日 本 林 業 技 術 協 会
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坂 <strong>本</strong> : 南 の 国 の 思 い 出<br />
一<br />
〕<br />
0<br />
●<br />
心<br />
一 =‐<br />
人 からききただすようなことをしてしらべた。そして 現<br />
在 の 農 園 ができるまでにはいろいろの 静 心 があることが<br />
わかり, 誠 に 敬 服 の 至 りであった。<br />
そこで 発 見 され, 痛 切 に 感 じさせられたことの 最 も 大<br />
きなものは,いま 問 題 になっている 品 種 という 考 え 方 を<br />
ここではつどに 取 り 入 れていることと, <strong>林</strong> 地 鯉 音 という<br />
ことであった。<br />
K 農 園 は,この 農 園 の 名 前 のついた 品 種 ばかりを 親 告<br />
していた。この 品 種 がどのようにして 作 りだされたかは<br />
遂 いにしらべるひまがなかった。この 農 園 のK63 号 と<br />
いう 品 種 は 成 育 がよく, 皮 が 厚 く,キー 戸 ネの 含 量 も 最<br />
も 高 いものであった。 全 園 の6~7 割 はこれで 占 めてい<br />
た。この 品 種 は,キナの 代 表 的 品 種 として, 他 の 農 園 で<br />
も 沢 11I 謝 音 されていた。 幼 令 赫 は, 殆 んどこれで 占 めて<br />
いたが, 老 令 赫 のなかには 既 に 古 典 的 な,K35 号 とい<br />
うような 品 種 や,その 他 いろいろのK 何 号 というものが<br />
植 えてあった。<br />
そこで 私 は 恰 慶 その 頃 ,まず 手 ツ 治 めとして, 農 園 にあ<br />
るいろいろの 品 種 を 一 つの 山 に 集 めて, 比 較 識 園 を 作<br />
ることを 考 えた。これらはすべて 接 木 で 苗 を 作 るので,<br />
純 系 に 近 い 苗 が 容 易 に 作 ることができた。<br />
栽 培 面 積 の 一 番 多 いK63 号 の 幼 令 <strong>林</strong> の 中 にも, 更 に<br />
いくらか 変 った 系 統 がまぢっているのが 判 然 と 見 受 けら<br />
れ,これをK.B63 号 という 記 号 をつけて, (Bは 新 し<br />
いというマレー 語 の 頭 字 をとって)これらも 分 類 して 植<br />
えた。この 各 炎 の 苗 木 を 作 り,やつと 山 に 植 え 終 った 頃<br />
終 戦 となって 引 揚 げざるをえなくなったのであるが, 今<br />
この 見 <strong>本</strong> 園 がどのようになっていることか, 一 産 行 って<br />
みたいようである。<br />
× × ×<br />
次 にこのような 立 派 なキナ <strong>林</strong> がどうしてできたのか,<br />
その 育 て 方 に 何 か 変 ったことがないものかとよくしらべ<br />
て 承 るとおぼろげながら,その 原 因 がわかったような 気<br />
がした。<br />
それは 徹 底 した 集 約 栽 培 と <strong>林</strong> 地 肥 培 ということであっ<br />
た。<br />
意 外 に 思 ったのは,この 美 休 を 作 ったここの 前 の 支 配<br />
人 は, オランダ 人 で 法 学 士 であったとのこと。 この 人<br />
は 長 い 間 ここの 支 配 人 として,キナ 山 に 吾 とが 考 えられ<br />
ないような 集 約 な 手 入 と, 施 肥 を 行 ったのである。( 当<br />
時 ,この 地 区 では, 労 力 というものは 極 めて 容 易 に,し<br />
かも 安 くえられたのがこれをするのに 一 層 容 易 にしたの<br />
だが)。<br />
集 約 な 手 入 の1,2を 思 いだすままに 記 すと, 間 伐 を<br />
する 時 キナは 根 の 皮 まで 利 用 するので 必 ず 堀 りあげるの<br />
であるが,その 堀 り 起 した 穴 を 更 に 一 層 大 きく 堀 りなお<br />
すことである。したがって, 壮 令 詠 にば,よくこの 大 き<br />
な 穴 が 点 食 とあり, 見 学 渚 は 菫 ずこの 穴 にびっくりした<br />
