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医療マッサージによるアジア視覚障害者の職業自立に ... - 筑波技術大学

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医 療 マッサージによるアジア 視 覚 障 害 者 の 職 業 自 立 に 向 けた 国 際 協 力<br />

-モンゴルとタイにおけるセミナー 開 催 報 告 -<br />

筑 波 技 術 大 学<br />

1) , 障 害 者 高 等 教 育 研 究 支 援 センター 2)<br />

1)<br />

楠 山 寛 子<br />

1)<br />

形 井 秀 一<br />

1)<br />

緒 方 昭 広<br />

1)<br />

藤 井 亮 輔<br />

2)<br />

長 岡 英 司<br />

2)<br />

加 藤 宏<br />

2)<br />

小 野 瀬 正 美<br />

筑 波 技 術 大 学 AMIN 推 進 委 員 会 が 主 催 し、2009 年 3 月 31 日 より、モンゴルにて 視 覚 障 害 者 に 対 する 医 療<br />

マッサージセミナーを、 同 年 8 月 にはタイで、 同 様 にセミナーを 開 催 した。 開 催 に 至 る 経 緯 として、アジアの 視<br />

覚 障 害 者 にとってマッサージの 実 情 と 重 要 性 を 示 し、 日 本 が 行 っている 対 アジア 視 覚 障 害 者 の 職 業 自 立 に 関 する<br />

国 際 協 力 の 概 要 とその 中 で 筑 波 技 術 大 学 AMIN の 役 割 、 活 動 方 針 、モンゴルとタイの 現 状 を 紹 介 した 上 で、セ<br />

