San Diego Yu Yu, June 16, 2017

夜 明 け 前 、 冷 たい 空 気 に 包 まれたハワイ・マウイ
島 のハレアカラ 山 頂 近 く。さまざまな 国 の 人 が 集 い、
眼 下 に 広 がる 雲 海 の 向 こうに 朝 日 を 待 ち 望 む。ハレ
アカラは「 太 陽 の 家 」を 意 味 するハワイ 語 。 雲 間 か
ら 光 があふれ 出 すと、ぬくもりが 体 内 へ 一 気 に 染 み
込 んできた。
日 本 から 訪 れる 人 も 多 いオアフ 島 のホノルル 空 港
で 国 内 線 に 乗 り 換 え 約 35 分 、 東 へ 二 つ 島 を 越 える
とマウイ 島 だ。 島 の 形 は、 横 を 向 いた 女 性 の 上 半 身
に 例 えられている。そのちょうど 心 臓 辺 りに、ハレ
アカラ 山 がそびえ 立 つ。
標 高 3,055 メートル。ハレアカラの 名 は 神 話 に 由
来 する。 昼 が 短 く 困 っている 人 々を 見 た 半 神 半 人 の
マウイが、 空 を 動 いていた 太 陽 を 火 山 のてっぺんか
らロープで 捕 まえて 動 きを 遅 くしたおかげで、 昼 が
長 くなったそうだ。
針 (ニードル)のようにとがっ
た「イアオニードル」と 呼 ばれ
る 山 。イアオ 渓 谷 はマウイ 軍
とカメハメハ 大 王 の 激 戦 の 地
として 知 られる = 米 ハワイ・マ
ウイ 島
捕 まえた 太 陽 が
地 球 の 裏 側 へ 行 って
しまった 真 夜 中 、ハ
レアカラ 山 を 目 指 し
た。 曲 がりくねった
道 を 車 で 進 み、よ
うやく 山 頂 に。 冷 た
く 澄 んだ 空 気 が 着
込 んでいても 肌 を 刺
す。ほど なく 夜 空 が
白 み 始 めた。 紺 碧 の
空 に 暖 かいオレンジ
色 がじんわりと 溶 け
出 し、 刻 々とその 表 情 は 変 化 していく。 雲 の 輪 郭 が
金 糸 のような 光 で 縁 取 られると、 一 斉 に 歓 声 が 上
がった。
兵 庫 県 西 宮 市 から 家 族 で 訪 れた 国 分 典 夫 さんは
ハワイ 語 初 の 新 聞
が 刷 られたラハイ
ナ の 博 物 館 「 ハレ・
パイ」に 展 示 され
た 印 刷 機 。 紙 を 板
にはさみ、 文 字 盤
に 当 てる = 米 ハワ
イ・マウイ 島
「 小 さい 光 が 次 第 に 大 きくなり、ただ 圧 倒 された」
と 感 動 した 様 子 。 夫 と 2 人 で 来 たオーストラリアの
シャリン・サラーレスさん は「 太 陽 の 恩 恵 を 感 じ て、
とても 神 聖 な 気 持 ちになった」と 笑 顔 を 見 せた。
山 を 下 りると、 日 差 しはすっかり 強 くなっていた。
島 の 西 部 にある 古 都 ラハイナの 博 物 館 「ハレ・パイ」
( 印 刷 の 家 )へ 向 かった。1834 年 、キリスト 教 神
学 校 の 生 徒 に よってハワイ 語 で 初 の 新 聞 「カ・ラマ・
ハワイ」が 印 刷 された 場 所 だ。
白 壁 の 小 さな 建 物 内 には、ハワイ 語 に 関 する 資
料 や 木 製 のレトロな 印 刷 機 が 置 かれている。 文 字
が な く 、 口 承 だ っ た ハ ワ イ 語 。 宣 教 師 が ア ル フ ァ ベ ッ
トの 一 部 を 当 てはめ 文 字 化 した。 米 国 併 合 などで
廃 れかけたが、1970 年 代 から 再 興 し、ハワイ 州 公
用 語 になっている。
太 陽 の 恵 み 感 じる 夜 明 け
新 聞 を 文 字 のともしびに
米 ハワイ・マウイ 島
