パンフレット - 科学技術振興機構
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生 命 システムの<br />
動 作 原 理 と 基 盤 技 術<br />
平 成 18 年 度 採 択 ( 研 究 終 了 )<br />
器 官 のグローバルな 非 対 称 性 と<br />
一 細 胞 の 極 性 をつなぐ 機 構 の 解 明<br />
行 動 を 規 定 する<br />
神 経 回 路 システム 動 態 の 研 究<br />
戦 略 目 標<br />
生 命 システムの 動 作 原 理 の 解 明 と 活 用<br />
のための 基 盤 技 術 の 創 出<br />
研 究 総 括<br />
中 西 重 忠<br />
( 財 ) 大 阪 バイオサイエンス 研 究 所<br />
所 長<br />
本 研 究 領 域 は、 生 命 システムの 動 作 原 理 の 解<br />
明 を 目 指 して、 新 しい 視 点 に 立 った 解 析 基 盤 技 術<br />
を 創 出 し、 生 体 の 多 様 な 機 能 分 子 の 相 互 作 用 と<br />
作 用 機 序 を 統 合 的 に 解 析 して、 動 的 な 生 体 情 報<br />
の 発 現 における 基 本 原 理 の 理 解 を 目 指 す 研 究 を<br />
対 象 とします。<br />
具 体 的 には、 近 年 の 飛 躍 的 に 解 析 が 進 んだ 遺<br />
伝 情 報 や 機 能 分 子 の 集 合 体 の 理 解 をもとに、 細<br />
胞 内 、 細 胞 間 、 個 体 レベルの 情 報 ネットワークの<br />
機 能 発 現 の 機 構 、 例 えば 生 体 情 報 に 特 徴 的 な 非<br />
線 形 で 動 的 な 反 応 機 構 などを、 新 しい 視 点 に 立 っ<br />
て 解 析 を 進 めることによって 生 命 システムの 統 合<br />
的 な 理 解 をはかる 研 究 を 対 象 とします。<br />
さらには、 生 体 情 報 の 発 現 の 数 理 モデル 化 や 新<br />
しい 解 析 技 術 の 開 発 など 基 盤 技 術 の 創 成 を 目 指<br />
した 研 究 も 対 象 としますが、 生 命 現 象 の 実 験 的 解<br />
析 と 融 合 した 研 究 を 重 視 するものです。<br />
上 村<br />
匡<br />
生 体 内 の 細 胞 に 含 まれる1 分 子 ・1 粒 子 レベルの 挙 動 を、<br />
定 量 的 かつ 統 計 的 に 調 べる 手 法 を 開 発 し、 器 官 の 空 間<br />
軸 に 沿 った 微 小 管 極 性 の 差 、 小 胞 の 極 性 輸 送 、そして<br />
平 面 内 細 胞 極 性 の 獲 得 へとつながるシステムの 全 体 像<br />
を 提 唱 しました。また、 細 胞 極 性 を 調 節 する7 回 膜 貫 通<br />
型 カドヘリンが、 器 官 の3 次 元 構 築 にも、そして 神 経 細<br />
胞 においては 同 一 細 胞 由 来 の 突 起 間 での 反 発 に 重 要<br />
な 役 割 を 果 たすことを 発 見 しました。<br />
短 周 期 遺 伝 子 発 現 リズムの 動 作 原 理<br />
影 山 龍 一 郎<br />
本 研 究 では、 数 理 モデルからの 予 測 を 検 証 することによ<br />
り、 分 節 時 計 においてネガティブフィードバックがHes7<br />
の 発 現 振 動 を 引 き 起 こす 動 作 原 理 を 解 明 しました。また、<br />
分 節 時 計 を 構 成 する 振 動 遺 伝 子 ネットワークの 全 体 像<br />
と 役 割 を 明 らかにするとともに、 神 経 幹 細 胞 、 胎 生 幹 細<br />
胞 、 線 維 芽 細 胞 におけるHes1の 発 現 振 動 の 意 義 を 示<br />
しました。これらの 結 果 から、 多 くの 生 命 現 象 における 短<br />
周 期 遺 伝 子 発 現 リズムの 動 作 原 理 および 意 義 の 解 明<br />
に 成 功 しました。<br />
シグナル 伝 達 機 構 の 情 報 コーディング<br />
森<br />
郁 恵<br />
京 都 大 学 大 学 院 生 命 科 学 研 究 科 教 授 名 古 屋 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 教 授<br />
線 虫 の 温 度 学 習 行 動 を 規 定 する 神 経 回 路 の 動 作 原 理<br />
を 明 らかにするために、 多 点 同 時 カルシウムイメージング<br />
法 、 線 虫 行 動 の 自 動 追 尾 システム、 光 遺 伝 学 (オプト<br />
ジェネティクス)の 技 術 を 開 発 しました。これらの 技 術 を<br />
活 用 し、 単 一 ニューロンの 活 動 変 化 が、シナプス 結 合 を<br />
介 して 別 の 単 一 ニューロンの 活 動 を、ダイナミックに 制 御<br />
していることを 明 らかにしました。シナプス 結 合 だけでなく、<br />
ホルモンなどの 放 出 が 神 経 回 路 動 態 を 変 化 させることも<br />
発 見 しました。<br />
平 成 19 年 度 採 択<br />
細 胞 における 確 率 的 分 子 情 報 処 理 の<br />
ゆらぎ 解 析<br />
上 田 昌 宏<br />
京 都 大 学 ウイルス 研 究 所 教 授 大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 教 授<br />