ミナー 内 容 と 成 果 について 報 告 する。<br />

マッサージ、 視 覚 障 害 者 、 職 業 訓 練 、 職 業 自 立 、 国 際 協 力<br />

<br />

筑 波 技 術 大 学 では、 保 健 科 学 部 鍼 灸 学 専 攻 および 障 害 者<br />

高 等 教 育 研 究 支 援 センターの 教 職 員 を 中 心 として、2006 年<br />

度 より、「アジア 太 平 洋 地 域 における 医 療 マッサージ 指 導<br />

者 育 成 の た め の ネ ッ ト ワ ー ク づ く り(Asia Medical<br />

Massage Instructors Network)」( 通 称 AMIN)という 活<br />

動 を 行 っている。 本 レポートでは、2009 年 4 月 にモンゴル<br />

で、 8 月 にタイでそれぞれ 行 われた 視 覚 障 害 者 のための 医<br />

療 マッサージセミナーについて、これまでの 経 緯 や 背 景 も<br />

含 めて 報 告 する。<br />

<br />

2007 年 に 開 催 された 第 2 回 AMIN 総 会 には、アジアから<br />

バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、 韓 国 、ラオ<br />

ス、マレーシア、モンゴル、フィリピン、 台 湾 、タイ、ベ<br />

トナム、 日 本 の12カ 国 からの 参 加 があった。 参 加 国 を 対 象<br />

に、 筑 波 技 術 大 学 AMIN 推 進 委 員 会 が 行 ったアンケート 調<br />

査 によると、 収 入 のある 仕 事 に 就 いている 視 覚 障 害 者 は 半<br />

分 以 下 、もしくはほとんどいないと 答 えた 国 が 7 カ 国 ( 無<br />

回 答 2 カ 国 )、また、 一 般 的 な 視 覚 障 害 者 が 従 事 している<br />

仕 事 の 種 類 として、マッサージを 1 位 に 挙 げた 国 が 9 カ 国<br />

( 無 回 答 1 )という 結 果 であった。この 結 果 からも、アジア<br />

の 視 覚 障 害 者 の 職 業 事 情 が 厳 しい 現 状 にある 中 、マッサー<br />

ジが 彼 らにとって 重 要 な 職 域 であり、 適 切 な 教 育 を 行 うこ<br />

とで、 社 会 参 加 する 重 要 な 手 段 となりうることが 分 かる。<br />

1981 年 に 定 められた「 国 際 障 害 者 年 」を 機 に、 障 害 者 支<br />

援 が 国 際 社 会 でも 議 論 されるようになり、 国 際 協 力 の 分 野<br />

でも 重 要 視 されるようになった。 日 本 は、 江 戸 時 代 より 視<br />

覚 障 害 者 の 職 業 として 鍼 灸 マッサージの 歴 史 があることか<br />

ら、 途 上 国 の 視 覚 障 害 者 に 対 する 職 業 支 援 の 一 つとして、<br />

マッサージ 分 野 で 貢 献 出 来 ることは 多 い。これまで 日 本 が<br />

行 ってきたマッサージによるアジアの 視 覚 障 害 者 に 対 する<br />

職 業 支 援 は、 主 に 国 際 協 力 機 構 (JICA)や 国 際 視 覚 障 害 者<br />

援 護 協 会 (IAVI)が 中 心 となって 実 施 されている。JICA<br />

で 行 っている 青 年 海 外 協 力 隊 やシニアボランティアなどの<br />

海 外 協 力 隊 派 遣 事 業 で 鍼 灸 マッサージ 師 の 派 遣 者 数 は、 晴<br />

眼 者 対 象 のものも 含 めると2008 年 12 月 現 在 で、インドネシ<br />

ア22 名 、ウズベキスタン 3 名 、キルギス 2 名 、タイ 1 名 、<br />

ネパール 2 名 、バングラデシュ 3 名 、マレーシア 2 名 で [1]、<br />

そのうち 視 覚 障 害 者 に 対 する 活 動 を 行 っている 国 はインド<br />

ネシア、キルギス、タイ、バングラデシュ、マレーシアの<br />

5 カ 国 である。また、2003 年 より 5 カ 年 計 画 で「 視 覚 障 害<br />

者 自 立 支 援 のためのマッサージ 指 導 者 育 成 研 修 」( 通 称 沖<br />

縄 プロジェクト)が 実 施 され、27 名 の 研 修 生 が、マッサー<br />

ジの 知 識 や 技 術 だけでなく、 日 本 の 視 覚 障 害 者 マッサージ<br />

