 本 の<br />

ことは、 私 の 耳 には 届 いていたわけでした。しか<br />

し、 自 分 の 実 際 の 経 験 はやっぱりインパクトが 強<br />

くて、 私 の 読 む 本 を 子 どもがとても 楽 しんでくれ<br />

たことが、 私 には 大 きい 衝 撃 でした。 親 バカ 話 で<br />

すが、 子 どもが 楽 しむ 顔 を 見 たさにつられて、い<br />

つのまにか 絵 本 を 中 心 に、 子 どもの 本 に 興 味 を 強<br />

くひかれていきました。しかし、 子 どもの 成 長 は<br />

早 くて、 私 はいわば 置 いてきぼりをくったかたち<br />

で、じきに 私 は1 人 で 子 どもの 本 を 楽 しみはじめ<br />

ていました。 昔 話 が 特 にそうでしたが、 子 どもの<br />

本 の 物 語 としての 純 度 みたいなものに 感 動 を 覚 え<br />

て、どんどんその 世 界 にひきこまれていきました。<br />

このように、 幼 かったわが 子 に 本 を 読 み、 子 ども<br />

がそれを 喜 び、 一 緒 に 私 も 喜 び、それがこの 世 界<br />

と 私 とが 結 ばれる 原 点 であったと 言 えます。<br />

「 宝 の 山 」に 入 って<br />

さて、ただ 今 紹 介 がありましたように、この4<br />

月 よりこちらの 図 書 館 から、またとない 機 会 を 与<br />

えられて、 蔵 書 の 宝 の 山 を 自 由 に 拝 見 させていた<br />

だいております。こちらに 出 勤 するときは 老 体 を<br />

引 きずってまいりますが、 一 旦 書 庫 に 入 って 本 に<br />

接 しはじめると、 自 分 の 子 ども 時 代 の 本 が 次 々に<br />

見 つかります、 同 じ 時 代 にこんな 本 もあったのか<br />

という 発 見 もあります、 書 庫 にいる 間 は、まさに<br />

青 春 というか 幼 年 時 代 というか、タイムスリップ<br />

している 感 じで、ここへ 参 るのが 楽 しくて、あっ<br />

という 間 に 半 年 がたちました。とにかくその 喜 び<br />

をおすそ 分 けするつもりで、 今 日 はここに 立 って<br />

おります。<br />

私 は 昭 和 6 年 の 生 まれですが、 昭 和 6 年 は 満 州<br />

事 変 がはじまった 年 です。それから 小 学 校 に 入 っ<br />

たのが 昭 和 12 年 でしたが、これは 日 支 事 変 がはじ<br />

まった 年 です。そして、それから 第 二 次 世 界 大 戦 、<br />

当 時 は 大 東 亜 戦 争 と 言 っていましたけれども、 英<br />

米 との 開 戦 が 真 珠 湾 ではじまったのが 昭 和 16 年<br />

で、 昭 和 20 年 に 敗 戦 を 迎 えたときが14 歳 半 でした。<br />

15 歳 までを 児 童 文 学 の 対 象 年 齢 と 考 えるならば、<br />

15 年 戦 争 はぴたりと 私 自 身 の 生 い 立 ちと 重 なって<br />

います。 私 の 家 庭 は、 父 が 私 と 似 た 職 業 で、 日 本<br />

史 を 専 攻 して、 地 味 な 仏 像 研 究 でしたから、そん<br />

なに 裕 福 な 家 庭 ではありませんでした。 従 って、<br />

あまりふんだんには 本 を 与 えられませんでした。<br />

与 えられたのは 主 に「 講 談 社 の 絵 本 」でした。「 講<br />

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