ものだ。 私 も 情 践 木 の 選 定 で, よく 上 ばかり 見 ている<br />
と,この 穴 に 落 ちたものであったが 一 度 落 ちるとなかな<br />
か 出 られない 位 深 いものであった。これは 南 方 で 多 いス<br />
コールを 一 時 ここにため,また 土 砂 も 落 葉 , 草 などとも<br />
にここに 順 次 たまり,この 穴 がふさがる 頃 には,その 後<br />
の 間 伐 で, 叉 新 しい 穴 ができるというしく 承 になってい<br />
た。 択 伐 の 形 式 をとっている <strong>林</strong> は,この 穴 の 跡 に 苗 を 植<br />
えるのでその 成 育 は 実 にすばらしい。また, 山 は 潅 沐 を<br />
いっさいはやさず, 草 もやわらかい 捜 質 のものばかで,<br />
イネ 科 系 の 悪 質 は 雑 草 (アラン,アランとよんでたが)<br />
若 し1 <strong>本</strong> でも 生 えているのが 麦 郵 人 にぶつかるりと,そ<br />
の 分 園 主 任 は 恐 らく 首 になろうと 思 われる 位 徹 い 底 した<br />
手 久 であった。<br />
K 農 園 の <strong>林</strong> 地 麺 巴 憾 , 実 に 多 量 のものであった。ここ<br />
では 壮 令 <strong>林</strong> まで 皆 , 毎 年 獅 凹 をしていたようだ。<br />
前 記 農 園 洪 錬 書 から, 開 園 から 現 在 までいくらの 施 肥<br />
がされたかを 捨 いだしたがそのくわしい 数 字 はいまは 忘<br />
れた。<br />
肥 料 は 主 として,ヤシ 油 のしぼり 粕 であった。このよ<br />
うな 美 喜 な <strong>林</strong> ができ, 多 量 のキナ 皮 がとれるようになっ<br />
た 今 から 考 えて 承 れば,これに 与 えた 施 肥 の 経 蜜 は,こ<br />
こでは 比 較 にならないほど 少 いものであったようだ。<br />
そこで 私 はいつもこの 立 派 なキナ 園 の 中 を 通 る 時 ,こ<br />
の 湾 学 士 の 施 肥 方 法 などを 考 えるのであった。<br />
これがもし, 農 学 士 であったならば, 或 は 別 の 形 で 立<br />
派 なキナ 園 ができていたかもしれないが。しかし,とか<br />
く 吾 を 農 <strong>林</strong> 学 を 学 んだ 者 は 施 肥 をするとなると,すぐ 頭<br />
にその 成 分 は,Nはこれ 位 >Pは,やれKはこの 位 の 割<br />
合 であるべきだというような 按 <strong>術</strong> 的 な 先 入 観 で 鰄 巴 を 行<br />
うものだ。<br />
しかし,この 法 学 士 は 接 <strong>術</strong> やが 考 えられないようなま<br />
"つたく 想 像 できないような 無 茶 な 獅 凹 方 法 をこの 山 にや<br />
ったのではないだろうか,それが 今 <strong>日</strong> , 世 界 一 の 諒 資 を<br />
有 し, 農 園 の 倉 庫 には 常 に 何 千 トンというキナ 皮 が 出 荷<br />
を 待 っているというようなキナ 山 にしたのではないだろ<br />
うか。<br />
ここが 吾 凌 の 学 びたいところだと 思 う。<br />
最 近 , 各 所 で” 巴 試 験 が 行 われているが, <strong>技</strong> <strong>術</strong> やが 考<br />
える 範 囲 を 越 えたような 施 肥 設 計 を 考 えてみることも 無<br />
駄 ではないかと 思 われる。<br />
全 然 既 存 がいねんを 捨 てて, 白 紙 になって 実 淡 して 承<br />
ること, 或 は 専 門 外 の 人 から 思 いもよらぬヒントが 得 ら<br />
れるということ,これは 単 に 施 肥 識 羨 にかぎらず, 吾 を<br />
<strong>技</strong> <strong>術</strong> 者 として 必 要 ではないだろうかと 瘤 駁 させられ, 思<br />
いだすままにこの 駄 文 を 話 して 承 た。<br />
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