に 関 する 制 度 やそれを 取 り 巻 く 環 境 について 講 習 を 受 けた。<br />

IAVI は、 教 育 環 境 に 恵 まれない 国 々の 若 い 視 覚 障 害 者 が、<br />

日 本 で 教 育 を 受 けることで、 各 国 の 視 覚 障 害 者 リーダーと<br />

なりうる 人 材 の 育 成 を 目 的 として、1981 年 に「ICB 奨 学 制<br />

度 」( 現 IAVI 奨 学 制 度 )を 創 設 、 翌 1982 年 よりほぼ 毎 年 留<br />

学 生 を 受 け 入 れている [10]。2007 年 現 在 でアジアからは、<br />

バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、<br />

モンゴル、ネパール、シンガポール、タイ、ベトナム、 韓<br />

国 、 中 国 、 台 湾 より 招 聘 し [10]、 国 内 の 盲 学 校 などで 学 ぶ<br />

ためのサポートを 行 っている。その 他 、 盲 学 校 や NGO 団<br />

体 がそれぞれで 支 援 活 動 を 行 っている。<br />

<br />

沖 縄 プロジェクトや IAVI を 通 じて、 今 後 各 国 の 視 覚 障<br />

害 者 リーダーとしての 役 割 を 担 うべく、 日 本 で 按 摩 ・マッ


サージを 学 び 帰 国 した 研 修 員 たちも、それぞれの 国 の 事 情<br />

により 課 題 を 抱 えている。 教 育 環 境 に 関 するものとしては、<br />

教 育 する 場 所 、カリキュラム、 教 科 書 や 教 材 、 指 導 方 法 や<br />

指 導 者 不 足 など、その 他 、 社 会 的 理 解 不 足 による 就 業 先 不<br />

足 、 制 度 的 に 開 業 することができない、 晴 眼 者 との 賃 金 格<br />

差 など 多 くの 課 題 に 直 面 しており、 大 きく 状 況 を 変 化 させ<br />

るに 至 っていない。もともと、AMIN は、これらの 日 本 か<br />

ら 帰 国 した 人 材 に 対 して、カリキュラムや 教 材 作 成 支 援 、<br />

指 導 技 術 の 向 上 などのフォローアップや、それぞれの 国 同<br />

士 が 自 主 的 に 情 報 交 換 をし、 自 国 に 取 り 入 れることの 出 来<br />

る 情 報 などを 共 有 できるネットワークを 作 ることが 目 的 で<br />

事 業 を 開 始 した。2006 年 度 には、WBUAP マッサージセミ<br />

ナー 参 加 支 援 、カンボジアおよびラオスでの 短 期 講 習 会 、<br />

2007 年 度 にはアジア12カ 国 が 集 まる AMIN 総 会 を 開 催 、ベ<br />

トナム、カンボジア、ラオス、モンゴルでの 短 期 講 習 会 な<br />

どを 行 い、また、「アジア 視 覚 障 害 者 のための 医 療 按 摩 標<br />

準 テキスト」を 作 成 するなどの 活 動 を 行 った。2008 年 度 か<br />

らは、 各 国 の 情 報 収 集 は 出 来 るだけ 行 いつつ、 支 援 対 象 と<br />

する 国 を 絞 り 込 むこととし、モンゴルと、AMIN の 資 金 援<br />

助 者 である 日 本 財 団 からの 強 い 要 請 のあったタイの 2 カ 国<br />

を 以 後 3 年 間 の 支 援 対 象 国 とし、その 他 の 国 に 関 しては、<br />

可 能 な 範 囲 で 部 分 的 に 支 援 を 行 うこととした。<br />

この 2 国 の 詳 しい 現 状 については 後 述 するが、マッサージ<br />

に 関 する 制 度 もなく、 市 場 の 開 拓 もこれからという 状 態 のモ<br />

ンゴルと、マッサージの 国 家 資 格 が 既 にあり、 晴 眼 者 の 教 育<br />

をいかに 視 覚 障 害 者 にも 対 応 させていくかということが 課 題<br />

のタイという、 状 況 の 異 なる 2 国 を 支 援 する 経 験 は、 今 後 他<br />

の 国 への 支 援 を 行 う 際 に 活 きるものと 考 えている。<br />

<br />

1 ) 視 覚 障 害 者 の 就 業 状 況<br />

アジア 太 平 洋 障 害 者 センター(APCD)によれば、モン<br />

ゴルの 人 口 は 約 270 万 人 、そのうち 視 覚 障 害 者 は 約 10,100 人<br />

