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AFJ ティボーとの関連を通して - 成城大学

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成 城 美 学 美 術 史<br />

第 17 号<br />

ザンダー が、ヴィットに、ヴィットの 執 筆 した 注 釈 の 入 ったティボーの 著 書 の 新 版 (コンメ<br />

ンタール 版 ) 発 行 という 計 画 を 提 案 したことに 始 まる。ザンダーは、500 部 をセシリア 協 会<br />

関 係 者 が 購 入 すれば 採 算 が 取 れる、と 持 ちかけた。<br />

提 案 を 聞 いたヴィットは、この 企 画 を、ティボーの 著 書 の 本 来 の 版 元 であるムーア 社 に 持<br />

ち 込 んだらしい。この 年 の 5 月 に、ムーア 社 はヴィットに、 注 釈 入 りではなく、セシリア 協<br />

会 会 員 向 けに、ヴィット 自 身 による 前 書 きと 後 書 きを 付 した 特 別 版 を 発 行 するという 代 替 案<br />

を 提 示 した。ヴィットはこの 提 案 を 断 り、この 企 画 を 今 度 は、セシリア 協 会 と 親 密 な 関 係 に<br />

あるレーゲンスブルクの 出 版 社 プーステット Pustet に 持 ち 込 んだ。<br />

計 画 が 進 む 中 、ヴィットは、 多 忙 と 健 康 不 安 から 自 身 による 執 筆 を 断 念 し、 執 筆 を、 著<br />

名 な セ シ リ ア 協 会 会 員 August Wilhelm Ambros (1816–1876) や Utto Kornmüller (1824–<br />

1907) に 依 頼 したが、 彼 らの 承 諾 を 得 られず、 最 終 的 に 協 会 会 員 でギムナジウムの 教 師<br />

G. W. Birkler (1820–77) の 手 に 委 ねた 30 。<br />

新 版 は、1876 年 末 に 完 成 し、プーステットから 下 記 タイトルを 付 けて 発 行 された。 校 正<br />

に 手 間 取 り、 実 際 に 印 刷 が 完 了 して 配 本 されたのは、1877 年 初 めであった。<br />

Ueber Reinheit der Tonkunst von Ant. Friedr. Just. Thibaut.<br />

Mit einem Commentar herausgegeben von Professor Birkler,<br />

Haupt=Vereinesgabe (pro 1876)<br />

des allgemeinen deutschen Cäcilien–Vereines,<br />

Regensburug, New York & Cincinnati.<br />

Druck von Friedrich Pustet. 1876 ( 下 線 は 筆 者 )<br />

Dittrich によれば、ヴィットは、 完 成 した 本 の 内 容 に 不 満 だったようで、この 著 作 は 版 を<br />

重 ねることはなかった。<br />

筆 者 は、 最 近 、 海 外 の 古 書 店 から、この 書 物 を 入 手 した。 残 念 ながら 完 本 でなく、 後 半 の<br />

数 十 頁 が 散 逸 しているが、 表 紙 、 前 書 き、 本 文 の 大 半 を 備 えており、 概 要 の 把 握 は 可 能 であ<br />

る( 巻 末 図 版 参 照 )。<br />

Birkler の 書 いたコメントの、いくつかについて 見 てみよう。 上 述 のように、 本 文 とほぼ<br />

同 量 (Dittrich によれば、およそ 80%)を 占 めている。<br />

最 初 のコメントで、 彼 は、ティボーが「 過 去 の 古 典 的 な 模 範 」の 音 楽 について、 彫 刻 や 文<br />

学 に 比 べて 研 究 が 著 しく 遅 れていると 嘆 いていることを 紹 介 する。そして、この 50 年 (テ<br />

ィボーの 初 版 が 出 てから、このコメンタール 版 が 出 るまでの 間 )に、 事 情 は 変 り、ティボー<br />

の 切 望 したことのいくつかが、プロスケらの 努 力 により、かなりの 程 度 実 現 されてきた。つ<br />

まり、 彼 らセシリア 運 動 によるものだ、と 運 動 の 成 果 を 披 瀝 している。<br />

続 いては、トリエント 公 会 議 で 示 された( 教 会 音 楽 の) 基 準 と、 最 近 の 音 楽 事 情 に 関 して<br />

の 神 学 上 の 解 釈 論 議 に 触 れている。さらに、アメリカでのセシリア 協 会 設 置 など 海 外 にも 進<br />

出 しているセシリア 運 動 の 状 況 も 紹 介 している。<br />

その 次 のコメントでは、セシリア 協 会 幹 部 でヴィットの 弟 子 であるハーベルルの 編 纂 した<br />

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