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アイヌ政策のあり方と国民的理解 - 日本学術会議

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オマンテなどの 儀 礼 も 行 われるようになってきた。 平 成 9 年 のアイヌ 文 化 振 興 法 制 定 以<br />

来 、アイヌ 語 学 習 や 海 外 の 先 住 民 族 との 交 流 が 積 極 的 に 行 われるようになり、 若 い 人 々<br />

の 行 事 への 参 画 が 増 え、 文 化 伝 承 の 裾 野 が 広 がってきたといえる。しかしまだ、それら<br />

の 活 動 に 参 加 する 人 々は 限 られている。 参 加 するためには 生 活 に 余 裕 がないとできない<br />

ので、 現 在 のアイヌの 人 々の 経 済 的 な 状 況 では、 参 加 したくてもできない 場 合 が 数 々あ<br />

る[3]。<br />

(2) 国 の 施 策 の 現 状<br />

戦 後 長 い 間 、 日 本 は 単 一 民 族 の 国 家 であるという 見 方 が 通 用 してきた。 日 本 政 府 はア<br />

イヌ 民 族 が 先 住 民 族 であると 認 めては 来 なかったし、 国 連 が 問 題 とするような 権 利 を 剥<br />

奪 されたマイノリティ 9 ではないとしてきた。アイヌの 人 々は、 彼 らの 意 志 とは 関 わり<br />

なく 明 治 時 代 に 内 国 民 化 されており、 日 本 国 民 として 日 本 国 籍 を 付 与 され、 戸 籍 制 度 の<br />

中 に 組 み 込 まれている。また、 選 挙 権 ももち、 自 由 な「 平 民 」としての 地 位 を 与 えられ<br />

てきていた(しかし 別 な 局 面 では、「 旧 土 人 」としての 差 別 的 扱 いも 受 けてきているの<br />

だが)が、それが 和 人 と 本 当 に 平 等 かつ 対 等 な 関 係 を 築 いてきたわけではないことは 前<br />

章 で 検 討 している。<br />

これらの 政 策 に 転 換 点 が 訪 れるのは 国 際 的 な 先 住 民 族 政 策 の 流 れの 影 響 が 大 きい。 第<br />

二 次 大 戦 後 、 人 種 主 義 や 人 権 問 題 、 差 別 撤 廃 への 取 組 みは 盛 んに 行 われてきており、と<br />

りわけ、1980 年 代 ( 昭 和 55 年 以 降 )から、ILO や 国 連 を 中 心 に 先 住 民 族 問 題 に 関 心 が<br />

高 まり、 条 約 が 締 結 され 宣 言 が 採 択 されてきた。2007 年 ( 平 成 19 年 )には、「 先 住 民<br />

族 の 権 利 に 関 する 国 際 連 合 宣 言 」が 国 連 で 採 択 され、 日 本 政 府 は 賛 成 の 票 を 投 じている。<br />

国 内 では、 昭 和 50 年 代 の 終 わり 頃 から、アイヌの 人 々の 人 権 に 対 する 意 識 が 高 まりを<br />

見 せるようになり、 北 海 道 ウタリ 協 会 ( 現 北 海 道 アイヌ 協 会 )は「アイヌ 民 族 に 関 する<br />

法 律 ( 案 )」の 制 定 を 求 めた。その 状 況 下 で、「 北 海 道 旧 土 人 保 護 法 」は 運 用 実 態 が 乏<br />

しく、 存 在 意 義 が 問 われ、また「 旧 土 人 」という 差 別 的 呼 称 も 問 題 視 されたため、 廃 止<br />

が 議 論 されるようになった。<br />

その 準 備 として「ウタリ 対 策 のあり 方 に 関 する 有 識 者 懇 談 会 」 10 が 平 成 7 年 に 内 閣 官<br />

房 長 官 の 私 的 諮 問 機 関 として 設 けられ、その 1 年 後 に 報 告 書 が 提 出 された。この 報 告 書<br />

では、アイヌ 民 族 を 先 住 民 族 として 規 定 することはなかったが、アイヌの 民 族 性 と 先 住<br />

性 については 明 らかにした。アイヌ 文 化 の 振 興 に 関 わる 提 言 を 主 体 とし、アイヌ 以 外 の<br />

人 もアイヌ 文 化 を 享 受 する 仕 組 みを 考 案 している[9]。<br />

これに 沿 って、「アイヌ 文 化 の 振 興 並 びにアイヌの 伝 統 等 に 関 する 知 識 の 普 及 及 び 啓<br />

発 に 関 する 法 律 」(アイヌ 文 化 振 興 法 、アイヌ 新 法 と 呼 ばれることもある)が 平 成 9 年<br />

に 制 定 された。この 法 律 は、「アイヌの 人 々の 誇 りの 源 泉 であるアイヌの 伝 統 及 びアイ<br />

9 マイノリティとは、 少 数 者 集 団 のことで、 数 が 少 ないゆえに 大 集 団 の 中 で 権 利 上 不 利 な 立 場 に 追 いやられる<br />

ことがしばしばある。<br />

10 この 懇 談 会 のメンバーに、アイヌの 人 々は 1 人 も 含 まれていなかった。<br />

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