04.01.2015 Views

アイヌ政策のあり方と国民的理解 - 日本学術会議

アイヌ政策のあり方と国民的理解 - 日本学術会議

アイヌ政策のあり方と国民的理解 - 日本学術会議

SHOW MORE
SHOW LESS

You also want an ePaper? Increase the reach of your titles

YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.

圧 倒 的 多 数 の 和 人 移 住 者 の 間 で、 被 支 配 的 立 場 に 追 い 込 まれ 差 別 の 対 象 となった。アイヌ<br />

の 人 々は、 土 地 を 奪 われ、 固 有 の 生 活 様 式 を 否 定 されるという 少 数 者 としての 不 利 益 を 蒙<br />

った。またアイヌの 遺 骨 が 研 究 目 的 で 収 集 されたが、 中 には 無 断 で 持 ち 出 されたものもあ<br />

る。 現 在 、 大 学 などに 保 管 されているそれらの 遺 骨 の 適 正 な 保 管 や 返 還 を 求 める 声 がある。<br />

平 成 18 年 現 在 、 北 海 道 のアイヌ 民 族 は 北 海 道 庁 の 調 査 によれば 約 2 万 4 千 人 である。<br />

第 一 次 産 業 従 事 者 が 多 く、 生 活 保 護 率 は 道 民 全 体 平 均 の 1.5 倍 を 超 え、 高 校 進 学 率 は 道 民<br />

全 体 より 5 ポイント 近 く 低 く、 大 学 進 学 率 は 道 民 全 体 の 半 分 以 下 である。7 年 毎 の 調 査 で<br />

見 る 限 り、ある 程 度 改 善 されてはいるものの、 依 然 として 道 民 全 体 より 困 窮 している。ア<br />

イヌであることによる 差 別 経 験 を 持 つ 人 は 約 17%であり、 差 別 を 受 けた 人 を 知 っている 人<br />

は 約 20%に 上 る。アイヌの 人 々の 中 のかなりの 数 が、 北 海 道 における 差 別 を 逃 れ、 道 外 で<br />

暮 らしを 営 むようになっている。これらの 人 々の 統 計 データはほとんどなく、その 生 活 実<br />

態 などは 正 確 にはわかっていないが、 道 外 でも 差 別 の 問 題 が 指 摘 されている。<br />

ほとんどのアイヌの 人 々は、 現 在 日 常 的 な 衣 食 住 の 生 活 様 式 のうえで、 他 の 日 本 人 と 似<br />

たような 生 活 を 送 っているが、 経 済 格 差 は 存 在 している。 一 方 で、アイヌ 文 化 振 興 法 以 来 、<br />

アイヌ 語 学 習 や 海 外 の 先 住 民 族 との 交 流 が 積 極 的 に 行 われるようになり、 若 者 の 行 事 への<br />

参 画 は 増 加 している。<br />

3 報 告 の 内 容<br />

(1) 先 住 民 族 という 認 識 とアイデンティティの 尊 重<br />

まずはアイヌ 民 族 が 先 住 民 族 であるという 認 識 をもつことが 重 要 である。アイヌの<br />

人 々のアイデンティティにはさまざまなレベルがあるが、それらの 幅 を 理 解 し、 配 慮 す<br />

る 必 要 がある。<br />

(2) 国 が 主 体 となった 政 策 の 全 国 的 実 施<br />

国 家 的 事 業 として 行 われた 北 海 道 開 拓 ( 開 発 )のために 不 利 益 を 蒙 ったアイヌ 民 族 に<br />

ついては 国 が 主 体 となって 政 策 を 展 開 する 必 要 があり、 現 在 アイヌの 人 々の 居 住 域 が 全<br />

国 に 広 がっている 以 上 、 全 国 にこれを 及 ぼす 必 要 がある。<br />

(3) アイヌ 文 化 研 究 の 促 進 と 展 示<br />

アイヌ 研 究 の 制 度 作 りが 必 要 である。またアイヌ 研 究 が 多 くの 分 野 で 行 われる 必 要 が<br />

あり、アイヌ 研 究 者 の 養 成 、とりわけアイヌ 自 身 の 研 究 者 や 学 芸 員 の 養 成 が 急 務 である。<br />

(4) 国 民 の 理 解 の 促 進<br />

あらゆる 方 法 で 国 民 的 理 解 を 得 る 努 力 をすべきであるが、その 中 心 課 題 に 教 育 がある。<br />

小 ・ 中 ・ 高 校 のすべてのレベルの 教 育 において、アイヌの 文 化 と 民 族 の 歴 史 の 理 解 の 促<br />

進 を 図 るべきである。 大 学 においても、 関 連 する 科 目 担 当 者 の 自 主 性 において、アイヌ<br />

民 族 に 関 する 教 育 が 行 われることを 希 望 する。<br />

(5) 多 様 な 文 化 の 共 存 と 共 生<br />

現 代 においては、 異 なる 文 化 を 互 いに 理 解 し、 多 様 性 を 保 持 しつつ 共 生 する 社 会 を 築<br />

き 上 げることがますます 必 要 となってきているが、その 第 一 歩 として、アイヌ 民 族 を 先<br />

住 民 族 として 理 解 し、その 声 を 聴 き、 共 に 考 えていくことが 重 要 である。<br />

iii

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!