[2](モンゴル 盲 人 協 会 のデータでは 約 8,000 人 )である。ま<br />

た、モンゴル 盲 人 協 会 によると、 職 業 に 就 いている 視 覚 障<br />

害 者 は130 名 ほどで、 国 営 の 盲 人 工 場 で70 名 、 音 楽 等 芸 能<br />

活 動 で20 名 、 盲 学 校 や 視 覚 障 害 者 職 業 訓 練 センターの 教 員<br />

で10 名 、マッサージ 技 術 者 として30 名 働 いていることが 分<br />

かっている。しかし、その 他 の 就 業 年 齢 者 の 9 割 が、 政 府<br />

からの 社 会 福 祉 手 当 である 月 額 42,500Tug( 約 3,000 円 程 度 )<br />

で 暮 らしており、 公 務 員 の 月 収 平 均 が 約 300ドル( 約 27,000<br />

円 程 度 )であることを 考 えると、 生 活 は 厳 しいという。<br />

2 ) 医 療 マッサージ 教 育<br />

モンゴルには、モンゴル 伝 統 医 療 医 師 を 養 成 する 大 学 が<br />

3 つあり、 国 立 伝 統 医 療 大 学 では、 西 洋 医 学 分 野 35%、 東<br />

洋 医 学 分 野 65%のカリキュラムを 採 用 している。 伝 統 医 師<br />

は、 漢 方 、 鍼 、マッサージ、 運 動 療 法 などを 使 い 治 療 を<br />

行 っているというが、2008 年 9 月 に、 国 立 伝 統 医 療 大 学 付<br />

属 病 院 および、 国 立 第 一 病 院 の 臨 床 現 場 を 視 察 した 際 に<br />

は、 実 際 のマッサージ 施 術 は、 看 護 師 が 医 師 の 指 導 の 下 施<br />

術 しているようであった。[4] 特 にマッサージに 特 化 した<br />

資 格 制 度 はなく、 国 立 伝 統 医 療 大 学 で 6 カ 月 間 の 講 習 が 実<br />

施 されており、 主 に 就 業 している 看 護 師 などが 研 修 を 受 け<br />

ている。 視 覚 障 害 者 が 伝 統 医 師 や 看 護 師 の 学 校 に 通 うこと<br />

は、まだ 実 現 していない。<br />

一 方 、モンゴル 盲 人 協 会 は、2005 年 より 視 覚 障 害 者 職 業<br />

訓 練 センターで、 6 カ 月 間 のマッサージ 講 習 を 行 ってい<br />

る。 指 導 者 は、IAVI を 通 じて 日 本 の 盲 学 校 に 留 学 し、 国<br />

家 資 格 を 取 得 した 者 が 1 名 、 沖 縄 プロジェクトの 終 了 者 が<br />

2 名 、 計 3 名 で 訓 練 センターや 地 方 へ 出 向 き 短 期 講 習 会 な<br />

どを 行 ってきた。2008 年 10 月 に 3 名 の 指 導 者 のうちの 1 名<br />

が、IAVI を 通 じて 来 日 し、 4 月 から 盲 学 校 で 学 んでいる<br />

ため、それ 以 降 は 指 導 者 2 名 体 制 となっている。 訓 練 コー<br />

スを 終 えたマッサージ 師 は、 盲 人 協 会 の 運 営 するマッサー<br />

ジ 店 「ベストマッサージ」( 現 在 4 店 舗 )で 働 く 者 が 多 く、<br />

57 名 の 講 習 終 了 者 (2008 年 現 在 )のうち30 名 がこのマッ<br />

サージ 店 で 働 いている。また、2008 年 11 月 からは、 台 湾 政<br />

府 の 援 助 により 既 に 6 カ 月 コースを 終 えた20 名 (そのうち<br />

15 名 がウランバートル 市 以 外 の 地 方 からの 参 加 )に 対 し、<br />

さらに 上 級 コースの 6 カ 月 コース(トータル 1 年 コース)<br />

を 始 めており、 今 後 指 導 者 としてそれぞれの 地 方 で 指 導 を<br />

行 うことが 期 待 されている。<br />

3 ) 盲 人 協 会 の 今 後 の 展 望<br />

盲 人 協 会 は、 看 護 師 や 理 学 療 法 士 など 他 の 医 療 従 事 者 と<br />

同 レベルの 3 年 間 のカリキュラムでマッサージ 教 育 を 行<br />

い、 社 会 的 にも「 医 療 従 事 者 」として 認 められる 教 育 環 境<br />

を 整 備 すること、それを 国 家 資 格 とすることを 希 望 してい<br />

る。そうすることにより、 視 覚 障 害 者 の 就 労 先 として、 医<br />

