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AFJ ティボーとの関連を通して - 成城大学

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セシリア 運 動 に 及 ぼした E. T. A. ホフマンの 影 響 について:A. F. J. ティボーとの 関 連 を 通 して<br />

る 存 在 ではなく、むしろ 相 互 補 完 の 関 係 にあった。<br />

自 身 、オペラ 作 曲 をしたり、 生 活 のため 劇 場 の 音 楽 監 督 を 務 めた 10 ホフマンにとって、 器<br />

楽 音 楽 を 捨 てることは、 絶 対 にできなかった。 一 方 で、ロマン 主 義 者 から 教 えられた 古 いア・<br />

カペラの 教 会 音 楽 にも 惹 かれるものがあった。そうした 彼 にとって、 両 者 の 関 係 は、 対 立 す<br />

るものでなかった、という Garratt の 解 釈 は、 説 得 力 を 持 つ。<br />

タイトルの「 新 旧 の 教 会 音 楽 」に 戻 ると、「 旧 」とは、 器 楽 を 伴 わない、 声 楽 のみによるパ<br />

レストリーナのような 教 会 音 楽 で、「 新 」とは、その 逆 の、 器 楽 を 伴 う 当 代 ( 現 代 )の 教 会 音<br />

楽 となろうか。(しかし、 現 代 の 教 会 音 楽 の 担 い 手 たちは、「 器 楽 」 を、 十 分 に 使 いこなし<br />

ていないとする)ホフマンの 中 では、 旧 =「キリスト 教 的 」= 「 純 粋 な 声 楽 」 という 理 念 と、<br />

そして、「 新 しい 教 会 音 楽 」= 「ロマン 主 義 的 」 という 理 念 が 想 定 されていると 考 えられる。<br />

Garaatt に 倣 えば、この2つは 対 立 軸 でなく、「 相 互 補 完 」 の 関 係 にあることになる 11 。<br />

2–2 ホフマンの 受 容 と 影 響<br />

ホフマンは 人 気 作 家 であったものの、 同 時 代 ではハイネなど 一 部 の 識 者 を 除 いては、 文 学<br />

的 な 評 価 を 得 ておらず、 通 俗 作 家 、 戯 作 家 の 評 価 に 甘 んじていた。ホフマンはむしろドイツ<br />

国 外 で 高 く 評 価 され、 特 にフランスにおいてバルザック、ユゴー、ゴーティエ、ジョルジュ・<br />

サンド、デュマ、ネルヴァル、ボードレール、モーパッサンなどの 作 家 達 に 大 きな 影 響 を 及<br />

ぼした。ロシアではプーシキン、ドストエフスキーなどがホフマンを 愛 好 し、その 影 響 はエ<br />

ドガー・アラン・ポーにも 及 んでいる。ドイツでホフマンが 評 価 されるのは、19 世 紀 後 半<br />

になってからとされる 12 。<br />

彼 の 音 楽 評 論 が、シューマンに 大 きな 影 響 を 与 えたことは 有 名 だが 13 、ダールハウスは、<br />

AMZ の 定 期 購 読 者 であったベートーヴェンが、ホフマンのこの 評 論 を 読 んだことが、《ミサ・<br />

ソレムニス》を 作 曲 する 動 機 の1つとなった 可 能 性 がある、との 見 解 を 述 べている(ダール<br />

ハウス 1997: 287)。ダールハウスの「ベートーヴェンは 古 い 教 会 様 式 と 現 代 器 楽 との 橋 渡 し<br />

の 困 難 さを 感 じていた」という 指 摘 は、ホフマンが 直 面 していたものでもあった。ベートー<br />

ヴェンの《ミサ・ソレムニス》(1824 年 初 演 )は、まさにその 解 答 であったが、1822 年 に 死<br />

去 したホフマンは、それを 耳 にすることができなかった。<br />

このように、 彼 の 音 楽 評 論 は 専 門 家 の 間 では 知 られていたが、1814 年 のエッセイ "Alte<br />

und neue Kirchenmusik" は 単 行 本 化 されず、 読 者 は 限 られており、この 評 論 の 趣 旨 は、 数 年<br />

後 に 刊 行 された『セラーピオン 朋 友 会 員 物 語 』 内 の 同 題 の 挿 話 によって、 広 まった。<br />

セシリア 主 義 者 たちが、ホフマンの 著 作 を 読 んだか、については、 何 の 証 左 も 見 出 せない。<br />

ティボーがホフマンを 読 んだかについても 同 様 だが、ティボーの 思 想 にホフマンの 影 響 があ<br />

ることは、 後 述 のように、 多 くの 評 者 が 認 めるところである。 以 下 では、セシリア 主 義 者 た<br />

ちが、ティボーを 通 してホフマンを 知 った、という 可 能 性 を、 追 求 していこう。<br />

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