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Untitled - 物質・材料研究機構

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を 行 う 必 要 があるが、 現 在 のところそのようなスペクトルの 再 現 には 成 功 していない。その 議 論 はまたの 機会 に 譲 る。上 述 のように、FID による 計 測 ではゼロシフト 付 近のスペクトルの 忠 実 性 に 欠 ける。それでも 敢 えて FIDにおける 測 定 結 果 を 示 したのは、 室 温 なら 105.93MHz付 近 に 存 在 する 信 号 成 分 に 着 目 するからである。この信 号 成 分 はスピンエコーにまったく 現 れず、FID でしか 観 測 することができない。 最 初 はスピンエコーによる 観 測 をしていたので、このシフト 成 分 の 存 在 には 気づかなかったほどである。スピンエコーが 見 えないということは、スピンスピン 緩 和 時 間 T 2 が 極 端 に 短 くなっているためであると 考 えるのが 自 然 である。T 2 短 縮 の 原 因 はさておき、シフトの 起 源 について 考える。この 試 料 は 赤 外 吸 収 を 示 す[2]ので 電 気 伝 導 性 を持 つことが 予 想 され、シフトはいわゆるナイトシフト[3]である 可 能 性 がある。 相 対 シフトを 計 算 してみると0.06% 程 度 になるが、 文 献 [4]によればバルク Na の 場 合約 0.11%である。ナイトシフトであるならば 磁 化 率 にシフト 量 が 比 例 するはずであり、 磁 化 率 との 比 較 検 討をしてみたいところではある。しかし、 残 念 ながら 磁化 率 とシフトの 比 較 は 困 難 であったので、ここではそういった 検 討 は 行 えない。 試 料 は 曝 気 による 酸 化 を 防ぐため 石 英 アンプルに 封 入 されており、 磁 化 率 測 定 ではアンプルの 石 英 の 磁 化 率 が 試 料 それ 自 身 よりもはるかに 大 きいからである。そして、Na 12 /Na 12 -LSX はカチオンとして K を 含 んだ 試 料 と 違 って 磁 化 率 自 体 が 大 変に 小 さく、スピンは 存 在 してもパウリ 常 磁 性 程 度 に 過ぎないように 見 えることが 拍 車 をかけている。そのような 状 況 に 加 え、 降 温 によりシフト 量 が 低 周 波 数 側 へ移 動 する。そして、NMR 信 号 の 強 度 もシフト 成 分 についてだけ 減 少 して 最 終 的 には 消 失 してしまう。シフトの 存 在 だけでは 電 気 伝 導 性 の 裏 づけとして 弱 い。もしこのシフト 成 分 が 伝 導 性 の 裏 づけになるものだとすれば、スピン 格 子 緩 和 時 間 T 1 はいわゆるコリンハの 関 係 を 示 すはずである。その 確 認 のためには T 1 を 測定 しなければならない。いわば 自 然 の 成 り 行 きとしてその 測 定 も 試 みたが、RF パルスをいくらかけても 核 磁化 はほとんど 飽 和 せず、 熱 平 衡 状 態 のときとほとんど変 わらない 強 度 の FID が 得 られるのみだった。FID 持続 時 間 の 目 安 である T 2 * は、シフト 成 分 について 0.2ms程 度 であったので、T 1 はそれ 以 下 の 非 常 に 短 い 値 であると 考 えられる。 文 献 [4]によれば、バルクの Na ではT 1 が 室 温 で 数 ms 程 度 であり、シフト 量 は 約 0.11%である。それに 比 べて Na 12 /Na 12 -LSX のシフトは 小 さいながら、 半 分 程 度 の 0.06% 程 度 はある。 仮 にシフトとT 1 が 比 例 するとすれば、 室 温 でも T 1 は 十 分 に 観 測 可 能な 値 になっているはずである。そして、もしコリンハの 関 係 が 成 り 立 つとすれば 降 温 により T 1 はさらに 伸びるはずである。しかし、 信 号 が 消 失 する 140K まで降 温 しても T 1 は 依 然 として 観 測 困 難 なままだった。もしコリンハの 関 係 で 与 えられる 緩 和 過 程 で T 1 が 決 まっているとすれば、このことは T 1 T=constant の 定 数 部分 が 極 度 に 強 調 されたものになっていることを 意 味 する。そうだとすれば、 伝 導 電 子 の 相 関 性 が 極 度 に 高 まっていることになるが[5]、そう 判 断 するには 慎 重 であるべきだと 考 える。T 1 が 短 くなるには 別 の 可 能 性 もないわけではない。原 子 の 運 動 によって 核 磁 化 が 平 均 化 されている 可 能 性もある。そうだとすると、motional narrowing[3]によってスペクトルの 振 る 舞 いを 説 明 できる 可 能 性 がある。原 子 が 複 数 の 準 安 定 的 なサイトに 配 置 され、 電 場 勾 配による 核 四 重 極 効 果 により 広 範 囲 に 信 号 が 広 がってFig. 2 Temperature variation of the spectrum ofNa/Na-LSX.基 本 的 には 観 測 不 能 になっているものが、140K 以 上 になると 徐 々に motional narrowing の 効 果 で 核 四 重 極 効果 が 平 均 されてピーク 強 度 が 増 大 しているのかもしれない。この 効 果 が 効 いているとすると、スピンエコーが 見 えないのは T 2 が T 1 により 抑 えられて 観 測 されないからという 説 明 が 可 能 となる。いずれの 説 明 にせよ、その 裏 づけをするためには 類似 試 料 についてのデータを 蓄 積 していく 必 要 がある。なお、 参 照 試 料 とした Na 10 /Na-LSX では、シフトする成 分 はまったく 観 測 されなかった。この 試 料 では 赤 外吸 収 も 成 長 していない。n=12 の 試 料 との 違 いは 明 らかであり、このシフト 成 分 の 存 在 と 伝 導 性 との 関 連 性 は濃 厚 である。 今 後 はそれらの 中 間 的 な n の 値 を 持 つ 試料 を 用 意 し、シフトと 伝 導 性 の 関 係 を 調 べていきたい。4.まとめNa を 飽 和 吸 蔵 して 赤 外 吸 収 が 成 長 し 伝 導 性 を 持 つに 至 ったと 思 われる LSX 型 ゼオライトについて、 23 Na核 の NMR スペクトルの 温 度 変 化 を 検 討 した。ほとんど 温 度 変 化 しないゼロシフト 周 波 数 付 近 の 成 分 以 外 に、高 周 波 数 側 へ 独 立 してシフトしたものがあることを 見出 した。この 成 分 はスピンエコーが 観 測 されず、FIDのみでしか 観 測 することができない。T 1 も 大 変 短 いようであり、T 2 が T 1 以 下 に 抑 えられることによりスピンエコーが 観 測 されない 可 能 性 が 示 唆 された。【 参 考 文 献 】[1] T. Nakano et al., Physica B 374 (2006) 21.[2] T. Nakano et al., J. Phys. Chem. Solid, 71 (2010)650–653.[3] C. P. Slichter, “Principles of Magnetic Resonance”,Springer, New York, 1990.[4] G. C. Carter et al., “Metallic Shifts in NMR”, PergamonPress, Oxford, 1977.[5] A. Narath et al., Phys. Rev. 175 (1968) 37.- 92 -

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