療 施 設 などに 可 能 性 を 広 げ、 視 覚 障 害 者 の 社 会 的 地 位 の 向<br />

上 を 目 指 している。 盲 人 協 会 としては、そのためには、 施<br />

設 、カリキュラム、 教 科 書 や 教 材 整 備 、 指 導 者 が 必 要 で、<br />

制 度 の 整 備 や、 運 営 費 面 で 政 府 関 係 者 の 理 解 が 必 須 であ<br />

る。また、 指 導 者 としては、モンゴル 伝 統 医 師 らの 協 力 、<br />

教 育 後 の 就 業 先 確 保 のためには、 病 院 関 係 者 の 理 解 もかか<br />

せない。<br />

<br />

そこで、AMIN の 活 動 の 一 環 として、 政 府 関 係 者 、 医


療 関 係 者 、 伝 統 医 療 教 育 関 係 者 を 招 き、 下 記 の 目 的 でセミ<br />

ナーを 開 催 した。<br />

1 日 本 のマッサージ 制 度 および 視 覚 障 害 者 による 医 療 マッ<br />

サージに 対 する 理 解 促 進 (モンゴル 側 )<br />

2モンゴルの 医 療 制 度 の 現 状 および 伝 統 医 療 について 理 解<br />

( 日 本 側 )<br />

3 日 本 ・モンゴル 関 係 者 の 共 通 理 解 の 下 、 制 度 化 の 可 能 性<br />

を 探 る<br />

1 )セミナー 概 要<br />

日 時 :2009 年 3 月 31 日 ~ 4 月 1 日<br />

場 所 :モンゴル 日 本 センター(ウランバートル 市 )<br />

参 加 者 数 : 約 120 名 (モンゴル 政 府 、 病 院 、 伝 統 医 療 教 育 、<br />

視 覚 障 害 関 連 団 体 より)<br />

○オープニングセレモニー<br />

来 賓 としてモンゴル 社 会 福 祉 労 働 大 臣 をはじめ、 保 健<br />

省 、 文 部 科 学 省 、 社 会 福 祉 労 働 省 とスポンサーである 日 本<br />

財 団 から、それぞれスピーチがなされた。<br />

○ 講 演 内 容 および 講 演 者<br />

1「モンゴル 視 覚 障 害 者 の 現 状 と 盲 人 協 会 の 今 後 の 目 標 」<br />

モンゴル 盲 人 協 会 会 長 バヤスガラン・マイダー 氏<br />

2「なぜ 今 モンゴルにマッサージの 新 たな 教 育 システムが<br />

必 要 か」 モンゴル 伝 統 医 師 シャラフ・ボールド 氏<br />

3「 日 本 の 視 覚 障 害 者 の 現 状 」<br />

筑 波 技 術 大 学 教 授 加 藤 宏 氏<br />

4「 日 本 の 手 技 療 法 教 育 と 就 業 状 況 1」<br />

筑 波 技 術 大 学 准 教 授 藤 井 亮 輔 氏<br />

5 日 本 式 按 摩 実 演 岡 山 県 立 盲 学 校 教 諭 竹 内 昌 彦 氏<br />

6 日 本 式 按 摩 体 験<br />

視 覚 障 害 者 職 業 訓 練 センター ガンゾリグ 氏 他<br />

7「AMIN の 紹 介 とアジアの 視 覚 障 害 者 の 現 状 」<br />

筑 波 技 術 大 学 教 授 形 井 秀 一 氏<br />

8「 日 本 の 手 技 療 法 教 育 と 就 業 状 況 2」<br />

筑 波 技 術 大 学 准 教 授 藤 井 亮 輔 氏<br />

9「IT 技 術 による 視 覚 障 害 者 教 育 のサポート」<br />

筑 波 技 術 大 学 技 術 職 員 小 野 瀬 正 美 氏<br />

10「モンゴル 伝 統 医 療 」<br />

モンゴル 伝 統 医 師 シャラフ・ボールド 氏<br />

11「 身 体 障 害 者 向 けの 措 置 および 目 標 」<br />

社 会 福 祉 労 働 省 対 策 調 整 局 副 局 長 Otgonkhundaga 氏<br />

○クロージングセレモニー<br />

オープニングセレモニーと 同 様 、 政 府 関 係 者 や、ウラン<br />

バートル 市 内 にある 病 院 長 、 日 本 財 団 からそれぞれ 今 回 の<br />

セミナーについての 感 想 が 述 べられ、 視 覚 障 害 者 マッサー<br />

ジについての 理 解 を 示 した。<br />

2 )セミナーの 成 果<br />

セミナーでは、 参 加 者 それぞれが、 視 覚 障 害 者 が 行 う<br />

マッサージについて、 一 定 の 理 解 を 示 した。 何 よりも、そ<br />

