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アイヌ政策のあり方と国民的理解 - 日本学術会議

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第 二 次 大 戦 後 すぐに 成 立 した 世 界 人 権 宣 言 は 人 種 差 別 の 撤 廃 を 強 く 訴 えていたし、<br />

UNESCO からも 人 種 主 義 に 対 抗 する 人 類 学 者 によるパンフレットが 数 点 出 版 されている。<br />

先 住 民 族 の 労 働 搾 取 の 禁 止 といった 政 策 から 発 して、 先 住 民 族 問 題 にとりくんだ ILO( 国<br />

際 労 働 機 関 )は、107 号 条 約 を 1957 年 ( 昭 和 32 年 )に 制 定 して 先 住 民 族 保 護 に 取 り 組<br />

み、さらに 169 号 条 約 を 1989 年 ( 平 成 元 年 )に 定 め、107 号 条 約 と 置 き 換 えた。107 号<br />

条 約 では、 先 住 民 族 が 次 第 に 暮 らしている 国 の 中 に 統 合 されていくという 見 通 しで 作 成<br />

されていたが、169 号 条 約 では、 先 住 民 族 の 文 化 や 生 活 様 式 を 尊 重 する 姿 勢 をとってい<br />

る。また 後 者 では、 先 住 民 族 の 組 織 が 自 分 たちに 影 響 する 開 発 事 業 の 計 画 や 立 案 に 関 与<br />

すべきであるという 前 提 に 立 っている[15]。<br />

国 際 連 合 では、 先 住 民 族 の 権 利 に 関 する 世 界 宣 言 を 起 草 するとともに 先 住 民 族 の 人 権<br />

の 擁 護 のための 各 国 政 府 の 政 策 の 検 証 をする 場 として、「 先 住 民 に 関 する 作 業 部 会 」が<br />

1982 年 ( 昭 和 57 年 )に 設 置 された。 国 連 は 1983 年 を 世 界 の 先 住 民 族 の 国 際 年 と 定 め、<br />

1985 年 ( 昭 和 60 年 )より 10 年 間 を 世 界 の 先 住 民 族 の 国 際 の 10 年 、 引 き 続 きその 次 の<br />

10 年 も 第 二 回 目 の 世 界 の 先 住 民 族 の 国 際 の 10 年 となり、 先 住 民 族 の 権 利 擁 護 のための<br />

諸 活 動 を 行 ってきた。このような 国 連 の 活 動 を 契 機 として、 世 界 各 地 の 先 住 民 族 の 人 々<br />

は 互 いにネットワークで 結 ばれるようになり、 情 報 交 換 を 繰 り 返 しながら 先 住 民 族 とし<br />

ての 権 利 主 張 ばかりではなく、 環 境 問 題 や 地 球 温 暖 化 などの 問 題 にも 先 住 民 族 としての<br />

視 点 で 取 り 組 むようになってきている。<br />

1985 年 ( 昭 和 60 年 )に 取 り 組 みの 始 まった 宣 言 は、20 余 年 の 後 に 修 正 を 経 て 2007<br />

年 ( 平 成 19 年 )に「 先 住 民 族 の 権 利 に 関 する 国 際 連 合 宣 言 」[16]として 国 際 連 合 総 会<br />

にて 可 決 された。アメリカ 合 衆 国 、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの 4 カ<br />

国 は 反 対 票 を 投 じ、 棄 権 が 11 カ 国 、33 カ 国 が 欠 席 、 賛 成 144 カ 国 であった。ちなみに<br />

日 本 は 賛 成 票 を 投 じている。<br />

国 連 のこの 宣 言 は、 先 住 民 族 の 権 利 回 復 に 関 する 最 も 新 しい 考 え 方 を 含 んだものとな<br />

っているが、とりわけ 第 3 条 にある「 先 住 民 族 は、 自 決 の 権 利 を 有 する。この 権 利 に 基<br />

づき、 先 住 民 族 は、その 政 治 的 地 位 を 自 由 に 決 定 し、 並 びにその 経 済 的 、 社 会 的 及 び 文<br />

化 的 発 展 を 自 由 に 追 求 する。」[16]という 箇 所 が、 自 決 権 を 認 めたものとして、 一 歩 踏<br />

み 込 んだ 記 述 となっている。また、 先 住 民 族 が 権 利 をもつ 資 源 を 土 地 などの 不 動 産 ばか<br />

りでなく、 文 化 財 や 伝 統 的 知 識 、 文 化 的 表 現 、 遺 伝 物 質 ( 遺 伝 資 源 )、 種 子 、 薬 品 等 々<br />

を 知 的 財 産 として、 先 住 民 族 自 身 の 管 理 ・ 保 護 ・ 発 展 させる 権 利 を 認 め、 踏 み 込 んだ 理<br />

解 を 示 している。<br />

反 対 した 4 国 は、 自 決 権 に 加 え、 土 地 、 領 域 、 資 源 などの 権 利 を 認 めていること、 先<br />

住 民 族 が 定 義 されていないことなどを 批 判 点 としてあげたが、 後 に 国 内 法 の 枠 内 で 承 認<br />

を 表 明 しており、 歩 み 寄 りが 見 られている。 一 方 で、これは 宣 言 であるので、 条 約 とは<br />

異 なり 各 国 政 府 を 法 的 に 拘 束 する 力 はもたない。<br />

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