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2009年春号 - Asian University for Women

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大 学 のカリキュラムと 教 員23マーサ・ナスバウム 氏ゴール(インドの 詩 人 ・ 思 想 家 )の 教 育 思 想を 信 奉 し、 実 践 していました。 最 初 の 講 義 でソクラテスの 人 生 と 死 について 学 びました。タッカーは 人 生 をかけて 討 論 をするソクラテスに 心 を 動 かされました。その 後 、 論 理 についても 少 し 学 びました。このような 抽 象 的 で知 的 な 分 野 は 苦 手 だと 思 っていたタッカーでしたが、テストでよい 点 数 をとり、うれしくなりました。 次 に、 政 治 スピーチと 論 説 を 分析 して、 論 理 的 欠 陥 を 見 つける 勉 強 をしました。そして 講 義 の 終 盤 では、 世 の 中 の 課 題 をめぐる 議 論 について 研 究 しました。タッカー自 身 は 死 刑 に 賛 成 であるにも 関 わらず、 死 刑の 反 対 論 を 論 議 するように 言 われて 大 変 驚 きました。 自 分 の 持 つ 考 えとは 逆 の 立 場 に 立 って 議 論 することができるとはそれまで 考 えたことがありませんでした。この 経 験 が 政 治 討論 に 対 する 新 しい 見 方 を 与 えてくれたと 彼 は話 します。 議 論 を 自 己 主 張 の 場 として 見 るのではなく、 反 対 の 意 見 にも 敬 意 を 示 し、 双 方の 論 点 とそこに 共 通 する 考 えが 何 なのかに 興味 を 持 つようになったと 語 っています。このようにして 反 対 意 見 をもつグループもいくつかの 点 で 自 分 たちと 同 じ 考 えを 持 っている 合理 的 な 存 在 だと 考 えるようになり、 政 治 的 な「 他 者 」を 受 け 入 れることができるのです。自 分 の 議 論 の 筋 道 に 責 任 を 持 ち、 互 いの 理 由づけを 尊 重 しながら 意 見 を 交 わすことは、 国内 そして 宗 教 と 民 族 紛 争 でますます 分 裂 が 進む 世 界 で、 異 なる 考 えを 平 和 的 に 取 りまとめるのに 不 可 欠 です。タッカーは 既 に 大 学 生 でしたが、クリティカル 思 考 は 子 供 の 教 育 の 早い 段 階 から 取 り 入 れることが 可 能 で、かつ 重要 だとされ、 実 際 これまでにも 実 践 されてきました。ヨーロッパのフルーベル、ペスタロッチ、マリア・モンテッソーリ、インドのラビンドラナート・タゴール、そして19 世 紀 のアメリカ 人 ブロンソン・アルコットなどが 近代 の 先 進 的 な 教 育 の 証 しです。クリティカル 思 考 は 学 校 のカリキュラムの 一部 に 取 り 込 むことも 可 能 ですが、 学 校 の 教 育方 針 全 体 に 根 付 いていなければあまり 意 味 がありません。 生 徒 1 人 1 人 を 限 りない 能 力 をもった 個 人 として 扱 い、 教 室 での 議 論 に 活 発 かつ 独 創 的 な 意 見 で 参 加 するよう 促 さなければなりません。クリティカル 思 考 を 重 視 するようになると、カリキュラム 作 成 においても、日 々の 活 動 においても 生 徒 の 声 を 重 視 するようになります。 例 えばタゴールの 学 校 では、生 徒 たちが 日 々の 生 活 に 関 してよく 考 えて 決断 し、 積 極 的 にミーティングを 開 くことを 奨励 していました。 学 校 の 概 要 には、 学 校 は 生徒 たちが 知 的 自 己 依 存 と 自 由 を 求 めるよう 奨励 する 自 治 コミュニィティであると 繰 り 返 し述 べられています。その 中 の1つにタゴールはこう 書 いています。「 質 問 し、 経 験 する 完全 なる 自 由 が 与 えられ、 同 時 に 自 分 自 身 で 考えるよう 促 されたとき、 物 事 ははじめて 頭 に残 ります。 知 識 を 習 得 し、 他 の 人 の 考 えに 同調 するだけでは 本 物 の 自 由 は 得 られません。自 分 の 判 断 基 準 を 持 ち、 自 分 の 考 えを 形 成 してはじめてそれが 可 能 になります。」 記 録 によると、 彼 の 指 導 法 は、 常 に 生 徒 に 問 題 を 投げかけ、 質 問 することによって 答 えを 引 き 出すというソクラテス 流 のやり 方 でした。タゴールが 用 いたもう1つのソクラテス 流 の 教 育方 法 は、 子 供 たちに 自 分 の 視 点 から 離 れて 他の 人 の 視 点 に 立 ってもらうロールプレイングという 方 法 です。この 教 育 方 法 によって、 他の 視 点 を 体 験 し、 内 側 から 異 なる 視 点 を 理 解する 自 由 を 与 えたのです。ジョン・デューイ(アメリカの 哲 学 者 ・ 教 育 者 )も 同 様 の 教 育方 針 を 持 ち、それを 保 健 、そして 民 主 主 義 の可 能 性 へと 導 いたのです。私 たちの 目 的 は、 単 に 知 識 を 豊 かにすることではありません。 政 治 文 化 に 目 を 向 けてみましょう。 以 前 申 し 上 げたように、 人 間 は 権 威とまわりからのプレッシャーに 振 り 回 される傾 向 があります。 非 道 な 行 為 を 防 ぐためには、この 人 間 の 傾 向 を 抑 え、 個 人 が 異 議 を 唱 えられる 文 化 をつくる 必 要 があります。それぞれの 活 発 な 発 言 を 重 視 することにより、 責 任 の文 化 を 醸 成 します。 人 々が 自 分 の 考 えに 責 任を 持 つようになると、それと 同 時 に 自 分 の 行動 にも 責 任 を 持 つようになります。これが 著書 「ナショナリズム」でタゴールが 訴 えようとしていたことで、 社 会 生 活 の 官 僚 主 義 化 と現 代 の 国 家 の 機 械 的 な 性 質 が、 人 々の 道 徳 的思 考 力 を 殺 し、 非 道 な 行 為 を 良 心 の 呵 責 なく黙 認 させています。 世 界 が 破 壊 的 方 向 へ 向 かうのを 止 めるために、 独 立 した 考 えを 持 つことが 極 めて 重 要 だとタゴールは 付 け 加 えています。タゴールは1917 年 に 日 本 で 行 われた講 義 で、 国 力 向 上 という 名 目 でますます 多 く人 々が 自 分 の 考 えに 責 任 を 持 つようになると、それと 同 時 に 自分 の 行 動 にも 責 任 を 持 つようになります。の 人 が 巨 大 な 機 械 のコマとなっているのを 憂い、「 魂 の 収 縮 による 漸 進 的 自 殺 行 為 」だと語 りました。 確 固 たるクリティカル 思 考 を 持つ 大 衆 によってのみ、この 致 命 的 な 流 れを 食い 止 めることができるのです。マーサ・ナスバウム 氏 はシカゴ 大 学 のアーンスト・フレウド 殊 勲 賞 受 賞 法 律 ・ 倫 理 教 授 です。

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