れぞれの 立 場 において、 視 覚 障 害 者 の 職 業 自 立 や 医 療 マッ<br />

サージについて 考 えるきっかけになったようである。ま<br />

た、 当 日 はモンゴルメディアの 取 材 も 合 計 8 社 よりあり、<br />

テレビなどで 放 送 されたことから、 2 日 目 にはテレビを 見<br />

た 伝 統 医 療 大 学 の 学 生 などの 飛 び 入 り 参 加 や、 急 遽 セミ<br />

ナー 翌 日 に 伝 統 医 療 大 学 で、 全 盲 である 竹 内 氏 が、マッ<br />

サージ 講 習 会 を 行 うことになるなど、 想 定 していた 以 上 の<br />

市 民 に 視 覚 障 害 者 のマッサージを 紹 介 することが 出 来 た。<br />

<br />

APCD によると、タイの 人 口 は 約 6400 万 人 である。 視<br />

覚 障 害 者 は 約 123,000 人 で、そのうちマッサージを 業 とし<br />

ているのは 約 4000 人 いるという( 藤 井 ,2007 年 BMIN 会<br />

議 にて 報 告 )。2006 年 の 憲 法 改 正 および2007 年 の 医 療 法 改<br />

正 により、 障 害 者 に 対 する 差 別 条 項 が 撤 廃 されたことによ<br />

り、 視 覚 障 害 者 も 医 療 マッサージの 国 家 試 験 を 受 験 するこ<br />

とが 出 来 るようになった。しかし、 実 際 に 視 覚 障 害 者 に 対<br />

して 医 療 マッサージを 教 育 する 環 境 、たとえば、カリキュ<br />

ラム 内 容 や 教 科 書 、 教 材 、 教 員 の 教 育 環 境 などはまだまだ<br />

整 備 されておらず、 国 家 試 験 の 実 施 方 法 についても、 政 府<br />

関 係 機 関 内 で 未 だ 検 討 中 である。また、 制 度 的 な 障 害 は 撤<br />

廃 されたとしても、「 視 覚 障 害 者 が 医 療 の 一 翼 を 担 う」と<br />

いうことに 関 し、 社 会 の 理 解 と 信 頼 は 得 られていないのが<br />

現 状 である。<br />

<br />

そこで、モンゴルと 同 様 に、タイでも 以 下 の 目 的 で 3 日<br />

間 程 度 のセミナーを 行 うこととなった。<br />

1 政 府 関 係 者 および 医 療 関 係 者 に 対 し、「 視 覚 障 害 者 も 医<br />

療 マッサージを 行 うことが 出 来 る」という 理 解 を 促 す。<br />

2 視 覚 障 害 者 に 医 療 知 識 を 教 育 する 際 に 有 用 な 教 材 、 指 導<br />

方 法 、 国 家 試 験 制 度 について、 日 本 の 事 例 を 紹 介 する。<br />

1)セミナー 概 要<br />

日 時 :2009 年 8 月 18 日 ~20 日<br />

場 所 :センチュリーパークホテル(バンコク)<br />

参 加 者 数 :のべ 約 100 名 (タイ 政 府 、 病 院 、タイマッサー<br />

ジ 指 導 者 、 視 覚 障 害 関 連 団 体 より)<br />

○オープニングセレモニースピーチ<br />

タイ 盲 人 連 合 、 日 本 財 団 、AMIN、およびタイ 保 健 省<br />

○ 講 演 内 容 および 講 演 者<br />

1「 視 覚 に 頼 らない 診 察 法 」


三 重 県 立 盲 学 校 教 諭 喜 多 嶋 毅 氏<br />

2「 日 本 における 視 覚 障 害 者 の 現 状 と 就 労 関 係 」<br />

筑 波 技 術 大 学 教 授 緒 方 昭 広 氏<br />

3「 国 家 試 験 について」<br />

三 重 県 立 盲 学 校 教 諭 喜 多 嶋 毅 氏<br />

4「あはき 師 の 教 育 と 教 員 養 成 」<br />

筑 波 技 術 大 学 教 授 緒 方 昭 広 氏<br />

5「 視 覚 障 害 者 に 対 する 医 療 教 育 に 役 立 つツールの 紹 介 」<br />

茨 城 県 立 盲 学 校 教 諭 武 藤 実 樹 氏<br />

6「 模 擬 授 業 - 解 剖 学 -」<br />

福 岡 県 立 福 岡 高 等 盲 学 校 教 諭 緒 方 伸 彦 氏<br />

7「 模 擬 授 業 - 生 理 学 -」<br />

茨 城 県 立 盲 学 校 教 諭 武 藤 実 樹 氏<br />

8「タイの 盲 人 マッサージ 師 の 可 能 性 と 地 位 向 上 」<br />

