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AFJ ティボーとの関連を通して - 成城大学

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セシリア 運 動 に 及 ぼした E. T. A. ホフマンの 影 響 について:A. F. J. ティボーとの 関 連 を 通 して<br />

Dittrich は 明 記 していないが、ヴィットのこの 主 張 は、オペラ 風 に 堕 落 した 教 会 音 楽 の<br />

改 革 を 目 指 した 1749 年 の 教 皇 回 勅 Annus qui に、うり 二 つであることがわかる。つまり、<br />

Dittrich のこの 指 摘 は、ヴィットの 主 張 がカトリック 教 会 の 伝 統 に 沿 ったものであったこと<br />

を 示 している。<br />

ここでこれまで 触 れてこなかった 点 も 含 め、ヴィットの 主 張 を 再 度 整 理 してみよう。<br />

まず、グレゴリオ 聖 歌 の 復 興 を 第 一 の 目 標 に 掲 げている。 但 し、 以 前 から 行 われてきたオ<br />

ルガン 伴 奏 付 けは 否 定 せず、むしろ 聖 歌 普 及 のため 自 らも 推 進 した。 単 純 なア・カペラ 主<br />

義 者 でなかったことは、このことからも 明 らかである。 彼 のパレストリーナ 崇 敬 は、 教 会<br />

のほかに、 師 のプロスケを 通 じてのものであった。そのプロスケは、ティボーの 著 書 Ueber<br />

Reinheit der Tonkunst を 通 じてパレストリーナの 音 楽 の 価 値 を 知 ったと 言 われるので、ヴィ<br />

ットもまたティボーの 書 から、パレストリーナを 教 えられたことになる 29 。<br />

ヴィットは、セシリア 主 義 者 たちの 創 作 活 動 について、パレストリーナを 模 範 とするよう<br />

奨 めながらも、 単 なる 模 倣 に 陥 らないよう 何 度 も 警 告 している。ヴィット 自 身 は 作 曲 家 とし<br />

ての 自 負 から、「ヴィット 様 式 」を 主 張 した。セシリア 主 義 者 たちの 作 品 は「セシリア 協 会 カ<br />

タログ」として 機 関 誌 に 掲 載 されたのみで、 殆 ど 出 版 されることなく、 音 楽 史 の 上 では、パ<br />

レストリーナの 「 模 倣 」 として 殆 ど 無 視 された。ヴィット 様 式 を 自 認 したヴィットの 作 品 も<br />

その 例 外 ではなく、 現 在 では 殆 ど 演 奏 されることがない。<br />

後 述 するように、ヴィットは 自 らの 発 案 ではないものの、ティボーの 著 書 のセシリア 協 会<br />

版 を 刊 行 するほど、ティボーの 著 書 に 愛 着 を 持 っていた。 器 楽 教 会 音 楽 への 対 応 について、<br />

当 時 から「セシリア 運 動 は 反 ・ 器 楽 」とのイメージが 持 たれていたようで、そのことは 運 動<br />

の 推 進 にマイナスになると 考 えたのであろう。そのイメージを 払 拭 すべく、 何 度 となく、そ<br />

れに 反 論 を 試 みている。<br />

つまり、 教 会 にふさわしく、 典 礼 の 規 則 に 沿 うという 条 件 に 合 う 「 器 楽 付 き 教 会 音 楽 」 で<br />

あれば 容 認 する、ことを 表 明 し、 自 らも 作 曲 し、 演 奏 ( 指 揮 )も 行 っている。しかし、この<br />

規 準 が 曖 昧 なものであったことは 否 定 しようがない。<br />

もちろん、 彼 らの 行 動 はこれら 曲 の 制 作 だけに 留 まらず、 聖 職 者 や 一 般 信 徒 の 音 楽 レベル<br />

向 上 、キリスト 教 の 司 牧 としての 広 宣 活 動 、グレゴリオ 聖 歌 集 の 整 備 やパレストリーナ 全 集<br />

出 版 など 多 方 面 にわたっていたことも 忘 れてはならない。<br />

5–3 セシリア 協 会 編 によるティボーの 著 書 Ueber Reinheit der Tonkunst の 新 版<br />

セシリア 協 会 編 の 注 釈 付 き(コンメンタール)と 名 打 ったティボーの 著 書 Ueber Reinheit<br />

der Tonkunst の 新 版 が、1876 年 にレーゲンスブルクの 出 版 社 から 刊 行 されたという 事 実 は、<br />

これまでも 知 られていたが、 詳 細 は 明 らかでなかった。2009 年 に 発 表 された Dittrich の 論<br />

文 によって、その 経 緯 が 詳 かになった。 以 下 にその 内 容 を、 簡 潔 に 記 す。(Dittrich 2009a:<br />

113f)<br />

発 端 は 1874 年 2 月 、ライプツィヒの 出 版 社 F. E. C. Leuckart の 支 配 人 コンスタンティン・<br />

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