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十 五 年 戦 争 期 の 絵 本 ― My Choices<br />
熊 谷 元 一 は『 二 ほんのかきのき』という、 農 家 の<br />
庭 先 にある 柿 の 木 から 実 を 収 穫 し、 干 し 柿 を 作 る<br />
までの1 年 間 を 丁 寧 に 愉 しく 絵 解 きした 絵 本 を<br />
作 っています。 戦 中 期 の 作 品 より、 戦 後 の 作 品 の<br />
方 が、ストーリー 性 が 豊 かになっていますが、 熊<br />
谷 元 一 の 絵 本 制 作 の 姿 勢 は、 庶 民 の 中 に 生 きてき<br />
た 伝 承 文 化 や 年 中 行 事 を 忠 実 にリアルに 絵 に 記 録<br />
してみせることにあって、それは 戦 中 も 戦 後 も 一<br />
貫 した 姿 勢 なのです。これは 作 者 のお 人 柄 を 映 し<br />
たものと 思 います。 時 代 を 超 えたこれらの 熊 谷 元<br />
一 絵 本 に、 私 は 愛 着 します。<br />
『 山 ノオモチャ』『アフゲオホゾラ』など<br />
残 りの 時 間 もわずかになってきました。お 手 元<br />
にお 届 けしたリストの 中 で、まだ 触 れていないも<br />
のについて、リスト・インした 理 由 を 簡 単 に 申 し<br />
上 げておきます。<br />
まず、『 山 ノオモチャ』ですが、 作 者 の「 前 書 き」<br />
に、<br />
山 ノ ナカニハ オモチャヤハ アリマセン。<br />
ケレドモ ムラノ コドモタチハ ヘイキ デ<br />
ス。<br />
とあり、 子 どもたちが、ホオズキで 風 船 、コウモ<br />
リクサでコウモリ、ツバキの 花 で 花 輪 や 首 輪 、ハッ<br />
パで 蝶 や 草 履 や 亀 やとんぼ、ナスでブタ、キュウ<br />
リでウマ、ドングリでこま、というように< 山 の<br />
オモチャ>とその 作 り 方 が 描 かれている 絵 本 で<br />
す。 山 の 子 どもたちの 創 造 性 豊 かな 遊 びを 見 ると、<br />
現 代 の 子 どもにそれらとその 心 を 学 んでほしい、<br />
と 思 います。『ムラノコドモ』を 見 ると、 戦 中 に<br />
山 村 の 子 どもたちは、こういう 遊 びを 楽 しんでい<br />
たんだ、とわかります。 例 えば、 稲 を 干 す 柵 の 横<br />
棒 を 鉄 棒 代 わりに(マセとは 馬 枷<br />
(マセ)、 馬 小 屋 の 出 入 り 口 に 渡 した 横 棒 のことで<br />
すが)をしたり、2 人 が 背 中 合 わせで 腕 を 組 み、<br />
セナカ アハセテ テヲ クンデ ギッチラ<br />
ゴッチラ セオヒッコ<br />
と 歌 って 遊 んだり、シノダケテッポウを 作 ってカ<br />
ミダマで 打 ち 合 ったり、といった 子 どもたちの 遊<br />
びが 描 かれています。<br />
『アフゲオホゾラ』は、 鳥 越 信 さんが 編 纂 なさっ<br />
た『 小 さな 絵 本 美 術 館 』(ミネルヴァ 書 房 2005)<br />
で、「ぼくらも 戦 地 へ」の 項 に 紹 介 されていて、「 日<br />
本 軍 国 主 義 の 断 末 魔 の 狂 気 を 反 映 した 絵 本 」の 一<br />
つに 挙 げられています。が、これは 戦 時 色 のない<br />
絵 本 です。 表 紙 はB5 判 の 縦 使 用 ですが、 本 文 は<br />
それを 横 にして、 上 下 に 開 いたページを 一 面 に 使<br />
い、 上 ページを 空 に、 下 ページを 地 上 に 見 立 てて、<br />
大 空 のもとでのびのび 生 活 する 子 どものようすが<br />
描 かれています。 描 かれているのは、 畑 の 麦 踏 、<br />
ラジオ 体 操 、 雨 上 がりの 虹 、 太 鼓 の 音 が 響 く 秋 祭<br />
り、かもめの 舞 う 海 、 雪 山 でのソリやスキー、 夜<br />
の 星 座 、といった 情 景 で、 戦 時 色 といえば、 飛 ぶ<br />
飛 行 機 を 見 て「ニッポンノ ヒカウキハ ツヨイ<br />
ゾ」のキャプションがあるページと、 日 の 丸 掲 揚<br />
で、<br />
アガル アガル ヒノマルノハタガ アガル<br />
アヲイ オソラニ タカク タカク アガッテ<br />
イク<br />
とあるページだけです。「 上 を 向 いて 歩 こう」と<br />
いう 歌 ではありませんが、 絶 えず 下 を 向 いていれ<br />
ば 人 生 は 暗 くなります。やはり 若 人 は 胸 をはって<br />
空 を 見 上 げて 生 きてほしいでしょう。この 絵 本 が<br />
さきほどの 分 類 をされているのは 誤 りで、むしろ<br />
今 日 の 子 どもたちに 見 せて、その 精 神 を 読 み 取 っ<br />
てほしいくらいです。<br />
『 海 のこども』、『 雪 トコドモ』は、 雪 国 の、そ<br />
れから、 海 辺 の、 子 どもの 生 活 を 書 いている 本 で、<br />
「 指 示 要 綱 」に 沿 って 作 られた 絵 本 でしょうが、<br />
各 時 代 にその 時 代 を 映 した 絵 本 が 作 られることは<br />
当 然 で、 自 然 で、やがて 時 がたつと、それらは 消<br />
え 去 った 過 去 の 姿 として 残 り、 新 たな 意 味 で、 時<br />
代 を 語 るドキュメントとして 再 生 します。この 二<br />
つを 挙 げたのは、 熊 谷 元 一 さん 以 下 、 時 代 の 姿 を<br />
記 録 しながら、 当 時 の 戦 時 色 に 染 まることなく 生<br />
み 出 された、 良 質 の 絵 本 に、これも 入 れてみたかっ<br />
たからです。<br />
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