National Health Security Office 理 事<br />

Dr. Wichai Chokewiwat<br />

9「 盲 人 マッサージ 師 の 医 療 者 登 録 に 対 する 方 針 」<br />

Medical Registration Division, Health Support<br />

Department, Ministry of Public Health<br />

Mr. Pattere Chaengsiricharoen<br />

10「パネルディスカッション- 盲 人 に 対 する 医 療 マッサー<br />

ジ 教 育 について-」<br />

座 長 :タイ 盲 人 連 合 会 長 Mr. Pecharat Techavachara<br />

○クロージングセレモニー スピーチ<br />

タイ 保 健 省 および 日 本 側 講 師<br />

2 ) 成 果<br />

今 回 のセミナーは、 主 に 政 府 関 係 者 や 病 院 関 係 者 、 晴 眼<br />

のタイマッサージ 指 導 者 に 対 して 理 解 促 進 を 促 す 目 的 で 計<br />

画 されが、 視 覚 障 害 者 も 多 数 参 加 した。セミナー 開 始 前 、<br />

休 憩 時 間 やセミナー 終 了 後 など、 時 間 を 見 つけては 日 本 側<br />

講 師 に 技 術 についての 指 導 を 希 望 する 視 覚 障 害 者 マッサー<br />

ジ 師 が 多 く 見 受 けられ、 彼 ら 自 身 の 中 でも、「 医 療 マッ<br />

サージ」というものに 対 する 興 味 と、 意 欲 を 刺 激 するセミ<br />

ナーとなったようである。このセミナーを 受 け、2009 年 12<br />

月 現 在 、タイ 保 健 省 およびタイ 盲 人 連 合 から、 日 本 での 指<br />

導 者 育 成 講 習 やスタディツアーの 計 画 が 日 本 財 団 を 通 じて<br />

申 請 されている。 盲 人 団 体 だけでなく、 政 府 側 からも 積 極<br />

的 に、 視 覚 障 害 者 に 対 応 する 制 度 や 指 導 者 の 育 成 を 進 めて<br />

いることは、 心 強 い 限 りである。タイでも 視 覚 障 害 者 が 医<br />

療 マッサージ 国 家 資 格 を 取 得 する 日 は 近 い。<br />

8.おわりに<br />

2008 年 より 重 点 支 援 国 として、モンゴルとタイに 対 する<br />

支 援 を 行 っている。 両 国 とも、アプローチとしては、 視 察<br />

をし、 視 覚 障 害 者 や 医 療 マッサージを 取 り 巻 く 現 状 を 把 握<br />

した 上 で、 必 要 な 支 援 と、 可 能 な 支 援 の 調 整 を 行 い、セミ<br />

ナーを 開 催 した。AMIN 推 進 委 員 会 は 筑 波 技 術 大 学 の 教 職<br />

員 7 名 (うち 事 務 局 1 名 )で 構 成 ・ 運 営 されているため、<br />

長 期 滞 在 することは 難 しく、 人 的 資 源 も 限 られているため、<br />

このようにイベントの 開 催 を 中 心 に 支 援 活 動 を 行 わざるを<br />

得 ない。 人 的 資 源 という 点 では、2007 年 に 盲 学 校 の 教 員 を<br />

中 心 として「BMIN(Bank of AMIN)」というネットワー<br />

クを 作 り、 今 回 のような 海 外 講 習 会 での 講 師 などを 依 頼 し<br />

ている。しかし、より 効 果 的 な 支 援 を 行 うため、 日 本 で 学<br />

び 各 国 に 帰 国 した 留 学 生 たちだけでなく、JICA の 海 外 協<br />

力 隊 員 や、IAVI など、 国 内 外 で「 視 覚 障 害 者 の 職 業 自 立 」<br />

を 志 して 活 動 する 人 々との、 協 力 関 係 が 重 要 であり、 互 い<br />

に 補 い 合 いながら 支 援 を 実 施 していく 必 要 がある。<br />

今 回 2 か 所 で 行 ったセミナーでは、 内 容 についての<br />

フィードバックを、 現 地 のカウンターパートだけでなく 広<br />

く 参 加 者 からもらうことで、 今 後 のフォローアップや、 次<br />

回 のセミナーなどに 活 かすという 作 業 にもう 少 し 力 点 を 置<br />