近 年 の 細 胞 内 1 分 子 計 測 法 の 進 展 により、 細 胞 内 部 の<br />
分 子 情 報 処 理 システムは、 分 子 運 動 の 無 秩 序 さや 反 応<br />
の 確 率 性 に 起 因 する「ノイズ」を 内 包 し、それを 機 能 発<br />
現 へとむすびつけることによって 柔 軟 でダイナミックなシ<br />
ステムを 作 り 上 げている 姿 が 見 えてきました。 本 研 究 で<br />
は、「ノイズ」の 生 成 ・ 処 理 ・ 伝 搬 に 着 目 した1 分 子 レベル<br />
の 精 密 計 測 と 数 理 モデルの 構 築 を 通 して、 分 子 情 報 処<br />
理 システムの 確 率 的 演 算 原 理 の 解 明 を 目 指 します。<br />
シアノバクテリアの 概 日 システム<br />
領 域 アドバイザー<br />
岡 田 清 孝 自 然 科 学 研 究 機 構 基 礎 生 物 学 研 究 所 所 長<br />
後 藤 由 季 子 東 京 大 学 分 子 細 胞 生 物 学 研 究 所 教 授<br />
近 藤 滋 大 阪 大 学 大 学 院 生 命 機 能 研 究 科 教 授<br />
榊 佳 之 豊 橋 技 術 科 学 大 学 学 長<br />
桜 田 一 洋 ( 株 )ソニーコンピュータサイエンス 研 究 所<br />
シニアリサーチャー<br />
笹 井 芳 樹 ( 独 ) 理 化 学 研 究 所 発 生 ・ 再 生 科 学 総 合<br />
研 究 センター グループディレクター<br />
武 藤 誠 京 都 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 教 授<br />
垣 生 園 子 順 天 堂 大 学 医 学 部 客 員 教 授<br />
平 野 俊 夫 大 阪 大 学 総 長<br />
黒 田 真 也<br />
生 命 現 象 の 本 質 は、 多 種 多 様 な 刺 激 を 限 られた 種 類 の<br />
細 胞 内 分 子 の 活 性 にコードして 適 切 に 応 答 することに<br />
あります。このコーディングには、 入 力 の 違 いを 活 性 化 す<br />
る 分 子 の 組 み 合 わせにコードするだけでなく、 分 子 活 性<br />
の 時 間 波 形 に 情 報 をコードする 時 間 情 報 コーディングが<br />
あります。 本 研 究 では、 同 じ 刺 激 の 時 間 波 形 に 依 存 して<br />
様 々な 応 答 を 示 す 生 命 現 象 に 着 目 して、シグナル 伝 達<br />
の 情 報 コーディングの 基 本 原 理 を 抽 出 しました。<br />
近 藤 孝 男<br />
東 京 大 学 大 学 院 理 学 系 研 究 科 教 授 名 古 屋 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 教 授<br />
生 物 時 計 は 生 命 が 地 球 上 で 効 率 良 く 生 活 するための<br />
基 本 的 メカニズムです。 今 までに、シアノバクテリアの3<br />
つのKai 蛋 白 質 とATPを 試 験 管 内 で 混 ぜるだけで 安 定<br />
した24 時 間 のリズムを 発 生 させることに 成 功 しています。<br />
本 研 究 では、 蛋 白 質 が 正 確 な 時 を 刻 むメカニズムを 解 明<br />
します。 次 に、この 振 子 が 細 胞 の 中 でどのようにシステム<br />
を 構 成 し、 生 物 時 計 としての 機 能 を 果 たしているかを 解<br />
明 します。<br />
生 物 の 極 性 が 生 じる 機 構<br />
RNAサイレンシングが 司 る<br />
遺 伝 子 情 報 制 御<br />
濱 田 博 司<br />
塩 見 美 喜 子<br />
大 阪 大 学 大 学 院 生 命 機 能 研 究 科 教 授 東 京 大 学 大 学 院 理 学 系 研 究 科 教 授<br />
一 様 な 細 胞 集 団 の 中 に 極 性 を 生 み 出 すことは、 初 期 発<br />
生 において 極 めて 重 要 な 現 象 です。 本 研 究 では、 左 右<br />
と 頭 尾 という2つの 極 性 を 題 材 にして、 対 称 性 が 破 られ<br />
る 機 構 、さらには、 体 の 極 性 の 起 源 を 調 べました。その 結<br />
果 、 繊 毛 によって 左 右 対 称 性 が 破 られる 仕 組 みや、 頭<br />
尾 の 極 性 が 従 来 よりも 早 い 時 期 に 決 まることが、 明 らか<br />
になりました。<br />
小 さなRNAが 引 き 起 こす 遺 伝 子 発 現 抑 制 現 象 をRNA<br />
サイレンシングと 称 します。RNAサイレンシングは、 発 生 、<br />
器 官 形 成 、 代 謝 などに 必 須 な 遺 伝 子 の 発 現 を 制 御 する<br />
ことによって、あるいはトランスポゾンやウイルスの 侵 入<br />
からゲノムを 守 ることによって、 生 命 維 持 や 種 の 保 存 を<br />
確 固 とします。 本 研 究 では、 小 さなRNAによる、 生 命 活<br />
動 の 基 盤 となる 遺 伝 子 制 御 プログラムを 理 解 することで、<br />
生 命 の 分 子 設 計 図 の 解 明 に 寄 与 することを 目 指 します。<br />
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