San Diego Yu Yu, October 1, 2018

誰 もが 納 得 の 金 獅 子 賞
歴 史 物 が 意 味 するものとは
第 75 回 ベネチア 国 際 映 画 祭
動 画 配 信 作 品
「 名 前 を 正 確 に 発 音 しなきゃ…」と、 発 表 前 にギレルモ・デル・トロ 審 査 員
長 が 少 しおどける 余 裕 があるほど、 金 獅 子 賞 は 誰 もが 納 得 だった。
「ローマ」は、1970 年 代 のメキシコ 市 が 舞 台 。 父 親 が 不 在 がちな 家 庭 で、
母 子 とメイドとして 住 み 込 みで 働 く 先 住 民 族 の 女 性 との 関 わりを 通 し、 人 の
つながりや 家 族 の 在 り 方 を 見 つめ 直 す。
母 子 の 日 常 とメイドの 女 性 を 襲 う 苦 難 。 背 景 にある 社 会 は、 学 生 のデモ 隊
と 政 府 の 後 ろ 盾 がある 民 兵 が 衝 突 するなど 不 安 定 な 状 態 にある。 白 黒 映 像
で 物 語 を 紡 ぎ、 静 けさの 中 に 情 熱 を 込 めた。
カンヌ 国 際 映 画 祭 が 事 実 上 、 動 画 配 信 作 品 を 排 除 する 中 、 公 開 の 形 態 を
問 わないベネチアで 秀 作 が 光 を 放 った。
アカデミー 前 哨 戦
「シェイプ・オブ・ウォーター」「ラ・ラ・ランド」…。 近 年 、 米 アカデミー 賞
で 話 題 をさらう 作 品 のお 披 露 目 の 場 はベネチアの 傾 向 があり、 来 年 のオスカ
ーの 行 方 を 占 う 上 でも 注 目 が 集 まる。
今 年 も、 英 国 女 王 と 側 近 女 性 2 人 の 愛 憎 劇 を 描 き、 審 査 員 大 賞 ( 銀 獅 子 賞 )
とオリビア・コールマンが 女 優 賞 に 輝 いた「フェイバリット」、 画 家 ゴッホを 演
じたウィレム・デフォーが 男 優 賞 を 獲 得 した「 永 遠 の 門 にて」、 開 幕 作 品 の「フ
ァースト・マン」(デイミアン・チャゼル 監 督 )など“ 候 補 作 ”が 並 んだ。
主 要 賞 を 競 うコンペティション 部 門 ではないが、レディー・ガガ 主 演 の「ア
リー スター 誕 生 」も 上 映 。 自 ら 人 気 歌 手 の 役 で 出 演 し、 初 監 督 作 となった
ブラッドリー・クーパーが 素 晴 らしく、ガガは 記 者 会 見 で「 彼 は 私 を 女 優 として、
私 は 彼 をミュージシャンとして 受 け 止 めた」と 述 べた。
「 猿 人 の 骨 」の 逆
コンペで 目 を 引 いたのは 歴 史 物 の 多 さだ。19 世 紀 の 英 国 の 民 衆 弾 圧 事 件 を
扱 っ た「 ピ ー タ ー ル ー」、ナ チ ス 統 治 下 の 悲 劇 と 恋 愛 を つ づ っ た「 目 を そ ら す な 」、
さらにはコミカルな 西 部 劇 まで。
塚 本 晋 也 監 督 の 出 品 作 「 斬 、」も 江 戸 末 期 の 時 代 劇 で、 命 を 奪 う 不 条 理 を 描 く。
塚 本 監 督 は「2001 年 宇 宙 の 旅 」で 猿 人 が 投 げた 骨 が 軍 事 衛 星 に 変 わる 有 名
なシーンの 逆 をイメージ。 時 をさかのぼり、 武 器 がシンプルな 刀 になることで「 暴
力 との 対 峙 がよりくっきりと 出 るかな」と 語 った。
他 の 歴 史 物 も 暴 力 、 差 別 、 言 論 封 殺 など 今 につながるテーマを 扱 っており、
複 雑 に 絡 み 合 った 問 題 に 直 面 する 現 代 人 にヒントを 示 しているかのようだった。
第 75 回 ベネチア 国 際 映 画 祭 は 最 高 賞 の 金 獅 子 賞 にアルフォンソ・
キュアロン 監 督 の「ローマ」を 選 んで 閉 幕 した。 動 画 配 信 大 手 ネット
フリックスの 作 品 として 初 の 金 獅 子 賞 受 賞 。 多 彩 な 作 品 が 並 んだ 映
画 祭 を 振 り 返 る。
第 75 回 ベネチア 国 際 映 画 祭 で 記 者 会 見 に
臨 むレディー・ガガ( 中 央 )とブラッドリー・
クーパー( 左 )= イタリア・ベネチア
映 画 「ローマ」より
第 75 回 ベネチア 国 際 映 画
祭 で 受 賞 会 見 に 臨 むアルフ
ォンソ・キュアロン 監 督 =
イタリア・ベネチア
映 画 「 女 王 陛 下 のお 気 に 入 り」より
記 事 & 写 真 提 供 : 共 同 通 信 社