くべきであったと 反 省 しており、 今 後 の 活 動 に 反 映 させた<br />

いと 考 えている。<br />

<br />

[1] 国 際 協 力 機 構 : 課 題 別 指 針 障 害 者 支 援 (62-67),2009<br />

[2] アジア 太 平 洋 障 害 者 センター(APCD) ホームペー<br />

ジ:Country Profile<br />

[3] AMIN 推 進 委 員 会 :2008 年 4 月 第 1 回 モンゴル 講 習<br />

会 報 告 書 ,2008.<br />

[4] AMIN 推 進 委 員 会 :2008 年 9 月 AMIN モンゴル 視 察<br />

報 告 書 ,2008.<br />

[5] AMIN 推 進 委 員 会 :2009 年 1 月 AMIN モンゴル 視 察<br />

報 告 書 ,2009.<br />

[6] AMIN 推 進 委 員 会 :2009 年 4 月 モンゴルセミナー 報<br />

告 集 ,2009.<br />

[7] AMIN 推 進 委 員 会 :2008 年 9 月 タイ 視 察 報 告 書 ,2008.<br />

[8] AMIN 推 進 委 員 会 :2009 年 3 月 タイ 視 察 報 告 書 ,2009.<br />

[9] AMIN 推 進 委 員 会 :2009 年 8 月 タイセミナー 報 告 集 ,<br />

2009.<br />

※ [3] ~ [9]AMIN ホームページ:AMIN 報 告 書 参 照<br />

http://www.e-amin.org/information.html<br />

[10] 国 際 視 覚 障 害 者 援 護 協 会 ホームページ:IAVI 事<br />

業 概 要 ,


National University Corporation Tsukuba University of Technology Techno Report Vol.17 (2), 2010<br />

International Cooperation by Promoting Therapeutic Massage for the Visually<br />

Impaired in Asia: A Report on the Seminar Conducted in Mongolia and Thailand<br />

KUSUYAMA Hiroko 1) , KATAI Shuichi 1) , OGATA Akihiro 1) , FUJII Ryosuke 1) ,<br />

i 2) , KATOH Hiroshi 2) , ONOSE Masami 2)<br />

1)<br />

Department of Health, Faculty of Health Science<br />

2)<br />

Research Center on Higher Education for the Hearing and Visually Impaired<br />

Abstract: The AMIN Promotion Committee of Tsukuba University of Technology organizes projects that aim for the<br />

vocational independence of the visually impaired in Asia by promoting therapeutic massages. This report introduces the<br />

therapeutic massage seminars held in Mongolia (March 2009) and Thailand (August 2009); it also describes the current<br />

situation of the visually impaired in Mongolia and Thailand and gives general information about the initiatives taken by<br />

Japan to promote massages by the visually impaired in Asia for international cooperation.<br />

Key words: Massage, Visually impaired, Vocational training, Vocationally Independent, International cooperation

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