ハレアカラ 山 頂 付 近 。 雲 海 から 昇 る 朝 日 を 背 景 に、スマートフォンで「 自 撮 り」に 夢 中 になる 人 の 姿 も = 米 ハワイ・マウイ 島
カアナパリビーチホ
テルのランス・ビラ
リ モ さ ん 。「 外 国 の
人 がハワイ 文 化 に
触 れてくれるのはと
てもうれしい」と
話 す = 米 ハ ワ イ・
マウイ 島
ラハイナの 町 の 海 に 面 した 通 りには、 土 産 物 店
が 並 ぶ。この 日 はお 祭 りが 開 かれ、 地 元 の 人 や
観 光 客 でにぎわっていた = 米 ハワイ・マウイ 島
ハワイ 語 新 聞 の 創 刊 号 が 壁 に 展 示 されていた。
日 付 は「1834 年 2 月 14 日 」。 新 聞 は 教 材 の 役 割 も
あったそうだ。 印 刷 を 体 験 しようと、 木 枠 に 並 んだ
文 字 盤 にインキを 塗 り、 紙 をそっと 当 てる。 転 写 の
力 加 減 が 難 しく、かすれてしまった。
「そうやって 印 刷 された 新 聞 で 文 字 になったハワ
イ 語 を 読 むことが 広 まった」と 博 物 館 のクリス・コ
ンリーさん。「 新 聞 の 名 前 の『ラマ』は、ともしびの
意 味 。ここはハワイ 語 の 文 字 の 夜 明 けを 感 じる 場
所 」と 教 えてくれた。
ラハイナは 19 世 紀 前 半 、ハワイ 王 国 の 首 都 だっ
た。ハワイ 諸 島 の 統 一 を 目 指 したカメハメハ 大 王 は
マウイ 島 イアオ 渓 谷 でマウイ 軍 に 勝 ち、 覇 権 を 握 っ
ていく。 後 にホノルルに 首 都 が 移 るまで、ラハイナ
は 中 心 地 として 栄 えたという。
カアナパリビーチ。ヤシの 木 陰 でくつろぎ、 読 書
を 楽 しむ 人 も = 米 ハワイ・マウイ 島
町 を 歩 けば 史 跡 に 行 き 当 たる。 選 定 されている
歴 史 的 スポットは 60 以 上 。 米 国 の 捕 鯨 船 の 往 来 、
サトウキビプランテーションの 拡 大 による 移 民 の 増
加 —。 過 ぎ 去 った 時 を 今 に 伝 える。
長 い 昼 が 過 ぎ、 街 灯 がともり 始 めると 通 りは 一 層
ノスタルジックに。 行 き 交 う 人 たちは 海 辺 の 歩 道 で
足 を 止 め、ゆっくりと 沈 みゆく 太 陽 の 気 配 を 静 かに
見 守 っていた。
日 没 が 近 づくと、 古 都 ラハイナの 海 辺 の 通 りにオレン
ジ 色 の 街 灯 がともる。 刻 々と 変 わる 空 の 色 が 幻 想 的 だ
= 米 ハワイ・マウイ 島
世 界 のリゾートの 先 駆 け
王 の 離 宮 だったカアナパリ
リゾートがひしめくハワイ 諸 島 で 最 初 に 計 画 さ
れたリゾートがマウイ 島 カアナパリだ。かつてマ
ウイ 王 族 の 離 宮 があった 場 所 で、1960 年 代 初
頭 に 開 業 し、 世 界 のリゾート 開 発 の 先 駆 けとなっ
た。 約 5 キロにわたる 白 い 砂 浜 に 面 して 並 ぶホ
テル 群 では、フラなどのハワイアン 文 化 を 体 験 で
きるプログラムが 開 かれている。
カルチャーアドバイザーとして 文 化 の 伝 承 に 約
20 年 携 わるカアナパリビーチホテルのランス・ビ
ラリモさんにウクレレを 教 わった。 優 しい 音 色 が
心 を 解 きほぐしてくれる。ビラリモさんは「 文 化 の
保 存 に 大 切 なのは、 学 ぶことと 共 有 すること。 心
を 込 めて 伝 えています」とほほ 笑 んだ。
記 事 & 写 真 提 供 : 共 同 通 信 社
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