06.11.2013 Views

AFJ ティボーとの関連を通して - 成城大学

AFJ ティボーとの関連を通して - 成城大学

AFJ ティボーとの関連を通して - 成城大学

SHOW MORE
SHOW LESS

You also want an ePaper? Increase the reach of your titles

YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.

成 城 美 学 美 術 史<br />

第 17 号<br />

単 純 な 器 楽 排 斥 論 とは 一 線 を 画 していたことがわかる 26 。<br />

ポイントは、ホフマンが、 現 代 (19 世 紀 )の 作 曲 家 は、パレストリーナと 同 じような 無 伴<br />

奏 の 曲 を 作 ることはできないとして、 器 楽 を 活 用 した 教 会 音 楽 を 作 るべきと 主 張 していたの<br />

と 同 様 に、ティボーが、 器 楽 をうまく 活 用 したヘンデルのオラトリオを 愛 していたことである。<br />

ティボーのア・カペラと 器 楽 付 き 教 会 音 楽 への 対 応 は、これまで 述 べてきたように、 多 少<br />

の 表 現 の 違 いはあれ、 大 筋 はホフマンと 変 わりないように 思 われる。ティボーにおいても、<br />

ホフマンと 同 様 、その2つは、 対 立 軸 でなく、 相 互 補 完 の 存 在 であったと 言 えよう。 大 きく<br />

異 なるのは、 新 しい 教 会 音 楽 創 作 の 姿 勢 で、ティボーは、 創 作 を 手 がけず、もっぱら 合 唱 運<br />

動 と 呼 応 して、 彼 の 推 奨 する 古 い 時 代 の 作 品 の 演 奏 普 及 に 努 力 したということである。<br />

4. カトリック 教 会 の 伝 統<br />

セシリア 運 動 の 検 討 に 入 る 前 にカトリック 教 会 の 伝 統 的 な 思 考 法 について 簡 潔 に 確 認 して<br />

おきたい。セシリア 運 動 は 教 会 内 の 改 革 運 動 なので、その 思 考 法 が 教 会 の 伝 統 を 踏 まえたも<br />

のであるのは 自 明 なことである。カトリック 教 会 = 教 皇 庁 が 「 器 楽 付 き 教 会 音 楽 」 をどう 考<br />

えてきたか、18 世 紀 の 回 勅 、19 世 紀 末 の 教 皇 自 発 教 令 、20 世 紀 の 典 礼 憲 章 の 3 つで 確 認 し<br />

ておこう 27 。<br />

1 回 勅 Enciclica Annus qui<br />

1749 年 、 教 皇 ベネディクトス 十 四 世 は、 典 礼 音 楽 がオペラ 風 な 華 美 に 傾 くことを 戒 める<br />

ためこの 回 勅 を 発 した。 回 勅 では、 教 会 内 での 「ティンパニ、ホルン、トランペット」 など<br />

の 使 用 を 禁 止 したが、 歌 の 補 助 に 使 用 される 弦 楽 器 と 一 部 管 楽 器 の 使 用 を 容 認 したことが、<br />

オーケストラを 事 実 上 黙 認 したと 拡 大 解 釈 され、 実 際 の 運 用 では、 前 記 楽 器 はおろか、 禁 止<br />

したはずのティンパニなどの 楽 器 まで 教 会 内 で 堂 々と 演 奏 されたことは、モーツァルト 時 代<br />

のザルツブルクの 状 況 を 見 れば 明 らかである。 結 果 として、この 回 勅 は、その 意 図 に 反 し 世<br />

俗 化 を 促 進 させる 事 態 を 招 いたと 評 価 されることもあるが、その 基 本 理 念 は、これから 検 討<br />

するヴィットの 主 張 と 一 致 するものであることがわかる。<br />

2 教 皇 自 発 教 令 Motu proprio Tra le sollecitudini<br />

Motu proprio は 教 皇 が 発 する 自 発 教 令 と 呼 ばれるもので、 歴 代 教 皇 が 幾 多 のものを 残 し<br />

ているが、1903 年 にピウス 十 世 が 発 布 した Motu proprio "Tra le sollecitudini" は、セシリア<br />

運 動 の 主 張 を 大 きく 取 り 入 れたものと 言 われている。この 教 令 は、グレゴリオ 聖 歌 を 至 高<br />

のものと 位 置 付 け、そして、パレストリーナを 賞 賛 する 一 方 で、「 世 俗 的 なものを 教 会 に 持<br />

ち 込 まないよう」「 特 にオペラ 様 式 はふさわしくない」と 指 示 したほか、ラテン 語 の 厳 守 や、<br />

勝 手 な 反 復 や 省 略 の 禁 止 等 を 指 示 した。<br />

3<br />

典 礼 憲 章<br />

30

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!